説明

免疫原性組成物で使用するためのナノ粒子

少なくとも1つの生分解性ポリマー、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つの凍結保護剤および少なくとも1つの抗原を含む滅菌ろ過凍結乾燥ナノ粒子組成物が本明細書で開示される。また、そのような組成物を作製し、使用する方法およびそのような組成物を供給するキットも開示される。一部の実施形態では、凍結乾燥粒子は、250nm未満、たとえば250nm−200nm−150nm−100nmまたはそれ以下の範囲にわたるZ平均またはD(v,0.5)値を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願についての陳述)
この出願は、2005年12月2日に出願された、表題「Nanoparticles For Use In Immunogenic Compositions」の米国仮特許出願第60/741,860号の利益を主張する。この出願はまた、2006年2月21日に出願された、表題「Nanoparticles For Use In Immunogenic Compositions」の米国仮特許出願第60/775,265号の利益を主張する。これらの先の出願の両方は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
微粒子担体は、適切な免疫応答を惹起することを目指して吸着または捕獲抗原と共に使用されてきた。そのような担体は、選択抗原の多数のコピーを免疫系に提示し、局所リンパ節における抗原の捕捉と保持を促進すると考えられている。粒子はマクロファージによって貪食されることができ、サイトカイン放出を通して抗原提示を増強し得る。
【0003】
たとえば所有者が共通する特許文献1および同時継続出願の特許文献2は、細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答を刺激するための抗原吸着および抗原被包ミクロ粒子の使用、ならびにミクロ粒子を作製する方法を述べている。ミクロ粒子を形成するために使用されるポリマーは、ポリ(ラクチド)およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLG)を含む。
【0004】
所有者が共通する特許文献3および特許文献4および特許文献5は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド抗原を含む、高分子が吸着されたミクロ粒子を作製する方法を開示する。ミクロ粒子は、たとえば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)(たとえばPLG、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物等)などのポリマーを含み、たとえば陽イオン、陰イオンまたは非イオン界面活性剤を使用して形成される。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むPLGミクロ粒子などの、陰イオン界面活性剤を含むミクロ粒子は、ポリペプチドなどの正に荷電した高分子と共に使用できる。CTAB(セトリミドまたは臭化セチルトリメチルアンモニウムとしても知られる)を含むPLGミクロ粒子などの、陽イオン界面活性剤を含むミクロ粒子は、DNAなどの負に荷電した高分子と共に使用できる。細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答を刺激するためのそのようなミクロ粒子の使用も開示されている。
【特許文献1】国際公開第98/33487号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0049298号明細書
【特許文献3】国際公開第00/06123号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/36599号パンフレット
【特許文献5】米国特許第6,884,435号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
1つの態様では、本発明は、少なくとも1つの生分解性ポリマー、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つの凍結保護剤および少なくとも1つの抗原を含む滅菌凍結乾燥ナノ粒子組成物を提供する。
【0006】
一部の実施形態では、凍結乾燥粒子は、250nm未満、たとえば250nm−200nm−150nm−100nmまたはそれ以下の範囲にわたるZ平均またはD(v,0.5)値を有する。
【0007】
そのような組成物は、たとえばそれらが免疫原性であることおよび容易にナノ粒子懸濁物を形成するという点で有用である。たとえば本発明の凍結乾燥ナノ粒子組成物を0.005g/ml(5−10mg/mlの範囲)の濃度で蒸留水と混合したとき、免疫原性ナノ粒子懸濁物が自然に形成され、前記懸濁ナノ粒子のZ平均またはD(v,0.5)値は250nm未満、たとえば250nm−200nm−150nm−100nmまたはそれ以下の範囲にわたる。
【0008】
ある実施形態では、生分解性ポリマーは、たとえば、中でも特にポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリシアノアクリレート、およびそれらの組合せから選択される、合成生分解性ポリマーである。
【0009】
凍結保護剤の例は、中でも特に、ポリオール、炭水化物およびそれらの組合せを含む。
【0010】
界面活性剤の例は、中でも特に、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤を含む。
【0011】
抗原は、たとえばナノ粒子の表面に吸着され得るか、ナノ粒子内に封入され得るかまたはその両方であり得る。抗原の例は、中でも特に、ポリペプチド含有抗原、多糖含有抗原、およびポリヌクレオチド含有抗原を含む。抗原は、たとえば腫瘍細胞、およびウイルス、細菌、真菌および寄生生物などの病原生物に由来し得る。
【0012】
ある実施形態では、本発明の組成物は、たとえばナノ粒子の表面に吸着され得る、ナノ粒子内に封入され得る、またはその両方であり得る、免疫アジュバントなどの補助成分を含有し得る。補足免疫アジュバントの例は、中でも特に、CpGオリゴヌクレオチド、二本鎖RNA、大腸菌非耐熱性毒素、ミョウバン、リポ糖リン酸塩化合物およびリポ糖リン酸塩ミメティック(mimetic)を含む。
【0013】
2つの抗原、2つの免疫アジュバント、あるいは1つの抗原と1つの免疫アジュバントを使用する場合、それらはたとえば、(a)ナノ粒子の同じ集団に吸着される、(b)各々がナノ粒子の別々の集団に吸着される、(c)1つがナノ粒子に吸着され、その他が溶液中に存在する、(d)1つがナノ粒子に吸着され、その他がナノ粒子の同じ集団内に封入される、(e)1つがナノ粒子の1番目の集団に吸着され、その他がナノ粒子の2番目の集団内に封入される、等であり得る。
【0014】
他の態様では、本発明は、前記のようなナノ粒子組成物を生産する方法を提供する。
【0015】
さらなる他の態様では、本発明は、ナノ粒子組成物を宿主動物に送達する(たとえば治療、予防または診断目的のため)方法を提供する。宿主動物は、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、さらに一層好ましくはヒトである。本発明のナノ粒子組成物の送達は、何らかの公知の方法によって実施できる。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、本発明のナノ粒子組成物を含むキットを提供する。
【0017】
発明の背景において上述したようなミクロ粒子に基づく技術と比較して、本発明の利点は、数ある中でも特に、作製の容易さ(たとえば高せん断均質化は必要なく、またナノ粒子は滅菌ろ過され得るので、ナノ粒子製造工程は厳格に無菌である必要はない)、およびより高レベルの抗原および他の種をナノ粒子の表面に吸着する能力を含む。
【0018】
本発明のこれらや他の態様、実施形態および利点は、ここでの開示を考慮して当業者により容易に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、異なる指示がない限り、技術水準内での、化学、高分子化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の従来の方法を使用する。そのような手法は文献において詳細に説明されている。たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences,第18版(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Methods In Enzymology(S.ColowickとN.Kaplan編集、Academic Press,Inc.);Weir,D.M.,Handbook of Experimental Immunology,I−IV巻、第5版(Blackwell Publishers,1996);Sambrook,J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001);Ausubel,F.M.ら、Short Protocols In Molecular Biology,第5版(Current Protocols,2002);Handbook of Surface and Colloidal Chemistry(Birdi,K.S.編集、CRC Press,1997)およびSeymour/Carraher’s Polymer Chemistry,第5版(Marcel Dekker Inc.,2000)参照。
【0020】
上記または下記の、ここで引用するすべての公表文献、特許および特許出願は、それらの全体が参照によりここに組み込まれる。
【0021】
本明細書および付属の特許請求の範囲において使用する、単数形態の「a」、「an」および「the」は、その内容が明らかに異なる指示を与えない限り、複数の言及を包含する。それ故、たとえば「ナノ粒子」という用語は1またはそれ以上のナノ粒子を指す、等である。
【0022】
異なる記述がない限りまたは文脈が明らかに異なる指示を与えない限り、ここでのすべてのパーセンテージおよび比率は重量ベースで与えられる。
【0023】
A.定義
本発明を説明するとき、以下の用語が使用され、以下で指示するように定義されるものとする。
【0024】
ここで使用される「ナノ粒子」という用語は、直径1,000nm未満の粒子を指す。本発明の組成物内のナノ粒子は、典型的には、Z平均および/またはD(v,0.5)値が250nm未満、より典型的には150nm未満であり、およびZ平均および/またはD(v,0.9)値が350nm未満、より典型的には200nm未満である粒径分布を有する。
【0025】
粒径は当技術分野で使用可能な方法を用いて測定することができる。たとえば粒径は、光子相関分光法、動的光散乱または準弾性光散乱を用いて測定できる。これらの方法は、ブラウン運動測定から得られる粒子の拡散特性と粒径の相関に基づく。ブラウン運動は、粒子を取り巻く溶媒分子による衝突に起因する粒子のランダムな運動である。粒子が大きいほど、ブラウン運動はより緩やかである。速度は並進拡散係数(D)によって定義される。測定される数値は、粒子が液体内でどのように運動するか(流体力学的直径)を表わす。得られる直径は、粒子と同じ並進拡散係数を有する球の直径である。
【0026】
粒径はまた、単一時間に溶液中の粒子によって散乱される光の強度を測定する、静的光散乱を用いて測定することもできる。静的光散乱は、光強度を散乱角度と溶質濃度の関数として測定する。光源、たとえばレーザー光を通過する粒子は、それらの大きさに逆比例する角度で光を散乱させる。大きな粒子は高い強度を有する低散乱角度での回折パターンを生じ、一方小さな粒子は広い角度の低強度シグナルを生じる。試料から散乱される光の強度が角度の関数として測定される場合、粒径分布が算定できる。粒径分布を算定するために角度情報を散乱モデル(たとえばミー理論)と比較する。
【0027】
一般に、粒径は室温で測定され、粒子直径についての平均値を求めるために対象とする試料の多数の分析(たとえば同じ試料に関して少なくとも3回の反復測定)を含む。
【0028】
光子相関分光法に関して、Z平均(キュミュラント平均または流体力学的直径とも呼ばれる)は、典型的にはキュミュラント(単峰性)分析から算定される。
【0029】
静的光散乱測定に関して(および一部の実施形態では光子相関分光法に関しても)、容積に基づくサイズパラメータを測定し得る。たとえばD(v,0.5)(vは容積を意味する)は、その数値が、測定したとき、組成物中の粒子の50%(容積ベース)がD(v,0.5)値未満の粒径を有し、および組成物中の粒子の50%がD(v,0.5)値より大きい粒径を有する点と定義されるサイズパラメータである。同様に、D(v,0.9)は、その数値が、組成物中の粒子の90%(容積ベース)がD(v,0.9)値未満の粒径を有し、および組成物中の粒子の10%がD(v,0.9)値より大きい粒径を有する点と定義されるサイズパラメータである。
【0030】
ここで定義する、「ナノ粒子懸濁物」は、ナノ粒子を含む液相である。「水溶液]は、水を含有する溶液、典型的には50重量%以上の水、たとえば50−75−90−95重量%またはそれ以上の水を含む溶液である。「水性ナノ粒子懸濁物」は、ナノ粒子を含む水含有液相である。本発明に従った水性ナノ粒子懸濁物は、典型的には50重量%以上の水、たとえば50−75−90−95重量%またはそれ以上の水を含む。
【0031】
ここでの使用のためのナノ粒子は、典型的には、滅菌可能で、実質的に非毒性であり、生分解性であるポリマーから形成される。そのような材料は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、およびポリシアノアクリレート(たとえばポリアルキルシアノアクリレートまたは「PACA」)を含む。より典型的には、本発明に関する使用のためのナノ粒子は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)から、たとえばポリ(D,L−ラクチド)などのポリ(ラクチド)(「PLA」、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(「PLG」)などのラクチドとグリコリドのコポリマー、またはD,L−ラクチドとカプロラクトンのコポリマーから誘導されるポリマーナノ粒子である。ポリマーナノ粒子は、様々な分子量を有し、およびPLGなどのコポリマーの場合は様々なモノマー(たとえばラクチド:グリコリド)比を有する、種々のポリマー出発物質のいずれかから誘導でき、その選択は、一部には同時投与される種に依存するが、主として選択の問題である。これらのパラメータを以下でさらに論じる。
【0032】
「界面活性剤」という用語は、「表面活性物質」という語句に由来する。界面活性剤は界面(たとえば液体−液体、液体−固体および/または液体−気体界面)に蓄積し、その界面の性質を変化させる。ここで使用する、界面活性剤は、洗浄剤、分散剤、懸濁化剤、乳化安定剤等を包含する。
【0033】
ここで定義する、「炭水化物」は、単糖、オリゴ糖および多糖、ならびにたとえば還元によって(たとえばアルジトール)、1またはそれ以上の末端基のカルボン酸への酸化によって(たとえばグルクロン酸)、あるいは水素原子またはアミノ基による1またはそれ以上のヒドロキシ基の置換によって(たとえばβ−D−グルコサミンおよびβ−D−ガラクトサミン)、単糖から誘導される物質を含む。
【0034】
ここで使用する、「単糖」は、多価アルコール、すなわちアルデヒド基(この場合単糖はアルドースである)またはケト基(この場合単糖はケトースである)のいずれかをさらに含むアルコールである。単糖は、典型的には3−10個の炭素を含む。さらに、単糖は一般に実験式(CHO)[式中、nは3またはそれ以上の整数、典型的には3−10である]を有する。炭素数3−6のアルドースの例は、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、2−デオキシリボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトースおよびタロースを含む。炭素数3−6のケトースの例は、ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボースおよびタガトースを含む。天然に生じる単糖は、通常はL−形態ではなくD−異性体として認められる。
【0035】
「オリゴ糖」は、比較的短い単糖ポリマー、すなわち2−30の単糖単位を含むものを指す。「多糖」は、オリゴ糖の長さを超える(すなわち30単糖単位以上を含むもの)単糖ポリマーである。さらに、ここで使用する、「多糖」という用語はまた、2またはそれ以上の連結された単糖を含む単糖ポリマーを指す。あいまいさを避けるため、2番目の定義は、矛盾する明白な指示がない限り、すべての場合に適用されるものとする。「多糖」という用語はまた、数ある中でも特に、アミノ官能基化およびカルボキシル官能基化多糖誘導体などの多糖誘導体を含む。単糖は、典型的にはグリコシド結合によって連結される。特定例は、二糖(スクロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、ゲンチオビオースおよびセロビオースなど)、三糖(ラフィノースなど)、四糖(スタキオースなど)、および五糖(ベルバスコースなど)を含む。
【0036】
ここで使用する、「糖」という用語は、単糖、オリゴ糖および多糖を包含する。「糖含有種」は、少なくともその一部が糖である分子である。例は、糖凍結保護剤、糖抗原、担体ペプチドに複合した糖を含む抗原等を包含する。
【0037】
ここで使用する、「凍結保護剤」は、凍結および解凍時に有害な作用を受けることから組成物を保護する物質である。たとえば本発明では、本発明の凍結乾燥組成物を再懸濁したとき実質的なナノ粒子凝集が起こるのを防ぐために凍結保護剤を添加し得る。
【0038】
「ポリヌクレオチド」は核酸ポリマーである。ここで使用する、「ポリヌクレオチド」は、わずかに5、6、7または8個のヌクレオチドを含み得る。
【0039】
さらに、「ポリヌクレオチド」は二本鎖および一本鎖配列の両方を含むことができ、ウイルスからのcDNA、原核生物または真核生物mRNA、ウイルスからのゲノムRNAおよびDNA配列(たとえばRNAおよびDNAウイルスおよびレトロウイルス)または原核生物DNA、および合成DNA配列を指すが、これらに限定されない。この用語はまた、DNAおよびRNAの公知の塩基類似体のいずれかを含む配列を包含する。この用語はさらに、たとえば核酸分子が抗原タンパク質をコードする場合、天然配列への、欠失、付加および置換(一般に本来は保存的)などの修飾を含む。これらの修飾は、部位指定突然変異誘発を通してのように、故意であり得るか、または抗原を産生する宿主の突然変異を通してのように、偶発的であり得る。
【0040】
ここで定義する「オリゴヌクレオチド」は、5−100、より好ましくは5−30ヌクレオチドの範囲内の大きさを有するポリヌクレオチドである。
