説明

光重合器

【課題】光を照射する空間を高い温度にすることができるとともに、ここに用いられる光源の温度上昇を抑えることが可能な光重合器を提供する。
【解決手段】筐体と、筐体内に壁により囲まれて形成され、重合が行われる重合空間と、重合空間内に重合のための光を照射するLED光源と、重合空間内を加熱する温度制御手段と、を備え、LED光源は、重合空間の外に配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科の分野、特に歯科技工の分野における歯科補綴物等に用いられる光硬化性材料を硬化させる光重合器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科の分野、特に歯科技工の分野において、歯牙の修復物や入れ歯等の歯科補綴物を製作するに際し、光硬化性の材料を用いて硬化前に形状を造り込み、光を照射して硬化させて形状を確定させる手法をとることが広く行われている。ここで、光硬化性の材料を硬化(重合)させるために光を照射する機器が光重合器である。
【0003】
従来は光重合器の光源として、蛍光灯、ハロゲンランプ、又はキセノンランプ等が用いられてきた。しかしながらこのような光源はその寿命が必ずしも長いとは言えず、光源の交換を比較的頻繁におこなう必要があった。また、上記の光源は広い波長域の光を出射するので、光硬化性材料の硬化に必要な波長域以外の波長も含んでおり、不要な波長域にもエネルギーを使用してしまうことから効果的な光の照射であるとは言えなかった。
しかしながら、一方で、ハロゲンランプやキセノンランプを用いて光を照射する場合は、この光源自体が熱源にもなることから、光による硬化(重合)と熱による硬化(重合)とを同時に行える点で、寿命にまつわる交換コストを考慮しても、重要な光源として用いられてきた。
【0004】
これに対して、特許文献1、2には、青色の発光ダイオード(青色LED)を用いた光重合器が開示されている。これら文献によれば、市販されている多くの歯科用光硬化性材料を硬化させる(重合させる)波長域は青色LEDが有する波長域に合致する。従って、従来の光源に比べて少ないエネルギーで光硬化性材料を硬化させるとともに、LEDの高寿命である特徴により光源の交換頻度が少ない光重合器が提供できる。
【0005】
また、特許文献2に記載の光重合器によれば、さらに加熱手段を備えることにより、光硬化性材料の硬化特性に適した条件を整えることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−33374号公報
【特許文献2】特開2005−161002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の光重合器では、光硬化性材料の温度を十分に上昇させることができず、硬化はするものの、その硬さ(強度)を確保することができない場合があった。また、特許文献2に記載の光重合器では、加熱手段により加熱されることにより、機器内が加熱されて青色LEDの発熱と相まって当該青色LEDが許容できる温度を超えてしまう虞があった。
【0008】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、光を照射する空間を高い温度にすることができるとともに、ここに用いられる光源の温度上昇は抑えることが可能な光重合器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。
【0010】
請求項1に記載の発明は、筐体と、筐体内に壁により囲まれて形成され、重合が行われる重合空間と、重合空間内に重合のための光を照射するLED光源と、重合空間内を加熱する温度制御手段と、を備え、LED光源は、重合空間の外に配置されることを特徴とする光重合器である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光重合器において、重合空間を形成する壁の少なくとも一部は透光性のある部材により形成され、透光性のある部材を透過したLED光源からの光が重合空間に照射されることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光重合器において、LED光源には放熱手段が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、筐体と、筐体内に壁により囲まれて形成され、重合が行われる重合空間と、重合空間内に重合のための光を照射するLED光源と、重合空間内を加熱する温度制御手段と、を備え、LED光源は、重合空間の外に配置され、温度制御手段は、LED光源を冷却する冷却手段と、冷却手段を介してLED光源から生じた熱を重合空間に供給する熱供給手段とを、有し、LED光源から生じた熱により重合空間が加熱されることを特徴とする光重合器である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光重合器において、重合空間を形成する壁の少なくとも一部は透光性のある部材により形成され、透光性のある部材を透過したLED光源からの光が重合空間に照射されることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の光重合器において、冷却手段にはペルチェ素子が備えられ、その吸熱側にLED光源が直接又は他の部材を介して配置され、発熱側からの熱が重合空間に供給されることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項4又は5に記載の光重合器において、冷却手段、及び熱供給手段にはヒートシンクが備えられ、LED光源で発生した熱がヒートシンクを通じて重合空間に供給されることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれか一項に記載の光重合器において、さらに、重合空間内を加熱可能な他の加熱手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、歯科補綴物等に用いられる光硬化性材料をLED光源により硬化させるとともに、光照射空間(重合空間)内の温度を上昇させることでその硬度(強度)を高くすることができる。そして、このように重合空間内の温度を上げても、LED光源の温度を許容範囲内に抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】1つの実施形態に係る光重合器の構成を垂直方向の断面により概念的に示した図である。
【図2】他の実施形態に係る光重合器の構成を垂直方向の断面により概念的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、1つの実施形態に係る光重合器10の構成を垂直方向の断面により概念的に示した図である。
光重合器10は、本体11、フタ12、重合空間15、テーブル20、光源25、及び温度制御手段30を備えている。
【0022】
本体11は、図1からわかるように筐体として機能し、光重合器10の基体となる部位であり、光重合器10を構成する各部材の大部分がこの内側に配置される。
【0023】
フタ12は、重合空間15を形成する壁の一部として機能し、本体11に設けられた開口に覆いかぶさるように配置されるフタ部材である。フタ12は開閉可能とされ、その開時には外から重合空間15へ連通可能とされ、閉時には重合空間15を閉鎖する。すなわち、フタ12を開けて重合空間15内に歯科補綴物等を出し入れでき、フタ12を閉じた姿勢で歯科補綴物等に光を照射する。
【0024】
重合空間15は、本体11内に形成される空間でここに歯科補綴物等が置かれ、光が照射される。重合空間15は、上壁16、側壁17、底壁18、及び閉鎖時のフタ12により、これらに囲まれて形成されている。
ここで、上壁16は光源25からの光を透過することができるように透光性のある部材で構成されている。透光性のある部材であれば特に限定されることはないが、より光源からの光を拡散又は集光させる目的で、ここにレンズを備えても良い。このとき、透光性のある部材は、重合空間15側と外側とで材料が異なる2層以上の部材としてもよい。例えば、重合空間15側に透明のポリイミドフィルムを積層した透明の塩化ビニル部材や、重合空間15側に透明アクリルシートを積層したガラスレンズを挙げることができる。これによれば、当該透光性のある部材のうち、重合空間15内に晒される側が、重合される材料により汚れても重合空間15側の層のみを貼りかえることができ、光量の減衰を防止することができる。
また、側壁17、及び底壁18には後述する温度制御手段30の通風路41に連通する流入孔17a、流出孔18aがそれぞれ設けられている。
【0025】
テーブル20は、重合空間15の底部に設けられ、モータ22により回転可能なテーブル状部材である。テーブル20上にアタッチメント21が設置され、該アタッチメント21上に歯科補綴物等が置かれる。テーブル20はモータ22により回転することが可能となっているので、ここに配置されるアタッチメント21及び歯科補綴物等も回転することができ、より均一な重合を可能としている。
ここで、アタッチメント21はテーブル20から着脱可能とされることが好ましい。そしてアタッチメント21は高さの異なるいくつかの種類が準備され、歯科補綴物等の大きさに合わせて光が適切に照射されるようにアタッチメントを選択できることが好ましい。これにより、多くの種類の歯科補綴物等に対応することができる。
