説明

光電変換素子

【課題】
天然素材を活用した、安価で効率のよい新規な光電変換システムを開発する。
【課題を解決するための手段】
β-1,3-グルカンをインターフェースに用い、光機能性部位としてのポルフィリンで化学修飾し且つ電子受容体であると同時に高いキャリア輸送能を有している単層カーボンナノチューブ(SWNT)と複合体化した光電変換素子。β-1,3-グルカンとして、エチレングリコール部位などが結合されたカードランが好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然素材を用いる新規な光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
石油をはじめとする天然資源の枯渇問題が懸念される現代において、無尽蔵かつクリーンなエネルギーの開発は大きな課題である。その中で特に注目されているエネルギーの一つに太陽エネルギーがある。その基盤となる光電変換システムに主に利用されているのは無機半導体であり、良く知られているものにシリコン系太陽電池(単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン)があるが、これらは、生産コストが依然割高なため、コスト低減を目指した精力的な開発が継続されている。
【0003】
近年、新しいタイプの太陽電池として色素増感太陽電池が注目されている。それらは製造コストがシリコン系太陽電池に比べて格段に安く、光電変換効率も比較的高いため、低コストかつ高効率な太陽電池として期待されている。
また環境汚染や資源枯渇といった問題から、天然由来の物質を機能性材料の素材として見直す動きも同様に高まってきている。これらの背景から、天然素材に由来する光電変換素子を用いる光電変換システムの構築が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、天然素材を活用した、安価で効率のよい新規な光電変換素子を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
β-1,3-グルカンは溶媒の種類によってランダムコイルと3重螺旋間の可逆的な高次構造変化を伴い、ランダムコイルから3重螺旋への巻き戻り過程において、その螺旋内部にナノ電子材料向けに注目されている素材である単層カーボンナノチューブ(SWNT)を取り込むことができる(非特許文献1)。β-1,3-グルカンの中でも、最も単純な構造を有する化合物であるカードランは、安価かつ化学修飾が容易で(非特許文献2)、低コストの天然由来の機能性材料開発といった観点から非常に有用な素材であると考えられる。
【非特許文献1】M. Numata, M. Asai, K. Kaneko, A.-H.Bae, T. Hasegawa, K. Sakurai, S. Shinkai,J. Am. Chem. Soc., 127, 5875-5884 (2005).
【非特許文献2】T. Hasegawa,M. Umeda, M. Numata, C. Li,A.-H. Bae, T. Fujisawa, S. Haraguchi,K. Sakurai, S. Shinkai,Carbohydr. Res., 341, 35-40(2006).
【0006】
SWNTは電子受容体であると同時に高いキャリア輸送能を有しており、光電変換システムに利用価値の高い材料である。これまでにもPratoらによって色素/SWNT複合体を利用した効率の高い光電変換システムが報告されている(非特許文献3,4および5)。
【非特許文献3】G. M. A. Rahman, D. M. Guldi, R. Cagnoli, A. Mucci, L. Schenetti, L. Vaccari, M. Prato,J. Am. Chem. Soc., 127, 10051-10057 (2005).
【非特許文献4】D. M. Guldi, G. M. A. Rahman, M. Prato,N. Jux, S. Qin, W. Ford, Angew.Chem. Int. Ed., 44, 2015-2018 (2005).
【非特許文献5】D. M. Guldi, G. M. A. Rahman, F. Zerbetto, M. Prato, Acc. Chem. Res., 38, 871-878 (2005).
