説明

光電変換装置

【課題】電圧降下が小さいダイオードを得ること、及び、コンバータ回路の作製コストを抑制することを課題とする。
【解決手段】光電変換素子と、当該光電変換素子の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路とを有する光電変換装置において、当該スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、当該整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとを有する光電変換装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される発明の一様態は、光電変換装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力効果により、受けた光を直接電力に変換して出力する光電変換素子の一つとして、太陽電池が挙げられる(特許文献1参照)。太陽電池は、従来の発電方式のように、途中で熱エネルギーや運動エネルギーへのエネルギー変換の必要がない。
【0003】
さらに太陽電池を有し、該太陽電池で発電した直流電力を変換するコンバータ回路を、太陽電池の非受光面などに取り付けた光電変換装置が、小規模又は中規模の太陽光発電システムや非常用電源として注目されている(特許文献2又は特許文献3)。
【0004】
このようなコンバータ回路として、例えばDC−DCコンバータ(直流−直流変換器)やDC−ACコンバータ(直流−交流変換器)等が挙げられる(特許文献4又は特許文献5参照)。
【0005】
特許文献4あるいは特許文献5のコンバータ回路には、スイッチング素子及び整流素子が含まれている。該スイッチング素子としてトランジスタ、該整流素子としてダイオードが用いられる。このようなダイオードには、例えばpn接合を用いたダイオードが挙げられる(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−10667号公報
【特許文献2】特開平9−69647号公報
【特許文献3】特開2002−141539号公報
【特許文献4】特開2005−312158号公報
【特許文献5】特開2009−200372号公報
【特許文献6】特開2004−22639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献6に示されるように、pn接合を用いたダイオードは、電圧降下が大きい。
【0008】
上記問題を鑑み、開示される発明の一様態は、電圧降下が小さいダイオードを得ることを課題の一とする。
【0009】
特許文献4又は特許文献5に示されるコンバータ回路は、例えば、ダイオードやトランジスタを有する。該ダイオードやトランジスタはそれぞれ、別の工程で作製されるため、コンバータ回路の作製コストは大きい。
【0010】
上記問題を鑑み、開示される発明の一様態は、コンバータ回路の作製コストを抑制することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示される発明の一様態において、コンバータ回路に含まれる整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンのトランジスタを用いる。
【0012】
ノーマリオンのトランジスタは、チャネル形成領域に含まれる、一導電型を付与する不純物元素の濃度を制御することによって得ることができる。
【0013】
ノーマリオンのトランジスタのゲート電極に電圧を印加すると、トランジスタがオン状態となる。よってノーマリオンのトランジスタをダイオード接続したものをダイオードとして用いると、pn接合を用いたダイオードよりも電圧降下が小さい。
【0014】
ダイオード接続したノーマリオンのトランジスタは、pn接合を用いたダイオードよりも電圧降下が小さいので、電圧降下した分を補うために印加する電圧が、pn接合を用いたダイオードを用いた場合よりも小さい。ダイオード接続したノーマリオンのトランジスタでは、pn接合を用いたダイオードよりも電圧降下した分を補うために印加する電圧が小さいので、pn接合を用いたダイオードを用いた場合よりもコンバータ回路の消費電力が小さくなる。コンバータ回路の消費電力が小さくなると、光電変換装置の消費電力も小さくなる。
【0015】
以上から、ダイオード接続したノーマリオンのトランジスタをダイオードとして用いることは、電圧降下を抑制する点、電圧降下した分を補うために印加する電圧が小さくてよいという点、コンバータ回路の消費電力を抑制するという点、及び光電変換装置の消費電力を抑制するという点で好適である。
【0016】
また開示される発明の一様態では、コンバータ回路に含まれるスイッチング素子としてトランジスタ、整流素子としてダイオードを用いる。該ダイオードとして、当該トランジスタをダイオード接続したものを用いる。すなわち、コンバータ回路の整流素子とスイッチング素子を同じ材料及び同じ工程で作製することができる。
【0017】
整流素子とスイッチング素子を同じ材料及び同じ工程で作製できるので、作製コストを抑制することが可能である。
【0018】
開示される発明の一様態は、光電変換素子と、当該光電変換素子の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路を有する光電変換装置である。当該光電変換装置は、当該スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、当該整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを有することを特徴とする。
【0019】
開示される発明の一様態は、光電変換素子と、当該光電変換素子の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路を有する光電変換装置である。当該光電変換装置は、当該スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、当該整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを有する。当該第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、第1のエミッタ領域と、第1のチャネル形成領域と、第1のコレクタ領域を有し、当該第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、第2のエミッタ領域と、当該第1のチャネル形成領域とは異なる不純物濃度を有する第2のチャネル形成領域と、第2のコレクタ領域を有することを特徴とする。
【0020】
開示される発明の一様態は、太陽電池と、当該太陽電池の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路を有する光電変換装置である。当該光電変換装置は、当該スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、当該整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを有することを特徴とする。
【0021】
開示される発明の一様態は、太陽電池と、当該太陽電池の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路を有する光電変換装置である。当該光電変換装置は、当該スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、当該整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを有する。当該第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、第1のエミッタ領域と、第1のチャネル形成領域と、第1のコレクタ領域を有し、当該第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、第2のエミッタ領域と、当該第1のチャネル形成領域とは異なる不純物濃度を有する第2のチャネル形成領域と、第2のコレクタ領域を有することを特徴とする。
【0022】
開示される発明の一様態は、光電変換素子と、当該光電変換素子の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路を有する光電変換装置である。当該光電変換装置は、当該スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の電界効果型トランジスタと、当該整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の電界効果型トランジスタを有することを特徴とする。
【0023】
開示される発明の一様態は、光電変換素子と、当該光電変換素子の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路を有する光電変換装置である。当該光電変換装置は、当該スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の電界効果型トランジスタと、当該整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の電界効果型トランジスタを有する。当該第1の電界効果型トランジスタは、第1のソース領域及びドレイン領域と、第1のチャネル形成領域を有し、当該第2の電界効果型トランジスタは、第2のソース領域及びドレイン領域と、当該第1のチャネル形成領域とは異なる不純物濃度を有する第2のチャネル形成領域を有することを特徴とする。
【0024】
開示される発明の一様態は、太陽電池と、当該太陽電池の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路を有する光電変換装置である。当該光電変換装置は、当該スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の電界効果型トランジスタと、当該整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の電界効果型トランジスタを有することを特徴とする。
【0025】
