光順序回路
【課題】 本発明は、小さな光強度で状態遷移が可能となり、サイズを小型化できる光順序回路を提供することを目的とする。
【解決手段】 複数の共振モードを持つ複数の共振器と、前記複数の共振器に結合された導波路からなり、各共振器は、入力される複数波長の光のうちの一または複数の光の入力で発生する非線形効果によって入力される他の光のスイッチングを行い、各共振器で前記一または複数の光の波長と前記他の光の波長とを異ならしめて構成する。
【解決手段】 複数の共振モードを持つ複数の共振器と、前記複数の共振器に結合された導波路からなり、各共振器は、入力される複数波長の光のうちの一または複数の光の入力で発生する非線形効果によって入力される他の光のスイッチングを行い、各共振器で前記一または複数の光の波長と前記他の光の波長とを異ならしめて構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光順序回路に関し、光出力が現在の光入力だけでなく過去の光入力の履歴に依存する光順序回路に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信技術において、その潜在能力を全て引き出すには、構築したシステムにおける信号処理の全てを光を用いて行うことが必要とされる。光のみを用いて駆動する光記憶素子の実現も、そうした要求事項の一つである。
【0003】
光順序回路は光記憶素子の実現の一つの目安であり、例えば光順序回路の一つである光フリップフロップが実現すれば電子回路におけるフリップフロップ同様、スタティックRAMに相当する光素子や、より高度な光素子の実現が可能である。
【0004】
これまでに報告されている光順序回路としては、例えば非特許文献1に記載の光フリップフロップがある。この光フリップフロップは、図1に示すように、2個のエタロン共振器1,2と、光ファイバ3〜7によって構成される。エタロン共振器1,2は光双安定状態を持つ素子であり、前後にGRIN(屈折率分布)レンズ8を有している。光ファイバ3,4からエタロン共振器1,2に供給される同一波長の入力光Ain,Binの光強度が小さいとき、エタロン共振器1,2はともに光遮断状態であり、光ファイバ6,7から光出力はされない。
【0005】
ここで、入力光Ainとして光強度が大きい光パルスが入来すると、エタロン共振器1は光導通状態となり、光ファイバ6から光出力Aoutが出力される。また、エタロン共振器2は光遮断状態であるので入力光Binはエタロン共振器2で反射され、光ファイバ5を通してエタロン共振器1に供給されており、入力光Ainが小さくなっても入力光AinとBinの和によってエタロン共振器1は光導通状態を維持する。
【0006】
この後、入力光Binとして光強度が大きい光パルスが入来すると、エタロン共振器2は光導通状態となり、光ファイバ7から光出力Boutが出力される。また、エタロン共振器2で入力光Binが反射されないために、エタロン共振器1に供給される入力光はAinだけとなってエタロン共振器1は光遮断状態に遷移し、光ファイバ6からの光出力が停止される。また、エタロン共振器1は光遮断状態であるので入力光Ainはエタロン共振器1で反射され、光ファイバ5を通してエタロン共振器2に供給され、入力光Binが小さくなっても入力光AinとBinの和によってエタロン共振器2は光導通状態を維持する。
【非特許文献1】Hiroyuki Tsuda and Takashi Kurokawa, Applied Physics Letters,Vol.55,1990,pp1724−1726
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載の光フリップフロップは、2つの問題を有している。第1の問題は、GRINレンズ付きの2つのエタロン共振器と光ファイバで構成されるためにサイズが大きいということである。
【0008】
第2の問題は、光双安定を示すエタロン共振器を光遮断状態から光導通状態に遷移させるために大きな光強度の光パルスが必要となることである。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、小さな光強度で状態遷移が可能となり、サイズを小型化できる光順序回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、複数の共振モードを持つ複数の共振器と、前記複数の共振器に結合された導波路からなり、
各共振器は、入力される複数波長の光のうちの一または複数の光の入力で発生する非線形効果によって入力される他の光のスイッチングを行い、
各共振器で前記一または複数の光の波長と前記他の光の波長とを異ならしめて構成したことにより、小さな光強度で状態遷移が可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光順序回路において、
前記複数の共振器は、2つの共振モードを持つ第1、第2共振器であり、
第1共振器は、入力される第1、第2波長の光のうちの第1波長の光の入力で発生する非線形効果によって第2波長の光のスイッチングを行い、
第2共振器は、入力される第1、第2波長の光のうちの第2波長の光の入力で発生する非線形効果によって第1波長の光のスイッチングを行うことにより、フリップフロップとして動作することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の光順序回路において、
前記第2共振器の第1共振モードは前記第1波長の光に対し共鳴波長となり、
前記第1共振器の第2共振モードは前記第2波長の光に対し共鳴波長となり、
前記第1共振器の第1共振モードは前記第1波長の光に対し共鳴波長が異なり、十分な強度の光信号が入ったとき発生する非線形効果によって前記第1波長の光に共鳴し、
前記第2共振器の第2共振モードは前記第2波長の光に対し共鳴波長が異なり、十分な強度の光信号が入ったとき発生する非線形効果によって前記第2波長の光に共鳴することにより、第1、第2波長の光のスイッチングを行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3記載の光順序回路において、
第1、第2共振器及び導波路は、フォトニック結晶上に形成され、
前記第1共振器と第2共振器の間はトンネリングにより直接結合し、
前記第1波長の光の入力及び前記第2波長の光の出力を行う標準導波路と前記第2共振器の間をトンネリングにより結合し、
前記第2波長の光の入力及び前記第1波長の光の出力を行う標準導波路と前記第1共振器の間をトンネリングにより結合したことにより、サイズを小型化することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2または3記載の光順序回路において、
第1、第2共振器及び導波路は、フォトニック結晶上に形成され、
前記第1共振器と第2共振器の間はトンネリングにより直接結合し、
前記第1波長の光の入力を行う第1波長用導波路及び前記第2波長の光の出力を行う第2波長用導波路と前記第2共振器の間をトンネリングにより結合し、
前記第2波長の光の入力を行う第2波長用導波路及び前記第1波長の光の出力を行う第1波長用導波路と前記第1共振器の間をトンネリングにより結合したことにより、第1波長,第2波長の光を別々に入出力することができ、各共振器の共振モードのQ値設定が容易となる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項4記載の光順序回路において、
前記第1共振器と第2共振器の間に標準導波路を介在させて結合したことにより、共振モード間の反発を抑制することができる。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項5乃至7のいずれか記載の光順序回路において、
前記第1共振器と第2共振器の間に第1波長用導波路と第2波長用導波路を介在させて結合したことにより、共振モード間の反発を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、小さな光強度で状態遷移が可能となり、サイズを小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図2は、本発明の光順序回路の一形態としての光フリップフロップの原理構成図を示す。図2において、光フリップフロップは、共振器CA、CBそれぞれで構成される2つの共鳴トンネルフィルタ、及び入出力用導波路11,12により構成されており、共振器CA、CBが持つそれぞれ波長の異なる2つの共振モードを利用する。
【0020】
ここで、共鳴トンネルフィルタとは、共振器と入出力導波路が互いにフォトニックバンドギャップ材によって分離されたものであり、その共振器の持つ共振モードの波長と同じ波長を持つ光を入力すると、その光が共振器内で共鳴を起こすことにより、共振器内での光子密度を高めつつ光パワーの殆どを透過し、共鳴しない波長の光はそのパワーの殆どを反射する。
【0021】
また、ここで共振器CA、CBは非常に高いQ値と非常に小さなモード体積を有するため、入力光の強度に依存し光非線形効果を起こしやすい構造となっている。ここで、共振器CAの持つ共振モードをMA1、MA2とし、共振器CBが持つ共振モードをMB1、MB2とする。また、入力光は2種類の波長の光を用い、それぞれ光S1,S2とする。
【0022】
ここで、共振モードMB1は光S1に対して共鳴波長となり、MA2はS2に対して共鳴波長となるように設計し、また、やや低めのQ値に設定する。一方、共振モードMA1は光S1に対し、共振モードMB2は光S2に対してそれぞれ共鳴波長が僅かに異なるように設計し、充分な強度の光信号が入った場合にのみ光非線形効果による共鳴波長シフトによって共鳴トンネルを起こすように設計し、また、Q値は高く設計する。
【0023】
なお、共振モードMB1、MA2のQ値をやや低めのQ値に設定するのは、光S1,S2の透過率を上昇(反射の低減)させ、非線形効果を起こさせないために共振機内での光強度を低下させるためであり、後述のQh値を低く設計することで実現する。
【0024】
従って、共振器CAは光S1の入力によりS2を遮断するスイッチとして機能し、共振器CBは光S2の入力によりS1を遮断するスイッチとして機能する。また、光S1は共振器CAに対する制御ラインであり、共振器CBにおける信号ラインとして捉えられ、光S2はCBに対する制御ラインであり、共振器CAにおける信号ラインとして捉えることができる。
【0025】
次に、図3を用いて図2の光フリップフロップの動作を説明する。
(a)最初、一切の光S1、S2が入力されていない状態から始め、光S1を共振器CBからCAの順に透過するように入力する。この時、S2は共振モードMA2を介して共振器CAをすり抜け共振器CBに到達し、光非線形効果により共振モードMB1、MB2それぞれを波長シフトさせつつ共振器CBすり抜け、出力側導波路11に到達する。
(b)この状態の時、光S1を共振器CBからCAの順に透過するように入力すると、モードMB1が光S2によって既に波長シフトさせられているため、S1はモードMB1に共鳴できず、共振器CBにより透過をブロックされる。また、僅かに透過できた分も共振器CAで光非線形効果を起こすには不十分であり、ここでもブロックされる。
(c)ここで光S2を一瞬絶つ(負パルスの入力)。すると光S2により共振器CBで起こっていた光非線形効果が消滅し、共振モードMB1、MB2それぞれの共鳴波長は元の波長に復帰する。すると、それまで共振器CBを透過できなかった光S1はモードMB1を介して共振器CBをすり抜けて共振器CAに達し、共振モードMA1、MA2を光非線形効果により波長シフトさせつつ共振器CAを透過する。
(d)この状態の時、再び光S2を入力しても、(b)における光S1と同様に、光S2は共振器CA、CBでブロックされるため透過できない。
【0026】
上記の状態(a),(b),(c),(d)の順に変化した場合、時間軸(t)における、入力光S1,S2と、出力光S1out,S2outの関係を図4に示す。図中、ハッチング部分において、入出力光が得られる。
【0027】
図5に、上記の光フリップフロップの状態遷移図を示す。ここでは、状態Aを出力光S1out,S2outがともにオフ、状態Bを出力光S2outのみオン、状態Cを出力光S1outのみオンと定義し、入力光S1,S2の変化による状態遷移を矢印で示している。
【0028】
このようにして、図2のフリップフロップでは、回路全体が過去の光入力の状態を記憶し、負論理によるフリップフロップ動作が可能となる。また、本発明において光非線形効果による共鳴波長シフトによって共鳴トンネルを起こす光信号の強度は、従来のエタロン共振器を光遮断状態から光導通状態に遷移させるのに必要な光強度に比べると大幅に小さくなる。
【0029】
次に、具体的な回路構成について説明する。
【0030】
上記の光フリップフロップは、三角格子空孔2次元フォトニック結晶に構成する。三角格子空孔2次元フォトニック結晶における共鳴トンネルフィルタは、その共振器内においてその結晶配位方向のΓM軸方向にフィールド(腕)が伸びるため、これらと導波路を連結する形で結合可能である。
【0031】
なお、三角格子空孔の結晶配位方向のΓK軸は隣接する2つ空孔の中心を結ぶ方向であり、三角格子の3辺がΓK軸に対応する。また、ΓM軸は、隣接する2つ空孔の中心を結ぶ直線(ΓK軸)に直交し、最短の空孔の中心に向かう方向である。
