説明

光駆動回転分子

【課題】光エネルギーを分子レベルで一方向回転エネルギーへ変換することができる分子(光駆動回転分子)を提供すること。
【解決手段】色素部位及びブロックユニットが回転軸に結合し、色素部位の回転軌道上にブロックユニットが位置する光駆動回転分子が提供される。好ましい一形態では、回転軸に被駆動分子結合部位又は被駆動分子が結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光エネルギーにより回転を行う分子(光駆動回転分子)に関する。
【背景技術】
【0002】
光エネルギーは、太陽から受け自然界に豊富に存在するクリーンエネルギーであり、その有効利用は新技術創出と地球温暖化防止の観点から極めて重要な課題である。また、光の重要な特性には、レーザーのように精密な時空間制御が可能な点があり、幅広い応用へと結びつく。光エネルギーの他のエネルギーへの変換とその利用としては、電気エネルギーへの変換を行う太陽電池を初めとして光反応による化学エネルギーへの変換、蛍光物質のように異なる波長の光への変換などがよく知られている。しかし、光エネルギーの直接の一方向運動エネルギーへの変換は非常に例が少ない。特に分子レベルでの変換素子に関しては1つの設計概念による例(非特許文献1)があるのみで皆無に近い。またその例に関しても、炭素炭素二重結合の異性化という化学結合の変化を伴うものでエネルギーの変換効率は極めて低いと推測される。
【非特許文献1】Feringa, B. L., et al. Nature 1999, 401, 152.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、光エネルギーを分子レベルで一方向回転エネルギーへ変換することができる分子(光駆動回転分子)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、19世紀半ばに英国のクルックス卿によって発明されたラジオメータがマクロスケールの光駆動回転装置として存在することに着目した。これは減圧透明球中に表が黒、裏が白のように反射色になった羽根が縦の回転軸に4枚つけられたもので、光照射により羽根が回転する。回転原理は、光照射により黒色面が裏面より高温になり、気体分子に裏面より大きな運動エネルギーを受け渡すが、その時の反作用等により回転が起きると考えられる。この原理に発想を得、光エネルギーにより回転を行う分子、すなわち分子ラジオメータの創製を目指した。鋭意検討した結果、回転動力を分子構造変化により生じさせようとする原理ではなく、色素分子の光励起状態が高温状態であることに着目し周囲の分子の熱運動を調整・利用することにより生じさせようとする新たな原理を見出すに至った。この新たな原理では、ラジオメータの黒色面にあたる部分を可視光吸収を行う色素分子に置き換え、色素の片面を媒体分子の衝突を妨げる障壁部位(ブロックユニット)として同じ軸に結合させた分子を構築する。光子を吸収した色素は励起状態になるが、その温度は瞬間的に数百度から千度にまでなるといわれている。この励起色素の持つ大きな運動エネルギーを、ブロックユニットを配置することによって、特定方向の周囲の分子のみに与えるようにし、そのエネルギー(熱運動)の差異で色素の表面・裏面間に圧力差を生じさせ分子の方向性を生み出す(図1)。この分子設計概念を具現化するために設計した分子の一例として、回転軸を持つ架橋多環式構造に色素とブロックユニットを、回転運動を他の分子と連結・連動させられるよう、架橋多環式構造に結合した芳香環に複数の官能基をもつ化合物をデザインし(図2)、実際に合成することに成功した。
本発明は以上の成果に基づくものであり、以下の光駆動回転分子を提供する。
[1]色素部位及びブロックユニットが回転軸に結合し、色素部位の回転軌道上にブロックユニットが位置する光駆動回転分子。
[2]色素部位、ブロックユニット及び被駆動分子結合部位が回転軸に結合し、色素部位の回転軌道上にブロックユニットが位置する光駆動回転分子。
[3]色素部位、ブロックユニット及び被駆動分子が回転軸に結合し、色素部位の回転軌道上にブロックユニットが位置する光駆動回転分子。
[4]色素部位の回転方向前方にブロックユニットが位置する、[1]〜[3]のいずれかに記載の光駆動回転分子。
[5]回転軸が架橋多環式構造の一部である、[1]〜[4]のいずれかに記載の光駆動回転分子。
[6]色素が、アゾ色素、インジゴ系色素、シアニン類、ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、キノン系色素、ジフェニルメタン系色素、フルオレセイン類、ローダミン類、フラーレン類又は金属錯体系色素である、[1]〜[5]のいずれかに記載の光駆動回転分子。