開示される発明の一様態は、太陽電池と、当該太陽電池の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路を有する光電変換装置である。当該光電変換装置は。当該スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の電界効果型トランジスタと、当該整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の電界効果型トランジスタを有する。当該第1の電界効果型トランジスタは、第1のソース領域及びドレイン領域と、第1のチャネル形成領域を有し、当該第2の電界効果型トランジスタは、第2のソース領域及びドレイン領域と、当該第1のチャネル形成領域とは異なる不純物濃度を有する第2のチャネル形成領域を有することを特徴とする。
【0026】
開示される発明の一様態において、当該コンバータ回路は、DC−DCコンバータであることを特徴とする。
【0027】
開示される発明の一様態において、当該コンバータ回路は、コイル、及びコンデンサを有するDC−DCコンバータであることを特徴とする。
【0028】
なお本明細書において、ゲート電極に印加されるゲート電圧が0V、及び、ソース−ドレイン間に印加される電圧が少なくとも1Vの場合、ドレイン電流が流れていないとみなすことができるトランジスタをノーマリオフのトランジスタと定義する。また、ゲート電極に印加されるゲート電圧が0V、及び、ソース−ドレイン間に印加される電圧が少なくとも1Vの場合、ドレイン電流が流れているとみなすことができるトランジスタをノーマリオンのトランジスタと定義する。
【0029】
或いは、本明細書では、nチャネル型トランジスタにおいて、しきい値電圧の値が正であるトランジスタをノーマリオフのトランジスタと定義する。pチャネル型トランジスタのにおいて、しきい値電圧の値が負であるトランジスタをノーマリオフのトランジスタと定義する。また、nチャネル型トランジスタにおいて、しきい値電圧の値が負であるトランジスタをノーマリオンのトランジスタと定義する。pチャネル型トランジスタにおいて、しきい値電圧の値が正であるトランジスタをノーマリオンのトランジスタと定義する。
【0030】
より具体的には、本明細書では、nチャネル型トランジスタにおいて、ドレイン電流−ゲート電圧特性を測定し、ドレイン電流が1×10−12Aのときのゲート電圧が正であるトランジスタを、ノーマリオフのトランジスタと定義する。またnチャネル型トランジスタにおいて、ドレイン電流−ゲート電圧特性を測定し、ドレイン電流が1×10−12Aのときのゲート電圧が負であるトランジスタを、ノーマリオンのトランジスタと定義する。
【発明の効果】
【0031】
開示される発明の一様態のダイオードは、pn接合を用いたダイオードよりも電圧降下が小さい。pn接合を用いたダイオードよりも電圧降下が小さいので、当該ダイオードに電圧降下する分を補うために印加する電圧が小さくてよい。当該ダイオードに電圧降下する分を補うために印加する電圧が小さくてよいので、コンバータ回路の消費電力が小さくなる。コンバータ回路の消費電力が小さくなると、光電変換装置の消費電力も小さくなる。
【0032】
よって、ダイオード接続したノーマリオンのトランジスタをダイオードとして用いることは、電圧降下を抑制する点、電圧降下した分を補うために印加する電圧が小さくてよいという点、コンバータ回路の消費電力を抑制するという点、及び光電変換装置の消費電力を抑制するという点で好適である。
【0033】
また開示される発明の一様態では、コンバータ回路の整流素子とスイッチング素子を同じ材料及び同じ工程で作製することができる。
【0034】
コンバータ回路に含まれる整流素子とスイッチング素子を同じ材料及び同じ工程で作製できるので、コンバータ回路の作製コストを抑制することが可能である。コンバータ回路の作製コストを抑制できるので、光電変換装置の作製コストを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの断面図。
【図2】絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの断面図。
【図3】コンバータ回路の回路図。
【図4】ノーマリオンとノーマリオフの違いを示す図。
【図5】絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの作製方法を示す断面図。
【図6】絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの作製方法を示す断面図。
【図7】絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの作製方法を示す断面図。
【図8】絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの作製方法を示す断面図。
【図9】絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの断面図。
【図10】絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの上面図。
【図11】ゲート電圧とコレクタ電流の関係を示す図。
【図12】絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの断面図。
【図13】絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの断面図。
【図14】太陽電池の断面図。
【図15】コンバータ回路の回路図。
【図16】太陽光発電モジュールを示す上面図及び断面図。
【図17】太陽光発電モジュールを搭載した電動推進車両を示す図。
【図18】太陽光発電モジュールを用いた太陽光発電システムの例を示す図。
【図19】電界効果型トランジスタの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本明細書に開示された発明の実施の態様について、図面を参照して説明する。但し、本明細書に開示された発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本明細書に開示された発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に示す図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0037】
[実施の形態1]
本実施の形態の光電変換装置を、図1、図2、図3(A)〜図3(B)、図4、図5(A)〜図5(B)、図6(A)〜図6(B)、図7(A)〜図7(B)、図8(A)〜図8(B)、図9、図10、図11、図12、図13、図14、図19を用いて説明する。
【0038】
本実施の形態のコンバータ回路の一例を、図3(A)〜図3(B)を用いて説明する。本実施の形態で説明されるコンバータ回路は、直流電圧を直流電圧に変換するDC−DCコンバータである。
【0039】
図3(A)に示すコンバータ回路301は、スイッチング素子であるトランジスタ302、コイル303、整流素子であるダイオード309、コンデンサ305を有する昇圧回路である。
【0040】
コイル303の一方の端子は、光電変換素子307のp型半導体層側及びn型半導体層側の一方の電極に電気的に接続されている。コイル303の他方の端子はトランジスタ302のソースあるいはドレインの一方と電気的に接続されている。トランジスタ302のソースあるいはドレインの一方は、コイル303の他方の端子及びダイオード309の入力端子と電気的に接続されている。トランジスタ302のソースあるいはドレインの他方は、光電変換素子307のp型半導体層側及びn型半導体層側の他方の電極及びコンデンサ305の一方の端子と電気的に接続されている。コンデンサ305の他方の端子は、ダイオード309の出力端子及び出力端子OUTに電気的に接続されている。なお、光電変換素子307のp型半導体層側及びn型半導体層側の他方の電極、トランジスタ302のソースあるいはドレインの他方、及びコンデンサ305の一方の端子は接地されている。
【0041】
なお、上記トランジスタのゲートとは、ゲート電極及びゲート配線の一部または全部のことをいう。ゲート配線とは、少なくとも一つのトランジスタのゲート電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0042】
上記トランジスタのソースとは、ソース領域、ソース電極、及びソース配線の一部または全部のことをいう。ソース領域とは、半導体層のうち、抵抗値がチャネル形成領域より低い領域のことをいう。ソース電極とは、ソース領域に接続される部分の導電層のことをいう。ソース配線とは、少なくとも一つのトランジスタのソース電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0043】
上記トランジスタのドレインとは、ドレイン領域、ドレイン電極、及びドレイン配線の一部または全部のことをいう。ドレイン領域とは、半導体層のうち、抵抗値がチャネル形成領域より低い領域のことをいう。ドレイン電極とは、ドレイン領域に接続される部分の導電層のことをいう。ドレイン配線とは、少なくとも一つのトランジスタのドレイン電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0044】
また、本実施の形態において、トランジスタのソースとドレインは、トランジスタの構造や動作条件などによって互いに入れ替わるため、いずれがソースまたはドレインであるかを限定することが困難である。そこで、本書類(明細書、特許請求の範囲または図面など)においては、ソース及びドレインのいずれか一方をソース及びドレインの一方と表記し、他方をソース及びドレインの他方と表記する。
【0045】
トランジスタ302はスイッチング素子として機能する。またトランジスタ302のゲートは、コンバータ回路301の制御回路に接続されている。コンバータ回路301の制御回路からの信号により、トランジスタ302はオン状態あるいはオフ状態となる。
【0046】
スイッチング素子であるトランジスタ302がオン状態のとき、コイル303に流れ込む電流により、コイル303には励磁エネルギーが蓄えられる。
【0047】
トランジスタ302がオフ状態になると、コイル303に蓄えられた励磁エネルギーが放出される。コイル303から放出される励磁エネルギーに起因する電圧V2が、電圧V1に上積みされる。これによりコンバータ回路301は昇圧回路として機能する。
【0048】
スイッチング素子であるトランジスタ302がオン状態の時間をTon、トランジスタ302がオフ状態の時間をToffとする。出力電圧V2の値は、以下の(式1)で表される。
【0049】
