説明

免疫原性GapCとCAMP因子ポリペプチドとを含む複合ワクチン

細菌感染症一般、特に乳腺炎を予防又は治療するための、CAMP因子と組み合わせたストレプトコッカス ディスガラクティエ(S.dysgalactiae)、ストレプトコッカス アガラクティエ(S.agalactiae)、ストレプトコッカス ウベリス(S.uberis)、ストレプトコッカス パラウベリス(S.parauberis)及びストレプトコッカス イニエ(S.iniae)からのGapCプラスミン結合タンパク質の使用が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌感染症を治療するか予防するための複合ワクチンに関する。より詳しくは、本発明は、ワクチン組成物においてCAMP因子と組み合わせた、ストレプトコッカス ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)、ストレプトコッカス アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス ウベリス(Streptococcus uberis)、ストレプトコッカス パラウベリス(Streptococcus parauberis)及びストレプトコッカス イニエ(Streptococcus iniae)に由来するGapCプラスミン結合タンパク質の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
乳腺炎は、通常細菌又は真菌に起因する乳腺の感染症である。感染の後の炎症性反応は、乳汁収率並びに品質の低下を起こし、酪農業に年間で大きな経済的損失を引き起こす。
【0003】
最も一般的に乳腺炎と関連する細菌種の中には、ストレプトコッカス アウレウス(Streptococcus aureus)、ストレプトコッカス ウベリス(型別不能)、ストレプトコッカス アガラクティエ(ランスフィールドB群)、ストレプトコッカス ディスガラクティエ(ランスフィールドC群)、Streptococcus zooepidemicus並びにランスフィールド群D、G、L及びNの連鎖球菌などのStreptococcus属の様々な種が含まれる。これらの種の一部(例えばS.agalactiae)は感染性病原菌であり、一部(例えばS.dysgalactiaeとS.uberis)は環境病原菌と考えられる。
【0004】
環境病原菌S.uberisは、乳腺炎のすべての臨床症例の約20%を起こしている(Bramley, A. J. and Dodd, F. H. (1984) J. Dairy Res. 51:481〜512; Bramley, A. J. (1987) Animal Health Nutrition 42:12〜16; Watts, J. L. (1988) J. Dairy Sci. 71: 1616〜1624)。この病原菌は非授乳期間に乳腺から分離される主要な種である(Bramley, A. J. (1984) Br. Vet. J. 140: 328〜335; Bramley and Dodd (1984) J. Dairy Res. 51:481〜512; Oliver, S. P. (1988) Am. J. Vet. Res. 49:1789〜1793)。
【0005】
S.uberis感染に起因する乳腺炎は一般に無症状であり、見かけ上、乳汁は正常であるが白血球の流入のために体細胞数が増加する。乳汁の化学組成は、血液から乳汁への塩化ナトリウムと重炭酸塩の移動に伴う分泌の抑制のために変化し、よりアルカリ性に傾く。S.uberis乳腺炎は急性の臨床状態を示すこともあり、その場合、乳汁の凝固又は変色及び乳腺の腫脹又は硬化などの明らかな病変徴候が見られる。一部の症例では臨床病変が激しくなり、発熱を伴うこともある。S.uberis乳腺炎の臨床症状のレビューに関しては、C. Burvenich, G. Vandeputte-van Messom and A. W. Hill(監修)、New insights into the pathogenesis of mastitis, Rijksuniversiteit Gent、 ベルギー、中のBramley (1991) Mastitis: physiology or pathology, p.3〜9、及びBovine Mastitis. Lee & Febiger、フィラデルフィア、中のSchalm et al. (1971) The mastitis complex-A brief summary, p.1〜3を参照。
【0006】
乳首浸漬と抗生物質療法のような従来の抗菌剤による制御方法は多くの種類の伝染性乳腺炎の管理に効果的であるが、すべての乳牛畜舎で典型的に見つかる環境微生物はそのような手段に対してしばしば耐性である。従って、ワクチン接種は乳腺感染症を予防する魅力的な方策であり、一部の伝染性乳房炎病源菌の場合に有益であることが示された。
【0007】
S.dysgalactiaeとS.uberisに対するワクチン接種の研究に関する文献は限られており、様々な結果が観察されている。場合によっては、免疫化により特定の種に対する感受性が高くなり、また他の場合には菌株特異的な保護が得られた。
【0008】
例えば、以前の研究により、S.uberisによる一次感染が同じ菌株による第2の感染の後の感染率をかなり減らせることが分かった(Hill, A. W. (1988) Res. Vet. Sci. 44:386〜387)。死菌化S.uberisによる局所のワクチン接種は、ウシの乳腺を相同的菌株による乳房内感染から保護する(Finch et al.(1994) Infect. Immun. 62:3599〜3603)。同様に、生菌S.uberisによる皮下接種は、同じ株による乳腺炎の発生病理を劇的に修飾することが分かった(Hill et al. (1994) FEMS Immunol. Med. Microbiol. 8:109〜118)。このようにワクチン接種をされた動物がその乳汁に排出する細菌は少なく、多くの乳房区は感染を逃れる。
【0009】
それでもなお、生菌又は弱毒化細菌によるワクチン接種は、被接種個体に危険をもたらす可能性がある。さらに、一般的に従来の死菌ワクチンが、in vitroで増殖した細胞上の感染防御抗原の欠如、又は分子相同性によるこれらの抗原のマスキングのために、大体においてS.uberisとS.agalactiaeに対して効果がないことは明らかである。
【0010】
S.agalactiae又は伝染性の連鎖球菌株に対する乳腺炎ワクチンが現在ないのは、少なくとも1つには病原性決定因子、及び乳腺の侵襲と保護に関係している微生物が生産する感染防御抗原に関する知識が不足しているからである(Collins et al. (1988) J. Dairy Res. 55:25〜32;Leigh et al. (1990) Res. Vet. Sci. 49:85〜87; Marshall et al.(1986)J.Dairy Res.53:507〜514)。
【0011】
S.dysgalactiaeは、細胞外の血漿に由来するいくつかのタンパク質、例えばフィブロネクチン、フィブリノーゲン、コラーゲン、α−II−マクログロブリン、免疫グロブリンG、アルブミンその他の化合物と結合することが周知である。この微生物はヒアルロニダーゼとフィブリノリシンも生成し、ウシの乳房の上皮細胞に付着して侵入することができる。しかし、これら発生病理の表現型を起こす細菌成分の正確な役割は知られていない。
【0012】
同様に、S.uberis感染症の発生病理は十分に理解されていない。さらに、宿主防御機構と乳腺生理学に対するS.uberisの病原性因子の影響は明らかにされていない。S.uberisと関連する公知の病原性因子には、ヒアルロン酸カプセル(Hill, A. W. (1988) Res. Vet. Sci. 45:400〜404)、ヒアルロニダーゼ(Schaufuss et al. (1989) Zentralbl. Bakteriol. Ser. A271:46〜53)、R様タンパク質(Groschup, M. H. and Timoney, J. F. (1993) Res. Vet. Sci. 54:124〜126)、UBERIS因子としても知られるCAMP因子であるコヘモリシン(cohemolysin)(Skalka, B. and Smola, J. (1981) Zentralbl. Bakteriol. Ser. A249:190〜194)、R様タンパク質、プラスミノーゲンアクティベーター及びCAMP因子がある。しかし、病原性におけるそれらの役割はほとんど知られていない。
【0013】
連鎖球菌に由来する病原性決定因子の免疫原性剤としての使用が提案されている。例えば、S.uberisのCAMP因子は、その微生物による感染から脊椎動物対象を保護することが示された(Jiang、米国特許第5863543号)。
【0014】
B群Streptococci A909株(ATCC番号27591)のγ抗原はCタンパク質マーカー複合体の1成分であり、この複合体には他にα及びβサブユニットが含まれる(Boyle、米国特許第5721339号)。B群連鎖球菌の血清型Ia、II及びIbの実質的にすべての血清型の細胞のサブセットは、Cタンパク質の成分を発現すると報告されている。ランスフィールドB群の連鎖球菌感染による感染症に対する免疫原性剤としてのγサブユニットの使用が提案されている。しかし、動物の細菌感染症、例えばウシ乳腺炎の予防又は治療のための使用は調査されていない。
【0015】
A群連鎖球菌Mタンパク質は、ヒトの食細胞による攻撃を妨害する能力のために、この微生物の主要な病原性因子の1つであると考えられている(Lancefield, R. C. (1962) J. Immunol. 89:307〜313)。この細菌は、M分子に対して抗体が生成されるまで感染させた組織に留まる。Mタンパク質に対する型特異抗体はその分子の食作用阻止効果を無効にして、侵入微生物の効率的な一掃を可能にする。
【0016】
Mタンパク質は、食作用耐性の媒介に関わる(Kehoe, M. A. (1991) Vaccine 9:797〜806)こと、またそのスーパー抗原性とその宿主交差反応性抗体応答を誘起する能力を通して潜在的に有害な宿主免疫応答を誘発する能力(Bisno, A. L. (1991) New Engl. J. Med. 325:783〜793; Froude et al.(1989) Curr. Top. Microbiol. Immunol. 145:5〜26; Stollerman, G. H. (1991) Clin. Immunol. Immunopathol.61: 131〜142)のために、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の主要な病原性因子の1つである。
【0017】
しかし、手つかずのMタンパク質をワクチンとして使うことには障害が存在する。前記タンパク質のオプソニン性エピトープは極めて型特異的であり、範囲の狭い、型特異的保護となる。さらに、一部のMタンパク質は免疫化対象の組織と交差反応するエピトープを含有して有害な自己免疫応答を引き起こすようである(例えば、Dale, J. L. and Beached, G. H. (1982) J. Exp. Med 156:1165〜1176; Dale, J. L. and Beached, G. H. (1985) J. Exp. Med. 161:113〜122; Baird, R. W.、 Bronze, M. S.、 Drabs, W., Hill, H. R., Veasey, L. G. and Dale, J. L. (1991) J. Immun. 146:3132〜3137; Bronze, M. S. and Dale, J. L. (1993) J. Immun 151:2820〜2828; Cunningham, M. W. and Russell, S. M. (1983) Infect. Immun. 42:531〜538)。
