説明

光電陰極構造及び使用方法

整流接合を有する新規な光電陰極を提案し、各種装置及び暗視用器具における光電陰極に拡張可能なカラーイメージングを可能とすることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトル応答を電気的に変更可能な新規な光電陰極又は光電陰極構造と、これを使用するための新規なシステムに関するものである。光電陰極は、光の存在を検出し、又は入射光学像を電子形式で再現するための種々のシステムで用いることができる。この新規な構造は、種々の応用装置、例えば医学、計測、暗視、光倍増、カメラ及び撮像システムに適しており、さらに、光倍増管(PMT)として、又は光倍増管の応用分野における使用に適している。
【0002】
PMT、イメージ増強装置及び電子攻撃された活性ピクセル・センサ(EBAPS)は、種々の方法で用いられる。これらシステムの多くは、入力光及び出力光のイメージに含まれるスペクトル情報又は空間情報によって特徴づけられる。本発明は、可動部を必要とすることなくスペクトル情報及び空間情報を提供可能と刷るものである。空間情報は、光電子が光電陰極構造から放出される位置を検出することにより引き出される。スペクトル情報は、本発明のカソードが異なるスペクトル状態の間で切り換えられる少なくとも2つの経時的な測定値間の検出光の強度を比較することにより引き出される。本発明が有用性を発揮する一実施例は、フローセル計測システムにおける複数の蛍光サインを探索するPMTの使用を含む。本発明が可動部を必要としないことは、達成されるスペクトル応答の非常に急速なスペクトルシフトを容易にする。これによりシステム製造業者は、例えばセル単体がフローサイトメータの分析ウィンドウを通過する際に、複数のPMTや複雑な光路を必要とすることなく、その「色」を測定することが可能である。
【0003】
他の興味深い応用装置は、低光量結像系に関連する。暗視装置は、軍事用及び警備用として広範に使用されている。現在では、多くのセンサ技術が低光量でのイメージングに適用されている。本発明は、特に、イメージ増強装置に基づく暗視カメラシステムに有用である。これらのシステムにおいては、光電陰極が入射光を検出する。光電陰極は光子の自由電子への変換を行う。増強装置は、エネルギ又は自由電子数を増加させるための利得機構を含む。最後に、増強されたカメラシステムは、利得段からの増幅された信号を、例えばビデオ信号を通じて可視画像に変換するための手段を含む。従来技術の増強装置は、電子増倍手段としてのマイクロチャネルプレート(MCP)を組み込んでおり、直接的に観察可能な、又は最終的なビデオ画像を生成するためにCCD又はCMOSイメージセンサと結合可能な蛍光スクリーンを用いる。
【0004】
商業的に入手可能な大多数の暗視装置は、単色像を生成する。カラー暗視センサ及びカメラを実現するために、多くの異なった方法が提案されている。標準的なイメージ増強装置の単色像を表示するため、カラー・パレットにマップする算出方法が既知である(New Scientist Magazine、2486号、2005年2月12日発行、21頁)。また、照明やセンサ・スペクトル応答の変化に基づいて情報を生成する方法も既知である。本発明は、後者の種類のシステムに関連するものである。
【0005】
本明細書は、転送モードの半導体光電陰極構造の第1層中、又はその表面に整流接合を配置した新規な光電陰極構造を開示するものである。光電陰極が支持体上に配置される場合、光電陰極層に向けられた光は、ガラス等の支持体を通過し、整流接合を通過した後に光電陰極構造の残部に入射する。そのような支持体が不要であれば、入力光は、整流接合を直接的に通過した後に光電陰極構造の残部に入射する。本明細書は、更に、整流接合に逆バイアスを印加してスペクトル応答性を変更可能とした新規なシステムも開示するものである。バイアス印加時及びバイアス非印加時におけるシステムの出力を比較することにより、マルチカラーイメージを生成することが可能である。このように、本発明に係る新規な光電陰極は、例えば高性能のカラー暗視増幅器システムやカメラを実現可能とするものである。センサのスペクトル分布は、標準型のPMT又はイメージ増強装置の手前に配置される電気的に調整可能な光学フィルタを用いてシフトさせることが可能ではあるが、マルチカラーイメージングのための手段としての光学フィルタは不所望の信号損失につながる。それにも係わらず、関心がある場合には、現在まで設計されているこの種の最適なフィルタの1つは、NASAのテクニカルブリーフNPO‐20245に記載されている。
【0006】
暗視装置の品質又は有用性を記述する場合、通常は、用途に応じたフィギュア・オブ・メリットに論及する。例えば、軍事環境に用いられる理想的な頭部装着型のカラー暗視装置では、軽量であること、ショットノイズで制約された信号対雑音比(SNR)の下、その通過帯域内で入射光子を100%検出できること、その際に実質的に電力を消費しないことが求められている。同時に、システム重量が最小限であることも求められている。
【0007】
全ての既存の及び提案されたカラー暗視カメラは、理想的なセンサと比較して一部の妥協を強いられている。スミスの米国特許第6570147号によって提唱されているカラー暗視装置は、複数のイメージ増強装置をプリズムの後方に配置し、そのプリズムにより光を各センサに対応する異なる色に分割するものである。この手法は、対物レンズに入射する全ての光子を保存し、それらを適切なセンサに振り当てる場合には非常に効率的である。しかしながら、このシステムは、大きさ、重量及び消費電力において問題がある。各色のチャネルが固有の増強装置及びビデオ・キャプチャ・チャネルを必要とし、これに付随して大きさ及び電力消費が増加するため、この手法は、頭部装着型のセンサには不適当である。分割プリズム・システムも、通常は、背面焦点距離の大きい対物レンズを必要とする。これは、広い視野及びF値の低いレンズを必要とする頭部装着型暗視装置に深刻な制約を課している。このようなシステムは、多くの部品のために高価であるという欠点も有するものである。
【0008】
可動フィルタを使用することにより、暗視センサのスペクトル応答性を連続的に変化させる多くのカラー暗視カメラが提案されている。これらは、米国特許第6614606号及び同第4724354号により例証されている。この場合、時間的及びスペクトル的に異なるフレームを光学領域又は電気領域で再結合して、出力カラーイメージを生成するものである。フィルタ手法は、分割プリズムを使用する手法と対比して、入力光子に関して若干ではあるが非効率的である。と言うのは、光子が光電陰極に到達する前に吸収されるため、スペクトル変化が影響を受けるからである。この種類のシステムの大きな欠点は、可動フィルタの低信頼性及び大きさである。すなわち、信頼性が低く、構造全体も大型であるため、このようなシステムを例えば軍事用の頭部装着型ゴーグルに適用することは不適当である。
【0009】