V2=V1×(Ton+Toff)/Toff (式1)
【0050】
トランジスタ302がオン状態の時間Tonが長く、コイル303に蓄えたエネルギーが大きいほど、大電力を取り出すことができる。
【0051】
本実施の形態において、トランジスタ302として、ノーマリオフの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)を用いる。なお絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの詳細な構造及び作製方法については後述する。
【0052】
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、入力部がMOS構造で、出力部がバイポーラ構造のパワー用トランジスタであり、高耐圧及び大電流に適したトランジスタである。このため、コンバータ回路301のスイッチング素子であるトランジスタ302に好適である。
【0053】
本実施の形態において、ダイオード309は整流素子として機能する。本実施の形態では、該ダイオード309として、ダイオード接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを用いる。該ダイオード接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとして、トランジスタ302と同様の構造を有する絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを作製し、そのゲート電極とドレイン領域を電気的に接続すればよい。ダイオード309は、ノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをダイオード接続したものを用いる。ノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、ゲート電極にゲート電圧を印加したときに、コレクタ電流がすぐ立ち上がる。よってノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをダイオード接続したものをダイオードとして用いると、pn接合を用いたダイオードよりも電圧降下が小さいという点で好適である。
【0054】
またトランジスタ302であるノーマリオフの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、ダイオード309であるノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、それぞれのチャネル形成領域の不純物濃度が異なるだけである。よって、トランジスタ302とダイオード309を同じ工程で作製することができる。そのためコンバータ回路301の作製工程を低減させることが可能である。コンバータ回路301の作製工程を低減することが可能なため、コンバータ回路301の作製コストを抑制することが可能である。
【0055】
また上述のように、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、高耐圧及び大電流に適したトランジスタである。このため、ダイオード接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを、コンバータ回路301のダイオード309として用いることは好適である。
【0056】
また本実施の形態において、コイル303として、基板上にコイル状に形成した配線を用いることができる。
【0057】
また、本実施の形態において、コンデンサ305として、例えば第1の電極と、第2の電極と、誘電体とを有する構成のコンデンサを用いることができる。
【0058】
本実施の形態の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの一例を、図1、図2、図10、及び図12に示す。図1は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111、及びダイオード接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141の断面図である。また図2は図1に示す絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111の一部分の拡大図である。図10は図1の上面図であり、図10のA−A’の断面図が図1である。また図10のB−B’の断面図を図12に示す。
【0059】
図1に示す絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111は、導電膜114、第1の高濃度不純物領域101、第2の高濃度不純物領域102、第1の低濃度不純物領域103、第2の低濃度不純物領域104、絶縁膜109、導電膜121を有する。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111は、第1の低濃度不純物領域103及び第2の低濃度不純物領域104に、埋め込まれたゲート電極106及びゲート絶縁膜107を有する。さらに第2の低濃度不純物領域104中に、第3の高濃度不純物領域108が設けられている。第1の高濃度不純物領域101及び第2の低濃度不純物領域104は、第1の導電型を付与する第1の不純物元素が含まれている。また第2の高濃度不純物領域102、第1の低濃度不純物領域103、及び第3の高濃度不純物領域108には、第1の導電型とは逆の導電型である第2の導電型を付与する第2の不純物元素が含まれている。
【0060】
本実施の形態では、第1の導電型をp型、第2の導電型をn型とする。すなわち、第1の高濃度不純物領域101としてp型高濃度不純物領域、第2の高濃度不純物領域102としてn型高濃度不純物領域、第1の低濃度不純物領域103としてn型低濃度不純物領域、第2の低濃度不純物領域104としてp型低濃度不純物領域、第3の高濃度不純物領域108としてn型高濃度不純物領域を設ける。
【0061】
なお、第1の導電型と第2の導電型は逆であってもよい。すなわち、第1の導電型をn型、第2の導電型をp型としてもよい。その場合は、第1の高濃度不純物領域101はn型高濃度不純物領域、第2の高濃度不純物領域102はp型高濃度不純物領域、第1の低濃度不純物領域103はp型低濃度不純物領域、第2の低濃度不純物領域104はn型低濃度不純物領域、第3の高濃度不純物領域108はp型高濃度不純物領域となる。
【0062】
第3の高濃度不純物領域108は、エミッタ領域として機能する。また第1の高濃度不純物領域101は、コレクタ領域として機能する。
【0063】
導電膜121は、エミッタ電極として機能し、導電膜114はコレクタ電極として機能する。
【0064】
第2の低濃度不純物領域104中の第3の高濃度不純物領域108、及びゲート電極106の間の領域に、チャネル形成領域110が形成される。すなわち、チャネル形成領域110と第2の低濃度不純物領域104に含まれる不純物元素及びその濃度は同じである。
【0065】
図1に示す絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111と同様に、導電膜114、第1の高濃度不純物領域101、第2の高濃度不純物領域102、第1の低濃度不純物領域103、絶縁膜109、導電膜131を有する。ただし、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111の第2の低濃度不純物領域104に代えて、第2の低濃度不純物領域134を有する。
【0066】
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141は、第1の低濃度不純物領域103及び第2の低濃度不純物領域134に、埋め込まれたゲート電極106及びゲート絶縁膜107を有する。さらに第2の低濃度不純物領域134中に、第3の高濃度不純物領域138が設けられている。第3の高濃度不純物領域138は、第3の高濃度不純物領域108と同じ導電型を付与する不純物元素を、同じ濃度で有している。
【0067】
第2の低濃度不純物領域134中の第3の高濃度不純物領域138、及びゲート電極106の間の領域に、チャネル形成領域140が形成される。すなわち、チャネル形成領域140と第2の低濃度不純物領域134に含まれる不純物元素及びその濃度は同じである。
【0068】
チャネル形成領域140に含まれる第1の不純物元素の濃度、すなわち第2の低濃度不純物領域134に含まれる第1の不純物元素の濃度は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141がノーマリオンとなる濃度に制御されている。一方、チャネル形成領域110に含まれる第1の不純物元素の濃度、すなわち第2の低濃度不純物領域104に含まれる第1の不純物元素の濃度は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111がノーマリオフとなる濃度に制御されている。
【0069】
すなわち、チャネル形成領域110及びチャネル形成領域140に含まれる第1の不純物元素の濃度は異なっており、それぞれの濃度がノーマリオフとなるかノーマリオンとなるかを決定する。
【0070】
よって、ノーマリオフの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを、チャネル形成領域110及びチャネル形成領域140の不純物濃度を変えるだけで、作り分けることが可能である。
【0071】
なお絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141において、第3の高濃度不純物領域138は、エミッタ領域として機能する。また第1の高濃度不純物領域101は、コレクタ領域として機能する。
【0072】
なお絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141において、導電膜131はエミッタ電極として機能し、導電膜114はコレクタ電極として機能する。
【0073】
また、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141の導電膜131は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111の導電膜121と同様の材料及び同様の作製工程で作製できる。
【0074】
