説明

光電子センサシステム

試料を均質に照明し、発生する蛍光光のみが光活性層へ達するようにする、光電子センサシステム。この課題は、実質的に、光電子センサ層の前または上方に、結合された光のための全反射層を形成することによって解決される。適用は、マイクロアレイ−バイオチップが使用される、すべての分野で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を刺激して検出するための光電子センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医学、薬学、生化学、遺伝学または微生物学の領域において、マイクロアレイ−バイオチップの使用は、ますます大きな役割を果たすようになって来ている。この種のチップは、短時間に数百万の反応の結果を供給する。マイクロアレイ−バイオチップは、キャリア材料からなり、その上に生物学的ゾンデ分子が、大きな数と高い密度で、いわゆるマイクロアレイ内に定められて固定されている。この点またはスポットの各々が、ほぼ反応容器の代わりをする。
【0003】
本来の調査のために、たとえば蛍光ベースの方法が適用され、それにおいて試料のマーキングが行われるので、−光源、たとえばレーザーによる刺激後に−蛍光信号が生じ、それを検出することができる。従来のマイクロアレイ−読取りシステムは、蛍光を点状に刺激するためにレーザーを使用し、あるいは大面積で刺激するためにガス放電ランプ(水銀、キセノン、金属−ハロゲン化物)を使用する。すべてのシステムは、読取りプロセスにおいて、サンプルまたは光源をスキャンしなければならず、従って精密な処理技術を必要とする。さらに、この種のシステムは、検出器上に蛍光信号を結像させるために複雑な光学系を必要とする。このファクターが、必要なミニチュア化と読取りシステムの安価な形成も阻止する。
【0004】
国際公開WO2006/026796号パンフレットからは、マイクロアレイのような、この種の生化学的試料を評価することができる装置が知られている。
【0005】
これは、試料キャリアと画像検出装置とからなる。この画像検出装置は、2つの電極層管に有機半導体ベースの光活性層を有しており、その電極層の1つは、光活性層と試料との間で少なくとも部分的に光を透過するように形成されている。この画像検出装置は、バイオチップの、マイクロアレイと対向する表面上に直接取り付けることができ、従って従来の読取りシステムにおけるような、精密な処理機構と複雑な結像光学系を不要にする。
【0006】
この画像検出システムを、処理機構と結像光学系なしで生化学的試料を蛍光ベースで読み取るためには、以下の条件が満たされなければならない:
・試料は、刺激光に均質にさらされなければならない。
・生じる蛍光光のみが、光活性層へ達することを許される。
・蛍光を発する試料(マイクロアレイ−スポット内)とセンサとの間の間隔は、ピクセル間のクロストークを回避するために、マイクロアレイスポットのセンターツーセンターの間隔と同じオーダーの大きさにある。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明の課題は、これらの条件を満たす、光電子センサシステムを提供することである。
【0008】
均質な照明について:
画像検出システムが、試料に対向してバイオチップ上に直接取り付けられている場合に、試料は、それ以上走査される必要はない。もちろん、この種の構造は、試料を十分に高い刺激強度で均質に照明することを必要とする。
【0009】
直接的または散乱された刺激光のブロックについて:
各蛍光ベースの測定システムは、蛍光を刺激するための光源を必要とする。その場合に、この刺激光の強度は、もたらされる蛍光光の強度よりも数オーダーの大きさだけ強い。信頼できる測定結果を得るためには、蛍光光のみが光活性層へ達することを許されるが、直接光または散乱光は、測定誤差をもたらすことになるので、達することを許されない。
【0010】
試料とセンサの間の間隔について:
画像検出システム上で検出された信号をマイクロアレイスポットの蛍光に一義的に割当てることは、正確な測定結果を得るための前提である。典型的に、マイクロアレイスポット直径は、約300μmのセンターツーセンター間隔をもって100−200μmである。従って、バイオチップ上に直接設けられた、マイクロアレイと対向する画像検出システムにおいて、クロストークを回避するためには、試料と画像検出システムとの間の間隔は、スポット間隔と同じオーダーの大きさになければならない。
【0011】
この課題は、本発明によれば、試料を設けるための表面とその下に位置する層システムであって、試料を刺激するための光を結合可能な、第1の屈折率を有する透明な第1の層と、結合された光とそこからもたらされる、第1の層内で伝播するプレナーな光波の全反射を発生させるための、第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する、隣接する第2の層および第2の層の下に位置する、2つの電極層間の1つまたは複数の半導体層からなる、光電子センサ層を有し、電極層のうちの、試料へ向けられた電極層が少なくとも部分域的に光を透過するように形成されている層システム、を有する光電子センサシステムによって解決される。
【0012】
より小さい屈折率を有する層における全反射によって、刺激光は、幾分大きい屈折率を有する第1の層内でのみ伝播する。
生物学的試料は、この層の上側にある。そこで、全反射が行われ、その全反射において、100から500nmの進入深さを有する、いわゆるエバネッセント場が発生し、それが選択的に表面近傍の分子のみを刺激する。その後試料から送出された蛍光信号または発光信号も、じゃまされずに光電子センサ層によって受信することができ、散乱光による測定誤差が生じることはない。
【0013】
好ましくは、刺激する光ビームの導入は、第1の層に光を結合するためのプリズムまたは格子が配置されていることによって、行われる。
【0014】
好ましい形態によれば、より小さい屈折率を有する層は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる。
これに、さらに、光学フィルタとしての吸収するピグメント/色素を添加することができる。
【0015】
好ましくは、第2の層と光電子センサシステムとの間に、光学的フィルタ特性または部分的な光透過性を有する付加的な層を設けることができる。
【0016】
フォトセンシティブな層は、有機半導体ベースで形成することができる。
【0017】
本発明に基づく光電子センサシステムは、以下の構造を特徴とすることができる。
その表面上にマイクロアレイスポットを設けるための、第1のガラスキャリア、
センサ用の基板としての第2のガラスキャリア、
センサ用のカプセルとしての第3のガラスキャリア、
2つの電極層間の1つまたは複数の半導体層からなる、第2と第3のガラスキャリアの間に位置するフォトセンシティブな光電子層であって、電極層のうちの、試料へ向けられた電極層が部分的に光を透過するフォトセンシティブな光電子層、
