説明

光量制御装置及び光照射装置

【課題】光量指令値と、各LED又はLED群の測定された実光量を対応させることができるとともに、使用する実光量の範囲を適宜変更し、しかも、変更の前後における各使用範囲において分解能を同等に保つことが容易にできる光量制御装置及び光照射装置を提供する。
【解決手段】光照射装置1であって、電力供給部307に所望の駆動パラメータを強制入力するための駆動パラメータ強制入力部305と、前記駆動パラメータ強制入力部305から駆動パラメータの強制入力があった場合に、前記光量指令値受付部302に受け付けられている光量指令値と、前記駆動パラメータ強制入力部305により前記電力供給部に入力されている駆動パラメータと、を対にした対応関係データを作成し、前記対応関係記憶部304に新たな対応関係データとして記憶させる対応関係データ作成部306と、を更に備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDから所定照射領域に照射される光量を制御する光量制御装置及びこの光量制御装置にLEDを接続した光照射装置に関するものであり、例えばライン状の光を照射してワーク(製品)における傷の有無やマークの読み取り等の検査用として好適に用いられるものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、検査対象物(ワーク)であるWEB(連続物:例えば、フィルム・紙・金属板等)やBATCH(枚葉品、個別品:例えば、カットフィルム・カット硝子・ドラム等)のインライン高速検査を行う場合、ラインセンサカメラを用い、流れていくワークの表面を次々と連続的に画像情報として取り込み、画像情報処理装置において明るさの違う部位を検出するなどして表面欠陥等を検出するようにしている。そしてその際に用いる照明装置(光照射装置)として、即応性や光度安定性、寿命等に優れたLEDを複数、列状に並べたものも開発されてきている。
【0003】
ところで、表面欠陥を精度よく検出するためには、前記カメラによる撮像対象領域をむらなく一様に一定の光度で照明することが必要で、特にラインセンサで用いられる光照射装置では、光照射面での光量のばらつきを数%以下にするといった要求もある。このような要求に対し、前記LEDによる光照射装置では、LEDを隣接して配置したとしても、その不連続性から列方向に光量のばらつきが生じ、拡散板で光量を平均化しても、その要求に応えることが難しい。
【0004】
なぜなら、各LEDは同じ規格のものであったとしても製造時の誤差を有するものであり、同じ電流値で各LEDの定電流制御等を行ったとしても、各LEDから射出される実光量には違いが生じてしまい、結果として照射領域全体では光量にばらつきが生じてしまうからである。
【0005】
これに対して、実光量のばらつきを抑えるべくLEDをセレクトする方法が考えられるが、場合によっては数百個のLEDを必要とするこの種の光照射装置では、セレクトしていてはコストや製造の手間が膨大なものとなる。
【0006】
また、例えば各LEDの光量を照度センサ等を用いて独立にFB制御することも考えられるが、構成が複雑になるうえ、近傍の他のLEDからの光の影響があって制御が難しいという不具合がある。特に、前述したように数百個のLEDを使用した場合には、その不具合が極めて顕著なものとなる。
【0007】
このような問題を解決するために、LED又はLED群ごとに、照射される光をセンサにより測定し、測定された実光量値と、その実光量値を得るために電力供給部からLED又はLED群に供給する必要のある電流値と、の関係を表すテーブルである、実光量値−電流値テーブルを予め作成する事が行われている。
【0008】
より具体的には、特許文献1に記載の光照射装置では、前述したLED又はLED群ごとの前記実光量値−電流値テーブルを参照して、光量指令値受付部に入力された光量指令値に一致する又は近い値の実光量値を検索し、その実光量値に対応する電流値をLED又はLED群ごとに取得する。そして、LED又はLED群ごとに取得された電流値をそれぞれ別々に印加することで、全体として光量ムラのない照明としている。
【0009】
言い換えると、テーブルを参照することにより1つの入力された光量指令値に対して、LED又はLED群ごとに印加すべき別々の電流値を予め作成したテーブルから取得し、それらの電流値を印加するようにしているので、LED又はLED群ごとのばらつきに応じてカスタマイズした電流値を印加することができ、結果として全体の光量を光量指令値で揃えることができる。
【0010】
ところで、このような方法は光量指令値と実光量値の単位の次元がルクス等で一致している場合にはうまく機能するが、例えば、検査用照明装置等においてある基準の実光量を含む所定レンジについて、常に同じ分解能で光量制御を行いたい等といった使用方法の場合には使いづらい。より具体的には、検査対象が変わるごとに、LED又はLED群から照射することのできる実光量のレンジ内で特に検査対象に適した実光量のレンジに適宜変更できるとともに、その変更したレンジ内で同じ階調数で光量制御を行うことは上述したような光照射装置では難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−269919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述したような問題を鑑みてなされたものであり、LED又はLED群ごとの特性のばらつきを吸収するために、光量指令値と、各LED又はLED群の測定された実光量を対応させることができるとともに、使用する実光量の範囲を適宜変更し、しかも、変更の前後における各使用範囲において分解能を同等に保つことが容易にできる光量制御装置及び光照射装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明の光量制御装置は、LED又はLED群LED群を備えた光射出機構から所定照射領域に向かって照射される光量を制御する光量制御装置であって、供給電流値、供給電圧値、パルス駆動におけるON/OFF比等の駆動パラメータを入力として受け付け、その駆動パラメータで定まる電力を前記光射出機構に出力する電力供給部と、所定の階調数を有し、目標光量の大小の程度を示す光量指令値を受け付ける光量指令値受付部と、前記光射出機構から所望の実光量が照射されているのが測定されている状態において前記電力供給部に入力されていた駆動パラメータと、光量指令値と、が対になった複数の対応関係データを記憶する対応関係記憶部と、前記光量指令値受付部に受け付けられた光量指令値と、複数の対応関係データとに基づいて、前記光量指令値受付部に受け付けられた前記光量指令値に対応する駆動パラメータに変換して前記電力供給部に入力する光量指令値変換部と、を備えた光照射装置であって、前記電力供給部に所望の駆動パラメータを強制入力するための駆動パラメータ強制入力部と、前記駆動パラメータ強制入力部から駆動パラメータの強制入力があった場合に、前記光量指令値受付部に受け付けられている光量指令値と、前記駆動パラメータ強制入力部により前記電力供給部に入力されている駆動パラメータと、を対にした対応関係データを作成し、前記対応関係記憶部に新たな対応関係データとして記憶させる対応関係データ作成部と、を更に備えたことを特徴とする。