なお、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111において、導電膜121及び導電膜114間に印加される電圧、及び、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141において、導電膜131及び導電膜114間に印加される電圧が同じである場合は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141を絶縁分離する必要はない。
【0075】
ただし、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111において、導電膜121及び導電膜114間に印加される電圧、及び、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141において、導電膜131及び導電膜114間に印加される電圧が違う場合は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141を絶縁分離する必要がある。その場合は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141の間に絶縁物を形成する。必要であれば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111のそれぞれ、並びに、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141のそれぞれに応じて、導電膜114を分離してもよい。
【0076】
図10に、図1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141の上面図を示す。なお図10のA−A’の断面図が図1であり、図10のB−B’の断面図が図12である。
【0077】
図10に示すように、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111において、ゲート電極106は導電膜123に接続されている。すなわち、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111はトランジスタとして機能する。一方、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141において、ゲート電極106及び第3の高濃度不純物領域138は、導電膜131及び導電膜133を介して電気的に接続されている。すなわち、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141はダイオード接続されており、ダイオードとして機能する。
【0078】
図12は、上述のように図10のB−B’の断面図である。上述のように、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111において、ゲート電極106は導電膜123に接続されている。一方、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141において、ゲート電極106は、導電膜131及び導電膜133に電気的に接続されている。
【0079】
なお、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111の導電膜123と絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141の導電膜133は、同じ材料及び同じ作製工程で形成しても良いし、違う材料及び違う作製工程で形成しても良い。
【0080】
本実施の形態の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111の作製方法を、図5(A)〜図5(B)、図6(A)〜図6(B)、図7(A)〜図7(B)、図8(A)〜図8(B)、図9を用いて説明する。なお、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141の作製方法は、絶縁膜109を作製するまでは同様の工程で作製できる。絶縁膜109を作製するまでの作製工程において、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141と絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111の作製工程の差異は、第2の低濃度不純物領域104の代わりに第2の低濃度不純物領域134を形成することだけである。
【0081】
まず第2の高濃度不純物領域102として、n型単結晶半導体基板を用意する。本実施の形態では、該n型単結晶半導体基板として、n型単結晶シリコン基板を用いる。
【0082】
次いで該n型単結晶半導体基板の一方の面上に、エピタキシャル成長により第1の低濃度不純物領域103を形成する。本実施の形態では、第1の低濃度不純物領域103として、エピタキシャル成長させたn型シリコン層を用いる。
【0083】
次いで、第1の低濃度不純物領域103上に、エピタキシャル成長により第2の低濃度不純物領域104を形成する(図5(A)参照)。本実施の形態では、第2の低濃度不純物領域104として、エピタキシャル成長させたp型シリコン層を用いる。
【0084】
なお上述のように、図5(A)〜図5(B)、図6(A)〜図6(B)、図7(A)〜図7(B)、図8(A)〜図8(B)、図9においては、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111の作製工程について説明している。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141を作製するには、第2の低濃度不純物領域104の代わりに、第2の低濃度不純物領域134を形成すればよい。ただし、第2の低濃度不純物領域104と第2の低濃度不純物領域134それぞれに含まれる不純物元素の濃度は異なる。
【0085】
また当該n型単結晶半導体基板の他方の面上に、第1の高濃度不純物領域101を形成する(図5(B)参照)。本実施の形態では、第1の高濃度不純物領域101として、エピタキシャル成長させたp型シリコン層を用いる。
【0086】
また、第2の高濃度不純物領域102及び第1の低濃度不純物領域103において、n型を付与する不純物元素の濃度は、第1の低濃度不純物領域103よりも第2の高濃度不純物領域102の方が高い。n型を付与する不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)を用いればよい。
【0087】
第1の高濃度不純物領域101及び第2の低濃度不純物領域104において、p型を付与する不純物元素の濃度は、第2の低濃度不純物領域104よりも第1の高濃度不純物領域101の方が高い。p型を付与する不純物元素としては、ホウ素(B)を用いればよい。
【0088】
次いで、第2の低濃度不純物領域104上にマスク112を形成する。マスク112を用いて、第2の低濃度不純物領域104及び第1の低濃度不純物領域103の一部を除去し、第2の低濃度不純物領域104及び第1の低濃度不純物領域103中に溝113を形成する(図6(A)参照)。
【0089】
第2の低濃度不純物領域104、第1の低濃度不純物領域103及び溝113を覆って、絶縁膜115及び導電膜116を形成する(図6(B)参照)。
【0090】
次いで、絶縁膜115及び導電膜116の一部を除去し、第2の低濃度不純物領域104を露出させる。また、一部が除去された絶縁膜115(以下「ゲート絶縁膜107」と呼ぶ)、及び、一部が除去された導電膜116(以下「ゲート電極106」と呼ぶ)の表面も露出する(図7(A)参照)。
【0091】
露出した第2の低濃度不純物領域104、ゲート電極106及びゲート絶縁膜107上に、マスク117を形成する。マスク117を用いて、第2の低濃度不純物領域104にn型を付与する不純物元素118を添加する(図7(B)参照)。
【0092】
上述の、第2の低濃度不純物領域104にn型を付与する不純物元素118を添加する工程により、第2の低濃度不純物領域104中に第3の高濃度不純物領域108が形成される(図8(A)参照)。第3の高濃度不純物領域108に含まれるn型を付与する不純物元素118の濃度は、第1の低濃度不純物領域103よりも高い。
【0093】
次いで、第3の高濃度不純物領域108の一部の領域、ゲート電極106及びゲート絶縁膜107上に、絶縁膜109を形成する(図8(B)参照)。
【0094】
第3の高濃度不純物領域108の露出している領域に接して、導電膜121を形成する(図9参照)。以上のようにして、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111を作製する。
【0095】
なお絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141の作製においては、第3の高濃度不純物領域138の露出している領域に接して、導電膜131を形成する(図13参照)。以上のようにして、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141を作製する。
【0096】
上述のように、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111においては、ゲート電極106は導電膜123に電気的に接続されている。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111の第3の高濃度不純物領域108は、導電膜121に電気的に接続されている。
【0097】
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141のゲート電極106は、導電膜133に電気的に接続されている。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141の第3の高濃度不純物領域108は、導電膜131に電気的に接続されている。導電膜131は、導電膜133に電気的に接続されている。すなわち、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141のゲート電極106は、導電膜131及び導電膜133を介して、第3の高濃度不純物領域108に電気的に接続されている。
【0098】
