説明

光電変換素子およびこれを用いた光電変換装置、撮像システム

【課題】 受光面に入射する光の量を増加させる
【解決手段】 集光部材300は、集光部材300の、開口部201に対応した領域510に入射する光の焦点500を、光路部材220の内部であって、第2平面1002と、第2平面1002から受光面111側に距離D/2だけ離れた第4平面1004と、の間に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路を有する光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換部を備えた光電変換素子において、光電変換部の数を増やすため、及び/又は光電変換素子を小型化するためには、光電変換部のピッチを小さくしたり、受光面の面積を小さくしたりする必要がある。そのため、入射光の利用効率を高めることで光電変換素子の感度を向上することができる。
【0003】
入射光の利用効率を高めるためには、特許文献1、2、3に記載されているように、受光部(光電変換部)の受光面上に光導波路(光路部材)を設け、光導波路の上部にマイクロレンズを形成することが有効である。
【0004】
特許文献1には、マイクロレンズの焦点が光導波路の入射面近辺に位置することが開示されている。特許文献2には、マイクロレンズの焦点が受光面近傍に位置することが開示されている。特許文献3には、マイクロレンズの光軸付近の領域から入射した光の焦点が光導波路の出射面付近に位置し、マイクロレンズの周縁付近の領域から入射した光の焦点が光導波路の入射面付近に位置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−045805号公報
【特許文献2】特開2002−118245号公報
【特許文献3】特開2008−218650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、受光面に入射する光の量を増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の光電変換素子は、基板に設けられた光電変換部と、開口部および前記開口部から延在した上面を有し、前記基板を覆う絶縁膜と、前記開口部内に位置し、前記光電変換部の受光面に対応した領域に下面を有する光路部材と、少なくとも1つの集光レンズ体層を含む集光部材と、を備え、前記上面は、前記受光面を含む第1平面に平行で前記第1平面から距離Tだけ離れた第2平面内に位置しており、前記下面は、前記第1平面に平行で前記第2平面から前記受光面側に前記距離T以下の距離Dだけ離れた第3平面内に位置しており、前記集光部材は、前記集光部材の、前記開口部に対応した領域に入射する光の焦点を、前記光路部材の内部であって、前記第2平面と、前記第1平面に平行で前記第2平面から前記受光面側に距離D/2だけ離れた第4平面と、の間に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受光面に入射する光の量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を説明する断面模式図。
【図2】本発明を説明する模式図。
【図3】光電変換素子の第1実施形態を説明する断面模式図。
【図4】光電変換素子の第2実施形態を説明する断面模式図。
【図5】光電変換素子の第3実施形態を説明する断面模式図。
【図6】光電変換素子の第4実施形態を説明する断面模式図。
【図7】光電変換素子の第5実施形態を説明する断面模式図。
【図8】光電変換素子の第6実施形態を説明する断面模式図。
【図9】光電変換装置および撮像システムを説明する模式図。
【図10】光電変換装置の一例を説明する断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明を説明する。図1は本発明の概念を示す、光電変換素子1の模式断面図である。
【0011】
光電変換素子1は、光電変換部110を備えている。光電変換素子1を1次元状あるいは2次元状に複数(多数)配列することで光電変換装置を成すことができる。光電変換装置については図9を用いて後述するが、光電変換装置は光電変換素子1から得られた信号を制御するための不図示の周辺回路をさらに含んでいてもよい。
【0012】
光電変換部110は基板100に設けられている。光電変換装置では、1つの基板100は複数の光電変換部110を有しており、複数の光電変換部110の各々が別々の光電変換素子1の一部を成す。
【0013】
光電変換部110の、図面上で上側の面が受光面111である。受光面111を含む仮想的(幾何学的な)な平面を第1平面1001と呼ぶことにする。典型的には、光電変換部110は半導体基板100の主面101より深部に、不純物を導入することによって形成される。そのため、光電変換部110の受光面111は、典型的には基板100の主面101の少なくとも一部と実質的に一致し、第1平面1001は基板100の主面101を含む。
【0014】
ただし、光電変換部110は、半導体基板100の主面101に凹みを設けて、該凹みの底面より深部に形成されていてもよい。あるいは、ガラス板等の主面上にMIS型構造あるいはPIN型構造を有する薄膜として形成されていてもよい。これらの場合には、基板100の主面101と光電変換部110の受光面111は必ずしも同一平面内には存在しない。
【0015】
基板100上(主面101上)には、少なくとも基板100の光電変換部が配された一主面101を覆う絶縁膜200が設けられている。詳細には、絶縁膜200は基板100の主面101と、光電変換部110の受光面111を覆っている。すなわち、絶縁膜200の下面は基板100の主面101と受光面111に接している。絶縁膜200は、複数の光電変換部110同士が導通しない程度の絶縁性(基板100の導電率よりも低い導電率)を有する。典型的には、絶縁膜200は透明である。絶縁膜200は一種類の材料からなる単層膜であってもよいが、典型的には絶縁膜200は複数の層からなる多層膜である。多層膜については後述する。
【0016】
絶縁膜200は開口部201(穴部)を有している。開口部201は貫通穴もしくは凹部とすることができるが、図1では、開口部201を凹部とした場合の構成を示している。絶縁膜200は、実質的に平坦で基板100の主面101に平行な上面202を有している。上面202を含む仮想的(幾何学的な)な平面を第2平面1002と呼ぶことにする。第2平面1002は第1平面1001に平行であって、第1平面1001と第2平面1002は距離Tだけ離れている。距離Tは絶縁膜200の厚みと実質的に一致する。開口部201は上面202に連続している。詳細には、開口部201は、底面203と側面204とで構成されている。底面203を含む仮想的(幾何学的な)な平面を第3平面1003と呼ぶことにする。底面203は受光面111に対応した領域に位置している。詳細には、底面203は主面101に平行な方向(第1平面1001および第3平面1001に平行な方向)において、受光面111からの正射影に入るように位置している。このようにして、受光面111と底面203とは絶縁膜200の一部を介して対向している。第3平面1003は第2平面1002(及び第1平面1002)に平行であって、第2平面1002と第3平面1003は距離Dだけ離れている。距離Dは開口部201の深さと実質的に一致する。側面204は上面202及び底面203に連続している。そのため、側面204は実質的に第2平面1002と第3平面1003との間に延在している。なお、開口部201の断面形状がU字型を呈していて、実際には底面203と側面204の境界が明確でない場合がある。第3平面1003は、少なくとも、絶縁膜200の基板100側とは反対側の表面において基板100に最も近い点(開口部201の底)を含むように決定される。上記したように、「絶縁膜200の基板100側とは反対側の表面」は上面202、底面203、側面204を有している。絶縁膜200の基板100側の表面は、絶縁膜200の下面である。これまでの説明から明らかなように、第1平面1001と第3平面1003は、距離T−D(>0)だけ離れている。なお、開口部201を凹部ではなく貫通穴とした場合には、受光面111が開口部の底面を成す。そして、開口部201の深さは実質的に絶縁膜200の厚みと等しくなり、T=Dとなる。
【0017】