【0014】
このようなものであれば、前記光量指令値受付部に所望の実光量に対応づけたい光量指令値を入力した状態で、前記駆動パラメータ強制入力部により所望の実光量が前記光照射装置から照射されるように駆動パラメータを変更することにより、各光量指令値に対して任意の実光量を実現することのできる駆動パラメータを対応づけることができる。
【0015】
さらに、前記光量指令値受付部に受け付けられる光量指令値は、階調数を有するものであるので、例えば2つの異なる階調数を有する光量指令値に対して、それぞれ所望の2つの実光量に対応する駆動パラメータを対応づければ、その使用範囲内において分解能を変更することなく、実光量に対応づけることが容易にできる。
【0016】
従って、検査対象が変更される等した場合でも、前記駆動パラメータ強制入力部によりLED又はLED群から照射される実光量に変更するだけで、前記光量指令値受付部に受け付けられている現在の光量指令値に対して所望の実光量を実現するための新たな駆動パラメータを対応づけることができる。従って、前記駆動パラメータ強制入力部で実光量を適宜変更するだけで、光量指令値と駆動パラメータとが対になった前記対応関係データを更新することができるとともに、光量指令値の階調数には変化がないので、光射出機構から照射される実光量の使用範囲を変更したとしても、同じ分解能で光量制御を行うことができる。
【0017】
上述したような効果を得るための具体的な実施の態様としては、前記対応関係データ作成部が、前記駆動パラメータ強制入力部により前記電力供給部に入力されている駆動パラメータを変化させ、前記光射出機構から所望の実光量が照射されている際に、前記電力供給部に入力されている駆動パラメータを、任意の階調値を有する光量指令値に対応づけ得るように構成されたものであればよい。
【0018】
光量指令値に対して任意の実光量を実現するための駆動パラメータを対応づけるのが容易であり、そのための構成を簡単にするには、LED又はLED群から所望の実光量が照射されている際にタイミング信号を発生させるタイミング信号発生部を更に備え、前記対応関係データ作成部が、前記タイミング信号を検知した場合に前記対応関係記憶部に新たな対応関係データを記憶させるように構成されたものであればよい。
【0019】
光量指令値に対応付けられる所望の実光量を実現するための駆動パラメータに駆動パラメータ強制入力部により変更し、光射出機構から照射される実光量の使用範囲を変更した場合でも常に同じ光量指令値の分解能で実光量を変更できるようにするための具体的な実施の態様としては、前記光量指令値変換部が、第1の階調を有する第1光量指令値と、当該第1光量指令値に対応する第1駆動パラメータと、が対になった第1対応関係データと、第2の階調を有する第2光量指令値と、当該第2光量指令値に対応する第2駆動パラメータと、が対になった第2対応関係データと、に基づいて光量指令値の階調値と、駆動パラメータとの対応関係を示す線形関数を算出し、その線形関数に基づいて前記光量指令値受付部に受け付けられている光量指令値に対応する駆動パラメータを算出し、前記電力供給部へと入力するように構成されたものであればよい。
【0020】
光射出機構から照射可能な実光量のうち、どの範囲を使用するかについて簡単に決定することができ、光量指令値との対応関係を直観的にわかりやすくするには、前記第1光量指令値が最小の階調値を有するものであり、前記第2光量指令値が最大の階調値を有するものであればよい。
【0021】
よく使用する実光量の範囲では、細かい分解能で制御可能にするとともに、それ以外の実光量の使用範囲では光量指令値をわずかに変化させただけで大きく実光量を変更する事ができるようにするなど、使用範囲ごとに光量指令値の変化に対する実光量の変化量を最適化できるようにするには、前記対応関係記憶部が、第1対応関係データ、第2対応関係データ、第3対応関係データを記憶するものであり、各対応関係データの光量指令値が、第1光量指令値、第2光量指令値、第3光量指令値の順で大きくなる関係を有するものであり、前記光量指令値変換部が、第1対応関係データ及び第2対応関係データに基づいて、第1光量指令値と第2光量指令値間における光量指令値の階調値と、駆動パラメータの対応関係を示す第1線形関数を算出し、第2対応関係データ及び第3対応関係データに基づいて、第2光量指令値と第3光量指令値間における光量指令値の階調値と、駆動パラメータの対応関係を示す第2線形関数を算出するものであり、前記光量指令値受付部に受け付けられた光量指令値が第1光量指令値と第2光量指令値の間にある場合は、第1線形関数に基づいて駆動パラメータを算出し、前記光量指令値受付部に受け付けられた光量指令値が第2光量指令値と第3光量指令値の間にある場合は、第2線形関数に基づいて駆動パラメータを算出するように構成されたものであればよい。
【0022】
経時変化や温度変化によりLEDの特性が変化したとしても、光量指令値と駆動パラメータの対応関係を新たに再設定することなく、自動的に所望の実光量を実現でき設定時と略同じ光量制御の使用感を保つことができるようにするには、前記所定照射領域での実光量を測定する光量測定部をさらに備え、前記対応関係記憶部が、対応づけられた光量指令値と、駆動パラメータとともに、対応付けが行われた時点で光量測定部が測定したセット時実光量を記憶するものであり、前記光量指令値変換部が、前記光量指令値受付部に受け付けられた光量指令値を変換する際において前記光量測定部が測定する通常制御時実光量と、前記セット時実光量との間に偏差がある場合には、当該偏差に基づいて光量指令値から変換された駆動パラメータを補正するように構成されたものであればよい。
