説明

光音響ガスセンサ用の集積化されたIR源および音響検出器

【課題】光音響ガス検出器を提供すること。
【解決手段】光音響ガス検出器は、赤外線源、赤外フィルタ、および音響センサを含む。線源、フィルタ、および音響センサは、シリコンなどの1つまたは複数の半導体基板上に集積化することができる。処理回路も基板上に集積化することができる。さらに線源、フィルタ、および音響センサは、金属缶トランジスタパッケージなどの単一の構成要素パッケージ内に集積することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、光音響ガス検出器に関する。より詳細には本発明は、赤外線源および音響検出器の集積化されたパッケージングを含むそのような検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]近年では光音響ガスセンサは、中でも屋内空気質およびデマンド制御換気用のCO2監視、冷媒およびアンモニア監視、ならびに可燃性ガス検出を含む、いくつかのガス検知用途のための実行可能な技術となってきている。光音響技術は、多くの点で非分散赤外線(NDIR)および他の分光器によるガス検出の手段と似ている。これらすべての技法は、サンプルの濃度または組成を求めるために、ガスサンプルによる赤外線放射の選択的吸収を利用する。
【0003】
[0003]光音響検知技法は、ガスサンプルを通過するIR放射の大きさの直接測定には依存せず、代わりに入力IR放射がガスによって吸収されるのに従い、結果として生じるガスサンプルの膨張を検出する。入力放射が音響周波数にて正弦波的に変調されている場合は、結果としてのガスの膨張は、MEMSマイクロホンなどの低コスト検出手段を用いて音響波形として検出することができる。一般に実用的な光音響ガスセンサは、従来のNDIRガスセンサと比べて、有用な検出感度を達成するのに検知チャンバ内の光路長に対する依存性がずっと少ないので、非常に小さなガス検知チャンバを用いて実現することができる。この違いは、マイクロエレクトロニクスおよびMEMS製作技法を用いて、密に集積化されたパッケージ内に小型化されたガスセンサを実現する可能性をもたらす。センサパッケージのサイズを縮小し製造要件を軽減しながら、センサ性能、信頼性、およびコストを改善することが望ましい。
【0004】
[0004]光音響ガス検知の機能原理は、当技術分野では良く知られている。センサの必要な機能要素は、赤外線源、光波長選択フィルタ、ガス検知体積(検出チャンバ)、検出チャンバ内へガスが自由に拡散できるようにするが、ガスが膨張するときにチャンバからのバルクな流出を制限するガス透過性膜すなわちバルブ、測定マイクロホンまたは他の適当な圧力トランスデューサ、およびIR源を変調し、光音響信号を収集し処理し、結果としての測定値を出力するための制御および信号処理手段を含む。
【0005】
[0005]光音響センサはまた、センサに対する周囲雑音および圧力変動の影響を補償または打ち消すための構造を含むことができる。これは、別の基準検知体積および基準マイクロホンを用いて、関心のあるガスからの光音響成分がほぼないバックグラウンド雑音信号を得ることによって達成することができる。このバックグラウンド信号は、ガス検知体積内で検出された信号から減算されて、バックグラウンド雑音の影響がほぼない光音響信号を発生し、それによってセンサ精度が改善される。
【0006】
[0006]図1は、光音響ガス検出の機能原理を説明するために、知られているセンサ構成要素の構成を示す。一般的な機能原理を説明するのに決定的に重要ではないセンサの物理的設計のいくつかの側面は、分かりやすくするために省いている。光音響ガスセンサ1内で、赤外線源2によって放出された変調された赤外光は、反射器ハウジング3によって波長選択帯域通過IRフィルタ4を通してガス検知体積5内へ向けられ、その体積は測定セル本体6およびIRフィルタ4によって規定される。
【0007】
[0007]雰囲気7からのガスは、ガス透過性膜8、および測定セル本体内の開口9を通って容易に拡散し、それによりガス検知体積5に入る。変調されたIR照射の一部分は、検知体積内で、検出すべき目標ガスによって吸収されて変調された音圧波を発生し、この音圧波は、測定セル本体内の開口部11を通して測定セル体積と通信可能に結合されたマイクロホン10によって検出される。
【0008】
[0008]IR源、フィルタ、およびマイクロホン特性が適切に選択された状態では、音圧波の大きさは関心のある目標ガスの濃度に直接関係することになる。この説明の例では、マイクロホンおよび白熱電球IR源の構成要素は、共有するプリント回路板12上に配置され、このプリント回路板は、関連する変調および処理電子回路(分かりやすくするために図示せず)も含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】[0009]光音響ガスセンサの機能原理を示す図である。
【図2A】[0010]本発明による光音響ガスセンサの第1の実施形態を示す図である。