ここで、第2平面1002と第3平面1003との中間に位置する仮想的(幾何学的)な平面として、第4平面1004を定義する。第4平面1004は、第2平面1002から受光面111側に距離D/2だけ離れており、第3平面1003から受光面111側に距離D/2だけ離れている。したがって、第3平面1004は、第1平面1001から、距離T−(D/2)だけ離れていることになる。
【0018】
距離D(開口部201の深さ)は、距離T(絶縁膜200の厚み)の1/4以上であることが好ましく、距離Tの1/2以上であることがより好ましい。また、距離Dは、入射光の波長よりも長いことが好ましい。典型的な入射光の波長は緑色の0.55μmであり、距離Dは0.55μm以上であることが好ましい。したがって、絶縁膜200の厚みは0.55μmより厚いことが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましい。絶縁膜200を極端に厚くすると応力が大きくなったり、製造に時間がかかったりするため、実用的には、絶縁膜200の厚みTは10μm以下、好ましくは5.0μm以下とする。
【0019】
開口部201の開口端(第2平面1002内での側面204)の幅(直径)は、典型的には10μm以下であり、5.0μm以下であることが好ましい。開口端の幅が、2.0μm以下である場合に本発明は特に顕著な効果を奏する。
【0020】
また、第2平面1002と第4平面1004との間に位置する仮想的(幾何学的)な平面として、第5平面1005と、第6平面1006を定義する。第5平面1005は、第2平面1002から受光面111側に距離D/8だけ離れている。第6平面1006は、第4平面1004から第2平面1002側に距離D/8だけ離れている。したがって、第6平面1006は第5平面1005から距離D/4だけ離れている。
【0021】
開口部201内には光路部材220が位置している。光路部材220は透明である。なお、ここでいう透明とは実質的に光電変換を行う波長域の光に対して一定の透明度を有していればよく、波長選択性を有していてもよい。光路部材220の屈折率は、絶縁膜200の屈折率よりも高いことがより好ましい。ただし、光路部材220の一部の屈折率が絶縁膜200の屈折率以下であってもよい。なお本発明において単に屈折率という場合には絶対屈折率を意味している。屈折率は波長によって異なるが、少なくとも光電変換部110で信号電荷を生成し得る光の波長に対する屈折率である。さらに、光電変換素子1がカラーフィルタ等の波長選択層を有している場合には、当該波長選択層を透過した光の波長を用いる。しかしながら、実用的には、入射光の波長を人間の眼が敏感な緑色の波長である0.55μmとみなしても差支えなく、以下の説明では、0.55μmに対する屈折率として説明する。
【0022】
光路部材220の形状は実質的に開口部201の形状と略一致する。本実施形態では、光路部材220は円錐台形状を呈するが、開口部201の形状に応じて、角錐台形状でもよいし、角柱形状、円柱形状でもよい。光路部材220は中心軸に対して回転対称軸であることが好ましい。光路部材220の幅(直径)は、典型的には10μm以下であり、5.0μm以下であることが好ましい。開口端の幅が、2.0μm以下である場合に本発明は特に顕著な効果を奏する。
【0023】
光路部材220は、開口部201の底面203と接している。なお、開口部が貫通穴の場合には、光路部材220は光電変換部110の受光面111と接する。光路部材220の、開口部201と接する面を下面と呼ぶ。光路部材220に入射した光は、光路部材220の下面から光電変換部110へ向けて出射される。したがって、光路部材220の下面を出射面と云うこともできる。光路部材220の下面は底面203と界面を成し、光路部材220の下面は底面203と実質的に同一平面(第3平面1003)内に位置する。したがって、図面上では、下面の代わりに底面203のみを示している。光路部材220が光電変換部110の受光面111に接する(T=D)と、光電変換部110でノイズが生じやすくなる場合があるため、光路部材220は光電変換部110と接しないように、T>Dとすることが好ましい。
【0024】
光路部材220は開口部201の側面204に囲まれていることが好ましい。光路部材220の屈折率が絶縁膜200の屈折率よりも高く、光路部材220と絶縁膜200とが界面を成す場合には、幾何光学的には当該界面で全反射を生じ、光路部材220内に入射光を導き結果として受光面111に導くことができる。また、光路部材220と側面204の間に光路部材220に比べて不透明な膜を設ける場合には、光路部材220の屈折率が絶縁膜200の屈折率以下であってもよい。不透明膜を設けると、迷光の原因となる、側面204から漏れ出す光の量を低減できる。さらに、不透明膜が金属光沢を有する膜(金属膜等)であると、当該不透明膜で金属反射を生じ、光路部材220内に入射光を導き結果として受光面111に導くことができる。なお、当然ながら、不透明膜は底面203の少なくとも一部を覆わず、底面203と光路部材220は接するべきである。不透明膜が光路部材220と側面204との間に位置すると、光路部材220に入射せずに絶縁膜200に入射した光は、光路部材220には入射しない。一方、不透明膜を設けずに、光路部材220が絶縁膜200の側面204と接していると、絶縁膜200に入射した光を、絶縁膜200から光路部材220に入射させることが可能となる。そのため、不透明膜を設けるよりも、光路部材220が側面204と接していることが好ましい。
【0025】
以上説明したように、少なくとも光路部材220と絶縁膜200とが光導波路構造をなし、光路部材220が光導波路構造の光路としての機能を有する。
【0026】
光路部材220の材料(透明材料)は、有機材料(樹脂)でもよいが、無機材料は化学的に安定であるために好ましい。無機材料としては、窒化シリコン(Si)、酸窒化シリコン(SiO)、酸化シリコン(SiO)、酸化チタン(TiO)が好適であり、特に酸窒化シリコン、窒化シリコンが好ましい。光路部材220は複数の材料で構成されていてもよく、光路部材220は屈折率分布を有していてもよい。実用的には、光路部材220の屈折率は1.6以上であることが好ましい。また「透明」とは実質的に光電変換を行う波長域の光に対して十分な光透過性を有していれはよい。
【0027】
光電変換素子1は、第2平面1002の、受光面111側とは反対側に集光部材300が設けられている。図1では、集光部材300の集光機能310を模式的に両凸レンズ形状を用いて示している。詳細は後述するが、集光部材300は少なくとも1つの集光レンズ体層を含む。典型的には、集光部材は、複数の層で構成されてなる積層部材である。集光部材300の一部である層301は、集光部材300の複数の層のうちの、光路部材220から最も離れた層(最外層)である。最外層301が集光機能を有していてもよい。集光部材300は光軸501を有している。図1では光軸501が第1平面1001に垂直である例を示したが、第1平面1002に対して傾いていてもよい。
【0028】
集光部材300の一部である層302は集光部材300の最内層である。最内層302は、光路部材220と接している。最内層302が集光機能を有していてもよい。最内層302の材料は光路部材220と同じ材料であってもよい。その場合、互いに同じ透明材料からなる光路部材220と最内層302とが一体となって、光路部材220と最内層302との境界が明確に観察できない場合がある。上述したように、光路部材220は開口部201の内側(第2平面1002と第3平面1003との間)に位置し、最内層302は開口部201の外側に存在する。したがって、透明材料が、開口部201の内側に存在するか、開口部201の外側に存在するかを判断することにより、光路部材220と最内層302を区別することができる。開口部201の内側と外側の区分は、光電変換素子1の断面の観察画像において、絶縁膜200の上面202を開口部201上まで仮想的に延長する(側面204の上端同士を仮想的に直線で結ぶ)ことにより可能である。
【0029】
なお、「同じ材料」とは、化学量論的組成が同じである材料を意味している。そのため、化学量論的組成からずれた(すなわち、非化学量論的組成が異なっている)材料や、結晶性、材料密度、不純物(1wt%以下)およびその濃度が異なっている材料も「同じ材料」とみなすことができる。例えば、窒化シリコンの化学量論的組成比はSi:N=3:4であるが、化学量論的組成比が同じである範囲内において、実際のSiとNの比が互いに異なる材料同士も同じ材料とみなす。なお、化学量論的組成が異なる材料は同じ材料ではない。例えば、一酸化チタン(TiO)と二酸化チタン(TiO)はいずれも酸素とチタンの化合物(酸化チタン)ではあるが、化学量論的には異なる材料である。