【0023】
複数のフィードバックループを形成することなく、単一のフィードバックループで効果的に所望の実光量を実現できるようにするには、前記光量測定部が、前記所定照射領域で撮像された画像の明るさに基づいて実光量を測定するように構成されたものであればよい。
【0024】
前述した光量制御装置と、光射出機構とを備えた光照射装置であれば、特性の異なる光射出機構が光量制御装置に接続されても、同一の光量指令値を入力するだけで、どの光射出機構でも所望の実光量を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
このように本発明の光量制御装置及び光照射装置であれば、光射出機構の照射可能な実光量のうち必要な部分に区切って、実光量を実現することができる駆動パラメータを光量指令値に対応づけることができるとともに、その使用範囲を駆動パラメータ強制入力部により適宜変更することができる。しかも変更の前後において例えば使用範囲が広くなったり狭くなったりしても、その使用範囲を光量指令値の階調数で分割して、常に同じ分解能で光量制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る光照射装置を示す模式図。
【図2】同実施形態における光射出機構の詳細を示す模式的斜視図。
【図3】同実施形態における光量制御装置の外観を示す模式図。
【図4】同実施形態における光量制御装置の内部構成を示す模式図。
【図5】同実施形態における通常制御モード時の機能ブロック図。
【図6】同実施形態における設定モード時の機能ブロック図。
【図7】同実施形態における対応関係記憶部に記憶されている対応関係データの一例。
【図8】同実施形態における初期設定時の実光量、印加電流値、光量指令値間の関係を示す模式的グラフ。
【図9】同実施形態における使用範囲変更時の実光量、印加電流値、光量指令値間の関係を示す模式的グラフ。
【図10】本発明の別の実施形態における実光量、印加電流値、光量指令値間の関係を示す模式的グラフ。
【図11】本発明のさらに別の実施計他における実光量、印加電流値、光量指令値間の関係を示す模式的グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る光照射装置1を用いた製品検査システムの全体概要を模式的に示している。同図における検査対象物(ワーク)Wは、例えば透光性を有する紙やフィルム等の連続物であり、所定方向に一定速度で流れていくように設定されている。そして本実施形態に係る光照射装置1によって、その検査対象物(ワーク)Wの所定照射領域ARにライン状の光を照射するとともに、ラインセンサカメラと称される撮像装置CMRでその所定照射領域ARを撮影し、得られた画像データを図示しない画像処理装置で取り込んで傷等の有無の自動表面検査を行う。
【0029】
しかしてこの光照射装置1は、同図に示すように、独立して光量調整可能な複数の光射出機構2と、それら光射出機構2に電気ケーブルCAによって接続され、それらを駆動制御する光量制御装置3とを有している。
【0030】
光射出機構2は、図2に示すように、連続して200mA以上の電流を流すことが可能な超高輝度タイプの単一のLED4(いわゆるパワーLEDと称されるものである。同図中LED4は図示されておらず、LED収容体21の内部に収容されている)と、そのLED4に光導入端を接続された多数の光ファイバ22と、それら各光ファイバ22の光導出端を対向する方向から挟み込んで1列に密に保持する1対の保持部材23とを備えている。これら光射出機構2は、共通の支持体24により、1列に並ぶように保持させてあり、その状態で各保持部材23は隣接し、全ての光ファイバ22の光導出端が1列直線状に、かつ略密に並ぶように構成してある。
【0031】
光量制御装置3は、図4に示すように、CPUやメモリ、I/Oインタフェース、通信インタフェース等を備えたメインボード31と、各LED4にそれぞれ対応させて設けた複数の駆動ボード32と、それらボード31、32を収容するケーシング33と、ケーシング33に取り付けたスイッチやボリューム、コネクタ等からなるものである。駆動ボード32は、例えばラッチ回路、D/Aコンバータ、電流出力回路等を備えている。そして、前記メモリの所定領域に設定したプログラムにしたがってCPUや他の各部が協働することにより、図5、図6に示すように、モード切替部301、電力供給部307、光量指令値受付部302、対応関係記憶部304、光量指令値変換部303、駆動パラメータ強制入力部305、対応関係データ作成部306のとしての機能を発揮する。
【0032】
本実施形態の光照射装置1は、後述するように通常の光量制御を行う場合と、その前準備として光量指令値と駆動パラメータとの対応付けを行う場合とで、光量制御の形態を異ならせるように前記モード切替部301を備えている。すなわち、前記モード切替部301は、前記光量指令値変換部303により前記電力供給部307に駆動パラメータが入力される通常制御モードと、前記駆動パラメータ強制入力部305により前記電力供給部307に駆動パラメータが入力される設定モードと、を切り替えるものである。より具体的には、通常制御モードは光量指令値から駆動パラメータが算出されて自動的に前記光射出機構2から照射される光量が自動的に制御されるモードであるのに対して、設定モードは入力されている光量指令値に関わりなく、任意の駆動パラメータに変更して光射出機構2から照射される光量を変更できる制御モードにしてある。
【0033】
このモード切替部301は、通常制御モード、設定モードのいずれが選択されているかを、ケーシング33に設けた切替スイッチP1で判断するようにしてある。より具体的には、スイッチがONに選択されている場合は設定モードとなり、OFFの場合は通常制御モードとなるようにしてある。なお、図5、図6は各制御モードにおける各部の動作状態を示すものであり、外枠が点線で示されているものは休止状態となっていることを示している。
【0034】
電力供給部307は、各LED4について、供給電流、供給電圧、パルス駆動した場合のON/OFF比などの駆動パラメータをそれぞれ受け付け、その駆動パラメータで定まる電力でLED4を駆動するもので、前記駆動ボード32が主としてその機能を担う。なおこの実施形態ではLED4を所定の駆動電流値で定電流駆動するようにしており、駆動パラメータはその駆動電流値を10bit(0〜1023)の数値で示したものである。また、電力供給部307においては、ビット数の大きさとそれに対応する駆動電流値は固定されており、これらの関係は変更する事ができないように構成してある。