[7]ブロックユニットが、芳香族系ユニット、脂肪族ユニット、環状アミド系ユニット、環状エステル系ユニット又は環状エーテル系ユニットである、[1]〜[6]のいずれかに記載の光駆動回転分子。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の光駆動回転分子は、主として2つの部位、即ち「色素部位」と「ブロックユニット」、あるいは3つの部位、即ち「色素部位」と「ブロックユニット」及び「被駆動分子固定部位(又は被駆動分子部位)」を備える。これらの部位が一つの回転軸に結合している。また、色素部位の回転軌道上にブロックユニットが位置する。好ましくは、色素部位の回転方向前方にブロックユニットが位置する。
色素部位としては極めて幅広い種類のものを用いることができる。主には励起エネルギーの多くを熱振動緩和で放出するものが望ましいが、アゾ色素、インジゴ系色素、シアニン類、ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、キノン系色素、ジフェニルメタン系色素、フルオレセイン類、ローダミン類、フラーレン類等、様々な色素が適用可能である。吸収波長すなわち回転を起こさせる波長の範囲は、色素の種類を選ぶことにより200nm〜1200nmが可能である。
「ブロックユニット」としては、芳香族系ユニット、脂肪族ユニット、環状アミド系ユニット、環状エステル系ユニット、環状エーテル系ユニット等様々なものが適用可能である。
本発明の一形態では、「被駆動分子固定部位」が備えられる。当該部位は、色素部位とブロックユニットの作用によって生じた回転エネルギーを他の分子(被駆動分子)に伝達するための部位である。当該部位には所望の分子が結合・固定される。こうすることによって、光照射により所望の対象を回転させることができるようになる。
本発明の他の形態では、「被駆動分子固定部位」の代わりに、所望の分子(被駆動分子)が回転軸に結合している。
本発明の光駆動回転分子は、化学結合の変化等の構造変化を伴わない分子動力学原理に基づくものであるため、光エネルギーの一方向回転エネルギーへの変換効率が高いことが期待される。また、応用としては、ミクロスケール、ナノスケールの対象物の光による運動制御や、光駆動ナノポンプ、光駆動チャネル開口分子など様々な新技術への道を拓くものである。
【実施例】
【0006】
本発明の光駆動回転分子の具体的な合成法の一例を示す(図3を参照)。2-アミノアントラセンを出発物質として、鈴木−宮浦カップリング、Diels-Alder反応、ジアゾカップリングの三種の付加・カップリング反応を用いることで目的候補化合物1を合成した。このとき鍵反応となったのは、ボロン酸類縁体合成及び鈴木−宮浦カップリングと、ジアゾカップリング反応である。種々の条件検討の結果、再現よく、目的物を得る条件を見いだし合成を行い目的化合物1a、1bの合成を行った。これらはラセミ化合物であるので、光学活性カラムを用いて光学分割を行い、光学活性体も得た。
本化合物1の合成スキームでは吸収波長の異なる色素を導入した化合物及び、異なるブロックユニットを導入した化合物を効率的に合成できる。言い換えれば、このスキームは特定波長で駆動する候補化合物群を多種合成可能にするため、合理的なものであると考えられる。
プロトンNMRを用い、光照射下にスペクトルが変化することを確認し、回転の検証までも行い得た。
【0007】
(1)化合物3の合成
脱気したトリエチルアミン(1.51 g, 14.9 mmol)の無水トルエン溶液にアルゴン気流下化合物2とピナコールボラン(0.99 g, 7.71 mmol)と(Ph3P)2PdCl2 (0.36 g, 0.51 mmol)を加え、28時間加熱還流を行った。反応液を室温に戻し、水(50 mL)を加え水層を酢酸エチル(150 mL)で抽出した。有機層を合わせセライト濾過を行って不溶なパラジウム等を除いた。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(silica gel, 10:1 CH2Cl2/Ether)で精製し、3を薄黄色の固体として得た(1.17 g, 63%)。
IR (neat) 3286, 2979, 1670, 1571, 1373, 1138, 748; 1H-NMR (CDCl­3, 400 MHz) δ 8.92 (s, 1H), 8.41-8.39 (m, 2H), 7.96-7.91 (m, 2H), 7.49-7.39 (m, 2H), 7.32-7.29 (m, 2H), 2.24 (s, 3H), 1.60 (s, 12H); 13C-NMR (CDCl­3, 100 MHz) δ 167.90, 136.22, 136.05, 134.84, 130.49, 129.68, 129.07, 128.66, 128.51, 128.00, 125.88, 124.47, 119.78, 115.62, 100.46, 84.39, 25.22, 24.89; FAB-MS (NBA) 361 (M+); HRMS (EI) calcd. for C22H24BO5N, 361.1849; Found, 361.1843.
