説明

光電子デバイスで有用な材料の製造方法、該材料及び該光電子デバイス

光電子デバイスで有用な材料の製造方法が提供される。本方法は、ポリトリアリールアミンと化合物との混合物を用意する段階、該混合物のフィルムを形成する段階、及びフィルムを処理する段階を含んでなり、該化合物はアリールアミン及びアリールホスフィンから選択される1以上の官能基並びにビニル、アリル、ビニルエーテル、エポキシ及びアクリレートから選択される2以上の官能基を含むものである。製造される材料及び光電子デバイスも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、例えば光電子デバイスの正孔輸送材料及び/又は電子ブロック材料として有用な材料の製造方法、該材料、及び該材料を含む光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電圧バイアスに付すと発光する薄膜材料を使用する光電子デバイス(例えば、有機発光デバイス(OLED))は、ますますポピュラーな形態のフラットパネルディスプレイ技術になるものと予想される。これは、OLEDが携帯電話、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、コンピューターディスプレイ、車両用情報ディスプレイ、テレビジョンモニター並びに一般照明用光源を含む多種多様の潜在的用途を有するからである。鮮明な色、広い視角、フルモーションビデオとの適合性、広い温度範囲、薄くてコンフォーマブルな形状因子、低い所要電力、及び低コスト製造プロセスの実現可能性を有するので、OLEDは陰極線管(CRT)及び液晶ディスプレイ(LCD)に対する未来の代替技術と見られている。また、高い視感度効率のため、OLEDはある種の用途のための白熱灯及び恐らくは蛍光灯にさえ取って代わる可能性を有すると見られている。
【0003】
OLEDは、2つの対向する電極間に1以上の有機層を含んでなるサンドイッチ構造を有している。例えば、多層デバイスは、通常少なくとも3つの層、即ち正孔注入/輸送層、発光層及び電子輸送層(ETL)を含んでいる。さらに、正孔注入/輸送層は電子ブロック層として役立ち、ETLは正孔ブロック層として役立つことも好ましい。単層OLEDは、2つの対向する電極間にただ1つの材料層を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第98/06773号パンフレット
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本発明は、材料の製造方法であって、ポリトリアリールアミンと化合物との混合物を用意する段階、該混合物のフィルムを形成する段階、及びフィルムを処理する段階を含んでなり、該化合物がアリールアミン及びアリールホスフィンから選択される1以上の官能基並びにビニル、アリル、ビニルエーテル、エポキシ及びアクリレートから選択される2以上の官能基を含むものである方法に関する。
【0006】
別の態様では、本発明は上記の方法によって製造される材料に関する。
【0007】
別の態様では、本発明は上記の材料を含んでなる光電子デバイスに関する。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、光電子デバイスの製造方法であって、電極を用意する段階、発光層を用意する段階、及び電極と発光層との間に、上記の方法によって製造される材料を含む正孔輸送層を配設する段階を含んでなる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、作製したまま及びトルエンで洗浄した後におけるADS254のUV−visスペクトルを示している。
【図2】図2は、作製したまま及びトルエンで洗浄した後におけるADS254:化合物1のUV−visスペクトルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一態様では、本発明は、材料の製造方法であって、ポリトリアリールアミンと化合物との混合物を用意する段階、該混合物のフィルムを形成する段階、及びフィルムを処理する段階を含んでなり、該化合物がアリールアミン及びアリールホスフィンから選択される1以上の官能基並びにビニル、アリル、ビニルエーテル、エポキシ及びアクリレートから選択される2以上の官能基を含むものである方法に関する。
【0011】
別の態様では、本発明は上記の方法によって製造される材料に関する。
【0012】
別の態様では、本発明は上記の材料を含んでなる光電子デバイスに関する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、光電子デバイスの製造方法であって、電極を設ける段階、発光層を設ける段階、及び電極と発光層との間に、上記の方法によって製造される材料を含む正孔輸送層を設ける段階を含んでなる方法に関する。
【0014】
幾つかの実施形態では、混合物はポリトリアリールアミンと化合物との混合物溶液である。
【0015】
幾つかの実施形態では、処理段階は熱及び/又は光放射の下でフィルムを処理することを含んでいる。
【0016】
幾つかの実施形態では、本方法はさらに処理されたフィルムを洗浄する段階を含んでいる。
【0017】
幾つかの実施形態では、ポリトリアリールアミンは次の式Iの構成単位を含んでいる。
【0018】
【化1】

