説明

光集積モジュールおよび光ピックアップ

【課題】温度変化による光軸ずれを少なくすることができる光集積モジュールおよび光ピックアップを提供する。
【解決手段】ホルダ26の材料をプリズム23の材料である硼珪酸ガラスBK7に対して線膨張係数が近傍の値で、受光素子25に対する最大許容光軸のずれをK(%)、光集積モジュール20の最大許容温度上昇量をΔT(℃)、受光素子25に応じて定められる光軸感度をs(%/μm)、ホルダ26の材料の線膨張係数をα1(/℃)、プリズム23の材料の線膨張係数をα2(/℃)、発光素子24と受光素子25間のピッチをL1(mm)としたときに、α1−α2<K/(s×ΔT×L1×103)の関係を満たすジルコニアを用いるとともに、ホルダ26が、発光素子24を挟むようにしてケース22に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、受光素子と発光素子とを備えた光集積モジュールと、光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、BD(Blu-ray Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)等の光ディスクメディア、及びMD(Mini Disk)等の光磁気ディスク等の情報記録媒体から情報を読み取るための光ピックアップには発光素子と受光素子とを備えた光集積モジュールが広く使われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
従来の光集積モジュールを図1を参照して説明する。図1は従来の光集積モジュールの構成を示した図である。
【0004】
図1に示された光集積モジュール101は、ケース102と、プリズム103と、発光素子104と、受光素子105と、ホルダ106と、を備えている。
【0005】
ケース102は、金属または樹脂などで略箱型に形成されている。プリズム103は、ガラスで形成され、反射面103a、103bが設けられている。
【0006】
発光素子104は、例えば半導体レーザ光源などで構成され、所定の波長のレーザ光を出射する。また、発光素子104は、ケース102のプリズム103の反射面103aと相対する位置に取り付けられている。
【0007】
受光素子105は、例えばOEIC(光電子集積回路)で構成され、ホルダ106に取り付けられた状態でケース102のプリズム103の反射面103bと相対する位置に設けられている。
【0008】
そして、発光素子104から出射したレーザ光は、プリズム103の反射面103aと反射面103bで反射されて、ケース102から、例えば、光ピックアップ内の他の光学部品や対物レンズなどを経由して光ディスクの信号面に照射され、光ディスクの信号面で反射された反射光(戻り光)は、対物レンズや光ピックアップ内の他の光学部品を経由してプリズム103の反射面103bを透過して受光素子105へ入射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−004922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した光集積モジュール101は、高温や低温の温度環境下で受光素子105と戻り光の位置関係がずれる「光軸ずれ」と呼ばれる問題が発生していた。
【0011】
詳しく説明すると、例えば高温の場合、図1の発光素子104と受光素子105間のピッチL1はケース102の線膨脹係数に従って膨脹するが、プリズム103の反射面103a、103b間のピッチL2はその材料であるガラスの線膨脹係数に従って膨脹する。一般にケース102の線膨脹係数の方がガラスの線膨張係数よりも大きい材料が用いられるためL1の膨張量ΔL1>L2の膨張量ΔL2の関係となる。
【0012】
すると、図2に示すように光軸ずれ(受光素子105に対する戻り光の位置ずれ)が発生してしまう。なお、図2は、点線が膨張前を示し実線が膨張後を示している。
【0013】
また、低温の場合は膨脹ではなく収縮により逆の方向への光軸ずれが発生してしまう。
【0014】