(第1実施形態、共振器間直接結合2ポートフリップフロップ)
図6は、共振器間直接結合2ポートフリップフロップの構成図を示す。このフリップフロップは、2個の共振器CA、CBと、全波長を通す標準導波路13,14からなる最もシンプルな形態である。ここでは、トンネリングにより直接結合した2つの共振器CA、CBにそれぞれ1本ずつの標準導波路13,14がトンネリングにより結合されている。標準導波路13はS1入力用導波路とS2out出力用導波路を兼ね、標準導波路14はS2入力用導波路とS1out出力用導波路を兼ねる。
【0032】
共振器CA、CBはそれぞれの一端が互いにΓM軸方向(フィールドが伸びる方向)となるよう配置され、共振器CA、CBそれぞれの他端からΓM軸方向に標準導波路13,14の一端が配置され、標準導波路13,14はΓK軸と重なるX軸方向に延在されている。
【0033】
光S1は外部から標準導波路13に入力されて標準導波路14から外部に出力され、光S2は外部から標準導波路14に入力されて標準導波路13から出力される。
【0034】
この実施形態は、S1out、S2out出力用導波路を用いずに、共振器CA、CBから紙面とは垂直の上下方向に出力される上方放射光を用いる場合には、デバイスサイズが小さく構成が単純であるという特長がある。
【0035】
図7は、三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合2ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、シリコン(Si)エアブリッジ型のフォトニック結晶20は、シリコンのスラブ22に三角格子状の空孔24を設けたものである。
【0036】
標準導波路26,28それぞれは、フォトニック結晶の空孔をX軸方向に除去して構成されている。なお、X軸はΓK軸に重なる。
【0037】
標準導波路26の一端からΓM軸方向(フィールドが伸びる方向)に6周期のポテンシャルバリア(6周期のフォトニック結晶周期)を配置して共振器CBの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより標準導波路26と共振器CB間が結合されている。共振器CBの他端からΓM軸方向に6周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CAの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CA,CB間が直接結合されている。また、共振器CAの他端からΓM軸方向に6周期のポテンシャルバリアを配置して標準導波路28の一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CAと標準導波路28間が結合されている。なお、共振器と共振器の間あるいは共振器と導波路の間のポテンシャルバリアの周期数は、要求する結合率により増減できる。
【0038】
光S1は外部から標準導波路26のポートP1に入力されて標準導波路28のポートP2から外部に出力され、光S2は外部から標準導波路28のポートP2に入力されて標準導波路26のポートP1から出力される。
(第2実施形態、共振器間直接結合4ポートフリップフロップ)
図8は、共振器間直接結合4ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、トンネリングにより直接結合した2つの共振器CA、CBにそれぞれにS1用導波路30,31とS2用導波路32,33がトンネリングにより結合されている。ここでは、S1用導波路30,31として光S1を通し、光S2を通さないものを用い、S2用導波路32,33として光S2を通し、光S1を通さないものを用いる。これらS1用導波路30,31、S2用導波路32,33の設計方法については後述する。
【0039】
共振器CA、CBはそれぞれの一端が互いにΓM軸方向となるよう配置され、共振器CAの他端から2つのΓM軸方向にS1用導波路31,S2用導波路32の一端が配置され、共振器CBの他端から2つのΓM軸方向にS1用導波路30,S2用導波路33の一端が配置され、導波路30〜33それぞれはΓK軸と重なるX軸方向に延在されている。
【0040】
光S1は外部から図中下部のS1用導波路30に入力されて上部のS1用導波路31から外部に出力され、光S2は外部から図中上部のS2用導波路32に入力されて下部のS2用導波路33から出力される。
【0041】
2次元集積時は出力光S1out、S2outを他のデバイスに入力して機能回路を構成するので、この実施形態が望ましい。また、光S1,S2それぞれで導波路と共振器間の結合率を個別に調整できるため、共振器CA、CBのQ値設定が容易となる。
【0042】
図9は、三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合4ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、シリコンエアブリッジ型のフォトニック結晶40は、シリコンのスラブ42に三角格子状の空孔44を設けたものである。
【0043】
S1用導波路45,S2用導波路46それぞれは、Y軸上の異なる位置でX軸方向に延在している。なお、X軸はΓK軸に重なる。S1用導波路45,S2用導波路46それぞれの一端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CBの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより導波路45,46と共振器CB間が結合されている。
【0044】
共振器CBの他端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CAの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CA,CB間が直接結合されている。また、共振器CAの他端から2つのΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置してS1用導波路47,S2用導波路48の一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CAと導波路47,48間が結合されている。S1用導波路47,S2用導波路48それぞれは、Y軸上の異なる位置でX軸方向に延在している。
【0045】
光S1は外部からS1用導波路45のポートP1に入力されてS1用導波路47のポートP3から外部に出力され、光S2は外部からS2用導波路48のポートP4に入力されて2用導波路46のポートP2から出力される。
【0046】
図8、図9の実施形態では、光S1、S2を互いに逆向きに入出力させているが、光S1、S2を同じ向きに入出力したい場合には、図10に示す構成とする。また、図11に示す構成とすることも可能である。
【0047】
図10は、共振器間直接結合4ポートフリップフロップの他の構成図を示す。同図中、トンネリングにより直接結合した2つの共振器CA、CBにそれぞれにS1用導波路50,51とS2用導波路52,53がトンネリングにより結合されている。ここでは、S1用導波路50,51として光S1を通し、光S2を通さないものを用い、S2用導波路52,53として光S2を通し、光S1を通さないものを用いる。
【0048】
共振器CA、CBはそれぞれの一端が互いにΓM軸方向となるよう配置され、共振器CAの一端からΓM軸方向(共振器CBとは異なるΓM軸方向)にS2用導波路52の一端が配置され、共振器CBの他端からΓM軸方向にS1用導波路50の一端が配置されている。また、共振器CBの一端からΓM軸方向(共振器CAとは異なるΓM軸方向)にS2用導波路53の一端が配置され、共振器CAの他端からΓM軸方向にS1用導波路51の一端が配置されている。導波路50〜53それぞれはΓK軸と重なるX軸方向に延在されている。
【0049】
光S1は外部から図中下部のS1用導波路50に入力されて上部のS1用導波路51から外部に出力され、光S2は外部から図中下部のS2用導波路52に入力されて上部のS2用導波路53から出力される。
【0050】
ところで、導波路はΓK軸方向に延在していれば良く、X軸方向に延在する必要はなく、また、互いに平行に配置する必要はない。このような例について説明する。
【0051】
図11は、三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合4ポートフリップフロップの他の構成図を示す。同図中、シリコンエアブリッジ型のフォトニック結晶60は、シリコンのスラブ62に三角格子状の空孔64を設けたものである。
【0052】
S1用導波路65,S2用導波路66それぞれは、X軸に対し60度傾いたΓK軸方向に延在している。また、S1用導波路67,S2用導波路68それぞれは、X軸に対し120度傾いたΓK軸方向に延在している。
【0053】
S2用導波路68の一端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CBの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより導波路68と共振器CB間が結合されている。共振器CBの他端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CAの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CA,CB間が直接結合されている。また、共振器CBの他端からΓM軸方向(共振器CAとは異なるΓM軸方向)に数周期のポテンシャルバリアを配置してS1用導波路65の一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CBと導波路65間が結合されている。
【0054】
また、共振器CAの一端からΓM軸方向(共振器CBとは異なるΓM軸方向)に数周期のポテンシャルバリアを配置してS2用導波路66の一端が設けられ、共振器CAの他端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置してS1用導波路67の一端が設けられている。
【0055】
光S1は外部からS1用導波路65のポートP1に入力されてS1用導波路67のポートP3から外部に出力され、光S2は外部からS2用導波路68のポートP2に入力されてS2用導波路66のポートP4から出力される。
(第3実施形態、共振器間導波路結合2ポートフリップフロップ)
ところで、共振器CA、CB間のXY平面方向の漏れ成分であるQhを低下させて共振器CA、CBそれぞれのQ値を抑制するためには、共振器間結合を強くする必要があるが、共振器間を直接結合する場合、共振モードMA1とMB1、共振モードMA2とMB2が互いに干渉し、共振モード同士の反発が起こりやすくなり、共振器の設計が困難になる。そこで、共振器間の距離を離し、導波路により共振器CA、CB間を結合することで、この共振モード間の反発を抑制することができる。
【0056】
なお、Q値はXY平面に対し垂直方向の損失に起因するQvと、XY平面の水平方向の結合率に起因するQhに分解され、1/Q=1/Qv+1/Qhで表わされる。また、このときの共振器の透過率Tは、T=(Qv/Qh)2で表わされる。Qv値は共振器固有の値であり、Qh値は共振器と導波路の位置関係及び共鳴波長で決定される。
【0057】
図12は、共振器間導波路結合2ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、2つの共振器CA、CBは標準導波路71の両端にトンネリングにより結合されている。また、共振器CA、CBにそれぞれ1本ずつの標準導波路72,73がトンネリングにより結合されている。標準導波路72はS1入力用導波路とS2out出力用導波路を兼ね、標準導波路73はS2入力用導波路とS1out出力用導波路を兼ねる。
【0058】
共振器CAの両端からΓM軸方向に標準導波路71,73の一端が配置され、共振器CBの両端からΓM軸方向に標準導波路71,72の一端が配置され、標準導波路71,72,73はΓK軸と重なるX軸方向に延在されている。光S1は外部から標準導波路72に入力されて標準導波路73から外部に出力され、光S2は外部から標準導波路73に入力されて標準導波路72から出力される。
【0059】
図13は、三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間導波路結合2ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、シリコンエアブリッジ型のフォトニック結晶80は、シリコンのスラブ82に三角格子状の空孔84を設けたものである。
【0060】
標準導波路85,86,87それぞれは、フォトニック結晶の空孔をX軸方向に除去して構成されている。なお、X軸はΓK軸に重なる。共振器間を結合する標準導波路85の長さは20結晶周期としているが、デバイスサイズとモード間反発の程度により増減できる。しかし、短すぎるとモード間反発が強くなると同時に導波路自体が共振器特性を強く帯び始めるため、10結晶周期より短い領域では用いない方がよい。
【0061】