【0041】
ここで使用する、「核酸」という語句は、DNA、RNA、またはそれらから形成されるキメラを指す。
【0042】
「ポリヌクレオチド含有種」は、少なくともその一部がポリヌクレオチドである分子である。例は、RNAベクター構築物、DNAベクター構築物等を含む。
【0043】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指し、生成物の最小限の長さに限定されない。それゆえペプチド、オリゴペプチド、ダイマー、マルチマー等が定義に包含される。完全長タンパク質およびそのフラグメントの両方が定義に包含される。これらの用語はまた、たとえば、タンパク質が、免疫応答を惹起するまたはタンパク質が投与される被験体に治療作用を及ぼす能力を保持するように、天然配列への、欠失、付加および置換(一般に本来は保存的)などの修飾を含む。
【0044】
「ポリペプチド含有種」は、少なくともその一部がポリペプチドである分子である。例は、ポリペプチド、糖タンパク質を含むタンパク質、輸送タンパク質に複合した糖抗原等を含む。
【0045】
「薬剤」という用語は、抗生物質、抗ウイルス薬、増殖因子、ホルモン、抗原等のような生物学的に活性な化合物を指す。
【0046】
「アジュバント」という用語は、抗原に対する免疫応答を高めるまたは多様化する免疫アジュバントを含むが、これらに限定されない、薬剤の作用を助けるまたは改変する物質を指す。それ故、免疫アジュバントは、抗原に対する免疫応答を増強することができる化合物である。免疫アジュバントは、体液性および/または細胞性免疫を増強することができる。
【0047】
「抗原」により、抗原が提示されたとき細胞性抗原特異的免疫応答または体液性抗体応答を生じるように宿主の免疫系を刺激することができる1またはそれ以上のエピトープを含む分子が意味される。抗原は、単独でまたはもう1つ別の分子を組み合わせて存在するとき、細胞性および/または体液性応答を惹起することができる。
【0048】
「エピトープ」は、その免疫学的特異性を決定する抗原分子または抗原複合体の部分である。エピトープは、本発明における抗原の定義の範囲内である。一般に、エピトープは、天然に生じる抗原ではポリペプチドまたは多糖である。人工抗原では、アルサニル酸誘導体などの低分子量物質であり得る。エピトープは、たとえば同種抗体またはTリンパ球と、インビボまたはインビトロで特異的に反応する。選択的記述語は、抗原決定基、抗原構造群およびハプテン群である。
【0049】
しばしば、エピトープは約5−15アミノ酸を含む。所与のタンパク質のエピトープは、当技術分野において周知の、多くのエピトープマッピング手法を用いて同定される。たとえばEpitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,第66巻(Glenn E.Morris編集、1996)Humana Press,Totowa,New Jersey参照。たとえば線状エピトープは、たとえば固体支持体上で、タンパク質分子の部分に対応する多数のペプチドを同時に合成し、ペプチドを支持体に結合したままで、ペプチドを抗体と反応させることによって決定し得る。そのような手法は当技術分野で公知であり、たとえば米国特許第4,708,871号;Geysenら(1984)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998−4002);Geysenら(1986)(Molec.Immunol.23:709−715)に述べられている。同様に、立体エピトープは、たとえばx線結晶学および二次元核磁気共鳴などにより、アミノ酸の空間立体配座を決定することによって容易に同定される。たとえばEpitope Mapping Protocols,前出参照。
【0050】
ここで使用する「抗原」という用語は、サブユニット抗原、すなわち抗原が本来結合している全生物から離れた不連続な抗原、ならび死滅、弱毒化または不活性化細菌、ウイルス、寄生生物または他の病原体または腫瘍細胞の両方を表わす。抗イディオタイプ抗体などの抗体またはそのフラグメント、および抗原または抗原決定基を模倣し得る合成ペプチドミモトープも、ここで使用する抗原の定義に包含される。
【0051】
同様に、核酸免疫適用などにおいて、インビボで免疫原性タンパク質または抗原決定基を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドも、ここでの抗原の定義に包含される。
【0052】
さらに、本発明に関して、「抗原」は、そのタンパク質が免疫応答を惹起する能力を保持する限り、天然配列への、欠失、付加および置換(一般に本来は保存的)などの修飾を有するタンパク質を指す。これらの修飾は、部位指定突然変異誘発を通してのように、故意であり得るか、または抗原を産生する宿主の突然変異を通してのように、偶発的であり得る。
【0053】
抗原または組成物に対する「免疫学的応答」または「免疫応答」は、被験体における、対象組成物中に存在する分子に対する体液性および/または細胞性免疫応答の発現である。本発明に関して、「体液性免疫応答」は、抗体分子によって媒介される免疫応答を指し、一方「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球および/または他の白血球によって媒介されるものである。細胞性免疫の1つの重要な態様は、細胞傷害性T細胞(「CTL」)による抗原特異的応答を含む。CTLは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によってコードされ、細胞の表面で発現されるタンパク質に関連して提示されるペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊、またはそのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導し、促進するのを助ける。細胞性免疫のもう1つの態様は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答を含む。ヘルパーT細胞は、その表面のMHC分子に関連してペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性を集中させるのを助けるように働く。「細胞性免疫応答」はまた、CD4+およびCD8+T細胞に由来するものを含む、活性化T細胞および/または他の白血球によって産生されるサイトカイン、ケモカインおよび他のそのような分子の産生を指す。
【0054】
細胞性免疫応答を惹起する免疫原性組成物またはワクチンなどの組成物は、細胞表面でのMHC分子に関連する抗原の提示により脊椎動物被験体を感作する働きをし得る。細胞媒介性免疫応答は、それらの表面で抗原を提示する細胞または細胞の近くに向けられる。加えて、抗原特異的Tリンパ球は、免疫宿主の将来の防御を可能にするために生成され得る。
【0055】
細胞媒介性免疫応答を刺激する特定抗原または組成物の能力は、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイなどの当技術分野で公知の多くのアッセイによって、または感作被験体における抗原に特異的なTリンパ球を検定することによって、または抗原による再刺激に応答したT細胞によるサイトカイン産生の測定によって決定し得る。たとえばEricksonら(1993)(J.Immunol.151:4189−4199);Doeら(1994)(Eur.J.Immunol.24:2369−2376);および以下の実施例参照。
【0056】
それゆえ、免疫学的応答は、たとえば以下の作用:B細胞による抗体の産生;および/または対象組成物またはワクチン中に存在する抗原(1またはそれ以上)を特異的に対象とするサプレッサーT細胞および/またはγδT細胞の活性化の1またはそれ以上を含み得る。これらの応答は、感染を中和する、および/または免疫宿主に対する防御を提供する抗体−補体または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する働きをし得る。そのような応答は、当技術分野で周知の、標準免疫検定法および中和アッセイ、たとえば放射免疫測定法およびELISAを用いて測定できる。
【0057】
本発明の免疫原性組成物は、異なる組成物において等量の抗原によって惹起される免疫応答より大きな免疫応答を惹起する能力を有するとき、「高い免疫原性」を示す。すなわち組成物は、たとえば組成物がより強力な免疫応答を生じさせるので、または抗原が投与される被験体において免疫応答を達成するためにより低用量の抗原しか必要としないため、「高い免疫原性」を示し得る。そのような高い免疫原性は、たとえば本発明の組成物と抗原対照を動物に投与し、2つの検定結果を比較することによって測定できる。
【0058】
ここで使用する、「治療」(その様々な変形、たとえば「治療する」または「治療される」を含む)は、(i)問題の病原体または疾患(たとえば癌または伝統的なワクチンにおけるように、病原菌感染)の予防、(ii)症状の軽減または排除、および(iii)問題の病原体または疾患の実質的または完全な排除のいずれかを指す。治療は、予防的に(問題の病原体または疾患の出現以前に)または治療的に(問題の病原体または疾患の出現後に)実施され得る。
【0059】
本発明の免疫原性組成物の「有効量」または「医薬的に有効な量」という用語は、ここでは対象とする状態を治療するまたは診断するために十分な免疫原性組成物の量を指す。必要とされる正確な量は、数ある因子の中でも特に、たとえば被験体の種、年齢および全般的状態;治療される状態の重症度;対象とする特定抗原;免疫学的応答の場合は、たとえば抗体を合成する被験体の免疫系の能力および所望する防御の程度;および投与方式に依存して、被験体ごとに異なる。個々の場合の適切な「有効」量は、当業者によって決定され得る。それゆえ「治療有効量」は、典型的には常套的治験を通して決定され得る比較的広い範囲に属する。
【0060】
「脊椎動物被験体」または「脊椎動物」により、限定を伴わずに、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマおよびヒトなどの哺乳動物;イヌおよびネコなどの愛玩動物;およびニワトリ、シチメンチョウおよび他の家禽を含むオンドリおよびメンドリなどの家禽、野鳥および狩猟鳥を含む鳥類を含む、脊索動物亜門の何らかの成員が意味される。この用語は特定の年齢を意味しない。それ故成体および新生児動物の両方が含まれる。
【0061】
「医薬的に許容される」または「薬理的に許容される」により、生物学的に有害でない物質、すなわち物質が、個体において過度の望ましくない生物学的作用を引き起こさずにまたは含有される組成物の成分のいずれかと過度に有害に相互作用せずに個体に投与され得ることが意味される。
【0062】
「賦形剤」という用語は、最終投与形態中に存在し得る基本的に付属的な物質を指す。たとえば「賦形剤」という用語は、ビヒクル、結合剤、崩壊剤、充填剤(希釈剤)、潤滑剤、流動促進剤、圧縮補助剤、着色料、甘味料、防腐剤、懸濁化/分散剤、薄膜形成剤/被覆剤、着香料および印刷インクを含む。
【0063】
「生理的pH」または「生理的範囲内のpH」により、約7.2−8.0(両端を含む)の範囲内、より典型的には約7.2−7.6(両端を含む)の範囲内のpHが意味される。
【0064】
ここで使用する、「ベクター構築物」という語句は、対象とする核酸配列または遺伝子の発現を指令することができる何らかの集合物(assembly)を指す。ベクター構築物は、典型的には転写プロモーター/エンハンサーまたは遺伝子座規定エレメント、または選択的スプライシング、RNA核外輸送、メッセンジャーの翻訳後修飾またはタンパク質の転写後修飾などの他の手段によって遺伝子発現を制御する他のエレメントを含む。加えて、ベクター構築物は、典型的には、転写されたとき、対象配列または遺伝子に作動可能に連結され、翻訳開始配列として働く配列を含む。ベクター構築物はまた、場合によりポリアデニル化を指令するシグナル、選択マーカー、ならびに1またはそれ以上の制限部位および翻訳終結配列を含む。加えて、ベクター構築物がレトロウイルスに導入される場合、ベクター構築物は、パッケージングシグナル、ロングターミナルリピート(LTR)、および使用されるレトロウイルスに適切な正鎖および負鎖プライマー結合部位を含み得る(これらが既に存在していない場合)。
【0065】
「DNAベクター構築物」は、対象とする核酸配列または遺伝子の発現を指令することができるDNA分子を指す。
【0066】
DNAベクター構築物の1つの特定型はプラスミドであり、プラスミドは、宿主細胞内で自律複製することができる環状エピソームDNA分子である。典型的には、プラスミドは、その中に付加的なDNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNAループである。pCMVは当技術分野において周知の1つの特定プラスミドである。好ましいpCMVベクターは、CMVの最初期エンハンサー/プロモーターおよびウシ成長ホルモンターミネーターを含む。特定例は、Chapman,B.S.ら(1991)(Nucleic Acids Res.19:3979−3986)の中で詳細に述べられている。
【0067】
他のDNAベクター構築物は公知であり、それらはRNAウイルスに基づく。これらのDNAベクター構築物は、典型的には真核細胞において機能するプロモーター、転写産物がRNAベクター構築物(たとえばアルファウイルスRNAベクターレプリコン)であるcDNA配列の5’末端領域、および3’末端領域を含む。RNAベクター構築物は、好ましくは、対象生成物をコードする選択された異種核酸配列による1またはそれ以上の構造タンパク質遺伝子の置換によって修飾された、ピコルナウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、コロナウイルス、パラミクソウイルス、黄熱病ウイルスまたはアルファウイルス(たとえばシンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルスまたはロスリバーウイルス)からのRNAゲノムを含む。RNAベクター構築物は、DNA鋳型からのインビトロ転写によって入手できる。特定例は、たとえば米国特許第5,814,482号および同第6,015,686号、ならびに国際公開公報第WO97/38087号、同第WO99/18226号および同第WO02/26209号に述べられている、pSINCPなどのシンドビスウイルスに基づくプラスミド(pSIN)を含む。そのようなベクターの構築は、一般に、米国特許第5,814,482号および同第6,015,686号に述べられている。
【0068】
ベクター構築物の他の例は、RNAベクター構築物((たとえばアルファウイルスベクター構築物)等を含む。ここで使用する、「RNAベクター構築物」、「RNAベクターレプリコン」および「レプリコン」は、インビボで、典型的には標的細胞内で、それ自身の増幅または自己複製を指令することができるRNA分子を指す。RNAベクター構築物は、細胞へのDNAの導入および転写が起こる核内への輸送を必要とせずに、直接使用される。宿主細胞の細胞質への直接送達のためにRNAベクターを使用することにより、異種核酸配列の自律複製と翻訳が効率的に起こる。
【0069】
B.一般的方法
上述したように、本発明のナノ粒子組成物は、1またはそれ以上の生分解性ポリマー、1またはそれ以上の界面活性剤、1またはそれ以上の凍結保護剤、1またはそれ以上の抗原、および場合により1またはそれ以上の補助成分、たとえば、中でも特に、1またはそれ以上の免疫アジュバントを含む。
【0070】
1.ナノ粒子組成物
ここで述べる免疫原性ナノ粒子組成物を形成するために有用なポリマーは、天然および合成の、ホモポリマー、コポリマーおよびポリマー混合物を含む。そのようなポリマーは、たとえば以下のものから誘導され得る:ポリヒドロキシ酪酸(ポリヒドロキシブチレートとしても知られる);ポリヒドロキシ吉草酸(ポリヒドロキシバレレートとしても知られる);ポリグリコール酸(PGA)(ポリグリコリドとしても知られる);ポリ乳酸(PLA)(ポリラクチドとしても知られる);ポリジオキサノン;ポリカプロラクトン;ポリオルトエステル;ポリシアノアクリレート、ポリ無水物;およびそれらの組合せ。ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)(どちらもここではPLAと称する)、ポリ(ヒドロキシブチレート)などのポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(ここでは「PLG」と称する)などのラクチドとグリコリドのコポリマー、またはD,L−ラクチドとカプロラクトンのコポリマーがより典型的である。
【0071】
上記ポリマーは様々な分子量で入手可能であり、所与の用途のための適切な分子量は当業者によって容易に決定される。そこで、たとえばPLAについての適切な分子量は、約2,000−5,000であり得る。PLGについての適切な分子量は、約5,000−約200,000の範囲であり得る。
【0072】
コポリマーを使用する場合、様々なモノマー比のコポリマーが使用可能であり得る。たとえばナノ粒子を形成するためにPLGを使用する場合、様々なラクチド:グリコリドのモル比がここで使用でき、その比率は、一部には同時投与される吸着および/または封入種および所望分解速度に依存するが、主として選択の問題である。たとえば50%D,L−ラクチドと50%グリコリドを含む50:50PLGポリマーはより速やかな吸収性コポリマーを提供し、一方75:25PLGはより緩やかに分解し、85:15および90:10は、ラクチド成分の上昇により、さらに一層緩やかに分解する。多様なラクチド:グリコリド比を有するナノ粒子の混合物も、所望放出速度を達成するためにここで使用され得る。本発明のナノ粒子の分解速度はまた、ポリマーの分子量およびポリマーの結晶度などの因子によっても制御できる。
【0073】
PLGコポリマーが使用される場合、それらは典型的には、中でも特に、たとえば20:80−25:75−40:60−45:55−55:45−60:40−75:25−80:20の範囲にわたるラクチド/グリコリドモル比を有し、およびたとえば5,000−10,000−20,000−40,000−50,000−70,000−100,000−200,000ダルトンの範囲にわたる分子量を有するPLGコポリマーである。
【0074】
多様なラクチド:グリコリド比と分子量を有するPLGコポリマーは、Boehringer Ingelheim,GermanyおよびBirmingham Polymers,Inc.,Birmingham,AL,USAを含む多くの供給源から市販のものを容易に入手し得る。一部の例示的なPLGコポリマーは、(a)RG 502、50:50のラクチド/グリコリドモル比および約12,000ダルトンの分子量を有するPLG;(b)RG 503、50:50のラクチド/グリコリドモル比および約34,000ダルトンの分子量を有するPLG;(c)RG 504、50:50のラクチド/グリコリドモル比および約48,000ダルトンの分子量を有するPLG;(d)RG752、75:25のラクチド/グリコリドモル比および約22,000ダルトンの分子量を有するPLG;および(e)RG755、75:25のラクチド/グリコリドモル比および約68,000ダルトンの分子量を有するPLGを含む。PLGポリマーはまた、Tabataら(1988)(J.Biomed.Mater.Res.22:837−858)に述べられているような当技術分野で周知の手法を使用して乳酸成分の簡単な重縮合によって合成できる。