そこで、本発明は、例えば、温度変化による光軸ずれを少なくすることができる光集積モジュールおよび光ピックアップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の光集積モジュールは、ケースと、発光素子と、受光素子と、前記ケース内に設けられる光学部品と、を備えた光集積モジュールにおいて、前記発光素子および前記受光素子のうちいずれか一方が前記ケースに設けられ、前記発光素子および前記受光素子のうちの他方が設けられているとともに、前記ケースの前記発光素子および前記受光素子のうちいずれか一方の近傍に取り付けられている設置部材をさらに備え、前記設置部材は、前記光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載の光集積モジュールは、ケースと、発光素子と、受光素子と、前記ケース内に設けられる光学部品と、を備えた光集積モジュールにおいて、前記発光素子および前記受光素子が設けられているとともに、前記ケースに取り付けられている設置部材をさらに備え、前記設置部材は、前記光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項9に記載の光ピックアップは、ケースと、発光素子と、受光素子と、光学部品と、を備えた光ピックアップにおいて、前記発光素子および前記受光素子のうちいずれか一方が前記ケースに設けられ、前記発光素子および前記受光素子のうちの他方が設けられているとともに、前記ケースの前記発光素子および前記受光素子のうちいずれか一方の近傍に取り付けられている設置部材をさらに備え、前記設置部材は、前記光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項10に記載の光ピックアップは、ケースと、発光素子と、受光素子と、光学部品と、を備えた光ピックアップにおいて、前記発光素子および前記受光素子が設けられているとともに、前記ケースに取り付けられている設置部材をさらに備え、前記設置部材は、前記光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の光集積モジュールの構成図である。
【図2】図1に示された光集積モジュールが高温によって膨張した状態を示した説明図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる光ピックアップの斜視図である。
【図4】図3に示された光ピックアップの上面図である。
【図5】図3に示された光ピックアップの底面図である。
【図6】本発明の一実施例にかかる光集積モジュールの構成を示した説明図である。
【図7】本発明の他の形態の光集積モジュールの構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態にかかる光集積モジュールを説明する。本発明の一実施形態にかかる光集積モジュールは、ケースに発光素子および受光素子のうちいずれか一方が設けられて、発光素子および受光素子のうちの他方が取り付けられた設置部材をケースの発光素子および受光素子のうちいずれか一方が設けられている近傍に取り付け、設置部材が、光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されているので、温度変化による設置部材と光学部品との膨張量差及び、ケースの膨張による影響を少なくすることができる。そのために、温度変化による膨張や収縮による発光素子と受光素子間のピッチの変化量と光学部品の反射点間のピッチの変化量との差を小さくすることができるために、温度変化による光軸ずれを少なくすることができる。
【0021】
また、設置部材が、発光素子および受光素子のうちの一方を跨ぐように取り付けられていてもよい。このようにすることにより、ケースの膨張や収縮によって一方の取り付け位置を中心として設置部材が移動する量を少なくすることができ、光軸ずれを少なくすることができる。
【0022】
また、設置部材が前記ケースに取り付けられる位置は、発光素子および受光素子のうちの一方を基準として対称である少なくとも2つの位置であってもよい。このようにすることにより、ケースの膨張により2つの設置部材の取付部分にかかる力の向きが逆向きになり打ち消しあうために、設置部材が移動する量を少なくし、光軸ずれを少なくすることができる。
【0023】
また、本発明の一実施形態にかかる光集積モジュールは、発光素子および受光素子が取り付けられた取付部材がケースに取り付けられ、設置部材が、光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されているので、温度変化による設置部材と光学部品との膨張量差による影響を少なくすることができる。そのために、温度変化による膨張や収縮による発光素子と受光素子間のピッチの変化量と光学部品の反射点間のピッチの変化量との差を小さくすることができるために、温度変化による光軸ずれを少なくすることができる。
【0024】
また、設置部材が、設置部材の材料の線膨張係数をα1と光学部品の材料の線膨張係数をα2との差がα1−α2<K/(s×ΔT×L1×103)の関係を満たすような材料で形成されていてもよい。このようにすることにより、設置部材が、光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成することとなり、温度変化による設置部材と光学部品との膨張量差及び、ケースの膨張による影響を少なくすることができる。そのために、温度変化による膨張や収縮による発光素子と受光素子間のピッチの変化量と光学部品の反射点間のピッチの変化量との差を小さくすることができるために、温度変化による光軸ずれを少なくすることができる。