式中、R1は各々独立にC1〜C20脂肪族基、C3〜C20芳香族基又はC3〜C20脂環式基であり、aは各々独立に0〜4の範囲内の整数である。
【0019】
幾つかの実施形態では、ポリトリアリールアミンは次の式IIの構造単位を含んでいる。
【0020】
【化2】

幾つかの実施形態では、化合物は次の式を有している。
【0021】
【化3】

式中、
Ar1は直接結合、アリール又はヘテロアリールであり、
Ar2及びAr3は各々独立にアリール又はヘテロアリールであり、
Aは各々独立にO又は直接結合であり、
2はC1〜C20脂肪族基、C3〜C20芳香族基又はC3〜C20脂環式基であり、
bは0〜4の範囲内の整数である。
【0022】
幾つかの実施形態では、化合物は下記のものから選択される。
【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

幾つかの実施形態では、ポリトリアリールアミン及び該化合物は混合物溶液中に1:1の重量比で存在する。
【0025】
本発明で製造される材料は、溶液法を用いた有機発光デバイス(OLED)のような光電子デバイスの形成に際して後に適用される溶媒に可溶でなく、例えばOLEDにおいて有用であり、特にOLED用の正孔輸送材料及び/又は電子ブロック材料として使用するのによく適している。
【0026】
光電子デバイス(例えば、OLED)は、通例、最も簡単な場合には陽極層、対応する陰極層、及び前記陽極と前記陰極との間に配設された有機エレクトロルミネセント層を含んでいる。電極間に電圧バイアスを印加した場合、陰極からエレクトロルミネセント層中に電子が注入される一方、エレクトロルミネセント層から陽極に電子が除去される(又は陽極からエレクトロルミネセント層中に「正孔」が「注入」される)。エレクトロルミネセント層中で正孔が電子と結合して一重項又は三重項励起子を形成する際に発光が起こると共に、一重項及び/又は三重項励起子が放射崩壊によって基底状態に戻る際にも発光が起こる。
【0027】
陽極、陰極及び発光材料に加えてOLED中に存在し得る他の構成要素には、正孔注入層、電子注入層及び電子輸送層がある。電子輸送層は陰極に直接接触している必要はなく、多くの場合に電子輸送層は正孔が陰極に向かって移動するのを防止するための正孔ブロック層としても役立つ。有機発光デバイス中に存在し得る追加の構成要素には、正孔輸送層、正孔輸送発光層及び電子輸送発光層がある。
【0028】
一実施形態では、本発明の材料を含むOLEDは、一重項発光体を含む蛍光性OLEDであり得る。別の実施形態では、本発明の材料を含むOLEDは、1種以上の三重項発光体を含むりん光性OLEDであり得る。別の実施形態では、本発明のポリマーを含むOLEDは、1種以上の一重項発光体及び1種以上の三重項発光体を含んでいる。本発明の材料を含むOLEDは、Ir、Os及びPtのような遷移金属の錯体をはじめとする、青色、黄色、オレンジ色及び赤色りん光色素の1種以上、そのいずれか1種又はその組合せを含み得る。特に、American Dye Source,Inc.(ケベック、カナダ)から供給されるもののようなエレクトロホスホレセント及びエレクトロフルオレセント金属錯体が使用できる。かかる材料は、OLEDの発光層又は正孔輸送層又は電子輸送層又は電子注入層或いはこれらの任意の組合せの一部であり得る。
【0029】
有機エレクトロルミネセント層(即ち、発光層)は、動作時に電子及び正孔の両方を実質的な濃度で含み、励起子形成及び発光のための部位を提供する有機発光デバイス中の層である。正孔注入層は、陽極に接触していて陽極からOLEDの内層への正孔注入を促進する層であり、電子注入層は、陰極に接触していて陰極からOLED中への電子注入を促進する層であり、電子輸送層は、陰極及び/又は電子注入層から電荷再結合部位への電子伝導を容易にする層である。電子輸送層を含む有機発光デバイスの動作中には、電子輸送層中に存在する電荷キャリヤー(即ち、正孔及び電子)の大部分は電子であり、発光層中に存在する正孔及び電子の再結合を通じて発光が起こり得る。正孔輸送層は、OLEDの動作時に陽極及び/又は正孔注入層から電荷再結合部位への正孔伝導を容易にすると共に、陽極に直接接触している必要はない層である。正孔輸送発光層は、OLEDの動作時に電荷再結合部位への正孔伝導を容易にすると共に、電荷キャリヤーの大部分が正孔であり、残留電子との再結合によってばかりでなくデバイス中の他の場所にある電荷再結合ゾーンからのエネルギー移行によっても発光が起こる層である。電子輸送発光層は、OLEDの動作時に電荷再結合部位への電子伝導を容易にすると共に、電荷キャリヤーの大部分が電子であり、残留正孔との再結合によってばかりでなくデバイス中の他の場所にある電荷再結合ゾーンからのエネルギー移行によっても発光が起こる層である。
【0030】
陽極として使用するのに適した材料には、四点プローブ技法で測定して好ましくは約1000オーム/平方のバルク抵抗率を有する材料がある。陽極としては、酸化インジウムスズ(ITO)がしばしば使用される。これは、ITOが光の透過に対して実質的に透明であり、したがって電気活性有機層から放出された光の脱出を容易にするからである。陽極層として使用できる他の材料には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛インジウムスズ、酸化アンチモン及びこれらの混合物がある。
【0031】
陰極として使用するのに適した材料には、特に限定されないが、負電荷キャリヤー(電子)をOLEDの内層に注入できる金属及びITOなどの金属酸化物を含む一般導電体がある。陰極として使用するのに適した各種の金属には、K、Li、Na、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、Au、In、Sn、Zn、Zr、Sc、Y、ランタニド系列の元素、これらの合金及びこれらの混合物がある。陰極層として使用するのに適した合金材料には、Ag−Mg、Al−Li、In−Mg、Al−Ca及びAl−Au合金がある。層状の非合金構造体、例えばカルシウムのような金属又はLiFのような金属フッ化物の薄層をアルミニウム又は銀のような金属の厚い層で覆ったものも、陰極として使用できる。特に、陰極はただ1種の金属(とりわけ、アルミニウム金属)からなり得る。
【0032】
電子輸送層中に使用するのに適した材料には、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,1−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、1,3,4−オキサジアゾール含有ポリマー、1,3,4−トリアゾール含有ポリマー、キノキサリン含有ポリマー及びシアノPPVがある。
【0033】
本発明で製造される材料は、1,1−ビス((ジ−4−トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン、N,N'−ビス(4−メチルフェニル)−N,N'−ビス(4−エチルフェニル)−(1,1'−(3,3'−ジメチル)ビフェニル)−4,4'−ジアミン、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N',N'−2,5−フェニレンジアミン、フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン、トリフェニルアミン、1−フェニル−3−(p−(ジエチルアミノ)スチリル)−5−(p−(ジエチルアミノ)フェニル)ピラゾリン、1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン、N,N,N',N'−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1'−ビフェニル)−4,4'−ジアミン、銅フタロシアニン、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾール、トリアリールジアミン、テトラフェニルジアミン、芳香族第三アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、及び米国特許第6,023,371号に開示されているようなポリチオフェンのような旧来の材料の代わりに又はそれに加えて正孔輸送層中に使用できる。
【0034】