【0035】
光量指令値受付部302は、各LED4の光量指令値を、LED識別用デジタルスイッチP3により入力されるLED4を識別するためのLED識別子と対にして受け付け、前記メモリの所定領域に設定した光量指令値データ格納部(図示しない)に格納するものである。前記モード切替部301において通常制御モードが選択されている場合には、前記光量指令値受付部302は、前記光量指令値を、例えば外部コンピュータから受信したり、あるいはデジタルスイッチ等の入力機器から読み取ったりする。また、外部接続がされていない場合には、図3の調整ボリュームP2により入力されている値を光量指令値として受け付ける。
【0036】
前記モード切替部301において設定モードが選択されている場合には、調整ボリュームP2は、後述する前記駆動パラメータ強制入力部305として前記電力供給部307に直接駆動パラメータを入力するために用いられるため、調整ボリュームP2の値は光量指令値として前記光量指令値受付部302には受け付けられないようにしている。その替わりに前記に光量指令値受付部302は、後述する前記タイミング信号発生部を構成するMAXボタンP4又はMINボタンP5が押された場合には、光量指令値はそれぞれ最大値又は最小値が入力されたとして受け付けるように構成してある。なお、この実施形態では、光量指令値は、所定の階調数を有するものであり、例えば8bit(0〜255)の数値で示されるものである。
【0037】
前記対応関係記憶部304は、前記光射出機構2の各LED4から所望の実光量が照射されているのが測定されている状態において、前記電力供給部307に入力されていた駆動パラメータと、光量指令値と、が対になった複数の対応関係データを記憶するものである。より具体的には、各LED4の識別子ごとに、所望の光量を得るのに必要であった電流値と、後述するように強制入力モードを使用してその駆動パラメータと対応付けられた光量指令値と、を図7に示すように対にして記憶するものである。この対応関係記憶部304に記憶されている対応関係データは更新可能に設定されているものであり、適宜、光量指令値と駆動パラメータの対応関係は変更することができる。また、図7では一例として光量指令値は最大値255と最小値0を駆動パラメータと対応づけられているが、その他のビット値にそれぞれ駆動パラメータが対応づけられても構わない。
【0038】
前記光量指令値変換部303は、図5に示されているような前記モード切替部301において通常制御モードが選択されている場合にのみ動作するものであり、前記光量指令値受付部302に受け付けられた光量指令値と、複数の対応関係データとに基づいて、前記光量指令値受付部302に受け付けられた光量指令値に対応する駆動パラメータに変換して前記電力供給部307に入力するものである。より具体的には、この光量指令値変換部303は、図示しない変換係数算出部と、変換係数格納部と、駆動パラメータ算出部と、から構成してある。
【0039】
前記変換係数算出部は、前記対応関係記憶部304に記憶されている2組の対応関係データに基づいて、光量指令値から駆動パラメータへの変換するための係数を算出し、その係数をLED識別子に対応づけて前記変換係数格納部へと記憶させるものでる。ここでは、前記変換係数算出部は、光量指令値の階調値が最大値であるときに対応づけられた電流値と、光量指令値の階調値が最小値であるときに対応づけられた電流値とから、線形関数にフィッティングすることで得られた係数を変換係数としている。線形関数とは、例えば、I(α)=pα+q(I(α)は駆動パラメータ、αは光量指令値)で表されるものであり、変換係数とはp、qのことである。なお、本実実施形態では、線形関数によりフィッティングを行っているが、その他の関数によりフィッティングを行ってもよい。この場合、前記対応関係記憶部304に記憶させる対応関係データは未知係数を決定するのに必要な数が記憶されているように構成すればよい。
【0040】
前記駆動パラメータ算出部は、前記変換係数に基づいて、LED4ごとに光量指令値から変換された駆動パラメータを算出し、前記電力供給部307に入力するように構成してある。前記電力供給部307への駆動パラメータの出力の際には、LED識別子によって対応する駆動ボード32を識別し、その駆動ボード32に前記駆動パラメータを出力する。各駆動ボード32には、例えば互いに異なる値に設定したディップスイッチ(図示しない)が設けてあり、前記LED識別子とディップスイッチの示す値とを比較し、一致した駆動ボード32に駆動パラメータが送信される。
【0041】
以下の説明では設定モードが選択されている場合にのみ動作する部分であり、前記対応関係記憶部304に対応関係データを記憶させるために機能する部分である。
【0042】
前記駆動パラメータ強制入力部305は、前記モード切替部301において設定モードが選択されている場合においてのみ動作し、前記電力供給部307に所望の駆動パラメータを強制入力するためのものである。前述したように設定モード時において前記調整ボリュームP2を回すことにより、任意の値の電流値で前記電力供給部307を駆動させることができる。
【0043】
前記タイミング信号発生部P4、P5は、前記駆動パラメータLEDから照射されている実光量が所望の値となった場合にタイミング信号を発生させるものである。この実施形態では、ユーザが各LEDから照射されている実光量を光量測定装置により測定しておき、所望の最大値又は最小値となった時点で、前述したMAXボタンP4又はMINボタンP4を押すことによりタイミング信号を発生させるようにしてある。
【0044】
前記対応関係データ作成部306は、前記設定モードにおいて、前記タイミング信号が発生した場合に、選択されているLED識別子ごとに、前記光量指令値受付部302に受け付けられている光量指令値と、前記駆動パラメータ強制入力部305により前記電力供給部307に入力されている駆動パラメータと、を対にした対応関係データとして前記対応関係記憶部304に記憶させるものである。本実施形態では、図8及び図9のグラフに示すように各LEDから照射される実光量と印加される電流値とが線形関係を保っている領域について、光量指令値と駆動パラメータとの対応付けを行うようにしている。
【0045】