ノーマリオフの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをスイッチイング素子のトランジスタ、ダイオード接続したノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをダイオードとして用いた場合の利点を以下に述べる。
【0099】
「発明が解決しようとする課題」で述べたように、pn接合を用いたダイオードに印加すると、電圧降下が起こる。pn接合を用いたダイオードの場合、その順方向電圧降下は0.6eV〜0.8eVである。
【0100】
しかしながら、ノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、ゲート電極にゲート電圧Vgを印加したときに、コレクタ電流Icがすぐ立ち上がる。よってノーマリーオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをダイオード接続したものをダイオードとして用いると、pn接合を用いたダイオードよりも、電圧降下が小さいので好適である。
【0101】
ダイオード接続したノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、pn接合を用いたダイオードよりも電圧降下が小さいので、電圧降下した分を補うために印加する電圧が小さくてよい。ダイオード接続したノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを用いると、電圧降下した分を補うために印加する電圧が小さくてよいので、光電変換装置の消費電力が小さくなる。
【0102】
以上から、ダイオード接続したノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをダイオードとして用いることは、電圧降下を抑制する点、電圧降下する分を補うために印加する電圧が小さくてよいという点、光電変換装置の消費電力を抑制するという点で好適である。
【0103】
図4にノーマリオフの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのV−I曲線C1及びノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのV−I曲線C2を示す。ノーマリオフの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのしきい値Vth1は0より大きく(Vth1>0)、ノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのしきい値Vth2は0以下である(Vth2≦0)。ただしノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのしきい値Vth2が、マイナスであればあるほど、ノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのリーク電流が大きくなってしまう。そこで、ノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのしきい値Vth2がほぼ0である(Vth2≒0)と、より好適である。
【0104】
ノーマリオフとノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、第2の低濃度不純物領域104及び第2の低濃度不純物領域134それぞれに含まれる不純物元素の濃度を変えることで、作り分けることが可能である。
【0105】
図11に、ノーマリオン及びノーマリオフとなる不純物元素の濃度の境界を計算した計算結果を示す。
【0106】
本計算では、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141において、各領域の厚さや当該領域に含まれる不純物元素の濃度を、図1及び図2を参照し、以下に示す通りに定める。
【0107】
第1の高濃度不純物領域101の厚さD1は0.5μm、第2の高濃度不純物領域102の厚さD2は2.5μm、第1の低濃度不純物領域103の厚さD3は64μm、第2の低濃度不純物領域134の厚さD4は3μm、チャネル長Lは2.4μm、ゲート電極106の厚さの半分T1は0.7μm、ゲート絶縁膜の厚さT2は20nm、第3の高濃度不純物領域108の濃度は最大で1×1021cm−3、第1の低濃度不純物領域103の濃度は1×1015cm−3、第2の高濃度不純物領域102の濃度は最大で1×1019cm−3、第1の高濃度不純物領域101の濃度は最大で1×1020cm−3である。なお、第1の高濃度不純物領域101、第2の高濃度不純物領域102、及び第3の高濃度不純物領域108それぞれにおいて、各領域内で濃度を変化させたため最大の濃度を記載する。
【0108】
図11に示すように、チャネル形成領域140中の不純物濃度が2×1016cm−3以下であると、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141はノーマリオンとなる。このようなノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141をダイオード接続したダイオードは、コレクタ電流Icがすぐ立ち上がるので好適である。
【0109】
一方、ノーマリオフの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111を得るには、チャネル形成領域110の不純物濃度を2×1016cm−3より高い濃度にすればよい。
【0110】
以上述べたように、本実施の形態により、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの積層構造を変えずに、チャネル形成領域の不純物濃度を変えることで、ノーマリオンとノーマリオフを作り分けることができる。
【0111】
図3(B)に示すコンバータ回路311は、トランジスタ312、コイル313、ダイオード319、コンデンサ315を有する降圧回路である。
【0112】
トランジスタ312のソースあるいはドレインの一方は、光電変換素子317のp型半導体層側及びn型半導体層側の一方の電極に電気的に接続されている。トランジスタ312のソースあるいはドレインの他方は、ダイオード319の出力端子及びコイル313の一方の端子と電気的に接続されている。ダイオード319の入力端子は、光電変換素子317のp型半導体層側及びn型半導体層側の他方の電極及びコンデンサ315の一方の端子に電気的に接続されている。ダイオード319の出力端子は、トランジスタ312のソースあるいはドレインの他方及びコイル313の一方の端子と電気的に接続されている。コイル313の一方の端子は、トランジスタ312のソースあるいはドレインの他方及びダイオード319の出力端子に電気的に接続されている。コイル313の他方の端子は、コンデンサ315の他方の端子及び出力端子OUTに電気的に接続されている。なお、光電変換素子317のp型半導体層側及びn型半導体層側の他方の電極、ダイオード319の入力端子、及びコンデンサ315の一方の端子は接地されている。
【0113】
トランジスタ312はスイッチング素子として機能する。またトランジスタ312のゲートは、コンバータ回路311の制御回路に接続されている。コンバータ回路311の制御回路からの信号により、トランジスタ312はオン状態あるいはオフ状態となる。
【0114】
スイッチング素子であるトランジスタ312がオン状態のとき、入力から出力に流れる降圧回路の電流により、コイル313には励磁エネルギーが蓄えられる。
【0115】
トランジスタ312がオフ状態になると、コイル313は電流を保とうとして起電力を発生させ、ダイオード319をオン状態にする。ダイオード319を通じて電流が流れることによって、電圧V2が低下する。電圧V1より電圧V2が低下するため、コンバータ回路311は降圧回路として機能する。
【0116】
なお本実施の形態において、トランジスタ312として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを用いる。
【0117】
上述のように、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、入力部がMOS構造で、出力部がバイポーラ構造のパワー用トランジスタであり、高耐圧及び大電流に適したトランジスタである。このため、コンバータ回路311のスイッチング素子であるトランジスタ312に好適である。
【0118】
本実施の形態において、ダイオード319は整流素子として機能する。本実施の形態では、該ダイオード319として、ダイオード接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを用いる。該ダイオード接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとして、トランジスタ312と同様の構造を有する絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを作製し、そのゲート電極とドレイン領域を電気的に接続すればよい。これにより、トランジスタ312とダイオード319が同時に作製することができるため、作製工程を低減させることが可能である。コンバータ回路311の作製工程を低減することが可能なため、コンバータ回路311の作製コストを抑制することが可能である。
【0119】
また上述のように、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、高耐圧及び大電流に適したトランジスタである。このため、ダイオード接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを、コンバータ回路311のダイオード319として用いることは好適である。
【0120】
上述したように、スイッチング素子であるトランジスタ312は、ノーマリオフの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを用いる。また整流素子であるダイオード319は、ダイオード接続されたノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを用いる。ノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをダイオード接続したものをダイオード319として用いるので、pn接合を用いたダイオードよりも、電圧降下が小さい。
【0121】