【0075】
本発明に従ったナノ粒子は、任意の適切な方法を用いて製造される。
【0076】
たとえば溶媒置換法とも称されるナノ沈殿法は、本発明における使用のためのナノ粒子を形成するための適切な方法の一例である。たとえば“Process for the preparation of dispersible colloidal systems of a substance in the form of nanocapsules,”と題する欧州特許第0274961B1号、Devissaguetら、同じ表題による米国特許第5,049,322号、およびFessiら、米国特許第5,118,528号、“Process for the preparation of dispersible colloidal systems of a substance in the form of nanoparticles”参照。
【0077】
本発明に適合させるときは、ポリマーを有機溶媒(たとえばアセトン、エタノール等のような親水性有機溶媒)に溶解する。生じた有機溶液を、有機溶媒と混和性であるがポリマーに対しては非溶媒であるさらなる溶媒、典型的には水溶液と組み合わせる。水溶液は、たとえば脱イオン水、生理食塩水、たとえばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはクエン酸ナトリウム/エチレンジアミン四酢酸(クエン酸ナトリウム/EDTA)緩衝液などの、緩衝液であり得る。後者の溶液は、(a)通常の生理的液体と基本的に同じ張度、すなわち浸透圧を提供し、および(b)通常の生理的条件と適合性のpHを維持することができる。特定実施形態では、本発明の組成物の張度および/またはpH特徴はナノ粒子形成後に調整できる。
【0078】
有機溶液と水溶液を、その後、適切な相対容積で(たとえば1:10−1:5−1:2−1:1−2:1−5:1−10:1、典型的には1:2−2:1、より典型的には約1:1)組み合わせる。たとえば有機溶液を、攪拌しながら非溶媒に注ぐまたは注入し得るか、またはその逆であり得る。ポリマーが有機溶媒には可溶性であるが、有機溶媒と非溶媒の混和性混合物には有意により難溶である系を選択することにより、ナノ粒子の懸濁物が実際上即座に形成され得る。その後、たとえば周囲条件下での蒸発または減圧下または高温下での蒸発によって、有機溶媒を懸濁物から除去できる。
【0079】
有機溶媒、水溶液またはその両方が、所望に応じて様々な他の種も同時に含み得る。たとえば一部の実施形態では、1またはそれ以上の追加種をナノ粒子に封入することあるいは1またはそれ以上の追加種を粒子−液体界面で提供することが望ましい。そのような追加種は、たとえば抗原、界面活性剤、凍結保護剤、免疫アジュバント等を含み得る。これらの種は、典型的には(a)油溶性または油分散性形態であれば、有機溶液に、または(b)水溶性または水分散性形態であれば、水溶液に添加される。
【0080】
一部の実施形態では、1またはそれ以上の追加種は、ナノ粒子形成の後に(および典型的には有機溶媒の除去後、ならびに、実施される場合は、洗浄工程後に)添加される。たとえば張度またはpHを調整するための物質、抗原、界面活性剤、凍結保護剤、免疫アジュバント等が添加できる。しばしば、これらの追加種は水溶液または分散としてナノ粒子に添加される。これらの種は、たとえば溶液中に存在し得るか、または、たとえばナノ粒子表面に吸着されて(たとえば様々な抗原がナノ粒子表面に吸着される、下記の実施例参照)、粒子−溶液界面に蓄積し得る。吸着される種の含量は、標準的手法を用いて測定できる。
【0081】
ひとたび所望組成物の懸濁物が提供されれば、そのまま使用し得るかまたはさらなる使用のために凍結乾燥し得る。
【0082】
本発明に従った組成物は、ナノ粒子形成後に滅菌ろ過することができる。たとえば組成物は、ナノ粒子形成後のいずれの時点でも、たとえばナノ粒子形成後であるが免疫学的種(たとえば免疫アジュバントおよび/または抗原)の吸着前に、免疫学的種の吸着後で凍結乾燥の前等に滅菌ろ過することができる。
【0083】
一般に、組成物内のミクロ粒子は、凍結乾燥の前および後に、250nm未満、たとえば250nm−200nm−150nm−100nmまたはそれ以下の範囲にわたるZ平均および/またはD(v,0.5)サイズを有する。
【0084】
一例としてPLGを使用して形成されるナノ粒子を考慮すると、ミクロ粒子形成手法(たとえば前記の発明の背景の章で引用した参考文献およびSingh,M.ら(2004)(J.Pharm.Sci.93(2):273−282)に述べられているもの)と比較して、本発明の手法にはいくつかの利点がある。最初の利点は製造の容易さである。ナノ粒子法は単一工程手法であり、高せん断均質化を必要とせず、磁気攪拌しか必要としない。加えて、ミクロ粒子製造工程全体が典型的には無菌であるが、ナノ粒子は、それらの小さなサイズの故に、粒子製造後に滅菌ろ過することができ、生産必要条件にはより厳密さが求められない。
【0085】
さらに2つの方法に関して使用される有機溶媒の種類が異なる。ナノ粒子法はアセトンを使用して実施できるが、ミクロ粒子法は、典型的には溶媒としてジクロロメタン(DCM)の使用を含む。米国食品医薬品局(FDA)はDCMをクラス2溶媒として分類しており、医薬品中に存在し得る許容される残留溶媒の量に制限を定めているが、アセトンは、FDAが許容量により高い制限を定めているクラス3溶媒である。
【0086】
2.界面活性剤
上述したように、本発明における使用のための界面活性剤は、洗浄剤、分散剤、懸濁化剤、乳化安定剤等を含む。
【0087】
界面活性剤は、陽イオン、陰イオンまたは非イオン界面活性剤を含む。陽イオン界面活性剤は、中でも特に、たとえば臭化セチルトリメチルアンモニウムまたは「CTAB」(たとえばセトリミド)、塩化ベンザルコニウム、DDA(臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、およびDOTAP(ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン)を含む。陰イオン界面活性剤は、中でも特に、たとえばSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)、DSS(ジスルホスクシネート)、および硫酸化脂肪アルコールを含む。非イオン界面活性剤は、中でも特に、たとえばPVA(ポリビニルアルコール)、ポビドン(ポリビニルピロリドンまたはPVPとしても知られる)、ソルビタンエステル、ポリソルベート、ポリオキシエチル化グリコールモノエステル、ポリオキシエチル化アルキルフェノール、およびポロキサマーを含む。
【0088】
本発明に従った組成物は、極めて多様な量の界面活性剤を含み得る。一般に、界面活性剤の量は、許容されるナノ粒子懸濁(および凍結乾燥後の再懸濁)を促進するために有効である。界面活性剤対生分解性ポリマーの重量比は、数ある比率の中でも特に、たとえば0.001:1未満から0.5:1またはそれ以上まで、たとえば0.005:1−0.1:1の範囲にわたり得る。一般にイオン性界面活性剤は非イオン界面活性剤よりも低い比率で使用される。
【0089】
3.凍結保護剤
上述したように、凍結保護剤は、本発明に従った凍結乾燥組成物を再懸濁したときに実質的なナノ粒子凝集が起こるのを防ぐために添加し得る。
【0090】
一般的な凍結保護剤は、(a)中でも特にグルタミン酸およびアルギニンなどのアミノ酸;(b)エチレングリコールなどのジオール、1,2−プロピレングリコールおよび1,3−プロピレングリコールなどのプロパンジオール、および、中でも特に2,3−ブチレングリコールなどのブタンジオール、中でも特にグリセロールなどのトリオール、ならびに他のより高いポリオールを含む、ポリオール;および(c)たとえば(i)単糖(たとえば、中でも特にグルコース、ガラクトースおよびフルクトース)、(ii)二糖(たとえば、中でも特にスクロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、ゲンチオビオースおよびセロビオースなど)、三糖(たとえば、中でも特にラフィノース)、四糖(たとえば、中でも特にスタキオース)、および五糖(ベルバスコースなど)、ならびに数多くの他のより高い多糖を含む、多糖、および(iii)中でも特にキシリトール、ソルビトールおよびマンニトールなどのアルジトール(これに関して、アルジトールは炭水化物であると同時に、より高いポリオールである)、を含む炭水化物を包含する。
【0091】
本発明に従った組成物は、本発明の凍結乾燥組成物を再懸濁したときに実質的なナノ粒子凝集が起こるのを防ぐために有効な量に依存して、極めて多様な量の凍結保護剤を含有し得る。界面活性剤対生分解性ポリマーの重量比は、中でも特に、たとえば0.01:1未満から0.5:1またはそれ以上まで、たとえば0.05:1−0.1:1の範囲にわたり得る。
【0092】
4.抗原
本発明の組成物は、各々が有効量(たとえば本発明に従った治療、予防または診断方法における使用のために有効な量)である1またはそれ以上の抗原を含む。たとえば本発明の組成物は、以下に列挙する病原体のいずれかによって引き起こされる感染を治療するまたは予防するために使用し得る。
【0093】
本発明に関する使用のための抗原は、以下に示す抗原、あるいは以下に示す病原体の1またはそれ以上に由来する抗原の1またはそれ以上を含むが、これらに限定されない。
【0094】
A.細菌抗原
本発明における使用に適する細菌抗原は、細菌から単離され得る、精製され得るまたは細菌に由来し得るタンパク質、多糖、リポ多糖および外膜小胞を含む。加えて、細菌抗原は細菌溶解産物および不活性化細菌製剤を含む。細菌抗原は組換え発現によって生産できる。細菌抗原は、好ましくはその生活環の少なくとも1つの段階の間に細菌の表面に曝露されるエピトープを含む。細菌抗原は、好ましくは多数の血清型にわたって保存されている。細菌抗原は、以下に示す細菌の1またはそれ以上に由来する抗原ならびに以下で特定する特異抗原の例を包含する。
【0095】
髄膜炎菌:髄膜炎菌抗原は、A、C、W135、Yおよび/またはBなどの髄膜炎菌血清群から精製されるまたはそれらに由来するタンパク質(国際公開公報第WO99/24578号;同第WO99/36544号;同第WO99/57280号;同第WO00/22430号;Tettelinら(2000)Science 287:1809−1815;国際公開公報第WO96/29412号;およびPizzaら(2000)Science 287:1816−1820の中で特定されるものなど)、糖(多糖、オリゴ糖またはリポ多糖を含む)、または外膜小胞(国際公開公報第WO01/52885号;Bjuneら(1991)Lancet 338(8775):1093−1096;Fuskasawaら(1999)Vaccine 17:2951−2958;およびRosenqistら(1998)Dev.Biol.Strand 92:323−333)を含む。髄膜炎菌タンパク質抗原は、接着タンパク質、自己輸送体、毒素、鉄獲得タンパク質、および膜関連タンパク質(好ましくは内在性外膜タンパク質)から選択できる。
【0096】
肺炎連鎖球菌:肺炎連鎖球菌抗原は、肺炎連鎖球菌抗原からの糖(多糖またはオリゴ糖を含む)および/またはタンパク質を含む。糖抗原は、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび33Fから選択できる。タンパク質抗原は、国際公開公報第WO98/18931号;同第WO98/18930号;米国特許第6,699,703号;同第6,800,744号;国際公開公報第WO97/43303号;および同第WO97/37026号において特定されるタンパク質から選択できる。肺炎連鎖球菌タンパク質は、ポリヒスチジントリアドファミリー(PhtX)、コリン結合タンパク質ファミリー(CbpX)、トランケート型CbpX、LytXファミリー、トランケート型LytX、トランケート型CbpX−トランケート型LytXキメラタンパク質、ニューモリシン(Ply)、PspA、PsaA、Sp128、Sp101、Sp130、Sp125またはSp133から選択できる。
【0097】
化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌):A群連鎖球菌抗原は、国際公開公報第WO02/34771号および同第WO2005/032582号(GAS40を含む)において特定されるタンパク質、GAS Mタンパク質のフラグメントの融合物(国際公開公報第WO02/094851号;およびDale(1999)Vaccine 17:193−200、およびDale(1996)Vaccine 14(10):944−948に述べられているものを含む)、フィブロネクチン結合タンパク質(Sfb1)、連鎖球菌ヘム関連タンパク質(Shp)、およびストレプトリシンS(SagA)を含む。
【0098】
Moraxella catarrhalis:モラクセラ属抗原は、国際公開公報第WO02/18595号;および同第WO99/58562号において特定される抗原、外膜タンパク質抗原(HMW−OMP)、C抗原および/またはLPSを含む。
【0099】
百日咳菌:百日咳抗原は、場合によりペルタクチンおよび/またはアグルチノーゲン2および3抗原と組み合わせた、百日咳ホロ毒素(PT)および百日咳菌からの線維状赤血球凝集素(FHA)を含む。
【0100】
黄色ブドウ球菌:黄色ブドウ球菌抗原は、StaphVAX(商標)などの、場合により非毒性組換え緑膿菌体外毒素Aに複合された黄色ブドウ球菌5型および8型莢膜多糖、および表面タンパク質に由来する抗原、インベイシン(ロイコシジン、キナーゼ、ヒアルロニダーゼ)、食細胞貪食を阻害する表面因子(莢膜、プロテインA)、カロチノイド、カタラーゼ産生、プロテインA、コアグラーゼ、凝固因子、および真核細胞膜を溶解する膜傷害毒素(場合により無毒化された)(溶血素、ロイコトキシン、ロイコシジン)を含む。
【0101】
表皮ブドウ球菌:表皮ブドウ球菌抗原は、粘液関連抗原(SAA)を含む。
【0102】
破傷風菌(破傷風):破傷風抗原は、好ましくは本発明の組成物と共に/本発明の組成物と複合した輸送タンパク質として使用される、破傷風トキソイド(TT)を含む。
【0103】
ジフテリア菌(ジフテリア):ジフテリア抗原は、CRM197などの、好ましくは無毒化された、ジフテリア毒素を含む。加えて、ADPリボシル化を調節するまたは阻害するまたはADPリボシル化に関連する抗原が、本発明の組成物との組合せ/同時投与/複合のために考慮される。ジフテリアトキソイドは輸送タンパク質として使用し得る。
【0104】
インフルエンザ菌B型(Hib):Hib抗原は、Hib糖抗原を含む。
【0105】
緑膿菌:シュードモナス属抗原は、内毒素A、Wzzタンパク質、緑膿菌LPS、より詳細にはPAO1(O5血清型)から単離されるLPS、および外膜タンパク質F(OprF)を含む外膜タンパク質(Priceら(2001)Infect Immun.69(5):3510−3515)を含む。
【0106】
Legionella pneumophila:細菌抗原は、Legionella pneumophilaに由来し得る。
【0107】
Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌):B群連鎖球菌抗原は、国際公開公報第02/34771号;同第03/093306号;同第04/041157号;および同第2005/002619号において特定されるもののような、タンパク質または糖抗原(タンパク質GBS59、GBS67、GBS80、GBS104、GBS276、GBS322を含み、および血清型Ia、Ib、Ia/c、II、III、IV、V、VI、VIIおよびVIIIに由来する糖抗原を含む)を含む。
【0108】
淋菌:淋病抗原は、PorBなどのPor(またはポーリン)タンパク質(たとえばZhuら(2004)Vaccine 22:660−669参照)、TbpAおよびTbpBなどのトランスフェリン結合タンパク質(たとえばPriceら(2004)Infect.Immun.71(1):277−283参照)、不透過性タンパク質(opacity protein)(Opaなど)、還元調節性タンパク質(Rmp)、および外膜小胞(OMV)製剤(たとえばPlanteら(2000)J.Infect.Dis.182:848−855;国際公開公報第WO99/24578号;同第WO99/36544号;同第WO99/57280号;および同第WO02/079243号参照)を含む。
【0109】
トラコーマクラミジア:トラコーマクラミジア抗原は、血清型A、B、BaおよびC(トラコーマの病原因子、失明の原因)、血清型L、LおよびL(性病性リンパ肉芽腫に関連する)、および血清型D−Kに由来する抗原を含む。トラコーマクラミジア抗原はまた、PepA(CT045)、LcrE(CT089)、ArtJ(CT381)、DnaK(CT396)、CT398、OmpH様(CT242)、L7/L12(CT316)、OmcA(CT444)、AtosS(CT467)、CT547、Eno(CT587)、HrtA(CT823)、MurG(CT761)、CT396およびCT761を含む、国際公開公報第WO00/37494号;同第WO03/049762号;同第WO03/068811号;および同第WO05/002619号において特定される抗原、およびこれらの抗原の特定の組合せを含む。
【0110】
梅毒トレポネーマ(梅毒):梅毒抗原はTmpA抗原を含む。
【0111】
軟性下疳菌(軟性下疳を引き起こす):デュクレー抗原は、外膜タンパク質(DsrA)を含む。
【0112】
Enterococcus faecalisまたはEnterococcus faecium:抗原は、三糖反復単位および米国特許第6,756,361号において提供される他のエンテロコッカス属由来の抗原を含む。
【0113】
ピロリ菌:ピロリ菌抗原は、Cag、Vac、Nap、HopX、HopYおよびウレアーゼ抗原を含む。
【0114】
腐性ブドウ球菌:抗原は、腐性ブドウ球菌抗原の160kDa赤血球凝集素を含む。
【0115】
Yersinia enterocolitica:抗原は、LPS(Xuら(2002)Infect.Immun.70(8):4414−4423)を含む。
【0116】
大腸菌:大腸菌抗原は、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)、腸管凝集性大腸菌(EAggEC)、分散接着性大腸菌(DAEC)、腸管病原性大腸菌(EPEC)または腸管出血性大腸菌(EHEC)に由来し得る。
【0117】
炭疽菌(炭疽):炭疽菌抗原は、場合により無毒化され、A成分(どちらも、防御抗原(PA)として知られる共通のB成分を共有し得る、致死因子(LF)および浮腫因子(EF))から選択され得る。ある実施形態では、本発明の組成物は炭疽抗原を含まない。
【0118】