このように構成した光照射装置1の操作及び動作の一例について説明する。
【0046】
<1>初期設定
【0047】
この初期設定では、各LED4の実光量を測定して、各LED4の光量指令値と駆動パラメータとの関係を設定する。
【0048】
オペレータは、切替スイッチをONにして設定モードを選択するとともに、LED指定用デジタルスイッチP3の値(LED識別子)を実光量の測定を行い、対応関係を作成すべき所望の番号に設定する。
【0049】
前記駆動パラメータ強制入力部305は、設定モードであることを認識すると、前記調整ボリュームP2により入力されている値に基づいた電流値を前記電力供給部307に入力する。すなわち、前記電力供給部307は、前記光量指令値受付部302に受け付けられているLED識別子に対応するLED4に対して、光量指令値に関わりなく、その電流値となるように定電流制御を行う。
【0050】
次にオペレータは、撮像装置CMRから送られてくる画像データ内の光量データが予め定められた最大値(最大光量)となるように、光量調整ボリュームP4を操作してLED4の実光量を調整し、予め定めた最大値になった時点でMAXボタンP4を押す。このMAXボタンP4が押されたとき、光量指令値受付部302は光量指令値として最大値(255)を受け付けることになる。
【0051】
そして、前記対応関係データ作成部306は、前記光量指令値受付部302に受け付けられているLED識別子及び光量指令値と、駆動パラメータ強制入力部305により電力供給部307に対して現在入力されている電流値と、を取得する。前記対応関係データ作成部306は、LED識別子とともに、この取得された最大光量指令値と対応する電流値が対になった対応関係データを、前記対応関係記憶部304に記憶させる。
【0052】
さらに、オペレータは、撮像装置から送られてくる画像の光量データが予め定められた最小値(最小光量)となるように、光量調整ボリュームP4を操作してLED4の実光量を調整し、予め定めた最小値になった時点でMINボタンP4を押す。このMINボタンP4が押されたとき、光量指令値受付部302は光量指令値として最小値(0)を受け付けることになる。
【0053】
そして、前記対応関係データ作成部306は、前記光量指令値受付部302に受け付けられているLED識別子及び光量指令値と、駆動パラメータ強制入力部305により電力供給部307に対して現在入力されている電流値と、を取得する。前記対応関係データ作成部306は、LED識別子とともに、この取得された最小光量指令値と対応する電流値が対になった対応関係データを、前記対応関係記憶部304に記憶させる。
【0054】
2組の対応関係データが前記対応関係記憶部304に記憶されると、前記変換係数算出部は、前記対応関係データに基づいて光量指令値と、駆動パラメータである電流値との対応関係を示す線形関数を算出し、その線形関数表わす各係数を変換係数記憶部に記憶させる。算出手順は具体的には以下の通りである。
【0055】
LED4から照射される実光量が予め定められた最大光量Lmaxとなり、MAXボタンP4がオペレータにより押された時点で印加されている電流値をImax、LED4から照射される実光量が予め定められた最小光量Lminとなり、MINボタンP4がオペレータにより押された時点で印加されている電流値をImin、とする。そして、各ボタンが押された時点で前記光量指令値受付部302に受け付けられることになる光量指令値、すなわち、対応関係が設定される光量指令値をそれぞれαmax、αminとする。
【0056】
これらから数式1に示す線形関数を算出し(図8参照)、その係数部分を前記変換係数記憶部に記憶させる。
【0057】
式1 I(α)=((Imax−Imin)/(αmax−αmin))α+(Imax・αmin―Imin・αmax)/(αmax−αmin)
【0058】
<2>光射出操作
【0059】
光を各LED4から照射させるには、まず、オペレータは切替スイッチをOFF側にする。すると、前記モード切替部301は通常制御モードへと各部を変更する。そして、オペレータは、他のコンピュータや入力機器から光量指令値をLED識別子とともに光量指令値受付部302に対して入力する。
【0060】
次に前記光量指令値変換部303は、LED識別子が一致している条件のもと、前記対応関係記憶部304に記憶されていた対応関係データに基づいて算出され、前記変換係数記憶部に記憶されている変換係数を取得する。そして、この変換係数と式1を用いて、入力された光量指令値に対応する駆動パラメータである電流値をLED識別子ごとに算出する。その後、各LED4に対して光量指令値に対応する電流値を前記電力供給部307に指令として入力し、前記電力供給部307は各LEDに対して受け付けた電流値で定電流制御を行う。
【0061】
このように、本実施形態の光照射装置1では、まず初期設定において、各LEDについて実光量を測定しながら実光量を実現するための印加電流値を探索し、さらにその発見された印加電流値を光量指令値に対して対応させている。さらに、その対応させた印加電流値と光量指令値を用いて実測された値以外の光量指令値に対応する印加電流値を算出できるようにしている。従って、LEDごとの誤差があったとしても、同じ光量指令値を入力すれば、それぞれのLED4には異なる電流値で電流が印加され、その結果、各LED4から照射される実光量は同じ光量となり、バラツキに関する問題を解決することができる。また、例えばカメラで所定照射領域ARを撮像した場合、端の部分が暗く撮像されがちであるところ、予め端の部分を明るく照射し、なんら画像処理しなくても、均一な明るさの画像を得るといったことが計算通りにできるようになる。
【0062】
<3>レンジ変更
【0063】
次に各LED4から照射可能な実光量のうち使用する範囲を変更する場合について説明する。
【0064】
基本的には<1>初期設定とほぼ同じ操作となるが、光量指令値に対して対応付ける駆動パラメータの値を異ならせることになる。より具体的には、図8に示す初期状態における実光量の使用範囲から、図9のようにLED4から照射される実光量の使用範囲を狭めたい場合には、最大光量Lmaxが初期状態よりも小さい所望の最大光量となった時点で、MAXボタンP4を押し、最小光量Lminが初期状態よりも大きい所望の最小光量となった時点で、MINボタンP5を押して光量指令値と、駆動パラメータとの対応付けを行う。
【0065】