【0018】
S.dysgalactiaeとStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)のフィブロネクチン結合タンパク質に由来する3つの異なるフィブロネクチン結合領域(FNBDs)を含有しているキメラタンパク質が、Staph.carnosus細胞の表面で発現された。これらのタンパク質の1つの場合、その表面でキメラタンパク質を発現している組換えStaph.carnosus生菌細胞による鼻腔内の免疫化により、キメラ表面タンパク質内に存在するモデル免疫原に対する抗体応答が改善された。
【0019】
A群連鎖球菌株からのGapCプラスミン結合タンパク質は以前に同定されて特性が明らかにされており、血栓溶解療法におけるその使用が記載されている(Boyle et al.、米国特許第5237050号;Boyle et al.、米国特許第5328996号)。
【0020】
しかし、これまで、キメラCAMP因子と組み合わせたGapCの保護的能力は研究されていない。
【特許文献1】米国特許第5863543号
【特許文献2】米国特許第5721339号
【特許文献3】米国特許第5237050号
【特許文献4】米国特許第5328996号
【特許文献5】国際出願第91/04282号
【特許文献6】米国特許第4708871号
【特許文献7】米国特許第4431739号
【特許文献8】米国特許第4425437号
【特許文献9】米国特許第4338397号
【特許文献10】米国特許第4341761号
【特許文献11】米国特許第4399121号
【特許文献12】米国特許第4427783号
【特許文献13】米国特許第4444887号
【特許文献14】米国特許第4452570号
【特許文献15】米国特許第4466917号
【特許文献16】米国特許第4472500号
【特許文献17】米国特許第4491632号
【特許文献18】米国特許第4493890号
【特許文献19】米国特許第5071651号
【特許文献20】米国特許第4722840号
【特許文献21】国際出願第WO/90/11092号
【特許文献22】Mullis et al.、米国特許第4683195号
【特許文献23】Mullis、米国特許第4683202号
【非特許文献1】Bramley, A. J. and Dodd, F. H. (1984) J. Dairy Res. 51:481〜512
【非特許文献2】Bramley, A. J. (1987) Animal Health Nutrition 42:12〜16
【非特許文献3】Watts, J. L. (1988) J. Dairy Sci. 71:1616〜1624)
【非特許文献4】Bramley,A.J. (1984) Br. Vet. J. 140:328〜335
【非特許文献5】Oliver, S. P. (1988) Am. J. Vet. Res. 49:1789〜1793
【非特許文献6】C. Burvenich, G. Vandeputte-van Messom and A.W.Hill(監修)、New insights into the pathogenesis of mastitis、Rijksuniversiteit Gent、ベルギー、中のBramley (1991) Mastitis: physiology or pathology, p.3〜9
【非特許文献7】Bovine Mastitis.Lee & Febiger、フィラデルフィア、中のSchalmet al. (1971), The mastitis complex-A brief summary, p.1〜3
【非特許文献8】Hill, A. W. (1988) Res. Vet. Sci. 44:386〜387
【非特許文献9】Finch et al. (1994) Infect. Immun. 62:3599〜3603
【非特許文献10】Hill et al.(1994) FEMS Immunol. Med. Microbiol. 8:109〜118
【非特許文献11】Collins et al. (1988) J. Dairy Res. 55:25〜32
【非特許文献12】Leigh et al.(1990) Res. Vet. Sci. 49:85〜87
【非特許文献13】Marshall et al. (1986) J. Dairy Res. 53:507〜514
【非特許文献14】Hill, A. W. (1988) Res. Vet. Sci. 45:400〜404
【非特許文献15】Schaufuss et al. (1989) Zentralbl. Bakteriol. Ser. A271:46〜53
【非特許文献16】Groschup, M. H. and Timoney, J. F. (1993) Res. Vet. Sci. 54:124〜126
【非特許文献17】Skalka, B. and Smola, J. (1981) Zentralbl. Bakteriol. Ser. A249:190〜194
【非特許文献18】Lancefield, R. C. (1962) J. Immunol. 89:307〜313
【非特許文献19】Kehoe, M. A. (1991) Vaccine 9:797〜806
【非特許文献20】Bisno, A. L. (1991) New Engl. J. Med. 325:783〜793
【非特許文献21】Froude et al. (1989) Curr. Top. Microbiol. Immunol. 145:5〜26
【非特許文献22】Stollerman, G. H. (1991) Clin. Immunol. Immunopathol. 61:131〜142
【非特許文献23】Dale,J.L. and Beached, G. H. (1982) J. Exp. Med. 156:1165〜1176
【非特許文献24】Dale, J. L. and Beached, G. H. (1985) J. Exp. Med. 161:113〜122
【非特許文献25】Baird, R. W., Bronze, M. S., Drabs, W., Hill, H. R., Veasey, L. G. and DALE, J. L. (1991) J. IMMUN. 146:3132〜3137
【非特許文献26】Bronze, M. S. and Dale, J. L. (1993) J. Immun 151:2820〜2828
【非特許文献27】Cunningham, M. W. and Russell, S. M. (1983) Infect. Immun. 42:531〜538
【非特許文献28】Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning :A Laboratory Manual, Vols. I, II and III, Second Edition (1989)
【非特許文献29】Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984)
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【非特許文献31】Handbook of Experimental Immunology, Vols.I〜IV(D. M. Weir and C. C. Blackwell編, 1986, Blackwell Scientific Publications
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【非特許文献79】Finch et al. (1997) Vaccine 15:1138〜1143
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0021】
従って、本発明は、キメラCAMP因子と連鎖球菌GapCワクチンの新規組成物及びそれを使う方法を提供する。一実施形態では、本発明はワクチン組成物に向けられ、この組成物は(a)薬剤として許容されるビヒクル、(b)図29の27〜314位置で表した連続アミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性(sequence identity)を有するアミノ酸を含んでいるキメラCAMP因子ポリペプチド、並びに(c)GapCタンパク質を含み、前記GapCタンパク質は、
(i)図1A〜1B(配列番号4)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(ii)図2A〜2B(配列番号6)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(iii)図3A〜3B(配列番号8)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(iv)図4A〜4B(配列番号10)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(v)図5A〜5B(配列番号12)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、並びに、
(vi)(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)の免疫原性断片であって、少なくとも約5つのアミノ酸を含む断片
からなる群から選択される。
【0022】
別の実施形態では、GapCタンパク質は、図1A〜1B(配列番号4)の1から336までのアミノ酸位置に示されたストレプトコッカス ディスガラクティエのGapCタンパク質のアミノ酸配列、又はその免疫原性断片を含み、前記断片は少なくとも約5つのアミノ酸を含む。
【0023】
別の実施形態では、GapCタンパク質は、図2A〜2B(配列番号6)の1から336までのアミノ酸位置に示されたストレプトコッカス アガラクティエのGapCタンパク質のアミノ酸配列、又はその免疫原性断片を含み、前記断片は少なくとも約5つのアミノ酸を含む。
【0024】
別の実施形態では、GapCタンパク質は、図3A〜3B(配列番号8)の1から336までのアミノ酸位置に示されたストレプトコッカス ウベリスのGapCタンパク質のアミノ酸配列、又はその免疫原性断片を含み、前記断片は少なくとも約5つのアミノ酸を含む。
【0025】
別の実施形態では、GapCタンパク質は、図4A〜4B(配列番号10)の1から336までのアミノ酸位置に示されたストレプトコッカス パラウベリスのGapCタンパク質のアミノ酸配列、又はその免疫原性断片を含み、前記断片は少なくとも約5つのアミノ酸を含む。
【0026】
別の実施形態では、GapCタンパク質は、図5A〜5B(配列番号12)の1から336までのアミノ酸位置に示されたストレプトコッカス イニエのGapCタンパク質のアミノ酸配列、又はその免疫原性断片を含み、前記断片は少なくとも約5つのアミノ酸を含む。