【0007】
本発明は、如上の知見を基に研究を重ねた結果、天然多糖類の一種であるβ-1,3-グルカンをインターフェースに用い、光機能性部位としてのポルフィリンと、電子受容体である単層カーボンナノチューブ(SWNT)とを複合体化することに成功し本発明を導き出した。
【0008】
かくして、本発明は、側鎖がポルフィリンで修飾されたβ-1,3-グルカンと単層カーボンナノチューブとの複合体から成る光電変換素子(光電変換素子材料)を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に従えば、光機能性部位としてポルフィリンで(化学)修飾されたβ-1,3-グルカンにより単層カーボンナノチューブ(SWNT)が可溶化されたβ-1,3-グルカン/SWNT複合体から光電変換素子が構成される。β-1,3-グルカンとしては、シゾフィランのように側鎖に比較的多くのグルコース残基を有するものも使用可能であるが、安価で側鎖への化学修飾の容易な点からカードランを用いることが好ましい。カードランを用いる場合には、側鎖がポルフィリンで化学修飾されていることに加えて、側鎖に親水性部位(溶解性向上のための置換基)が結合されているものを用いる。そのような親水性部位は、特に限定されるものではないが、入手と合成が容易である等の理由からエチレングリコール部位が好適な例として挙げられる。図2には、側鎖がポルフィリンおよび3個のエチレングリコール単位を有する官能基で化学修飾されたカードランを合成するための反応スキームを示している(なお、以下、このようなポルフィリンとエチレングリコール部位で化学修飾されたカードランをCUR-Por-oeg3と略記する)。
【0010】
本発明の光電変換素子を構成するポルフィリン修飾β-1,3-グルカン/SWNT複合体は、本発明者らが先に開示した手法に従って調製することができる(例えば、非特許文献1参照)。すなわち、ポルフィリン修飾β-1,3-グルカンとSWNTを極性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド:DMSO)中で混合し、必要に応じて超音波照射を行いながら水を添加すればよい。
【0011】
図1は、以上のようにして得られる本発明に従う複合体の例であるCUR-Por-oeg3/SWNTの模式図(上)とそれを光電変換素子として用いる光電変換システムの例のスキームを示すものである。CUR-Por-oeg3のポルフィリンが光で励起され、電子受容体であるSWNTへ電子を受け渡し、電荷分離状態が生じる。この状態から電極へ電子を取り出す。基底状態にあるポルフィリンには、バルク中の犠牲試薬(トリエタノールアミン)から新たに電子が供給される。このようなサイクルで光電流が流れる。
【0012】
このように、本発明の光電変換素子は、再生可能な資源である天然高分子材料を機能性材料の構成要素としており、資源涸渇問題の観点から有意義である。その中でもカードランはコストパフォーマンスに優れた素材であることからその利用価値は格段に高い。更に本発明におけるCUR-Por-oeg3は、SWNTと組み合わせることで光電変換能を有することと同時に、SWNTの規則正しい配向を達成しうる。コンポジットが規則正しく配向した薄膜は、コンポジットがランダムに集積した薄膜と比較して光の利用効率向上が期待され、光電変換システムに極めて有利な構造である可能性を持つ。
以下、本発明の特徴をさらに具体的に示すために、実施例を記す。
【実施例1】
【0013】
CUR-Por-oeg3の合成およびSWNTとの複合体の調製 図2Aおよび図2Bに示したスキームによりCUR-Por-oeg3を以下のように合成した。
<化合物1の合成>
ベンズアルデヒド、4-[(トリメチルシリル)エチニル]1.5g(7.41mmol)、4-ピリジンアルデヒド3.97g(37.1mmol, 5.0eq.)にプロピオン酸150mLを加え、遮光下80℃で1時間加熱攪拌した。ピロール2.98g(44.4mmol, 6.0eq.)を加え、11時間還流した。溶媒を減圧留去して、黒色タール状の残渣を少量のクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (クロロホルム:メタノール=20:1)にて粗精製し、再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=3:1)にて精製した。溶媒を減圧留去し、紫色粉末の目的物を得た(586.3mg, 11%)。MALDI-TOF-Mass calcd
for C46H35N7Si:713.9, obsd [M+H]+ : 715.0. 1H NMR(600MHz,
CDCl3, TMS, r.t.);δ(ppm)=9.06
(m-pyridyl, 6H), 8.89-8.83 (β-pyrrole, 8H), 8.16-8.14 (o-pyridyl,
m-phenyl, 8H), 7.89
(o-phenyl, 2 H), 0.48 (TMS, 9H)
【0014】
<化合物2の合成>
化合物2 208mg (0.291mmol)、ヨウ化メチル1.24g (8.74mmol, 30eq.)に20 mLのDMFを加え、室温で72時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルムで数回洗浄し、紫色粉末の目的物を得た(331mg, 99%)。1H NMR(600MHz, DMSO-d6, TMS. r.t.);δ(ppm)=9.47(m-pyridyl,
6H), 9.16-9.02(β-pyrrole,
8H), 8.99(o-pyridyl, 6H), 8.23 (o-phenyl, 2H),
7.96(m-phenyl, 2H), 4.77(N-CH3, 9H), 0.34(TMS, 9H).