【0026】
光源25は、歯科補綴物等に用いられる光硬化性材料を硬化させるために必要な波長を含む光を発光するダイオード(LED)である。通常、このような光硬化性材料が硬化する波長域は360nm〜500nmであることから、青色、又は白色の発光ダイオードが好ましい。このような光硬化性材料は、硬化時に80℃〜120℃程度であるとその硬度(強度)が高められる。
光硬化性材料の典型的な例としてカンファーキノン等の光ラジカル重合材を挙げることができる。この重合開始の波長は460nm程度である。
【0027】
光源として用いられるダイオードは光硬化性材料が硬化を開始することができる波長を含んでいれば特に限定されるものではない。青色発光ダイオードは通常このような波長を含んでいるので好ましく適用することができる。
一方、白色発光ダイオードは蛍光体を用いて白色を得る型と、光の三原色である赤、緑、青の発光素子により白色を得る型とがあるが、後者の方が光硬化性材料を硬化させる波長の強度が強いので好ましい。
【0028】
本実施形態では光源25は重合空間15の上方に配置され、その光は透光性のある上壁16を通過して重合空間15に照射される。このように光源25は直接重合空間15内には設置されない。これにより、重合空間15内が加熱されたときであっても、光源25は加熱されず、熱から保護される。
また、本実施形態では光源25を上部に4つ配置したが、光源の配置はこれに限定されることはなく、被照射物の別によるさらなる適切な光源の数、配置が適用されてもよい。例えば、側壁17の一部も透光性のある材料により構成し、その外側に光源を配置してもよい。
【0029】
温度制御手段30は、光源25の発熱を利用して重合空間15内の温度を上昇させる手段である。これによれば、重合空間15内の温度上昇を効率よく行うことができる。そしてその際にも光源25は許容される温度範囲内に抑えられる。すなわち、光源を適切な状態に維持しつつも、光硬化性材料の硬度(強度)を上げる温度条件とすることが可能である。詳しくは次の通りである。
【0030】
温度制御手段30は、図1からわかるように、本体11の内側に具備されており、冷却手段35、熱供給手段40、及び不図示の制御手段を有している。
【0031】
冷却手段35は、光源25から発生した熱を熱供給手段40に受け渡す機能を有する手段で、ヒートシンク36とペルチェ素子37とを備えている。
ヒートシンク36は光源25に接触するように設けられ、光源25で発生した熱を吸収し、拡散させる。従ってヒートシンク36は熱伝導率が高い材料により構成され、これには例えば銅やアルミニウムを挙げることができる。
【0032】
ペルチェ素子37は、ペルチェ効果を有する素子であり、電流を流すことにより一方側で吸熱し、他方側で吸熱に基づいた発熱が生じるものである。ペルチェ素子37は、その吸熱側をヒートシンク36に接触させるように配置される。従って発熱側はこれと反対側になる。すなわち、ペルチェ素子37は、ヒートシンク36を介して光源25から発生した熱を吸収する。
【0033】
熱供給手段40は、冷却手段35から受けた熱を重合空間15に供給する手段で、通風路41、送風機42、及びヒートシンク44を備えている。
通風路41は、空気の流通が可能とされた流路である。通風路41は、図1からわかるように、その一端が重合空間15の底壁18の流出孔18aに通じ、他端が側壁17の流入孔17aに通じている。
【0034】
送風機42は通風路41内に配置され、通風路41内の空気を移動させるための動力源としての装置である。ここには通常に考えられる送風機を適用することができ、これには例えばファン等を挙げることができ、モータ43により駆動される。
【0035】
ヒートシンク44は、その一部が通風路41内に配置されるとともに、他の一部が上記したペルチェ素子37の発熱側に接触して配置されるヒートシンクである。従って、ヒートシンク44によりペルチェ素子37の熱を吸収し、これを通風路41内に供給することができる。
【0036】
制御手段は、重合空間15内の温度状況を把握するとともに必要に応じて送風機42の起動及び停止や、光源25の点灯及び消灯をおこなう制御手段である。ここで、重合空間15の温度状況の把握は測温センサ(熱電対、測温抵抗体等)を用いることによりおこなうことができる。そして制御手段は測温センサからの情報に基づいて、予め規定しておいた条件により判断をし、温度を下げる必要がある場合には光源25を消灯して送風機42を停止する。一方、温度を上げる必要がある場合には光源25の点灯及び送風機42の稼働を継続する指令を出すことができる。