【0008】
(2)化合物4の合成
脱気した無水トルエン(27.5 mL)に化合物3(0.30 g, 0.83 mmol)、化合物9(0.27 g, 1.00 mmol),Pd2(dba)3・CHCl3 (0.086 g, 0.083 mmol)、トリフェニルホスフィン (0.13 g, 0.50 mmol) and 2M 炭酸ナトリウム水溶液 (1.25 mL)を加え、アルゴン気流下51時間加熱還流を行った。反応液を室温に戻し、水(30 mL)を加え水層を酢酸エチル(60 mL)で抽出した。有機層を合わせセライト濾過を行って不溶なパラジウム等を除いた。濾液を水及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(silica gel, 10:1 CH2Cl2/Ether)で精製し、4を黄色の固体として得た (0.23 g, 64%)。
1H-NMR (CDCl­3, 400 MHz) δ 8.88 (t, J = 1.7 Hz, 1H), 8.50 (s, 1H), 8.29 (d, J = 1.7 Hz, 2H), 8.07-8.04 (m, 2H), 7.87-7.85 (m, 1H), 7.47-7.43 (m, 1H), 7.37-7.33 (m, 1H), 7.24-7.22 (m, 1H), 3.95 (s, 6H), 2.16 (s, 3H); 13C-NMR (CDCl­3, 100 MHz) δ 173.50, 165.99, 139.57, 136.31, 135.45, 134.00, 131.02, 130.59, 130.38, 130.11, 129.92, 129.58, 129.47, 128.80, 128.47, 127.23, 126.08, 125.62, 124.81, 120.63, 113.24, 52.39, 24.58; FAB-MS (NBA) 427 (M+); HRMS (EI) calcd. for C22H21O5N, 427.1420; Found, 427.1416.
【0009】
(3)化合物5の合成
化合物4(0.10 g, 0.23 mmol)の無水ジクロロエタン(15 mL)溶液に4-ジメチルアミノピリジン(0.0034 g, 0.028 mmol)とdi-tert-butyl dicarbonate (0.16 g, 0.91 mmol)の無水ジクロロエタン(5 mL)溶液を加え、アルゴン気流下75 ℃で4時間撹拌した。反応液を室温に戻し溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(silica gel, 1:2 AcOEt/n-Hexane)で精製し、N-Boc-4を薄黄色の固体として得た(0.12 g, 97%)。
1H-NMR (CDCl­3, 400 MHz) δ 8.88 (t, J = 1.7 Hz, 1H), 8.57 (s, 1H), 8.28 (d, J = 1.7 Hz, 2H), 8.10-8.07 (m, 2H), 7.52-7.47 (m, 2H), 7.41-7.37 (m, 1H), 7.21-7.16 (m, 2H), 3.95 (s, 6H), 2.56 (s, 3H), 1.31 (s, 9H); 13C-NMR (CDCl­3, 100 MHz) δ 172.96, 165.92, 152.53, 139.25, 136.29, 134.51, 131.49, 131.07, 130.19, 130.14, 130.11, 129.40, 128.53, 127.38, 126.27, 126.06, 125.95, 125.51, 124.53, 52.51, 27.77, 26.53; FAB-MS (NBA) 528 (M++1).