【0015】
<化合物3の合成>
化合物3 331mg(0.29mmol)、酢酸亜鉛(II)533mg(2.9mmol, 10eq.)、炭酸カリウム100mg(0.72mmol, 2.5eq.)に50mLのメタノールを加え、室温にて24時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残渣を少量の蒸留水に溶解させ、過剰に加えた酢酸亜鉛を透析(MWCO:500, 3 water change)にて除去した。凍結乾燥により溶媒を留去し、緑色粉末の目的物を得た(236.2 mg, 73%)。1H NMR (600MHz, DMSO-d6, TMS. r.t.):δ(ppm)=9.43(m-pyridyl,
6H), 8.97(β-pyrrole,
4H), 8.87(o-pyridyl, β-pyrrol, 10H), 8.17(o-phenyl, 2 H), 7.94 (m-phenyl, 2H),
4.70(N-CH3, 9H), 4.49(Ph-CCH, 1H).
【0016】
<化合物4の合成>
トリエチレングリコールモノメチルエーテル2.00g
(12.1mmol)を3mLのTHFに溶解させ、アルゴン雰囲気下、氷浴で0℃に冷却したt-ブトキシカリウム1.56g (13.9mmol, 1.2eq.)のTHF(25mL)懸濁液に加えた。50mLのTHFに溶解させたプロパルギルブロミド1.82mL(24.2mmol, 2.0 eq.)を加え、反応系を徐々に室温に戻しながら18時間攪拌した。反応混合物を75mLの飽和食塩水:蒸留水=3:1 (v/v)で希釈し、50mLの酢酸エチルによる抽出を3回行った。有機層を40mLの飽和食塩水:蒸留水=1:1(v/v)で1回、65mLの飽和食塩水で1回洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=1:1(v/v))にて精製し、淡黄色オイル状の目的物を得た(1.23g, 50%)。1H NMR;δ=4.33 (CH3-O-CH2-CH2-,
2H), 3.70-3.64 (CH3-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O,
10H), 3.55(HCC-CH2-O, 2H), 3.38 (CH3, 3H), 2.42 (CCH, 1H)
【0017】
<CUR-Por-oeg3の合成>
CUR-N3
(50mg, 0.26mmol (monomer unit))をDMSO 3mlに溶解させ、室温で2時間攪拌して完全に溶解させた。水0.3ml、3-アミノ-1-プロパノール0.3ml、ヨウ化銅(II)(3.4 mg, 5mol%)、アスコルビン酸(13.3mg, 25mol%)、化合物3、化合物4の混合溶液を加え、室温で18時間攪拌した。蒸留水で透析を行った後(MWCO: 8,000, 3 water change)凍結乾燥により溶媒を留去し、緑色固体として目的物を得た(113.8 mg、73%)FTIR (powder, cm-1):3352, 2872, 1638, 1460, 1350, 1075, 796, 552; Anal. Calcd. for C232H336N44O72I6Zn2:C, 48.15;H, 5.80;N, 9.39;Found:C, 49.2; H, 5.40; N, 10.1 %
【0018】
以上のようにして合成したCur-Por-oeg3
0.3mgを、SWNT 0.35mgとともにDMSO 500μLに分散させた。この溶液に超音波照射を行いながら蒸留水1500μLを徐々に加えていった。各成分の組成比を表1に示す。調製したサンプルを蒸留水で十分に洗浄した透析膜(MWCO:3,500)に移して透析操作を行い、溶媒を完全に水に置換した。続いて、遠心分離操作(12,000rpm×60min)によりバンドル化の度合いが高いCUR-Por-oeg3/SWNT複合体を沈殿させ、上澄みを回収した。この遠心分離操作を2回行い、CUR-Por-oeg3/
SWNT複合体水溶液を得た。
【0019】
【表1】

【0020】
CUR-Por-oeg3/SWNT複合体の吸収スペクトル、蛍光スペクトルを測定した。図3(左)に吸収スペクトルの結果を、同(右)に蛍光スペクトルの結果を示す。吸収スペクトルよりSWNTに由来する吸収及びポルフィリンに由来する吸収が確認された。また蛍光スペクトル測定の結果ポルフィリン由来の蛍光の消光が見られ、ポルフィリンからSWNTへの電子移動が起こっている可能性が示唆された。
【実施例2】
【0021】