フィルタに基づく第2の種類の暗視ゴーグルにおいては、光電陰極における物理的に隣接した小さい部分にフィルターをかけることにより、スペクトル的及び空間的に異なるパッチのモザイクをセンサ出力に発生させてカラーイメージを生成する。これらのパッチ(「タイル」とも称する。)は、光学的又は電気的に再結合してカラーイメージを生成するものである。この手法は、例えば米国特許第5742115号に開示されている。一見すると、この手法は、軽量かつコンパクトであり、電力消費も潜在的に低いために頭部装着型のカラー暗視装置に適しているように思われる。しかし、スペクトル的にタイル分割する光電陰極は、イメージ増強装置で散見される不完全な変調伝達関数(MTF)が欠点である。さらに、このようなシステムは製造公差が非常に小さく、したがってセンサが極端に高価となる。
【0010】
光電陰極は、多種多様な類型に区分されている。初期の暗視イメージ増強装置の多くは多種アルカリ・アンチモン化合物型の光電陰極を使用しており、これについてはA.H.サマー著 “Photoemissive Materials”、ロバートE.クリーガー出版発行、1980年、において記述されている。これらの光電陰極の現代版は、市販されているイメージ増強装置の大部分を占めるものである。1950年代において、新規な光電陰極についての研究が定着・加速され、フィジカル・レビュー112、114(1958)におけるウィリアムE.スパイサーの報告に至っている。この報告は、負電子親和型半導体光電陰極の理解及びエンジニアリングを可能とする詳細モデルに関するものである。この教示は、負電子親和力(NEA)及び電子移動(TE)に基づく半導体光電陰極構造を利用している。スパイサーの発表後、多種多様な光電陰極が開発された。初期の設計の1つとして、米国特許第3631303号は、バンドギャップを使用する半導体吸光層を記載している。その開示に係る構造において、半導体基板は、活性層の背面のための不活性化層として作用する大きなバンドギャップ材料からなる。反射モードの光電陰極として薄い基板面ウィンドウ層を用いて説明されているが、その構造は転送モードでも等しく機能するものである。米国特許第5268570号に開示されているように、現代の第三世代型イメージ増強光電陰極は、吸光層がP型IGaAs窓層と結合したP型ガリウム砒素又は砒化ガリウムインジウムを使用する。AIGaAs又はAIInGaAs窓層は、P型ドーピングレベルが高く(通常、1x1018/cm3を超えている。)、バンドギャップが大きいので、光子から生成された電子を保存する上で非常に効率的なヘテロ構造を実現することが可能である。現代のガリウム砒素光電陰極の実施例及び製造方法は、米国特許第5597112号に開示されている。ヘテロ接合に拡散する光電子は、ポテンシャル障壁により吸光層に向けて、したがって減圧出射面に向けて反射される。米国特許第3631303号に開示されている傾斜バンドギャップ構造は、光電子の拡散/移動を減圧出射面に向ける点で類似した役割を果たすものである。
【0011】
これらの半導体NEA光電陰極は、受動的な光電陰極に分類することができる。使用中、これらの光電陰極は、単一の特定された電位にセットされる。換言すれば、2本以上の接点端子を横切るバイアス電圧の適用により特定される陰極中に電界は存在しない。商業的に成功した全ての暗視用半導体NEA陰極は、このカテゴリに分類される。これは、電界により誘起される暗電流供給源をアクティブ型の光電陰極構造から排除するのが困難であることに起因している。現在のガリウム砒素ベースの暗視用陰極は、室温下で通常は1x1014 A/cm2オーダの暗電流を発生すると共に、40%を上回る外的量子効率を示す。これは、バイアス印加型の光電陰極構造にとって非常に厳格に遵守すべき必要条件である。
【0012】
多くのアクティブ型光電陰極構造が既知である。米国特許第3361303号、第5047821号及び第5576559号に記載されている陰極構造は、ゲート制御の応用面で商業的な成功を収めている。他のアクティブ型光電陰極構造、例えば米国特許特許第3814993号に開示されている陰極構造については、有意な商業的成功が報じられていない。アクティブ型の、電気的にゲート及びシャッター制御された増強システムは、通常は能動型の照明と併用され、したがって大きな光電陰極暗電流に対して耐久性がある。事実、市販のアクティブ型光電陰極は、室温下で5x103A/cm2オーダの暗電流を発生する。このオーダの暗電流のため、増強装置は、室温に対して受動的な暗視センサとして競争から除外される。冷却と関連する電源特性は、これらの陰極冷却型の実施形態を小型・軽量なユニット、例えば頭部装着型暗視装置の候補から除外する。しかしながら、軽量性が重要でない場合には、この種の光電陰極も暗視装置に適用可能である。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、その最も基本的な形態において、整流接合の一部としての、バンドギャップの大きいウィンドウ層と、吸光エミッタ層とを含むヘテロ接合半導体光電陰極を提供するものである。ウィンドウ層は、吸光層上に直接的に配置されたp型部分を含む。吸光層とは反対側のP型層の面は、ショットキーバリア層(わずかに不純物添加したか、固有的に存在する半導体層を含む場合もある。)か、n型半導体層によって覆われる。ウィンドウ層のP型部分の厚み幅及びドーピングは、整流接合を横切ってバイアスが印加されない場合に、少なくともP型ウィンドウ層が100オングストロームオーダで空乏状態に維持されるように設定する。整流接合のN層又はショットキー層と、陰極のP型部分に電気接点を個別的に設ける。したがって、バイアス電圧が印加されない場合、本発明に係るウィンドウ層は、米国特許第5268570号に開示されているものと同様に作用する。しかし、数ボルトの逆バイアス電圧が印加される場合、整流接合に伴う空乏層は吸光層に達する。空乏層に由来する電界は、該層において発生する光電子を減圧面における拡散により防止する。印加されるバイアス電圧は、ウィンドウ層の伝導帯を空乏状態の吸光層の伝導帯いかにするために十分でなければならない。同様に、電界が印加された結果として生じる暗電流電子も、捕獲される。これらの電子は、空乏状態のヘテロ接合に形成される井戸において捕獲される。結局、これらの電子はヘテロ接合バリア上に熱的に発散され、接触層にドリフトする電子は導通により消散される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図示の好適な実施形態について更に詳述する。
【0015】