【0027】
ある実施形態では、前記組成物はさらにアジュバントを含む。
【0028】
別の実施形態では、本発明は脊椎動物対象の細菌感染症の予防又は治療方法に向けられ、この方法には前記対象に前記ワクチン組成物の治療的有効量を投与することが含まれる。ある実施形態では、この細菌感染症は連鎖球菌感染症(streptococcus infection)である。別の実施形態では、この細菌感染症は乳腺炎を引き起こす。
【0029】
別の実施形態では、本発明は脊椎動物対象の細菌感染症を治療又は予防するためのキメラCAMP因子ポリペプチドとGapCタンパク質の使用に向けられ、前記キメラCAMP因子ポリペプチドと前記GapCタンパク質は上に記載した通りである。ある実施形態では、この細菌感染症は連鎖球菌感染症である。別の実施形態では、この細菌感染症は乳腺炎を引き起こす。
【0030】
別の実施形態では、本発明は脊椎動物対象の細菌感染症を治療又は予防するための薬剤の製造におけるキメラCAMP因子ポリペプチドとGapCタンパク質の使用に向けられ、前記キメラCAMP因子ポリペプチドと前記GapCタンパク質は上に記載した通りである。ある実施形態では、この細菌感染症は連鎖球菌感染症である。別の実施形態では、この細菌感染症は乳腺炎を引き起こす。
【0031】
別の実施形態では、本発明は前記したキメラCAMP因子ポリペプチドとGapCタンパク質、及び薬剤として許容されるビヒクルを組み合わせることを含むワクチン組成物の製造方法に向けられる。
【0032】
本発明のこれらを含む実施形態は、本明細書で開示されたものに照らし、当業者には容易に思い付くことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施には、特に明記しない限り、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術及び免疫学の従来の手法を使用するが、これらは当分野の技術の範囲内である。そのような手法は、文献に詳しく説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. I, II ans III, Second Edition (1989); Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984); シリーズのMethods In Enzymology( S. Colowick and N.Kaplan編, Academic Press,Inc.);及びHandbook of Experimental Immunology, Vols. I〜IV(D. M. Weir and C.C. Blackwell編, 1986, Blackwell Scientific Publications)を参照。
【0034】
上であれ以下であれ、本明細書で引用したすべての刊行物、特許及び特許出願はそのまま参照により本明細書に取り込まれている。
【0035】
以下のアミノ酸略記号が本文を通して使われる。
アラニン:Ala(A) アルギニン:Arg(R)
アスパラギン:Asn(N) アスパラギン酸:Asp(D)
システイン:Cys(C) グルタミン:Gln(Q)
グルタミン酸:Glu(E) グリシン:Gly(G)
ヒスチジン:His(H) イソロイシン:Ile(I)
ロイシン:Leu(L) リジン:Lys(K)
メチオニン:Met(M) フェニルアラニン:Phe(F)
プロリン:Pro(P) セリン:Ser(S)
トレオニン:Thr(T) トリプトファン:Trp(W)
チロシン:Tyr(Y) バリン:Val(V)。
【0036】
1.定義
本発明を記載する際に以下の用語が使用され、これらは以下で示すように定義される。
【0037】
本明細書と添付の請求項で使われているように、単数形「a」、「an」及び「the」は、明らかに別の指示がない限り複数体を含むことに注意する必要がある。従って、例えば、「連鎖球菌GapCタンパク質」への言及は、2個以上のそのようなタンパク質の混合物を含む、などである。
【0038】
用語「GapCタンパク質」と「GapCプラスミン結合タンパク質」(本明細書では同じ意味で使用される)、又はこれをエンコードするヌクレオチド配列は、それには限定されないがA群連鎖球菌のある株を含めて様々な連鎖球菌種に存在するGapC遺伝子に由来するタンパク質若しくはヌクレオチドの配列をそれぞれ意味する(Lottenbery, R. et al. (1987) Infect. Immun. 55:1914〜1918)。代表的連鎖球菌gapC遺伝子のヌクレオチド配列とこれらの遺伝子によってエンコードされるGapCタンパク質の対応するアミノ酸配列は、図の中で表されている。特に、図1から5は、以下に示す単離されたヌクレオチド配列及び単離されたアミノ酸配列を示す。S.dysgalactiae(それぞれ配列番号3及び配列番号4)、S.agalactiae(それぞれ配列番号5及び配列番号6)、S.uberis(それぞれ配列番号7及び配列番号8)、S.parauberis(それぞれ配列番号9及び配列番号10)並びにS.iniae(それぞれ配列番号11及び配列番号12)。S.uberisとS.agalactiaeのgapC遺伝子のヌクレオチド配列は、それぞれアクセッション番号AF421899及びAF421900の下でGenBankに提出された。
【0039】
しかし、これらの連鎖球菌種の各々にはサブタイプが知られ、GapCタンパク質の変異がそれらの間に発生するので、本明細書で定義されたGapCタンパク質は示された配列に限定されない。
【0040】
S.dysgalactiae、S.agalactiae、S.uberis及びS.parauberisに由来する代表的gapC遺伝子は、それぞれプラスミドpET15bgapC(ATCC No.PTA−1976)、pMF521c(ATCC No.PTA−1975)、pMF521a(ATCC No.PTA−1973)、pMF521d及びpMF521e(ATCC No.PTA−1972)に存在する。
【0041】
さらに、導かれたタンパク質又はヌクレオチド配列は、前記遺伝子から物理的に導かれる必要はなく、本明細書で提供される情報に基づきどんな方法、例えば、化学合成、単離(例えば、S.dysgalactiaeから)又は、組換え生成などの方法で作成されてもよい。
【0042】
この用語には、そのようなものが存在すればシグナル配列を所有するか欠いているタンパク質、並びに調製様式により中性の形態、又は塩基若しくは酸添加塩の形態のタンパク質も含まれる。そのような酸添加塩は遊離のアミノ基を含むこともでき、塩基性塩が遊離のカルボキシル基で形成されるかもしれない。薬剤として許容される塩基及び酸の添加塩は、さらに下で議論される。さらに、前記タンパク質は、脂質(その分子を有する天然の資質又は免疫学的な活性を破壊しない他の脂質)及びサッカライドのような他の生体物質と組み合わせることにより、或いは側鎖修飾、例えばアミノ基のアセチル化、ヒドロキシ側鎖のリン酸化、スルフヒドリル基の酸化、アミノ酸残基のグリコシル化、並びにエンコードされた一次配列の他の修飾によって修飾できる。
【0043】
用語「連鎖球菌GapCタンパク質」は、上で定義されたように、それを生成する連鎖球菌種、例えばそれには限定されないがS.dysgalactiae、S.agalactiae、S.uberis、S.parauberis及びS.iniaeに由来するGapCプラスミン結合タンパク質を意味する。例えば、「S.dysgalactiaeのGapCタンパク質」は、上で定義されたように、S.dysgalactiaeに由来するGapCプラスミン結合タンパク質である。同様に、「S.agalactiaeのGapCタンパク質」は、S.agalactiaeに由来するGapC結合タンパク質である。
【0044】
GapCタンパク質に関する用語「変異体」と「突然変異蛋白質」は、上で定義したようにGapCタンパク質の生物学的に活性な誘導体、又は免疫学的及び/又はプラスミン結合活性を保持するその誘導体の断片を指す。用語「突然変異蛋白質」は、1つ以上のペプチド擬態(「ペプトイド」)を有するペプチドを意味し、これらは例えば、国際出願第91/04282号に記載されている。好ましくは、変異体又は突然変異蛋白質は少なくとも未変性の分子と同じ活性を有す。ポリペプチド変異体と突然変異蛋白質の作製方法は当技術分野で周知であり、さらに下で記載される。
【0045】
一般に、用語「変異体」は、その修飾が活性を破壊しない限り、元の分子に1つ以上のアミノ酸添加、置換(通常、自然界では保存的)及び/又は欠失を有するポリペプチド配列を有する化合物を意味する。このように、GapCタンパク質の「変異体」には、前記免疫学的及び/又はプラスミン結合活性を示すGapC遺伝子によってエンコードされる連続するアミノ酸配列と実質上相同的(下で定義される)なアミノ酸配列を有するタンパク質が含まれる。特に好ましい置換は、一般的に自然界では保存的なものであり、つまりアミノ酸ファミリー内で起こる置換である。例えば、アミノ酸は通常、4つのファミリーに分けられる。(1)酸性−アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩、(2)塩基性−リジン、アルギニン、ヒスチジン、(3)非極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、及び(4)非荷電極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは、芳香族アミノ酸として分類されることもある。例えば、イソロイシン若しくはバリンによるロイシンの独立した置換又はその逆の置換、グルタミン酸塩によるアスパラギン酸塩の独立した置換又はその逆の置換、セリンによるトレオニンの独立した置換又はその逆の置換、或いは構造的に関連したアミノ酸によるアミノ酸の同様な保存的な置換は、生物学的活性に大きく影響しないことは当然予想できる。実質上同じアミノ酸配列を参照分子として有するが前記タンパク質の免疫原性及び/又はプラスミン結合能に実質的に影響を及ぼさない些細なアミノ酸置換を有するタンパク質は、従って前記参照ポリペプチドの定義の範囲内である。
【0046】
他の置換には、天然のアミノ酸のアミノ酸類似体による置換が含まれる。そのようなアミノ酸類似体は公知であり、それには限定されないが以下の化合物が含まれる。2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、ピペリジン酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ヒドロキシリシン、アロ−ヒドロキシリシン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、サルコシン、N−メチルイソロイシン、6−N−メチルリシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、及びオルニチン。
【0047】
例えば、関心のポリペプチドは最高約5〜10の保存的若しくは非保存的アミノ酸置換を含んでもよく、又は約15〜25若しくは20〜50の保存的若しくは非保存的なアミノ酸置換を含んでもよく、又は前記分子の望ましい機能がそのまま保持される限りこれらの値の間のいかなる整数の置換を含んでもよい。
【0048】
