説明

光量計測装置および光量計測方法

【課題】 光量を定量評価できる光量計測装置および光量計測方法を提供する。
【解決手段】 光検出手段で取り込んだ光の光量を計測する光量計測装置において、前記光検出手段の出力信号に基づいて蛍光信号光の光量を算出する光量算出手段と、前記光検出手段に与える光の光量を制御可能な校正用光源と、前記校正用光源により既知の光量の光を前記光検出手段に与えることで、前記光量算出手段により算出される光量のリニアリティを校正する校正手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光量を計測する光量計測装置および光量計測方法に関し、とくに光量を定量評価できる光量計測装置および光量計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA等の生体高分子を同定する方法として、マイクロアレイを用いた方法が知られている。例えばDNAを同定する場合、既知の塩基配列を有するDNAプローブをマイクロアレイの各サイトに固定し、ハイブリダイゼーションによって相補的な塩基配列をもつDNAを各サイトに結合させるものである。結合したDNAを蛍光マーカで標識しておくことで、結合量を蛍光の光量として認識できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】牧野徹・狩野恭一、会誌「光学」 ライフサイエンスにおける光技術 「DNA解析と光技術」、第28巻10号(1999)、(社)応用物理学会分科会 日本光学会、1999年、p549〜552
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光量は専用の光量計測装置を用いて計測する。しかし従来の装置では、絶対光量が計測できないため、遺伝子発現量を直接定量評価できない。
【0005】
本発明の目的は、光量を定量評価できる光量計測装置および光量計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光量計測装置は、光検出手段で取り込んだ光の光量を計測する光量計測装置において、前記光検出手段の出力信号に基づいて蛍光信号光の光量を算出する光量算出手段と、前記光検出手段に与える光の光量を制御可能な校正用光源と、前記校正用光源により既知の光量の光を前記光検出手段に与えることで、前記光量算出手段により算出される光量のリニアリティを校正する校正手段と、を備えることを特徴とする。
この光量計測装置によれば、校正用光源により既知の光量の光を光検出手段に与えることで、光量算出手段により算出される光量のリニアリティを校正するので、光量を定量的に評価できる。
【0007】
前記校正用光源は、一定光量の光を出力する光源と、値付けされた光アッテネータとにより構成されてもよい。
【0008】
前記蛍光信号光を発生する対象物に向けて励起光を照射する励起光照射手段を備えてもよい。
【0009】
本発明の光量計測方法は、光検出手段で取り込んだ光の光量を計測する光量計測方法において、前記光検出手段の出力信号に基づいて蛍光信号光の光量を算出するステップと、前記光検出手段に与える光の光量を制御可能な校正用光源により既知の光量の光を前記光検出手段に与えることで、前記光量を算出するステップにより算出される光量のリニアリティを校正するステップと、を備えることを特徴とする。
この光量計測方法によれば、校正用光源により既知の光量の光を光検出手段に与えることで、光量算出手段により算出される光量のリニアリティを校正するので、光量を定量的に評価できる。
【0010】
前記校正用光源は、一定光量の光を出力する光源と、値付けされた光アッテネータとにより構成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光量計測装置によれば、校正用光源により既知の光量の光を光検出手段に与えることで、光量算出手段により算出される光量のリニアリティを校正するので、光量を定量的に評価できる。
【0012】
本発明の光量計測方法によれば、校正用光源により既知の光量の光を光検出手段に与えることで、光量算出手段により算出される光量のリニアリティを校正するので、光量を定量的に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の光量計測装置の光学系の構成を示す図。
【図2】本実施形態の光量計測装置の制御系の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1および図2を参照して、本発明による光量計測装置の一実施形態について説明する。
【0015】
図1は本実施形態の光量計測装置の光学系の構成を示す図である。本実施形態は、DNAマイクロアレイ(マイクロアレイ上のDNAやRNAサンプル(以下バイオチップという。))に励起光を照射し、DNAマイクロアレイで発生する蛍光信号光の光量を計測する光量計測装置である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の光量計測装置は、DNAマイクロアレイ(バイオチップ)30に励起光を照射するための光学系として、励起光を発生する緑色レーザ光源1および赤色レーザ光源2と、緑色レーザ光源1からの照射光を折り曲げるミラー3と、それぞれ、緑色レーザ光源1および赤色レーザ光源2からの照射光の光路に配置されるダイクロイックミラー5、マイクロレンズアレイ6、ミラー7、ダイクロイックミラー8および可動ミラー9と、を備える。