標準導波路85の両端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CA,CBの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより標準導波路85と共振器CA,CB間が結合されている。共振器CBの他端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して標準導波路86の一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CBと標準導波路86間が結合されている。また、共振器CAの他端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して標準導波路87の一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CAと標準導波路28間が結合されている。
(第4実施形態、共振器間導波路結合4ポートフリップフロップ)
図14は、共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、2つの共振器CA、CBはS1用導波路91,S2用標準導波路92それぞれの両端にトンネリングにより結合されている。また、共振器CBにS1用標波路93,S2用導波路94がトンネリングにより結合され、共振器CAにS1用導波路95,S2用導波路96がトンネリングにより結合されている。ここでは、S1用導波路91,93,95として光S1を通し、光S2を通さないものを用い、S2用導波路92,94,96として光S2を通し、光S1を通さないものを用いる。
【0062】
共振器CBの一端から2つのΓM軸方向にS1用導波路91,S2用導波路92の一端が配置され、共振器CAの一端から2つのΓM軸方向にS1用導波路91,S2用導波路92の他端が配置されている。共振器CBの他端から2つのΓM軸方向にS1用導波路93,S2用導波路94の一端が配置され、共振器CAの他端から2つのΓM軸方向にS1用導波路95,S2用導波路96の一端が配置され、導波路91〜96それぞれはΓK軸と重なるX軸方向に延在されている。
【0063】
光S1は外部から図中下部のS1用導波路93に入力されて上部のS1用導波路95から外部に出力され、光S2は外部から図中上部のS2用導波路96に入力されて下部のS2用導波路94から出力される。
【0064】
この構成では、各共振モードのQ値を全てQhの制御のみによって個別に設計が可能となるので設計が容易になる。共振器間を結合する導波路の長さに関する制限は共振器間導波路結合2ポートFFの場合と同様である。
【0065】
図15は、三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、シリコンエアブリッジ型のフォトニック結晶100は、シリコンのスラブ102に三角格子状の空孔104を設けたものである。
【0066】
S1用導波路105,S2用導波路106それぞれは、Y軸上の異なる位置でX軸方向に延在している。なお、X軸はΓK軸に重なる。S1用導波路105,S2用導波路106それぞれの一端からΓM軸方向に所定周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CBの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより導波路105,106と共振器CB間が結合されている。共振器CBの他端から2つのΓM軸方向に所定周期のポテンシャルバリアを配置してY軸上の異なる位置にS1用導波路107,S2用導波路108それぞれの一端が配置され、このポテンシャルバリアにより共振器CBと導波路107,108間が結合されている。共振器CBとS1用導波路105,107、S2用導波路106,108それぞれの間のポテンシャルバリア周期を選択することにより、共振モードMB1,MB2を決定できる。
【0067】
S1用導波路107,S2用導波路108それぞれは、X軸方向に延在しており、それぞれの一端からΓM軸方向に所定周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CAの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより導波路107,108と共振器CA間が結合されている。共振器CAの他端から2つのΓM軸方向に所定周期のポテンシャルバリアを配置してY軸上の異なる位置にS1用導波路109,S2用導波路110それぞれの一端が配置され、このポテンシャルバリアにより共振器CAと導波路107,108間が結合されている。共振器CAとS1用導波路107,109,S2用導波路108,110それぞれの間のポテンシャルバリア周期を選択することにより、共振モードMA1,MA2を決定できる。
【0068】
なお、図14では、S1用導波路91,93,95のY軸上の位置が同一となり、S2用導波路92,94,96それぞれのY軸上の位置が同一となるように配置しているが、図16に示すように、S1用導波路91とS1用導波路93,95のY軸上の位置が異なり、S2用導波路92とS1用導波路94,96のY軸上の位置が異なるよう、S1用導波路91とS2用導波路92とを共振器CA,CBを介して交差させる構成としても良い。
【0069】
次に、S1用導波路とS2用導波路に付いて説明する。
【0070】
本発明の光順序回路は、構成によってS1用導波路、S2用導波路を必要とする。これらの導波路は、それぞれS1用導波路は光S2を導波できず、S2用導波路は光S1を導波できないように導波帯域を制限している。このような導波路には様々なものが考え得るが、ここでは仮に位相シフト孔導波路と幅狭型導波路を用いる。位相シフト孔導波路と幅狭型導波路の解析には3次元FDTD(Finite Difference Time Domain Method)を用い、共通の設定として、三角格子空孔2次元フォトニック結晶のスラブ厚200nm、格子定数a=390nm、スラブ屈折率(シリコン:Siを仮定)を3.46、標準空孔径=0.55aとする。
【0071】
図17(B)に、位相シフト孔導波路の基本構成を示す。位相シフト孔導波路は、図中中央のΓK軸方向に延在する線欠陥導波路の中央線上に、ΓK軸方向に結晶周期と半周期ずれた位置に空孔(中央孔:ハッチングで示す)を設けた導波路である。
【0072】
特性パラメータとして中央孔の直径Dを用いると、図17(A)に示すように透過帯域が変化する。結晶周期aで規格化し、中央孔の直径Dが0.5a程度より大きい位置で長波長側に有効な透過帯域が生じる。このとき、中央孔径に応じて、D=0.5a程度では波長帯域1400nm〜1440nmとなり、D=0.65a程度では波長帯域1280nm〜1410nmとなる透過禁止帯域が発生する。この透過禁止帯域が光S2に重なるように設計することによりS1専用導波路として利用できる。
【0073】
図18(B)に、幅狭型導波路の基本構成を示す。幅狭型導波路は、図中中央のΓK軸方向に延在する線欠陥導波路の最内の空孔列(左下がりハッチングで示す)及び2番目に内側の空孔列(左上がりハッチングで示す)の位置を幅寄せることにより透過帯域を制御する。2番目に内側の列の空孔は、元の位置の空孔と重ねるように形成する。
【0074】
その幅寄せ量を特性パラメータとして用いると、図18(A)に示すように短波長帯のみが透過する導波路となることがわかる。その幅寄せ量に従ってその透過波長の上限を1470nm〜1360nmの範囲で調整できる。従って、透過上限波長が光S1の波長より短波長となるよう設計することにより、S2専用導波路として利用できる。
【0075】
図19に、S1用導波路に光S2が漏れず、S2用導波路に光S1が漏れないようクロストークが最小になるよう設計した場合の波長スペクトルデータを示す。ここで、S1用導波路の特性を破線で示し、S2用導波路の特性を一点差線で示す。
【0076】
ここで、共振器に図20に示す基本構成の4点欠陥共振器を用いる。4点欠陥共振器は、図中中央のΓK軸方向に延在する4点欠陥に隣接する最内孔(ハッチングで示す)をΓK軸方向に4点欠陥から離すように0.15aだけ幅寄せ、更に、最内孔の径を0.3としている。この場合の共振器の特性は図19に実線で示すように、モード1(波長1463.77nm、Q値は60000以上),モード2(波長1431.75nm、Q値は16000),モード3(波長1359.88nm、Q値は2500)の共振モードが存在する。
【0077】
従って、モード1を光S1、モード2を光S2として用いる。この場合、位相シフト孔導波路の中央孔径を0.5aとするとS1用導波路として適当な特性を持ち、幅狭型導波路の幅寄せ量を0.08aとしてS2用導波路として適当な特性を持つ。
(具体的設計に基づく解析例)
以上を基に動作実証の初期的解析を行った。
【0078】
図15に示す共振器間導波路結合4ポートフリップフロップを解析するにあたり、実際に各導波路が各入力光を分離できるかを解析した。解析結果を図21に示す。
【0079】
図21(D)に解析したモデルの構成例を示す。解析には3次元FDTDを用い、フォトニック結晶はシリコンエアブリッジ型の三角格子空孔フォトニック結晶とした。格子定数a=390nm、スラブ等価屈折率n=3.46、スラブ厚200nmとし、基本的な空孔の直径Dは214.5nm(=0.55a)とした。共振器は4点欠陥のものを用い、共振器の長手方向に隣接する2つの最内孔を外側に向かって50nmだけずらすとともに、その直径Diを117nm(=0.30a)に減少させてQ値を稼いでいる。
【0080】
入出力用導波路は、短波側のS2用導波路として両脇の空孔をそれぞれ15.6nm(=0.04a)だけ内側にずらした幅狭型導波路を用い、長波側のS1用導波路として中央孔径195nm(=0.50a)の位相シフト孔導波路を用いた。
【0081】
図21(D)における、S1用導波路105内の位置P1、S2用導波路106内の位置P2、共振器CB内の位置P5それぞれにおける波長スペクトルデータを図21(A)に実線、破線、一点鎖線それぞれで示す。図21(A)から、共振器CB内で光を励振すると、位置P1には光S1、位置P2には光S2に相当する波長が透過し、それぞれもう一方の波長に対するクロストークは20dB以上確保されていることが分かる。
【0082】
図21(B)は光波長S2成分の空間的な磁界パワー分布を示し、図21(C)は光波長S1成分の空間的な磁界パワー分布を示している。なお、図21(B),(C)における磁界パワーの大きさの指標は後述の図22に示すものと同一である。ここでは、期待通りに光S2はS2用導波路106,108に出力し、光S1はS1用導波路105,107に出力している。例えば図21(B)で光S2がS1用導波路105,107に僅かに漏れだして見えるクロストークはS1用導波路105,107の導波路長不足によるもので、導波路長をより長くすることでより低減できる。
【0083】
更に、図15に示す回路の解析結果を図22乃至図25に示す。この解析には2次元FDTDを用い、フォトニック結晶はシリコンエアブリッジ型の三角格子空孔フォトニック結晶とした。格子定数a=400nm、スラブ等価屈折率n=2.78、基本的な空孔の直径Dは220nm(=0.55a)とした。共振器CA、CBは、4点欠陥のものを用い、共振器の長手方向に隣接する2つの孔を外側に向かって48nm(=0.12a)だけずらすとともに、その直径Diを200nm(=0.50a)に減少させている。入出力用導波路は、短波側のS2用導波路として両脇の空孔をそれぞれ32nm(=0.08a)だけ内側にずらした幅狭型導波路を用い、長波側のS1用導波路として中央孔径260nm(=0.65a)の位相シフト孔導波路を用いた。なお、磁界パワー分布の単位は、磁界パワーの振幅の相対値[A2/m2]を示している。
【0084】
図22は、光S2がS2用導波路110のポートP4から入力されている様子を示し、共振器CA、CBともにONとなっているため、光S2はS2用導波路106のポートP2から出力される。これは図3の(a)に示す状態に相当する。
【0085】
図23は、図22の状態における光S1の透過状況を示している。共鳴波長の相対位置をずらすため、共振器CA内の等価屈折率を+0.01だけ変化させ、共振器CB内の等価屈折率を−0.01だけ変化させている。光S1はS1用導波路105のポートP1から入力されているが、このとき共振器CA、CBともにOFFとなっているため、光S1は殆ど透過しない。これは図3の(b)に示す状態に相当する。
【0086】
図24は、図23の状態から、光S2の入力を停止した時の光S1の透過状況を示している。共振器CBが光S1に対してONになるため、共振器CBにおける光S1の透過強度が増加し、共振器CAを光非線形効果によりONにする。これにより光S1はS1用導波路109のポートP3から出力される。これは図3の(c)に示す状態に相当する。
【0087】
図25は、図24の状態から、再び光S2を入力した時の光S2の透過状況を示している。共鳴波長の相対位置をずらすため、共振器CA内の等価屈折率を−0.01だけ変化させ、共振器CB内の等価屈折率を+0.01だけ変化させている。光S1に対しONとなった共振器CAは光S2に対しOFFとなり、また共振器CBもOFFとなるため、光S2は殆ど透過できなくなる。これは図3の(d)に示す状態に相当する。