この点に関し、連鎖球菌から単離されるGapCタンパク質はそのアミノ酸配列にいくつかの可変領域を示し、これらは図1〜5に示したアミノ酸配列と比較して、アミノ酸位置62〜81、102〜112、165〜172、248〜271及び286〜305に存在する。これらの領域はS.dysgalactiae、S.agalactiae、S.uberis、S.parauberis及びS.iniaeにおいて1〜9個のアミノ酸置換を示すが、実質的に免疫原性や酵素機能が影響されずに変異を受けることが予想される。
【0049】
同様に、もし存在するならば膜貫通結合領域やシグナル配列で起こる置換は、通常、免疫原性に影響を及ぼさない。当分野の技術を有する者ならば、本明細書図8〜17に示されるタンパク質構造データを参考にして、変異に寛容な関心分子の他の領域を容易に確定できるかもしれない。
【0050】
用語「断片」は、参照遺伝子の未変性のポリペプチド配列と構造又はヌクレオチド配列と構造の一部のみからなるポリペプチド又はポリヌクレオチドを意味する。ポリペプチド断片は、未変性のポリペプチドのC末端の欠失及び/又はN末端の欠失を含むことができ、或いは分子の内部に由来してもよい。同様に、ポリヌクレオチド断片は、未変性のポリヌクレオチドの3’及び/又は5’の欠失を含むことができ、或いは分子の内部に由来してもよい。GapCタンパク質のポリペプチド「断片」は、通常、少なくとも約5つの連続するアミノ酸残基、好ましくは完全長分子の少なくとも約10の連続するアミノ酸残基、好ましくは完全長分子の少なくとも約15〜25の連続するアミノ酸残基、最も好ましくは完全長分子の少なくとも約20〜50以上の連続するアミノ酸残基を含むが、前記したように当の断片がGapC活性を保持するならばアミノ酸5個と完全長配列の間のいかなる整数のアミノ酸でもよい。
【0051】
関心遺伝子のヌクレオチド断片は、通常、前記遺伝子の少なくとも約8つの連続する塩基対、より好ましくは少なくとも約10〜20の連続する塩基対、最も好ましくは少なくとも約25〜50以上の連続する塩基対を含むが、これらの値の間のいかなる整数でもよい。このような断片はプローブとして、また診断法で役立つが、以下でより詳しく議論される。
【0052】
さらに、ポリペプチド断片には、参照タンパク質に存在するならば膜アンカー領域が欠失したGapCタンパク質の形態、及びそのような欠失を有するタンパク質をエンコードする核酸配列が含まれる。そのような欠失は、前記タンパク質の分泌をしない系で望ましいかもしれない。
【0053】
さらに、前記タンパク質のプラスミン結合領域は存在してもよく存在しなくてもよい。このように、例えば、GapCプラスミン結合タンパク質がプラスミンを精製するために用いられるならば、前記プラスミン結合領域は通常保持される。前記タンパク質がワクチン組成物で使われる予定ならば、プラスミン結合領域を含むか又は含まない免疫原性エピトープが存在する。
【0054】
「単離された」タンパク質又はポリペプチドとは、自然界でその分子が存在する生物全体から分離され引き離されたタンパク質又はポリペプチド分子、或いは自然界では通常それと会合する配列の全体若しくは一部が欠けたタンパク質又はポリペプチド、或いは自然界に存在するような配列であるがそれと会合して異種配列(下で定義される)を有する配列である。
【0055】
用語「機能的に等価」は、GapCプラスミン結合タンパク質又はCAMP−3ポリペプチドのアミノ酸配列が、そのタンパク質がワクチンで使われる予定ならば本明細書で定義されたように実質的に等価若しくは強化された免疫応答を引き出すアミノ酸配列、或いは参照GapCプラスミン結合タンパク質若しくはその免疫原性部分、若しくは図29に示すCAMP−3ポリペプチド若しくはその免疫原性部分と同一性を有するGapCプラスミン結合タンパク質の活性と比較してイムノアッセイで等価若しくは高い活性を示すアミノ酸配列を意味する。
【0056】
用語「エピトープ」は、特定のB細胞及び/又はT細胞が反応する抗原又はハプテン上の部位を指す。この用語は、「抗原決定基」又は「抗原決定基部位」と同義でも使用される。同じエピトープを認識する抗体は、1つの抗体による他の抗体の標的抗原との結合を阻止する能力を示す簡単なイムノアッセイで同定できる。
【0057】
用語「免疫原性」タンパク質又はポリペプチドは、本明細書で記載されているように、免疫応答を引き出すアミノ酸配列を指す。本明細書で使われるように、「免疫原性」タンパク質又はポリペプチドは、当のGapCプラスミン結合タンパク質の完全長配列、或いはシグナル配列、膜アンカー領域及び/又はプラスミン結合領域、その類似体、若しくはその免疫原性断片の有無にかかわらずCAMP−3の完全長配列を含む。「免疫原性断片」は、1つ以上のエピトープを含み、本明細書で記載された免疫応答を引き出すGapCプラスミン結合タンパク質の断片を意味する。そのような断片は、当技術分野で公知のエピトープマッピング手法を適宜使って同定できる。例えば、Methods in Molecular Biology, Vol.66(Glenn E. Morris編, 1996)、Humana Press、Totowa、New Jersey、中のEpitope Mapping Protocolsを参照。例えば、線形のエピトープは、例えば、タンパク質分子の部分に対応するペプチドを多数固体の支持体上で同時に合成し、前記ペプチドが支持体に固着している間に前記ペプチドを抗体と反応させることにより確定できる。そのような手法は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4708871号;Geysen et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998〜4002;Geysen et al.(1986) Molec. Immunol. 23:709〜715に記載されており、すべて完全に参照により本明細書に組み込まれている。同様に、立体配座エピトープは、アミノ酸の空間配座を、例えばX線結晶学と2次元核磁気共鳴によリ決定して容易に同定できる。例えば、上と同様Epitope Mapping Protocolsを参照。タンパク質の抗原性領域は、標準の抗原性及びハイドロパシープロット、例えばOxford Molecular Groupから入手できるソフトウェアOmiga Ver.1.0を用いて計算されたものなどを使用しても同定できる。このコンピュータプログラムは、抗原性プロフィールを決定するためにホップ/ウッズ方法、Hopp et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1981) 78:3824〜3828、またハイドロパシープロットのためにはKyte−Doolittle手法、Kyte他、J. Mol. Biol. (1982) 157:105〜132を用いる。本明細書図8〜12は、本発明に含まれる代表的タンパク質のKyte−Doolittleプロフィールを表す。
【0058】
本発明では、免疫原性断片は通常、親のGapCプラスミン結合、結合タンパク質分子の最低約3つのアミノ酸、好ましくは最低約5つのアミノ酸、より好ましくは最低約10〜15のアミノ酸、最も好ましくは25以上のアミノ酸を含む。断片長には臨界上限がなく、前記タンパク質配列のほぼ完全長、又はGapCの2つ以上のエピトープを含む融合タンパク質でさえ含むことができる。
【0059】
「免疫原性組成物」は、組成物の対象への投与により、前記対象で関心の抗原性分子に対する液性及び/又は細胞性の免疫反応が発達するような抗原性の分子を含む組成物である。
【0060】
「サブユニットワクチン組成物」は、関心の病原体の抗原に由来するかそれと相同的な、すべてではなく最低1つの免疫原性ポリペプチドを含有する組成物を意味する。そのような組成物は、実質的に未変性の病原体細胞や粒子、及びそのような細胞や粒子の溶解物を含まない。従って、「サブユニットワクチン組成物」は、病原体の少なくとも部分的に精製された(好ましくはかなり精製された)免疫原性ポリペプチド、又はその組換え類似体から調製される。サブユニットワクチン組成物は、病原体に由来する他の抗原やポリペプチドを実質上含まないサブユニット抗原又は関心の抗原を含むことができる。
【0061】
「薬剤として許容される」又は「薬理学的に許容できる」は、生物学上又はその他の観点から望ましくなくはない物質を意味し、即ち、その物質が個体に対してある製剤若しくは組成で投与されたときに、いかなる望ましくない生体影響も引き起こさず、またそれが含有される組成物のいかなる成分とも有害な相互作用を起こさない。
【0062】
組成物又はワクチンへの「免疫応答」は、宿主における関心の組成物又はワクチンに対する細胞性及び/又は抗体媒介性免疫応答の発達である。通常、「免疫応答」は以下の効果の1つ以上を含むが、これに限定されるものではない。関心の組成物又はワクチンに含まれる1つ若しくは複数の抗原に特異的な、抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞及び/又は細胞障害性T細胞及び/又はγδT細胞の生産。好ましくは、新規感染症に対する乳腺の抵抗性が強化され、かつ/又は前記疾患の臨床重症度が軽減されるように宿主が治療的若しくは予防的免疫応答を示すのがよい。このような保護は、感染宿主が通常示す症状の軽減若しくは欠如、及び/又はより早い回復時間によって証明される。
【0063】
「核酸免疫化」は、1つか複数の抗原、又は1つか複数のエピトープのin vivoでの発現のために、宿主細胞へ選択された1つ以上の抗原をエンコードしている核酸分子を導入することを意味する。核酸分子は、例えば注射、吸入、経口、鼻腔内及び粘膜投与、又は類似の方法で直接対象に導入でき、或いは、宿主から取り出された細胞に生体外で導入することができる。後者の場合、形質転換細胞は対象に再び導入され、そこではエンコードされた抗原に対する免疫応答が前記核酸分子によって開始される。
【0064】
本明細書で使用される用語「治療」は、(1)感染若しくは再感染の防止(予防)、又は(2)関心疾患の症状の軽減若しくは除去(治療)を指す。
【0065】
「乳腺炎」は、ウシ、雌ヒツジ、ヤギ、雌ブタ、雌馬、などを含む哺乳類のS.uberisに起因する乳腺の炎症を意味する。この感染症は、腺内の食細胞の浸潤として現れる。通常、乳腺炎では4つの臨床型が認められている。(1)過急性、腫脹と関連する、腺の熱、痛覚、及び異常な分泌、発熱と全身の撹乱の徴候、例えば著しい欝状態、急速な虚脈、窪んだ眼、衰弱及び完全な食欲低下などが伴う。(2)急性、上と同じような腺の変化を伴うが、発熱、食欲低下及び欝状態がわずかから中等度である。(3)亜急性、全身の変化は見られなく、腺とその分泌の変化の程度はより低い。(4)無症状、炎症反応は乳腺炎の標準検査だけによって検出可能。
【0066】
乳腺炎の検出のための標準検査には、それに限定されないが、カリフォルニア乳腺炎検査、ウィスコンシン乳腺炎検査、ナガセ検査、及び乳汁内の持続的に高い白血球含量を検出する電子細胞計測及び体細胞数計測が含まれる。一般的に、乳汁1mlにつき約300,000〜500,000の体細胞数は、感染症の存在を示す。このように、例えば、乳汁中の体細胞数計測が1mlにつき約500,000以下に維持されているときは、ワクチンは乳腺炎の治療及び/又は予防に効果的であると思われる。乳腺炎とその診断の考察に関しては、例えばThe Merck Veterinary Manual: A Handbook of Diagnosis, Therapy, and Disease Prevention and Control for the Veterinarian, Merck and Co., Rahway, New Jersey, 1991を参照。