【0017】
緑色レーザ光源1および赤色レーザ光源2の波長は、cy3やcy5の蛍光色素の励起光に合致するものである。
【0018】
また、本実施形態の光量計測装置は、DNAマイクロアレイ30で発生する蛍光信号光を受けるための光学系として、信号光の光路に配置されたリレーレンズ11と、リレーレンズ11を通過した光を受ける高感度のCCDカメラ12と、を備える。
【0019】
さらに、本実施形態の光量計測装置は、光量の校正を行うための光学系として、校正のためのレーザ光を出力する校正用レーザ光源21と、校正用レーザ光源21から出力されたレーザ光を減衰させる光アッテネータ22と、を備える。なお、校正用レーザ光源および光アッテネータ22は、装置に内蔵する代りに校正時に取り付けるようにしてもよい。
【0020】
また、CCDカメラ12の前面側には、CCDカメラ12への入射光を遮断する校正用シャッター23が設けられている。
【0021】
図1に示すように、DNAマイクロアレイ30はテーブル41に載置される。
【0022】
図2は本実施形態の光量計測装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の光量計測装置は、CCDカメラ12で捉えた光の光量を算出する光量算出部51と、校正用シャッター23を駆動する校正用シャッター駆動部53と、ミラー9を駆動するミラー駆動部55と、光量算出部51の校正を行う校正部56と、緑色レーザ光源1、赤色レーザ光源2、CCDカメラ12、光量算出部51、校正用レーザ光源21、光アッテネータ22、校正用シャッター駆動部53、ミラー駆動部55および校正部56を制御する制御部61と、を備える。
【0024】
次に、DNAマイクロアレイ30の測定時の動作について説明する。
【0025】
測定時には、可動ミラー9および校正用シャッター23は、それぞれ光路から退避した破線で示す位置に駆動される(図1)。
【0026】
緑色レーザ光源1または赤色レーザ光源2で出力されたレーザ光はミラー3、ダイクロイックミラー5、マイクロレンズアレイ6、ミラー7、およびダイクロイックミラー8を介してDNAマイクロアレイ30に照射される。
【0027】
レーザ光による励起により発生したDNAマイクロアレイ30からの蛍光信号光は、ダイクロイックミラー8およびリレーレンズ11を介してCCDカメラ12に入射する。CCDカメラ12の出力信号は光量算出部51に送られ、光量算出部51では信号光の光量が算出される。
【0028】
なお、バックグラウンドノイズに埋もれるような低レベルの信号光については、繰り返し加算によるアベレージング処理でランダムなノイズを相対的に低減し、S/N比を向上させてもよい。
【0029】
一般に遺伝子発現量は広いレンジに分布するため、遺伝子発現量を定量的に計測するためには、低いレベルまで光量を高精度に算出することが要求される。しかし、低レベルの光量は背景光(バックグラウンドノイズ)に埋もれやすく、とくに低レベルの光量において算出精度が問題となる。
【0030】
次に、校正時の動作について説明する。
【0031】
本実施形態では、CCDカメラ12の無信号状態を作り、ゼロ点調整を行う。このとき、校正用シャッター23は光路を遮断する実線で示す位置に駆動される(図1)。これにより、迷光がCCDカメラ12に入らない状態が確保される。このときのCCDカメラ12の出力信号は光量算出部51に送られ、校正部56は光量算出部51に対し、この出力信号値を基準(ゼロ点)とする校正を実行する。
【0032】
また、本実施形態では、CCDカメラ12に入射する光量を制御することで、とくに低光量領域での光量算出の校正を行う。このとき、校正用シャッター23は光路から退避する破線で示す位置に駆動される。また、可動ミラー9は光路に進入した実線で示す位置に駆動される(図1)。
【0033】
図1に示すように、校正用レーザ光源21から出力された光は光アッテネータ22により減衰され、可動ミラー9およびリレーレンズ11を介してCCDカメラ12に入射する。校正用レーザ光源21から出力されるレーザ光の光量、および光アッテネータ22による減衰量は既知であるため、CCDカメラ12に入射される光量も既知である。また、校正用レーザ光源21から出力されるレーザ光は、例えば、cy3の蛍光信号光の波長(570nm)に近い波長を有する。
【0034】
光アッテネータ22の減衰量を切り替えることで、例えば、0dBm、−10dBm、−20dBm等、正しく値付けされた光をCCDカメラ12に入射させる。このときのCCDカメラ12の出力信号は光量算出部51に送られ、校正部56は各出力信号値がそれぞれの光量に正しく対応するように、光量算出部51に対する校正を実行する。
【0035】