また上述のように、本実施の形態により、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの積層構造を変えずに、チャネル形成領域の不純物濃度を変えることで、ノーマリオンとノーマリオフを作り分けることができる。
【0122】
また本実施の形態において、コイル313として、基板上にコイル状に形成した配線を用いることができる。
【0123】
また、本実施の形態において、コンデンサ315として、例えば第1の電極と、第2の電極と、誘電体とを有する構成のコンデンサを用いることができる。
【0124】
以上のように、本実施の形態のコンバータ回路では、整流素子であるダイオードとして、ダイオード接続したノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを用いる。ダイオード接続したノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、pn接合を用いたダイオードよりも電圧降下が小さいので、電圧降下する分を補うために印加する電圧が小さくてよい。ダイオード接続したノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを用いると、電圧降下した分を補うために印加する電圧が小さくてよいので、コンバータ回路の消費電力が小さくなる。コンバータ回路の消費電力が小さくなると、光電変換装置の消費電力も小さくなる。
【0125】
なお、本実施の形態のコンバータ回路において、上述した絶縁ゲート型バイポーラトランジスタに代えて、電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)、代表的にはMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ(以下「MOSFET」と呼ぶ)を用いてもよい。図1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタに代えて、MOSFETを用いた場合について以下に説明する。
【0126】
図19は、MOSFET151及びMOSFET161の断面図である。MOSFET151は、図1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111と同様に、図3(A)のトランジスタ302及び図3(B)のトランジスタ312として用いることが可能である。またMOSFET161は、図1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ141と同様に、図3(A)のダイオード309及び及び図3(B)のダイオード319として用いることが可能である。
【0127】
なお図19において、図1と同じものは同じ符号で示している。また図19に示すMOSFET151及びMOSFET161それぞれの構造や材料については、図1に示す絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ111及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの構造や材料を参酌できる。
【0128】
MOSFET151は、導電膜114、高濃度不純物領域102、低濃度不純物領域103、低濃度不純物領域104、絶縁膜109、導電膜121を有する。MOSFET151は、低濃度不純物領域103及び低濃度不純物領域104に、埋め込まれたゲート電極106及びゲート絶縁膜107を有する。さらに低濃度不純物領域104中に、高濃度不純物領域108が設けられている。低濃度不純物領域104は、第1の導電型を付与する第1の不純物元素が含まれている。また高濃度不純物領域102、低濃度不純物領域103、及び高濃度不純物領域108には、第1の導電型とは逆の導電型である第2の導電型を付与する第2の不純物元素が含まれている。
【0129】
MOSFET151において高濃度不純物領域108は、ソース領域又はドレイン領域の一方として機能する。またMOSFET151において、高濃度不純物領域102は、ソース領域又はドレイン領域の他方として機能する。
【0130】
導電膜121は、ソース電極又はドレイン電極の一方として機能し、導電膜114はソース電極又はドレイン電極の他方として機能する。
【0131】
MOSFET161は、導電膜114、高濃度不純物領域102、低濃度不純物領域103、低濃度不純物領域134、絶縁膜109、導電膜131を有する。
【0132】
MOSFET161は、低濃度不純物領域103及び低濃度不純物領域134に、埋め込まれたゲート電極106及びゲート絶縁膜107を有する。さらに低濃度不純物領域134中に、高濃度不純物領域138が設けられている。高濃度不純物領域138は、高濃度不純物領域108と同じ導電型を付与する不純物元素を、同じ濃度で有している。
【0133】
低濃度不純物領域134中の高濃度不純物領域138、及びゲート電極106の間の領域に、チャネル形成領域140が形成される。すなわち、チャネル形成領域140と低濃度不純物領域134に含まれる不純物元素及びその濃度は同じである。
【0134】
チャネル形成領域140に含まれる第1の不純物元素の濃度、すなわち低濃度不純物領域134に含まれる第1の不純物元素の濃度は、MOSFET161がノーマリオンとなる濃度に制御されている。一方、チャネル形成領域110に含まれる第1の不純物元素の濃度、すなわち低濃度不純物領域104に含まれる第1の不純物元素の濃度は、MOSFET151がノーマリオフとなる濃度に制御されている。
【0135】
すなわち、チャネル形成領域110及びチャネル形成領域140に含まれる第1の不純物元素の濃度は異なっており、それぞれの濃度がノーマリオフとなるかノーマリオンとなるかを決定する。
【0136】
よって、ノーマリオフのMOSFETとノーマリオンのMOSFETを、チャネル形成領域110及びチャネル形成領域140の不純物濃度を変えるだけで、作り分けることが可能である。
【0137】
なお、MOSFET161において、高濃度不純物領域138は、ソース領域又はドレイン領域の一方として機能する。またMOSFET161において、高濃度不純物領域102は、ソース領域又はドレイン領域の他方として機能する。
【0138】
またMOSFET161において、導電膜131は、ソース電極又はドレイン電極の一方として機能し、導電膜114はソース電極又はドレイン電極の他方として機能する。
【0139】
また本実施の形態により、コンバータ回路のスイッチング素子であるトランジスタ、及び整流素子であるダイオードを、同じ材料及び同じ工程で作製することができる。
【0140】
本実施の形態の光電変換素子307或いは光電変換素子317を図14を用いて説明する。本実施の形態では、光電変換素子307の一例として、非晶質半導体層を光電変換層に有する太陽電池について述べる。
【0141】
図14に示す太陽電池は、基板201上に、p型非晶質半導体層213、真性非晶質半導体層214、及びn型非晶質半導体層215を有する、非晶質半導体層の光電変換層211を備えている。光電変換層211の一方の面には、導電膜210が設けられている。光電変換層211の他方の面には、導電膜212が設けられている。
【0142】
具体的には、導電膜210上に、p型非晶質半導体層213、真性非晶質半導体層214、n型非晶質半導体層215が積層される。n型非晶質半導体層215上には、導電膜212が設けられる。
【0143】
導電膜210、光電変換層211、及び導電膜212はそれぞれ、所定の形状に加工されている。当該所定の形状に加工された導電膜210、光電変換層211、及び導電膜212は、1つのセル202を構成する。各セル202は、異なるセルと直列に接続されている。各セル202が異なるセル202と直列に接続されていると、出力電圧を上昇させることが可能である。
【0144】
基板201は、基板201側から光が入射することを想定して、太陽光に対して透光性を有する材料を用いる。
【0145】
透光性を有する基板201として、例えば、青板ガラス、白板ガラス、鉛ガラス、強化ガラス、セラミックガラスなどのガラス板を用いることができる。また、アルミノシリケート酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスなどの無アルカリガラス基板、石英基板、セラミック基板を用いることができる。
【0146】
透光性を有する基板201として、プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板(プラスチック基板)を用いる場合は、上記基板と比較して耐熱温度が一般的に低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであれば用いることが可能である。
【0147】
プラスチック基板として、ポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド系合成繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂などが挙げられる。ポリエステルとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0148】
導電膜210は、基板201側から光が入射するので、太陽光に対して透光性を有する導電材料を用いて形成する。
【0149】
透光性を有する導電材料として、例えば、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、有機インジウム、有機スズ、酸化亜鉛、酸化亜鉛(ZnO)を含むインジウム亜鉛酸化物(IZO(Indium Zinc Oxide))、ガリウム(Ga)をドープしたZnO、酸化スズ(SnO)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物などが好適である。
【0150】
なお、導電膜210にインジウム錫酸化物を用いる場合、導電膜210上に、後の工程で形成するp型非晶質半導体層213を形成すると、p型非晶質半導体層213中に存在する水素が、導電膜210中のインジウム錫酸化物を還元してしまう。そのため、導電膜210の膜質が劣化する恐れがある。
【0151】
インジウム錫酸化物を導電膜210に用いる場合、インジウム錫酸化物が還元されるのを防ぐために、インジウム錫酸化物を用いた導電膜とp型非晶質半導体層213との間に、酸化スズを用いた導電膜、または、酸化亜鉛と窒化アルミニウムとの混合材料を含む導電性材料を用いた導電膜を、数十nmの膜厚で積層したものを、導電膜210として用いることが好ましい。
【0152】