【0067】
用語「脊椎動物」、「対象」及び「脊椎動物対象」は、脊索動物亜門のいかなる種を意味し、これには、それには限定されないが、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマ、ヒトなどの哺乳類、例えばイヌ、ネコなどの家畜、ニワトリ、シチメンチョウ及び他の家禽類を含む雄鶏と雌鶏のような飼い鳥、野鳥及び狩猟鳥などの鳥類、並びに魚類が含まれる。この用語は、特定の年齢を意味しない。従って、成体及び生まれたばかりの動物、並びに胎仔が含まれる。
【0068】
「核酸」分子には、原核生物の配列、真核生物のmRNA、真核生物のmRNAからのcDNA、真核生物(例えば哺乳動物)のDNAからのゲノムDNA配列、及び合成DNA配列でさえ含まれるが、これに限定されるものではない。この用語には、DNA及びRNAの公知の塩基類似体のいずれかを含む配列も含まれる。
【0069】
「単離された」核酸分子とは、自然界でその分子が存在する生物全体から分離され引き離された核酸分子、或いは自然界では通常それと会合している配列の全体若しくは一部が欠けた核酸分子、或いは自然界に存在するような配列であるがそれと会合して異種配列(下で定義される)を有する配列である。ポリヌクレオチドに関連して用いられる用語「単離された」は、前記ポリヌクレオチドがそれが通常会合している染色体から分離され、またそれが通常存在する完全なゲノム配列から分離されることを意味する。
【0070】
「精製ポリヌクレオチド」は、前記ポリヌクレオチドが自然に会合しているタンパク質を実質的に含まない、例えば、それを約50%未満、好ましくは約70%未満、より好ましくは約90%未満含有する関心のポリヌクレオチド又はその断片を指す。関心のポリヌクレオチドを精製する手法は当技術分野で公知であり、例えば、ポリヌクレオチドを含有する細胞のカオトロピック剤による破壊、並びにイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー及び密度による沈降によるポリヌクレオチドとタンパク質との分離が含まれる。
【0071】
「コード配列」又は特定のタンパク質を「エンコードするヌクレオチド配列」は、in vitro又はin vivoで適当な調節要素による制御下で転写されポリペプチドに翻訳されるヌクレオチド配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン及び3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンで決まる。コード配列には、原核生物の配列、真核生物のmRNAからのcDNA、真核生物(例えば哺乳動物)のDNAからのゲノムDNA配列、及び合成DNA配列でさえ含まれるが、これに限定されるものではない。転写終止配列は、通常、コード配列の3’側に位置する。「相補的」配列は、与えられたヌクレオチド位置の窒素性塩基が参照配列の同じ位置に出現する窒素性塩基の相補体である配列である。実例を示すと、アデノシンの相補体はチロシンでありその逆もそうである。同様に、シトシンはグアニンと相補的でその逆もそうである。従って、参照配列5’−ATGCTGA−3’の相補体は5’−TACGACT−3’である。
【0072】
本明細書で使われる「野生型」又は「未変性の」配列は、実質的に自然界で見られるような配列をエンコードするポリペプチドを指し、図1A〜1B(配列番号4)で表されたS.dysgalactiaeのGapCタンパク質をエンコードしている配列がその例である。
【0073】
本明細書で核酸分子の記載に用いられる「組換え」は、ゲノム、cDNA、半合成若しくは合成のポリヌクレオチドを意味し、これらは、その起源若しくは操作のために、(1)自然界でそれと会合しているポリヌクレオチドのすべて若しくは一部と会合していなく、かつ/又は(2)自然界でそれと結合しているポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドと結合している。タンパク質又はポリペプチドに関して用いられる用語「組換え」は、組換えポリヌクレオチドの発現によって産生されるポリペプチドを意味する。「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞系」、「細胞培養」及び原核微生物若しくは単細胞体として培養された真核細胞系を示す他の用語は同じ意味で使われ、組換えベクター若しくは他の転移DNAの受容体として使用できる若しくは使用されてきた細胞を指し、トランスフェクションした原細胞の後代を含む。1個の親細胞の後代は、偶発性若しくは意図的突然変異の結果、必ずしもその親と形態又はゲノム若しくは総DNA相補体が完全に一致しないかもしれないと理解されている。関連した特性、例えば所望のペプチドをエンコードしているヌクレオチド配列の存在などによって特徴づけられる、親細胞と十分に類似している後代が、この定義が意味する後代に含まれ、上記の用語も適用される。
【0074】
「相同性」は、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド部分の類似度を指す。2つのDNA又は2つのポリペプチド配列が互いに「実質上相同的である」のは、その配列が少なくとも約80%〜85%、好ましくは最低約90%、最も好ましくは最低約95%〜98%の配列類似度若しくは同一性を規定された長さの分子上で示すときである。本明細書で使われるように、実質的に相同は、特定されたDNA又はポリペプチド配列と完全な同一性を示す配列も意味する。
【0075】
一般に、「同一性」は、ヌクレオチド間又はアミノ酸間のそれぞれ2つのポリヌクレオチド配列若しくは2つのポリペプチド配列の正確な一致を意味する。同一度は、2つの分子間の配列情報の直接比較で測定でき、この方法では前記配列を一列に並べ、2つの整列させた配列間の正確なマッチ数を数え、短い配列の長さで割り、その結果に100を掛ける。この解析を支援するコンピュータプログラムが容易に入手でき、例えば、ALIGN, Dayhoff, M. O., Atlas of Protein Sequence and Structure M. O. Dayhoff編、5付録3:353〜358、National biomedical Research Foundation, Washington, DCは、Smith and Waterman (1981) Advances in Appl. Math. 2:482〜489、のペプチド解析用の局所相同性アルゴリズムを応用している。ヌクレオチド配列の同一性を測定するためのプログラムは、Wisconsin Sequence Analysis Package Ver.8(Genetics Computer Group、Madison、WT、から入手可能)にあり、例えば、BESTFIT、FASTA及びGAPプログラムが利用でき、これらもSmith及びWatermanのアルゴリズムに依存する。これらのプログラムは、メーカーによるデフォルトパラメータを使用して容易に利用でき、また前記Wisconsin Sequence Analysis Packageに記載されている。例えば、特定のヌクレオチド配列の参照配列への同一度は、Smith and Watermanの同一性アルゴリズムを利用し、またデフォルトのスコアリング表及び6つのヌクレオチド位置のギャップペナルティーを使用して測定できる。
【0076】
本発明との関連で同一度を確立する別の方法は、エジンバラ大学が著作権を有するプログラムパッケージMPSRCHを使用する方法で、このプログラムはJohn F.Collins及びShane S. Sturrokによって開発され、IntelliGenetics,Inc.(Mountain View、CA)によって配布されている。このパッケージセットからSmith-Watermanアルゴリズムを使用でき、そのスコアリング表ではデフォルトパラメータが使用される(例えば、12のギャップオープンペナルティー、1のギャップエクステンションペナルティー及び6のギャップ)。発生するデータから、「マッチ」値は「配列同一性」を反映する。配列間の同一度又は類似性を計算するための他の適当なプログラムは一般的に当技術分野で公知であり、例えば、BLASTはもう1つの配列プログラムでありデフォルトパラメータで使われる。例えば、BLASTNとBLASTPは以下のデフォルトパラメータを使って利用できる:遺伝コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予想=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;分類基準=HIGH SCORE;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swissタンパク質+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は以下のインターネットサイトで掲載されている:http://www.ncbi.nlm.gov/cgi-bin/BLAST。
【0077】
別法では、相同性は、相同的領域の間で安定した二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションと、それに続く1本鎖特異的ヌクレアーゼによる消化及び消化断片の大きさの測定により決定できる。実質的に相同的なDNA配列は、例えばその特定の系のために規定されたストリンジェントな条件下で行うサザンハイブリダイゼーション実験で同定できる。適切なハイブリダイゼーション条件を定めることは当技術分野の範囲内である。例えば、Sambrook他、同上;DNA Cloning、同上;Nucleic Acid Hybridization、同上を参照。
【0078】
用語「変性変異体」は、その変性変異体が由来するポリヌクレオチドがエンコードするポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをエンコードし、その核酸配列に変化を含んでいるポリヌクレオチドを意味する。
【0079】
アミノ酸配列の「類似性」を決定するための手法は、当技術分野で公知である。一般に、「類似性」は2つ以上のポリペプチドの適当な部位のアミノ酸同士の正確な比較を意味し、そこではアミノ酸は同一であるか、或いは類似した電荷若しくは疎水性などの化学的及び/又は物理的性質を有する。いわゆる「類似度」は、この比較されたポリペプチド配列間で測定することができる。核酸及びアミノ酸配列の同一性を決定するための手法も当技術分野で公知で、これらの手法では前記遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定(通常cDNA中間体を通して)し、それによりエンコードされるアミノ酸配列を決定し、これを第2のアミノ酸配列と比較する。一般に、「同一性」は、ヌクレオチド間又はアミノ酸間のそれぞれ2つのポリヌクレオチド配列若しくは2つのポリペプチド配列の正確な一致を意味する。
【0080】
DNA構築物の「非相同的」領域とは、自然界では他の分子と会合していない別のDNA分子の内部にあるか又はそれに付着している識別可能なDNAセグメントである。従って、非相同的領域がある細菌遺伝子をエンコードしているとき、前記遺伝子は通常、原細菌のゲノムの前記細菌遺伝子に隣接していないDNAに隣接する。非相同的コード配列の別の1例は、コード配列自体が自然界には存在しない構築物である(例えば、原遺伝子と異なるコドンを有する合成配列)。対立遺伝子の変異及び自然の突然変異は、本明細書で使われるようなDNAの非相同的領域を生成しない。