【0030】
最外層301は、1.000以上1.001以下の屈折率を有する媒質400と界面を成している。実質的には、媒質400は空気や窒素等の気体、もしくは真空である。なお、媒質400は光電変換素子1とは別体であって、光電変換素子1の一部ではない。
【0031】
光電変換素子1では、媒質400から集光部材300へ、集光部材300の光軸501と平行に入射した光が実質的に1点に集光される。この時の集光される点が焦点500である。図1には、光軸501を長鎖線で、入射光の模式的な光路を、符号を付さない短鎖線で示している。
【0032】
本発明では、集光部材300は、光路部材220の内部に焦点500を形成する。さらに、焦点500は第2平面1002と第4平面1004との間の領域に位置する。開口部201のこの領域は、開口部201の上部に位置するから、上部領域と称する。なお、焦点500は第2平面1002内と第4平面1004内には位置しない。
【0033】
図2には、ある光電変換素子において、入射光量を一定とした場合に光電変換部で生成される信号電荷の量(感度)と焦点500の位置との関係をシミュレーションによって求めた結果を示す。焦点500の位置は、集光部材300の構成を異ならせることによって変化させている。また、線Aと線Bは第2平面1002内における開口部201の開口端面積(上面202で囲まれる領域の面積)を異ならせたものであり、線Bが線Aよりも開口端面積が小さい。そのため、線Bの感度は線Aよりも低くなっている。
【0034】
図2から理解されるように、焦点500が第2平面1002と第4平面1004との間の領域(上部領域)に位置すると、上部領域外に位置する場合に比べて感度が高くなる。
【0035】
このことは、光が直線的(幾何光学的)ではなく、波動光学的に回折を生じながら伝搬するためであると考えられる。回折光は、開口端内に収まらない光、すなわち絶縁膜200に入射してしまい迷光となって、損失の原因となり得る。しかしながら、焦点500が第2平面1002と第4平面1004との間の領域に位置することにより、回折光をも開口部201内に入射させることができ、感度が向上すると推測される。このような波動光学的な回折は、開口端の幅が2.0μm以下である場合に、特に影響が大きくなる。
【0036】
さらに、焦点500は、第2平面1002と第5平面1005との間に形成されるよりも、第5平面1005と第4平面1004との間に形成されることが好ましい。これは、第2平面1002と第5平面1005の間に焦点500が位置すると、集光部材300に光が斜めに入射した場合に、焦点500が光路部材220内に形成されない可能性が生じるためである。
【0037】
また、線Aと線Bとの比較から理解されるように、開口端面積が小さくなると、(線A→線B)、焦点500が第2平面1002と第4平面1004との間の領域から離れた場合の感度の低下が顕著になる。上部領域のうち、第5平面1005と第6平面1006との間の領域(上部中央領域)に、焦点500が位置するとより好ましい。焦点500が上部中央領域にあると、特に感度が高くなる。さらに、例えば製造上の誤差により、開口端面積自体にばらつきがあったり、開口端の中心と光軸501とのずれ量によって実質的な開口端面積にばらつきが生じたりしても、感度のばらつきを低減することができる。
【0038】
図1に示す様に、集光部材300の最外層301へ入射する光には、最外層301の、光軸501に近い中心領域510へ入射する光と、光軸501から遠い周辺領域520へ入射する光が存在する。中心領域510は開口部201に対応した領域である。詳細には、中心領域510は、主面101に平行な方向(第1平面1001および第2平面1002に平行な方向)において、開口端からの正射影に入る領域である。一方、周辺領域520は上面202に対応した領域である。詳細には、主面101に平行な方向(第1平面1001および第2平面1002に平行な方向)において、上面202からの正射影の領域に入る領域である。
【0039】
幾何光学的には中心領域510へ入射した光は、光路中に光束を発散する要要素(例えば凹レンズや光軸から遠ざかる方向の屈折)が無い限りは、開口端からの正射影から外れることはない。しかしながら、波動光学的には上記したように回折が生じ、光束が開口端からの正射影から外れる場合があり、損失の原因となりうる。そのため、本発明では、中心領域510へ入射した光の焦点が上部領域に位置する。また、周辺領域520へ入射した光の焦点が上部領域に位置することが好ましい。なお、集光部材300が収差を有していると、周辺領域520に入射した光の焦点が、中心領域510に入射した光の焦点と異なる場合がある。そのような場合でも、周辺領域520に入射した光の焦点が上部領域に位置することが好ましく、上部中央領域に位置することがより好ましい。
【0040】
焦点500の位置は、集光部材300の光軸501が貫く複数の層の各層の材料の物性(主に屈折率)、表面形状、厚さ、複数の層の積層順序、入射光の波長、およびこれらの組み合わせによって決まる。さらには、波動光学的には、集光部材300以外の構造、例えば絶縁膜200や光路部材220の屈折率や形状も焦点500の位置に影響を与える。
【0041】
焦点500を上部領域に位置せしめるためには、光学解析シミュレーターを用いて、集光部材300の構成を決定する必要がある。焦点500の位置は、上記したように波動光学的な要因の影響を受けるため、光学解析シミュレーターとしては、時間領域差分法(FDTD法:Finete Difference Time Domain method)を用いた三次元波動光学解析シミュレーターを用いることが望ましい。上記図2は、時間領域差分法による解析結果である。なお、解析に当たっては、集光部材300の構造の一部(特に形状)を近似的な構成に置き換えても実用上の問題はない。
【0042】
以下に、焦点500を上部領域に位置せしめるための具体的な構成を、所謂CMOS型等の画素増幅型光電変換素子を例に第1〜8実施形態として説明する。なお、以下の実施形態は、光路部材220の屈折率が絶縁膜200の屈折率よりも高い形態である。
【0043】
各材料に関して、典型的には、窒化シリコン(Si)の屈折率は1.8〜2.3、酸窒化シリコン(SiO)の屈折率は1.6〜1.9、酸化シリコン(SiO)の屈折率は1.4〜1.5、BPSG、PSG、BSGの屈折率は1.4〜2.0である。以下、便宜的に、酸化シリコンの屈折率<酸窒化シリコンの屈折率<窒化シリコンの屈折率、が満たされているものとして説明する。なお、一般的な樹脂の屈折率は1.3〜2.0であり、種類によって異なる。
【0044】
以下の実施形態に限定されることなく、本発明の思想を逸脱しない範囲において、第1〜第8実施形態の構造の組み合わせ、変形、一部の構成の省略、材料の変更を行うことができる。本発明は、所謂、裏面照射型光電変換素子や、電荷転送型(CCD型)の光電変換素子に適用することもできる。
【0045】
<第1実施形態>
図3は、第1実施形態の光電変換素子1の一例を説明するための断面模式図である。
【0046】
N型シリコンからなる半導体基板100の中にN型半導体領域112が設けられている。N型半導体領域112の下部を含む周囲にはN型半導体領域113が設けられている。N型半導体領域113の下部にはP型半導体領域114が設けられている。N型半導体領域112が主に電荷蓄積領域として機能することができる。N型半導体領域112とN型半導体領域113とP型半導体領域114とが光電変換部110の一部を構成することができる。
【0047】
そして、主面101の上には、絶縁膜200が設けられている。絶縁膜200は多層膜である。絶縁膜200は、主面101側から順に、第1絶縁層205、第2絶縁層206、第3絶縁層207、第4絶縁層208、第5絶縁層209、第6絶縁層210、第7絶縁層211、第8絶縁層212、第9絶縁層213、第10絶縁層214、第11絶縁層215が順次積層されてなる。また絶縁膜200は、第2絶縁層206の一部と第3絶縁層207の一部との間に位置した第12絶縁層216を含んでいる。
【0048】