【0010】
次にN-Boc-4(0.020 g, 0.038 mmol)をメタノール(7 mL)に懸濁し、炭酸カリウム(0.012 g, 0.11 mmol)を加え1時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し残渣に水(20 mL)を加えクロロホルム(20 mL)で抽出を行った。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し残渣を濾過カラムで精製することにより化合物5を薄黄色の固体として得た(0.018 g, quant.)。。ったったつをg, 0.11 mmol),見いだし合成を行い最終
1H-NMR (CDCl­3, 400 MHz) δ 8.88 (t, J = 1.7 Hz, 1H), 8.49 (s, 1H), 8.29 (d, J = 1.7 Hz, 2H), 8.05 (s, 1H), 8.03 (s, 1H), 7.45-7.32 (m, 4H), 7.08 (s, 1H), 6.55 (s, 1H), 3.96 (s, 6H), 1.47 (s, 9H); FAB-MS (NBA) 486 (M++1).
【0011】
(4)化合物6の合成
化合物5(0.020 g, 0.041 mmol)と化合物11(0.027 g, 0.082 mmol)の混合物に乾燥したm-キシレン(3 mL)に溶解し、アルゴン気流下23.5時間加熱還流を行った。反応液を室温まで冷却し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(silica gel, 1:2 AcOEt/n-Hexane)で精製し、N-Boc保護された5を無色の固体として得た.この固体をジクロロメタン(0.5 mL)に溶解しトリフルオロ酢酸(0.046 mL)を氷浴下加えた。その後室温に戻し6時間撹拌した。反応液の溶媒等を減圧留去後、ジクロロメタンを加え、有機層を炭酸水素ナトリウム溶液と飽和食塩水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(silica gel, 1:1 AcOEt/n-Hexane)で分離・精製し、シス体の目的物6 (0.010 g, 34% in 2 steps)およびトランス体の6’ (0.007 g, 24% in 2 steps)をそれぞれ得た。
6: 1H-NMR (CDCl­3, 600 MHz) δ 9.03 (s, 1H), 8.83 (t, J = 1.4 Hz, 1H), 8.37 (s, 1H), 7.69 (t, J = 1.5 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 7.7 Hz, 4H), 7.47 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.41 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 7.35 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.23 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 7.05 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 1.5 Hz, 2H), 6.58 (dd, J = 7.7, 2.0 Hz, 1H), 6.50 (s, 1H), 6.36 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 4.91 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 4.17 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 3.96 (s, 3H), 3.93 (s, 3H), 3.55-3.50 (m, 3H); FAB-MS (NBA) 711 (M++1).
6’: 1H-NMR (CDCl­3, 600 MHz) δ 9.00 (s, 1H), 8.84 (t, J = 1.4 Hz, 1H), 8.38 (s, 1H), 7.66 (t, J = 1.6 Hz, 1H), 7.47-7.46 (m, 5H), 7.46-7.40 (m, 4H), 7.36-7.30 (m, overlapped with CHCl3 peak, 3H), 7.25-7.22 (m, 1H), 6.59 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 6.53 (dd, J = 7.7, 2.1 Hz, 1H), 5.66 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 4.92 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 4.18 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.97 (s, 3H), 3.94 (s, 3H), 3.54-3.50 (m, 3H); FAB-MS (NBA) 711 (M++1).