【0081】
「ベクター」とは、別のDNAセグメントをそのセグメントが複製されるように付着させた、プラスミド、ファージ又はコスミドなどのレプリコンである。ベクターは、遺伝子配列を標的細胞へ移すことができる(例えば細菌プラスミドベクター、ウイルスのベクター、非ウイルスベクター、粒状キャリヤー、及びリポソーム)。
【0082】
一般的に、用語「ベクター構築物」、「発現ベクター」、「遺伝子発現ベクター」、「遺伝子送達ベクター」、「遺伝子転移ベクター」、及び「発現カセット」は、すべて、関心の配列又は遺伝子の発現を指示することができる集合体を指す。従って、この用語はクローニング媒体及び発現媒体、並びにウイルスのベクターを含む。
【0083】
これらの集合体は、関心の配列又は遺伝子に作動可能的に結合したプロモーターを含む。他の調節要素も同様に存在してもよい。本明細書で記載される発現カセットは、プラスミド構築物内に含まれてもよい。発現カセットの成分に加えて、プラスミド構築物は、細菌の複製開始点、1つ以上の選択マーカー、プラスミド構築物を一重鎖DNAになるようにするシグナル(例えば、M13複製開始点)、複数のクローニング部位、及び「哺乳類の」複製開始点(例えば、SV40又はアデノウイルス複製開始点)も含むことができる。
【0084】
DNA「調節要素」は、総称して転写プロモーター、転写エンハンサー要素、転写終止配列、ポリアデニル化配列(翻訳終止コドンの3’側に位置する)、翻訳開始最適化配列(コード配列の5’側に位置する)、翻訳終止配列、上流調節領域、及びリボソーム結合部位などを指し、これらはすべて宿主細胞におけるコード配列の転写と翻訳をほう助する。例えば、McCaughan et al. (1995) PNAS USA 92:5431〜5435;Kochetov et al. (1998) FEBS Letts. 440:351〜355を参照。所望の遺伝子が転写され翻訳される限り、これらの調節配列のすべてが組換えベクターに常に存在する必要はない。
【0085】
「作動可能的に結合した」は、そのように記載された要素がその通常の機能を発揮するように構成されている要素の配列を指す。従って、作動可能的にコード配列に結合した調節要素は、そのコード配列の発現をもたらすことができる。調節要素は、それらが機能してその発現を指示する限り、コード配列に隣接する必要はない。従って、例えば、介在する翻訳されていないが転写された配列がプロモーターとコード配列との間に存在することもあり、その場合でもそのプロモーターは前記コード配列に「作動可能的に結合した」とみなすことができる。同様に、「対象での発現と両立する調節要素」とは、その対象でコード配列の発現をもたらすことができるもののことである。
【0086】
調節要素、例えばプロモーターは、RNAポリメラーゼがプロモーターに結合してコード配列をmRNAに転写し、これが前記コード配列によってエンコードされるポリペプチドに翻訳されるときに、細胞内でコード配列の「転写を指示する」。
【0087】
「宿主細胞」は、外因性核酸分子によって形質転換された細胞、又は形質転換ができる細胞である。
【0088】
ある細胞が外来性DNAによって「形質転換」されるのは、そのような外来性DNAが細胞膜内に導入されたときである。外来性DNAは、前記細胞のゲノムを形成している染色体DNAに取り込まれても(共有結合により)取り込まれなくてもよい。例えば原核生物や酵母では、外来性DNAはプラスミドのようなエピソーム要素上で保持されているかもしれない。真核細胞に関しては、安定的に形質転換された細胞とは、外来性DNAが染色体に取り込まれ、染色体複製を通して娘細胞に受け継がれる細胞のことである。この安定性は、前記外来性DNAを保有する娘細胞の群から成る細胞系又はクローンを樹立する真核細胞の能力によって示される。
【0089】
2.発明を実施するための形態
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特定の製剤又はプロセスパラメータに限られないこと、それはこれらが当然ながら変わるかもしれないからであることを理解されたい。本明細書で使われる専門用語は本発明の特定の実施形態を記載することだけが目的であり、限定するものではないことも理解されたい。
【0090】
本発明の実施において、本明細書で記載されているものと類似若しくは同等の多くの方法及び物質を使用できるが、本明細書では好ましい物質及び方法が記載される。
【0091】
本発明にとって重要なことは、GapCタンパク質がCAMPキメラタンパク質と組み合わさって脊椎動物対象で免疫応答を引き出すことができるという発見である。特に、S.dysgalactiae、S.agalactiae、S.uberis、S.parauberis及びS.iniaeのGapCタンパク質の遺伝子が単離され、配列決定され、特徴が解明され、またそれらの遺伝子のタンパク質配列がそこから導かれた。それらの遺伝子の完全なDNA配列と対応するアミノ酸配列を図1〜5に示す。
【0092】
実施例で記載されているように、図1A〜1Bのヌクレオチド位置1〜1011で表される完全長S.dysgalactiaeのgapC遺伝子は、同じ図のアミノ酸1〜336で示されるアミノ酸336個の完全長S.dysgalactiaeのGapCタンパク質をエンコードする。S.dysgalactiaeのGapCは、予測分子量が約36kDaである(Canadian Bioinformatics ResourceのSeqWeb配列解析パッケージVer.1.1によって提供されるGCGウィスコンシンパッケージVer.10のPeptide Sortプログラムを使用して計算された)。同様に、S.agalactiae、S.uberis、S.parauberis及びS.iniaeから単離されたgapC遺伝子を図2〜5に表す。それぞれ同じく336個のアミノ酸の完全長GapCタンパク質をエンコードし、それぞれ同じく約36kDaの予測分子量を持つ。完全長配列のいずれもシグナルペプチド及び膜アンカー領域を含まないようである。
【0093】
図6及び7は、それぞれDNA配列とアミノ酸配列を示し、各種連鎖球菌株からのGapCタンパク質の間に存在する相同領域及び変異領域を表している。特に、いくつかの可変領域は、アミノ酸位置62〜81、102〜112、165〜172、248〜271及び286〜305に存在する。そのような可変領域は一般的に変化により寛容である。それ故に、これらの領域におけるアミノ酸変化、例えば置換、付加及び欠失などは寛容される可能性が高い。
【0094】
図8〜12は、本発明の各GapCタンパク質に関する以下のプロットを示す:7のウィンドウで平均されたKyte−Doolittleハイドロパシー;Eminiによる表面確率;Karplus−Schulzによる鎖屈曲性;Jameson−Wolfによる抗原性指数;Garnier−Osguthorpe−Robsonによる二次構造;Chou−Fasmanによる二次構造;及び予測されたグリコシル化部位。図13〜17は、本発明の各GapCタンパク質のChou−Fasmanによる二次構造プロットを表す。当業者は、図8〜17に示された情報を使い、ワクチン組成物で使用するための前記タンパク質の免疫原性領域を容易に決定することができる。
【0095】
本明細書で「CAMP−3」と称されるキメラCAMPタンパク質は、図29の27〜314位置に示される。図29のアミノ酸1〜26は、大腸菌LipoFシグナル配列を表わす。図29のアミノ酸27〜86は、成熟した原S.uberisのCAMPのアミノ酸1〜60と一致する。アミノ酸87はリンカーアミノ酸である。図29のアミノ酸88〜144は、成熟した原S. agalactiaeのCAMP因子配列のアミノ酸2〜58と一致する。図29のアミノ酸145と146はスペーサーアミノ酸である。図29のアミノ酸147〜314は、成熟した原S.uberisのCAMP因子配列のアミノ酸63〜230と一致する。従って、図29で示されるキメラは、S.agalactiaeからのCAMP因子のN末端配列からのエピトープが挿入された、完全長のS.uberis骨格を含む。
【0096】
各種GapCプラスミン結合タンパク質、その変異体若しくは突然変異タンパク質、その免疫原性断片、又はそれを含むキメラタンパク質が、CAMP−3又はCAMP−3と実質的に相同で機能的に同等(上で定義されている)な免疫原性ポリペプチドと組み合わされてサブユニットワクチン組成物として提供される。さらに、それに対するタンパク質又は抗体は、脊椎動物の対象で感染症の存在を検出するための診断試薬として用いることができる。同様に、前記タンパク質をエンコードする遺伝子をクローニングし、他の細菌株で相同遺伝子を検出・単離するためのプローブを設計するために利用できる。例えば、最低約8つのヌクレオチド、好ましくは15〜20のヌクレオチド、より好ましくは最低約20〜50のヌクレオチド、最も好ましくは約60〜100のヌクレオチド、又はこれらの値の中間のいかなる整数でも含む断片は、これらの実施形態の使用で使える。
【0097】
本発明のワクチン組成物を用いて、脊椎動物対象の多種多様な細菌感染症を治療又は予防できる。例えば、S.dysgalactiae、S.uberis、S.parauberis、S.iniae及び/又はB群連鎖球菌(GBS)、例えばS.agalactiaeからのCAMP−3ポリペプチド及びGapCプラスミン結合タンパク質を含むワクチン組成物を用いて、これらの細菌やその他の細菌に起因する脊椎動物対象の連鎖球菌感染症を治療できる。特に、S.uberis及びS.agalactiaeは、ウシ、ウマ、ヒツジ及びヤギの乳腺炎と通常関連する細菌病原体である。さらに、B群連鎖球菌、例えばS.agalactiaeは、脊椎動物でその他多数の感染症を起こすことが知られており、これには敗血症、髄膜炎、菌血症、膿痂疹、関節炎、尿路感染症、膿瘍、自然流産、その他が含まれる。それ故に、連鎖球菌GapCプラスミン結合タンパク質を含むワクチン組成物は、多種多様な連鎖球菌感染症の治療及び/又は予防に使用できるようになる。
【0098】
同様に、他の細菌属、例えばスタフィロコッカス、マイコバクテリア、大腸菌、シュードモナス、ノカルジア、パスツレラ、クロストリジウム及びマイコプラズマに由来するGapCプラスミン結合タンパク質は、CAMP−3ポリペプチドと併用してこれらの属の種に起因する細菌感染症を治療するために使用できるようになる。従って、GapCプラスミン結合タンパク質をCAMP−3と併用して、多くの種で多種多様な細菌感染症を治療かつ/又は予防できることは、直ちに明らかとなる。
【0099】