【0025】
また、光学部品の材料はガラスであり、設置部材は、セラミックで形成されていてもよい。このようにすることにより、ガラスに線膨張係数が近いセラミックで設置部材を形成できるので、温度変化による設置部材と光学部品との膨張量差及び、ケースの膨張による影響を少なくすることができる。
【0026】
また、セラミックは、ジルコニア、アルミナ、炭化ケイ素、または窒化ケイ素のいずれかであってもよい。このようにすることにより、設置部材をガラスに線膨張係数が近い材料とすることができる。
【0027】
また、上述した光集積モジュールを光ピックアップに有してもよい。このようにすることにより、温度変化による光軸ずれを少なくした光ピックアップを構成することができる。
【0028】
また、本発明の一実施形態にかかる光ピックアップは、ケースに発光素子および受光素子のうちいずれか一方が設けられて、発光素子および受光素子のうちの他方が取り付けられた設置部材をケースの発光素子および受光素子のうちいずれか一方が設けられている近傍に取り付け、記設置部材が、光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されているので、温度変化による設置部材と光学部品との膨張量差及び、ケースの膨張による影響を少なくすることができる。そのために、温度変化による膨張や収縮による発光素子と受光素子間のピッチの変化量と光学部品の反射点間のピッチの変化量との差を小さくすることができるために、温度変化による光軸ずれを少なくすることができる。
【0029】
また、本発明の一実施形態にかかる光ピックアップは、発光素子および受光素子が取り付けられた取付部材がケースに取り付けられ、設置部材が、光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されているので、温度変化による設置部材と光学部品との膨張量差による影響を少なくすることができる。そのために、温度変化による膨張や収縮による発光素子と受光素子間のピッチの変化量と光学部品の反射点間のピッチの変化量との差を小さくすることができるために、温度変化による光軸ずれを少なくすることができる。
【実施例】
【0030】
本発明の一実施例にかかる光ピックアップ1を図3乃至図6を参照して説明する。光ピックアップ1は、図3乃至図5などに示すようにピックアップケース2と、アクチュエータ3と、立上げミラー10と、コリメータレンズ11と、ダイクロイックプリズム12とモータ13と、光集積モジュール20と、を備えている。なお、以下、光ピックアップ1がスライドする方向と平行な方向をX方向と記し、後述する立上げミラー10からダイクロイックプリズム12までの光軸の方向と平行かつ前記X方向と直交する方向をY方向と記し、X方向とY方向とも直交する方向をZ方向と記す。
【0031】
ピックアップケース2は、図示しないリードスクリューやガイド等に螺合する螺合部2a、2bが設けられ、該リードスクリューやガイド等に沿ってスライド自在に設けられ、前記したアクチュエータ3と、立上げミラー10と、コリメータレンズ11と、ダイクロイックプリズム12と、モータ13と、光集積モジュール20と、が設けられている。
【0032】
アクチュエータ3は、ベース部4と、レンズ部5と、線条弾性部材6と、マグネット8と、を備えている。
【0033】
ベース部4は、後述する線条弾性部材6の一端が取り付けられているとともに、ピックアップケース2に固定されている。
【0034】
レンズ部5は、線条弾性部材6の他端が取り付けられているとともに、側面に一対のプリントコイル7が取り付けられている。さらに、上面にブルーレイディスク(BD)用対物レンズ9aと、CD/DVD用対物レンズ9bと、が取り付けられている。
【0035】
線条弾性部材6は、一端がベース部4、他端がレンズ部5に取り付けられており、レンズ部5を移動自在に保持しているとともに、ピックアップケース2(ベース部4側)に設けられている図示しない制御回路からの駆動電流をプリントコイル7に供給する。
【0036】
マグネット8は、一対のプリントコイル7と間隔を空けて設けられて、各プリントコイル7に対応して一対が設けられている。
【0037】
前記アクチュエータ3は、線条弾性部材6を介してプリントコイル7に駆動電流が供給されることで、レンズ部5即ちBD用対物レンズ9aとCD/DVD用対物レンズ9bをX方向とZ方向に移動させる。
【0038】
立上げミラー10は、コリメータレンズ11から入射したレーザ光をアクチュエータ3(対物レンズ9)へ向かって反射するとともに、アクチュエータ3(対物レンズ9)から入射した戻り光をコリメータレンズ11へ向かって反射する。