図1は、光電子増倍管17にて二色光電陰極16を使用することで、特定の種類の血球を分離して、その血球数を数えるフローサイトメトリーシステムを示す。管17は、分析対象の血球12が試料管19を通過する際に、カラーにより血球12の種類を区別することができる。血液又はその他の懸濁液の供給は、かかる懸濁液を放出して、管19内を通過する際に解析される管19内の流量を調節する、供給及び流量制御機構11にて行われる。光源13は、試料管19の一部分に照射される。光源13からの光路は点線1にて示されており、かかる光路は、光源13から管19を通り、次いで、集光光学部品15を通り、光電陰極16に達する。コンピュータ制御ユニット20は、光電陰極16を制御して、光電子倍増管17からの信号を分析する。また、ユニット20は、血球分離装置18を制御する。
【0016】
二色光電子増倍管17の使用により、放射光又は散乱光のカラーをキーイングすることで、異なる血球から発生する信号間における、サイトメトリーユニットの信号/ノイズ比を改善することができる。かかるカラーは、カラー分離要素及び複数の光電子増倍管を使用するシステムにより発生させることができる。しかし、単一の光電子増倍管17を使用すれば、光学系のデザインを単純なものとし、システム内の部品数を減らし、システム全体のコストを削減することができる。
【0017】
図2は、取り付けられたイメージングシステムを含む暗視システムと組み合わせて使用される軍事用のヘルメット22を示す。かかるイメージングシステムは、開示されている要素を示す断面図にて示されている。このように、この図では、カラー光電陰極23及びセンサ21を見ることができる。処理電子機器及びディスプレイユニットは、参照数字25で表されたケースの断面に含まれる。使用者は、ヘルメット22を着用するしつつ、ディスプレイ25を見ることとなる。
【0018】
図2に示す具体的な暗視システムは、熱イメージング及び光学イメージングを組み合わせている。したがって、レンズ系26は熱イメージング専用のレンズ系であり、レンズ系27は暗視チャネル専用のレンズ系である。このユニットの処理電子機器は、完全な三原色の「擬似カラー」を作り出す処理過程で、熱イメージ及び暗視イメージを融合する。かかるイメージは、最新のモノクロシステムよりも相当多くの情報を含んでいる。熱イメージは、人間や使用直後の車両などの高温ターゲットを観測するのに好適である。また、熱イメージは、煙が多い環境や光の無い環境において基準レベルの性能を発揮する。カラー暗視イメージは、解像度及び状況判断性能を向上する。また、カラー暗視イメージは、カモフラージュされた対象物を見分ける性能を向上する。暗視システムは、熱システムを内蔵することなく製造可能であり、その場合には、熱イメージ及び暗視イメージを組み合わせる処理電子機器とともに、熱イメージ用の光学系26を取り除き得ることにも留意されたい。
【0019】
図3は、ウィンドウ層上への半透明整流化表面接触を採用した、本発明の実施形態のバンドギャップ線の概略図である。かかる接触に使用し得る材料は、以下に限定するものではないが、インジウムスズ酸化物、亜鉛酸化物、又は、プラチナ、パラジウム、タングステン又はニッケルなどの金属薄層を含む。オーム接合は、P型半導体光電陰極に対して適用する。P型の接触は、光電陰極の一部、特には装置の端部に対して適用することが好ましい。図3Aは、バイアス電圧を印加していない構造を示す。図3Bは、逆バイアスを印加した装置を示す。
【0020】
図4は、段々に向上している実施形態の、バンドギャップ線を示す概略図である。バイアス電圧がゼロ印加された、図3のように、図4Aにおいても、ウィンドウ層は、吸光層にて発生した光電子に電位障壁を付与している。同様に、図4Bは、逆バイアスが印加されると、整流化接合からの空乏層が吸光層内へと延びることを示す。しかし、かかる実施形態では、ウィンドウ層内にてN−Pホモ接合から整流化接合が形成される。かかる方法は、前記実施形態の「半透明」表面接触において、光損失の可能性を排除する。このとき、ウィンドウ接触は、N型半導体表面層へのオーム接合である。かかるN型半導体表面層の厚さは、完全な逆バイアス電圧下であっても、完全な空乏となることを阻止するよう選択される。ウィンドウ層及び吸光層用の適当な材料の組合せは、以下に限定されるものではないが、例えば、AlGa1−XAs−GaAs,AlGaIn1−X―YAs−GaX+YIn1−X―YAs,InP−InGa1−XAs1−Y,AlGaAs1―X−GaAs1−X及びAlGaN−GaNを含む。
【0021】
GaAsなどの高品質の直流バンドギャップ材料において、ウィンドウ層間に形成されたウェル内にキャリアが封じ込められ、空乏吸光層が集光し得る。同様に、P型ウィンドウ層と第一吸光層間のバンド整列により、それらのインタフェースにて、光学的に発生したキャリアを封じ込めるウェルが作り出される。これらのいずれかが問題を生じる場合には、図5に示すような構造を修正することができる。かかる新規の構造では、ウィンドウ層と吸光層との間に傾斜繊維領域を付加される。かかる層のドーピング及び厚さは、バイアスが無く、深さが3kTよりも小さいウェルが無く、逆バイアス下であっても、伝導帯の電子流に対する障害とならないよう選択される。その結果、発生する又は吸光層の空乏領域に封じ込まれる逆バイアス電子は、N型ウィンドウ層に送り出され、ウィンドウ層のオーム接合により外に放出される。図5Aは、繊維層を含む、バイアスが印加されていない構造のバンドギャップ線の概略図を示す。図5Bは、逆バイアスが印加された構造の概略図を示す。
【0022】
光が光電陰極を通過すると、その一部は吸収される。吸光係数は、陰極内を通過するときに光が吸収される率を示す。光が吸収される位置は、光の波長に大きく依存する。ウィンドウ層のバンドギャップよりも大きなエネルギを有する光は、高確率にてウィンドウ層に吸収される。平均すると定常波長ウィンドウとなるとき、短い波長の光はウィンドウ吸光層インタフェース近傍にて吸収され、一方、長い波長の光は減圧照射面の近傍にて吸収される。本発明に従うN−P接合に逆バイアスが印加されると、空乏領域にて発生した電子は追い出され、放射信号として機能しない。同様に、減圧放射表面の近傍にて発生した電子よりも、空乏領域の端部の近傍にて発生した光電子は、高確率にてドリフトして、空乏領域内に封じ込められる。これらの効果は、N−P接合が逆バイアスに印加されると、光電陰極の短波長応答が、長波長応答よりも減少する最終結果をもたらす。かかるスペクトル応答の変化は、入力信号のカラー情報を判別するために使用することができる。スペクトル応答の変化は、如何なる可動部又は外部フィルタをも使用せずに達成される点に留意されたい。実質的に、空乏吸光層及びそれに隣接する材料は、着脱自在フィルタとなり得る。更に、かかる変化を達成するために、N−P接合は逆バイアスに印加される点にも留意されたい。逆バイアスが印加された条件下において、N−P接合は整流化する。その結果、実質的には、かかる状態を維持するためには、実質的には、如何なる電力も必要とせず、また、かかる状態とするには、最小量の電力のみが必要となる。引き出される予想電力は、取り付け型イメージ増幅システムなどの電力式のシステムへの使用に適している。
【0023】