【0088】
これらの解析結果は、図15の回路構成によるデバイスの光フリップフロップ動作が原理的に可能である事を示している。
(第5実施形態、N個の共振器を用いた光順序回路)
使用する共振器数が2より大きい場合の光順序回路の構成例を示す。
【0089】
図26は、3共振器構成光順序回路の構成図を示す。この光順序回路は、共振器CA、CB、CCと、これらを結合するS2,S3用導波路120、S1用導波路121、S2用導波路122,S1,S3用導波路123、S2用導波路124、S1用導波路125、S2用導波路126、S3用導波路127からなる。
【0090】
入力光はS1、S2、S3が用いられる。光S1、S2、S3に対する共振器CA、CB、CCそれぞれの共振モードとそのQ値は図27に示すように設定されている。即ち、共振器CAの持つ共振モードをMA1、MA2、MA3とし、共振器CBが持つ共振モードをMB2、MB3とし、共振器CCが持つ共振モードをMC1、MC2とする。共振モードMC1は光S1に対し、MA2はS2に対し、MB3はS3に対して共鳴波長となるように設計し、また、やや低めのQ値に設定する。
【0091】
一方、共振モードMA1は光S1に対し、MB2,MC2はS2に対し、MA3はS3に対してそれぞれ共鳴波長が僅かに異なるように設計し、充分な強度の光信号が入った場合にのみ光非線形効果による共鳴波長シフトによって共鳴トンネルを起こすように設計し、また、Q値は高く設定する。これは図2の構成における図3に相当する。
【0092】
ここで、光S2は共振器CB、CCで非線形効果によるスイッチング動作を行い、光S1、S2は共に共振器CAで非線形効果によるスイッチング動作を行う。従って、光S2が入力されている時は光S1,S3は遮断され、逆に光S1、S3のいずれかが入力されている時は光S2が遮断され、順序回路としての動作を行う。
【0093】
図28に、上記の光順序回路の状態遷移図を示す。ここでは、状態Aを出力光S1out,S2out,S3outが全てオフ、状態Bを出力光S2outのみオン、状態Cを出力光S1outのみオン、状態Dを出力光S3outのみオン、状態Eを出力光S1out,S3outがともにオンと定義し、入力光S1,S2,S3の変化による状態遷移を矢印で示している。
【0094】
共振器の数が増えると各共振モードの設定方法の自由度が増すため、図26と類似の構成で異なった機能を実現できる。
【0095】
図29は、他の3共振器構成光順序回路の構成図を示す。この光順序回路は、共振器CA、CB、CCと、これらを結合するS1,S2用導波路130、S2,S3用導波路131、S1,S3用導波路132,S3用導波路133、S1用導波路134、S1用導波路135、S2用導波路136、S2用導波路137、S3用導波路138からなる。
【0096】
入力光はS1、S2、S3が用いられる。光S1、S2、S3に対する共振器CA、CB、CCそれぞれの共振モードとそのQ値は図30に示すように設定されている。即ち、共振器CAの持つ共振モードをMA1、MA2、MA3とし、共振器CBが持つ共振モードをMB1、MB2、MB3とし、共振器CCが持つ共振モードをMC1、MC2、MC3とする。共振モードMC1は光S1に対し、MA2はS2に対し、MB3はS3に対して共鳴波長となるように設計し、また、やや低めのQ値に設定する。
【0097】
一方、共振モードMA1,MB1は光S1に対し、MB2,MC2はS2に対し、MA3,MC3はS3に対してそれぞれ共鳴波長が僅かに異なるように設計し、充分な強度の光信号が入った場合にのみ光非線形効果による共鳴波長シフトによって共鳴トンネルを起こすように設計し、また、Q値は高く設定する。
【0098】
ここで、光S1は共振器CA、CBに対して非線形効果によるスイッチング動作を行い、光S2は共振器CB、CCに対して非線形効果によるスイッチング動作を行い、光S3はCA、CCに対して非線形効果によるスイッチング動作を行う。このため、光S1を一瞬OFFにすると光S2、S3の経路が開く。ここで、共振器CAよりも共振器CBのほうが光S1の光源側に近いため時間的に早く状態が戻り、そのため、光S3がS2より先にONとなり、光S1に代わって共振器CCをスイッチングする。このため、光S2のONが阻止される。同様に光S3をOFFにすると、光S2がオンになり、光S2をOFFにすると、光S1がONになる。
【0099】
図31に、上記の光順序回路の状態遷移図を示す。ここでは、状態Aを出力光S1out,S2out,S3outが全てオフ、状態Bを出力光S3outのみオン、状態Cを出力光S2outのみオン、状態Dを出力光S1outのみオンと定義し、入力光S1,S2,S3の変化による状態遷移を矢印で示している。
【0100】
このようにして本発明の光順序回路は、その構成をN個(N≧2)の共振器への拡張が可能である。
【0101】
以上のように、本発明の構造は、2次元フォトニック結晶をベースとする2次元光回路内で信号光、制御光を伝搬させるため、素子のモノリシック集積、カスケード接続等が可能であり、極めて微少な、大規模な光回路、光ロジック、光メモリを構成することが可能となる。
【0102】
なお、共振器CAが請求項記載の第1共振器に対応し、共振器CBが第2共振器に対応し、光S1が第1波長に対応し、光S2が第2波長に対応し、MA1が第1共振器の第1共振モードに対応し、MA2が第1共振器の第2共振モードに対応し、MB1が第2共振器の第1共振モードに対応し、MB2が第2共振器の第2共振モードに対応し、S1用導波路が第1波長用導波路に対応し、S2用導波路が第2波長用導波路に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】従来の光フリップフロップの一例の構成図である。
【図2】本発明の光順序回路の一形態としての光フリップフロップの原理構成図である。
【図3】図2の光フリップフロップの動作を説明するための図である。
【図4】時間軸における入力光と出力光の関係を示す図である。
【図5】光フリップフロップの状態遷移図である。
【図6】共振器間直接結合2ポートフリップフロップの構成図である。
【図7】三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合2ポートフリップフロップの構成図である。
【図8】共振器間直接結合4ポートフリップフロップの構成図である。
【図9】三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合4ポートフリップフロップの構成図である。
【図10】共振器間直接結合4ポートフリップフロップの他の構成図である。
【図11】三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合4ポートフリップフロップの他の構成図である。
【図12】共振器間導波路結合2ポートフリップフロップの構成図である。
【図13】三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間導波路結合2ポートフリップフロップの構成図である。
【図14】共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの構成図である。
【図15】三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの構成図である。
【図16】共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの他の構成図である。
【図17】位相シフト孔導波路の基本構成及び透過帯域特性を示す図である。
【図18】幅狭型導波路の基本構成及び透過帯域特性を示す図である。
【図19】S1用導波路とS2用導波路と共振器の波長スペクトルデータを示す図である。
【図20】4点欠陥共振器の基本構成図である。
【図21】共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの解析結果を示す図である。
【図22】図15に示す回路で光S2に対し共振器CA、CBともにONとなっている場合の解析結果を示す図である。
【図23】図15に示す回路で光S1に対し共振器CA、CBともにOFFとなっている場合の解析結果を示す図である。
【図24】図15に示す回路で光S1に対し共振器CA、CBともにONとなっている場合の解析結果を示す図である。
【図25】図15に示す回路で光S2に対し共振器CA、CBともにOFFとなっている場合の解析結果を示す図である。
【図26】3共振器構成光順序回路の構成図である。
【図27】図26の光順序回路における光S1、S2、S3に対する共振器CA、CB、CCそれぞれの共振モードとそのQ値を示す図である。
【図28】図26の光順序回路における状態遷移図である。
【図29】他の3共振器構成光順序回路の構成図である。
【図30】図29の光順序回路における光S1、S2、S3に対する共振器CA、CB、CCそれぞれの共振モードとそのQ値を示す図である。
【図31】図29の光順序回路における状態遷移図である。
【符号の説明】
【0104】
CA、CB 共振器
11,12 入出力用導波路
13,14,26,28,71〜73,85〜87 標準導波路
20,40,60,80,100 フォトニック結晶
22,42,62,82,102 スラブ
24,44,64,84,104 空孔
30,31,45,50,51,65,67,91,93,95,105,107,109 S1用導波路
32,33,46,52,53,66,68,92,94,96,106,108,110 S2用導波路
【技術分野】
【0001】
本発明は、光順序回路に関し、光出力が現在の光入力だけでなく過去の光入力の履歴に依存する光順序回路に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信技術において、その潜在能力を全て引き出すには、構築したシステムにおける信号処理の全てを光を用いて行うことが必要とされる。光のみを用いて駆動する光記憶素子の実現も、そうした要求事項の一つである。
【0003】
光順序回路は光記憶素子の実現の一つの目安であり、例えば光順序回路の一つである光フリップフロップが実現すれば電子回路におけるフリップフロップ同様、スタティックRAMに相当する光素子や、より高度な光素子の実現が可能である。
【0004】
これまでに報告されている光順序回路としては、例えば非特許文献1に記載の光フリップフロップがある。この光フリップフロップは、図1に示すように、2個のエタロン共振器1,2と、光ファイバ3〜7によって構成される。エタロン共振器1,2は光双安定状態を持つ素子であり、前後にGRIN(屈折率分布)レンズ8を有している。光ファイバ3,4からエタロン共振器1,2に供給される同一波長の入力光Ain,Binの光強度が小さいとき、エタロン共振器1,2はともに光遮断状態であり、光ファイバ6,7から光出力はされない。
【0005】
ここで、入力光Ainとして光強度が大きい光パルスが入来すると、エタロン共振器1は光導通状態となり、光ファイバ6から光出力Aoutが出力される。また、エタロン共振器2は光遮断状態であるので入力光Binはエタロン共振器2で反射され、光ファイバ5を通してエタロン共振器1に供給されており、入力光Ainが小さくなっても入力光AinとBinの和によってエタロン共振器1は光導通状態を維持する。
【0006】
この後、入力光Binとして光強度が大きい光パルスが入来すると、エタロン共振器2は光導通状態となり、光ファイバ7から光出力Boutが出力される。また、エタロン共振器2で入力光Binが反射されないために、エタロン共振器1に供給される入力光はAinだけとなってエタロン共振器1は光遮断状態に遷移し、光ファイバ6からの光出力が停止される。また、エタロン共振器1は光遮断状態であるので入力光Ainはエタロン共振器1で反射され、光ファイバ5を通してエタロン共振器2に供給され、入力光Binが小さくなっても入力光AinとBinの和によってエタロン共振器2は光導通状態を維持する。
【非特許文献1】Hiroyuki Tsuda and Takashi Kurokawa, Applied Physics Letters,Vol.55,1990,pp1724−1726
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載の光フリップフロップは、2つの問題を有している。第1の問題は、GRINレンズ付きの2つのエタロン共振器と光ファイバで構成されるためにサイズが大きいということである。
【0008】
第2の問題は、光双安定を示すエタロン共振器を光遮断状態から光導通状態に遷移させるために大きな光強度の光パルスが必要となることである。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、小さな光強度で状態遷移が可能となり、サイズを小型化できる光順序回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、複数の共振モードを持つ複数の共振器と、前記複数の共振器に結合された導波路からなり、
各共振器は、入力される複数波長の光のうちの一または複数の光の入力で発生する非線形効果によって入力される他の光のスイッチングを行い、