これらの絶縁層のうち、第2絶縁層206、第5絶縁層209、第9絶縁層213、および、第11絶縁層215は酸化シリコン(SiO)からなる。第3絶縁層207はBPSG(硼燐珪酸塩ガラス)からなるが、BPSGに代えて、PSG(燐珪酸塩ガラス)、BSG(硼珪酸塩ガラス)でもよい。これらの絶縁層のうち、第1絶縁層205、第4絶縁層208、第6絶縁層210、第8絶縁層212、および、第10絶縁層214、第12絶縁層216は窒化シリコン(Si)からなる。絶縁膜200の厚みは、これら第1〜11絶縁膜の厚みを合計したものとなり、距離Tも実質的に絶縁膜200の厚みと等しくなる。ここでは、第11絶縁層215が絶縁膜200の上面202を成す。また、第12絶縁層216が開口部201の底面203を成す。
【0049】
絶縁膜200の内部には配線217が設けられている。配線217は多層配線であってもよく、図3では、配線217が、第1配線層2171と、第2配線層2172と、コンタクト層2173(ビア)とで構成された例を示している。コンタクト層2173は、第1配線層2171と第2配線層2172との間に位置しており、第1配線層2171と第2配線層2172同士を接続している。配線層を2層とした例を示したが、第1配線層2171と第2配線層2172との間にさらに配線層を設けて3層以上の配線層としてもよい。配線217には銅やアルミニウム、タングステン、タンタル、チタン、ポリシリコンなどの導電材料を用いることができる。典型的な配線217は不透明であり、金属光沢を有している。半導体基板100の主面101上にMOS構造を有する転送ゲートのゲート電極218が設けられている。ゲート電極218はポリシリコンからなり、不図示のコンタクト層(プラグ)を介して第1配線層2171に接続されている。
【0050】
配線217について、一例を挙げる。不図示のプラグはタングステンを主成分とし、シングルダマシン法によって形成することができる。第1配線層2171は銅を主成分とし、シングルダマシン法によって形成することができる。コンタクト層2173および第2配線層2172は銅を主成分とし、デュアルダマシン法によって一体的に形成することができる。この際、第4絶縁層208、第6絶縁層210、第8絶縁層212はエッチング制御層および銅の拡散防止層として、第10絶縁層214は銅の拡散防止層として用いることができる。なお、第1配線層2171、第2配線層2172、コンタクト層2173、プラグは、絶縁膜200との界面近傍に、タンタル等を主成分とするバリアメタルを有することができる。
【0051】
開口部201の側面204の平面形状(第1平面1001に平行な平面内での開口部201の形状)は閉ループ状であり、円形や、楕円形、角丸四角形、四角形、六角形とすることができる。ここでは、円形である。したがって、底面203も円形である。開口部201の開口端(第2平面1002内での側面204)の幅(直径)は、典型的には10μm以下であり、5.0μm以下であることが好ましい。開口端の幅が、2.0μm以下である場合に本発明は特に顕著な効果を奏する。本実施形態では、開口端の幅を、1.5μm程度としている。
【0052】
開口部201の断面形状(第1平面1001に垂直な平面内での開口部201の形状)は、図3に示す様な逆台形や、台形(正台形)、長方形、正方形、あるいはこれらを組み合わせた階段形とすることができる。
【0053】
ここでは、第3絶縁層207が存在する範囲内に開口部201の底面が位置している。換言すれば、第3平面1003内に第3絶縁層207が位置している。開口部201の底面(第3平面1003)は、第1配線層2171よりも半導体基板100の近くに位置していることが好ましい。
【0054】
光路部材220は開口部201の内側に位置している。そして、光路部材220の下面(出射面)は、開口部201の底面と接している。そのため、開口部201の底面203と光路部材220の下面は実質的に一致し、光路部材220の下面は、第3平面1003内に位置している。光路部材220は、絶縁膜200で囲まれている。詳細には、光路部材220は、絶縁膜200の第3絶縁層207、第4絶縁層208、第5絶縁層209、第6絶縁層210、第7絶縁層211、第8絶縁層212、第9絶縁層213、第10絶縁層214および、第11絶縁層215で囲まれている。光路部材220の形状は実質的に開口部201の形状と略一致する。本実施形態では、光路部材220は円錐台形状を呈するが、開口部201の形状に応じて、角錐台形状でもよいし、角柱形状、円柱形状でもよい。
【0055】
光路部材220および絶縁膜200の形成方法は特に限定されない。
典型的には、開口部201のない多層絶縁膜にエッチング加工を施して開口部201を有する絶縁膜200を形成した後に、開口部201内に光路部材220の材料を堆積させて光路部材220を形成する第1の形成方法を採用することができる。他には、絶縁膜200を構成する各絶縁層を形成するごとに、各絶縁層をエッチングして開口を設ける工程と、光路部材220の材料を開口内に配置する工程とを繰り返す第2の形成方法を採用してもよい。また、先に光路部材220を配置した後に、光路部材220の周囲に絶縁膜200の一部の絶縁層を配置する第3の形成方法を採用してもよい。
【0056】
本実施形態では、第1の形成方法を採用した例を示している。第12絶縁層216は、絶縁膜200の一部を構成し、開口部201の底面203を構成している。第12絶縁層216は、受光面111の上部及びゲート電極218の一部の上部に配置されている。平面方向における第12絶縁層216の面積は、底面203の面積よりも大きい。また、平面方向における第12絶縁層216の面積は、第1絶縁層205、第2絶縁層206の面積よりも大きい。
【0057】
第12絶縁層216は絶縁膜200に開口部201を形成する際のエッチングストッパーとして機能しうる。光路部材220と光電変換部110との間に、光路部材220の屈折率と光電変換部110の屈折率との間の屈折率を有する層(ここでは、酸化シリコンからなる第2絶縁層206)を設けると、光路部材220から光電変換部110への透過率が向上する。
【0058】
ここでは、第3絶縁層207が存在する範囲内に開口部201の底面が位置している。換言すれば、第3平面1003内に第3絶縁層207が位置している。開口部201の底面(第3平面1003)は、第1配線層2171よりも半導体基板100の近くに位置していることが好ましい。
【0059】
なお、絶縁膜200が多層膜である場合、多層膜の一部の層の屈折率が光路部材220の屈折率以上であってもよい。このような層を高屈折率絶縁層と呼ぶ。一方、光路部材220の屈折率よりも低い屈折率を有する、多層膜の残りの層を低屈折率絶縁層と呼ぶ。
【0060】
本実施形態の場合、光路部材220が酸窒化シリコンであるから、絶縁膜200のうちの、窒化シリコンからなり開口部201の側面204を成す、第4絶縁層208、第6絶縁層210、第8絶縁層212、および、第10絶縁層214は高屈折率絶縁層である。例えば、光路部材220の屈折率が1.9程度である場合、第4絶縁層208、第6絶縁層210、第8絶縁層212、および、第10絶縁層214の屈折率が2.0程度であると、これらの絶縁層は、高屈折率絶縁層である。なお、第1絶縁層205も高屈折率絶縁層であるが、開口部201の側面204を成していない。
【0061】
しかしながら、このような光路部材220の屈折率以上の層(高屈折率絶縁層)が開口部201の側面204の大部分を形成することは好ましくない。これは、光路部材220に入射した光が高屈折率絶縁層内を伝搬して、開口部201から漏れる可能性があるためである。そのため、高屈折率絶縁層が成す開口部201の側面204は、開口部201の側面204全体の面積の半分未満とすること好ましく、1/4未満とすることがより好ましい。換言すれば、多層膜のうちの光路部材220の屈折率より低い層(低屈折率絶縁層)が、開口部201の側面204全体の面積の半分以上、好ましくは3/4以上を成すことが好ましい。各層が成す側面204の面積は、各層の厚みや側面204の角度を適宜設定することで調整できる。1つの低屈折率絶縁層の厚みは、典型的には0.10μm以上0.60μm以下である。1つの高屈折率絶縁層の厚みは、光路部材220に入射する光の波長をλ、高屈折率絶縁層の屈折率をN0Hとして、λ/2N0H以下であることが好ましく、λ/4N0H以下であることがより好ましい。高屈折率絶縁層の厚みは、典型的には0.010μm以上0.10μm以下である。
【0062】
集光部材300の構成を説明する。集光部材300は第2平面1002から順次、中間層319、カラーフィルタ層327、レンズ基体層328、レンズ体層329が積層されてなる。
【0063】