かかる陰極の改良型は、少なくとも2つの材料組成により区別される構成吸光層が組み込まれている。領域間の分割は、バイアスが印加されていない伝導帯端のエネルギの増加により特徴付けられ、伝導帯端は、減圧照射層からウィンドウ層までの一スキャンによりそのエネルギが増加する。かかる変化は、特許文献5に図解されている連続ランプにより達成することができるが、あるいは、不連続のステップの形状とすることも可能である。ウィンドウ層は、依然として、前記のN−P接合を含む。バイアスが印加されていない伝導帯電位条件下の、かかる変化の目的の一つは、N−P接合が逆バイアス状態にあっても、効背面パッシベーションを提供することにある。N−P接合空乏領域の端部における伝導帯エネルギよりも小さいが、3kT以上のエネルギの有する、吸光層の一部にて発生した電子は、空乏接合へと拡散する可能性が低い。この方法は、製作公差を改善し、光電陰極内のスペクトルの再現性を高める。ドーピング、材料組成、層厚さ及び逆バイアス電圧の印加の使用により、光電陰極にバイアスを印加した状態又は印化しない状態でのスペクトル応答は、広く調節することができる。上記した構造から、印加されるN−Pバイアス電圧を変化させて、次いで、空乏層の厚さを変化させることで、複数の異なるスペクトル応答が得られる点に留意されたい。
【0024】
本発明の改良装置は、頭部に取り付ける暗視器具用のイメージ増幅器である。そのことから、開示内容は、軍事用の暗視に適した陰極に焦点をおいて詳細に説明するものである。より単純化するために、二色システムが考慮された。第一の設計選択では、2つの光電陰極状態でのスペクトルの選択を繰り返し回転させるものである。これは、検出可能な光のスペクトルにより駆動するものであり、2つのスペクトルの相対強度を比較することで、情報が得られる。ここに開示されている、全てのスペクトル発光及び反射情報は、オンタール社製の、暗視カメラ及び電子センサ集合IICCD暗視カメラカメラの処理モデリングプログラムから抽出されたものである。性能指数に注目すると、例えば、軍事上の要求に応えるために、植物の葉及び暗所での作業に従事する人物をターゲットとした結果を比較している。しかし、それら目的は、例えば、夜間における運転時、自転車走行時、又は歩行時に、泥と、道の表面と、植物とを区別できることは重要であり、全くの民間人にとっても装置の応用は重要であることには留意されたい。また、本発明を警察官が有効に利用できることは明らかである。製造完成度を維持するために、GaAs長波長の遮断される。
【0025】
図6は、月明かり条件下にある、植物の葉と暗所作業者とにおける、スペクトル反射と波長との関係を示したグラフを示す。GaAs長波長遮断を行うと、関心スペクトル領域は、400nmから900nmの範囲内となる。かかるバンド域における最も特徴的なスペクトル特性は、680〜720nmにて植物の葉の反射率は劇的に大きくなることにある。その結果、二色システムでは、論理的な数値として、700nm以下の二つのスペクトルバンドにて分離される。月明かり条件下では、現行の暗視システムは信号/ノイズ率が大きくなる。その結果、イメージ内には充分な情報があり、良好なカラー信号を発生させる。同様に、相当量の光がある場合には、空乏領域における吸光に関連する光損失による、画質の劣化への影響は最小限となる。一方、月明かりが無く、星明りのみの条件下では、利用可能な光の水準が低いことから、現行のイメージ増幅器の使用を制限する。この場合には、光量子の損失を最小限とする必要がある。
【0026】
図7は、星明かり条件下でのスペクトル反射を示したグラフである。このグラフから明らかなように、星明り条件下では、700nm以下の波長の光が存在しない。そのことから、最も暗い条件下では、上記提案の空乏領域の吸光遮断は信号の損失とはならない。実際に、人間の目では、モノクロームイメージの信号/ノイズ率を小さくすること無く、上記した光電陰極のカラー信号は、最も低い光量まで弱まる。例えば、各領域のデータが取り込まれると、輝度に基づくイメージが表示されることが想定される。カラー情報は、1つの領域の遅延後に計算することができる。あるいは、例えば、緑色光のみで逆バイアスが印加された領域を表示しつつ、緑色光及び赤色光の組合せのバイアスが印加されていないフレームを表示することで、リアルタイムにて全ての領域を表示することができる。正確なアルゴリズムの使用により、画質とメモリ及び電力などのリソースとの間はトレードオフの関係にあり、リソースは所定水準の性能を達成するために必要とされる。被写体については、下記の図11及び12の考察と関連させて、より詳細に説明する。
【実施例】
【0027】
表1は、暗視用に設計された二色光電陰極のための好適な半導体の層構造を記載したものである。リストに挙げられたそれらの層は、透過様式構造にて光が入射する順番となっている。かかる構造の好適な製造方法は、有機金属気層法(OMVPE)である。
【0028】
【表1】

【0029】
市販の高性能の半導体光電陰極は、光電陰極の減圧層の作業機能を低減させる「活性」層を有することには留意されたい。また、GaAs光電陰極の層の組成は、セシウム、及び酸素又はフッ素などの負に帯電した物質から一般に組成される。NEA光電陰極を製造する際の活性化工程は当業者には周知であり、かかる工程は、ここに記載の光電陰極にも施されている。GaAs光電陰極の活性化の物理的な工程は、非特許文献1に詳細に記載されている。
【0030】
【非特許文献1】W. E. Spicer 著 “Applied physics A: Materials Science & Processing (Historical Archive) Negative Affinity 3-5 Photocathodes: Their physics and technology” Issue: Vol. 12, No. 2, 1997年2月、第115-130頁
【0031】
上記の好適な実施形態は、図5の構造に従って構成されている。N型光学ウィンドウ層にて、層のドーピング及び厚さは、完全に逆バイアス電圧が印加されていても層が完全には空乏とならないよう選択される。P型光学ウィンドウ層にて、層のドーピング及び厚さは、バイアスが印加されていない接合は、層を完全には空乏としないが、充分に非空乏となった材料は、適当な伝導帯障壁により、P型吸光層からP型吸光ウィンドウ層の空乏領域までの電子の流れを防止して、維持させることを達成するよう選択される。図5の傾斜遷移層は、ウィンドウ層と吸光層との間のインタフェースにて形成される電子トラップの深さを最小とするために主に使用される。かかるトラップは、高アルミニウム含有AlGaAsウィンドウ層と低アルミニウム含有AlGaAs吸光層とのバンド配列の結果、それらの間に形成される。質的には、図5及びこの好適な実施形態の間には、複数の相違点する点がある。吸光層は、二つの層に分割される。第一の層は、の平均組成が Al0.3Ga0.7Asであり、P型のドーピングレベルが1×1016以下である。このバンドギャップは、700nmの周波数を効率的に吸収するよう選択された。ドーピングは、空乏層が、印加されるバイアスが5〜10Vといった相当の低電圧にて、この層内を延びるよう選択された。この層内の構成ランプは、光発生電子のドリフト率を大きくし、集光効率を高める。P型吸光1−2層が更に追加されている。この層では、組成及びドーピングは、GaAsにおいて、P型のドーピングレベルが7×1018のエンドポイントを達成するように傾斜させる。許容し得る傾斜プロファイルは、広い範囲にある。しかし、リニア組成ランプと組み合わせた対数ドーピングランプは有効に機能する。かかる構造では、単純に、P型吸光層1からP型吸光層2への電子の流れに確実に障害が無いことが必要である。この層における高い平均ドーピングは、逆バイアスN−P接合の減少を停止し、スペクトル応答の再現性及び製造公差を向上させる。この遷移領域にて空乏領域が確実に停止することから、この層が導電帯バリアとして機能して、陰極が逆バイアス条件下にあるときに、P型吸光層2の光電子が空乏領域に流れることを防止することが可能となる。