【図2B】本発明による光音響ガスセンサの第1の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0011]本発明の実施形態は多くの異なる形をとることができるが、本開示は本発明の原理および本発明を実施する最良の形態の例示と見なされるべきであり、示される特定の実施形態に本発明を限定するものではないとの理解と共に、本発明の特定の実施形態を図面に示し、本明細書において詳細に説明する。
【0011】
[0012]本発明の実施形態は、主要な光音響センサの機能要素を単一の、大量生産に適した集積化MEMSデバイスに集積する。これらの実施形態は、MEMS技術によって得られるロバスト性および低コストをもたらす。本発明の一態様では、集積化IR源、固定波長IRフィルタ、およびMEMSマイクロホンは、単一の構成要素パッケージ内に集積することができ、ガス測定セル内に取り付けることができる。
【0012】
[0013]図2Aおよび2Bは本発明の一実施形態を示し、この実施形態では図1で述べたいくつかの機能要素は、MEMSおよびマイクロエレクトロニクス・パッケージング技法を用いて製作することができる集積化構成要素内に統合される。図2Aは本発明の部分的な破断斜視図であり、図2Bは図2Aに示される切断面A−Aでの本発明の断面側面図である。
【0013】
[0014]本発明のこの実施形態では、射出成形されたプラスチック測定セル本体20は、トランジスタおよび他の電子回路構成要素をパッケージするのに一般に用いられるタイプの、気密封止された金属缶構成要素パッケージのフォーマットにパッケージされた、集積化IR源およびマイクロホン構成要素本体すなわちパッケージ21に接合される。このタイプの電子回路構成要素パッケージングは、一般に「トランジスタ缶パッケージまたはTO缶」と呼ばれ、通常はJEDECおよび米国電子工業会から発行される電子工業標準に示される寸法に適合する。
【0014】
[0015]これらのパッケージは、特定の用途の必要性に適したいくつかの標準のサイズおよび相互接続ピン構成にて入手可能である。JEDEC TO39またはTO8缶などの標準パッケージサイズは、本発明に用いることができる例示的な好ましいパッケージサイズである。測定セル本体20の内面は、測定セル体積22内のガス内に向けられるIRエネルギーを最大化するように、IR反射材料(たとえば非限定的に、金メッキ)でメッキされ、測定セル体積22は、測定セル本体20と集積化構成要素パッケージ21とを互いに結合することによって形成される。
【0015】
[0016]ガス透過性膜23は、接着剤または他の適当な手段を用いて、測定セル本体20の外面20aに接合される。測定セル本体内の複数の穴24は、ガス透過性膜23の下にあり、ガスが雰囲気から測定セル体積22内へおよび測定セル体積22から外へ拡散するための流路を形成する。集積化構成要素は、平面型赤外線源25、波長選択フィルタ26、およびMEMS型マイクロホン27を備える。IRフィルタは、構成要素パッケージ21内の開口部28を覆って、選択された波長のIRエネルギーがそれを通って測定セル体積22内に放射することができる窓を形成する。
【0016】
[0017]集積化構成要素パッケージ21内の内部バッフル構造29は、IR源からの放射が、共有するTO缶パッケージ21の内側でMEMSマイクロホンに直接結合するのを防止する。バッフルはまた、構成要素の組み立て時に真空下で封止すべきIR源を含んだ集積化構成要素の部分を形成する。
【0017】
[0018]ガス測定体積内で発生された光音響信号は、集積化構成要素パッケージの上面内の開口部30を通して、MEMSマイクロホンに通信可能に結合される。IR源およびMEMSマイクロホンは、マイクロエレクトロニクスおよび半導体パッケージで通常用いられるタイプの複数のワイヤボンド32を用いて、集積化構成要素の外部リード31に接続される。
【0018】
[0019]マイクロホン27からの信号を収集し処理するために、処理回路36も集積化構成要素パッケージ21内に集積化することができる。回路36は、パッケージ21内の半導体基板内に形成し得ることが理解されよう。この基板は、マイクロホン27を支持するものと同じ基板でもよく、異なっていてもよい。
【0019】
[0020]本発明の一態様では、IR源および検出要素の両方の製作は、単一の集積化構成要素内に実施し、光音響ガス検出器内に統合することができる。信号処理電子回路は、同じダイ上、または同じTO缶パッケージ内に実現してもよく、光音響ガス検出器のすべての能動構成要素のための単一チップまたは単一構成要素ソリューションとなる。このような集積化は、従来技術の実装と比べて、信頼性および性能の改善、ならびに製造およびコスト効率をもたらすと期待される。
【0020】
[0021]上記から、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに数多くの変形形態および変更形態が可能であることが理解されよう。本明細書に示された特定の装置に関しては、限定を意図するものではなく推論すべきでもないことを理解されたい。もちろん添付の特許請求の範囲によって、すべてのこのような変更形態は、特許請求の範囲に包含されるものである。
【符号の説明】
【0021】
20 測定セル本体
20a 外面
21 構成要素パッケージ
22 測定セル体積
23 ガス透過性膜
24 穴
25 平面型赤外線源
26 波長選択フィルタ
27 MEMS型マイクロホン
28 開口部