CUR-Por-oeg3/SWNTのモルフォロジー
1. AFM 観察 調製したCUR-Por-oeg3/SWNT複合体水溶液を2倍希釈した。この水溶液2μLをマイカ基盤にキャスト、スピンコーティング後真空乾燥した。図4にCUR-Por-oeg3/SWNTのAFM像を、(左)高さ像、(右) phase像、スケールは2μm×2μmで示した。一部SWNTがバンドル化しているような箇所が見られるものの、SWNTの多くはその高さが1nm前後であり、ほぼ孤立分散している。更に、バックグラウンドにはフリーのCUR-Por-oeg3が殆ど見られなかった。このことから、SWNTとCUR-Por-oeg3は表1の仕込み比においてほぼ過不足なく複合化しているということが示された。
【0022】
2. TEM 観察 調製したCUR-Por-oeg3/SWNT複合体水溶液を2倍希釈した。この水溶液10μLを穴あきTEMグリッドにキャスト後真空乾燥した。ファイバー(図5、左)や規則性のある会合体(図5、右)を示唆するモアレ縞が確認された。モアレ縞の見られる右図のような会合体中においては、SWNTが規則的に配列している可能性が高く、特に注目に値する。
【0023】
3. 偏光顕微鏡観察 調製したCUR-Por-oeg3/SWNT複合体水溶液をガラス基盤上にキャストし、真空乾燥した。図6(左)にCUR-Por-oeg3/SWNTの光学顕微鏡像、同(右)に左図と同領域を直交偏光板挿入後観察した像を示す。スケールは100μmである。数μm程度の会合体が至る所に見られ、偏光顕微鏡観察の結果、これらの会合体が複屈折性を示すことが示唆された。この結果は、TEM観察で見られたモアレ縞を支持するデータ、すなわち観察される会合体が規則正しい構造を有していることを強く支持している。
【0024】
4. CUR-Por-oeg3/SWNTのラマンスペクトル測定 上記偏光顕微鏡観察で見られた会合体にSWNT が含まれているか調べるために、ラマンスペクトル測定を行った(レーザーラマン分光光度計NRS-2000型、励起波長:514 nm)。図7よりSWNTのG-band及びD-bandに帰属されるピークが確認された。この結果より、偏光顕微鏡で見られた規則性の高い会合体にSWNTが含まれていることが明らかとなり、SWNTの規則的な配列が強く示唆された。
【実施例3】
【0025】
CUR-Por-oeg3/SWNTを用いた光電変換
1. CUR-Por-oeg3/SWNT 修飾ITO電極の作成 親水処理を施したITO基盤にCUR-Por-oeg3/SWNT複合体をキャスト、真空乾燥してCUR-Por-oeg3/SWNT複合体修飾ITO電極を作成した。実際の操作を以下に示す。
・ITO基盤の親水化処理
ITO基盤をエタノールで20分間超音波洗浄した後、濃硫酸に20分間浸した。その後解放系
で沸騰した過酸化水素水:アンモニア水=2:1に20分間浸した。蒸留水に2分間浸して洗浄した。この操作を2回繰り返した後、蒸留水で基盤を洗浄した。
・CUR-Por-oeg3/SWNT修飾ITO電極の作成
上記操作に従って親水処理を行ったITO基盤にCUR-Por-oeg3/SWNT複合体水溶液をキャストし、真空乾燥した。
【0026】
2. 光電流測定
溶媒: MeCN、[テトラエチルアンモニウム過塩素酸塩]=0.1M、[トリエタノールアミン]=0.05M、照射光の波長:440nm(0.154 mW/cm2)、電極電位:0.0V vs Ag/AgClの条件で測定した。図8のアクションスペクトルからポルフィリンに由来する光電流が発生していることが明らかとなった。また、光電変換効率を以下のようにして求めた。
【0027】
1)光電流の電子数の導出
光電流測定の結果、440nmの光照射時において流れた光電流は3.2 nA/cm2であった。これをクーロン量1.60×10-19で割ると、光電流の電子数 = (3.2×10-9)/(1.60×10-19) =
2.0×1010が得られる。
【0028】
2)吸収された光子数の導出
入射された光子数は、光量(0.154mW/cm2)を光子1つ当たりのエネルギーで割った値となる。440nmの光の場合、光子1つ当たりのエネルギーは、E=hc/λより(6.626×10-34)×(2.998×108)÷(440×10-9)=4.515×10-19 J)となる。吸収された光の割合は、1-10-Absで求められる。CUR-Por-oeg3/SWNT複合体修飾ITO電極の吸収スペクトルを図9に示す。これより電極に含まれるポルフィリン部位のみの、440nmにおける吸光度を求めるとその値は0.0228であるので、吸収された光の割合は1-100.0228=0.0511となる。