従ってこのような制御手段は、例えば温度情報等を入力する入力ポート、判断の条件等の情報が予め記憶された記憶媒体(ROM)、入力情報に基づいて演算をおこなう演算子(CPU)、演算の作業領域や一時的な記憶をするRAM、及び演算結果を出力する出力ポートを備えることができる。
また、制御手段には光量を測定して制御する手段を備えてもよい。光量を測定するセンサとして例えばCCD素子を設置し、歯科補綴物等の重合(硬化)に必要とされる光量を確保するための監視をおこなう。
【0037】
以上のような構成部材を備える光重合器10により例えば次のようにして歯科補綴物等を形成することができる。
硬化前の光硬化性材料により形造った歯科補綴物等を本体11のアタッチメント21の上に載置する。次にフタ12を閉鎖して重合空間15を形成し、光源25を点灯する。また、これと同時に温度制御手段30も作動させる。すると、第一に、光源25からの光により歯科補綴物等の光硬化性材料が重合(硬化)を開始する。一方、光源25から発生する熱は、図1に点線矢印で示したように、ヒートシンク36を伝ってペルチェ素子37に吸熱され、その熱でヒートシンク44が加熱される。
また、送風機42が稼働することにより、図1に実線矢印で示したように、流出孔18aから流入孔17aに向けた空気の流れが生じる。ここで加熱されたヒートシンク44は通風路41内を流れる空気を加熱する。加熱された空気は、送風機42による空気の流れより流入孔17aから重合空間15内に流入する。これにより重合空間15、すなわち歯科補綴物等の光硬化性材料が温められる。一般的に、光硬化性材料は、その硬化時に80℃〜120℃程度であるとその硬度(強度)が高められる。従って、光重合器10によれば、形成後の歯科補綴物等において高い硬度(強度)を得ることができる。その際、重合空間15は上記のように加熱されるが、光源25は重合空間15から隔離され、さらには冷却手段35により冷却されているので、光源25は適切な作動が確保される。
【0038】
ここで、制御装置は重合空間15の温度を取得し、これが適正な温度範囲に収まるように制御する。具体的には、重合空間15の温度が所定の温度以上にまで上昇したときには、光源25及び送風機42を停止する。これにより重合空間15の温度を下げることができる。一方、重合空間15の温度が所定の温度にまで達していないときには、光源25及び送風機42の点灯及び稼働が継続される。
【0039】
以上のように光重合器10によれば、重合空間15内の温度を上昇させつつも、光源25の温度を許容範囲内に抑えることができる。さらに、重合空間15を加熱させる熱は光源25の排熱を利用するものなので、エネルギーの効率良い光重合器10とすることが可能である。
【0040】
光重合器10には、重合空間15内に補助的に他の加熱手段が備えられていても良い。これによれば光源25からの排熱のみでは重合空間15の十分な温度が得られなかったときにこれを補助することができる。他の加熱手段としては、赤外線ヒーター、セラミックヒーターなど電気を供給して発熱するものや、光源としても使用できるハロゲンランプ、キセノンランプを挙げることができる。
【0041】
また、本実施形態では冷却手段35にペルチェ素子37を配置して、より効率良く排熱を利用することとしたが、ペルチェ素子37を有することなく、冷却手段35のヒートシンク26と、熱供給手段40のヒートシンク44と、を直接接触させて配置してもよい。これによっても光源で発生した熱を重合空間に供給することが可能となる。
【0042】
図2は、他の実施形態に係る光重合器110の構成を垂直方向の断面により概念的に示した図である。
光重合器110は、本体111、フタ112、重合空間115、テーブル120、光源125、放熱手段126及び温度制御手段130を備えている。
【0043】
本体111は、図2からわかるように筐体として機能し、光重合器110の基体となる部位であり、光重合器110を構成する各部材の大部分がこの内側に配置される。本体111には、内外を連通する孔が設けられても良く、またその孔にはファン等の送風機が設置されてもよい。これにより本体内111の温度を調整することができ、後述する光源125の効率よい放熱をすることができる。
【0044】
フタ112は、重合空間115を形成する壁の一部として機能し、本体111に設けられた開口に覆いかぶさるように配置されるフタ部材である。フタ112は開閉可能とされ、その開時には外から重合空間115へ連通可能とされ、閉時には重合空間115を閉鎖する。すなわち、フタ112を開けて重合空間115に歯科補綴物等を出し入れでき、フタ112を閉じた姿勢で歯科補綴物等に光を照射する。
【0045】
重合空間115は、本体111内に形成される空間でここに歯科補綴物等が置かれ、光が照射される。重合空間115は、上壁116、側壁117、底壁118、及び閉鎖時のフタ112により、これらに囲まれて形成されている。