29 内部バッフル構造
30 開口部
31 外部リード
32 ワイヤボンド
36 処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に担持された赤外線源と、
同じまたは第2の半導体基板のうちの1つの上に形成された集積化マイクロホン、および第3の基板上に担持された赤外波長選択帯域通過フィルタと
を備える光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項2】
請求項1に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記線源、前記マイクロホン、および前記赤外フィルタを収容するための集積化構成要素パッケージを含む、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項3】
請求項2に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記集積化構成要素パッケージ内の半導体基板上に形成された信号収集および信号処理回路をさらに含む、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項4】
請求項1に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記マイクロホンがMEMS型トランスデューサとして実装される、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項5】
請求項2に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記構成要素ハウジングのパッケージングが、金属缶トランジスタ外形パッケージまたは他の工業標準半導体デバイス・パッケージング・フォーマットの要件に適合する、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項6】
請求項3に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記構成要素ハウジングのパッケージングが、金属缶トランジスタ外形パッケージまたは他の工業標準半導体デバイス・パッケージング・フォーマットの要件に適合する、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項7】
請求項2に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記赤外線源がほぼ平面である、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項8】
請求項3に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記赤外線源がほぼ平面である、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項9】
請求項2に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記赤外線源が薄膜導体を含む、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項10】
請求項3に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記赤外線源が薄膜導体を含む、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項11】
請求項2に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記赤外線源がフィラメント導体を含む、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項12】
請求項3に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記赤外線源がフィラメント導体を含む、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項13】
請求項2に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記赤外線源が赤外発光ダイオードを含む、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項14】
請求項3に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記赤外線源が赤外発光ダイオードを含む、光音響ガスセンサ構成要素。
【請求項15】
請求項2に記載の光音響ガスセンサ構成要素において、前記波長選択帯域通過フィルタが、少なくとも誘電体またはダイクロイック型IRフィルタを含むクラスから選択される、光音響ガスセンサ構成要素。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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