【0032】
図8Aは、好適な実施形態の構造において、バイアスが印加されていない状態のバンドギャップ線の概略図である。図8Bは、バイアスが印加された状態の構造である。図8に示す好適な実施形態に光が入射されると、一部は吸収され、一部は透過する。かかる構造は、一連の積層された、長波長を通す光学フィルタとして捉えることができる。各フィルタにおけるスペクトル吸収は、層のドーピングよりも、主に層の厚さ及び組成に依存している。所定の層に吸収された光は、正孔対(EHP)を発生させ、減圧層に、再結合又は光電子放出として放出される。かかる構造は、透過モード構造である。吸収されなかった光及び光電子は、P型吸光層2から徐々に放出される。
【0033】
図9は、表1に記載の層構造におけるスペクトル透過を示す。反射損失を無視するのであれば、第一の線は、N型光学ウィンドウ層及びP型光学ウィンドウ層の組合せにおける基準透過を示す。第二の線は、P型吸光層1の吸光を更に含む。最後の線は、全体の構造の吸光を含む。
【0034】
上記「構造全体」線と「光学ウィンドウ層」線との差は、光電陰極にて吸収され、次いで、バイアスが印加されていない状態で光放出される光を表している。「構造全体」線と「+吸光層1」線との差は、光電陰極にて吸収され、次いで、逆バイアスが印加された状態で光放出される光を表している。正確な光電陰極スペクトル応答曲線を判定するためには、拡散距離損失及び漏洩率を考慮しなければならないが、指定の構造における曲線の基本形状は、表1に示す層の光学特性により規定される。
【0035】
図10は、バイアスが印加された場合及び逆バイアスが印加された場合の光電陰極のスペクトル応答を示す。この構造では、暗視光電陰極にて漏洩率が量子効率(QE)となり、拡散距離損失は考慮されない。
【0036】
図11及び12は、表1に示す陰極構造における、月明かり条件下にある植物の葉及び軍事作業者のスペクトル応答を夫々示す。スペクトル場面反射率の差により、二つの異なるターゲットに対し、バイアスが印加された場合と、印加されていない場合では陰極応答が異なる。実際に、光電陰極応答の逆バイアスの印加に対するバイアスが印加されていない率は、植物の葉においては0.84であり、軍事作業者においては0.65である。この率の差は、様々なターゲットを検出する個々のピクセル又はピクセルのパッチに色を割り当てるためのカメラシステムが使用する生データとなる。
【0037】
様々な層の厚さ及び組成を調節することにより、陰極スペクトル応答を多様に変更し得ることは明らかである。一般に、例えば、P型吸光層1の厚さが増加すると、これに伴い長波長通過フィルタの透過精度が向上する。このことは、逆バイアスが印加された光電陰極のQEが短波長応答「テイル(tail)」を小さくして、色の信頼性を向上する。好適な構造を選択すると、以下に限定されるものではないが、P型吸光層1に選択された材料の少数キャリアの拡散距離、P型吸光層1を空乏とするに必要な電圧、逆バイアスが印加された際の接合漏洩を含む多くのことが想定される。
【0038】
この記載では、特定の応用形態、すなわち頭部装着用の暗視システムに焦点が当てられている。このシステムでは、25〜120Hzのフレーム率が使用されている。その結果、バイアスが印加されていない場合又は逆バイアスが印加されている場合の光電陰極のスペクトル応答曲線は、システムの性能に大きく影響しない10又は100マイクロ秒オーダーの切り替え時間となり、この切り替え時間は、開示されている構造にはとくには必要とされない。切り替え時間は、基本的には、構造のRC時定数により制限されている。構造の静電容量は、接合の空乏厚さ、及び空乏領域の材料の誘電率により規定される。空乏領域の厚さは、主として、空乏領域の材料にて選択されるドーピングレベルと相関する。一方、抵抗は、非空乏層の両接合におけるドーピングレベル、非空乏層におけるキャリアの移動度、及びこれら層への接触による抵抗と主に相関する。非空乏層の抵抗を小さくし、静電容量を小さくすると、切り替え時間が短縮される。これら構造の最適化が、アプリケーションに大きく依存することは明らかである。陰極の機能において、層が光学的及び電気的な役割を担っていることは、殆どのアプリケーションにおいて工学的なトレードオフが必要とされていることを示す。
【0039】
上述した電気的な問題の他に、実際に光電陰極を作成する際には、複数の問題が発生する。これら問題の中で顕著な問題は、光電陰極の物理的な支持及び反射防止コーティングにある。表1に示すAlGaAs−GaAs光電陰極構造の場合には、第三世代のイメージ増幅器を使用することができる。屈折率及び厚さが適正であるSiN層を反射防止層として使用することができる。コーニングコード7056又は類似のガラスは、ガラス結合を介して支持構造として使用することができる。
【0040】
図13は、反射防止コーティング及び支持ウィンドウ層を有する表1の光電陰極構造を断面を概略的に示す。また、接触詳細を更に示す。N型光学ウィンドウ層の端にある小さな正方形は、当業者に公知のN型オーム接合であることが好ましい。同様に、P型吸光層2の正方形は、当業者に公知のP型オーム接合であることが好ましい。メサ構造は、かかるメサのフットプリントを画定し、次いで、所望の層へとエッチングする、光リトグラフ技術により作り出すことができる。少量のリンをN型光学ウィンドウ層に加えることによってエッチングの選択性を向上することができる。例えば、組成をAl0.8Ga0.2AsからAl0.8Ga0.2As1−xまで変化させることができ、この場合、x<約0.1とする。この結果、格子不整合構造となる。しかしながら、層が比較的薄く、エピタキシャル反応器において最後に成長する層であるので、装置パフォーマンスの劣化は最小になる。さらに、リンは、N型光学ウィンドウ窓層のバンドギャップを広げ、これによって、結合ウィンドウ層構造の青色光の伝播を増大する。
【0041】