発光層中に使用するのに適した材料には、ポリフルオレン、好ましくはポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)及びそのコポリマー(例えば、ポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(F8−TFB))、ポリ(ビニルカルバゾール)及びポリフェニレンビニレン並びにその誘導体のようなエレクトロルミネセントポリマーがある。加えて、発光層は、青色、黄色、オレンジ色、緑色又は赤色りん光色素又は金属錯体或いはこれらの組合せを含み得る。りん光色素として使用するのに適した材料には、特に限定されないが、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(赤色色素)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(緑色色素)及びイリジウム(III)ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2)(青色色素)がある。ADS社(American Dyes Source,Inc.)から商業的に入手可能なエレクトロフルオレセント及びエレクトロホスホレセント金属錯体も使用できる。ADS緑色色素には、ADS060GE、ADS061GE、ADS063GE、ADS066GE、ADS078GE及びADS090GEがある。ADS青色色素には、ADS064BE、ADS065BE及びADS070BEがある。ADS赤色色素には、ADS067RE、ADS068RE、ADS069RE、ADS075RE、ADS076RE、ADS067RE及びADS077REがある。
【0035】
本発明で製造される材料は、光電子デバイス(例えば、OLED)の正孔輸送層又は正孔注入層又は発光層の一部をなし得る。かかるOLEDは、青色、黄色、オレンジ色、緑色及び赤色りん光色素の1種以上、そのいずれか1種又はその組合せを含むりん光性のものであり得る。
【0036】
定義
本明細書で使用する「芳香族基」という用語は、1以上の芳香族原子団を含む原子価1以上の原子配列をいう。1以上の芳香族原子団を含む原子価1以上の原子配列は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。本明細書で使用する「芳香族基」という用語は、特に限定されないが、フェニル基、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、ナフチル基、フェニレン基及びビフェニル基を包含する。上述の通り、芳香族基は1以上の芳香族原子団を含んでいる。芳香族原子団は常に4n+2(式中、「n」は1以上の整数である。)の「非局在化」電子を有する環状構造体であり、フェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)及びアントラセニル基(n=3)で例示される。芳香族基はまた、非芳香族成分を含んでいてもよい。例えば、ベンジル基はフェニル環(芳香族原子団)及びメチレン基(非芳香族成分)からなる芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は芳香族原子団(C63)が非芳香族成分−(CH24−に縮合してなる芳香族基である。便宜上、本明細書での「芳香族基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルフェニル基はメチル基を含むC7芳香族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロフェニル基はニトロ基を含むC6芳香族基であり、ニトロ基が官能基である。芳香族基は、4−トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CF32PhO−)、4−クロロメチルフェン−1−イル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェン−1−イル(即ち、3−CCl3Ph−)、4−(3−ブロモプロプ−1−イル)フェン−1−イル(即ち、4−BrCH2CH2CH2Ph−)などのハロゲン化芳香族基を包含する。芳香族基のさらに他の例には、4−アリルオキシフェン−1−オキシ、4−アミノフェン−1−イル(即ち、4−H2NPh−)、3−アミノカルボニルフェン−1−イル(即ち、NH2COPh−)、4−ベンゾイルフェン−1−イル、ジシアノメチリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CN)2PhO−)、3−メチルフェン−1−イル、メチレンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhCH2PhO−)、2−エチルフェン−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPh(CH26PhO−)、4−ヒドロキシメチルフェン−1−イル(即ち、4−HOCH2Ph−)、4−メルカプトメチルフェン−1−イル(即ち、4−HSCH2Ph−)、4−メチルチオフェン−1−イル(即ち、4−CH3SPh−)、3−メトキシフェン−1−イル、2−メトキシカルボニルフェン−1−イルオキシ(例えば、メチルサリチル)、2−ニトロメチルフェン−1−イル(即ち、2−NO2CH2Ph)、3−トリメチルシリルフェン−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェン−1−イル、4−ビニルフェン−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)などがある。「C3〜C20芳香族基」という用語は、3以上で20以下の炭素原子を含む芳香族基を包含する。芳香族基1−イミダゾリル(C322−)はC3芳香族基を代表する。ベンジル基(C77−)はC7芳香族基を代表する。
【0037】
本明細書で使用する「脂環式基」という用語は、環状であるが芳香族でない原子配列を含む原子価1以上の基をいう。本明細書で定義される「脂環式基」は、芳香族原子団を含まない。「脂環式基」は1以上の非環式成分を含んでいてもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)は、シクロヘキシル環(環状であるが芳香族でない原子配列)及びメチレン基(非環式成分)からなる脂環式基である。脂環式基は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。便宜上、本明細書での「脂環式基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルシクロペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂環式基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロシクロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂環式基であり、ニトロ基が官能基である。脂環式基は、同一又は相異なるものであってよい1以上のハロゲン原子を含み得る。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂環式基には、2−トリフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクト−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン−2,2−ビス(シクロヘキス−4−イル)(即ち、−C610C(CF32610−)、2−クロロメチルシクロヘキス−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキス−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキス−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキス−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペント−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキス−1−イルオキシ(例えば、CH3CHBrCH2610O−)などがある。脂環式基のさらに他の例には、4−アリルオキシシクロヘキス−1−イル、4−アミノシクロヘキス−1−イル(即ち、H2NC610−)、4−アミノカルボニルシクロペント−1−イル(即ち、NH2COC58−)、4−アセチルオキシシクロヘキス−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610C(CN)2610O−)、3−メチルシクロヘキス−1−イル、メチレンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610CH2610O−)、1−エチルシクロブト−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610(CH26610O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、4−HOCH2610−)、4−メルカプトメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、4−HSCH2610−)、4−メチルチオシクロヘキス−1−イル(即ち、4−CH3SC610−)、4−メトキシシクロヘキス−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキス−1−イルオキシ(2−CH3OCOC610O−)、4−ニトロメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、NO2CH2610−)、3−トリメチルシリルシクロヘキス−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペント−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキス−1−イル(例えば、(CH3O)3SiCH2CH2610−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などがある。「C3〜C10脂環式基」という用語は、3以上で10以下の炭素原子を含む脂環式基を包含する。脂環式基2−テトラヒドロフラニル(C47O−)はC4脂環式基を代表する。シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)はC7脂環式基を代表する。