レンズ基体層328の入射側表面(図3における上面)は、入射側に向かって凸の理想球面、略球面、あるいは非球面(以下、これらを合わせて曲面と呼ぶ)を成している、すなわち凸レンズ形状を有している。これにより、レンズ体層329に入射した光は光軸501に近づき、集光される。レンズ基体層328とレンズ体層329は互いに同じ有機材料(樹脂)からなり、レンズ基体層328とレンズ体層329は互いに接している。つまり、レンズ基体層328とレンズ体層329は実質的に一体として設けられている。レンズ基体層328とレンズ体層329の境界を観察することは困難な場合が多い。その場合には、レンズ体層329の曲面領域の端同士を結んだ平面を仮想的な境界に設定することができる。なお、レンズ基体層328を省略して、レンズ体層329とカラーフィルタ層327が接する構成としてもよい。
【0064】
レンズ体層329の材料の物性(特に屈折率)、曲面の形状(特にその曲率、高さ、幅)は焦点500の位置に大きく影響する。概して、曲率を大きくするほど、焦点500の位置は第1平面1001から遠くなる。レンズ基体層328の材料の物性(特に屈折率)および厚みは、集光された光がレンズ基体層328内で光軸501に近づく距離に影響するため、焦点500を決定する要因の一つとなる。典型的なレンズ体層329の屈折率は、1.6〜2.0である。
【0065】
カラーフィルタ層327は、色材を含有する有機材料(樹脂)からなる。色材としては染料を用いることができるが、顔料を用いてもよい。カラーフィルタ層327の材料の物性(特に屈折率)および厚みは、レンズ基体層328とカラーフィルタ層327との界面で屈折した光がカラーフィルタ層327中で光軸501に近づく距離に影響するため、焦点500を決定する要因の一つとなる。典型的なカラーフィルタ層327の厚みは0.1〜1.0μm、屈折率は1.4〜1.6である。
【0066】
中間層319は、光路部材220と同じく酸窒化シリコンからなり、中間層319は光路部材220と接している。そのため、中間層319と光路部材220は実質的に一体として設けられている。中間層319は図1を用いて説明した最内層302に相当する。中間層319は、レンズ体層329と光路部材220との距離を調整する機能を有しており、中間層319の厚みを適切に設定することで、焦点500の位置を制御することができる。典型的な中間層319の厚みは、0.080μm以上である。一方、中間層319を極端に厚くすると光路部材220への入射光量が減少する。中間層319の厚みは開口部201の深さD以下であることが好ましく、開口部201の深さDの半分以下であることがより好ましい。また、中間層319の厚みは入射光の波長をλ、中間層319の屈折率をN319として、λ/4N319以上2λ/N319以下とすることが好ましい。典型的な中間層319の厚みは0.20μm以下である。
【0067】
<第2実施形態>
図4を用いて第2実施形態を説明する。本実施形態は、集光部材300の最内層である中間層319の屈折率が光路部材220の屈折率よりも高くなっている。ここでは、光路部材220は酸窒化シリコンからなり、中間層319は窒化シリコンからなる。この点以外は第1実施形態と同じであり、説明を省略する。ここでは
本実施形態では、中間層319の屈折率が光路部材220の屈折率よりも高くなっている。そのため、中間層319から光路部材220に入射する光のうち、中間層319と光路部材220との界面に斜めに入射する光はスネルの法則に従って、光軸501へ近づく方向に屈折する。したがって、焦点500の位置を第1実施形態に比べて、上部中央領域に近づけることができる。
【0068】
なお、第1実施形態に比べて、中間層319とカラーフィルタ層327との屈折率差が大きくなっているため、中間層319内では、光軸501から離れる方向への屈折が生じやすい。したがって、第1実施形態に比べて中間層319の厚みは薄くすることが好ましい。
【0069】
<第3実施形態>
図5を用いて第3実施形態を説明する。本実施形態では、集光部材300は、第1レンズ体層329と第2レンズ体層324の2つのレンズ体層を有している。詳細には、第2実施形態における第2平面1002と、カラーフィルタ層327との間に、第2平面1002側から順に、第1中間層319、第2レンズ基体層323、第2レンズ体層324、第2レンズ体コーティング層325、第2中間層326が設けられている。第1レンズ基体層328、第1レンズ体層329は、第1、第2実施形態のレンズ基体層328、レンズ体層329と同じであってよい。第1中間層319は、第2実施形態の中間層319と同じであってよく、窒化シリコンからなる。また、光路部材220および中間層319は窒化シリコンからなる。これらの点以外は第2実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0070】
第2中間層326は有機材料(樹脂)からなり、第1レンズ体層329と第2レンズ体層324との距離を調整する機能を有している。また、第2レンズ体層324の曲面形状に対して平坦化されており、カラーフィルタ層327や第1レンズ基体層328、第1レンズ体層329での光路の傾きを抑制する機能も有している。第2中間層326の最薄部の厚みは、典型的には0.1〜0.5μmである。第2中間層326の屈折率は1.4〜1.5である。
【0071】
第2レンズ基体層323及び第2レンズ体層324は有機材料(樹脂)からなり、第2レンズ体層324は凸レンズ形状(平凸レンズ形状)を有している。なお、第2レンズ体層324の屈折率は、第2中間層326の屈折率よりも高い。そのため、第1レンズ体層329で集光された光をさらに集光することができ、焦点の位置を、上部中央領域に近づけることができる。
【0072】
また、本実施形態では、光路部材220に窒化シリコンを用いている。したがって、第1、第2実施形態に比べて光路部材220と絶縁膜200の低屈折率絶縁層(第3絶縁層207第5絶縁層209、第9絶縁層213、および、第11絶縁層215)との屈折率差が大きくなっている。そのため、光路部材220から絶縁膜200の低屈折率絶縁層へ漏れ出す光の量を低減することができる。また、第1,2実施形態に比べて光路部材220と絶縁膜200の高屈折率絶縁層(第4絶縁層208、第6絶縁層210、第8絶縁層212、および、第10絶縁層214)との屈折率差が小さくなっている(ほぼ等しくなっている)。そのため、光路部材220から絶縁膜200の高屈折率絶縁層へ漏れ出す光の量を低減することができる。
【0073】
第2レンズ体コーティング層325は酸化シリコンからなり、第2レンズ体層324の屈折率と第2中間層326の屈折率の間の屈折率を有している。このように、第2レンズ体コーティング層325が第2レンズ体層324の屈折率と第2中間層326の屈折率の間の屈折率を有すると、第2中間層326から第2レンズ体層324への入射光が増加する。これは、第2レンズ体コーティング層325を設けない場合に生じ得る第2中間層326と第2レンズ体層324との界面での反射を抑制し、透過率を高くできるためである。
【0074】
第2レンズ体コーティング層325の厚みは、第2レンズ体層324の厚みより小さく、第2レンズ体層324の厚みの1/2以下であることが好ましい。第2レンズ体コーティング層325の厚みを、入射光の波長の(M−0.5)/4N325倍〜(M+0.5)/4N325倍とすると好ましく、入射光の波長のM/4N325倍とすることがより好ましい。ここで、Mは奇数、N325は第2レンズ体コーティング層325の屈折率である。Mは1又は3が好ましく、1がより好ましい。第2レンズ体コーティング層325の厚みをこのように設定すると、第2レンズ体層324の表面での反射光と、第2レンズ体コーティング層325の表面での反射光との干渉を弱めることができ、波動光学的な視点での反射抑制機能を奏する。
【0075】
<第4実施形態>
図6を用いて第4実施形態を説明する。本実施形態では、集光部材300は、低屈折率層321を有している。詳細には、第3実施形態における第1中間層319と第2レンズ基体層323との間に、低屈折率層321が設けられている。低屈折率層321は酸窒化シリコンからなる。また、第2レンズ基体層323及び第2レンズ体層324は窒化シリコンからなる。これらの点以外は第3実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0076】
第2レンズ体層324が窒化シリコンからなると、樹脂からなる場合に比べて、第2レンズ体層324の屈折率を高くすることができる。そのため、第2中間層326と第2レンズ体層324との屈折率差が、第3実施形態に比べて大きくなり、集光能力(パワー)を高くすることができる。そのため、焦点500をより好適な位置に設定することができる。