第1と第3のガラスキャリアの間のPDMS中間層、および
第1のガラスキャリアの表面上に配置されたプリズムであって、そのプリズムが光源から放出された光ビームを定められた角度で第1のガラスキャリア内へ導入し、そこで光ビームがPDMS中間層で全反射して、プラナー光波として第1のガラスキャリア内で導波されるプリズム。
【0018】
この構造が、図面にも、図式的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に基づく光電子センサシステムを図式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1のガラスキャリア内へ光ビームが入射する入射角度は、好ましくはガラスとPDMSの間の全反射のための限界角度よりも大きく、従って69°よりも大きい(屈折率:ガラス:n1=1.52、PDMS:n2=1.42→全反射のための角度:α=arcsin(n2/n1)=69.1°)。
【0021】
この構造を有する光電子センサシステムは、その小さい寸法を特徴としており、すなわち第1のガラスキャリアの厚みは、たとえば50−200μm、第3のガラスキャリアとPDMS中間層とあわせた第1のガラスキャリアの厚みは、約300μmであり、センサの全体の厚みは、約1mmである。
【0022】
刺激する光源として、レーザー、LEDまたは300−650nmの波長を有するOLEDが使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を刺激して検出するための光電子センサシステムであって、
試料を設けるための表面と、
前記表面の下に位置する層システムであって、
試料を刺激するための光を結合可能な、第1の屈折率を有する透明な第1の層と、
結合された光とそこからもたらされる、前記第1の層内で伝播するプレナーな光波の全反射を発生させるための、前記第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する、隣接する第2の層と、
前記第2の層の下に位置する、2つの電極層間の1つまたは複数の半導体層からなる、光電子センサ層を有し、前記電極層のうちの、試料へ向けられた電極層が少なくとも部分的に光を透過するように形成されている層システムと、
を有する光電子センサシステム。
【請求項2】
前記第1の層に、光を結合するためのプリズムまたは格子が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光電子センサシステム。
【請求項3】
前記第1の層が、ガラスからなることを特徴とする請求項1または2に記載の光電子センサシステム。
【請求項4】
前記第1の層が、50−300μmの厚みを有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の光電子センサシステム。
【請求項5】
前記第2の層が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の光電子センサシステム。
【請求項6】
前記第2の層と前記センサ層との間に、他の光学的なフィルタ層が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の光電子センサシステム。
【請求項7】
前記光電子センサ層が、2つのガラス層の間に配置されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の光電子センサシステム。
【請求項8】
前記第2の層に、当該第2の層の光学的透過挙動を変化させる物質が添加されていることを特徴とする請求項5に記載の光電子センサシステム。
【請求項9】
前記添加される物質が、吸収するピグメントまたは色素であることを特徴とする請求項8に記載の光電子センサシステム。
【請求項10】
前記表面上にマイクロアレイスポットを設けるための、第1のガラスキャリアと、
センサ用の基板としての第2のガラスキャリアと、
前記センサ用のカプセルとしての第3のガラスキャリアと、
前記2つの電極層間の1つまたは複数の半導体層からなる、前記第2と第3のガラスキャリアの間に位置するフォトセンシティブな光電子層であって、前記電極層のうちの、試料へ向けられた電極層が、部分的に光を透過するように形成されているフォトセンシティブな光電子層と、
前記第1と第3のガラスキャリアの間のPDMS中間層と、
前記第1のガラスキャリアの表面上に配置されたプリズムであって、前記プリズムが光源から放出された光ビームを定められた角度で前記第1のガラスキャリア内へ導入し、前記第1のガラスキャリア内で光ビームが前記PDMS中間層で全反射して、プラナー光波として前記第1のガラスキャリア内で導波されるプリズムと、
を有することを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の光電子センサシステム。
【請求項11】
前記第1のガラスキャリア内へ入射する光ビームの入射角度が、好ましくは、ガラスとPDMSの間の全反射のための限界角度よりも大きく、従って69°よりも大きいことを特徴とする請求項10に記載の光電子センサシステム。
【請求項12】
前記第1のガラスキャリアの厚みが50−200μmであり、前記第3のガラスキャリアと前記PDMS中間層をあわせた前記第1のガラスキャリアの厚みが、約300μmであり、前記センサの全体の厚みは、約1mmであることを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の光電子センサシステム。
【請求項13】
フォトセンシティブな層が、前記第2のガラスキャリア上に設けられていることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の光電子センサシステム。
【請求項14】
刺激する光源として、レーザー、LEDまたは300−650nmの波長を有するOLEDが使用されることを特徴とする請求項1〜13の何れか一項に記載の光電子センサシステム。
【請求項15】
フォトセンシティブな層が、有機半導体ベースで形成されていることを特徴とする請求項1〜14の何れか一項に記載の光電子センサシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2010−532873(P2010−532873A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518499(P2010−518499)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006354
【国際公開番号】WO2009/006928
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(509130170)ナノアイデント テクノロジーズ アクチェンゲゼルシャフト (8)
【Fターム(参考)】