【0038】
本明細書で使用する「脂肪族基」という用語は、環状でない線状又は枝分れ原子配列からなる原子価1以上の有機基をいう。脂肪族基は1以上の炭素原子を含むものと定義される。脂肪族基をなす原子配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。便宜上、本明細書での「脂肪族基」という用語は、「環状でない線状又は枝分れ原子配列」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基で置換された有機基を含むものと定義される。例えば、4−メチルペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂肪族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、4−ニトロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂肪族基であり、ニトロ基が官能基である。脂肪族基は、同一又は相異なるものであってよい1以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であり得る。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂肪族基には、ハロゲン化アルキルであるトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば、−CH2CHBrCH2−)などがある。脂肪族基のさらに他の例には、アリル、アミノカルボニル(即ち、−CONH2)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(即ち、−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(即ち、−CH3)、メチレン(即ち、−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル(即ち、−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(即ち、−CH2OH)、メルカプトメチル(即ち、−CH2SH)、メチルチオ(即ち、−SCH3)、メチルチオメチル(即ち、−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(即ち、CH3OCO−)、ニトロメチル(即ち、−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル(即ち、(CH33Si−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(即ち、(CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどがある。さらに他の例としては、C1〜C20脂肪族基は1以上で20以下の炭素原子を含んでいる。メチル基(即ち、CH3−)はC1脂肪族基の例である。デシル基(即ち、CH3(CH29−)はC10脂肪族基の例である。
【0039】
本明細書で使用する「ヘテロアリール」という用語は、芳香環の1以上の炭素原子が窒素、酸素、ホウ素、セレン、リン、ケイ素又は硫黄のようなヘテロ原子で置き換えられた芳香環又は不飽和環をいう。ヘテロアリールは、単一の芳香環、複数の芳香環、又は1以上の非芳香環とカップリングした1以上の芳香環であり得る構造体をいう。複数の環を有する構造体では、環は互いに縮合していてもよく、共有結合していてもよく、或いはエーテル部分、メチレン部分又はエチレン部分のような共通の基に結合していてもよい。共通の結合基はまた、フェニルピリジルケトンの場合のようにカルボニルであってもよい。ヘテロアリール環の例には、チオフェン、ピリジン、イソキサゾール、ピラゾール、ピロール、フラン、イミダゾール、インドール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール、トリアゾール、これらの基のベンゾ縮合類似体、ベンゾピラノン、フェニルピリジン、トリルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、フェニルイソキノリン、ジベンゾキノザリン、フルオレニルピリジン、ケトピロール、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、チエニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、フェニルイミン、ピリジルナフタレン、ピリジルピロール、ピリジルイミダゾール及びフェニルインドールがある。
【0040】
本明細書で使用する「アリール」という用語は、単一の芳香環又は複数の芳香環であり得る芳香族置換基をいう。複数の芳香環は互いに縮合しているか、共有結合しているか、或いはエーテル部分、メチレン部分又はエチレン部分のような共通の基に結合している。芳香環としては、特にフェニル、ナフチル、アントラセニル及びビフェニルが挙げられる。特定の実施形態では、アリールは1〜200の炭素原子、1〜50の炭素原子、又は1〜20の炭素原子を有する。
【0041】
本明細書で使用する「アルキル」という用語は、枝分れ又は枝なしで飽和又は不飽和の非環状炭化水素基をいう。好適なアルキル基には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−プロペニル(又はアリル)、ビニル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル(又は2−メチルプロピル)などがある。特定の実施形態では、アルキルは1〜200の炭素原子、1〜50の炭素原子、又は1〜20の炭素原子を有する。
【0042】
本明細書で使用する「シクロアルキル」という用語は、単一の環又は複数の縮合環を有する飽和又は不飽和の環状非芳香族炭化水素基をいう。好適なシクロアルキル基には、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクテニル、ビシクロオクチルなどがある。特定の実施形態では、シクロアルキルは3〜200の炭素原子、3〜50の炭素原子、又は3〜20の炭素原子を有する。
【0043】
本明細書に記載される任意の数値は、低い値と高い値との間に少なくとも2単位のひらきがあれば、低い値から高い値まで1単位ずつ大きくなる値をすべて含む。例えば、成分の量又はプロセス変量(例えば、温度、圧力、時間など)の値が1〜90、好ましくは20〜80、さらに好ましくは30〜70であると述べられた場合、本明細書には15〜85、22〜68、43〜51、30〜32などの値が明記されたものと意図されている。1より小さい値については、1単位は場合に応じて0.0001、0.001、0.01または0.1であると考えられる。これらは明確に意図されているものの例示に過ぎず、記載された最低値と最高値の間の数値の可能な組合せはすべて、本願において同様に明記されていると考えるべきである。
【実施例】
【0044】
比較例1:ADS254に関するウォッシュオフ試験
ADS254をAmerican Dye Sources,Inc.から購入し、受け入れたままで使用した。10mgのADS254を2.0mlのトルエンに溶解することで、ADS254の0.5w/v%溶液を調製した。次いで、予め清浄にした石英基板上に該溶液をスピンキャスティングすることでADS254の薄いフィルム(厚さ30nm)を得、これを170℃でベークして残留溶媒を除去した。次いで、UV−vis吸収分光計を用いてフィルムの吸光度を記録した。次いで、フィルム上でトルエンをスピンキャスティングすることにより、試料をトルエンで洗浄した。別のUV−visスペクトルを採取した。
【0045】
【化6】