【0077】
第3実施形態では、第1中間層319の屈折率が第2レンズ基体層323の屈折率がよりも高くなっているため、第1中間層319と第2レンズ基体層323の界面では、スネルの法則に従って光軸501から遠ざかる方向の屈折が生じる。第4実施形態では、仮に低屈折率層321を設けずに、第1中間層319と第2レンズ基体層323が接していたとしても、双方が窒化シリコンからなるために両者の屈折率差が小さい(あるいは無い)ために、光軸501から遠ざかる方向の屈折を低減できる。さらに、第4実施形態では第2レンズ基体層323と第1中間層319との間に、第2レンズ基体層323と界面を成す低屈折率層321が設けられている。低屈折率層321の屈折率は、第2レンズ基体層323の屈折率よりも低い。そのため、第2レンズ基体層323と低屈折率層321との界面では、スネルの法則に従って光軸501に近づく方向に屈折が生じる。そのため、製造上の制約のために集光能力向上に限界がある第2レンズ体層324を補完するように、焦点500をより好適な位置に設定することができる。なお、第2レンズ基体層323を省略して、第2レンズ体層324と低屈折率層321が接する形態としても同様の効果を得ることができる。また、第2レンズ基体層323と低屈折率層321との間に、低屈折率層321の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層を設けたとしても、当該高屈折率層と低屈折率層321との界面では、同様に、光軸501に近づく方向の屈折を生じせしめることができる。
【0078】
一方、低屈折率層321の屈折率が第1中間層319の屈折率よりも低いため、低屈折率層321と第1中間層319の界面では、スネルの法則に従って光軸501から遠ざかる方向の屈折が生じる。しかしながら、低屈折率層321と第1中間層319の界面は、第2レンズ基体層323と低屈折率層321との界面よりも光路部材220に近い。そのため、低屈折率層321と第1中間層319の界面での屈折による焦点500の位置への影響は第2レンズ基体層323と低屈折率層321との界面での屈折に比べて小さい。
【0079】
実用的には、低屈折率層321の屈折率は、第2レンズ基体層323(あるいは第2レンズ体層324)の屈折率の0.95倍以下であることが好ましく、0.85倍以下であることが好ましい。第3実施形態のように、第2レンズ基体層323の材料に樹脂を用いた場合にも本実施形態のように低屈折率層321を設けることもできる。第2レンズ基体層323(あるいは第2レンズ体層324)が窒化シリコンからなる場合には、実用的には、低屈折率層321の屈折率は、1.40以上1.60以下であることが好ましい。
【0080】
<第5実施形態>
図7を用いて第5実施形態を説明する。本実施形態では、集光部材300は、第1中屈折率層322と第2中屈折率層320を有している。
詳細には、第4実施形態における第2レンズ基体層323と低屈折率層321との間に第1中屈折率層322が設けられており、低屈折率層321と中間層319との間に第2中屈折率層320が設けられている。第1中屈折率層322および第2中屈折率層320の材料は酸窒化シリコンからなり、低屈折率層321の材料は酸化シリコンである。この点以外は第4実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0081】
第1中屈折率層322の上面は第2レンズ基体層323の下面と界面を成しており、第1中屈折率層322の屈折率は、第2レンズ基体層323の屈折率よりも低い。低屈折率層321の上面は第1中屈折率層322の下面と界面を成しており、低屈折率層321の屈折率は、第1中屈折率層322の屈折率よりも低い。そのため、第1中屈折率層320は、第2レンズ基体層323の屈折率と低屈折率層321の屈折率の間の屈折率を有している。第2中屈折率層320の上面は低屈折率層321の下面と界面を成しており、第2中屈折率層320の屈折率は、低屈折率層321の屈折率より高い。第2中屈折率層320の下面は第1中間層319の上面と界面を成しており、第2中屈折率層320の屈折率は、第1中間層319の屈折率よりも低い。そのため、第2中屈折率層320は、低屈折率層321の屈折率と、第1中間層319の屈折率の間の屈折率を有している。
【0082】
第4実施形態の場合、第2レンズ基体層323と低屈折率層321の屈折率差により、第2レンズ基体層323と低屈折率層321との界面で入射光の反射が生じる場合がある。また、低屈折率層321と第1中間層319の屈折率差により、低屈折率層321と第1中間層319の界面で入射光の反射が生じる場合がある。この時の反射率Rは、R=(N321−N319/(N321+N319で表すことができる。ここでN321は低屈折率層321の屈折率、N319は第1中間層319の屈折率である。
【0083】
第5実施形態では、第2レンズ基体層323と第1中屈折率層322との屈折率差と、中屈折率層322と低屈折率層321との屈折率差の双方が、第2レンズ基体層323と低屈折率層321との屈折率差よりも小さい。したがって、第2レンズ基体層323から低屈折率層321への透過率を向上でき、低屈折率層321へ入射する光量を増加させることができる。
【0084】
また、低屈折率層321と第2中屈折率層320との屈折率差と、第2中屈折率層320と第1中間層319との屈折率の双方が、低屈折率層321と第1中間層319との屈折率差よりも小さい。したがって、低屈折率層321から第1中間層319への透過率を向上でき、第1中間層319へ入射する光量を増加させることができる。
【0085】
本実施例でも、実用的には、低屈折率層321の屈折率は、第2レンズ基体層323(あるいは第2レンズ体層324)の屈折率の0.95倍以下であることが好ましく、0.85倍以下であることが好ましい。低屈折率層321の屈折率は、1.40以上1.60以下であることが好ましい。
【0086】
低屈折率層321の厚みは60nm以上500nm以下であることが好ましく、80nm以上200nm以下であることがより好ましい。また、第1中屈折率層322の厚みは、20nm以上300nm以下であることが好ましく、40nm以上150nm以下であることがより好ましい。第2中屈折率層320の厚みも第1中屈折率層322と同様に、20nm以上300nm以下であることが好ましく、40nm以上150nm以下であることがより好ましい。
【0087】
第1中屈折率層322の屈折率N322は、(N323+N322)/4以上であることが好ましく、3×(N323+N322)/4以下であることも好ましい。ここで、N323は第1第2レンズ基体層323の屈折率である。第1中屈折率層320の屈折率N320は、(N319+N320)/4以上であることが好ましく、3×(N319+N320)/4以下であることも好ましい。
【0088】
第2レンズ基体層323の屈折率が第1中間層319の屈折率よりも高い場合、第1中屈折率層322の屈折率を第2中屈折率層320の屈折率よりも高くすることが好ましい。すなわち、N321<N320<N322<N319<N323とすることが好ましい。逆に、第2レンズ基体層323の屈折率が第1中間層319の屈折率よりも低い場合、第1中屈折率層322の屈折率を第2中屈折率層320の屈折率よりも低くすることが好ましい。すなわち、N321<N322<N320<N323<N319とすることが好ましい。このように、第1中屈折率層322と第2中屈折率層320の屈折率を、その上下の部材の屈折率に合せて異ならせることで、第2レンズ基体層323から第1中間層319への光の透過率を向上することができ、光電変換装置1の感度を向上することできる。
【0089】
第1中屈折率層322の厚みを、入射光の波長をλとして、(M−0.5)λ/4N322〜(M+0.5)λ/4N322倍とすると好ましく、入射光の波長のM/4N322倍とすることがより好ましい。ここで、Mは奇数、N322は第1中屈折率層322の屈折率である。Mは1又は3が好ましく、1がより好ましい。第1中屈折率層322の厚みをこのように設定すると、第1中屈折率層322と第2レンズ基体層323との界面での反射光と、第1中屈折率層322と低屈折率層321との界面での反射光の干渉を弱める、波動光学的な視点での反射抑制機能を奏する。
【0090】