すると、光量指令値は階調数を表わすものであるので、最大値と最小値の幅が小さくなったということは、その範囲に合わせて自然と同じビット数で分割が行われることになる。つまり、最大光量指令値と、最小光量指令値を対応付ける実光量をタイミング信号発生部で自由に変更することができるように構成されているので、使用範囲に合わせて、常に同じ分割数で光量指令値に対応する駆動パラメータを設定することができる。つまり、実光量の使用範囲が変更されたとして図8、図9から明らかなように常に同じ分解能で光量の変更を行うことができる。このようなことが可能となるのは光量指令値を具体的な明るさを示すルクス等の値として扱いその具体的な値に対応する実光量を対応させているのではなく、光量指令値を単に大小を示すものとして扱っており、さらに、光量指令値に対して任意の実光量を対応させることができるように構成しているためである。
【0066】
しかも、特別に複雑な制御や機器を必要とするわけではないため、簡単な構成での実現が可能である。
【0067】
さらに、例えば劣化等により光量の落ちたLED4は、所定の最大光量を出すことができないため、校正時にそのLED4を見つけ出すことができ、メンテナンスや管理が行いやすくなる。
【0068】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0069】
例えば、駆動パラメータは、ラインスキャン用のように高速を要求される場合には電流が好ましいが、用途によっては電圧やPWM等によるパルス駆動したときのON/OFF比を示すものでも構わない。また、LED又はLED群の前方に機械的遮光手段(例えば液晶)を配置しておくとともに、その遮光量を示す駆動パラメータを受け付け、その駆動パラメータで定まる遮光量で前記遮光手段を駆動する遮光手段駆動部を備えるようにしてもよい。このようなものであれば、LEDそのものの発光量が個々に変わることがなく、熱量が一定になるため、各LEDの寿命のばらつきが少なくなってメンテナンス等に有利になる。
【0070】
また、LED4の対応関係データを自動で設定できるようにしてもよい。具体的には、撮像装置CMRからの予め定めた実光量となった時点を複数点、自動で取得できるようにし、そのときの駆動パラメータの値を予め定めた光量指令値に対応させるように自動で対応関係データを作成するようにすればよい。さらに、LED4からの実光量の測定方法は、撮像装置CMRで測定された光量の他に、撮像装置CMRから出力される撮像データの階調値が対応関係データ作成部に入力されるようにしてもよい。また、撮像装置CMRから出力された撮像データを受け付けて画像処理を行う画像処理装置におけるデータを用いて実光量のモニタリングを行ってもよい。より具体的には、コンピュータ等の画像処理装置において撮像データから作成される画像データの階調値をLED4の実光量としてフィードバックするようにしても構わない。なお、撮像データ及び画像データの階調値とは、明るさをデジタルデータに変化した値のことである。
【0071】
また、上述した実光量のフィードバックの方法の中で、所望の光量を各LED4からより正確に得ることができ、特に表面検査等の検査用照明として効果を発揮するのは、撮像装置CMRから出力された撮像データを画像処理して、実際の検査のための画像を作成する画像処理装置で作成される画像データからフィードバックするものである。このようなものであれば、画像データという使用における最終的な明るさに基づいて光量指令値と実光量の対応関係を作成することができるので、特に効果を発揮することができる。
【0072】
前記実施形態では、通常制御モード、設定モードの2通りのモードに切り替えられるように構成してあり、設定モードに切り替えた場合のみ光量指令値と駆動パラメータとの対応関係を更新することができたが、例えば、駆動パラメータ強制入力部305により、設定モード等に関わりなく強制的に駆動パラメータが変更された場合には、現在光量指令値受付部302に受け付けられている光量指令値と新たに変更された駆動パラメータとを対応づけるようにしてもよい。
【0073】
前記実施形態では、光量指令値は外部のコンピュータ等から光量制御装置3に入力されて、LEDから照射される実光量を常に所望の値で保てるように構成されていたが、例えば、光量指令値を光量制御装置3に設けられたボリュームにより変更できるようにして、ボリュームを変更するごとに対応する駆動パラメータを前記光量指令値変換部303が逐次算出するように構成しても構わない。
【0074】
また、前記対応関係記憶部304が、対応づけられた光量指令値と、駆動パラメータとともに、対応付けが行われた時点で光量測定部が測定したセット時実光量を記憶するものであり、前記光量指令値変換部303が、前記光量指令値受付部302に受け付けられた光量指令値を変換する際において前記光量測定部が測定する通常制御時実光量と、前記セット時実光量との間に偏差がある場合には、当該偏差に基づいて光量指令値から変換された駆動パラメータを補正するように構成されたものであっても構わない。この場合、常時実光量をモニタリングしてフィードバックをする必要があるので、例えば、フォトダイオード等でLED4からの照射光を常時モニタリングし、センシングの都度、例えば、サンプリング周期ごとにフィードバックを行うようにしても構わない。
【0075】
さらに、実光量を予め定めてその際の駆動パラメータを測定し、対応関係データとする他、先に駆動パラメータを予め定めて、その際の実光量を測定し、対応関係データとしてもよい。測定ポイントは2点のみならず、1点又は3点以上に設定することが可能であり、そのポイントの設定を任意に行えるようにすることも可能である。
【0076】
すなわち、前記対応関係記憶部304が、第1対応関係データ、第2対応関係データ、第3対応関係データを記憶するものであり、各対応関係データの光量指令値が、第1光量指令値、第2光量指令値、第3光量指令値の順で大きくなる関係を有するものであり、前記光量指令値変換部303が、第1対応関係データ及び第2対応関係データに基づいて、第1光量指令値と第2光量指令値間における光量指令値の階調値と、駆動パラメータの対応関係を示す第1線形関数を算出し、第2対応関係データ及び第3対応関係データに基づいて、第2光量指令値と第3光量指令値間における光量指令値の階調値と、駆動パラメータの対応関係を示す第2線形関数を算出するものであり、前記光量指令値受付部302に受け付けられた光量指令値が第1光量指令値と第2光量指令値の間にある場合は、第1線形関数に基づいて駆動パラメータを算出し、前記光量指令値受付部302に受け付けられた光量指令値が第2光量指令値と第3光量指令値の間にある場合は、第2線形関数に基づいて駆動パラメータを算出するように構成されたものであってもよい。