図1からはっきりとわかる通り、380nmにピークを有する吸光度は、作製したままの試料に関する0.293から、トルエンで洗浄した後の0.04に減少した。これは、約85%のADS254がトルエンでの洗浄によって除去されたことを表している。
【0046】
実施例1:ADS254:化合物1に関するウォッシュオフ試験
化合物1をKonica Minolta Holdings,Inc.(東京、日本)から入手した。比較例1と同様にして実験を行った。トルエン中0.5w/v%ADS254の0.8mlとトルエン中0.5w/v%化合物1の0.8mlとを混合することで、ADS254:化合物1(50:50)の混合物溶液を調製した。次いで、スピンキャスティングによってADS254:化合物1の薄いフィルム(厚さ35nm)を得、これを165℃で10秒間ベークし、UV(365nm及び20mW/cm2)下で30秒間硬化させ、さらに130℃で20分間ベークした。次いで、フィルム上でトルエンをスピンキャスティングすることにより、試料をトルエンで2回洗浄した。2回の洗浄段階前及び各洗浄段階後に試料のUV−visスペクトルを採取した。さらに、試料をトルエンに2分間浸漬し、別のUV−visスペクトル(図2中に「3回目の浸漬及び洗浄後」として示す)を採取した。
【0047】
【化7】