同様に、第2中屈折率層320の厚みを、入射光の波長の(M−0.5)/4N320倍〜(M+0.5)/4N320倍とすると好ましく、入射光の波長のM/4N320倍とすることがより好ましい。ここで、Mは奇数、N320は第2中屈折率層320の屈折率である。
【0091】
第4実施形態で説明したように光軸501へ近づくような屈折を、各層の厚みが限られた範囲で大きくする上では、第1中屈折率層322の厚みと低屈折率層321の厚みを次のように設定すると良い。まず、第2レンズ基体層323と第1中屈折率層322との相対屈折率と、第1中屈折率層322と低屈折率層321との相対屈折率とを比較する。相対屈折率が大きい方の出射側の媒質(第1中屈折率層322と低屈折率層321の一方)の厚みを、小さい方の出射側の媒質(第1中屈折率層322と低屈折率層321の他方)の厚みよりも大きくする。なお、ここで相対屈折率は、(入射側媒質の屈折率)/(出射側媒質の屈折率)であり、本実施形態では1より大きい値である。なお、これまでの説明において、単に「屈折率」と記載した場合には、絶対屈折率を意味するものとする。スネルの法則によれば、相対屈折率が大きいほど出射角が大きくなるため、上記相対屈折率が大きい方の出射側媒質の厚みを大きくすることにより、出射光をより大きく光軸501に近づけることができる。例えば、第2レンズ基体層323の屈折率が2.00、第1中屈折率層322の屈折率が1.72、低屈折率層321の屈折率が1.46の場合には、2.00/1.72<1.72/1.46である。したがって、低屈折率層321の厚みを、第1中屈折率層322の厚みよりも大きくすればよい。
【0092】
例えば、第2レンズ基体層323を屈折率が2.00の窒化シリコンとし、第1中間層319を屈折率が1.84の窒化シリコンとすることができる。したがって、第1中屈折率層322の屈折率を第2中屈折率層320の屈折率よりも高くすることにより、第2レンズ基体層323の下面と第1中間層319の上面での反射光を低減することができる。例えば第1中屈折率層322を屈折率が1.73の酸窒化シリコンとし、低屈折率層321を屈折率が1.46の酸化シリコンとし、第2中屈折率層320を1.65とすることができる。
【0093】
上記した第1中屈折率層322と低屈折率層321の関係は、第1中屈折率層322が第2レンズ基体層323と界面を成す場合について説明したが、第2レンズ基体層323が設けられずに第1中屈折率層322が第2レンズ体層324と界面を成す場合でも同様である。また、上記した第2中屈折率層320と低屈折率層321の関係は、第2中屈折率層320が第1中間層319と界面を成す場合について説明したが、第1中間層319が設けられずに第1中屈折率層322が光路部材220と界面を成す場合でも同様である。
【0094】
<第6実施形態>
図8を用いて第6実施形態を説明する。本実施形態では、集光部材300は、第5実施形態における第1レンズ体層329上に第1レンズ体コーティング層330を有している。そのため、第1レンズ体コーティング層330が図1を用いて説明した最外層301に相当する。この点以外は第5実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0095】
第1レンズ体コーティング層330はフッ素系樹脂からなり、異物の付着等を抑制することができる。第1レンズ体コーティング層330は、第1レンズ体層329の屈折率と媒質400の屈折率の間の屈折率を有している。媒質400の屈折率は1.001以下であり、第1レンズ体コーティング層330の屈折率は1.001より高く、第1レンズ体層329の屈折率よりも低い。
第1レンズ体コーティング層330の厚みは、第2レンズ体コーティング層325と同様に設定することができる。
【0096】
<光電変換装置>
図9を用いて、光電変換装置10およびそれを用いた撮像システム30の一例を説明する。光電変換装置10は、例えば、イメージングセンサーや測距センサー、測光センサーとしての利用が可能である。光電変換装置10が、イメージングセンサーと測距センサー、測光センサーとしての機能のうちの複数の機能を兼ね備えていてもよい。
【0097】
光電変換装置10と、光電変換装置10から出力された電気信号が入力され、当該電気信号を処理する信号処理装置20とを備える撮像システム30を構築することもできる。図9は、撮像システム30の一例を示す図である。電気信号は、光電変換装置10のOUT1、OUT2から出力される。ここでは、出力経路をOUT1、OUT2の2つを設けた例を示したが、出力経路は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。電気信号は、信号処理装置20のINに入力される。電気信号は、電流信号であってもよいし電圧信号でもよく、また、アナログ信号であってもよいしデジタル信号であってもよい。
【0098】
光電変換装置10をイメージセンサーとして用いる場合には、信号処理装置20を、INに電気信号を入力することにより、OUT3から画像信号を出力するように構成する。光電変換装置10を焦点検出用の測距センサーとして用いる場合には、信号処理装置20を、INに電気信号を入力することにより、光電変換装置10の前方に設けられたレンズを駆動するための駆動信号を、OUT3から出力するように構成する。光電変換装置10を測光センサーとして用いる場合には、信号処理装置20を、INに電気信号を入力することにより、シャッターを制御して露光時間を調整する制御信号をOUT3から出力するように構成する。なお、上記シャッターはメカニカルシャッターでも電子シャッターでもよいが、電子シャッターの場合は、実質的に光電変換装置10を制御することになる。本発明の光電変換装置10をイメージセンサーとして用いると特に好適であり、良好な画像を得ることができる。
【0099】
図9に示した撮像システム30における光電変換装置10の一例を説明する。本例では、光電変換装置10として画素増幅型光電変換装置をイメージセンサーとして用いている。図9において、光電変換装置10は、画素領域611と、垂直走査回路612と、2つの読み出し回路613と、2つの水平走査回路614と、2つの出力アンプ615を備えている。画素領域611以外の領域を周辺回路領域とも称する。
【0100】
画素領域611には、複数(多数)の光電変換素子1が2次元状に配列されている。各光電変換素子1が1画素に相当する。互いに隣り合う光電変換素子1同士の間隔(画素ピッチ)は、典型的には、10μm以下であり、5.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であると、本発明は特に顕著な効果を奏する。周辺回路領域には、読み出し回路613、例えば、列アンプ、CDS回路、加算回路等が設けられ、垂直走査回路612によって選択された行の画素から垂直信号線を介して読み出された信号に対して増幅、加算等を行う。列アンプ、CDS回路、加算回路等は、例えば、画素列又は複数の画素列毎に配置される。水平走査回路614は、読み出し回路613の信号を順番に読み出すための信号を生成する。出力アンプ615は、水平走査回路614によって選択された列の信号を増幅して出力する。
【0101】
以上の構成は、光電変換装置10の一つの構成例に過ぎず、これに限定されるものではない。読み出し回路613と水平走査回路614と出力アンプ615とは、2系統の出力経路(OUT1、OUT2)を構成するため、画素領域611を挟んで上下に1つずつ配置されている。
【0102】
代表的な撮像システム30としてはスチルカメラやビデオカメラ等のカメラが挙げられる。撮像システム30は、光電変換装置10を移動可能にする移動手段(不図示)を備えることもできる。移動手段としては、電動モーターやレシプロエンジン、ロータリーエンジン等を動力源とする車輪が挙げられる。また、移動手段としては、プロペラ、タービンエンジン、ロケットエンジン等の推進装置も挙げられる。このような、移動手段を備える撮像システムは、自動車や鉄道車両、船舶、航空機、人工衛星等に、光電変換装置10および信号処理装置20を搭載することにより実現が可能である。
【0103】
図10を用いて光電変換装置10の一例を説明する。本実施形態では、光電変換装置10は、パッケージ700と、ボンディングワイヤ710と、リード720と、封止層331とを備えている。リード720が上記したOUT1、OUT2となっている。
【0104】