ペスト菌(ペスト):ペスト抗原は、F1莢膜抗原((Gosfeldら(2003)Infect.Immun.71(1)):374−383)、LPS(Fieldsら(1999)Infect.Immun.67(10):5395−5408)、ペスト菌V抗原(Hillら(1997)Infect.Immun.65(11):4476−4482)を含む。
【0119】
ヒト結核菌:結核抗原は、リポタンパク質、LPS、BCG抗原、場合により陽イオン性脂質小胞中に製剤された抗原85B(Ag85B)とESAT−6の融合タンパク質(Olsenら(2004)Infect.Immun.72(10):6148−6150)、ヒト結核菌(Mtb)イソクエン酸デヒドロゲナーゼ関連抗原(Banerjeeら(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12652−12657)、およびMPT51抗原(Suzukiら(2004)Infect.Immun.72(7):3829−3837)を含む。
【0120】
リケッチア:抗原は、外膜タンパク質Aおよび/またはB(OmpB)(Chaoら(2004)Biochim.Biophys.Acta.1702(2):145−152)を含む外膜タンパク質、LPS、および表面タンパク質抗原(SPA)(Carlら(1989)J.Autoimmun.2 Suppl:81−91)を含む。
【0121】
リステリア菌:細菌抗原はリステリア菌に由来し得る。
【0122】
Chlamydia pneumoniae:抗原は、CPn0324、Cpn0301、Cpn0482、Cpn0503、Cpn0525、Cpn0558、Cpn0584、Cpn0800、Cpn0979、Cpn0498、Cpn0300、Cpn0042、Cpn0013、Cpn450、Cpn0661、Cpn0557、Cpn0904、Clpn0795、Cpn0186およびCpn0604を含む、国際公開公報第WO02/02606号および同第WO05/084306号において特定されるもの、およびこれらの抗原の特定の組合せを含む。
【0123】
コレラ菌:抗原は、プロテイナーゼ抗原、LPS、特にコレラ菌IIのリポ多糖、O1 Inaba O特異的多糖、コレラ菌O139、IEM108ワクチンの抗原(Liangら(2003)Infect.Immun.71(10):5498−5504)、および閉鎖帯毒素(Zot)を含む。
【0124】
腸チフス菌(腸チフス):抗原は、莢膜多糖、好ましくは複合体(Vi、すなわちvax−TyVi)を含む。
【0125】
Borrelia burgdorferi(ライム病):抗原は、リポタンパク質(OspA、OspB、OspCおよびOspDなど)、OspE関連タンパク質(Erps)などの他の表面タンパク質、デコリン結合タンパク質(DbpAなど)、およびP39およびP13に関連する抗原などの抗原多様性VIタンパク質(内在性膜タンパク質、Noppaら(2001)Infect.Immun.69(5):3323−3334)、VlsE抗原性変異タンパク質(Lawrenzら(1999)J.Clin.Microbiol.37(12):3997−4004)を含む。
【0126】
Porphyromonas gingivalis:抗原は、P.gingivalis外膜タンパク質(OMP)を含む。
【0127】
Klebsiella:抗原は、OMP Aを含むOMP、および場合により破傷風トキソイドに複合された多糖を含む。
【0128】
他の細菌抗原は、上記のいずれかの莢膜抗原、多糖抗原またはタンパク質抗原を含む。さらなる細菌抗原はまた、外膜小胞(OMV)製剤を含む。加えて、抗原は、上記細菌のいずれかの生、弱毒化および/または精製形態を含む。抗原は、グラム陰性またはグラム陽性菌に由来し得る。抗原は、好気性または嫌気性細菌に由来し得る。
【0129】
加えて、上記細菌由来の糖(多糖、LPS、LOSまたはオリゴ糖)のいずれもが、輸送タンパク質(たとえばCRM197)などのもう1つ別の物質または抗原に複合することができる。そのような複合は、米国特許第5,360,897号;およびRoyら(1984)Can.J.Biochem.Cell Biol.62(5):270−275において提供されるような、糖鎖上のカルボニル部分の、タンパク質上のアミノ基への還元的アミノ化によって実施される直接複合であり得る。もう1つの実施形態では、糖は、リンカーを通して、たとえばスクシンアミドで、またはHermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,第1版、Academic Press (1996)およびWong,S.S.,CRC,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,第1版、CRC−Press(1991)において提供される他の結合を通して複合され得る。
【0130】
B.ウイルス抗原
本発明における使用に適するウイルス抗原は、不活性化(または死滅)ウイルス、弱毒化ウイルス、スプリットウイルス製剤、精製サブユニット製剤、ウイルスから単離、精製または誘導され得るウイルスタンパク質、およびウイルス様粒子(VLP)を含む。ウイルス抗原は、細胞培養または他の基質で増殖させたウイルスまたは組換え発現させたウイルスに由来し得る。ウイルス抗原は、好ましくはその生活環の少なくとも1つの段階の間にウイルスの表面に曝露されるエピトープを含む。ウイルス抗原は、好ましくは多数の血清型または単離物にわたって保存されている。ウイルス抗原は、以下に示すウイルスの1またはそれ以上に由来する抗原ならびに以下で特定する特異抗原の例を含む。
【0131】
オルトミクソウイルス:ウイルス抗原は、インフルエンザA、BおよびC型などのオルトミクソウイルスに由来し得る。オルトミクソウイルス抗原は、赤血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、ヌクレオタンパク質(NP)、基質タンパク質(M1)、膜タンパク質(M2)、1またはそれ以上の転写酵素成分(PB1、PB2およびPA)を含む、ウイルスタンパク質の1またはそれ以上から選択され得る。好ましい抗原はHAおよびNAを含む。
【0132】
インフルエンザ抗原は、汎流行間期(毎年)のインフルエンザ菌株に由来し得る。インフルエンザ抗原は、汎流行性発生を引き起こす潜在的可能性を有する菌株(すなわち現在流行中である菌株における赤血球凝集素と比較して新しい赤血球凝集素を有するインフルエンザ菌株、または鳥類において病原性であり、ヒト母集団において水平伝播する潜在的可能性を有するインフルエンザ菌株、またはヒトに対して病原性であるインフルエンザ菌株)に由来し得る。インフルエンザ抗原は、卵または細胞培養において増殖するウイルスに由来し得る。
【0133】
パラミクソウイルス科ウイルス:ウイルス抗原は、肺炎ウイルス属(RSV)、パラミクソウイルス属(PIV)および麻疹ウイルス属(麻疹)などのパラミクソウイルス科ウイルスに由来し得る。
【0134】
肺炎ウイルス:ウイルス抗原は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ウシRSウイルス、マウス肺炎ウイルス、およびシチメンチョウ鼻気管炎ウイルスなどの肺炎ウイルスに由来し得る。好ましくは、肺炎ウイルスはRSVである。肺炎ウイルス抗原は、以下のタンパク質:表面タンパク質融合物(F)、糖タンパク質(G)および低分子疎水性タンパク質(SH)、基質タンパク質MおよびM2、ヌクレオキャプシドタンパク質N、PおよびL、および非構造タンパク質NS1およびNS2の1またはそれ以上から選択され得る。好ましい肺炎ウイルス抗原は、F、GおよびMを含む。たとえばJohnstoneら(2004)J.Gen.Virol.85(Pt11):3229−3238参照。肺炎ウイルス抗原はまた、キメラウイルスにおいて製剤し得るまたはキメラウイルスに由来し得る。たとえばキメラRSV/PIVウイルスは、RSVとPIVとの両方の成分を含み得る。
【0135】
パラミクソウイルス:ウイルス抗原は、パラインフルエンザウイルス1−4型(PIV)、流行性耳下腺炎ウイルス、センダイウイルス、シミアンウイルス5、ウシパラインフルエンザウイルスおよびニューカッスル病ウイルス等のパラミクソウイルスに由来し得る。好ましくは、パラミクソウイルスはPIVまたは流行性耳下腺炎ウイルスである。パラミクソウイルス抗原は、以下のタンパク質:赤血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)、融合タンパク質F1およびF2、ヌクレオタンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、大型タンパク質(L)および基質タンパク質(M)の1またはそれ以上から選択され得る。好ましいパラミクソウイルスタンパク質は、HN、F1およびF2を含む。パラミクソウイルス抗原はまた、キメラウイルスにおいて製剤し得るまたはキメラウイルスに由来し得る。たとえばキメラRSV/PIVウイルスは、RSVとPIVとの両方の成分を含み得る。市販されている流行性耳下腺炎ワクチンは、一価形態のまたは麻疹および風疹ワクチンと組み合わせた(MMR)、生弱毒化流行性耳下腺ウイルスを含む。
【0136】
麻疹ウイルス:ウイルス抗原は、麻疹などの麻疹ウイルス属に由来し得る。麻疹ウイルス抗原は、以下のタンパク質:赤血球凝集素(H)、糖タンパク質(G)、融合因子(F)、大型タンパク質(L)、ヌクレオタンパク質(NP)、ポリメラーゼリンタンパク質(P)、および基質タンパク質(M)の1またはそれ以上から選択され得る。市販されている麻疹ワクチンは、典型的には流行性耳下腺炎および風疹ワクチンと組み合わせた(MMR)、生弱毒化麻疹ウイルスを含む。
【0137】
ピコルナウイルス:ウイルス抗原は、エンテロウイルス、ライノウイルス、ヘパルナウイルス、カルジオウイルスおよびアフトウイルスなどのピコルナウイルス属に由来し得る。ポリオウイルスなどのエンテロウイルスに由来する抗原が好ましい。
【0138】
エンテロウイルス:ウイルス抗原は、ポリオウイルス1、2または3型、コクサッキーAウイルス1−22および24型、コクサッキーBウイルス1−6型、エコーウイルス(ECHO)1−9、11−27および29−34型、ならびにエンテロウイルス68−71型などのエンテロウイルスに由来し得る。好ましくは、エンテロウイルスはポリオウイルスである。エンテロウイルス抗原は、好ましくはキャプシドタンパク質VP1、VP2、VP3およびVP4の1またはそれ以上から選択される。市販されているポリオワクチンは、不活性化ポリオワクチン(IPV)および経口ポリオウイルスワクチン(OPV)を含む。
【0139】
ヘパルナウイルス:ウイルス抗原は、A型肝炎ウイルス(HAV)などのヘパルナウイルスに由来し得る。市販されているHAVワクチンは、不活性化HAVワクチンを含む。
【0140】
トガウイルス:ウイルス抗原は、ルビウイルス、アルファウイルスまたはアルテリウイルスなどのトガウイルスに由来し得る。風疹ウイルスなどのルビウイルスに由来する抗原が好ましい。トガウイルス抗原は、E1、E2、E3、C、NSP−1、NSPO−2、NSP−3またはNSP−4から選択され得る。トガウイルス抗原は、好ましくはE1、E2またはE3から選択される。市販されている風疹ワクチンは、典型的には流行性耳下腺炎および麻疹ワクチンと組み合わせた(MMR)、生低温適合性ウイルスを含む。
【0141】
フラビウイルス:ウイルス抗原は、ダニ媒介脳炎(TBE)、デング熱(1、2、3または4型)、黄熱病、日本脳炎、西ナイル脳炎、セントルイス脳炎、ロシア春夏脳炎、ポーワッサン脳炎などのフラビウイルスに由来し得る。フラビウイルス抗原は、PrM、M、C、E、NS−1、NS−2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4bおよびNS5から選択され得る。フラビウイルス抗原は、好ましくはPrM、MおよびEから選択される。市販されているTBEワクチンは、不活性化ウイルスワクチンを含む。
【0142】
ペスチウイルス:ウイルス抗原は、ウシのウイルス性下痢(BVDV)、古典的豚コレラ(CSFV)またはボーダー病(BDV)などのペスチウイルスに由来し得る。
【0143】
ヘパドナウイルス:ウイルス抗原は、B型肝炎ウイルスなどのヘパドナウイルスに由来し得る。ヘパドナウイルス抗原は、表面抗原(L、MおよびS)、コア抗原(HBc、HBe)から選択され得る。市販されているHBVワクチンは、表面抗原Sタンパク質を含有するサブユニットワクチンを含む。
【0144】
C型肝炎ウイルス:ウイルス抗原は、C型肝炎ウイルス(HCV)に由来し得る。HCV抗原は、E1、E2、E1/E2、NS345ポリタンパク質、NS345コアポリタンパク質、コア、および/または非構造領域からのペプチドの1またはそれ以上から選択され得る(Houghtonら(1991)Hepatology 14:381−388)。
【0145】
ラブドウイルス:ウイルス抗原は、リッサウイルス(狂犬病ウイルス)およびベシクロウイルス(VSV)などのラブドウイルスに由来し得る。ラブドウイルス抗原は、糖タンパク質(G)、ヌクレオタンパク質(N)、大型タンパク質(L)および非構造タンパク質(NS)から選択され得る。市販されている狂犬病ウイルスワクチンは、ヒト二倍体細胞または胎仔アカゲザル肺細胞で増殖させた死滅ウイルスを含む。
【0146】
カルシウイルス科ウイルス:ウイルス抗原は、ノーウォークウイルス、およびハワイウイルスやスノーマウンテンウイルスなどのノーウォーク様ウイルスのようなカルシウイルス科に由来し得る。
【0147】
コロナウイルス:ウイルス抗原は、コロナウイルス、SARS、ヒト呼吸器コロナウイルス、鳥類伝染性気管支炎(IBV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)およびブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)に由来し得る。コロナウイルス抗原は、スパイク(S)、エンベロープ(E)、基質(M)、ヌクレオキャプシド(N)タンパク質、および赤血球凝集素エステラーゼ糖タンパク質(HE)から選択され得る。好ましくは、コロナウイルス抗原はSARSウイルスに由来する。SARSウイルス抗原は国際公開公報第WO04/92360号に述べられている。
【0148】
レトロウイルス:ウイルス抗原は、オンコウイルス、レンチウイルスまたはスプマウイルスなどのレトロウイルスに由来し得る。オンコウイルス抗原は、HTLV−1、HTLV−2またはHTLV−5に由来し得る。レンチウイルス抗原は、HIV−1またはHIV−2に由来し得る。レトロウイルス抗原は、gag、pol、env、tax、tat、rex、rev、nef、vif、vpuおよびvprから選択され得る。HIV抗原は、gag(p24gagおよびp55gag)、env(gp160およびgp41)、pol、tat、nef、rev、vpu、ミニタンパク質(好ましくはp55gagおよびgp140v欠失型)から選択され得る。HIV抗原は、以下の菌株:HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV−1CM235、HIV−1US4の1またはそれ以上から選択され得る。
【0149】
レオウイルス:ウイルス抗原は、オルトレオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルスまたはコルチウイルスなどのレオウイルスに由来し得る。レオウイルス抗原は、構造タンパク質λ1、λ2、λ3、μ1、μ2、σ1、σ2またはσ3、あるいは非構造タンパク質σNS、μNSまたはσ1sから選択され得る。好ましいレオウイルス抗原はロタウイルスに由来し得る。ロタウイルス抗原は、VP1、VP2、VP3、VP4(または切断産物VP5およびVP8)、NSP1、VP6、NSP3、NSP2、VP7、NSP4またはNSP5から選択され得る。好ましいロタウイルス抗原は、VP4(または切断産物VP5およびVP8)およびVP7を含む。
【0150】
パルボウイルス:ウイルス抗原は、パルボウイルスB19などのパルボウイルスに由来し得る。パルボウイルス抗原は、VP−1、VP−2、VP−3、NS−1およびNS−2から選択され得る。好ましくは、パルボウイルス抗原はキャプシドタンパク質VP−2である。
【0151】
デルタ型肝炎ウイルス(HDV):ウイルス抗原は、HDV、特にHDVからのδ抗原に由来し得る(たとえば米国特許第5,378,814号参照)。
【0152】
E型肝炎ウイルス(HEV):ウイルス抗原はHEVに由来し得る。
【0153】
G型肝炎ウイルス(HGV):ウイルス抗原はHGVに由来し得る。
【0154】
ヒトヘルペスウイルス:ウイルス抗原は、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)およびヒトヘルペスウイルス8(HHV8)などのヒトヘルペスウイルスに由来し得る。ヒトヘルペスウイルス抗原は、最初期タンパク質(α)、初期タンパク質(β)および後期タンパク質(γ)から選択され得る。HSV抗原は、HSV−1またはHSV−2菌株に由来し得る。HSV抗原は、糖タンパク質gB、gC、gDおよびgH、融合タンパク質(gB)、または免疫回避タンパク質(gC、gEまたはgI)から選択され得る。VZV抗原は、コア、ヌクレオキャプシド、テグメントまたはエンベロープタンパク質から選択され得る。生弱毒化VZVワクチンが市販されている。EBV抗原は、初期抗原(EA)タンパク質、ウイルスキャプシド抗原(VCA)、および膜抗原(MA)の糖タンパク質から選択され得る。CMV抗原は、キャプシドタンパク質、エンベロープ糖タンパク質(gBおよびgHなど)およびテグメントタンパク質から選択され得る。
【0155】
パポバウイルス:抗原は、パピローマウイルスおよびポリオーマウイルスなどのパポバウイルスに由来し得る。パピローマウイルスは、HPV血清型1、2、4、5、6、8、11、13、16、18、31、33、35、39、41、42、47、51、57、58、63および65を含む。好ましくは、HPV抗原は血清型6、11、16または18に由来する。HPV抗原は、キャプシドタンパク質(L1)および(L2)、またはE1−E7、またはそれらの融合物から選択され得る。HPV抗原は、好ましくはウイルス様粒子(VLP)に製剤される。ポリオーマウイルスは、BKウイルスおよびJKウイルスを含む。ポリオーマウイルス抗原は、VP1、VP2またはVP3から選択され得る。
【0156】
本発明における使用のための他の抗原、組成物、方法および微生物は、Plotkin,S.A.ら、Vaccines,第4版、W.B.Saunders Co.(2004);Murray,P.R.ら、Medical Microbiology、第5版、Mosby Elsevier(2005);Joklik,W.K.(編集),Virology,第3版、Appleton & Lange(1988);Howley,P.M.ら(編集),Fundamental Virology,第4版、Lippincott Williams & Wilkins(1991);およびFields,B.N.ら(編集) Fields Virology,第4版、Lippincott Williams & Wilkins(2001)に述べられている。
【0157】
C.真菌抗原
本発明における使用のための真菌抗原は、以下に示す真菌の1またはそれ以上に由来し得る。