ここで、上壁116は光源125からの光を透過することができるように透光性のある部材で構成されている。透光性のある部材であれば特に限定されることはないが、より光源からの光を拡散又は集光させる目的で、ここにレンズを備えても良い。このとき、透光性のある部材は、重合空間115側と外側とで材料が異なる2層以上の部材としてもよい。例えば、重合空間115側に透明のポリイミドフィルムを積層した透明の塩化ビニル部材や、重合空間115側に透明アクリルシートを積層したガラスレンズを挙げることができる。これによれば、当該透光性のある部材のうち、重合空間115内に晒される側が、重合される材料により汚れても重合空間115側の層のみを貼りかえることができ、光量の減衰を防止することができる。
【0046】
ここで、図2からわかるように、重合空間115の外側面から光源125や放熱手段126側に向けて壁117aを立設してもよい。これによれば重合空間115や温度制御手段130からの光源125側への熱の流入を遮断し、さらにこれらの熱的影響を抑制することができる。
【0047】
テーブル120、モータ122、及びアタッチメント121については、上記したテーブル20、モータ22、及びアタッチメント21と共通するのでここでは説明を省略する。
【0048】
光源125も、上記した光源25と共通するのでここでは説明を省略する。
【0049】
光源125は重合空間115の上方に配置され、その光は透光性のある上壁116を通過して重合空間115に照射される。このように光源125は直接重合空間115には設置されない。これにより、重合空間115内が加熱されたときであっても、光源125は加熱されず、熱から保護される。
また、本実施形態では光源125を上部に4つ配置したが、光源の配置はこれに限定されることはなく、被照射物の別によるさらなる適切な光源の数、配置が適用されてもよい。例えば、側壁117の一部も透光性のある材料により構成し、その外側に光源を配置してもよい。
【0050】
放熱手段126は、光源125から発生する熱を放熱するための手段である。本実施形態では、放熱手段126としてヒートシンク126が配置される。ヒートシンク126は光源125に接触するように設けられ、光源125で発生した熱を吸収し、拡散させる。従ってヒートシンク126は熱伝導率が高い材料により構成され、これには例えば銅やアルミニウムを挙げることができる。拡散された熱は大気中に放出される。これにより光源125は許容温度内に収められその動作の信頼性が向上する。
【0051】
このとき、上記したように、本体111に孔や送風機を設ければ、さらに放熱の効率化が図られる。
【0052】
温度制御手段130は、重合空間115内に配置され重合空間115内の温度を上昇させる手段である。具体的には、赤外線ヒーター、セラミックヒーターなど電気を供給して発熱するものや、電子レンジなどで使用される電子線照射器、光源としても使用できるハロゲンランプ、キセノンランプ等を挙げることができる。
【0053】
光重合器110によれば、重合空間115内の温度を上昇させても光源125は許容される温度範囲内に抑えることができる。すなわち、光源を適切な状態に維持しつつも、光硬化性材料の硬度(強度)を上げる温度条件とすることが可能となる。
【0054】
温度制御手段130には、不図示の制御手段を有してもよい。制御手段は、重合空間115内の温度状況を把握するとともに必要に応じて温度制御手段130の作動・停止をおこなう制御手段である。ここで、重合空間115の温度状況の把握は測温センサ(熱電対、測温抵抗体等)を用いることができる。そして制御手段は測温センサからの情報に基づいて、予め規定しておいた条件により判断をし、温度を下げる必要がある場合には温度制御手段130を停止する。一方、温度を上げる必要がある場合には温度制御手段130を作動する指令を出すことができる。
従ってこのような制御手段は、例えば温度情報等を入力する入力ポート、判断の条件等の情報が予め記憶された記憶媒体(ROM)、入力情報に基づいて演算をおこなう演算子(CPU)、演算の作業領域や一時的な記憶をするRAM、及び演算結果を出力する出力ポートを備えることができる。
また、制御手段に光量を測定して制御する手段を備えてもよい。光量を測定するセンサとして例えばCCD素子を設置し、歯科補綴物等の重合(硬化)に必要とされる光量を確保するための監視をおこなう。
【0055】
以上のような構成部材を備える光重合器110により例えば次のようにして歯科補綴物等を形成することができる。