基板100はパッケージ700に不図示の接着剤(ダイボンドペースト)を介してパッケージ700に固定されている。パッケージ700の材料には、セラミックやプラスチックを用いることができる。基板100は透明な封止層331で覆われている。封止層331はレンズ体層329(あるいは第1レンズ体層329)の屈折率よりも低い屈折率を有する透明な樹脂からなる。封止層331と基板100との間には、絶縁膜200や集光部材300の一部を成す不図示の層が位置している。そして、封止層331は媒質400と接しており、封止層331が、図1を用いて説明した集光部材300の最外層301に相当する。封止層331は外部からの衝撃や汚染から基板100を保護することができる。当然、図10で示した構成から、封止層331を削除(封止層331を媒質400に置き換える)してもよいし、またさらには、媒質400を介して透明板を基板100と対向させてもよい。その場合には、第1〜5実施形態のレンズ体層329(あるいは第1レンズ体層329)や第6実施形態の第1レンズ体コーティング層330が最外層301に相当する。
【実施例】
【0105】
第5実施形態として説明した、図7のような構造を有する光電変換素子1を、1.5μm間隔で2次元状に配列(正方格子状に配列)することで、光電変換装置10を作製した。絶縁膜200の厚み(距離T)を1.5μmとし、開口部201の深さ(距離D)を1.4μmとした。なお、第1絶縁層205、第4絶縁層208、第6絶縁層210、第8絶縁層212、および、第10絶縁層214の厚みをすべて0.07μm以下とした。開口部201の上端の直径を0.8μmとした。光路部材220の屈折率は1.9程度であった。第1レンズ体層329の高さを0.5μm、幅を1.5μmとした。表面はほぼ理想球面であった。第2レンズ体層324の高さを0.27μm、第2レンズ基体層323の厚みを0.23μm、第2レンズ体層324の幅を1.2μmとした。第2レンズ体層324の表面はほぼ理想球面であった。また、第1レンズ体層329の先端と第2レンズ体層324の先端との距離を1.7μmに設定した。第2レンズ体層324の先端と、第2平面1005との距離を0.7μmに設定した。なお、第1中屈折率層322(酸窒化シリコン)の厚みを0.08μm、低屈折率層321(酸化シリコン)の厚みを0.10μm、第2中屈折率層320(酸窒化シリコン)の厚みを0.08μm、第2中間層319(窒化シリコン)の厚みは0.2μmとした。時間領域差分法を用いたシミュレーションの結果、焦点500の位置は、光路部材220の内部の、受光面111から約1.1μm離れた位置に形成されることが分かった。このような光電変換装置10をイメージセンサーとして用いてビデオカメラを作製したところ、良好な画像を得ることができた。
【符号の説明】
【0106】
100 半導体基板
101 主面
110 光電変換部
111 受光面
200 絶縁膜
201 凹部
202 上面
203 底面
204 側面
220 光路部材
300 集光部材
329 レンズ層(第1レンズ層)
324 第2レンズ層
321 低屈折率層
500 焦点
501 光軸501
510 中心領域
520 周辺領域
1001 第1平面
1002 第2平面
1003 第3平面
1004 第4平面
1005 第5平面
1006 第6平面
1007 第7平面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた光電変換部と、
開口部および前記開口部から延在した上面を有し、前記基板を覆う絶縁膜と、
前記開口部内に位置し、前記光電変換部の受光面に対応した領域に下面を有する光路部材と、
少なくとも1つの集光レンズ体層を含む集光部材と、を備え、
前記上面は、前記受光面を含む第1平面に平行で前記第1平面から距離Tだけ離れた第2平面内に位置しており、
前記下面は、前記第1平面に平行で前記第2平面から前記受光面側に前記距離T以下の距離Dだけ離れた第3平面内に位置しており、
前記集光部材は、前記集光部材の、前記開口部に対応した領域に入射する光の焦点を、前記光路部材の内部であって、前記第2平面と、前記第1平面に平行で前記第2平面から前記受光面側に距離D/2だけ離れた第4平面と、の間に形成することを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記集光部材は、前記上面に対応した領域に入射する光の焦点を、前記光路部材の内部であって、前記第2平面と前記第4平面との間に形成することを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記集光部材は、前記集光部材の前記開口部に対応した領域に入射する光の焦点を、前記受光面に平行で前記第2平面から前記受光面側に距離D/8だけ離れた第5平面と、前記受光面に平行で前記第3平面から前記受光面側とは反対側に距離D/8だけ離れた第6平面と、の間に形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記距離Dが0.55μm以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記距離Dが1.0μm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記光路部材の少なくとも一部は前記絶縁膜の屈折率よりも高い屈折率を有しており、かつ、前記光路部材は、前記絶縁膜に囲まれているとともに前記絶縁膜に接していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記絶縁膜は、前記光路部材の屈折率以上の屈折率を有するとともに前記側面を成す高屈折率絶縁層と、前記光路部材の屈折率未満の屈折率を有するとともに前記側面を成す低屈折率絶縁層と、を含む、複数の絶縁層からなり、前記低屈折率絶縁層は、前記側面の面積の1/2以上を成すことを特徴とする請求項6に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記集光部材は、第1レンズ体層と、前記第1レンズ体層と前記光路部材との間に位置する第2レンズ体層とを含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記集光部材は、前記第2レンズ体層と前記光路部材との間に位置する、前記第2レンズ体層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層を含むことを特徴とする請求項8に記載の光電変換素子。
【請求項10】
前記集光部材は、前記第2レンズ体層と前記低屈折率層との間に位置する、前記第2レンズ体層の屈折率と前記低屈折率層の屈折率の間の屈折率を有する第1中屈折率層と、
前記光路部材と前記低屈折率層との間に位置する、前記光路部材の屈折率と前記低屈折率層の屈折率の間の屈折率を有する第2中屈折率層と、を含むことを特徴とする請求項9に記載の光電変換素子。
【請求項11】
前記第2レンズ体層の屈折率が前記光路部材の屈折率よりも高く、前記第1中屈折率層の屈折率が前記第2中屈折率層の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項10に記載の光電変換素子。
【請求項12】
前記第2レンズ体層および前記光路部材が窒化シリコンからなり、前記低屈折率層が酸化シリコンからなることを特徴とする請求項9に記載の光電変換素子。
【請求項13】
前記第1レンズ体層の上に設けられた、前記第1レンズ体層の屈折率よりも低い屈折率を有する第1レンズ体コーティング層と、前記第2レンズ体層の上に設けられた、前記第1レンズ体層の屈折率よりも低い屈折率を有する第2レンズ体コーティング層と、の少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光電変換素子の複数が、前記基板上に配列されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項15】
請求項14に記載の光電変換装置と、前記光電変換装置から出力された電気信号が入力され、前記電気信号を処理する信号処理装置と、を有することを特徴とする撮像システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−182433(P2012−182433A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223304(P2011−223304)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】