図2からはっきりとわかる通り、すべての洗浄段階の前後に採取されたUV−visスペクトルに検出可能な差は存在しない。これは、処理後のADS254:化合物1のフィルムがもはやトルエンに可溶でないことを表している。
【0048】
以上、本明細書には本発明の若干の特徴のみを例示し説明してきたが、当業者には数多くの修正及び変更が想起されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は本発明の真の技術思想に含まれるこのような修正及び変更のすべてを包含することを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の製造方法であって、
ポリトリアリールアミンと化合物との混合物を用意する段階、
該混合物のフィルムを形成する段階、及び
フィルムを処理する段階
を含んでなり、該化合物がアリールアミン及びアリールホスフィンから選択される1以上の官能基並びにビニル、アリル、ビニルエーテル、エポキシ及びアクリレートから選択される2以上の官能基を含むものである、方法。
【請求項2】
混合物がポリトリアリールアミンと化合物との混合物溶液である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
処理段階が熱及び/又は光放射の下でフィルムを処理することを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
さらに処理されたフィルムを洗浄する段階を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ポリトリアリールアミンが次の式Iの構成単位を含む、請求項3記載の方法。
【化1】

(式中、R1は各々独立にC1〜C20脂肪族基、C3〜C20芳香族基又はC3〜C20脂環式基であり、aは各々独立に0〜4の範囲内の整数である。)
【請求項6】
ポリトリアリールアミンが次の式IIの構造単位を含む、請求項3記載の方法。
【化2】