硬化前の光硬化性材料により形造った歯科補綴物等をアタッチメント121の上に載置する。次にフタ112を閉鎖して重合空間115を形成し、光源125を点灯する。また、これと同時に温度制御手段130も作動させる。すると、光源125からの光により歯科補綴物等の光硬化性材料が重合(硬化)を開始する。一方、温度制御手段130から発生する熱により重合空間115、すなわち歯科補綴物等の光硬化性材料が温められる。一般的に、光硬化性材料は、その硬化時に80℃〜120℃程度であるとその硬度(強度)が高められる。従って、光重合器110によれば、形成後の歯科補綴物等において高い硬度(強度)を得ることができる。その際、重合空間115は上記のように加熱されるが、光源125は重合空間115から分離しているので、その熱の影響を受けることなく適切な作動が確保される。
【0056】
ここで、制御装置は重合空間の温度を取得し、これが適正な温度範囲に収まるように制御する。具体的には、重合空間115の温度が所定の温度以上にまで上昇したときには、温度制御手段130を停止する。これにより重合空間115の温度を下げることができる。一方、重合空間115の温度が所定の温度にまで達していないときには、温度制御手段130の稼働が継続される。
【0057】
以上のように光重合器110によれば、重合空間115内の温度を上昇させつつも、光源125の温度を許容範囲内に抑えることができる。
【0058】
以上、現時点において実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光重合器もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0059】
10 光重合器
11 本体(筐体)
12 フタ
15 重合空間
16 上壁
17 側壁
18 底壁
20 テーブル
21 アタッチメント
22 モータ
25 光源
30 温度制御手段
35 冷却手段
36 ヒートシンク
37 ペルチェ素子
40 熱供給手段
41 通風路
42 送風機
43 モータ
44 ヒートシンク
110 光重合器
111 本体(筐体)
112 フタ
115 重合空間
120 テーブル
125 光源
126 放熱手段
130 温度制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に壁により囲まれて形成され、重合が行われる重合空間と、
前記重合空間内に重合のための光を照射するLED光源と、
前記重合空間内を加熱する温度制御手段と、を備え、
前記LED光源は、前記重合空間の外に配置されることを特徴とする光重合器。
【請求項2】
前記重合空間を形成する壁の少なくとも一部は透光性のある部材により形成され、前記透光性のある部材を透過した前記LED光源からの光が前記重合空間に照射されることを特徴とする請求項1に記載の光重合器。
【請求項3】
前記LED光源には放熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光重合器。
【請求項4】
筐体と、
前記筐体内に壁により囲まれて形成され、重合が行われる重合空間と、
前記重合空間内に重合のための光を照射するLED光源と、
前記重合空間内を加熱する温度制御手段と、を備え、
前記LED光源は、前記重合空間の外に配置され、
前記温度制御手段は、前記LED光源を冷却する冷却手段と、前記冷却手段を介して前記LED光源から生じた熱を前記重合空間に供給する熱供給手段とを、有し、
前記LED光源から生じた熱により前記重合空間が加熱されることを特徴とする光重合器。
【請求項5】
前記重合空間を形成する壁の少なくとも一部は透光性のある部材により形成され、前記透光性のある部材を透過した前記LED光源からの光が前記重合空間に照射されることを特徴とする請求項4に記載の光重合器。
【請求項6】
前記冷却手段にはペルチェ素子が備えられ、その吸熱側に前記LED光源が直接又は他の部材を介して配置され、発熱側からの熱が前記重合空間に供給されることを特徴とする請求項4又は5に記載の光重合器。
【請求項7】
前記冷却手段、及び前記熱供給手段にはヒートシンクが備えられ、前記LED光源で発生した熱が前記ヒートシンクを通じて前記重合空間に供給されることを特徴とする請求項4又は5に記載の光重合器。
【請求項8】
さらに、前記重合空間内を加熱可能な他の加熱手段を備える請求項4〜7のいずれか一項に記載の光重合器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−34891(P2012−34891A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178586(P2010−178586)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)