【0077】
より具体的には、図10に示すように第1光量指令値が最小光量指令値(0)、第2光量指令値が中間光量指令値(191)、第3光量指令値が最大光量指令値(255)である場合を例として説明する。なお、中間光量指令値とは、中央値だけでなく、最大と最小の間にある任意の値を含む概念である。また、LEDから照射され、前各光量指令値を入力した際に実光量として照射されてほしい光量のそれぞれを、最小実光量Lmin、中間実光量Lmid、最大実光量Lmaxとする。さらに、それぞれの所望の実光量を得るために各LEDに印加されるべき電流値をImin、Imid、Imaxとする。各文字には、LED識別子に応じて添え字の番号を振ってある。
【0078】
図10(a)に示すように、最小実光量Lminから中間実光量Lmidまでの範囲である第1実光量使用範囲と、中間実光量Lmidから最大実光量Lmaxまでの範囲で第2実光量使用範囲のように2つの使用範囲を定めるとともに、それぞれの使用範囲において、制御分解能を異ならせたい場合があるとする。
【0079】
図10(a)から明らかなように第1実光量使用範囲の方が第2実光量使用範囲よりも使用範囲としては狭い。しかしながら、この実施形態では、第1実光量使用範囲においては、通常よりも細かく調光できるとともに、第2実光量使用範囲では光量指令値の変化量が大きくなくても、実光量が大きく変化するようにしている。
【0080】
より具体的には、最小実光量Lminと中間実光量Lmidを実現するのに必要な電流値Imin、Imidに対応づける光量指令値αmin、αmidについて、最小光量指令値αminについては最小値(0)を割り当てる一方、中間光量指令値αmidについては、実光量使用範囲全体における第1実光量使用範囲の占める割合よりも、全階調数に対する中間光量指令値の階調値の占める割合が大きくなるように、中間光量指令値αminを選択している。一方、第2実光量使用範囲においては、上述した関係が逆転するように設定してある。
【0081】
このように、光量指令値と駆動パラメータである電流値とが対になった対応関係データを対応関係記憶部304に記憶させている。さらに、前記変換係数算出部は、以下の式を用いて、それぞれの使用範囲ごとに異なる線形関数についてフィッティングを行い変換係数算出している。
【0082】
より具体的には、第1実光量使用範囲においては、式2を用いており、第2実光量使用範囲においては式3を用いている。
【0083】
式2 I(α)=((Imid−Imin)/(αmid−αmin))α+(Imid・αmin―Imin・αmid)/(αmid−αmin)
【0084】
式3 I(α)=((Imax−Imid)/(αmax−αmid))α+(Imax・αmid―Imid・αmax)/(αmax−αmid)
【0085】
このように中間光量指令値を適宜選択することにより、区間ごとに制御分解能を異ならせることができる。
【0086】
このようなものであれば、光量指令値の最大値、中間値、最小値について駆動パラメータを対応付けるように構成した場合、最大値と中間値との間は実光量の使用範囲を小さく設定するとともに、中間値と最小値との間は実光量の使用範囲を大きく設定するなどできる。つまり、光量指令値のうちのある範囲については狭い実光量の範囲を細かく分割し精度よく制御可能に構成するとともに、光量指令値の別の範囲については大まかにしか階調を変更できないようにすることもできる。実光量の使用範囲と、その分解能について自由に設定することが可能となる。
【0087】
また、対応関係データを各LEDについて一組だけ取得するだけで、光量指令値と駆動パラメータとの対応関係を設定できるようにしても構わない。例えば、図11に示すように、前記変換係数算出部は、光量指令値がゼロの場合には、印加する電流値はゼロ等というように1点を固定して変換係数を算出するものであっても構わない。より具体的には、前記変換係数算出部は、以下の式4を用いて、使用範囲内におけるフィッティングを行い変換係数算出している。
【0088】
式4 I(α)=(Imax/αmax)α
【0089】
このようなものであれば、各LEDについて1点だけ光量指令値と、駆動パラメータ、実光量との間の関係を設定する、より具体的には、使用する実光量の最大値を設定するだけで、使用範囲が変化してもそれに合わせて、光量指令値の階調数と、制御分解能を保ったまま適宜光量指令値の対応づける実光量を変更することができる。従って、より少ない手順で精度よく各LEDの光量制御が可能となる。
【0090】
機構的には、例えばLED4の数にあわせて、駆動ボード32を増減できるように着脱可能に構成してもよいし、メインボード31を有するケーシング33に対し、駆動ボード32を収容可能なケーシング33をケーブルで増減可能に接続できるようにしてもよい。もちろん、光量制御装置3は、メインボード31と駆動ボード32とを一体化する、あるいは、別のハードウェア構成にしても構わない。
【0091】
加えて、本光照射装置1はライン照明に限られず、1又は複数のLEDを用いるものであれば適用可能である。特に1つのLEDを用いたものの場合は、LEDを交換するときにその効果が顕著なものとなる。また、LEDを複数集めたLED群を1ユニットとして制御するようにしてもよい。すなわち、本発明はLEDを用いた照明一般において有効な効果を奏し得るものである。
【0092】
また、ユーザの使い勝手を考慮すれば、前記調整ボリュームをその可変レンジ内で変化させても前記所定実光量が得られない場合に、LEDが不良である旨の警告信号を出力する警告信号出力部をさらに備えているものが望ましい。この警告信号出力部は、測定データの内容からLEDが不良であるか否かを判断し、不良と判断した場合に警告信号を出力するものであっても構わない。
【0093】
さらに、MAXボタンP4又はMINボタンP5のいずれかを省略して、Imax及びαmaxの値を常時固定、或いはImin及びαminの値を常時固定としておいてもよい。
【0094】
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上に詳述したように、本発明によれば、複数のLEDを用いた光照射装置1において、各LEDの照射すべき目標光量さえ与えれば、それらの特性の違いを吸収し、与えられた目標光量で発光させることが、簡単な構成でできるようになる。