【請求項7】
化合物が次の式を有する、請求項5記載の方法。
【化3】

(式中、
Ar1は直接結合、アリール又はヘテロアリールであり、
Ar2及びAr3は各々独立にアリール又はヘテロアリールであり、
Aは各々独立にO又は直接結合であり、
2はC1〜C20脂肪族基、C3〜C20芳香族基又はC3〜C20脂環式基であり、
bは0〜4の範囲内の整数である。)
【請求項8】
化合物が下記のものから選択される、請求項6記載の方法。
【化4】

【化5】

【請求項9】
ポリトリアリールアミン及び化合物が混合物溶液中で1:1の重量比を有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法によって製造される材料。
【請求項11】
請求項1記載の方法によって製造される材料を含んでなる光電子デバイス。
【請求項12】
混合物がポリトリアリールアミンと化合物との混合物溶液である、請求項11記載の光電子デバイス。
【請求項13】
処理段階が熱及び/又は光放射の下でフィルムを処理することを含む、請求項12記載の光電子デバイス。
【請求項14】
さらに処理されたフィルムを洗浄する段階を含む、請求項13記載の光電子デバイス。
【請求項15】
ポリトリアリールアミンが次の式の構成単位を含む、請求項13記載の光電子デバイス。
【化6】

(式中、R1は各々独立にC1〜C20脂肪族基、C3〜C20芳香族基又はC3〜C20脂環式基であり、aは各々独立に0〜4の範囲内の整数である。)
【請求項16】
ポリトリアリールアミンが次の式の構造単位を含む、請求項13記載の光電子デバイス。
【化7】

【請求項17】
化合物が次の式を有する、請求項15記載の光電子デバイス。
【化8】

(式中、
Ar1は直接結合、アリール又はヘテロアリールであり、
Ar2及びAr3は各々独立にアリール又はヘテロアリールであり、
Aは各々独立にO又は直接結合であり、
2はC1〜C20脂肪族基、C3〜C20芳香族基又はC3〜C20脂環式基であり、
bは0〜4の範囲内の整数である。)
【請求項18】
化合物が下記のものから選択される、請求項6記1載の光電子デバイス。
【化9】

【化10】

【請求項19】
ポリトリアリールアミン及び化合物が混合物溶液中で1:1の重量比を有する、請求項18記載の光電子デバイス。
【請求項20】
光電子デバイスの製造方法であって、
電極を設ける段階、
発光層を設ける段階、及び
電極と発光層との間に、請求項1記載の方法によって製造される材料を含む正孔輸送層を設ける段階
を含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−510927(P2013−510927A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538880(P2012−538880)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/055948
【国際公開番号】WO2011/062802
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】