【0012】
(5)化合物1aの合成
化合物6 (0.150 g, 0.211 mmol)をジクロロメタン (3 mL) に溶解し、トリフルオロ酢酸 (0.0505 g, 0.443 mmol, 2.1 equiv.)を加えて氷冷した。撹拌しながらそこに亜硝酸イソアミル (0.0297 g, 0.253 mmol, 1.2 equiv.) を5分かけて滴下して加え、30分後にさらに7.5 mg追加し、0℃で7時間撹拌した。尿素 (12.7 mg, 0.211 mmol, 1 equiv.)をさらに加え0.5時間撹拌した。次に酢酸ナトリウム (18.2 mg, 0.221 mmol, 1.05 equiv.)を加えて0.5時間後に、反応液をジュロリジン (0.109 g, 0.633 mmol, 3.00 equiv.)を溶解した氷冷したピリジン(4 mL)中に注ぎ、14時間撹拌した。反応液を濾過後、濾液を減圧濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をカラムクロマトグラフィー(Aluminum oxide, 1:1 AcOEt/n-hexane)で精製し、1aをオレンジ色結晶として得た(0.150 g, y. 79%)。
1H-NMR (CD2Cl­2, 600 MHz) δ 8.98 (s, 1H), 8.75 (t, J = 1.5 Hz, 1H), 8.33 (s, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.59 (t, J = 1.7 Hz, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.47 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 7.31 (dd, J = 7.9, 1.2 Hz, 4H), 7.24-7.16 (m, 9H), 7.00 (dt, J = 7.7, 1.2 Hz, 1H), 6.55 (d, J = 1.7 Hz, 2H), 6.31 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 4.99 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 4.19 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.89 (s, 3H), 3.82 (s, 3H), 3.52 (dd, J = 8.3, 3.1 Hz, 1H), 3.21-3.20 (m, 4H), 2.69-2.67 (m, 4H), 1.90-1.86 (m, 4H); 13C-NMR (CD2Cl­2, 150 MHz) δ 175.29, 174.58, 166.43, 166.25, 144.11, 142.84, 141.11, 140.58, 139.72, 137.76, 137.10, 135.68, 132.60, 131.17, 130.32, 130.04, 128.97, 127.83, 127.58, 127.22, 126.77, 126.36, 126.32, 125.30, 124.16, 123.98, 119.72, 57.07, 50.24, 49.43, 47.48, 46.55, 27.88, 21.77; FAB-MS (NBA) 896 (M++1).
【0013】
(6)化合物1bの合成
化合物6 (0.0260 g, 0.0366 mmol)をジクロロメタン (1.2 mL) に溶解し、トリフルオロ酢酸 (5.7 μL, 0.077 mmol, 2.1 equiv.)を加えて氷冷した。撹拌しながらそこに亜硝酸イソアミル (6.15 μL, 0.054 mmol, 1.2 equiv.) を5分かけて滴下して加え、30分後にさらに1.53 μL追加し、0℃で7時間撹拌した。次に酢酸ナトリウム (3.15 mg, 0.038 mmol, 1.05 equiv.)を加えて0.5時間後に、反応液を8-ヒドロキシジュロリジン (0.0208 g, 0.110 mmol, 3.00 equiv.)を溶解した氷冷したピリジン(0.4 mL)中に注ぎ、14時間撹拌した。反応液を濾過後、濾液を減圧濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をカラムクロマトグラフィー(Aluminum oxide, 1:1 AcOEt/n-hexane)で精製し、1bをオレンジ色結晶として得た(0.026 g, y. 78%)。
1H-NMR (CD2Cl­2, 600 MHz) δ 15.11 (brs, 1H), 8.97 (s, 1H), 8.75 (s, 1H), 8.31 (s, 1H), 7.60 (s, 1H), 7.54 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 7.23-7.21 (m, 4H), 7.19-7.17 (m, 3H), 6.98 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.81 (s, 1H), 6.58 (s, 2H), 6.28 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 4.95 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 4.17 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.89 (s, 3H), 3.82 (s, 3H), 3.51 (dd, J = 8.3, 3.0 Hz, 1H), 3.24-3.20 (m, 4H), 2.60 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.55 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 1.88-1.82 (m, 4H); 13C-NMR (CD2Cl­2, 125 MHz) δ 175.31, 174.58, 166.46, 166.23, 158.16, 148.64, 144.20, 142.87, 141.40, 140.75, 139.79, 137.72, 137.17, 173.08, 135.66, 132.66, 131.23, 130.39, 130.12, 128.97, 127.87, 127.59, 127.19, 126.74, 126.56, 126.36, 125.32, 124.17, 123.92, 118.15, 117.09, 116.39, 105.96, 57.11, 52.56, 52.51, 50.63, 50.38, 49.48, 47.44, 46.46, 27.48, 22.15, 21.04, 19.88; FAB-MS (NBA) 912 (M++1).