このように本実施形態では、校正用シャッター23を用いてゼロ点の校正を行うとともに、光アッテネータ22の減衰量を切り替えることで、とくに低レベルの光量のリニアリティ補正を行うことができる。このため背景光に近い低レベルまで、光量を定量的に正確に計測できる。また、背景光の光量を正しく評価できる。
【0036】
上記実施形態では、校正用レーザ光源21と光アッテネータ22とを用いて、既知の光量の光をCCDカメラ12に与えているが、光量を調整可能な光源をこれらに代えて用いてもよい。例えば、光源としてLEDを用い、駆動電流によって光量を制御してもよい。
【0037】
また、校正用光源として、レーザ光源に代えて白色光源を用いてもよい。
さらに、校正用光源と光アッテネータの組み合わせではなく、基準となる蛍光信号を発生する対象物(基準蛍光信号発生手段)をバイオチップ30の代わりに設置し、そこに緑色レーザ光源や赤色レーザ光源(励起用光照射手段)から励起光を照射し、校正用光源として用いても良い。また、異なる基準蛍光信号を発生する対象物を複数用意することにより、リニアリティ校正ができる。
【0038】
上記実施形態では、CCDカメラ12に入射する光の光量を正確に制御することで、光量の校正を行っているが、CCDカメラ12に入射する光量を正確に測定してもよい。例えば、CCDカメラ12の位置に、光量が正確に測定できるパワーメータを取り付けることで、実際にCCDカメラ12に入射する光量を正確に測定し、同一条件でのCCDカメラ12の出力信号と、予め測定された光量とを対応付けるように校正することができる。このようなパワーメータを用いた校正方法として、特開2004−191232号公報に開示された方法を本発明に適用することができる。
【0039】
上記実施形態では、校正に用いる校正部を装置に設けているが、校正のための校正部を校正時に取り付けることで、同様の校正方法を実行してもよい。ここで校正部とは、校正用光源21,光アッテネータ22および校正用シャッタ23である。
【0040】
上記実施形態では、DNAマイクロアレイを測定対象とする場合を例示したが、本発明は、タンパク質、糖鎖、メタボローム等、種々の生体物質の検出に対し同様に適用できる。また、本発明はマイクロアレイによる物質検出に止まらず、半導体プロセスにおける蛍光性塵埃、プラズマディスプレイパネルの蛍光面の評価等にも適用できる。
【0041】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、光検出手段の出力信号に基づいて蛍光信号光の光量を算出する光量計測装置および光量計測方法に対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 緑色レーザ光源(励起光照射手段)
2 赤色レーザ光源(励起光照射手段)
12 CCDカメラ(光検出手段)
21 校正用レーザ光源(校正用光源)
22 光アッテネータ(校正用光源)
23 校正用シャッター
51 光量算出部(光量算出手段)
56 校正部(校正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出手段で取り込んだ光の光量を計測する光量計測装置において、
前記光検出手段の出力信号に基づいて蛍光信号光の光量を算出する光量算出手段と、
前記光検出手段に与える光の光量を制御可能な校正用光源と、
前記校正用光源により既知の光量の光を前記光検出手段に与えることで、前記光量算出手段により算出される光量のリニアリティを校正する校正手段と、
を備えることを特徴とする光量計測装置。
【請求項2】
前記校正用光源は、一定光量の光を出力する光源と、値付けされた光アッテネータとにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の光量計測装置。
【請求項3】
前記蛍光信号光を発生する対象物に向けて励起光を照射する励起光照射手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光量計測装置。
【請求項4】
光検出手段で取り込んだ光の光量を計測する光量計測方法において、
前記光検出手段の出力信号に基づいて蛍光信号光の光量を算出するステップと、
前記光検出手段に与える光の光量を制御可能な校正用光源により既知の光量の光を前記光検出手段に与えることで、前記光量を算出するステップにより算出される光量のリニアリティを校正するステップと、
を備えることを特徴とする光量計測方法。
【請求項5】
前記校正用光源は、一定光量の光を出力する光源と、値付けされた光アッテネータとにより構成されることを特徴とする請求項4に記載の光量計測方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−281842(P2010−281842A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213948(P2010−213948)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【分割の表示】特願2005−279506(P2005−279506)の分割
【原出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】