各共振器で前記一または複数の光の波長と前記他の光の波長とを異ならしめて構成したことにより、小さな光強度で状態遷移が可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光順序回路において、
前記複数の共振器は、2つの共振モードを持つ第1、第2共振器であり、
第1共振器は、入力される第1、第2波長の光のうちの第1波長の光の入力で発生する非線形効果によって第2波長の光のスイッチングを行い、
第2共振器は、入力される第1、第2波長の光のうちの第2波長の光の入力で発生する非線形効果によって第1波長の光のスイッチングを行うことにより、フリップフロップとして動作することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の光順序回路において、
前記第2共振器の第1共振モードは前記第1波長の光に対し共鳴波長となり、
前記第1共振器の第2共振モードは前記第2波長の光に対し共鳴波長となり、
前記第1共振器の第1共振モードは前記第1波長の光に対し共鳴波長が異なり、十分な強度の光信号が入ったとき発生する非線形効果によって前記第1波長の光に共鳴し、
前記第2共振器の第2共振モードは前記第2波長の光に対し共鳴波長が異なり、十分な強度の光信号が入ったとき発生する非線形効果によって前記第2波長の光に共鳴することにより、第1、第2波長の光のスイッチングを行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3記載の光順序回路において、
第1、第2共振器及び導波路は、フォトニック結晶上に形成され、
前記第1共振器と第2共振器の間はトンネリングにより直接結合し、
前記第1波長の光の入力及び前記第2波長の光の出力を行う標準導波路と前記第2共振器の間をトンネリングにより結合し、
前記第2波長の光の入力及び前記第1波長の光の出力を行う標準導波路と前記第1共振器の間をトンネリングにより結合したことにより、サイズを小型化することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2または3記載の光順序回路において、
第1、第2共振器及び導波路は、フォトニック結晶上に形成され、
前記第1共振器と第2共振器の間はトンネリングにより直接結合し、
前記第1波長の光の入力を行う第1波長用導波路及び前記第2波長の光の出力を行う第2波長用導波路と前記第2共振器の間をトンネリングにより結合し、
前記第2波長の光の入力を行う第2波長用導波路及び前記第1波長の光の出力を行う第1波長用導波路と前記第1共振器の間をトンネリングにより結合したことにより、第1波長,第2波長の光を別々に入出力することができ、各共振器の共振モードのQ値設定が容易となる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項4記載の光順序回路において、
前記第1共振器と第2共振器の間に標準導波路を介在させて結合したことにより、共振モード間の反発を抑制することができる。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項5乃至7のいずれか記載の光順序回路において、
前記第1共振器と第2共振器の間に第1波長用導波路と第2波長用導波路を介在させて結合したことにより、共振モード間の反発を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、小さな光強度で状態遷移が可能となり、サイズを小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図2は、本発明の光順序回路の一形態としての光フリップフロップの原理構成図を示す。図2において、光フリップフロップは、共振器CA、CBそれぞれで構成される2つの共鳴トンネルフィルタ、及び入出力用導波路11,12により構成されており、共振器CA、CBが持つそれぞれ波長の異なる2つの共振モードを利用する。
【0020】
ここで、共鳴トンネルフィルタとは、共振器と入出力導波路が互いにフォトニックバンドギャップ材によって分離されたものであり、その共振器の持つ共振モードの波長と同じ波長を持つ光を入力すると、その光が共振器内で共鳴を起こすことにより、共振器内での光子密度を高めつつ光パワーの殆どを透過し、共鳴しない波長の光はそのパワーの殆どを反射する。
【0021】
また、ここで共振器CA、CBは非常に高いQ値と非常に小さなモード体積を有するため、入力光の強度に依存し光非線形効果を起こしやすい構造となっている。ここで、共振器CAの持つ共振モードをMA1、MA2とし、共振器CBが持つ共振モードをMB1、MB2とする。また、入力光は2種類の波長の光を用い、それぞれ光S1,S2とする。
【0022】
ここで、共振モードMB1は光S1に対して共鳴波長となり、MA2はS2に対して共鳴波長となるように設計し、また、やや低めのQ値に設定する。一方、共振モードMA1は光S1に対し、共振モードMB2は光S2に対してそれぞれ共鳴波長が僅かに異なるように設計し、充分な強度の光信号が入った場合にのみ光非線形効果による共鳴波長シフトによって共鳴トンネルを起こすように設計し、また、Q値は高く設計する。
【0023】
なお、共振モードMB1、MA2のQ値をやや低めのQ値に設定するのは、光S1,S2の透過率を上昇(反射の低減)させ、非線形効果を起こさせないために共振機内での光強度を低下させるためであり、後述のQh値を低く設計することで実現する。
【0024】
従って、共振器CAは光S1の入力によりS2を遮断するスイッチとして機能し、共振器CBは光S2の入力によりS1を遮断するスイッチとして機能する。また、光S1は共振器CAに対する制御ラインであり、共振器CBにおける信号ラインとして捉えられ、光S2はCBに対する制御ラインであり、共振器CAにおける信号ラインとして捉えることができる。
【0025】
次に、図3を用いて図2の光フリップフロップの動作を説明する。
(a)最初、一切の光S1、S2が入力されていない状態から始め、光S1を共振器CBからCAの順に透過するように入力する。この時、S2は共振モードMA2を介して共振器CAをすり抜け共振器CBに到達し、光非線形効果により共振モードMB1、MB2それぞれを波長シフトさせつつ共振器CBすり抜け、出力側導波路11に到達する。
(b)この状態の時、光S1を共振器CBからCAの順に透過するように入力すると、モードMB1が光S2によって既に波長シフトさせられているため、S1はモードMB1に共鳴できず、共振器CBにより透過をブロックされる。また、僅かに透過できた分も共振器CAで光非線形効果を起こすには不十分であり、ここでもブロックされる。
(c)ここで光S2を一瞬絶つ(負パルスの入力)。すると光S2により共振器CBで起こっていた光非線形効果が消滅し、共振モードMB1、MB2それぞれの共鳴波長は元の波長に復帰する。すると、それまで共振器CBを透過できなかった光S1はモードMB1を介して共振器CBをすり抜けて共振器CAに達し、共振モードMA1、MA2を光非線形効果により波長シフトさせつつ共振器CAを透過する。
(d)この状態の時、再び光S2を入力しても、(b)における光S1と同様に、光S2は共振器CA、CBでブロックされるため透過できない。
【0026】
上記の状態(a),(b),(c),(d)の順に変化した場合、時間軸(t)における、入力光S1,S2と、出力光S1out,S2outの関係を図4に示す。図中、ハッチング部分において、入出力光が得られる。
【0027】
図5に、上記の光フリップフロップの状態遷移図を示す。ここでは、状態Aを出力光S1out,S2outがともにオフ、状態Bを出力光S2outのみオン、状態Cを出力光S1outのみオンと定義し、入力光S1,S2の変化による状態遷移を矢印で示している。
【0028】
このようにして、図2のフリップフロップでは、回路全体が過去の光入力の状態を記憶し、負論理によるフリップフロップ動作が可能となる。また、本発明において光非線形効果による共鳴波長シフトによって共鳴トンネルを起こす光信号の強度は、従来のエタロン共振器を光遮断状態から光導通状態に遷移させるのに必要な光強度に比べると大幅に小さくなる。
【0029】
次に、具体的な回路構成について説明する。
【0030】
上記の光フリップフロップは、三角格子空孔2次元フォトニック結晶に構成する。三角格子空孔2次元フォトニック結晶における共鳴トンネルフィルタは、その共振器内においてその結晶配位方向のΓM軸方向にフィールド(腕)が伸びるため、これらと導波路を連結する形で結合可能である。
【0031】
なお、三角格子空孔の結晶配位方向のΓK軸は隣接する2つ空孔の中心を結ぶ方向であり、三角格子の3辺がΓK軸に対応する。また、ΓM軸は、隣接する2つ空孔の中心を結ぶ直線(ΓK軸)に直交し、最短の空孔の中心に向かう方向である。
(第1実施形態、共振器間直接結合2ポートフリップフロップ)
図6は、共振器間直接結合2ポートフリップフロップの構成図を示す。このフリップフロップは、2個の共振器CA、CBと、全波長を通す標準導波路13,14からなる最もシンプルな形態である。ここでは、トンネリングにより直接結合した2つの共振器CA、CBにそれぞれ1本ずつの標準導波路13,14がトンネリングにより結合されている。標準導波路13はS1入力用導波路とS2out出力用導波路を兼ね、標準導波路14はS2入力用導波路とS1out出力用導波路を兼ねる。
【0032】
共振器CA、CBはそれぞれの一端が互いにΓM軸方向(フィールドが伸びる方向)となるよう配置され、共振器CA、CBそれぞれの他端からΓM軸方向に標準導波路13,14の一端が配置され、標準導波路13,14はΓK軸と重なるX軸方向に延在されている。
【0033】
光S1は外部から標準導波路13に入力されて標準導波路14から外部に出力され、光S2は外部から標準導波路14に入力されて標準導波路13から出力される。
【0034】
この実施形態は、S1out、S2out出力用導波路を用いずに、共振器CA、CBから紙面とは垂直の上下方向に出力される上方放射光を用いる場合には、デバイスサイズが小さく構成が単純であるという特長がある。
【0035】
図7は、三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合2ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、シリコン(Si)エアブリッジ型のフォトニック結晶20は、シリコンのスラブ22に三角格子状の空孔24を設けたものである。
【0036】
標準導波路26,28それぞれは、フォトニック結晶の空孔をX軸方向に除去して構成されている。なお、X軸はΓK軸に重なる。
【0037】
標準導波路26の一端からΓM軸方向(フィールドが伸びる方向)に6周期のポテンシャルバリア(6周期のフォトニック結晶周期)を配置して共振器CBの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより標準導波路26と共振器CB間が結合されている。共振器CBの他端からΓM軸方向に6周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CAの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CA,CB間が直接結合されている。また、共振器CAの他端からΓM軸方向に6周期のポテンシャルバリアを配置して標準導波路28の一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CAと標準導波路28間が結合されている。なお、共振器と共振器の間あるいは共振器と導波路の間のポテンシャルバリアの周期数は、要求する結合率により増減できる。
【0038】
光S1は外部から標準導波路26のポートP1に入力されて標準導波路28のポートP2から外部に出力され、光S2は外部から標準導波路28のポートP2に入力されて標準導波路26のポートP1から出力される。
(第2実施形態、共振器間直接結合4ポートフリップフロップ)
図8は、共振器間直接結合4ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、トンネリングにより直接結合した2つの共振器CA、CBにそれぞれにS1用導波路30,31とS2用導波路32,33がトンネリングにより結合されている。ここでは、S1用導波路30,31として光S1を通し、光S2を通さないものを用い、S2用導波路32,33として光S2を通し、光S1を通さないものを用いる。これらS1用導波路30,31、S2用導波路32,33の設計方法については後述する。
【0039】
共振器CA、CBはそれぞれの一端が互いにΓM軸方向となるよう配置され、共振器CAの他端から2つのΓM軸方向にS1用導波路31,S2用導波路32の一端が配置され、共振器CBの他端から2つのΓM軸方向にS1用導波路30,S2用導波路33の一端が配置され、導波路30〜33それぞれはΓK軸と重なるX軸方向に延在されている。
【0040】
光S1は外部から図中下部のS1用導波路30に入力されて上部のS1用導波路31から外部に出力され、光S2は外部から図中上部のS2用導波路32に入力されて下部のS2用導波路33から出力される。
【0041】