また、導電膜210の、光電変換層211側の面に凹凸を形成しておくと、導電膜210において光が屈折または乱反射する。このため、光電変換層211内における光の吸収率を高め、変換効率を高めることができるので好適である。
【0153】
導電膜210上には、p型非晶質半導体層213、真性非晶質半導体層214、n型非晶質半導体層215が順に積層された光電変換層211が設けられている。
【0154】
本実施の形態では、p型非晶質半導体層213として、p型非晶質珪素層を用いる。p型非晶質珪素層は、p型を付与する元素、例えばホウ素を含む珪素層である。
【0155】
また本実施の形態では、真性非晶質半導体層214として、真性非晶質珪素層を用いる。
【0156】
本実施の形態では、n型非晶質半導体層215として、n型非晶質珪素層を用いる。n型非晶質珪素層は、n型を付与する元素、例えばリンを含む珪素層である。
【0157】
なお、本実施の形態では、光電変換層211として、p型非晶質半導体層213、真性非晶質半導体層214、n型非晶質半導体層215が順に積層された例を示すが、積層の順番はn型非晶質半導体層、真性非晶質半導体層、p型非晶質半導体層の順でもよい。
【0158】
ただし、非晶質半導体層あるいは単結晶半導体層に限らず、p型半導体層はn型半導体層よりも、光が入射される側に近くなるよう配置することが望ましい。ホールのキャリアとしての寿命は、電子のキャリアとしての寿命の約半分と短い。pin接合を有する光電変換層に光が照射されると、真性半導体層内において多量の電子とホールが形成され、電子はn型半導体層側へ、ホールはp型半導体層側へ移動し、起電力を得ることができる。
【0159】
光の照射をp型半導体層側から行うと、電子とホールの形成が、真性半導体層内のn型半導体層よりもp型半導体層に近い側において多く行われる。そのため、寿命が短いホールがp型半導体層へ移動する距離を、短くすることができ、その結果、高い起電力を得ることができる。
【0160】
本実施の形態では、光はp型半導体層側及びn型半導体層側の両方から入射する。そのため、光電変換層の積層の順番は、n型半導体層、真性半導体層、p型半導体層、あるいは、p型半導体層、真性半導体層、n型半導体層、のどちらでもよい。しかし、入射する光の強度がより強い側にp型半導体層を設けると、より高い起電力を得ることができる。
【0161】
以上説明したように、本実施の形態の光電変換装置は、消費電力を抑制することが可能である。また本実施の形態の光電変換装置は、作製コストを抑制することが可能である。
【0162】
[実施の形態2]
本実施の形態では、実施の形態1で述べたコンバータ回路の回路構成の一例について、図15を用いて説明する。
【0163】
図15は電源回路601の構成例である。電源回路601は、コンバータ回路である電圧変換回路602、及び電圧変換回路602の制御回路603を有している。電圧変換回路602は、実施の形態1でも述べたDC−DCコンバータである。
【0164】
電圧変換回路602は、トランジスタ611、コイル612、ダイオード613、及びコンデンサ614を有している。制御回路603は、三角波発生回路621、デジタル制御方式の回路650、パルス幅変調出力ドライバ623、抵抗624、及び抵抗625を有している。また点線の矢印627は帰還回路のループを表している。抵抗624の出力電圧である帰還電圧Vfbは、デジタル制御方式の回路650に入力される。
【0165】
電圧変換回路602のダイオード613に、実施の形態1で述べた、ダイオード接続したノーマリオンの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを用いると、電圧降下を抑制できるという点で好適である。
【0166】
電圧変換回路602のトランジスタ611に、実施の形態1で述べた、ノーマリオフの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを用いると、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの積層構造を変えずに、チャネル形成領域の不純物濃度を変えることで、ノーマリオンとノーマリオフを作り分けることができるという点で好適である。
【0167】
デジタル制御方式の回路650は、コンパレータ651、デジタル演算処理回路652、パルス幅変調出力ドライバ653、及びローパスフィルタ654(ローパスフィルタ:Low Pass Filter(LPF))を有している。
【0168】
デジタル制御方式の回路650の内、デジタル演算処理回路652及びパルス幅変調出力ドライバ653はデジタル回路である。デジタル回路は、回路を流れる信号の基準に対する高低によって、1か0(ゼロ)かを判断する。デジタル回路は、1か0(ゼロ)かを判断するため、デジタル回路を構成する素子の特性がばらついても、正しく処理する事が可能である。
【0169】
またデジタル制御方式の回路650は、占有面積の大きい受動素子(例えば、容量や抵抗)の使用を抑制してるので、回路の占有面積を小さくすることが可能であるという点で好適である。
【0170】
コンパレータ651は、反転入力端子REFから入力される参照電圧Vrefと、非反転入力端子INから入力される入力電圧Vinとを比較して、H(ハイレベル)かL(ローレベル)、すなわち1か0(ゼロ)であるデジタル信号を出力する。
【0171】
デジタル演算処理回路652は、デジタル平均化・積分器652a及びデジタルパルス幅変調器652bを有している。またデジタル演算処理回路652には、外部からクロック分割器655が接続され、クロック分割器655からのクロック信号が入力される。
【0172】
デジタル演算処理回路652は、コンパレータ651から出力されたデジタル信号を、平均化処理、積分化処理、及び、デジタルパルス幅変調処理を行う。デジタル演算処理回路652中のデジタル平均化・積分器652aが平均化処理及び積分化処理を行い、デジタルパルス幅変調器652bがデジタルパルス幅変調処理を行う。
【0173】
デジタル演算処理回路652では、まず、コンパレータ651から出力されたデジタル信号(H(ハイレベル)またはL(ローレベル))をNビット保持し、HとLの回数を比較し、多い方の信号を出力する。これによりデジタル信号の平均化が行われる。
【0174】
平均化されたデジタル信号に応じて、Hであれば「−1」、Lであれば「+1」を加えて積算する。これにより、平均化されたデジタル信号が積分される。
【0175】
積分されたデジタル信号に応じて、パルス幅変調の位相位置の設定を行う。これによりデジタルパルス幅変調処理化が行われる。デジタルパルス幅変調処理化されたパルス幅変調出力信号は、パルス幅変調出力ドライバ653に入力される。
【0176】
三角波発生回路621は、パルス幅変調生成信号に必要な三角波Voscを発生させる回路である。
【0177】
パルス幅変調出力ドライバ623の反転入力端子にはデジタル制御方式の回路650の出力信号Verrが入力され、非反転入力端子には三角波発生回路621が生成した三角波Voscが入力される。
【0178】
パルス幅変調出力ドライバ623は、デジタル制御方式の回路650の出力信号Verrと三角波Voscを比較し、三角波Voscの信号レベルがデジタル制御方式の回路650の出力信号Verrより大きい場合は、H(ハイレベル)をパルス幅変調信号としてトランジスタ611に出力する。一方、三角波Voscの信号レベルがデジタル制御方式の回路650の出力信号Verrより小さい場合は、L(ローレベル)をパルス幅変調信号としてトランジスタ611に出力する。
【0179】
以上説明したように、本実施の形態の光電変換装置は、消費電力を抑制することが可能である。また本実施の形態の光電変換装置は、作製コストを抑制することが可能である。
【0180】
[実施の形態3]
本実施の形態では、実施の形態1又は実施の形態2などにより得られる光電変換装置を用いて、太陽光発電モジュールを得る。得られた太陽光発電モジュールを電動推進車両に搭載する例について説明する。
【0181】
本実施の形態の太陽光発電モジュールの例を、図16(A)〜図16(B)、図17(A)〜図17(B)、図18に示す。本実施の形態の太陽光発電モジュールは、実施の形態1又は実施の形態2に示す光電変換装置を用いて作製される。
【0182】
図18に、太陽光発電モジュール800を用いた太陽光発電システムの例を示す。
【0183】
太陽光発電モジュール800には、DC−DCコンバータ等を具備する電圧変換回路851が接続されている。該電圧変換回路851により、太陽光発電モジュール800の出力電圧が昇圧或いは降圧される。
【0184】
電圧変換回路851には、制御回路853が接続されている。制御回路853は、太陽光発電モジュール800の最大電力を取り出すように、電圧変換回路851を最大電力点追従(MPPT)制御する。
【0185】
また、制御回路853は、電圧変換回路851からの出力電圧を制御し、蓄電池840を充電する。また制御回路853は、蓄電池840が十分に充電されている場合、太陽光発電モジュール800から供給される電力を外部回路841に直接出力するよう制御する。
【0186】
当該太陽光発電モジュール800は、実施の形態1又は実施の形態2に示す光電変換装置を用いて作製する。本実施の形態では、太陽光発電モジュール800の例として、実施の形態1で述べた非晶質半導体層を光電変換層211に有する太陽電池を用いる。なお、太陽光発電モジュール800は、上記太陽電池に限定されるものではなく、実施の形態1で述べた他の太陽電池であってもよい。
【0187】
蓄電池840として電気二重層キャパシタを用いると、充電に化学反応を必要としないため、急速な充電が可能である。また、化学反応を利用する鉛蓄電池などに比べ、寿命を8倍程度、充放電効率を1.5倍程度に高めることができる。本実施の形態において示す太陽光発電システムは、照明、電子機器など、電力を使用する様々な外部回路841に対して用いることができる。
【0188】
図16(A)及び図16(B)に、太陽光発電モジュール800の構造の一例を示す。
【0189】
太陽光発電モジュール800は、実施の形態1で述べた、非晶質半導体層を有する光電変換層211を用いた太陽電池である。図16(A)及び図16(B)において、図14と同じものは同じ符号で示している。図16(B)は、図16(A)のC−C’に対する断面図である。
【0190】
光電変換層211上に設けられた導電膜212に接して、補助電極807及び補助電極808が設けられる。補助電極807及び補助電極808はそれぞれ、最も端部のセルの導電膜212に電気的に接続されている。
【0191】