【0039】
コリメータレンズ11は、ダイクロイックプリズム12から入射したレーザ光を平行光にする。また、光ディスクの厚みなどのバラツキによるレーザ光の光ディスクの記録面上でのぼやけを防止するためにモータ13により、立上げミラー10〜ダイクロイックプリズム12間の光軸Pに沿って移動自在に設けられている。
【0040】
ダイクロイックプリズム12は、光集積モジュール20から出射したレーザ光をコリメータレンズ11へ向かって反射するとともに、コリメータレンズ11から入射した戻り光を光集積モジュール20へ向かって反射する。ダイクロイックプリズム12、コリメータレンズ11、立上げミラー10は、図5に示したように光軸Pに沿って同軸に設けられている。
【0041】
本発明の第1の実施例にかかる光集積モジュール20は、図6に示すようにケース22と、プリズム23と、発光素子24と、受光素子25と、ホルダ26と、を備えている。
【0042】
ケース22は、金属または樹脂などで略箱型に形成されている。また、ケース22には、後述する発光素子24が取り付けられる位置の近傍に、ケース22の外表面から突出したホルダ取付部22a、22bが形成されている。また、発光素子24が取付けられる位置が当該ホルダ取付部22a、22bの各々が形成される位置の間になるように形成されている。即ち、ケース22に取り付けられた発光素子24を跨ぐように設置部材(ホルダ26)が取り付けられるように構成されている。なお、本実施例では、ホルダ取付部22a、22bの各々は、発光素子24が取り付けられる位置を基準として、対称な位置に形成されている。
【0043】
光学部品としてのプリズム23は、偏光ビームスプリッタとも呼ばれ、例えば光学ガラスで形成されてケース22内に設けられている。プリズム23には、発光素子24から入射したレーザ光を反射面23bに反射する反射面23aと、反射面23aが反射したレーザ光を外部(図6上方)へ反射するとともに外部から入射したレーザ光を受光素子24へ透過する反射面23bと、が設けられている。
【0044】
発光素子24は、例えば半導体レーザ光源などで構成され、所定の波長のレーザ光を出射する。また、発光素子24は、プリズム23の反射面23aと相対する位置に取り付けられている。
【0045】
受光素子25は、例えばOEIC(光電子集積回路)で構成され、ホルダ26に取り付けられた状態でケース22のプリズム23の反射面13bと相対する位置に設けられている。
【0046】
設置部材としてのホルダ26は、プリズム23の材料であるガラスの線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料を用いて、平板上に形成され、ケースのホルダ取付部22a、22bに取り付けられている。なお、ホルダ26は、プリズム23を透過したレーザ光が受光素子25に入射できるように受光素子25の受光位置近傍には図示しない孔やスリット等またはレーザ光を透過できる窓等が設けられている。
【0047】
本実施例においては、ホルダ26の材料は上述したようにプリズム23の材料であるガラスの線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料を用いている。このようにすることで、温度変化によるプリズム23とホルダ26双方の膨張量または収縮量の差が少なくなり。温度変化による光軸ずれが光ディスクからの読み取り動作に影響しない程度に抑えることができる。ホルダ26の材料としては、具体的には、たとえば、ジルコニアを用いることができる。以下にホルダ26の材料の選定条件について説明する。
【0048】
まず、受光素子25に対する光軸ずれ温度変化の目標値(最大許容光軸ずれ)をK(%)、光集積モジュール20の最大許容温度上昇量をΔT(℃)、受光素子25の光軸感度をs(%/μm)、ホルダ26に用いる材料の線膨張係数をα1(/℃)、プリズム23に用いる材料の線膨張係数をα2(/℃)、発光素子24〜受光素子25間のピッチをL1(mm)とすると、プリズム23とホルダ26の膨張量差e(μm)は次の(1)式で求められる。
e=(α1−α2)×ΔT×L1×103・・・(1)
【0049】
また、光軸のずれ量g(%)は次の(2)式で求められる。
g=s×(α1−α2)×ΔT×L1×103・・・(2)
【0050】
したがって光軸ずれ温度変化の目標値Kを満たすには(3)式に示すように光軸のずれ量gがK未満となればよい。
K>s×(α1−α2)×ΔT×L1×103・・・(3)
【0051】
(3)式を変形すると(4)式となる。
α1−α2<K/(s×ΔT×L1×103)・・・(4)
【0052】
即ち、ホルダ26の材料の線膨張係数α1とプリズム23の材料の線膨張係数α2との差が(4)式を満たす材料でホルダ26が形成されていればよい。
【0053】