以上より、吸収された光子数=(0.154×10-3)÷(4.515×10-19)×0.0511=1.743×1013
となる。
【0029】
3)量子収率の導出
上記の結果より、量子収率=(2.0×1010)/(1.743×1013)=0.0011
0.11%という光電変換効率が得られた。
【0030】
〔比較例1〕
CUR-Por-oeg3、CUR-oeg3/SWNTを用いた参照実験
Cur-Por-oeg3のみ、およびポルフィリンを含まないCUR-oeg3/SWNT複合体をそれぞれ用いて参照実験を行った。測定条件は、溶媒:MeCN、[テトラエチルアンモニウム過塩素酸塩]=0.1M、[トリエタノールアミン]=0.05M、照射光の波長:440nm(0.154mW/cm2)、電極電位:0.0V vs Ag/AgClである。図10にCUR-Por-oeg3、及びCUR-oeg3/SWNT複合体修飾ITO電極の光電流On-Offサイクルを示す。また、図11にCUR-Por-oeg3、及びCUR-oeg3/SWNT複合体修飾ITO電極の吸収スペクトルを示す。これらの結果を元にして、CUR-Por-oeg3/SWNT複合体修飾ITO電極の光電変換効率の計算法と同様の手順で、CUR-Por-oeg3、及びCUR-oeg3/SWNT複合体修飾ITO電極の光電変換効率を算出した。その結果を表2に示す。これより、SWNTとポルフィリンが組み合わさって始めて効率の良い光電変換が達成できることが示された。
【0031】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は安価で、環境にやさしい光電変換システムの開発に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】CUR-Por-oeg3/SWNT複合体の模式図とそれを用いた光電変換システムのスキームを示す。
【図2A】CUR-Por-oeg3の合成スキームを示す(実施例1)。
【図2B】CUR-Por-oeg3を示す(実施例1)。
【図3】(左図) CUR-Por-oeg3/SWNT複合体及びCUR-oeg3/SWNT複合体の近赤外スペクトル測定結果(右図) CUR-Por-oeg3及びCUR-Por-oeg3/SWNT複合体の蛍光スペクトル測定結果を示す:溶媒:重水(CUR-Por-oeg3/SWNT)、光路長:0.10cm、測定温度:室温、蛍光スペクトルの励起波長:440nm(実施例1)。
【図4】CUR-Por-oeg3/SWNTのAFM像。(左) 高さ像、(右) phase像。スケールを示す:2μm×2μm(実施例2)。
【図5】いずれもCUR-Por-oeg3/SWNTのTEM像(実施例2)。
【図6】(左) CUR-Por-oeg3/SWNTの光学顕微鏡像、(右) 左図と同領域を直交偏光板挿入後観察した像を示す:Scale bar:100μm(実施例2)
【図7】CUR-Por-oeg3/SWNT複合体(偏光顕微鏡観察領域)のラマンスペクトル測定結果を示す(実施例2)。
【図8】CUR-Por-oeg3/SWNTのアクションスペクトル(挿入図)と、光電流のOn-Offサイクルを示す(実施例3)。
【図9】CUR-Por-oeg3/SWNT修飾ITO電極の吸収スペクトル(ベースラインとしてITO のみの吸収を差し引いてある)を示す(実施例3)。
【図10】(左) CUR-Por-oeg3修飾ITO電極、(右) CUR-oeg3/SWNT修飾ITO電極の光電流On-Offサイクルを示す(比較例1)。
【図11】(左) CUR-Por-oeg3修飾ITO電極、(右) CUR-oeg3/SWNT修飾ITO電極の吸収スペクトル(ベースラインとしてITOのみの吸収を差し引き済)を示す(比較例1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖がポルフィリンで修飾されたβ-1,3-グルカンと単層カーボンナノチューブとの複合体から成ることを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
β-1,3-グルカンがカードランであり、側鎖に親水性部位が結合されていることを特徴とする請求項1の光電変換素子。
【請求項3】
親水性部位としてエチレングリコール部位が結合されていることを特徴とする請求項2の光電変換素子。


【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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