逆バイアス接合を、上記NEA光電陰極と同様に電子移動型光電陰極に容易に適用することができる。米国特許第3,361,303号明細書、米国特許第5,047,821号明細書及び米国特許第5,576,559号明細書に記載されたような電子移動型光電陰極は、P型光吸収層及びP型光学ウィンドウ層を有する。これらの層を、電気的に変更可能なスペクトル応答になるために既に説明したように変更し及び設計することができる。主な違いは、エミッタ層の真空対向面にショットキーコンタクトを設けるために第3コンタクトが必要とされることである。公称コンタクト形態を図14に線形的に示す。既に説明したように、光電陰極の大きな妨げられていない活性領域を除去するためにコンタクトを周辺に配置する。これら光電陰極がInP基板上のInGaAsP及びInGaAsの格子整合構造としてしばしば成長するので、N型InP基板は、陰極を物理的に支持するとともにN型光学ウィンドウ層を構成することができる。その結果、ウィンドウ層に対するn型オームコンタクトを、反射防止コーティングのないエリアにおいて基板の背面に形成することができる。電気的に変更可能なスペクトル応答を伴うTE光電陰極のポテンシャル層構造を、表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
特定の実施の形態の全てにおいて、P型光学ウィンドウ層が存在する。N型光学ウィンドウ層と表面ショットキー障壁層との間の接合が形成される。非ドープの埋め合わされた又は真性の光学ウィンドウ層を、N型層とP型層との間又はショットキー障壁層とP型光学ウィンドウ層との間に挿入することができる。この構造は、上記実施の形態と機能的に同一である。この追加の層は、接合容量を低減するが必要な逆バイアス電圧を上昇する傾向がある。そのような層の組込みは、本明細書において光電陰極の一部として考えられるが、特定の特性を有する光電陰極を設計するために設計者が用いることができるような自由度を有するものと考えるべきである。層それ自体は、例えば、表1の第6層、表2に記載された光電陰極の第7層及び表3に関連して説明した光電陰極の第7層として見える。
【0044】
観察されるオブジェクトのスペクトル分布が、逆バイアス電圧が印加されるときに「オフに切り替えられる」スペクトル範囲内にある場合、本発明を電子シャッターとして用いることができる。光電陰極の吸光層の中央領域が、肉厚の吸光層の上にある環状コンタクトに比べて薄い場合、整流接合部が逆バイアス状態のときに吸光層の照明された領域全体を空乏状態にすることができる陰極を設計することができる。このタイプの陰極は、非常に高い消光比を示す。換言すれば、「オン」すなわち非バイアス状態の陰極のQEすなわち応答は、「オフ」すなわち逆バイアス状態の応答以上の大きさのオーダとなることができる。適切に設計された陰極において、このスイッチングすなわちゲーティングが非常に迅速に行われる。層5を高ドーピングにすることによって、カソードは、表面の仕事関数を低減した後に良好な漏洩率を達成することができる。層4を低ドーピングにすることによって、理想的な逆バイアス電圧で全空乏化を達成することができる。ドーピングが層4と層5との間で増大することによって、層4に存在する光電子に対する小さいが有効な(300Kで4kT以下)伝導体障壁が生じる。しかしながら、1×1017のドーピングレベルでは、電子の寿命は、高い割合の光学的に発生した電子が300Kまでの温度で最終的に障壁から逃れることができるのに十分である。
【0045】
【表3】

【0046】
表3は、高い消光比でオフに切り替わるように設計された光電陰極に用いることができる構造を詳述する。層5、P型コンタクトバッファ層は、P型オームコンタクトの真下以外の全ての箇所から除去される。P型オームコンタクトは、中央に開口を有する光電活性領域を有する環状コンタクト又は光電活性領域の上にある格子状のコンタクトエリアが充填されたリングの形態をとることができる。光電陰極の光感度が格子状のコンタクトエリアで幾分減少したとしても、光電陰極のRC時定数が減少し、したがって、スイッチング時間を減少する。同様に、オームコンタクトの上の金属グリッドを、N型光学ウィンドウ層上の全活性領域上で用いることができる。
【0047】
オームコンタクト及びオームコンタクト上の金属をパターニングして、定インピーダンス「マイクロ」ストリップラインを形成することができ、これによって、陰極が光応答を行いながらRFエネルギーを陰極の表面にそって伝播することができる。
【0048】
バイアスをかけられたヘテロ接合(BH)光電陰極が逆バイアス状態になると、光電陰極の逆バイアス部分は、本質的には固体光検出器となる。逆バイアスがかけられた検出器のコンタクト部を流れる電流は、接合部のリーク電流と、整流接合部の空乏領域に発生し又は空乏領域によって収集された光電流との和となる。n−p半導体ホモ接合を用いるBH光電陰極の場合において、リーク電流を極めて小さくすることができる。その結果、BH光電陰極を、逆バイアス状態のときには高品質の半導体光検出器と考えることができる。
【0049】
自身が保有する高品質の固体状態光検出器で本発明を実現することによって、BH光電陰極の他のあり得るアプリケーションが生じる。固体状態光検出器は、典型的には中程度の光レベルから高い光レベルまで検出し及び計測するのに用いられる。PMTは、典型的には低い光レベルから極めて低い光レベルまで検出し及び計測するのに用いられる。BH光電陰極を用いるPMTは、陰極から放出された電子が増加した後の陰極を通じた光及び逆バイアスがかけられたBH光電陰極を流れる電流による光を検出することができる。これら二つの検出モードのスペクトル応答を変化させることができる。しかしながら、必要な場合には、二つの検出モードの応答を安定にするためにバンドギャップ設定及びスペクトルフィルタリングを用いることができる。この場合、非常に高い光レベルから非常に弱い光レベルまでの範囲の光を検出し及び測定することができるハイブリッド半導体/PMT光検出器を設計することができる。動作中、PMTは、非バイアスモードの光電検出器を用いて低い光レベルで操作され及びモニタされる。高い光レベルにおいて、PMTはオフに切り替えられ、BH光電陰極は、逆バイアスモードに切り替えられ、光レベルを決定し及び測定するために整流接合電流がモニタされる。ハイブリッドPMTに基づくBH光電陰極に基づいたGaASに対して、1W/cm以下から10−14W/cmまでの範囲の光レベルを検出し及び測定することができるセンサモジュールを非常に簡単に設計することができる。これは、14オーダの大きさのダイナミックレンジを表す。きめ細かい設計作業又は冷却によって、更に大きなダイナミックレンジが可能である。
【0050】