ここで、光軸ずれ温度変化の目標値Kは10%に設定する。一般的に光軸ずれが40%程度で光ディスクからの情報の読み取りが困難となってしまうことが知られている。光軸ずれの要因は初期の調整による精度や信頼性試験による変化等様々な要因があるために、他の要因を考慮すると温度による光軸ずれ量は10%程度以内とするのが望ましいためである。次に、温度上昇量ΔTは、車載機器の場合における温度変化を考慮して60℃に設定する。次に、光軸感度をsは4%/μm、発光素子24〜受光素子25間のピッチL1は4mmと設定する。これらは光ディスクの再生記録に用いられる光ピックアップにおいて一般的な値である。以上の値を(4)式に当てはめるとα1−α2<1.04×10-5(/℃)となり、特に車載機器など温度変化が大きい機器に使用する光集積モジュール20のホルダ26に用いる材料は、プリズム23に用いる材料に対して線膨張係数が±1.04×10-5(/℃)以内のものを用いると温度変化による光軸ずれを少なくして光ディスクからの情報の読み取りを継続することができる。
【0054】
なお、本発明はプリズム23の線膨張係数に近傍の線膨張係数を有する材料を使用して光軸ずれを少なくすることであるので、α1−α2の値は0(線膨張係数の差が無い)から+1.04×10-5(/℃)以内だけでなく−1.04×10-5(/℃)以内であっても良いことは明らかである。
【0055】
次に、本実施例で用いるホルダ26の材料であるジルコニア及び従来ホルダ26に用いられていた主な材料(亜鉛ダイキャスト、マグネシウムダイキャスト、アルミダイキャスト、PBT系樹脂、PET系樹脂)の線膨張係数(α1)と、一般的なプリズム23の材料として硼珪酸ガラスBK7を用いた際のα1−α2の値と、を表1に示す。なお、硼珪酸ガラスBK7の線膨張係数(α2)は7.5×10-5(/℃)としている。
【0056】
【表1】

【0057】
表1によれば、ホルダ26の材料としてジルコニアを用いた場合α1−α2は3.00×10-6(/℃)となり、上述した条件1.04×10-5(/℃)未満を満たすことが明らかである。
【0058】
なお、表1に示したようにホルダ26の材料としてはジルコニア以外に同じセラミックであるアルミナ、炭化ケイ素、または窒化ケイ素等であってもよい。これらの材料も表1に示すように、ジルコニアと同様に上記(4)式を満たす。要するにプリズムなどの対象とする光学部品を形成する材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料を用いればよい。線膨張係数が近傍の材料としては、上記(4)式を満たすか、特に車載機器などの温度変化が大きい機器であれば、上述したプリズム23などの対象とする光学部品を形成する材料の線膨張係数に対して±1.04×10-5(/℃)以内の線膨張係数を有する材料であればよい。
【0059】
本実施例によれば、ホルダ26は発光素子24が取り付けられる位置の近傍に形成されたホルダ取付部を介してケース22に取り付けられているので、ケースの膨張による発光素子24と受光素子25間のピッチ変化量を小さくすることができる。そして、ホルダ26がプリズム23の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料を用いて形成されているので、温度変化による膨張や収縮による発光素子24と受光素子25間のピッチ変化量とプリズム23の反射面23a、23b間のピッチ変化量との差を小さくすることができるため、温度変化による光軸ずれを小さくすることができる。
【0060】
また、ホルダ取付部22a、22bが形成される位置は、発光素子24が取付けられる位置が当該ホルダ取付部22a、22bの各々が形成される位置の間になるように形成されているため、ケースの膨張によりホルダ取付部22aにかかる力と、ホルダ取付部22bにかかる力の向きが逆向きになり打ち消しあうために、ケースの膨張による発光素子24と発光素子25間のピッチ変化量をさらに小さくすることができる。
【0061】
また、ホルダ取付部22a、22bの各々は、発光素子24が取り付けられる位置を基準として、対称な位置に形成されているため、ケースの膨張によりホルダ取付部22aにかかる力と、ホルダ取付部22bにかかる力の向きが逆向き、かつ、同等となり相殺されるために、ケースの膨張による発光素子24と発光素子25間のピッチ変化量を実質的になくすことができる。
【0062】
また、受光素子25がホルダ26へ設けられてからケース22に取り付けられているので、その間に別の光学部品を配置できる等、部品配置の自由度を高くすることができる。また、ホルダ26をケース22にバネで付勢した上での接着など、接着強度や信頼性を高める設計が容易になる。
【0063】
なお、ホルダ取付部22a、22bは、どちらか一方のみであってもよいし、2つ以上であってもよい。即ち、ホルダ取付部22a、22bはケース22に取り付けられた受光素子24の近傍に設けられていればよい。