2次元集積時は出力光S1out、S2outを他のデバイスに入力して機能回路を構成するので、この実施形態が望ましい。また、光S1,S2それぞれで導波路と共振器間の結合率を個別に調整できるため、共振器CA、CBのQ値設定が容易となる。
【0042】
図9は、三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合4ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、シリコンエアブリッジ型のフォトニック結晶40は、シリコンのスラブ42に三角格子状の空孔44を設けたものである。
【0043】
S1用導波路45,S2用導波路46それぞれは、Y軸上の異なる位置でX軸方向に延在している。なお、X軸はΓK軸に重なる。S1用導波路45,S2用導波路46それぞれの一端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CBの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより導波路45,46と共振器CB間が結合されている。
【0044】
共振器CBの他端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CAの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CA,CB間が直接結合されている。また、共振器CAの他端から2つのΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置してS1用導波路47,S2用導波路48の一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CAと導波路47,48間が結合されている。S1用導波路47,S2用導波路48それぞれは、Y軸上の異なる位置でX軸方向に延在している。
【0045】
光S1は外部からS1用導波路45のポートP1に入力されてS1用導波路47のポートP3から外部に出力され、光S2は外部からS2用導波路48のポートP4に入力されて2用導波路46のポートP2から出力される。
【0046】
図8、図9の実施形態では、光S1、S2を互いに逆向きに入出力させているが、光S1、S2を同じ向きに入出力したい場合には、図10に示す構成とする。また、図11に示す構成とすることも可能である。
【0047】
図10は、共振器間直接結合4ポートフリップフロップの他の構成図を示す。同図中、トンネリングにより直接結合した2つの共振器CA、CBにそれぞれにS1用導波路50,51とS2用導波路52,53がトンネリングにより結合されている。ここでは、S1用導波路50,51として光S1を通し、光S2を通さないものを用い、S2用導波路52,53として光S2を通し、光S1を通さないものを用いる。
【0048】
共振器CA、CBはそれぞれの一端が互いにΓM軸方向となるよう配置され、共振器CAの一端からΓM軸方向(共振器CBとは異なるΓM軸方向)にS2用導波路52の一端が配置され、共振器CBの他端からΓM軸方向にS1用導波路50の一端が配置されている。また、共振器CBの一端からΓM軸方向(共振器CAとは異なるΓM軸方向)にS2用導波路53の一端が配置され、共振器CAの他端からΓM軸方向にS1用導波路51の一端が配置されている。導波路50〜53それぞれはΓK軸と重なるX軸方向に延在されている。
【0049】
光S1は外部から図中下部のS1用導波路50に入力されて上部のS1用導波路51から外部に出力され、光S2は外部から図中下部のS2用導波路52に入力されて上部のS2用導波路53から出力される。
【0050】
ところで、導波路はΓK軸方向に延在していれば良く、X軸方向に延在する必要はなく、また、互いに平行に配置する必要はない。このような例について説明する。
【0051】
図11は、三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合4ポートフリップフロップの他の構成図を示す。同図中、シリコンエアブリッジ型のフォトニック結晶60は、シリコンのスラブ62に三角格子状の空孔64を設けたものである。
【0052】
S1用導波路65,S2用導波路66それぞれは、X軸に対し60度傾いたΓK軸方向に延在している。また、S1用導波路67,S2用導波路68それぞれは、X軸に対し120度傾いたΓK軸方向に延在している。
【0053】
S2用導波路68の一端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CBの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより導波路68と共振器CB間が結合されている。共振器CBの他端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CAの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CA,CB間が直接結合されている。また、共振器CBの他端からΓM軸方向(共振器CAとは異なるΓM軸方向)に数周期のポテンシャルバリアを配置してS1用導波路65の一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CBと導波路65間が結合されている。
【0054】
また、共振器CAの一端からΓM軸方向(共振器CBとは異なるΓM軸方向)に数周期のポテンシャルバリアを配置してS2用導波路66の一端が設けられ、共振器CAの他端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置してS1用導波路67の一端が設けられている。
【0055】
光S1は外部からS1用導波路65のポートP1に入力されてS1用導波路67のポートP3から外部に出力され、光S2は外部からS2用導波路68のポートP2に入力されてS2用導波路66のポートP4から出力される。
(第3実施形態、共振器間導波路結合2ポートフリップフロップ)
ところで、共振器CA、CB間のXY平面方向の漏れ成分であるQhを低下させて共振器CA、CBそれぞれのQ値を抑制するためには、共振器間結合を強くする必要があるが、共振器間を直接結合する場合、共振モードMA1とMB1、共振モードMA2とMB2が互いに干渉し、共振モード同士の反発が起こりやすくなり、共振器の設計が困難になる。そこで、共振器間の距離を離し、導波路により共振器CA、CB間を結合することで、この共振モード間の反発を抑制することができる。
【0056】
なお、Q値はXY平面に対し垂直方向の損失に起因するQvと、XY平面の水平方向の結合率に起因するQhに分解され、1/Q=1/Qv+1/Qhで表わされる。また、このときの共振器の透過率Tは、T=(Qv/Qh)2で表わされる。Qv値は共振器固有の値であり、Qh値は共振器と導波路の位置関係及び共鳴波長で決定される。
【0057】
図12は、共振器間導波路結合2ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、2つの共振器CA、CBは標準導波路71の両端にトンネリングにより結合されている。また、共振器CA、CBにそれぞれ1本ずつの標準導波路72,73がトンネリングにより結合されている。標準導波路72はS1入力用導波路とS2out出力用導波路を兼ね、標準導波路73はS2入力用導波路とS1out出力用導波路を兼ねる。
【0058】
共振器CAの両端からΓM軸方向に標準導波路71,73の一端が配置され、共振器CBの両端からΓM軸方向に標準導波路71,72の一端が配置され、標準導波路71,72,73はΓK軸と重なるX軸方向に延在されている。光S1は外部から標準導波路72に入力されて標準導波路73から外部に出力され、光S2は外部から標準導波路73に入力されて標準導波路72から出力される。
【0059】
図13は、三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間導波路結合2ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、シリコンエアブリッジ型のフォトニック結晶80は、シリコンのスラブ82に三角格子状の空孔84を設けたものである。
【0060】
標準導波路85,86,87それぞれは、フォトニック結晶の空孔をX軸方向に除去して構成されている。なお、X軸はΓK軸に重なる。共振器間を結合する標準導波路85の長さは20結晶周期としているが、デバイスサイズとモード間反発の程度により増減できる。しかし、短すぎるとモード間反発が強くなると同時に導波路自体が共振器特性を強く帯び始めるため、10結晶周期より短い領域では用いない方がよい。
【0061】
標準導波路85の両端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CA,CBの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより標準導波路85と共振器CA,CB間が結合されている。共振器CBの他端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して標準導波路86の一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CBと標準導波路86間が結合されている。また、共振器CAの他端からΓM軸方向に数周期のポテンシャルバリアを配置して標準導波路87の一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより共振器CAと標準導波路28間が結合されている。
(第4実施形態、共振器間導波路結合4ポートフリップフロップ)
図14は、共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、2つの共振器CA、CBはS1用導波路91,S2用標準導波路92それぞれの両端にトンネリングにより結合されている。また、共振器CBにS1用標波路93,S2用導波路94がトンネリングにより結合され、共振器CAにS1用導波路95,S2用導波路96がトンネリングにより結合されている。ここでは、S1用導波路91,93,95として光S1を通し、光S2を通さないものを用い、S2用導波路92,94,96として光S2を通し、光S1を通さないものを用いる。
【0062】
共振器CBの一端から2つのΓM軸方向にS1用導波路91,S2用導波路92の一端が配置され、共振器CAの一端から2つのΓM軸方向にS1用導波路91,S2用導波路92の他端が配置されている。共振器CBの他端から2つのΓM軸方向にS1用導波路93,S2用導波路94の一端が配置され、共振器CAの他端から2つのΓM軸方向にS1用導波路95,S2用導波路96の一端が配置され、導波路91〜96それぞれはΓK軸と重なるX軸方向に延在されている。
【0063】
光S1は外部から図中下部のS1用導波路93に入力されて上部のS1用導波路95から外部に出力され、光S2は外部から図中上部のS2用導波路96に入力されて下部のS2用導波路94から出力される。
【0064】
この構成では、各共振モードのQ値を全てQhの制御のみによって個別に設計が可能となるので設計が容易になる。共振器間を結合する導波路の長さに関する制限は共振器間導波路結合2ポートFFの場合と同様である。
【0065】
図15は、三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの構成図を示す。同図中、シリコンエアブリッジ型のフォトニック結晶100は、シリコンのスラブ102に三角格子状の空孔104を設けたものである。
【0066】
S1用導波路105,S2用導波路106それぞれは、Y軸上の異なる位置でX軸方向に延在している。なお、X軸はΓK軸に重なる。S1用導波路105,S2用導波路106それぞれの一端からΓM軸方向に所定周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CBの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより導波路105,106と共振器CB間が結合されている。共振器CBの他端から2つのΓM軸方向に所定周期のポテンシャルバリアを配置してY軸上の異なる位置にS1用導波路107,S2用導波路108それぞれの一端が配置され、このポテンシャルバリアにより共振器CBと導波路107,108間が結合されている。共振器CBとS1用導波路105,107、S2用導波路106,108それぞれの間のポテンシャルバリア周期を選択することにより、共振モードMB1,MB2を決定できる。
【0067】
S1用導波路107,S2用導波路108それぞれは、X軸方向に延在しており、それぞれの一端からΓM軸方向に所定周期のポテンシャルバリアを配置して共振器CAの一端が設けられ、このポテンシャルバリアにより導波路107,108と共振器CA間が結合されている。共振器CAの他端から2つのΓM軸方向に所定周期のポテンシャルバリアを配置してY軸上の異なる位置にS1用導波路109,S2用導波路110それぞれの一端が配置され、このポテンシャルバリアにより共振器CAと導波路107,108間が結合されている。共振器CAとS1用導波路107,109,S2用導波路108,110それぞれの間のポテンシャルバリア周期を選択することにより、共振モードMA1,MA2を決定できる。