【0158】
真菌抗原は、Epidermophyton floccusum、オードアン小胞子菌、イヌ小胞子菌、Microsporum distortum、Microsporum equinum、石膏状小胞子菌、Microsporum nanum、渦状白癬菌、Trichophyton equinum、Trichophyton gallinae、Trichophyton gypseum、Trichophyton megnini、毛瘡白癬菌、Trichophyton quinckeanum、紅色白癬菌、シェーンライン白癬菌、Trichophyton tonsurans、Trichophyton verrucosum、T.verrucosum var.album、var.discoides、var.ochraceum、紫色白癬菌および/またはTrichophyton faviformeを含む、皮膚糸状菌に由来し得る。
【0159】
真菌病原体は、Aspergillus fumigatus、黄色アスペルギルス、黒色アスペルギルス、Aspergillus nidulans、Aspergillus terreus、Aspergillus sydowi、Aspergillus flavatus、Aspergillus glaucus、Blastoschizomyces capitatus、鵞口瘡カンジダ、Candida enolase、Candida tropicalis、Candida glabrata、Candida krusei、Candida parapsilosis、Candida stellatoidea、Candida kusei、Candida parakwsei、Candida lusitaniae、Candida pseudotropicalis、Candida guilliermondi、Cladosporium carrionii、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatidis、Cryptococcus neoformans、Geotrichum clavatum、Histoplasma capsulatum、肺炎杆菌、Paracoccidioides brasiliensis、ニューモシスティス・カリニ、Pythiumn insidiosum、Pityrosporum ovale、Sacharomyces cerevisae、Saccharomyces boulardii、Saccharomyces pombe、Scedosporium apiosperum、Sporothrix schenckii、Trichosporon beigelii、トキソプラスマ、Penicillium marneffei、マラセジア属、フォンセセア属、Wangiella属、スポロトリクス属、バシディオボールス属、コニディオボルス属、クモノスカビ属、ケカビ属、アブシディア属、モルティエラ属、Cunninghamella属、Saksenaea属、アルテルナリア属、Curvularia属、ヘルミントスポリウム属、フザリウム属、アスペルギルス属、ペニシリウム属、モノリニア種、Rhizoctonia属、ペシロミセス属、Pithomyces属およびクラドスポリウム属に由来し得る。
真菌抗原を生産するための方法は当技術分野において周知である(米国特許第6,333,164号参照)。好ましい方法では、細胞壁が実質的に除去されたまたは少なくとも部分的に除去された真菌細胞から入手し得る不溶性分画から可溶化分画を抽出して分離し、前記方法は、生真菌細胞を得ること;細胞壁が実質的に除去されたまたは少なくとも部分的に除去された真菌細胞を得ること;細胞壁が実質的に除去されたまたは少なくとも部分的に除去された真菌細胞を破裂させること;不溶性分画を得ること;および不溶性分画から可溶化分画を抽出して分離すること、の工程を含むことを特徴とする。
【0160】
D.STD抗原
本発明の組成物は、性感染症(STD)に由来する1またはそれ以上の抗原を含み得る。そのような抗原は、クラミジア、陰部ヘルペス、肝炎(HCVなど)、性器いぼ、淋病、梅毒および/または軟性下疳(国際公開公報第WO00/15255号参照)などのSTDに対する予防または治療を提供し得る。抗原は、1またはそれ以上のウイルスまたは細菌STDに由来し得る。本発明における使用のためのウイルスSTD抗原は、たとえばHIV、単純ヘルペスウイルス(HSV−1およびHSV−2)、ヒトパピローマウイルス(HPV)および肝炎(HCV)に由来し得る。本発明における使用のための細菌STD抗原は、たとえば淋菌、トラコーマクラミジア、梅毒トレポネーマ、軟性下疳菌、大腸菌およびStreptococcus agalactiaeに由来し得る。これらの病原体に由来する特異抗原の例は上述されている。
【0161】
E.呼吸器系抗原
本発明の組成物は、呼吸器系疾患を引き起こす病原体に由来する1またはそれ以上の抗原を含み得る。たとえば呼吸器系抗原は、オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、VZVおよびコロナウイルス(SARS)などの呼吸器系ウイルスに由来し得る。呼吸器系抗原は、肺炎連鎖球菌、緑膿菌、百日咳菌、ヒト結核菌、肺炎マイコプラスマ、Chlamydia pneumoniae、炭疽菌およびMoraxella catarrhalisなどの、呼吸器疾患を引き起こす細菌に由来し得る。これらの病原体に由来する特異抗原の例は上述されている。
【0162】
F.小児用ワクチン抗原
本発明の組成物は、小児被験体における使用に適する1またはそれ以上の抗原を含み得る。小児被験体は、典型的には約3歳未満、または約2歳未満、または約1歳未満である。小児用抗原は、6ヶ月、1、2または3年間にわたって複数回投与され得る。小児用抗原は、小児個体群を標的し得るウイルスおよび/または小児個体群が感染しやすいウイルスに由来し得る。小児用ウイルス抗原は、オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIVおよび流行性耳下腺炎)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、および水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)の1またはそれ以上に由来する抗原を含む。小児用細菌抗原は、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、Moraxella catarrhalis、百日咳菌、黄色ブドウ球菌、破傷風菌(破傷風)、ジフテリア菌(ジフテリア)、インフルエンザ菌B型(Hib)、緑膿菌、Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)および大腸菌の1またはそれ以上に由来する抗原を含む。これらの病原体に由来する特異抗原の例は上述されている。
【0163】
G.高齢者または免疫無防備状態個体における使用に適する抗原
本発明の組成物は、高齢者または免疫無防備状態個体における使用に適する1またはそれ以上の抗原を含み得る。そのような個体は、標的抗原に対する免疫応答を改善するためにより頻繁に、より高用量でまたはアジュバント添加製剤でワクチン接種する必要があり得る。高齢者または免疫無防備状態個体における使用のために標的し得る抗原は、以下の病原体の1またはそれ以上に由来する抗原を含む:髄膜炎菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、Moraxella catarrhalis、百日咳菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、破傷風菌(破傷風)、ジフテリア菌(ジフテリア)、インフルエンザ菌B型(Hib)、緑膿菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)、Enterococcus faecalis、ピロリ菌、Clamydia pneumoniae、オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIVおよび流行性耳下腺炎)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)。これらの病原体に由来する特異抗原の例は上述されている。
【0164】
H.青年用ワクチンにおける使用に適する抗原
本発明の組成物は、青年期被験体における使用に適する1またはそれ以上の抗原を含み得る。青年は、以前に投与された小児用抗原の追加免疫を必要とし得る。青年における使用に適すると考えられる小児用抗原は上述されている。加えて、青年は、性活動の開始前に防御または治療免疫を確実にするためにSTD病原体に由来する抗原を受容する標的であり得る。青年における使用に適し得るSTD抗原は上述されている。
【0165】
I.腫瘍抗原
本発明の組成物は、1またはそれ以上の腫瘍または癌抗原を含み得る。腫瘍抗原は、たとえばポリペプチド腫瘍抗原または糖タンパク質腫瘍抗原などのペプチド含有腫瘍抗原であり得る。腫瘍抗原はまた、たとえば、糖脂質腫瘍抗原またはガングリオシド腫瘍抗原などの糖含有腫瘍抗原であり得る。腫瘍抗原はさらに、たとえば、ポリペプチド含有腫瘍抗原、たとえばRNAベクター構築物またはプラスミドDNAなどのDNAベクター構築物を発現するポリヌクレオチド含有腫瘍抗原であり得る。
【0166】
腫瘍抗原は、(a)ポリペプチド(たとえば8−20アミノ酸長にわたり得るが、この範囲外の長さも一般的である)、リポポリペプチドおよび糖タンパク質を含む、ポリペプチド含有腫瘍抗原、(b)多糖、ムチン、ガングリオシド、糖脂質および糖タンパク質を含む、糖含有腫瘍抗原、および(c)抗原性ポリペプチドを発現するポリヌクレオチドを含む。
【0167】
腫瘍抗原は、たとえば(a)癌細胞に関連する完全長分子、(b)欠失、付加および/または置換部分を有する分子を含む、前記完全長分子のホモログおよび修飾形態、および(c)前記完全長分子のフラグメントであり得る。腫瘍抗原は組換え形態で提供され得る。腫瘍抗原は、たとえばCD8+リンパ球によって認識されるクラスI拘束性抗原またはCD4+リンパ球によって認識されるクラスII拘束性抗原を含む。
【0168】
以下を含む、数多くの腫瘍抗原が当技術分野において公知である:(a)NY−ESO−1、SSX2、SCP1などの癌精巣抗原ならびにRAGE、BAGE、GAGEおよびMAGEファミリーポリペプチド、たとえばGAGE−1、GAGE−2、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−4、MAGE−5、MAGE−6およびMAGE−12(たとえば黒色腫、肺、頭頸部、NSCLC、乳房、胃腸および膀胱腫瘍に対して使用できる)、(b)突然変異抗原、たとえばp53(様々な固形腫瘍、たとえば結腸直腸、肺、頭頸部癌に関連する)、p21/Ras(たとえば黒色腫、膵癌および結腸直腸癌に関連する)、CDK4(たとえば黒色腫に関連する)、MUM1(たとえば黒色腫に関連する)、カスパーゼ−8(たとえば頭頸部癌に関連する)、CIA0205(たとえば膀胱癌に関連する)、HLA−A2−R1701、βカテニン(たとえば黒色腫に関連する)、TCR(たとえばT細胞非ホジキンリンパ腫に関連する)、BCR−abl(たとえば慢性骨髄性白血病に関連する)、トリオースリン酸イソメラーゼ、KIA0205、CDC−27およびLDLR−FUT、(c)過剰発現抗原、たとえばガレクチン4(たとえば結腸直腸癌に関連する)、ガレクチン9(たとえばホジキン病に関連する)、プロテイナーゼ3(たとえば慢性骨髄性白血病に関連する)、WT1(たとえば様々な白血病に関連する)、カルボニックアンヒドラーゼ(たとえば腎癌に関連する)、アルドラーゼA(たとえば肺癌に関連する)、PRAME(たとえば黒色腫に関連する)、HER−2/neu(たとえば乳房、結腸、肺および卵巣癌に関連する)、αフェトプロテイン(たとえば肝細胞癌に関連する)、KSA(たとえば結腸直腸癌に関連する)、ガストリン(たとえば膵癌および胃癌に関連する)、テロメラーゼ触媒タンパク質、MUC−1(たとえば乳癌および卵巣癌に関連する)、G−250(たとえば腎細胞癌に関連する)、p53(たとえば乳癌、結腸癌に関連する)、および癌胎児性抗原(たとえば乳癌、肺癌、および結腸直腸癌などの胃腸管の癌に関連する)、(d)共有抗原、たとえばMART−1/Melan Aなどの黒色腫−メラノサイト分化抗原、gp100、MC1R、メラノサイト刺激ホルモン受容体、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−1/TRP1およびチロシナーゼ関連タンパク質−2/TRP2(たとえば黒色腫に関連する)、(e)たとえば前立腺癌に関連する、PAP、PSA、PSMA、PSH−P1、PSM−P1、PSM−P2などの前立腺関連抗原、(f)免疫グロブリンイディオタイプ(たとえば骨髄腫およびB細胞リンパ腫に関連する)、および(g)(i)シアリルTnおよびシアリルLe(たとえば乳癌および結腸直腸癌に関連する)ならびに様々なムチンなどの糖タンパク質;糖タンパク質は輸送タンパク質に結合していてもよい(たとえばMUC−1はKLHに結合し得る);(ii)リポポリペプチド(たとえば脂質部分に連結されたMUC−1);(iii)輸送タンパク質に(たとえばKLHに)結合していてもよい、多糖(たとえばGlobo H合成六糖);(iv)輸送タンパク質(たとえばKLH)に結合していてもよい、GM2、GM12、GD2、GD3などのガングリオシド(たとえば脳、肺癌、黒色腫に関連する)を含む、ポリペプチドおよび糖含有抗原などの他の腫瘍抗原。
【0169】
他の腫瘍抗原は、p15、Hom/Mel−40、H−Ras、E2A−PRL、H4−RET、IGH−IGK、MYL−RAR、エプスタインバーウイルス抗原、EBNA、E6およびE7を含むヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、B型およびC型肝炎ウイルス抗原、ヒトTリンパ球向性ウイルス抗原、TSP−180、p185erbB2、p180erbB−3、c−met、mn−23H1、TAG−72−4、CA19−9、CA72−4、CAM17.1、NuMa、K−ras、p16、TAGE、PSCA、CT7、43−9F、5T4、791Tgp72、β−HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15−3(CA27.29/BCAA)、CA195、CA242、CA−50、CAM43、CD68/KP1、CO−029、FGF−5、Ga733(EpCAM)、HTgp−175、M344、MA−50、MG7−Ag、MOV18、NB/70K、NY−CO−1、RCAS1、SDCCAG16、TA−90(Mac−2結合タンパク質/シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPS等を含む。これらならびに他の細胞成分は、たとえば米国特許出願第2002/0007173号およびその中で引用される参考文献に述べられている。
【0170】
本発明に従ったポリヌクレオチド含有抗原は、典型的には上記で列記したようなポリペプチド癌抗原をコードするポリヌクレオチドを含む。好ましいポリヌクレオチド含有抗原は、ポリペプチド癌抗原をインビボで発現することができる、プラスミドベクター(たとえばpCMV)などのDNAまたはRNAベクター構築物を含む。
【0171】
腫瘍抗原は、たとえば突然変異したまたは変化した細胞成分に由来し得る。変化後、細胞成分はもはやそれらの調節機能を果たさず、それ故細胞は制御されない増殖を経験し得る。変化した細胞成分の代表的な例は、ras、p53、Rb、ウィルムス腫瘍遺伝子によってコードされる変化したタンパク質、ユビキチン、ムチン、DCC、APCおよびMCC遺伝子によってコードされるタンパク質、ならびにneu、甲状腺ホルモン受容体、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、インスリン受容体、上皮増殖因子(EGF)受容体およびコロニー刺激因子(CSF)受容体などの受容体または受容体様構造を含む。これらならびに他の細胞成分は、たとえば米国特許第5,693,522号およびその中で引用される参考文献に述べられている。
【0172】
細菌およびウイルス抗原は、癌の治療のために本発明の組成物と共に使用し得る。特に、CRM197などの輸送タンパク質、破傷風トキソイドまたはネズミチフス菌抗原は、癌の治療のために本発明の化合物と共に/本発明の化合物と複合して使用し得る。癌抗原併用療法は、既存の治療法と比較して効果およびバイオアベイラビリティーの上昇を示す。
【0173】
癌または腫瘍抗原に関するさらなる情報は、たとえばMoingeon(2001)Vaccine 19:1305−1326;Rosenberg(2001)Nature 411:380−384;Dermineら(2002)Brit.Med.Bull.62:149−162;Espinoza−Delgado(2002)The Oncologist 7(補遺3):20−33;Davisら(2003)J.Leukocyte Biol.23:3−29;Van den Eyndeら(1995)Curr.Opin.Immunol.7:674−681;Rosenberg(1997)Immunol.Today 18:175−182;Offringaら(2000)Curr.Opin.Immunol.2:576−582;Rosenberg(1999)Immunity 10:281−287;Sahinら(1997)Curr.Opin.Immunol.9:709−716;Oldら(1998)J.Exp.Med.187:1163−1167;Chauxら(1999)J.Exp.Med.189:767−778;Goldら(1965)J.Exp.Med.122:467−468;Livingstonら(1997)Cancer Immunol.Immunother.45:1−6;Livingstonら(1997)Cancer Immunol.Immunother.45:10−19;Taylor−Papadimitriou(1997)Immunol.Today 18:105−107;Zhaoら(1995)J.Exp.Med.182:67−74;Theobaldら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:11993−11997;Gaudernack(1996)Immunotechnology 2:3−9;国際公開公報第WO91/02062号;米国特許第6,015,567号;国際公開公報第WO01/08636号;国際公開公報第WO96/30514号;米国特許第5,846,538号;および米国特許第5,869,445号に認められる。
【0174】
さらなる抗原はまた、外膜小胞(OMV)製剤を含み得る。
【0175】
さらなる製剤方法および抗原(特に腫瘍抗原)は、米国特許出願第2004/0202680号において提供される。米国特許第6,884,435号も参照のこと。
【0176】
J.抗原参考文献
本発明の組成物は、以下の参考文献のいずれかにおいて記述される抗原を含み得る:
【0177】
【化1】