連鎖球菌GapCプラスミン結合タンパク質とCAMP−3ポリペプチドは、単独又は他の細菌、糸状菌、ウイルス若しくは原虫に由来する抗原と併用して、ワクチン組成物として利用できる。これらの抗原は、独立して、又はこれらの抗原の1つ以上と融合したGapCプラスミン結合タンパク質の1つ以上のエピトープを含む融合タンパク質としてさえ提供される。例えば、S.uberisの他の免疫原性タンパク質、例えばCAMP因子、ヒアルロン酸カプセル、ヒアルロニダーゼ、R様タンパク質及びプラスミノーゲンアクティベーターは、GapCタンパク質やCAMP−3ポリペプチドと共に投与できる。さらに、スタフィロコッカス、コリネバクテリウム、シュードモナス、ノカルジア、クロストリジウム、マイコバクテリア、マイコプラズマ、パスツレラ、プロトセカ、他の連鎖球菌、大腸菌の各属、並びに酵母など、乳腺炎に関係する他の微生物からの免疫原性タンパク質は、本明細書で記載されるCAMP−3ポリペプチド及びGapCプラスミン結合タンパク質と共に投与し、広い範囲の保護を提供することができる。このように、例えば、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、Str.agalactiae、Str.dysgalactiae、Str.zooepidemicus、Corynebacterium pyogenes、Pseudomonas aeruginosa、Nocardia asteroides、Clostridium perfringens(ウェルシュ菌)、E.coli(大腸菌)、Enterobacter aerogenes(アエロゲネス菌)及びKlebsiella spp.からの免疫原性タンパク質は、本発明のCAMP−3及びGapCプラスミン結合タンパク質と共に提供することができる。
【0100】
その上、異なる連鎖球菌種からのGapCタンパク質を本発明のワクチン組成物中で一緒に使うこともできる。この実施形態では、複数のGapCタンパク質が融合タンパク質、又は同じ若しくは異なるワクチン組成物中の別々の抗原として提供されてもよい。
【0101】
GapCプラスミン結合タンパク質の生産
上記のプラスミン結合タンパク質とそれに由来する活性断片、類似体及びキメラタンパク質は、各種方法で生産できる。具体的には、GapCプラスミン結合タンパク質は、それを発現する細菌から直接単離できる。これを達成するためには、通常、先ず細胞成分といくつかの外来性タンパク質が含まれない粗抽出物を調製する。所望のタンパク質は、それからカラムクロマトグラフィー、HPLC、免疫吸着剤法その他の当技術分野で公知の従来法によって、細胞溶解物画分からさらに精製できる。
【0102】
より詳しくは、GapCプラスミン結合タンパク質を単離する手法が記載されている。例えば、S.pyogenesのGapCタンパク質は、硫酸アンモニウムによる沈降、その後Mono FPLCカラムによるクロマトグラフィーを2回、superose 12 FPLCカラム及びTSK−フェノールHPLCカラムによるクロマトグラフィーを1回ずつ行って粗細胞抽出物から精製された(Pancholi,V.And Fischetti, VA (1992) J Exptl. Med 76:415〜426)。別の手法では、NAD+−アガロースアフィニティーカラムを使用し、S.pyogenesの64/14株の溶解プロトプラストからGapCを精製した(Winram, SB and Lottenberg, R (1996) Microbiol. 142:2311〜2320)。
【0103】
或いは、本明細書で記載されているように、前記タンパク質は組換えで生成できる。上で説明されるように、これらの組換え産物は不完全なタンパク質配列、完全長配列、シグナル配列を含む前駆体形態、シグナルのない成熟した形態、又は融合タンパク質(例えば、組換え宿主のための適当なリーダーを有するもの、又は連鎖球菌若しくは他の病原体の別のサブユニット抗原配列を有するもの)の形態さえとることができる。
【0104】
本発明の一実施例では、GapCタンパク質は組換え手法で生成したヒスチジン標識と融合され、次にアフィニティークロマトグラフィーを使って細胞溶解物画分から精製される。実施例を参照。
【0105】
本発明のGapCプラスミン結合タンパク質は、下記のように前記タンパク質産物のプラスミンを結合する能力に基づき、プラスミン結合アッセイを用いて単離できる。例えば、実施例に記載の方法を参照。こうして、遺伝子ライブラリーが構築され、結果として生じるクローンは適当な宿主細胞の形質転換のために用いることができる。コロニーをプールし、プラスミン結合活性を有するクローンを選抜できる。コロニーは、ポリクローナル血清又はプラスミン結合タンパク質に対するモノクローナル抗体を使ってもスクリーニングできる。
【0106】
別法では、一旦アミノ酸配列が決定されたならば、前記決定されたアミノ酸配列の一部のコドンを含むオリゴヌクレオチドプローブを調製し、それを問題のタンパク質をエンコードしている遺伝子に関してゲノム若しくはcDNAライブラリーをスクリーニングするために用いることができる。オリゴヌクレオチドプローブとDNAライブラリーを調製するための基本的な方策、並びにそれらの核酸ハイブリダイゼーションによるスクリーニングは、当業者には公知である。例えば、DNA Cloning:Vol.II、上記;Nucleic Acid Hybridization、上記;Oligonucleotide Synthesis、上記;Sambrook他、上記を参照。スクリーニングされたライブラリーからのクローンが一旦ポジティブハイブリダイゼーションによって同定されると、特定のライブラリーインサートがGapCプラスミン結合タンパク質遺伝子又はその相同体を含むことが、制限酵素分析とDNA塩基配列決定によって確認できる。遺伝子はその後標準の手法を使ってさらに単離され、必要に応じてPCR手法又は制限酵素を使用して完全長配列の一部が削除される。
【0107】
同様に、遺伝子を公知の手法、例えばフェノール抽出を使って細菌から直接単離し、配列をさらに操作していかなる所望の変化を起こすことができる。DNAを取得して単離する手法の記載に関しては、例えばSambrook他、同上を参照。
【0108】
或いは、関心のタンパク質をエンコードしているDNA配列は、クローニングではなく合成で調製することができる。DNAの塩基配列は、特定のアミノ酸配列のための適当なコドンで設計できる。一般に、配列が形質発現のために使われるならば、意図された宿主に好ましいコドンが選択されるようになる。完全な配列は、標準法によって調製された重複しているオリゴヌクレオチドから形成され、完全なコード配列に組み立てられる。例えば、Edge (1981) Nature 292:756;Nambair et al. (1984) Science 223:1299;Jay et al. (1984) J. Biol. Chem. 259:6311を参照。
【0109】
一旦所望のタンパク質のコード配列が調製されるか単離されると、それらはいかなる適当なベクター又はレプリコンにもクローニングできる。多数のクローニングベクターが当業者に公知であり、適当なクローニングベクターの選抜は選択の問題である。クローニングのための組換えDNAベクターとそれらが形質転換できる宿主細胞の例としては、バクテリオファージλ(大腸菌)、pBR322(大腸菌)、pACYC177(大腸菌)、pKT230(グラム陰性菌)、pGV1106(グラム陰性菌)、pLAFR1(グラム陰性菌)、pME290(大腸菌以外のグラム陰性菌)、pHV14(大腸菌と枯草菌)、pBD9(バシラス)、pIJ61(ストレプトマイセス)、pUC6(ストレプトマイセス)、YIp5(サッカロミセス)、YCp19(サッカロミセス)及びウシパピローマウイルス(哺乳類の細胞)が含まれる。例えば、Sambrook他、同上;DNA Cloning、同上;B. Perbal、同上を参照。
【0110】
遺伝子をプロモーター、リボソーム結合部位(細菌での発現のために)、及び、任意に、オペレーター(本明細書では総称して「調節」要素と称す)の管理下に置き、所望のタンパク質をエンコードしているDNA配列が、この発現構築物を含むベクターで形質転換された宿主細胞内でRNAに転写されるようにできる。コード配列は、シグナルペプチド又はリーダー配列を含んでもよいし含まなくてもよい。シグナル配列が含まれるならば、それは原配列、相同配列又は異種配列のいずれかでよい。リーダー配列は、翻訳後プロセシングで宿主によって取り除かれてもよい。例えば、米国特許第4431739号、第4425437号、第4338397号を参照。
【0111】
宿主細胞の増殖と比較してタンパク質配列の発現の調節を可能にする他の調節配列も望ましいかもしれない。調節配列は当業者に公知であり、その例としては、調節化合物の存在を含む化学的若しくは物理的な刺激に応じて遺伝子の発現を有効又は無効にする配列が含まれる。他の種類の調節要素、例えばエンハンサー配列もベクターに存在してもよい。
【0112】
制御配列と他の調節配列は、例えば上述のクローニングベクターなどのベクターに挿入する前にコード配列に連結してもよい。或いは、コード配列は、既に制御配列と適切な制限部位を有する発現ベクターに直接クローニングできる。
【0113】
場合によっては、コード配列を修正し、それが適切な向きで制御配列に付着するように、即ち適切な読み枠を維持できるようにする必要があるかもしれない。また、GapCプラスミン結合タンパク質の変異体又は類似体を作成することも望ましいかもしれない。変異体又は類似体は、前記タンパク質をエンコードしている配列の一部の欠失により、配列の挿入により、及び/又は配列内の1つ以上のヌクレオチドの置換により調製できる。部位指定突然変異誘発などのヌクレオチド配列を修飾する手法は、例えば、Sambrook他、同上;DNA Cloning、同上;Nucleic Acid Hybridization、同上に記載されている。
【0114】
次に、発現ベクターを用いて適当な宿主細胞を形質転換する。多くの哺乳類の細胞系が当技術分野では公知で、アメリカ基準種保存機構(ATCC)から入手可能な不死化細胞系などがあるが、これには、それには限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞腫細胞(例えばHep G2)、Madin−Darbyウシ腎臓(「MDBK」)細胞、その他が含まれる。同様に、細菌の宿主、例えば大腸菌、枯草菌、及び連鎖球菌も本発現構築物と使用できるようになる。本発明に有用な酵母宿主には、中でも、Saccharomyces cerevisiae、Candida albicans、Candida maltosa、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces fragilis、Kluyveromyces lactis、Pichia guillerimondii、Pichia pastoris、Schizosaccharomyces pombe及びYarrowia lipolyticaが含まれる。バキュロウイルス発現ベクターと使用できる昆虫細胞としては、とりわけ、Aedes aegypti、Autographa californica、Bombyx mori(カイコ)、Drosophila melanogaster(キイロショウジョウバエ)、Spodoptera frugiperda及びTrichoplusia ni(キンウワバ)が含まれる。
【0115】
選択される発現系と宿主に従い、本発明のタンパク質は、上述の発現ベクターによって関心のタンパク質が発現する条件下で形質転換された宿主細胞を培養することによって生産される。前記タンパク質は、次に宿主細胞から単離されて精製される。発現系が培地に前記タンパク質を分泌するならば、前記タンパク質は培地から直接精製できる。前記タンパク質が分泌されないならば、それは細胞溶解物から単離される。適当な増殖条件と回収方法の選択は、前記技術の範囲内である。
【0116】