【0068】
なお、図14では、S1用導波路91,93,95のY軸上の位置が同一となり、S2用導波路92,94,96それぞれのY軸上の位置が同一となるように配置しているが、図16に示すように、S1用導波路91とS1用導波路93,95のY軸上の位置が異なり、S2用導波路92とS1用導波路94,96のY軸上の位置が異なるよう、S1用導波路91とS2用導波路92とを共振器CA,CBを介して交差させる構成としても良い。
【0069】
次に、S1用導波路とS2用導波路に付いて説明する。
【0070】
本発明の光順序回路は、構成によってS1用導波路、S2用導波路を必要とする。これらの導波路は、それぞれS1用導波路は光S2を導波できず、S2用導波路は光S1を導波できないように導波帯域を制限している。このような導波路には様々なものが考え得るが、ここでは仮に位相シフト孔導波路と幅狭型導波路を用いる。位相シフト孔導波路と幅狭型導波路の解析には3次元FDTD(Finite Difference Time Domain Method)を用い、共通の設定として、三角格子空孔2次元フォトニック結晶のスラブ厚200nm、格子定数a=390nm、スラブ屈折率(シリコン:Siを仮定)を3.46、標準空孔径=0.55aとする。
【0071】
図17(B)に、位相シフト孔導波路の基本構成を示す。位相シフト孔導波路は、図中中央のΓK軸方向に延在する線欠陥導波路の中央線上に、ΓK軸方向に結晶周期と半周期ずれた位置に空孔(中央孔:ハッチングで示す)を設けた導波路である。
【0072】
特性パラメータとして中央孔の直径Dを用いると、図17(A)に示すように透過帯域が変化する。結晶周期aで規格化し、中央孔の直径Dが0.5a程度より大きい位置で長波長側に有効な透過帯域が生じる。このとき、中央孔径に応じて、D=0.5a程度では波長帯域1400nm〜1440nmとなり、D=0.65a程度では波長帯域1280nm〜1410nmとなる透過禁止帯域が発生する。この透過禁止帯域が光S2に重なるように設計することによりS1専用導波路として利用できる。
【0073】
図18(B)に、幅狭型導波路の基本構成を示す。幅狭型導波路は、図中中央のΓK軸方向に延在する線欠陥導波路の最内の空孔列(左下がりハッチングで示す)及び2番目に内側の空孔列(左上がりハッチングで示す)の位置を幅寄せることにより透過帯域を制御する。2番目に内側の列の空孔は、元の位置の空孔と重ねるように形成する。
【0074】
その幅寄せ量を特性パラメータとして用いると、図18(A)に示すように短波長帯のみが透過する導波路となることがわかる。その幅寄せ量に従ってその透過波長の上限を1470nm〜1360nmの範囲で調整できる。従って、透過上限波長が光S1の波長より短波長となるよう設計することにより、S2専用導波路として利用できる。
【0075】
図19に、S1用導波路に光S2が漏れず、S2用導波路に光S1が漏れないようクロストークが最小になるよう設計した場合の波長スペクトルデータを示す。ここで、S1用導波路の特性を破線で示し、S2用導波路の特性を一点差線で示す。
【0076】
ここで、共振器に図20に示す基本構成の4点欠陥共振器を用いる。4点欠陥共振器は、図中中央のΓK軸方向に延在する4点欠陥に隣接する最内孔(ハッチングで示す)をΓK軸方向に4点欠陥から離すように0.15aだけ幅寄せ、更に、最内孔の径を0.3としている。この場合の共振器の特性は図19に実線で示すように、モード1(波長1463.77nm、Q値は60000以上),モード2(波長1431.75nm、Q値は16000),モード3(波長1359.88nm、Q値は2500)の共振モードが存在する。
【0077】
従って、モード1を光S1、モード2を光S2として用いる。この場合、位相シフト孔導波路の中央孔径を0.5aとするとS1用導波路として適当な特性を持ち、幅狭型導波路の幅寄せ量を0.08aとしてS2用導波路として適当な特性を持つ。
(具体的設計に基づく解析例)
以上を基に動作実証の初期的解析を行った。
【0078】
図15に示す共振器間導波路結合4ポートフリップフロップを解析するにあたり、実際に各導波路が各入力光を分離できるかを解析した。解析結果を図21に示す。
【0079】
図21(D)に解析したモデルの構成例を示す。解析には3次元FDTDを用い、フォトニック結晶はシリコンエアブリッジ型の三角格子空孔フォトニック結晶とした。格子定数a=390nm、スラブ等価屈折率n=3.46、スラブ厚200nmとし、基本的な空孔の直径Dは214.5nm(=0.55a)とした。共振器は4点欠陥のものを用い、共振器の長手方向に隣接する2つの最内孔を外側に向かって50nmだけずらすとともに、その直径Diを117nm(=0.30a)に減少させてQ値を稼いでいる。
【0080】
入出力用導波路は、短波側のS2用導波路として両脇の空孔をそれぞれ15.6nm(=0.04a)だけ内側にずらした幅狭型導波路を用い、長波側のS1用導波路として中央孔径195nm(=0.50a)の位相シフト孔導波路を用いた。
【0081】
図21(D)における、S1用導波路105内の位置P1、S2用導波路106内の位置P2、共振器CB内の位置P5それぞれにおける波長スペクトルデータを図21(A)に実線、破線、一点鎖線それぞれで示す。図21(A)から、共振器CB内で光を励振すると、位置P1には光S1、位置P2には光S2に相当する波長が透過し、それぞれもう一方の波長に対するクロストークは20dB以上確保されていることが分かる。
【0082】
図21(B)は光波長S2成分の空間的な磁界パワー分布を示し、図21(C)は光波長S1成分の空間的な磁界パワー分布を示している。なお、図21(B),(C)における磁界パワーの大きさの指標は後述の図22に示すものと同一である。ここでは、期待通りに光S2はS2用導波路106,108に出力し、光S1はS1用導波路105,107に出力している。例えば図21(B)で光S2がS1用導波路105,107に僅かに漏れだして見えるクロストークはS1用導波路105,107の導波路長不足によるもので、導波路長をより長くすることでより低減できる。
【0083】
更に、図15に示す回路の解析結果を図22乃至図25に示す。この解析には2次元FDTDを用い、フォトニック結晶はシリコンエアブリッジ型の三角格子空孔フォトニック結晶とした。格子定数a=400nm、スラブ等価屈折率n=2.78、基本的な空孔の直径Dは220nm(=0.55a)とした。共振器CA、CBは、4点欠陥のものを用い、共振器の長手方向に隣接する2つの孔を外側に向かって48nm(=0.12a)だけずらすとともに、その直径Diを200nm(=0.50a)に減少させている。入出力用導波路は、短波側のS2用導波路として両脇の空孔をそれぞれ32nm(=0.08a)だけ内側にずらした幅狭型導波路を用い、長波側のS1用導波路として中央孔径260nm(=0.65a)の位相シフト孔導波路を用いた。なお、磁界パワー分布の単位は、磁界パワーの振幅の相対値[A2/m2]を示している。
【0084】
図22は、光S2がS2用導波路110のポートP4から入力されている様子を示し、共振器CA、CBともにONとなっているため、光S2はS2用導波路106のポートP2から出力される。これは図3の(a)に示す状態に相当する。
【0085】
図23は、図22の状態における光S1の透過状況を示している。共鳴波長の相対位置をずらすため、共振器CA内の等価屈折率を+0.01だけ変化させ、共振器CB内の等価屈折率を−0.01だけ変化させている。光S1はS1用導波路105のポートP1から入力されているが、このとき共振器CA、CBともにOFFとなっているため、光S1は殆ど透過しない。これは図3の(b)に示す状態に相当する。
【0086】
図24は、図23の状態から、光S2の入力を停止した時の光S1の透過状況を示している。共振器CBが光S1に対してONになるため、共振器CBにおける光S1の透過強度が増加し、共振器CAを光非線形効果によりONにする。これにより光S1はS1用導波路109のポートP3から出力される。これは図3の(c)に示す状態に相当する。
【0087】
図25は、図24の状態から、再び光S2を入力した時の光S2の透過状況を示している。共鳴波長の相対位置をずらすため、共振器CA内の等価屈折率を−0.01だけ変化させ、共振器CB内の等価屈折率を+0.01だけ変化させている。光S1に対しONとなった共振器CAは光S2に対しOFFとなり、また共振器CBもOFFとなるため、光S2は殆ど透過できなくなる。これは図3の(d)に示す状態に相当する。
【0088】
これらの解析結果は、図15の回路構成によるデバイスの光フリップフロップ動作が原理的に可能である事を示している。
(第5実施形態、N個の共振器を用いた光順序回路)
使用する共振器数が2より大きい場合の光順序回路の構成例を示す。
【0089】
図26は、3共振器構成光順序回路の構成図を示す。この光順序回路は、共振器CA、CB、CCと、これらを結合するS2,S3用導波路120、S1用導波路121、S2用導波路122,S1,S3用導波路123、S2用導波路124、S1用導波路125、S2用導波路126、S3用導波路127からなる。
【0090】
入力光はS1、S2、S3が用いられる。光S1、S2、S3に対する共振器CA、CB、CCそれぞれの共振モードとそのQ値は図27に示すように設定されている。即ち、共振器CAの持つ共振モードをMA1、MA2、MA3とし、共振器CBが持つ共振モードをMB2、MB3とし、共振器CCが持つ共振モードをMC1、MC2とする。共振モードMC1は光S1に対し、MA2はS2に対し、MB3はS3に対して共鳴波長となるように設計し、また、やや低めのQ値に設定する。
【0091】
一方、共振モードMA1は光S1に対し、MB2,MC2はS2に対し、MA3はS3に対してそれぞれ共鳴波長が僅かに異なるように設計し、充分な強度の光信号が入った場合にのみ光非線形効果による共鳴波長シフトによって共鳴トンネルを起こすように設計し、また、Q値は高く設定する。これは図2の構成における図3に相当する。
【0092】
ここで、光S2は共振器CB、CCで非線形効果によるスイッチング動作を行い、光S1、S2は共に共振器CAで非線形効果によるスイッチング動作を行う。従って、光S2が入力されている時は光S1,S3は遮断され、逆に光S1、S3のいずれかが入力されている時は光S2が遮断され、順序回路としての動作を行う。
【0093】
図28に、上記の光順序回路の状態遷移図を示す。ここでは、状態Aを出力光S1out,S2out,S3outが全てオフ、状態Bを出力光S2outのみオン、状態Cを出力光S1outのみオン、状態Dを出力光S3outのみオン、状態Eを出力光S1out,S3outがともにオンと定義し、入力光S1,S2,S3の変化による状態遷移を矢印で示している。
【0094】
共振器の数が増えると各共振モードの設定方法の自由度が増すため、図26と類似の構成で異なった機能を実現できる。
【0095】
図29は、他の3共振器構成光順序回路の構成図を示す。この光順序回路は、共振器CA、CB、CCと、これらを結合するS1,S2用導波路130、S2,S3用導波路131、S1,S3用導波路132,S3用導波路133、S1用導波路134、S1用導波路135、S2用導波路136、S2用導波路137、S3用導波路138からなる。
【0096】
入力光はS1、S2、S3が用いられる。光S1、S2、S3に対する共振器CA、CB、CCそれぞれの共振モードとそのQ値は図30に示すように設定されている。即ち、共振器CAの持つ共振モードをMA1、MA2、MA3とし、共振器CBが持つ共振モードをMB1、MB2、MB3とし、共振器CCが持つ共振モードをMC1、MC2、MC3とする。共振モードMC1は光S1に対し、MA2はS2に対し、MB3はS3に対して共鳴波長となるように設計し、また、やや低めのQ値に設定する。
【0097】
一方、共振モードMA1,MB1は光S1に対し、MB2,MC2はS2に対し、MA3,MC3はS3に対してそれぞれ共鳴波長が僅かに異なるように設計し、充分な強度の光信号が入った場合にのみ光非線形効果による共鳴波長シフトによって共鳴トンネルを起こすように設計し、また、Q値は高く設定する。
【0098】
ここで、光S1は共振器CA、CBに対して非線形効果によるスイッチング動作を行い、光S2は共振器CB、CCに対して非線形効果によるスイッチング動作を行い、光S3はCA、CCに対して非線形効果によるスイッチング動作を行う。このため、光S1を一瞬OFFにすると光S2、S3の経路が開く。ここで、共振器CAよりも共振器CBのほうが光S1の光源側に近いため時間的に早く状態が戻り、そのため、光S3がS2より先にONとなり、光S1に代わって共振器CCをスイッチングする。このため、光S2のONが阻止される。同様に光S3をOFFにすると、光S2がオンになり、光S2をOFFにすると、光S1がONになる。
【0099】
図31に、上記の光順序回路の状態遷移図を示す。ここでは、状態Aを出力光S1out,S2out,S3outが全てオフ、状態Bを出力光S3outのみオン、状態Cを出力光S2outのみオン、状態Dを出力光S1outのみオンと定義し、入力光S1,S2,S3の変化による状態遷移を矢印で示している。
【0100】
このようにして本発明の光順序回路は、その構成をN個(N≧2)の共振器への拡張が可能である。