【0178】
【化2】

上記で引用したすべての特許、特許出願および学術論文の内容は、ここで完全に記述されているかのごとくに参照して組み込まれる。
【0179】
5.免疫アジュバントを含む、任意の補助成分
本発明の免疫原性組成物は、極めて多様な任意の補助成分を含み得る。
【0180】
そのような補助成分は、たとえば同じ組成物中でまたは別個の組成物中で、ナノ粒子含有組成物と同時に投与され得る。もう1つの実施形態では、補助成分は、ナノ粒子含有組成物の投与の前または投与の後に投与され得る。同じ組成物中で投与されるとき、補助成分は、ナノ粒子の表面に吸着され得るか、ナノ粒子内に封入され得るか、ナノ粒子に結合しないまま溶液中に溶解または分散し得るか、別の群のナノ粒子に吸着されるかまたはその中に封入され得る、等である。
【0181】
そのような補助成分は以下を含む:(a)抗生物質および抗ウイルス薬、非ステロイド系抗炎症薬、鎮痛薬、血管拡張薬、心臓血管薬、向精神薬、神経弛緩薬、抗うつ薬、抗パーキンソン薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、ブラジキニン阻害薬、ACE阻害薬、血管拡張薬、プロラクチン阻害薬、ステロイド、ホルモン拮抗物質、抗ヒスタミン薬、セロトニン拮抗物質、ヘパリン、化学療法剤、PDGF、EGF、KGF、IGF−1およびIGF−2、FGFを含むがこれらに限定されない抗腫瘍薬および増殖因子などの薬剤、(b)インスリン、プロインスリン、成長ホルモン、GHRH、LHRH、EGF、ソマトスタチン、SNX−111、BNP、インスリノトロピン、ANP、FSH、LH、PSHおよびhCG、性腺ステロイドホルモン(アンドロゲン、エストロゲンおよびプロゲステロン)、甲状腺刺激ホルモン、インヒビン、コレシストキニン、ACTH、CRF、ダイノルフィン、エンドルフィン、エンドセリン、フィブロネクチンフラグメント、ガラニン、ガストリン、インスリノトロピン、グルカゴン、GTP結合タンパク質フラグメント、グアニリン、ロイコキニン、マガイニン、マストパラン、デルマセプチン、システミン、ニューロメジン、ニューロテンシン、パンクレアスタチン、膵ポリペプチド、サブスタンスP、セクレチン、チモシン等のようなペプチドホルモンを含むホルモン、(c)酵素、(d)転写または翻訳メディエイタ、(e)代謝経路における中間体、および(f)インターロイキン1、インターロイキン2、インターロイキン3.インターロイキン4およびγ−インターフェロンを含む様々なサイトカインのいずれかのような、免疫調節剤。
【0182】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は免疫アジュバントを含む。本発明に関する使用のためのアジュバントは、以下に示すものの1またはそれ以上を含むが、これらに限定されない:
A.無機質含有組成物
アジュバントとしての使用に適する無機質含有組成物は、アルミニウム塩およびカルシウム塩などの無機塩を含む。本発明は、水酸化物(たとえばオキシ水酸化物)、リン酸塩(たとえばヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩等のような無機塩(たとえばVaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.とNewman,MJ.編集)(New York:Plenum Press)1995,第8および9章参照)、または種々の無機化合物の混合物(たとえば、場合によりリン酸塩過剰の、リン酸塩と水酸化物アジュバントの混合物)を含み、それらの化合物は何らかの適切な形態(たとえばゲル、結晶、非晶質等)をとり、塩に吸着することが好ましい。無機質含有組成物はまた、金属塩の粒子としても製剤され得る(国際公開公報第WO00/23105号)。
【0183】
アルミニウム塩は、Al3+の用量が0.2−1.0mg/用量であるように本発明のワクチンに含まれ得る。
【0184】
1つの実施形態では、本発明における使用のためのアルミニウムに基づくアジュバントは、ミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム(AlK(SO))、または、リン酸緩衝液中の抗原をミョウバンと混合し、その後水酸化アンモニウムまたは水酸化ナトリウムなどの塩基で滴定および沈殿させることによってインサイチューで形成されるような、ミョウバン誘導体である。
【0185】
本発明のワクチン製剤における使用のためのもう1つのアルミニウムベースのアジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバント(Al(OH))または、約500m/gの表面積を有する、優れた吸着剤である結晶性オキシ水酸化アルミニウム(AlOOH)である。もう1つの実施形態では、アルミニウムベースのアジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバントのヒドロキシル基の一部または全部の代わりにリン酸基を含む、リン酸アルミニウムアジュバント(AlPO)またはヒドロキシリン酸アルミニウムである。ここで提供される好ましいリン酸アルミニウムアジュバントは、非晶質であり、酸性、塩基性および中性媒質に可溶性である。
【0186】
もう1つの実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウムと水酸化アルミニウムの両方を含む。そのより特定の実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウム対水酸化アルミニウムの重量比で2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1または9:1以上の比率のような、水酸化アルミニウムを上回る量のリン酸アルミニウムを有する。もう1つの実施形態では、ワクチン中のアルミニウム塩は、ワクチン用量当たり0.4−1.0mg、またはワクチン用量当たり0.4−0.8mg、またはワクチン用量当たり0.5−0.7mg、またはワクチン用量当たり約0.6mgで存在する。
【0187】
一般に、好ましいアルミニウムベースのアジュバント、またはリン酸アルミニウム対水酸化アルミニウムのような複数のアルミニウムベースのアジュバントの比率は、抗原が所望pHでアジュバントと反対の電荷を担持するように分子間の静電引力の最適化によって選択される。たとえばリン酸アルミニウムアジュバント(等電点=4)はpH7.4でリゾチームを吸着するが、アルブミンは吸着しない。アルブミンが標的である場合は、水酸化アルミニウムアジュバントが選択される(等電点=11.4)。あるいは、リン酸塩による水酸化アルミニウムの前処理はその等電点を低下させ、より塩基性の抗原にとって好ましいアジュバントにする。
【0188】
B.油性乳剤
(ムラミルペプチドまたは細菌細胞壁成分などの他の特異的免疫刺激剤と共にまたは他の免疫刺激剤なしで)アジュバントとしての使用に適する油性乳剤組成物および製剤は、MF59(マイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子に製剤された、5%スクアレン、0.5%トゥイーン80および0.5%スパン85)などのスクアレン−水乳剤を含む。国際公開公報第WO90/14837号参照。また、Podda(2001)Vaccine 19:2673−2680;Freyら(2003)Vaccine 21 :4234−4237も参照のこと。MF59は、FLUAD(商標)インフルエンザウイルス三価サブユニットワクチンにおいてアジュバントとして使用されている。
【0189】
組成物における使用のための特に好ましいアジュバントは、サブミクロンの水中油型乳剤である。ここでの使用のための好ましいサブミクロン水中油型乳剤は、4−5%w/vスクアレン、0.25−1.0%w/vトゥイーン80(商標)(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)および/または0.25−1.0%スパン85(商標)(トリオレイン酸ソルビタン)、および場合によりN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)を含むサブミクロン水中油型乳剤などの、場合により様々な量のMTP−PEを含むスクアレン/水乳剤、たとえば「MF59」として知られるサブミクロン水中油型乳剤(国際公開公報第WO90/14837号;米国特許第6,299,884号;同第6,451,325号;およびOttら、“MF59――Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines”in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.とNewman,M.J.編集)(New York:Plenum Press)1995,p.277−296)である。MF59は、110Y型マイクロフルイダイザー(Microfluidics,Newton,MA)などのマイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子に製剤された、4−5%w/vスクアレン(たとえば4.3%)、0.25−0.5%w/vトゥイーン80(商標)および0.5%w/vスパン85(商標)を含み、および場合により様々な量のMTP−PEを含む。たとえばMTP−PEは、約0−500μg/用量、より好ましくは0−250μg/用量、最も好ましくは0−100μg/用量の量で存在し得る。ここで使用する、「MF59−0」という用語は、MTP−PEを含まない上記サブミクロン水中油型乳剤を指し、MF59−MTPは、MTP−PEを含む製剤を表わす。たとえば「MF59−100」は、MTP−PE100μg/用量を含む、等である。ここでの使用のもう1つのサブミクロン水中油型乳剤、MF69は、4.3%w/vスクアレン、0.25%w/vトゥイーン80(商標)および0.75%w/vスパン85(商標)、および場合によりMTP−PEを含む。さらにもう1つのサブミクロン水中油型乳剤は、やはりサブミクロン乳剤にマイクロフルイダイズされた、10%スクアレン、0.4%トゥイーン80(商標)、5%プルロニックブロックポリマーL121およびthr−MDPを含む、SAFとしても知られるMF75である。MF75−MTPは、MTP−PE100−400μg/用量のような、MTPを含むMF75製剤を表わす。
【0190】
組成物における使用のための、サブミクロン水中油型乳剤、その製造方法およびムラミルペプチドなどの免疫刺激剤は、国際公開公報第WO90/14837号;米国特許第6,299,884号;および同第6,451,325号に詳述されている。
【0191】
フロイント完全アジュバント(CFA)およびフロイント不完全アジュバント(IFA)も、本発明におけるアジュバントとして使用し得る。
【0192】
C.サポニン製剤
サポニン製剤も、本発明におけるアジュバントとしての使用に適する。サポニンは、広範囲の植物種の樹皮、葉、幹、根、さらには花において認められるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群である。Quillaia saponaria Molinaの木の樹皮から単離されるサポニンは、アジュバントとして広く研究されてきた。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ)、Gypsophilla paniculata(ブライダルベール)およびSaponaria officianalis(サボンソウの根)から商業的に入手できる。サポニンアジュバント製剤は、QS21などの精製製剤、ならびにISCOMなどの脂質製剤を含む。サポニンアジュバント製剤は、STIMULON(登録商標)アジュバント(Antigenics,Inc.,Lexington,MA)を含む。
【0193】
サポニン組成物は、高速薄層クロマトグラフィー(HP−TLC)および逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いて精製されてきた。QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cを含む、これらの手法を用いた特定精製画分が同定されている。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の生産方法は、米国特許第5,057,540号に開示されている。サポニン製剤はまた、コレステロールなどのステロールを含み得る(国際公開公報第WO96/33739号参照)。
【0194】
サポニンとコレステロールとの組合せは、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる独特の粒子を形成するために使用できる。ISCOMはまた、典型的にはホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなどのリン脂質も含む。いかなる公知のサポニンもISCOMにおいて使用できる。好ましくは、ISCOMは、Quil A、QHAおよびQHCの1またはそれ以上を含む。ISCOMはさらに、欧州特許第0109942号、国際公開公報第WO96/11711号および同第WO96/33739号に述べられている。場合により、ISCOMは付加的な界面活性剤を含まなくてもよい。国際公開公報第WO00/07621号参照。
【0195】
サポニンベースのアジュバントの開発の総説は、Barrら、(1998)Adv.Drug Del.Rev.32:247−271に認められる。Sjolanderら(1998)Adv.Drug Del.Rev.32:321−338も参照のこと。
【0196】
D.ビロゾームおよびウイルス様粒子(VLP)
ビロゾームおよびウイルス様粒子(VLP)もアジュバントとして適切である。これらの構造は一般に、場合によりリン脂質と組み合わせたまたはリン脂質と共に製剤された、ウイルスからの1またはそれ以上のタンパク質を含む。それらは一般に非病原性、非複製性であり、一般にいかなる天然ウイルスゲノムも含まない。ウイルスタンパク質は、組換え生産され得るかまたは全ウイルスから単離され得る。ビロゾームまたはVLPにおける使用に適するこれらのウイルスタンパク質は、インフルエンザウイルス(HAまたはNAなど)、B型肝炎ウイルス(コアまたはキャプシドタンパク質など)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNAファージ、Qβファージ(コートタンパク質など)、GAファージ、frファージ、AP205ファージ、およびTy(レトロトランスポゾンTyタンパク質p1など)に由来するタンパク質を含む。VLPは、国際公開公報第WO03/024480号;同第WO03/024481号;Niikuraら(2002)Virology 293:273−280;Lenzら(2001)J.Immunol.166(9)5346−5355;Pintoら(2003)J.Infect.Dis.188:327−338;およびGerberら(2001)J.Virol.75(10):4752−4760においてさらに論じられている。ビロゾームは、たとえばGluckら(2002)Vaccine 20:B10−B16においてさらに論じられている。免疫増強性再溶解インフルエンザビロゾーム(IRIV)が、鼻内三価INFLEXAL(商標)製品(MischlerとMetcalfe(2002)Vaccine 20、補遺5:B17−23)およびINFLUVAC PLUS(商標)製品におけるサブユニット抗原送達システムとして使用されている。
【0197】
E.細菌または微生物誘導体
本発明における使用に適するアジュバントは、以下のような細菌または微生物誘導体を含む:
(1)腸内細菌リポ多糖(LPS)の非毒性誘導体:そのような誘導体は、モノホスホリル脂質A(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)を含む。3dMPLは、4、5または6本のアシル化された鎖と3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aの混合物である。3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aの好ましい「微小粒子」形態は、欧州特許第0689454号に開示されている。そのような3dMPLの「微小粒子」は、0.22ミクロンの膜を通して滅菌ろ過されるのに十分な程度に小さい(欧州特許第0689454号参照)。他の非毒性LPS誘導体は、リン酸アミノアルキルグルコサミニド誘導体、たとえばRC−529などのモノホスホリル脂質Aミミックを含む。Johnsonら(1999)Bioorg.Med.Chem.Lett.9:2273−2278参照。
【0198】
(2)脂質A誘導体:脂質A誘導体は、OM−174などの大腸菌からの脂質Aの誘導体を含む。OM−174は、たとえばMeraldiら(2003)Vaccine 21:2485−2491;およびPajakら(2003)Vaccine 21:836−842に述べられている。
【0199】
(3)免疫刺激オリゴヌクレオチド:本発明におけるアジュバントとしての使用に適する免疫刺激オリゴヌクレオチドまたはポリマー分子は、CpGモチーフ(非メチル化シトシンとそれに続くグアノシンを含む、リン酸結合によって連結された配列)を含むヌクレオチド配列を含む。パリンドロームまたはポリ(dG)配列を含む細菌二本鎖RNAまたはオリゴヌクレオチドも、免疫刺激性であることが示されている。CpGは、ホスホロチオエート修飾などのヌクレオチド修飾/類似体を含むことができ、二本鎖または一本鎖であり得る。場合により、グアノシンは、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンなどの類似体で置換されていてもよい。可能な類似体置換の例に関しては、Kandimallaら(2003)Nucl.Acids Res.31(9):2393−2400;国際公開公報第WO02/26757号;および同第WO99/62923号参照。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント作用はさらに、Krieg(2003)Nat.Med.9(7):831−835;McCluskieら(2002)FEMS Immunol.Med.Microbiol.32:179−185;国際公開公報第WO98/40100号;米国特許第6,207,646号;同第6,239,116号;および同第6,429,199号において論じられている。
【0200】
CpG配列は、モチーフGTCGTTまたはTTCGTTなどのTLR9を対象とし得る。Kandimallaら(2003)Biochem.Soc.Trans.31(第3部):654−658参照。CpG配列は、CpG−A ODNなどのTh1免疫応答を誘導することに特異的であり得るか、またはCpG−B ODNなどのB細胞応答を誘導することにより特異的であり得る。CpG−AおよびCpG−B ODNは、Blackwellら(2003)J.Immnol.170(8):4061−4068;Krieg(2002)TRENDS Immunol.23(2):64−65;および国際公開公報第WO01/95935号において論じられている。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。
【0201】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識のためにアクセス可能であるように構築される。場合により、2個のCpGオリゴヌクレオチド配列がそれらの3’末端で結合して、「イムノマー(immunomers)」を形成し得る。たとえばKandimallaら(2003)BBRC 306:948−953;Kandimallaら(2003)Biochem.Soc.Trans.31(第3部):654−658;Bhagatら(2003)BBRC 300:853−861;および国際公開公報第WO03/035836号参照。
【0202】
免疫刺激オリゴヌクレオチドおよびポリマー分子はまた、ポリビニル骨格(Pithaら(1970)Biochem.Biophys.Acta 204(1):39−48;Pithaら(1970)Biopolymers 9(8):965−977)、およびモルホリノ骨格(米国特許第5,142,047号;同第5,185,444号)などの、しかしこれらに限定されない、選択的ポリマー骨格構造を含む。様々な他の荷電および非荷電ポリヌクレオチド類似体が当技術分野において公知である。非荷電結合(たとえばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート)および荷電結合(たとえばホスホロチオエートおよびホスホロジチオエート)を含むが、これらに限定されない、数多くの骨格修飾が当技術分野において公知である。
【0203】
(4)ADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体:細菌ADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体は、本発明におけるアジュバントとして使用し得る。好ましくは、タンパク質は、大腸菌(すなわち大腸菌易熱性エンテロトキシン「LT」)、コレラ菌(「CT」)または百日咳菌(「PT」)に由来する。粘膜アジュバントとしての無毒化ADP−リボシル化毒素の使用は国際公開公報第WO95/17211号に、および非経口アジュバントとしての使用は国際公開公報第WO98/42375号に述べられている。好ましくは、アジュバントは、LT−K63、LT−R72およびLTR192Gなどの無毒化LT突然変異体である。ADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体、特にLT−K63およびLT−R72のアジュバントとしての使用は、以下の参考文献に認められる:Beignonら(2002)Infect.Immun.70(6):3012−3019;Pizzaら(2001)Vaccine 19:2534−2541;Pizzaら(2000)Int.J.Med.Microbiol.290(4−5):455−461;Scharton−Kerstenら(2000)Infect.Immun.68(9):5306−5313;Ryanら(1999)Infect.Immun.67(12):6270−6280;Partidosら(1999)Immunol.Lett.67(3):209−216;Peppoloniら(2003)Vaccines 2(2):285−293;およびPineら(2002)J.Control Release 85(1−3):263−270。アミノ酸置換についての数字参照は、好ましくは、Domenighiniら(1995)Mol.Microbiol.15(6):1165−1167に示されているADP−リボシル化毒素のAおよびBサブユニットのアラインメントに基づく。
【0204】
‘ER 803058’、‘ER 803732’、‘ER 804053’、‘ER 804058’、‘ER 804059’、‘ER 804442’、‘ER 804680’、‘ER 804764’、‘ER 803022’または‘ER 804057’などの、国際公開公報第WO03/011223において定義される、式I、IIまたはIIIの化合物、またはそれらの塩:
【0205】
【化3】

たとえば:
【0206】
【化4】

も、アジュバントとして使用できる。
【0207】
F.ヒト免疫調節剤
アジュバントとしての使用に適するヒト免疫調節剤は、インターロイキン(たとえば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12等)、インターフェロン(たとえばインターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)および腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカインを含む。
【0208】
G.生体接着剤および粘膜接着剤
生体接着剤および粘膜接着剤もアジュバントとして使用し得る。適切な生体接着剤は、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア(Singhら(2001)J.Cont.Release.70:267−276)またはポリアクリル酸の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖およびカルボキシメチルセルロースなどの粘膜接着剤を含む。キトサンおよびその誘導体も、本発明におけるアジュバントとして使用し得る(国際公開公報第WO99/27960号参照)。
【0209】
H.リポソーム
アジュバントとしての使用に適するリポソーム製剤の例は、米国特許第6,090,406号;同第5,916,588号;および欧州特許公開第0626169号に述べられている。
【0210】
I.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル製剤
本発明における使用に適するアジュバントは、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルを含む(たとえば国際公開公報第WO99/52549号参照)。そのような製剤はさらに、オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(国際公開公報第WO01/21207号)ならびにオクトキシノールなどの少なくとも1つの付加的な非イオン界面活性剤と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤(国際公開公報第WO01/21152号)を包含する。
【0211】
好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテルから選択される。
【0212】
J.ポリホスファゼン(PCPP)
PCPP製剤は、たとえばAndrianovら(1998)Biomaterials 19(1−3):109−115;およびPayneら(1998)Adv.Drug.Del. Rev.31(3):185−196に述べられている。
【0213】
K.ムラミルペプチド
アジュバントとしての使用に適するムラミルペプチドの例は、N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミニル−l−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)を含む。
【0214】
L.イミダゾキノリン化合物
アジュバントとしての使用に適するイミダゾキノリン化合物の例は、Stanley(2002)Clin.Exp.Dermatol.27(7):571−577;Jones(2003)Curr.Opin.Investig.Drugs 4(2):214−218;および米国特許第4,689,338号;同第5,389,640号;同第5,268,376号;同第4,929,624号;同第5,266,575号;同第5,352,784号;同第5,494,916号;同第5,482,936号;同第5,346,905号;同第5,395,937号;同第5,238,944号;および同第5,525,612号においてさらに説明されている、イミキモドおよびその類似体を含む。
【0215】
M.チオセミカルバゾン化合物
アジュバントとしての使用に適するチオセミカルバゾン化合物の例、ならびにそのような化合物を製剤する、製造する、およびスクリーニングする方法は、国際公開公報第WO04/60308号に述べられているものを含む。チオセミカルバゾンは、TNF−αなどのサイトカインの生産のためのヒト末梢血単核細胞の刺激において特に有効である。
N.トリプタントリン化合物
アジュバントとしての使用に適するトリプタントリン化合物の例、ならびにそのような化合物を製剤する、製造する、およびスクリーニングする方法は、国際公開公報第WO04/64759号に述べられているものを含む。トリプタントリン化合物は、TNF−αなどのサイトカインの生産のためのヒト末梢血単核細胞の刺激において特に有効である。
【0216】
O.ヌクレオシド類似体
様々なヌクレオシド類似体、たとえば(a)イサトラビン(Isatorabine)(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0217】
【化5】

およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)米国特許第6,924,271号;米国特許公開第2005/0070556号;および米国特許第5,658,731号に開示されている化合物;(f)式:
【0218】
【化6】

[式中、
およびRは、各々独立してH、ハロ、−NR、−OH、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、C1−6アリール、置換C1−6アリール、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルであり;
は、存在しないか、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり;
およびRは、各々独立してH、ハロ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、−C(O)−R、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルであるか、または一緒に結合してR4−5
【0219】
【化7】

[結合は
【0220】
【化8】

によって示される結合で達成される]
として5員環を形成し;
およびXは、各々独立してN、C、OまたはSであり;
は、H、ハロ、−OH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、−OH、−NR、−(CH−O−R、−O−(C1−6アルキル)、−S(O)、または−C(O)−Rであり;
は、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリルまたはR9aであり、R9aは:
【0221】
【化9】

[結合は
【0222】
【化10】

によって示される結合で達成される]
であり;
10およびR11は、各々独立してH、ハロ、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NR、または−OHであり;
各々のRおよびRは、独立してH、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)R、C6−10アリールであり;
各々のRは、独立してH、リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルであり;
各々のRは、独立してH、ハロ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NH、−NH(C1−6アルキル)、−NH(置換C1−6アルキル)、−N(C1−6アルキル)、−N(置換C1−6アルキル)、C6−10アリール、またはヘテロシクリルであり;
各々のRは、独立してH、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり;
各々のRは、独立してH、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)R、リン酸塩、二リン酸塩、または三リン酸塩であり;
各々のnは、独立して0、1、2または3であり;
各々のpは、独立して0、1または2である]
を有する化合物;または(g)(a)−(f)のいずれかの医薬的に許容される塩、(a)−(f)のいずれかの互変異性体、または互変異性体の医薬的に許容される塩
が、アジュバントとして使用できる。
【0223】
P.リン酸含有非環式骨格に連結された脂質
リン酸含有非環式骨格に連結された脂質を含むアジュバントは、TLR4拮抗物質E5564(Wongら(2003)J.Clin.Pharmacol.43(7):735−742;米国特許出願第2005/0215517号):
【0224】
【化11】

を含む。
【0225】
Q.低分子免疫増強剤(SMIP)
SMIPは以下を含む:
・N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−エチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−ペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロプ−2−エニル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・1−(2−メチルプロピル)−2−[(フェニルメチル)チオ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;
・1−(2−メチルプロピル)−2−(プロピルチオ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;
・2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エタノール;
・2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エチルアセテート;
・4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン;
・N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・1−{4−アミノ−2−[メチル(プロピル)アミノ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール;
・1−[4−アミノ−2−(プロピルアミノ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]−2−メチルプロパン−2−オール;
・N4,N4−ジベンジル−1−(2−メトキシ−2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン。
【0226】
R.プロテオソーム
1つのアジュバントは、第二グラム陰性細菌に由来するリポ糖製剤と組み合わせた第一グラム陰性細菌に由来する外膜タンパク質プロテオソーム製剤であり、外膜タンパク質プロテオソームとリポ糖製剤は安定な非共有結合アジュバント複合体を形成する。そのような複合体は、髄膜炎菌外膜とリポ多糖からなる複合体、「IVX−908」を含む。それらはインフルエンザワクチンのためのアジュバントとして使用されてきた(国際公開公報第WO02/072012号)。
【0227】
S.他のアジュバント
免疫刺激剤として働く他の物質は、Burdman,J.R.ら(編集)(1995)(Vaccine Design:Subunit and Adjuvant Approach(Springer)(第7章)およびO’Hagan,D.T.(2000)(Vaccine Adjuvants:Preparation Methods and Research Protocols(Humana Press)(Methods in Molecular Medicineシリーズの第42巻))に開示されている。
【0228】
さらなる有用なアジュバント物質は以下を含む:
・メチルイノシン5’−一リン酸(“MIMP”)(Signorelli & Hadden(2003)Int.Immunopharmacol.3(8):1177−1186)。
・式:
【0229】
【化12】

[式中、Rは、水素、直鎖または分枝、非置換または置換、飽和または不飽和アシル、アルキル(たとえばシクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基、あるいはそれらの医薬的に許容される塩または誘導体から成る群より選択される]
を有するものなどの、ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物(国際公開公報第WO2004/064715号)。例は、カジュアリン(casuarine)、カジュアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カジュアリン、7−エピ−カジュアリン、3,7−ジエピ−カジュアリン等を含む。
・γイヌリン(Cooper(1995)Pharm.Biotechnol.6:559−580)またはアルガムリンなどのその誘導体。
・国際特許出願第PCT/US2005/022769号に開示されている化合物。
・アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドロイソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンズイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物(米国特許第6,605,617号;国際公開公報第WO02/18383号)、ヒドロフタルアミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソキサゾール化合物、ステロール化合物、キナジリノン化合物、ピロール化合物(国際公開公報第WO2004/018455号)、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラゾロピリミジン化合物、およびベンズアゾール化合物(国際公開公報第WO03/082272号)を含む、国際公開公報第WO2004/87153号に開示されている化合物。
・ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン(米国特許第5,011,828号)。
・アミノプロピル−ジメチル−ミリストレイルオキシ−プロパナミニウムブロマイド−ジフィタノイルホスファチジル−エタノールアミン(「Vaxfectin(商標)」)またはアミノプロピル−ジメチル−ビス−ドデシルオキシ−プロパナミニウムブロマイド−ジオレオイルホスファチジル−エタノールアミン(「GAP−DLRIE:DOPE」)などの、陽イオン脂質と(通常は中性の)共脂質の製剤。(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(シン−9−テトラデセネイルオキシ)−1−プロパナミニウム塩を含む製剤が好ましい(米国特許第6,586,409号)。
【0230】
本発明はまた、上記で特定したアジュバントの1またはそれ以上の態様の組合せを含み得る。たとえば以下のアジュバント組成物が本発明において使用し得る:(1)サポニンおよび水中油型乳剤(国際公開公報第WO99/11241号);(2)サポニン(たとえばQS21)+非毒性LPS誘導体(たとえば3dMPL)(国際公開公報第WO94/00153号参照);(3)サポニン(たとえばQS21)+非毒性LPS誘導体(たとえば3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(たとえばQS21)+3dMPL+IL−12(場合により+ステロール)(国際公開公報第WO98/57659号);(5)たとえばQS21および/または水中油型乳剤と3dMPLの組合せ(欧州特許第0835318号;同第0735898号;および同第0761231号参照);(6)10% スクアレン、0.4%トゥイーン80、5%プルロニックブロックポリマーL121、およびサブミクロン乳剤にマイクロフルイダイズされるかまたはより大きな粒径の乳剤を生成するために渦攪拌されたthr−MDPを含む、SAF;(7)2%スクアレン、0.2%トゥイーン80、およびモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)から成る群からの1またはそれ以上の細菌細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))を含有する、Ribi(商標)アジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem,Hamilton,MT);(8)1またはそれ以上の無機塩(アルミニウム塩など)+LPSの非毒素誘導体(たとえば3dPML);(9)1またはそれ以上の無機塩(アルミニウム塩など)+免疫刺激オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むヌクレオチド配列など)。
【0231】
アルミニウム塩およびMF59は、注射用インフルエンザワクチンに関する使用のための好ましいアジュバントである。細菌毒素および生体接着剤は、鼻内ワクチンなどの経粘膜送達ワクチンに関する使用のための好ましいアジュバントである。
【0232】
6.投与
ひとたび製剤(および必要に応じて再懸濁)されれば、本発明のナノ粒子組成物は非経口的に、たとえば注射によって(無針でもよい)投与することができる。これに関して、ナノ粒子組成物は、再懸濁媒質(たとえば注射用蒸留水)を供給するためおよび生じた懸濁物を回収するための隔壁または他の適切な手段と共に供給される、バイアルまたは他の容器において凍結乾燥形態で供給され得る。適切な注射器も注射のために供給され得る。
【0233】
組成物は、たとえば皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、または腹腔内経路で注入され得る。他の投与方法は、鼻、粘膜、眼内、直腸、膣、経口および肺投与、および経皮適用を含む。
【0234】
一部の実施形態では、本発明の組成物は部位指定標的送達のために使用できる。たとえば組成物の静脈内投与は、肺、肝臓、脾臓、血液循環または骨髄を標的するために使用できる。
【0235】
本発明のナノ粒子組成物は、一般に1またはそれ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む。たとえば水、食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノール等のようなビヒクルを使用し得る。湿潤剤または乳化剤、生物学的緩衝物質等のような他の賦形剤も存在し得る。生物学的緩衝剤は、薬理的に許容され、所望pH、すなわち生理的範囲内のpHを有する製剤を提供する、実質上いかなる溶液でもあり得る。例は、食塩水、リン酸緩衝食塩水、トリス緩衝食塩水、ハンクス緩衝食塩水等を含む。最終投与形態に依存して、結合剤、崩壊剤、充填剤(希釈剤)、潤滑剤、流動促進剤、圧縮補助剤、着色料、甘味料、防腐剤、懸濁化/分散剤、薄膜形成剤/被覆剤、着香料および印刷インクを含む、当技術分野で公知の他の賦形剤も導入できる。
【0236】
治療は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールに従って実施し得る。複数回投与スケジュールは、最初の投与課程をたとえば1−10回の別個の投与で実施し、その後、治療応答を維持するおよび/または増強するように選択される時間間隔を置いて、たとえば2回目の投与については1−4ヵ月後に、別途の投与を行い、必要に応じて数ヵ月後にその後の投与を実施するものである。投与計画はまた、少なくとも一部には、被験体の必要性によって決定され、医師の判断に依存する。
【0237】
さらに、疾患の予防を所望する場合、組成物は一般に、対象とする感染または疾患の一次発生の出現前に投与される。他の治療形態、たとえば症状または再発の軽減または排除を所望する場合は、組成物は一般に、対象とする感染または疾患の一次発生の出現後に投与される。
【0238】
7.キット
本発明は、被験体への適切な量の有効成分の投与を簡単にすることができるキットを含む。典型的な本発明のキットは、好ましくは密封容器中の、本発明の凍結乾燥ナノ粒子組成物の単位投与形態を含む。本発明のキットは、1またはそれ以上の有効成分を投与するために使用できる、医薬的に許容されるビヒクルをさらに含み得る。そこで、特定実施形態では、キットは、投与に適する微粒子不含無菌溶液を形成するためにナノ粒子組成物を溶解することができる適切なビヒクルの密封容器、および有効成分を投与するために使用できる装置をさらに含む。そのような装置の例は、注射器、点滴袋、パッチおよび吸入器を含むが、これらに限定されない。
【実施例】
【0239】
C.実験
以下は、本発明を実施するための特定実施形態の例である。これらの例は説明のためにのみ提供されるものであり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0240】
使用する数(たとえば量、温度等)に関しては正確さを保証するように努力を払ったが、ある程度の実験誤差および偏差は、言うまでもなく、許容されるべきである。
【0241】
スクロース、マンニトール、グルコース、トレハロース、デキストラン(分子量=70,000)、ウシ血清アルブミン(BSA)およびオボアルブミン、鶏卵の卵白(オボアルブミンまたはOVA)、ポリビニルピロリドン(分子量=40,000)、カルボキシメチルセルロース(分子量=90,000)、プルロニックF68(ポロキサマー188としても知られる)、および他のすべての化学物質は、Sigma Chemicals(St. Louis,MO)からであった。ポリビニルアルコール(分子量=15,000)はICN Biomedicals(現在はMP Biomedicals,Irvine,CA)からであった。アセトンはEMD Chemicals(Gibbstown,NJ)からであった。
【0242】
インフルエンザ抗原(FIuCC)および髄膜炎菌血清型B抗原(MenB 287)はChiron Vaccinesからであった。大腸菌由来の組換え髄膜炎菌血清型Bワクチン候補物質、MenB 287(Chiron Vaccines,IRIS,Chiron,S.r.l.,Siena,Italy)は、先に記述されているように(M.Comanducciら(2002)J.Exp.Med.195:1445−1454)単離および精製した.GBS1はChiron Vaccinesからであり、先に記述されているように(D.Maioneら(2005)Science 309:148−150)同定し、精製した。
【0243】
(実施例1)
ナノ粒子およびミクロ粒子製剤
ナノ沈殿法(Fessi,H.,F.PuisieuxとJ.P.Devissaguet,“Process for the preparation of dispersible colloidal systems of a substance in the form of nanocapsules,”Devissaguetらの米国特許第5,049,322号に対応する、欧州特許第0274961B1号参照)により、粒径100nm−500nmの範囲にわたる粒子を作製した。詳細には、Boehringer Ingelheimより入手可能な、50:50のラクチド/グリコリドモル比および〜30kDaの分子量を有するPLGポリマー、RG503をアセトン(0.5%w/v)に溶解し、この溶液を600rpmで磁気攪拌しながら等容量の水に滴下して、アセトンを蒸発させることにより、〜100−〜120nm粒子を作製した。Boehringer Ingelheimより入手可能な、75:25のラクチド/グリコリドモル比および〜20kDaの分子量を有するPLG、RG752も、1つの場合に使用した。
【0244】
種々の大きさのナノ粒子を、有機相中の初期PLG濃度を調節することによってまたは溶媒をアセトンからTHFに切り替えることによって作製した。PLG濃度の上昇は粒径を上昇させ、アセトンからTHFへの切り替えも粒径を上昇させた。様々な大きさのナノ粒子の調製を可能にするパラメータを論じたいくつかの文献報告がある(P.D.Scholesら(1993)J.Control Release 25:145−153;L.Peltonenら(2002)AAPS PharmSciTech 3:E32;P.Wehrleら(1995)Eur.J.Pharmaceut.Biopharmaceut.41:19−26)。たとえば微小粒子(〜120nm)は、水25mLを添加したアセトン中の0.5%(w/v)PLG25mLで調製した。中間サイズの粒子(〜180nm)は、水25mLを添加したテトラヒドロフラン(THF)中の0.5%(w/v)PLG25mLで作製した。大型粒子(〜230nm)は、水40mLを添加したアセトン中の4%(w/v)PLG12.5mLで調製した。
〜1μmの大きさの、0.05%スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(DSS)を有するミクロ粒子を、ナノ粒子調製法とは有意に異なる、これまでに確立されている二重乳化溶媒蒸発法(Singh,M.ら(2004)J.Pharm.Sci.,93(2):273−282)によって調製した。詳細には、水/油/水乳剤手法を使用してミクロ粒子を形成した。PLGをジクロロメタン(DCM)(6%w/v)に溶解し、リン酸緩衝食塩水の水相(1:4 水:油)(v:v)に添加して、2分間均質化した。この油中水型乳剤を、次に、DSSを含む水(1:4 油中水型乳剤:水)(v:v)に添加し、氷浴にて高速で10分間均質化した。生じた懸濁物を磁気攪拌してDCMを蒸発させた。ミクロ粒子は、0.83μm(D(容積、50%))および1.24μm(D(容積、90%))の平均粒径を有していた。
【0245】
ミクロ粒子と比較してナノ粒子の1つの利点は作製の容易さであった。ナノ粒子法は、単一相に基づき、高せん断均質化を必要とせず、磁気攪拌しか必要としなかった。2つの方法で使用される有機溶媒の種類は異なっていた。ミクロ粒子法ではより毒性のDCMが使用されるのに比べて、ナノ粒子法はアセトンを使用した。食品医薬品局(FDA)はDCMをクラス2溶媒と分類し、医薬品におけるその使用を制限している。アセトンはクラス3溶媒であり、FDAは許容残留溶媒の量により高い制限を与えている。
【0246】
(実施例2)
ナノ粒子の滅菌ろ過
先に示したように、より小さなナノ粒子の1つの利点は、それらが粒子作製後に滅菌ろ過できることである。この実施例では、ナノ粒子を110−230nmの範囲内で作製し、Pall Acrodisc 0.2μmフィルターで滅菌ろ過した。ナノ粒子の大きさは、500nm以下の粒子についてはZetasizer 3000HSA(Malvern Instruments,UK)で測定した。より大きな粒子および凝集物はHoriba LA−930(Irvine,CA,USA)で測定した。この装置は粒径を測定するために静的光散乱に基づき、一方Zetasizerは、より小さな粒子を検出するために動的光散乱を使用した。
【0247】
ζ電位は、特定希釈剤中0.2mg/mlPLGの典型的希釈濃度でZetasizerによって測定した。120nmナノ粒子に関して、10mMクエン酸ナトリウム中のζ電位は−39mVであり、10mMリン酸ナトリウム、pH=7.0中では−48mVであった。ζ電位は陰イオン性PLGに関して予想された範囲内であった。
【0248】
凍結乾燥した各々の試料1mLをあらかじめ計量したバイアルに入れて、滅菌ろ過の前および後にPLG濃度を測定し、残存する質量によってPLG含量を決定した。一般に、より小さなナノ粒子(〜120nm)だけが滅菌ろ過前の値に匹敵するPLG濃度を有しており、実質的に粒径の変化は認められなかった。表1参照。滅菌ろ過したナノ粒子の内毒素レベル(LAL)は0.48−0.96EU/mLの範囲内であった。表からわかるように、小さなミクロ粒子(〜120nm)だけが滅菌ろ過前の値に匹敵するPLG濃度を有しており、粒径の変化はなかった。滅菌ろ過した181nm粒子の大きさは測定されなかった。
【0249】
【表1】