【0096】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0097】
1 ・・・光照射装置
2 ・・・光射出機構
3 ・・・光量制御装置
4 ・・・LED又はLED群
AR ・・・所定領域
307・・・電力供給部
302・・・光量指令値受付部
303・・・光量指令値変換部
304・・・対応関係記憶部
305・・・駆動パラメータ強制入力部
306・・・対応関係データ作成部
P4、P5・・・タイミング信号発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED又はLED群を備えた光射出機構から所定照射領域に向かって照射される光量を制御する光量制御装置であって、
供給電流値、供給電圧値、パルス駆動におけるON/OFF比等の駆動パラメータを入力として受け付け、その駆動パラメータで定まる電力をLED又はLED群に出力する電力供給部と、
所定の階調数を有し、目標光量の大小の程度を示す光量指令値を受け付ける光量指令値受付部と、
LED又はLED群から所望の実光量が照射されているのが測定されている状態において前記電力供給部に入力されていた駆動パラメータと、光量指令値と、が対になった複数の対応関係データを記憶する対応関係記憶部と、
前記光量指令値受付部に受け付けられた光量指令値と、複数の対応関係データとに基づいて、前記光量指令値受付部に受け付けられた前記光量指令値に対応する駆動パラメータに変換して前記電力供給部に入力する光量指令値変換部と、を備えた光照射装置であって、
前記電力供給部に所望の駆動パラメータを強制入力するための駆動パラメータ強制入力部と、
前記駆動パラメータ強制入力部から駆動パラメータの強制入力があった場合に、前記光量指令値受付部に受け付けられている光量指令値と、前記駆動パラメータ強制入力部により前記電力供給部に入力されている駆動パラメータと、を対にした対応関係データを作成し、前記対応関係記憶部に新たな対応関係データとして記憶させる対応関係データ作成部と、を更に備えたことを特徴とする光量制御装置。
【請求項2】
前記対応関係データ作成部が、前記駆動パラメータ強制入力部により前記電力供給部に入力されている駆動パラメータを変化させ、LED又はLED群から所望の実光量が照射されている際に、前記電力供給部に入力されている駆動パラメータを、任意の階調値を有する光量指令値に対応づけ得るように構成された請求項1記載の光量制御装置。
【請求項3】
LED又はLED群から所望の実光量が照射されている際にタイミング信号を発生させるタイミング信号発生部を更に備え、
前記対応関係データ作成部が、前記タイミング信号を検知した場合に前記対応関係記憶部に新たな対応関係データを記憶させるように構成された請求項1又は2記載の光量制御装置。
【請求項4】
前記光量指令値変換部が、第1の階調を有する第1光量指令値と、当該第1光量指令値に対応する第1駆動パラメータと、が対になった第1対応関係データと、第2の階調を有する第2光量指令値と、当該第2光量指令値に対応する第2駆動パラメータと、が対になった第2対応関係データと、に基づいて光量指令値の階調値と、駆動パラメータとの対応関係を示す線形関数を算出し、その線形関数に基づいて前記光量指令値受付部に受け付けられている光量指令値に対応する駆動パラメータを算出し、前記電力供給部へと入力するように構成された請求項1、2又は3記載の光量制御装置。
【請求項5】
前記第1光量指令値が最小の階調値を有するものであり、前記第2光量指令値が最大の階調値を有するものである請求項4記載の光量制御装置。
【請求項6】
前記対応関係記憶部が、第1対応関係データ、第2対応関係データ、第3対応関係データを記憶するものであり、各対応関係データの光量指令値が、第1光量指令値、第2光量指令値、第3光量指令値の順で大きくなる関係を有するものであり、
前記光量指令値変換部が、第1対応関係データ及び第2対応関係データに基づいて、第1光量指令値と第2光量指令値間における光量指令値の階調値と、駆動パラメータの対応関係を示す第1線形関数を算出し、
第2対応関係データ及び第3対応関係データに基づいて、第2光量指令値と第3光量指令値間における光量指令値の階調値と、駆動パラメータの対応関係を示す第2線形関数を算出するものであり、
前記光量指令値受付部に受け付けられた光量指令値が第1光量指令値と第2光量指令値の間にある場合は、第1線形関数に基づいて駆動パラメータを算出し、
前記光量指令値受付部に受け付けられた光量指令値が第2光量指令値と第3光量指令値の間にある場合は、第2線形関数に基づいて駆動パラメータを算出するように構成された請求項1、2、3、4又は5記載の光量制御装置。
【請求項7】
前記所定照射領域での実光量を測定する光量測定部をさらに備え、
前記対応関係記憶部が、対応づけられた光量指令値と、駆動パラメータとともに、対応付けが行われた時点で光量測定部が測定したセット時実光量を記憶するものであり、
前記光量指令値変換部が、前記光量指令値受付部に受け付けられた光量指令値を変換する際において前記光量測定部が測定する通常制御時実光量と、前記セット時実光量との間に偏差がある場合には、当該偏差に基づいて光量指令値から変換された駆動パラメータを補正するように構成された請求項1、2、3、4、5又は6記載の光量制御装置。
【請求項8】
前記光量測定部が、前記所定照射領域で撮像された画像の明るさに基づいて実光量を測定するように構成された請求項7記載の光量制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかに記載の光量制御装置と、
LED又はLED群を備えた光射出機構と、を備えた光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−26464(P2013−26464A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160256(P2011−160256)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(596099446)シーシーエス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】