図15を参照すると、BH光電陰極30は、ハイブリッドPMT光センサの中心である。ハイブリッドPMT31は、BH光電陰極30と、電子倍増管32と、陰極33とを有する。ハイブリッドPMTが低光レベルモードにあるとき、BHカソード30は、非バイアス状態にある。高電圧が、制御可能な高電圧バイアス電源43からライン42を通じて光電陰極に印加される。倍増された信号は、ライン33を通じて収集され、ユニット35に送出される。ハイブリッドセンサユニットが高光モードにあるとき、PMTバイアスがオフに切り替えられ、BH光電陰極に逆バイアスがかけられる。光電陰極は、ユニット38及び制御可能な高電圧バイアス電源43によりライン42及び37を通じてバイアスがかけられる。整流接合を流れる電流は、ユニット40により検知され及び調整される。ユニット40は、光電陰極アッセンブリとユニット35で表される次の電子部品35との間で高電圧分離を行う追加の機能を有する。ユニット35は、複数の機能を有する。第1に、ユニット35は、PMT信号と整流接合の信号の両方を収集し及び多重化する。第2に、ユニット35は、PMT高電圧バイアス電源43及び整流接合バイアス電源38の両方を制御する。自動利得制御機能の一部として、ユニット35は、PMTに印加される電圧を連続的に変化させ又は複数の予め決定された利得値を設定することができる。第3に、ユニット35は、ライン36に出力信号を発生する前に、必要な信号調整を行う。理想的には、低バンド幅アプリケーションに対して、ライン36は、センサの全ダイナミックレンジに亘る入力信号レベルに正比例する信号を有するデジタル出力バスを表す。同様に、ライン36は、システム利得を報告するデジタルバス及びアナログ信号を有するAC結合ラインの両方によって構成される。
【0051】
本発明を、特定の材料、ドーピング及びアプリケーションの典型的な実施の形態に関連して説明したが、これら特定例の変更を行い及び/又は使用することができ、当業者には理解できるように、そのような構造及び方法は、本発明の範囲を逸脱することなく、説明し及び図示した実施によって知らされる理解並びに変更を容易に行うような動作の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】フローサイトメトリーシステムの概略図である。
【図2】暗視ヘッドギアの概略図である。
【図3】本発明に従う実施形態におけるバンドギャップ線の概略図である。
【図4】図3に示すそれよりも、段々に向上しているその他の実施形態におけるバンドギャップ線の概略図である。
【図5】その他の実施形態における、ウィンドウ層と光吸収層との間に遷移領域を含む、バンドギャップ線の概略図である。
【図6】月明かり条件下にある、2つの異なる対象物における、スペクトル反射と波長との関係を示しすグラフである。
【図7】星明かり条件下にある、その他のスペクトル反射を示したグラフである。
【図8】好適な光電陰極のバンドギャップ線の概略図である。
【図9】表1に示す構造体の透過曲線のグラフである。
【図10】二つの条件下にある光電陰極のスペクトル応答のグラフである。
【図11】月明かり条件下にて、植物の葉からの反射光により照射された光電陰極のモデルとされるスペクトル応答のグラフである。
【図12】月明かり条件下にて、作業服を着た男性からの反射光により照射された光電陰極のモデルとされるスペクトル応答のグラフである。
【図13】表1に示す光電陰極構造を断面の概略図である。
【図14】転送された電子光電陰極の実施形態における名目的な接触スキームの断面の概略図である。
【図15】光学センサモジュールの高ダイナミックレンジにて付勢されたヘテロ接合型の光電陰極の実施形態の概略図である。
【符号の説明】
【0053】
12 血球
13 光源
16 二色光電陰極
17 光電子増倍管
18 血球分離装置
19 試料管
20 コンピュータ制御ユニット
21 センサ
22 ヘルメット
23 カラー光電陰極
25 ディスプレイ
26 熱イメージング用レンズ系
27 暗視チャネル用レンズ系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ウィンドウ層及び吸光層の間のヘテロ接合を具え、該ヘテロ接合が3kTを上回る伝導帯バリアを有する半導体光電陰極であって、前記バリアを取り除くために前記ヘテロ接合を横切る電界を生じさせる、前記光電陰極に対する電気的接続を更に具える半導体光電陰極。
【請求項2】
前記吸収層に接触しない側で前記光学ウィンドウ層上に配置されたショットキー接合を含み、該ショットキー接合が前記光学ウィンドウ層と整流接合を形成している請求項1記載のヘテロ接合半導体光電陰極。
【請求項3】
前記光学ウィンドウ層がp型にドープされている請求項2記載のヘテロ接合半導体光電陰極。
【請求項4】
前記光学ウィンドウ層がp型光学ウィンドウ層の上に配置されたn型光学ウィンドウ層を含み、前記ヘテロ接合が前記p型光学ウィンドウ層及び前記吸光層の間に生成され、前記p型からn型へのインタフェースが整流接合を形成している請求項1記載のヘテロ接合半導体光電陰極。
【請求項5】
前記吸光層がp型にドープされている請求項4記載のヘテロ接合半導体光電陰極。
【請求項6】
n型光学ウィンドウ層にn型オーム接合が形成され、p型吸光層にp型オーム接合が形成されている請求項5記載のヘテロ接合半導体光電陰極。
【請求項7】
前記光学ウィンドウ層におけるp型部分の厚み及びドーピングが、整流接合を横切るバイアスが印加されないように定められ、p型部分における少なくとも100オングストロームオーダーの領域が非空乏状態に維持されている請求項6記載のヘテロ接合半導体光電陰極。
【請求項8】
前記第1の光学ウィンドウがTE光電陰極の透明基材を具える請求項4記載のヘテロ接合半導体光電陰極。
【請求項9】
前記第1の光学ウィンドウがn型AlGaAsよりなる請求項4記載のヘテロ接合半導体光電陰極。
【請求項10】
第2のp型吸光層が前記p型吸光層上に配置され、該p型吸光層が光学ウィンドウ層上に配置され、該光学ウィンドウ層が前記整流接合上に配置されている請求項4記載のヘテロ接合半導体。
【請求項11】
前記第2のp型吸光層がGaAsよりなる請求項10記載のヘテロ接合半導体。
【請求項12】
n型光学ウィンドウ層を有する前記第1の透明な光学ウィンドウ層が反射防止コーティング上に配置され、該反射防止コーティングがガラス支持層上に配置されている請求項4記載の光電陰極構造。
【請求項13】
ガラス支持ウィンドウと、該ガラス支持ウィンドウの表面上に配置した反射防止コーティングと、該反射防止コーティング上に配置したn型光学ウィンドウ層と、該n型光学ウィンドウ層上に配置したp型光学ウィンドウ層と、該p型光学ウィンドウ層に配置され、p型光学ウィンドウ層から吸光層に至る遷移層と、該p型遷移層上に配置した第1のp型吸光層と、該第1のp型吸光層上に配置したp型吸光1,2遷移層と、該p型吸光1,2遷移層上に配置した第2のp型吸光層と、該第2のp型吸光層の開放表面領域上及び前記n型光学ウィンドウ層の開放表面上に配置した電気オーム接合とを具える負電子親和型光電陰極。
【請求項14】
前記第2のp型吸光層の開放表面領域上に配置された電気的オーム接合が、p型オーム接合よりなる請求項13記載の光電陰極。
【請求項15】