(実施例3)
凍結乾燥後のナノ粒子の再懸濁
ミクロ粒子と比較してナノ粒子の1つの不利な点は、凍結乾燥後、それらが必ずしも凍結前の大きさに再懸濁しないことである。本実施例では、界面活性剤および/または凍結保護剤を、凍結乾燥の直前にナノ粒子懸濁物にピペットで分注した。懸濁物をガラスバイアルに入れ、−80℃で30分間凍結した。凍結乾燥は、−49℃および133×10−3mBar未満の真空で操作する、Labconco Freeze Dry System,Freezone 4.5(Kansas City,MO,USA)において実施した。凍結乾燥後、ナノ粒子5−10mgを水1mlに再懸濁し、粒径を測定した。ナノ粒子の粒径測定前に、試料を2mL中50μlに希釈した。
【0250】
以下の表2からわかるように、許容されない粒径上昇を伴わずに(たとえば有意の凝集を伴わずに)、凍結乾燥ナノ粒子が再懸濁されることを可能にする賦形剤を添加することができる。たとえばナノ粒子を再懸濁するために界面活性剤が使用できる(たとえばPVA、131%w/w(wPVA/wPLG)、さらに、界面活性剤と凍結保護剤の組合せを使用することによって界面活性剤の量を低減することができる。そのような製剤の例は、3%(w/v)スクロースおよび4%(w/v)マンニトールと10%(w/w)PVA、5%(w/v)トレハロースおよび2.5%(w/v)マンニトールと10%(w/w)PVA、および5%(w/v)トレハロースおよび2.5%(w/v)マンニトールと0.5%(w/w)DSSを含む。
【0251】
【表2】

より詳細には、糖単独はナノ粒子凝集を生じさせた。界面活性剤単独(すなわちPVA)はナノ粒子再懸濁を可能にした。改善された再懸濁結果が、糖と界面活性剤を含む製剤で達成された。糖は、凍結乾燥ワクチン製剤のために付加的に2つの重要な機能を果たす。タンパク質抗原に関して、スクロースおよびトレハロースは、凍結乾燥工程の間タンパク質を安定化するのを助けることが示された(J.F.Carpenterら(1997)Pharm.Res.14:969−975)。マンニトールは、凍結乾燥工程の間ケークの崩壊を回避するための足場として使用される充填剤である(X.TangとM.J.Pikal(2004)Pharm.Res.21:191−200)。適切な糖、たとえばスクロースとマンニトールまたはトレハロースとマンニトールの添加により、必要とされるPVAの量が10%(w/w)に低減された。10−20mg/mLPLGを含む典型的製剤に関して、これは1−2mg/mLPVAに等しい。10%(w/w)CMC、PVPまたはプルロニックF68およびスクロースとマンニトールに関しては、粒子は凝集した。糖の組合せと濃度は、等張性必要条件を満たし、凍結乾燥後に洗練されたケークを形成し、タンパク質抗原を安定するのに役立つ。ワクチン生成物の浸透圧モル濃度は、280−330mOsm/Lの範囲内であるべきである。PVAと共に使用したスクロースとマンニトールまたはトレハロースとマンニトールの濃度は、適切な浸透圧モル濃度範囲内であり、初期液体容積と同じ大きさの凍結乾燥を導く。DSSも、トレハロースとマンニトール中、十分な濃度で適切な再懸濁を提供することが認められた。
【0252】
大型(221nm)および小型(122nm)ナノ粒子をまた、様々な濃度のPVA(w/wPLG)プラス4%スクロース(w/v)および3%マンニトール(w/v)を使用した再懸濁後に分析した。PLG含量は5mg/mLであった。ペレットに結合したポリビニルアルコール(PVA)の量と溶液中の遊離PVAの量を、最初に遠心分離によって(Eppendorf 5415D、13200rpmで20分間)懸濁物の固相を分離し、上清画分を取り出すことによって測定した。両方の混合物を2N NaOH中で一晩加水分解し、pHを中和して、先に述べられている方法(J.H.Finley(1961)Anal.Chem.33:1925−1927);E.Allemannら(1998)Adv.Drug Delivery Rev.34:171−189)に従って透明な溶液のアリコートを分析した。前記方法では、試験溶液0.2mLを4%w/wホウ酸1.00mLおよびヨウ素溶液(1.27%w/wIおよび2.5%w/wKI)0.20mLと混合し、吸光度を644nmで読み取って、直線性>0.995(R)を有する検量曲線と比較した。
【0253】
結果を表3に示す。理論に縛れるのは望むところではないが、より小さなナノ粒子を再懸濁するために必要とされる付加的なPVAは、おそらく、主としてより大きなナノ粒子と比較したときのそれらの大きな表面積によるものと考えられるが、表面と溶液の間でのPVAの分配による作用も存在した可能性がある。
【0254】
【表3】

(実施例3)
ナノ粒子およびミクロ粒子に関するタンパク質吸着効率
同じ粒子質量に関して、ナノ粒子はミクロ粒子に比べてはるかに大きな表面積を有する。この場合、ナノ粒子は、1μmミクロ粒子と比較してより効率的な粒子質量当たりのタンパク質負荷を可能にする。これは、より少ないPLGで(およびその結果としてより少ない総界面活性剤で)同じ量のタンパク質抗原の送達を可能にする。
【0255】
モデル抗原であるウシ血清アルブミン(BSA)を、適切な緩衝液と共にナノ粒子またはミクロ粒子懸濁物に添加し、実験室用揺動器(lab rocker)にて4℃で一晩攪拌した。ナノ粒子を遠心分離によって分離した。ペレットを0.2N NaOHにて25℃で一晩加水分解した。上清中および加水分解したペレット中のタンパク質濃度をBCA(商標)アッセイ(Pierce,Rockford,IL,USAより)によって定量した。図1に示すように、BSAは、24時間の吸着後、2つのpH値で、ミクロ粒子と比較してナノ粒子への高い負荷効率を示した。高い負荷効率は、ミクロ粒子についての1.5%(wBSC/wPLG)の最大負荷と比較して、ナノ粒子への3.5%までの吸着(wBSA/wPLG)を可能にした。
【0256】
この吸着増強は、ミクロ粒子は基本的に吸着に抵抗性であるが、ナノ粒子は有意の吸着が起こることを可能にする、pH=7で特に著明であった。それ故、ナノ粒子は、さもなければ不利な条件下で有意の吸着を可能にしたことがわかる。これは、たとえば、数ある理由の中でも特に、抗原安定性を高めるために、pHを特定の値に設定する必要がある粒子製剤のために有用であり得る。
【0257】
髄膜炎菌血清型Bからの抗原(すなわちMenB 287)も、ナノ粒子とミクロ粒子に吸着させた。特に、MenB 287抗原を、pH=5.0の10mMクエン酸緩衝液中のナノ粒子またはミクロ粒子懸濁物に添加し、実験室用揺動器にて4℃で一晩攪拌した。粒子を遠心分離によって分離した。ペレットを0.2N NaOHにて25℃で一晩加水分解した。上清中および加水分解したペレット中のタンパク質濃度をBCA(商標)アッセイ(Pierce)によって定量した。図2からわかるように、BSAに関して、ナノ粒子はミクロ粒子に比べてMenB 287の高い吸着を示した。
【0258】
抗原吸着後の再懸濁と凍結乾燥も、本発明の一部の組成物の重要な特徴であった。この実施例では、タンパク質、詳細にはBSA、オボアルブミン、FluCC、MenB 287、MenB 287またはGBS1を、pH5のヒスチジン緩衝液中のナノ粒子懸濁物に添加し、実験室用揺動器にて4℃で一晩攪拌した。初期粒径は〜120nmであった。界面活性剤および凍結保護剤を表3に従って添加し、混合物を凍結乾燥した。凍結乾燥後、ナノ粒子5−10mgを水1ml中に再懸濁し、粒径測定した。ナノ粒子を遠心分離によって分離した。上清中に残存する(吸着されなかった)量を、214nmの吸光度でHPLCサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した。表4からわかるように、吸着タンパク質を有するナノ粒子はそれらの小さなサイズを実質的に保持しており、1%(w/w)および5%(w/w)の標的負荷に関して高いタンパク質吸着効率を有する。
【0259】
【表4】

凍結乾燥後にナノ粒子に結合していたタンパク質の量(吸着されたタンパク質の%)は高く、タンパク質濃度の作用の検査において71%から100%の範囲であり、タンパク質負荷レベル(wタンパク質/wPLG)が高いほどより容易に再懸濁されることが認められた。PVA賦形剤混合物はより低い負荷レベルでMenB 287抗原を有するナノ粒子を再懸濁し、DSS賦形剤混合物は再懸濁しなかった。同様に、GBS1抗原についても、DSS賦形剤混合物はより高い5%タンパク質負荷製剤を再懸濁したが、より低い1%負荷製剤は再懸濁しなかった。BSAは低負荷および高負荷の両方で再懸濁した。タンパク質吸着に関する再懸濁は、それ故、タンパク質依存性であると思われ、各々のタンパク質抗原に関して評価することができる。1つの組合せが特定タンパク質に関して十分でない場合は、多数の異なる賦形剤の組合せのアベイラビリティーが柔軟性を提供する。
【0260】
(実施例4)
インビボ試験
ミクロ粒子懸濁物を実施例1で前述したように調製した。以下の表5および6の群3−6および9−12に関しては、MenB 287を、pH5.5の10mMヒスチジン緩衝液中1%または5%(w287/wPLG)の標的負荷でミクロ粒子またはナノ粒子懸濁物に添加し、実験室用揺動器にて4℃で一晩攪拌した。界面活性剤および凍結保護剤を添加し、混合物を凍結乾燥した。
【0261】
群3および9に関しては、MenB 287は、界面活性剤として初期粒子試料からの0.05%DSS(w/wPLG)および凍結保護剤として4%スクロース(w/v)および3%マンニトール(w/v)だけで1%(w287/wPLG)吸着された。群4および10に関しては、MenB 287は、10%PVA(wPVA/wPLG)プラス4%スクロース(w/v)および3%マンニトール(w/v)の添加により1%(w287/wPLG)吸着された。群5および11に関しては、MenB 287は、0.5%DSS(wDSS/wPLG)プラス5%トレハロース(w/v)および2.5%マンニトール(w/v)の添加により5%(w287/wPLG)吸着された。群6および12に関しては、MenB 287は、10%PVA(wPVA/wPLG)プラス4%スクロース(w/v)および3%マンニトール(w/v)の添加により5%(w287/wPLG)吸着された。凍結乾燥後、それぞれMenB 287 1μgおよび10μgの総用量に相当するミクロ粒子を注射用蒸留水1.2mlで再溶解した。再溶解した試料を、ナノ粒子についてはZetasizer 3000HSAで、およびミクロ粒子についてはHoriba LA 930で粒径測定した。結果を表5に示す。
【0262】
群2および8については、免疫の直前にMF59乳剤(Chiron Vaccines)を2×PBSおよびMenB 287 1μgまたは10μgのいずれかと混合した。
【0263】
群1および7に関しては、MenB 287を、pH5.5の10mMヒスチジン緩衝液プラス9mg/mL NaCl中の水酸化アルミニウム(Chiron Vaccines)に添加し、2mg/mLのミョウバン濃度で実験室用揺動器にて4℃で一晩攪拌した。
【0264】
すべての群について、0、21および35日目に10匹の雌性CD−1マウスの群に試料を筋肉内注射した。群3−6および9−12に関しては、凍結乾燥ミクロ粒子またはナノ粒子を注射用蒸留水で再溶解した。群1、2、7および8は上記のように使用した。49日目に、血清ELISA力価(IgG、IgG1、IgG2a)をSingh,M.ら(2004)(J.Pharm.Sci.93(2):273−282)に述べられているように分析し、血清殺菌活性(SBA)をPizza,M.ら(2000)(Science 287(5459):1816−1820)に述べられているように分析した。2996は、SBA分析のために使用したMenBの菌株であった。結果を以下の表6に示す。
【0265】
インビボ試験は、ナノ粒子とミクロ粒子が、血清力価およびSBAに基づき両方の用量に関して同等であることを明らかにする。高用量のMF59は、IgGに関して他のすべての群と有意に異なる(不等分散を仮定した両側スチューデントt検定でp<0.05)。群1および4のIgG力価は群6と有意に異なったが(不等分散を仮定した両側スチューデントt検定でp<0.05)、この結果は、試験のより重要なエンドポイントであるSBAには当てはまらない。
【0266】
【表5】

粒径は凍結乾燥後である。
【0267】
【表6】

本発明の好ましい実施形態を少し詳しく説明したが、本発明の精神と範囲から逸脱することなく明らかな変更を行い得ることは了解される。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【図1】図1は、pH=5およびpH=7でのPLGミクロ粒子およびナノ粒子へのBSA負荷のグラフを示す。
【図2】図2は、pH=5でのPLGミクロ粒子およびナノ粒子へのMenB 287負荷のグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリマー、界面活性剤、凍結保護剤および抗原を含む滅菌ろ過凍結乾燥ナノ粒子組成物。
【請求項2】
本発明の凍結乾燥ナノ粒子組成物を0.005g/mlの濃度で蒸留水と混合した際に、懸濁ナノ粒子のZ平均粒径が250nm未満である免疫原性ナノ粒子懸濁物が自然に形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記懸濁ナノ粒子のZ平均粒径が200nm未満である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記懸濁ナノ粒子のZ平均粒径が150nm未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記凍結保護剤が、ポリオール、炭水化物およびそれらの組合せから選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記凍結保護剤がポリオールと炭水化物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記凍結保護剤がアルジトールと糖を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤が非イオン界面活性剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤がポリ(ビニルアルコール)である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤がイオン界面活性剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記界面活性剤がスルホコハク酸ジオクチルナトリウムである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原がポリペプチド含有抗原を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗原がサブユニット抗原を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原が多糖含有抗原を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗原が結合体抗原を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記抗原がポリヌクレオチド含有抗原を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチド含有抗原が、ポリペプチド含有抗原をコードするベクター構築物を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗原が腫瘍細胞由来抗原を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記抗原が病原生物由来抗原を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗原が、ウイルス、細菌、真菌および寄生生物から選択される病原生物に由来する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記抗原が、肝炎ウイルス、水痘ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、インフルエンザウイルス、髄膜炎菌、百日咳菌、インフルエンザ菌b型、HIVおよび肺炎連鎖球菌から選択される病原生物に由来する、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記抗原が前記ナノ粒子の表面上に吸着される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記抗原が前記ナノ粒子内に捕捉される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリシアノアクリレートおよびそれらの組合せから選択される生分解性ポリマーを含む、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)およびそれらの組合せから選択されるポリ(α−ヒドロキシ酸)を含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、40:60から60:40までの範囲にわたるラクチド:グリコリドモル比を有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
免疫アジュバントをさらに含む、請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記免疫アジュバントが前記懸濁ナノ粒子の表面に吸着されている、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記免疫アジュバントが前記懸濁ナノ粒子内に捕捉されている、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記免疫アジュバントが、CpGオリゴヌクレオチド、二本鎖RNA、大腸菌非耐熱性毒素、ミョウバン、リポ糖リン酸塩化合物、およびリポ糖リン酸塩ミメティックから選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記免疫原性組成物が、凍結乾燥の前にろ過によって滅菌される、請求項1〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
脊椎動物宿主において免疫応答を刺激する方法であって、該方法は、
請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物を水性流体と組み合わせて懸濁物を形成する工程;および
免疫応答を誘導するために有効な量で該懸濁物を該宿主に投与する工程を含む、方法。
【請求項33】
脊椎動物宿主を腫瘍または病原生物に対して免疫する方法であって、該方法は、
請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物を水性流体と組み合わせて懸濁物を形成する工程;および
防御応答を誘導するために有効な量で該懸濁物を該宿主に投与する工程を含む、方法。
【請求項34】
脊椎動物宿主において腫瘍または病原生物感染を治療する方法であって、該方法は、
請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物を水性流体と組み合わせて懸濁物を形成する工程;および
治療応答を誘導するために有効な量で該懸濁物を該宿主に投与する工程を含む、方法。
【請求項35】
前記懸濁物が前記脊椎動物宿主に注射される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記脊椎動物宿主がヒトである、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記免疫応答が細胞性免疫応答を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記免疫応答がTh1免疫応答を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記免疫応答がCTL免疫応答を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記免疫応答が、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物感染に対して惹起される、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物を生産する方法であって、該方法は、
(a)(i)有機溶媒に溶解された生分解性ポリマーを含む第一液体を、(ii)水を含む第二液体と組み合わせる工程であって、そのときに該生分解性ポリマーを含むナノ粒子の懸濁物が形成される、工程、
(b)抗原をナノ粒子に吸着させ、抗原吸着ナノ粒子懸濁物を形成する工程、および
(c)該抗原吸着ナノ粒子懸濁物を凍結乾燥する工程を包含する、
方法。
【請求項42】
前記凍結保護剤が凍結乾燥の直前に添加される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗原を前記ナノ粒子に吸着させる工程の前に、前記ナノ粒子懸濁物と該抗原を滅菌ろ過する工程をさらに含む、請求項41または請求項42に記載の方法。
【請求項44】
凍結乾燥の前に前記抗原吸着ナノ粒子懸濁物を滅菌ろ過する工程をさらに含む、請求項41〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
請求項1〜31のいずれか1項に記載の凍結乾燥ナノ粒子組成物を含む第一容器を含むキット。
【請求項46】
前記第一容器中の凍結乾燥ナノ粒子組成物を再懸濁するために有用な滅菌液体媒質を含む第二容器をさらに含む、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
注射器をさらに含む、請求項45または請求項46に記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−518306(P2009−518306A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543528(P2008−543528)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/046212
【国際公開番号】WO2008/051245
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】