【0064】
また、上述した実施例では、発光素子24をケース22に取り付け、受光素子25をホルダ26に取り付けているが、逆に受光素子25をケース22に取り付け、発光素子24をホルダ26に取り付けてもよい。即ち、発光素子24と受光素子25のいずれか一方がケース22に取り付けられ、残りの他方がホルダ26に取り付けられていればよい。
【0065】
次に、本発明の他の形態について図7を参照して説明する。図7では、発光素子24、受光素子25ともにホルダ26に取り付けられている点が第1の実施例と異なる。
【0066】
なお、図7においては、ホルダ取付部22a、22bを設ける位置は特に限定しない。これは、ホルダ26に発光素子24、受光素子25ともに取り付けられているために、発光素子24と受光素子25間のピッチL1はホルダ26の膨張量によって変化し、ケース22の膨張の影響を受けないためである。
【0067】
発光素子24、受光素子25ともにホルダ26に取り付けることで、ホルダ26とプリズム23との膨張量差による影響を少なくすることができることから、温度変化による膨張や収縮による発光素子24と受光素子25間のピッチの変化量とプリズム23の反射点23a、23b間のピッチの変化量との差を小さくすることができるために、温度変化による光軸ずれを少なくすることができる。
【0068】
また、上述した本実施例では、光ピックアップ1は、光集積モジュール20を備えた構成としたが、光集積モジュール20の構成要素であるプリズム23、発光素子24、受光素子25、およびホルダ26をモジュール化せずに、ピックアップケース2に設けた構成としてもよい。即ち、上述した光集積モジュール20と同等の構成を光ピックアップ1に直接有してもよい。
【0069】
前述した実施例によれば、以下の光集積モジュール20および光ピックアップ1が得られる。
【0070】
(付記1)ケース22と、発光素子24と、受光素子25と、ケース22内に設けられるプリズム23と、を備えた光集積モジュール20において、
発光素子24がケース22に設けられ、
受光素子25が設けられているとともに、ケース22の発光素子24の近傍に取り付けられているホルダ26をさらに備え、
ホルダ26は、プリズム23の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴とする光集積モジュール20。
【0071】
この光集積モジュール20によれば、温度変化による膨張や収縮による発光素子24と受光素子25間のピッチの変化量とプリズム23の反射点23a、23b間のピッチの変化量との差を小さくすることができるために、温度変化による光軸ずれを少なくすることができる。
【0072】
(付記2)ケース22と、発光素子24と、受光素子25と、ケース22内に設けられるプリズム23と、を備えた光集積モジュール20において、
発光素子24および受光素子25が設けられているとともに、ケース22に取り付けられているホルダ26をさらに備え、
ホルダ26は、プリズム23の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴とする光集積モジュール20。
【0073】
この光集積モジュール20によれば、温度変化による膨張や収縮による発光素子24と受光素子25間のピッチの変化量とプリズム23の反射点23a、23b間のピッチの変化量との差を小さくすることができるために、温度変化による光軸ずれを少なくすることができる。
【0074】
(付記3)ピックアップケース2と、発光素子24と、受光素子25と、プリズム23と、を備えた光ピックアップ1において、
発光素子24がピックアップケース2に設けられ、
受光素子25が設けられているとともに、ピックアップケース2の発光素子24の近傍に取り付けられているホルダ26をさらに備え、
ホルダ26は、プリズム23の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴とする光ピックアップ1。
【0075】
この光ピックアップ1によれば、温度変化による膨張や収縮による発光素子24と受光素子25間のピッチの変化量とプリズム23の反射点23a、23b間のピッチの変化量との差を小さくすることができるために、温度変化による光軸ずれを少なくすることができる。
【0076】
(付記4)ピックアップケース2と、発光素子24と、受光素子25と、プリズム23と、を備えた光ピックアップ1において、
発光素子24および受光素子25が設けられているとともに、ピックアップケース2に取り付けられているホルダ26をさらに備え、
ホルダ26は、プリズム23の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴とする光ピックアップ1。