【0014】
(7)化合物11の合成
5’-アミノ-m-ターフェニル (2.00 g, 8.15 mmol)の無水クロロホルム(20 mL)溶液に無水マレイン酸(0.80 g, 8.15 mmolの 無水クロロホルム溶液(30 mL)を加え室温で19時間撹拌した。析出物を濾取し、クロロホルムで洗浄後乾燥することにより、マレイン酸モノm-ターフェニルアミド10の薄黄色結晶を得た(2.69 g, 96%)。IR (KBr) 3445, 3313, 1694, 1627, 1548; 1H-NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ 13.02 (brs, 1H), 10.56 (brs, 1H), 7.92 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 7.73-7.70 (m, 4H), 7.62 (t, J = 1.6 Hz, 1H), 7.52-7.49 (m, 4H), 7.43-7.39 (m, 2H), 6.51 (d, J = 12.2 Hz, 1H), 6.35 (d, J = 12.2 Hz, 1H); 13C-NMR (DMSO-d6, 100 MHz) δ166.78, 163.27, 141.40, 139.84, 139.59, 131.21, 130.52, 128.88, 127.66, 126.72, 120.63, 116.76; FAB-MS (NBA) 344 (M++1); Anal. calcd. for C22H17NO3: C, 76.95; H, 4.99; N, 4.08. Found: C, 76.87; H, 5.14; N, 4.23.
【0015】
次に化合物10 (2.00 g, 5.82 mmol)の無水酢酸溶液(10 mL)に酢酸ナトリウム(0.10 g, 1.22 mmol)を加え、混合物を95℃で2.5時間撹拌した。氷水(10 mL)を加え室温で17時間放置した。反応混合物を濾取し、析出物を水で洗浄した。得られた固体をカラムクロマトグラフィー(silica gel, 1:3 AcOEt/n-hexane)により精製し、化合物11を薄黄色結晶として得た(1.58 g, 84%)。
IR (neat) 3034, 1714, 1596, 1425, 702; 1H-NMR (CDCl­3, 400 MHz) δ 7.80 (t, J = 1.7 Hz, 1H), 7.66-7.63 (m, 4H), 7.53 (d, J = 1.7 Hz, 2H), 7.49-7.44 (m, 4H), 7.41-7.37 (m, 2H), 6.91 (s, 2H); 13C-NMR (CDCl­3, 100 MHz) δ 169.39, 142.81, 140.07, 134.22, 131.93, 128.80, 127.77, 127.28, 125.67, 123.65; FAB-MS (NBA) 326 (M++1); HRMS (EI) calcd. for C22H15O2N, 325.1103; Found, 325.1099.
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の光駆動回転分子は、化学結合の変化等の構造変化を伴わない分子動力学原理に基づき駆動するものであり、光エネルギーの一方向回転エネルギーへの変換効率が高い。ミクロスケール、ナノスケールの対象物の光による運動制御や、光駆動ナノポンプ、光駆動チャネル開口分子などの回転駆動手段として本発明の光駆動回転分子を使用することもできる。また、色素を選択することによって回転を起こさせる光の波長を自在に設定できる特徴も幅広い拡張性を示している。
【0017】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光駆動回転分子の設計概念図。
【図2】具体的な分子設計。
【図3】化合物1a,1bの合成経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素部位及びブロックユニットが回転軸に結合し、色素部位の回転軌道上にブロックユニットが位置する光駆動回転分子。
【請求項2】
色素部位、ブロックユニット及び被駆動分子結合部位が回転軸に結合し、色素部位の回転軌道上にブロックユニットが位置する光駆動回転分子。
【請求項3】
色素部位、ブロックユニット及び被駆動分子が回転軸に結合し、色素部位の回転軌道上にブロックユニットが位置する光駆動回転分子。
【請求項4】
色素部位の回転方向前方にブロックユニットが位置する、請求項1〜3のいずれかに記載の光駆動回転分子。
【請求項5】
回転軸が架橋多環式構造の一部である、請求項1〜4のいずれかに記載の光駆動回転分子。
【請求項6】
色素が、アゾ色素、インジゴ系色素、シアニン類、ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、キノン系色素、ジフェニルメタン系色素、フルオレセイン類、ローダミン類、フラーレン類又は金属錯体系色素である、請求項1〜5のいずれかに記載の光駆動回転分子。
【請求項7】
ブロックユニットが、芳香族系ユニット、脂肪族ユニット、環状アミド系ユニット、環状エステル系ユニット又は環状エーテル系ユニットである、請求項1〜6のいずれかに記載の光駆動回転分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−35501(P2009−35501A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199662(P2007−199662)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載アドレス:http://nenkai.pharm.or.jp/127/web/ 掲載日:平成19年2月1日
【出願人】(504373613)
【Fターム(参考)】