前記n型光学ウィンドウ層上に配置された電気オーム接合が、n型オーム接合よりなる請求項13記載の光電陰極。
【請求項16】
光起電力応答が電気的に変更可能な移動電子型光電陰極であって、反射防止コーティング層と、該反射防止コーティング層上に配置したn型光学ウィンドウ層と、該n型光学ウィンドウ層上に配置したp型光学ウィンドウ層と、該p型光学ウィンドウ層上に配置した第1のp型吸光層と、該第1のp型吸光層上に配置した吸光p型1,2遷移層と、該吸光p型1,2遷移層上に配置した第2のp型吸光層と、該第2のp型吸光層上に配置したエミッタ層と、前記n型光学ウィンドウ層及び前記第2のp型吸光層の周辺に個別的に配置した2個の電気接点と、前記エミッタ層上でショットキー接合として機能する第3の電気接点とを具える光電陰極。
【請求項17】
二色光電陰極を有する光電子増倍管と、被検懸濁液を導入し、かつ調整する供給ステーションと、該供給ステーションに接続され、該供給ステーションからの懸濁液を流す検査管と、該検査管の小断面を照射する光源と、前記検査管を流れる試料からの散乱光又は発光を受光し、その受光した光を、分析のために前記光電子増倍管に照射する光学系とを具える流動血球計測システム。
【請求項18】
光学ウィンドウ層及び吸光層の間のヘテロ接合を含み、該ヘテロ接合が3kTを上回る伝導帯バリアを有し、該バリアを取り除くために前記ヘテロ接合を横切る電界を生じさせる電気的接続を更に含む半導体光電陰極と、該光電陰極の入力面上にイメージを生成する集光光学系と、前記光電陰極からの信号出力を増幅して、前記光電陰極が受光した微光イメージに対応する可視イメージ又は電子イメージを形成する電子利得段とを具える暗視システム。
【請求項19】
光学ウィンドウ層及び吸光層の間のヘテロ接合を含み、該ヘテロ接合が3kTを上回る伝導帯バリアを有し、該バリアを取り除くために前記ヘテロ接合を横切る電界を生じさせる電気的接続を更に含む半導体光電陰極を設けた双眼装置と、該光電陰極により受けられた入力を電子利得段に供給して、前記光電陰極が受光した微光イメージに対応する可視イメージ又は電子イメージを形成する集光光学系とを具える暗視システム。
【請求項20】
サーマル・イメージング素子と、画像処理手段とを含み、サーマル・イメージ及び微光イメージを統合して複合観察可能とした請求項18記載の暗視装置。
【請求項21】
基体層としての第1のn型光学ウィンドウ層と、バッファ層としての第2のn型光学ウィンドウ層と、p型光学ウィンドウ層と、前記n型光学ウィンドウ層及びp型光学ウィンドウ層の間に形成された整流接合と、第1のp型吸光層と、p型吸光1,2遷移層と、第2のp型吸光層と、吸光層‐エミッタ間の遷移層と、エミッタ層とを具えるヘテロ接合半導体TE光電陰極。
【請求項22】
前記第1のn型光窓の表面上に配置したオーム接合と、前記第2のp型吸光層の露出面上に配置したオーム接合とを更に具える請求項21記載のヘテロ接合半導体TE光電陰極。
【請求項23】
エミッタ層の表面上にショットキー接合を更に具える請求項22記載のヘテロ接合半導体TE光電陰極。
【請求項24】
前記ショットキー接合が周辺近傍に配置され、前記光電陰極上に大きな非妨害アクティブ領域を維持する請求項23記載のヘテロ接合半導体TE光電陰極。
【請求項25】
前記基板面がInPよりなり、前記バッファ層がInPよりなる極薄層を含む請求項21記載のヘテロ接合半導体TE光電陰極。
【請求項26】
前記p型光窓がInPよりなり、前記第1のp型吸光層がInGaAsPよりなる請求項21記載のヘテロ接合半導体TE光電陰極。
【請求項27】
前記エミッタ層が、5E16/cm3を超えてドープされたInPよりなる請求項26記載のヘテロ接合半導体TE光電陰極。
【請求項28】
n型光学ウィンドウ層と、第1のp型光学ウィンドウ層、第2のp型光学ウィンドウ層と、軽くドープされた第1のp型吸光層と、重くドープされた第2の極薄p型吸光層と、p型接点バッファ層とを具え、高い消光比を有する請求項1記載のヘテロ接合半導体光電陰極。
【請求項29】
低光量の情報を検出するための固体光電子増倍管と、中高光量の情報を検出するための逆バイアスが印加されるヘテロ接合光電陰極とを具える低・高レベル複合型の半導体光検出器。
【請求項30】
オーム接合が表面に沿うパターンで構成され、該パターンが、光電陰極の表面に沿う無線周波エネルギの伝播を許容すると共に前記光電陰極の光学応答性に影響を及ぼす定インピーダンス・マイクロ波ストリップ線路を形成する請求項28記載の光電陰極。
【請求項31】
高光量で光電子増倍管がオフにされ、かつ、ヘテロ接合光電陰極が逆バイアスモードに切り替えられ、さらに、整流接合電流を測定して光レベルを決定・定量化するモニタを具える請求項29記載の低・高レベル複合型半導体光検出器。
【請求項32】
前記ヘテロ接合光電陰極がガリウム砒素よりなる請求項31記載の低・高レベル複合型半導体光検出器。
【請求項33】
整流接合を含む光電陰極を作成し、前記整流接合に逆バイアスを印加して光電陰極の感度を所定のスペクトル帯域の光に適合するよう低下させる固体光学検波器の製造方法。
【請求項34】
整流接合を有する光電陰極ヘテロ接合半導体を、第1の期間にわたり整流接合に第1のバイアス電圧を印加した状態で低光量光束により露光し、第2の期間にわたり整流接合に第2のバイアス電圧を印加した状態で低光量光束により露光するカラー情報の抽出方法。
【請求項35】
2以上の吸光層を有するヘテロ接合半導体光電陰極を成長させ、その際に少なくとも1つの吸光層の長波長カットオフを650〜750 nmの範囲内とする暗視画像システムの製造方法。
【請求項36】
2以上の吸光層を有するヘテロ接合半導体光電陰極を成長させ、その際に少なくとも1つの吸光層の短波長カットオフを650〜750 nmの範囲内とする暗視画像システムの製造方法。
【請求項37】
ヘテロ接合半導体光電陰極を成長させ、その際に吸光層の組成を傾斜させて傾斜バンドギャップ吸光層を形成するヘテロ接合半導体光電陰極の製造方法。
【請求項38】
ヘテロ接合半導体光電陰極に所定範囲のバイアス電圧を印加すると共に、前記光電陰極を、650〜750 nmの範囲内で顕著なスペクトル情報を有する光学イメージで露光するイメージング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2008−546150(P2008−546150A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514702(P2008−514702)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/020263
【国際公開番号】WO2006/130430
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507310307)インテヴァック インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】