図17(A)および図17(B)に、図16に示した太陽光発電モジュール800をルーフ部分に用いた電動推進車両860(乗用自動車)の例を示す。太陽光発電モジュール800は、コンバータ862を介してバッテリーまたはキャパシタ864に接続されている。すなわち、バッテリーまたはキャパシタ864は、太陽光発電モジュール800から供給される電力を用いて充電される。また、エンジン866の動作状況をモニタ868で監視して、その状況に応じて充電及び放電を選択させる構成としても良い。
【0192】
太陽光発電モジュール800は、熱によって光電変換効率が低下する傾向にある。このような光電変換効率の低下を抑制するために、太陽光発電モジュール800内に冷却用の液体などを循環させる構成としても良い。例えば、ラジエータ870の冷却水を循環ポンプ872によって循環させる構成とすることができる。もちろん、冷却用の液体をラジエータ870と共用することには限定されない。また、光電変換効率の低下が深刻でない場合には、液体を循環させる構成は不要である。
【0193】
本実施の形態の光電変換装置は、ダイオードの電圧降下を抑制する点、電圧降下した分を補うために印加する電圧が小さくてよいという点、コンバータ回路の消費電力を抑制するという点、及び光電変換装置の消費電力を抑制するという点で好適である。
【0194】
また本実施の形態の光電変換装置は、コンバータ回路の作製コストを抑制するという点、光電変換装置の作製コストを抑制するという点で好適である。
【符号の説明】
【0195】
101 高濃度不純物領域
102 高濃度不純物領域
103 低濃度不純物領域
104 低濃度不純物領域
106 ゲート電極
107 ゲート絶縁膜
108 高濃度不純物領域
109 絶縁膜
110 チャネル形成領域
111 絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ
112 マスク
113 溝
114 導電膜
115 絶縁膜
116 導電膜
117 マスク
118 不純物元素
121 導電膜
123 導電膜
131 導電膜
133 導電膜
134 低濃度不純物領域
138 高濃度不純物領域
140 チャネル形成領域
141 絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ
151 MOSFET
161 MOSFET
201 基板
202 セル
210 導電膜
211 光電変換層
212 導電膜
213 p型非晶質半導体層
214 真性非晶質半導体層
215 n型非晶質半導体層
301 コンバータ回路
302 トランジスタ
303 コイル
305 コンデンサ
307 光電変換素子
309 ダイオード
311 コンバータ回路
312 トランジスタ
313 コイル
315 コンデンサ
317 光電変換素子
319 ダイオード
601 電源回路
602 電圧変換回路
603 制御回路
611 トランジスタ
612 コイル
613 ダイオード
614 コンデンサ
621 三角波発生回路
623 パルス幅変調出力ドライバ
624 抵抗
625 抵抗
627 矢印
650 回路
651 コンパレータ
652 デジタル演算処理回路
652a デジタル平均化・積分器
652b デジタルパルス幅変調器
653 パルス幅変調出力ドライバ
654 ローパスフィルタ
655 クロック分割器
800 太陽光発電モジュール
807 補助電極
808 補助電極
840 蓄電池
841 外部回路
851 電圧変換回路
853 制御回路
860 電動推進車両
862 コンバータ
864 キャパシタ
866 エンジン
868 モニタ
870 ラジエータ
872 循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路と、
を有する光電変換装置であり、
前記スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、
前記整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、
を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路と、
を有する光電変換装置であり、
前記スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、
前記整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、
を有し、
前記第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、第1のエミッタ領域と、第1のチャネル形成領域と、第1のコレクタ領域を有し、
前記第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、第2のエミッタ領域と、前記第1のチャネル形成領域とは異なる不純物濃度を有する第2のチャネル形成領域と、第2のコレクタ領域を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
太陽電池と、
前記太陽電池の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路と、
を有する光電変換装置であり、
前記スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、
前記整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、
を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項4】
太陽電池と、
前記太陽電池の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路と、
を有する光電変換装置であり、
前記スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、
前記整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタと、
を有し、
前記第1の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、第1のエミッタ領域と、第1のチャネル形成領域と、第1のコレクタ領域を有し、
前記第2の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、第2のエミッタ領域と、前記第1のチャネル形成領域とは異なる不純物濃度を有する第2のチャネル形成領域と、第2のコレクタ領域を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項5】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路と、
を有する光電変換装置であり、
前記スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の電界効果型トランジスタと、
前記整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の電界効果型トランジスタと、
を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項6】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路と、
を有する光電変換装置であり、
前記スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の電界効果型トランジスタと、
前記整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の電界効果型トランジスタと、
を有し、
前記第1の電界効果型トランジスタは、第1のソース領域及びドレイン領域と、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第2の電界効果型トランジスタは、第2のソース領域及びドレイン領域と、前記第1のチャネル形成領域とは異なる不純物濃度を有する第2のチャネル形成領域を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項7】
太陽電池と、
前記太陽電池の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路と、
を有する光電変換装置であり、
前記スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の電界効果型トランジスタと、
前記整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の電界効果型トランジスタと、
を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項8】
太陽電池と、
前記太陽電池の出力を昇圧又は降圧し、スイッチング素子及び整流素子を有するコンバータ回路と、
を有する光電変換装置であり、
前記スイッチング素子として、ノーマリオフの第1の電界効果型トランジスタと、
前記整流素子として、ダイオード接続されたノーマリオンの第2の電界効果型トランジスタと、
を有し、
前記第1の電界効果型トランジスタは、第1のソース領域及びドレイン領域と、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第2の電界効果型トランジスタは、第2のソース領域及びドレイン領域と、前記第1のチャネル形成領域とは異なる不純物濃度を有する第2のチャネル形成領域を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記コンバータ回路は、DC−DCコンバータであることを特徴とする光電変換装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項において、
前記コンバータ回路は、コイル、及びコンデンサを有するDC−DCコンバータであることを特徴とする光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−10582(P2012−10582A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115693(P2011−115693)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】