【0101】
以上のように、本発明の構造は、2次元フォトニック結晶をベースとする2次元光回路内で信号光、制御光を伝搬させるため、素子のモノリシック集積、カスケード接続等が可能であり、極めて微少な、大規模な光回路、光ロジック、光メモリを構成することが可能となる。
【0102】
なお、共振器CAが請求項記載の第1共振器に対応し、共振器CBが第2共振器に対応し、光S1が第1波長に対応し、光S2が第2波長に対応し、MA1が第1共振器の第1共振モードに対応し、MA2が第1共振器の第2共振モードに対応し、MB1が第2共振器の第1共振モードに対応し、MB2が第2共振器の第2共振モードに対応し、S1用導波路が第1波長用導波路に対応し、S2用導波路が第2波長用導波路に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】従来の光フリップフロップの一例の構成図である。
【図2】本発明の光順序回路の一形態としての光フリップフロップの原理構成図である。
【図3】図2の光フリップフロップの動作を説明するための図である。
【図4】時間軸における入力光と出力光の関係を示す図である。
【図5】光フリップフロップの状態遷移図である。
【図6】共振器間直接結合2ポートフリップフロップの構成図である。
【図7】三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合2ポートフリップフロップの構成図である。
【図8】共振器間直接結合4ポートフリップフロップの構成図である。
【図9】三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合4ポートフリップフロップの構成図である。
【図10】共振器間直接結合4ポートフリップフロップの他の構成図である。
【図11】三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間直接結合4ポートフリップフロップの他の構成図である。
【図12】共振器間導波路結合2ポートフリップフロップの構成図である。
【図13】三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間導波路結合2ポートフリップフロップの構成図である。
【図14】共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの構成図である。
【図15】三角格子空孔2次元フォトニック結晶上に構成した共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの構成図である。
【図16】共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの他の構成図である。
【図17】位相シフト孔導波路の基本構成及び透過帯域特性を示す図である。
【図18】幅狭型導波路の基本構成及び透過帯域特性を示す図である。
【図19】S1用導波路とS2用導波路と共振器の波長スペクトルデータを示す図である。
【図20】4点欠陥共振器の基本構成図である。
【図21】共振器間導波路結合4ポートフリップフロップの解析結果を示す図である。
【図22】図15に示す回路で光S2に対し共振器CA、CBともにONとなっている場合の解析結果を示す図である。
【図23】図15に示す回路で光S1に対し共振器CA、CBともにOFFとなっている場合の解析結果を示す図である。
【図24】図15に示す回路で光S1に対し共振器CA、CBともにONとなっている場合の解析結果を示す図である。
【図25】図15に示す回路で光S2に対し共振器CA、CBともにOFFとなっている場合の解析結果を示す図である。
【図26】3共振器構成光順序回路の構成図である。
【図27】図26の光順序回路における光S1、S2、S3に対する共振器CA、CB、CCそれぞれの共振モードとそのQ値を示す図である。
【図28】図26の光順序回路における状態遷移図である。
【図29】他の3共振器構成光順序回路の構成図である。
【図30】図29の光順序回路における光S1、S2、S3に対する共振器CA、CB、CCそれぞれの共振モードとそのQ値を示す図である。
【図31】図29の光順序回路における状態遷移図である。
【符号の説明】
【0104】
CA、CB 共振器
11,12 入出力用導波路
13,14,26,28,71〜73,85〜87 標準導波路
20,40,60,80,100 フォトニック結晶
22,42,62,82,102 スラブ
24,44,64,84,104 空孔
30,31,45,50,51,65,67,91,93,95,105,107,109 S1用導波路
32,33,46,52,53,66,68,92,94,96,106,108,110 S2用導波路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の共振モードを持つ複数の共振器と、前記複数の共振器に結合された導波路からなり、
各共振器は、入力される複数波長の光のうちの一または複数の光の入力で発生する非線形効果によって入力される他の光のスイッチングを行い、
各共振器で前記一または複数の光の波長と前記他の光の波長とを異ならしめて構成したことを特徴とする光順序回路。
【請求項2】
請求項1記載の光順序回路において、
前記複数の共振器は、2つの共振モードを持つ第1、第2共振器であり、
第1共振器は、入力される第1、第2波長の光のうちの第1波長の光の入力で発生する非線形効果によって第2波長の光のスイッチングを行い、
第2共振器は、入力される第1、第2波長の光のうちの第2波長の光の入力で発生する非線形効果によって第1波長の光のスイッチングを行うことを特徴とする光順序回路。
【請求項3】
請求項2記載の光順序回路において、
前記第2共振器の第1共振モードは前記第1波長の光に対し共鳴波長となり、
前記第1共振器の第2共振モードは前記第2波長の光に対し共鳴波長となり、
前記第1共振器の第1共振モードは前記第1波長の光に対し共鳴波長が異なり、十分な強度の光信号が入ったとき発生する非線形効果によって前記第1波長の光に共鳴し、
前記第2共振器の第2共振モードは前記第2波長の光に対し共鳴波長が異なり、十分な強度の光信号が入ったとき発生する非線形効果によって前記第2波長の光に共鳴することを特徴とする光順序回路。
【請求項4】
請求項2または3記載の光順序回路において、
第1、第2共振器及び導波路は、フォトニック結晶上に形成され、
前記第1共振器と第2共振器の間はトンネリングにより直接結合し、
前記第1波長の光の入力及び前記第2波長の光の出力を行う標準導波路と前記第2共振器の間をトンネリングにより結合し、
前記第2波長の光の入力及び前記第1波長の光の出力を行う標準導波路と前記第1共振器の間をトンネリングにより結合したことを特徴とする光順序回路。
【請求項5】
請求項2または3記載の光順序回路において、
第1、第2共振器及び導波路は、フォトニック結晶上に形成され、
前記第1共振器と第2共振器の間はトンネリングにより直接結合し、
前記第1波長の光の入力を行う第1波長用導波路及び前記第2波長の光の出力を行う第2波長用導波路と前記第2共振器の間をトンネリングにより結合し、
前記第2波長の光の入力を行う第2波長用導波路及び前記第1波長の光の出力を行う第1波長用導波路と前記第1共振器の間をトンネリングにより結合したことを特徴とする光順序回路。
【請求項6】
請求項5記載の光順序回路において、
前記第1波長の光の入出力方向と前記第2波長の光の入出力方向が逆向きであることを特徴とする光順序回路。
【請求項7】
請求項5記載の光順序回路において、
前記第1波長の光の入出力方向と前記第2波長の光の入出力方向が同じ向きであることを特徴とする光順序回路。
【請求項8】
請求項4記載の光順序回路において、
前記第1共振器と第2共振器の間に標準導波路を介在させて結合したことを特徴とする光順序回路。
【請求項9】
請求項5乃至7のいずれか記載の光順序回路において、
前記第1共振器と第2共振器の間に第1波長用導波路と第2波長用導波路を介在させて結合したことを特徴とする光順序回路。
【請求項10】
請求項4または8記載の光順序回路において、
前記標準導波路は、前記フォトニック結晶の空孔を結晶配位方向に除去して構成したことを特徴とする光順序回路。
【請求項11】
請求項5乃至7または9のいずれか記載の光順序回路において、
前記第1波長用導波路は、位相シフト孔導波路であり、
前記第2波長用導波路は、幅狭型導波路であることを特徴とする光順序回路。
【請求項1】
複数の共振モードを持つ複数の共振器と、前記複数の共振器に結合された導波路からなり、
各共振器は、入力される複数波長の光のうちの一または複数の光の入力で発生する非線形効果によって入力される他の光のスイッチングを行い、
各共振器で前記一または複数の光の波長と前記他の光の波長とを異ならしめて構成したことを特徴とする光順序回路。
【請求項2】
請求項1記載の光順序回路において、
前記複数の共振器は、2つの共振モードを持つ第1、第2共振器であり、
第1共振器は、入力される第1、第2波長の光のうちの第1波長の光の入力で発生する非線形効果によって第2波長の光のスイッチングを行い、
第2共振器は、入力される第1、第2波長の光のうちの第2波長の光の入力で発生する非線形効果によって第1波長の光のスイッチングを行うことを特徴とする光順序回路。
【請求項3】
請求項2記載の光順序回路において、
前記第2共振器の第1共振モードは前記第1波長の光に対し共鳴波長となり、
前記第1共振器の第2共振モードは前記第2波長の光に対し共鳴波長となり、
前記第1共振器の第1共振モードは前記第1波長の光に対し共鳴波長が異なり、十分な強度の光信号が入ったとき発生する非線形効果によって前記第1波長の光に共鳴し、
前記第2共振器の第2共振モードは前記第2波長の光に対し共鳴波長が異なり、十分な強度の光信号が入ったとき発生する非線形効果によって前記第2波長の光に共鳴することを特徴とする光順序回路。
【請求項4】
請求項2または3記載の光順序回路において、
第1、第2共振器及び導波路は、フォトニック結晶上に形成され、
前記第1共振器と第2共振器の間はトンネリングにより直接結合し、
前記第1波長の光の入力及び前記第2波長の光の出力を行う標準導波路と前記第2共振器の間をトンネリングにより結合し、
前記第2波長の光の入力及び前記第1波長の光の出力を行う標準導波路と前記第1共振器の間をトンネリングにより結合したことを特徴とする光順序回路。
【請求項5】
請求項2または3記載の光順序回路において、
第1、第2共振器及び導波路は、フォトニック結晶上に形成され、
前記第1共振器と第2共振器の間はトンネリングにより直接結合し、
前記第1波長の光の入力を行う第1波長用導波路及び前記第2波長の光の出力を行う第2波長用導波路と前記第2共振器の間をトンネリングにより結合し、
前記第2波長の光の入力を行う第2波長用導波路及び前記第1波長の光の出力を行う第1波長用導波路と前記第1共振器の間をトンネリングにより結合したことを特徴とする光順序回路。
【請求項6】
請求項5記載の光順序回路において、
前記第1波長の光の入出力方向と前記第2波長の光の入出力方向が逆向きであることを特徴とする光順序回路。
【請求項7】
請求項5記載の光順序回路において、
前記第1波長の光の入出力方向と前記第2波長の光の入出力方向が同じ向きであることを特徴とする光順序回路。
【請求項8】
請求項4記載の光順序回路において、
前記第1共振器と第2共振器の間に標準導波路を介在させて結合したことを特徴とする光順序回路。
【請求項9】
請求項5乃至7のいずれか記載の光順序回路において、
前記第1共振器と第2共振器の間に第1波長用導波路と第2波長用導波路を介在させて結合したことを特徴とする光順序回路。
【請求項10】
請求項4または8記載の光順序回路において、
前記標準導波路は、前記フォトニック結晶の空孔を結晶配位方向に除去して構成したことを特徴とする光順序回路。
【請求項11】
請求項5乃至7または9のいずれか記載の光順序回路において、
前記第1波長用導波路は、位相シフト孔導波路であり、
前記第2波長用導波路は、幅狭型導波路であることを特徴とする光順序回路。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図3】
【図4】
【図5】
【図17】
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【図19】
【図20】
【図26】
【図27】
【図28】
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【図30】
【図31】
【図2】
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【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2006−58707(P2006−58707A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241621(P2004−241621)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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