【0077】
この光ピックアップ1によれば、温度変化による膨張や収縮による発光素子24と受光素子25間のピッチの変化量とプリズム23の反射点23a、23b間のピッチの変化量との差を小さくすることができるために、温度変化による光軸ずれを少なくすることができる。
【0078】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 光ピックアップ
2 ピックアップケース(ケース)
20 光集積モジュール
22 ケース
23 プリズム(光学部品)
24 発光素子
25 受光素子
26 ホルダ(設置部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、発光素子と、受光素子と、前記ケース内に設けられる光学部品と、を備えた光集積モジュールにおいて、
前記発光素子および前記受光素子のうちいずれか一方が前記ケースに設けられ、
前記発光素子および前記受光素子のうちの他方が設けられているとともに、前記ケースの前記発光素子および前記受光素子のうちいずれか一方の近傍に取り付けられている設置部材をさらに備え、
前記設置部材は、前記光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴とする光集積モジュール。
【請求項2】
前記設置部材が、前記発光素子および前記受光素子のうちの一方を跨ぐように取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の光集積モジュール。
【請求項3】
前記設置部材が前記ケースに取り付けられる位置は、前記発光素子および前記受光素子のうちの一方を基準として対称である少なくとも2つの位置であることを特徴とする請求項2に記載の光集積モジュール。
【請求項4】
ケースと、発光素子と、受光素子と、前記ケース内に設けられる光学部品と、を備えた光集積モジュールにおいて、
前記発光素子および前記受光素子が設けられているとともに、前記ケースに取り付けられている設置部材をさらに備え、
前記設置部材は、前記光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴とする光集積モジュール。
【請求項5】
前記設置部材が、前記受光素子に対する最大許容光軸のずれをK(%)、光集積モジュールの最大許容温度上昇量をΔT(℃)、前記受光素子に応じて定められる光軸感度をs(%/μm)、前記設置部材の材料の線膨張係数をα1(/℃)、前記光学部品の材料の線膨張係数をα2(/℃)、前記発光素子と前記受光素子間のピッチをL1(mm)としたときに、前記設置部材の材料の線膨張係数をα1と前記光学部品の材料の線膨張係数をα2との差が次の数1式を満たす材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の光集積モジュール。
[数1]α1−α2<K/(s×ΔT×L1×103
【請求項6】
前記光学部品の材料はガラスであり、
前記設置部材は、セラミックで形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の光集積モジュール。
【請求項7】
前記セラミックは、ジルコニア、アルミナ、炭化ケイ素、または窒化ケイ素のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の光集積モジュール。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の光集積モジュールを有したことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項9】
ケースと、発光素子と、受光素子と、光学部品と、を備えた光ピックアップにおいて、
前記発光素子および前記受光素子のうちいずれか一方が前記ケースに設けられ、
前記発光素子および前記受光素子のうちの他方が設けられているとともに、前記ケースの前記発光素子および前記受光素子のうちいずれか一方の近傍に取り付けられている設置部材をさらに備え、
前記設置部材は、前記光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項10】
ケースと、発光素子と、受光素子と、光学部品と、を備えた光ピックアップにおいて、
前記発光素子および前記受光素子が設けられているとともに、前記ケースに取り付けられている設置部材をさらに備え、
前記設置部材は、前記光学部品の材料の線膨張係数の近傍の線膨張係数を有する材料で形成されていることを特徴とする光ピックアップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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