本発明のタンパク質は、公知のアミノ酸配列又は関心の遺伝子のDNA配列に由来するアミノ酸配列を用いて、固相ペプチド合成のような化学合成によっても生産できる。このような方法は当業者には既知である。固相ペプチド合成手法に関しては、例えば、J. M. Stewart and J. D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd Ed., Pierce Chemical Co., Rockford, IL (1984)、G. Barany and R. B. Merrifield, The Peptides :Analysis, Synthesis, Biology、E.Gross and J. Meienhofer編、Vol.2, Academic Press, New York(1980), pp.3〜254を参照、古典的な溶液合成に関しては、M. Bodansky、 Principles of Peptide Synthesis、Springer-Verlag、 Berlin(1984)及びE. gross and J. Meienhofer編, The Peptides :Analysis, Synthesis, Biology, 同上, Vol.1を参照。問題の抗原の小断片が関心の対象で免疫応答を起こせる場合は、ペプチドの化学合成が好ましいかもしれない。
【0117】
本発明のGapCプラスミン結合タンパク質、又はその変異体若しくは断片は、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を生産するために使用できる。ポリクローナル抗体が望まれるならば、選択された哺乳類(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、その他)を本発明の抗原、又はその断片、又は突然変異抗原で免疫化する。免疫化された動物から血清を採取し、公知の方法で処理される。例えば、Jurgens et al.(1985) J.Chrom.348:363〜370を参照。ポリクローナル抗体を含む血清が使われるならば、前記ポリクローナル抗体は公知の方法を用いて免疫アフィニティークロマトグラフィーで精製できる。
【0118】
GapCプラスミン結合タンパク質及びその断片に対するモノクローナル抗体も、当業者によって容易に生産できる。ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を作成する一般的方法は公知である。不死の抗体産生細胞系は、細胞融合、また他の手法、例えば腫瘍形成性DNAを有するBリンパ球の直接的形質転換、又はEBウイルスによるトランスフェクションによっても作成できる。例えば、M. Schreier et al., Hybridoma Techniques (1980);Hammerling et al., Monoclonal Antibodies and T-cell Hybridomas (1981);Kennett et al., Monoclonal Antibodies(1980);また、米国特許第4341761号、4399121号、4427783号、4444887号、4452570号、4466917号、4472500号、4491632号、4493890号を参照。GapCプラスミン結合タンパク質又はその断片に対するモノクローナル抗体のパネルは、各種特性、即ちアイソタイプ、エピトープ、親和性、その他につきスクリーニングできる。モノクローナル抗体は、それらと特異的な個々の抗原を免疫親和性手法を用いて精製するときに役立つ。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、共に受動免疫化のために使用でき、又はサブユニットワクチン製剤と併用して免疫応答を強化することができる。ポリクローナル及びモノクローナル抗体は、診断目的にも役立つ。
【0119】
CAMP因子キメラの生産
CAMP−3ポリペプチドは、前記したようにまた実施例のように、標準の組換え手法を使って都合よく生産できる。CAMP因子キメラは、いくつかの標準試験のいずれを用いてもCAMP活性を試験できる。例えば、CAMP因子は、ウシ及びヒツジの赤血球などの各種標的細胞に対して、溶解作用を示すことが知られている。このように、CAMP因子活性を試験する便利な方法では、ヒツジ又はウシの赤血球を用いた標準の溶血反応を利用する。例えば、Christie et al.(1944)Aus.J.Exp.Biol.Med.Sci.22:197〜200;Brown et al. (1974) Infect.Immun. 9:377〜383;Darling, C. L. (1975) J. Clin. Microbiol.1:171;Wilkinsin, H. W. (1977) J. Clin. Microbiol. 6: 42;Bernheimer et al. (1979) Infect. Immun. 23:838〜844; Skalka, B. and Smola, J. (1981) Zbl. Bakt. Hyg., I. Abt. Orig. A249: 190〜194; Huser et al.(1983)J. Gen. Microbiol. 129:1295を参照。
【0120】
活性は、CAMP因子による破壊に感受性の物質から作られたリポソームからの、エントラップされたマーカー分子の放出をモニターすることによっても試験できる。例えば、CAMP活性は、スフィンゴミエリン、コレステロール及びリン酸ジセチルなどから調製される[14C]グルコースを含有するリポソームを使って、CAMP因子によるリポソームの破壊のために放出されるトラップされた[14C]グルコースを測定してモニターできる。例えば、Bernheimer et al. (1979)Infect.Immun.23:838〜844を参照。同様に、Alouf他編、Bacterial protein toxins, London: Academic Press Inc., 1984:195〜196中のSterzik et al. (1984)「Interaction of the CAMP factor from S.agalactiae with artificial membranes」、及びSterzik et al. (1985) Zentralbl. Bacteriol. Microbiol. Hyg. Abt. 1 Suppl. 15:101〜108に記載されているように、CAMP因子存在下でリポソームからのATP放出をモニターできる。Alouf et al.編、Bacterial protein toxins, London:Academic Press Inc., 1984:317〜324中のFehrenbach et al. (1984)「Interaction of amphiphilic bacterial polypeptides with artificial membranes」も参照。
【0121】
ワクチン製剤と投与
CAMP−3ポリペプチド並びにGapCプラスミン結合タンパク質、その変異体及び断片は、下記のように対象を免疫にするために、免疫原性組成物、例えばワクチン組成物に、単独で又は他の抗原と組み合わせて製剤できる。そのような製剤を調製する方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 18 Edition, 1990に記載されている。一般的に、本発明のワクチンは、液溶体又は懸濁液の注射剤として調製される。注射に先立ち液体ビヒクルで溶液又は懸濁液にするのに適した固体の剤型も調製できる。製剤は乳剤にしてもよく、又は活性成分をリポソームビヒクルでカプセル化してもよい。活性免疫原性成分は、通常、親和性のある医薬ビヒクル、例えば、水、塩水、デキストロース、グリセリン、エタノール、その他、及びその混合物と混合されており、さらに、必要に応じて前記ビヒクルは少量の湿潤剤若しくは乳化剤のような補助剤とpH緩衝剤を含有してもよい。
【0122】
ワクチンの効果を強化するアジュバントも製剤に加えてよい。アジュバントとしては、例えば、ムラミルジペプチド、アビジン、水酸化アルミニウム、ジメチルジオクタデシル臭化アンモニウム(DDA)、油、水中油乳濁液、サポニン、サイトカイン、及びその他当技術分野で公知の物質が含まれる。
【0123】
タンパク質はその免疫原性を増強するためにキャリヤーと結合してもよい。適当なキャリヤーには大きくて新陳代謝が遅い巨大分子が含まれ、例えば、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシニアン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、及び当業者に周知の他のタンパク質などのタンパク質;セファロース、アガロース、繊維素、繊維素ビーズなどの多糖類;ポリグルタミン酸、ポリリジンなどのポリマーアミノ酸;アミノ酸コポリマー;並びに、不活化ウイルス粒子が含まれる。
【0124】
前記タンパク質はその未変性の形態で使用でき、又はその官能基の内容は、例えば、リジン残基のスクシニル化若しくはCys−チオラクトンとの反応により修飾されてもよい。スルフヒドリル基も、例えばアミノ官能基の2−イミノチオラン又は3−(4−ジチオピリジルプロピオン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応により、キャリヤー(又は抗原)に取り込むことができる。適当なキャリヤーは、ペプチドの付着のためにスペーサアーム(例えば、ヘキサメチレンジアミン又は類似した大きさの他の二官能分子)を取り込むために修飾することもできる。
【0125】
本発明のタンパク質に適した他のキャリヤーとしては、本明細書で参照により組み込んだ米国特許第5071651号で開示されているように、ロタウイルス又はその機能的断片のVP6ポリペプチドが含まれる。ウイルスタンパク質の融合生成物も有用であり、前記免疫原は米国特許第4722840号で開示されている方法で作られる。別の適当なキャリヤーとしてはリンパ球などの細胞が含まれるが、それは、この形態での提示が対象において免疫状態を引き起こす自然な提示様式を模倣しているからである。或いは、本発明のタンパク質は赤血球、好ましくは対象自身の赤血球に結合できる。ペプチドをタンパク質又は細胞に結合する方法は、当業者に周知である。
【0126】
さらに、前記タンパク質(又はその複合体)はワクチン組成物又は診断薬などの免疫原性組成物に、中性又は塩の剤型で製剤できる。薬剤として許容される塩としては、酸添加塩(活性ポリペプチドの遊離アミノ基で形成される)が含まれ、これらは、無機酸、例えば塩酸若しくはリン酸、又は有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの酸で形成される。遊離のカルボキシル基から作られる塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は水酸化第二鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から得ることもできる。
【0127】
ワクチン製剤は「治療的有効量」の活性成分、つまり、組成物が投与される対象で免疫応答を引き出すことのできる量を含有する。乳腺炎の治療と予防では、例えば、「治療的有効量」は好ましくは新しい感染症に対する乳腺の抵抗性を強化し、かつ/又は病気の臨床上の重症度を低くする量である。このような保護は、感染宿主が通常示す症状の軽減若しくは欠如、より早い回復時間、及び/又は感染乳房区の乳汁中の体細胞数の減少によって証明される。例えば、乳汁中体細胞数(SCC)を約500,000/ml、つまりInternational Dairy Federationが設定した、動物が臨床上乳腺炎であると考えられる閾値以下に保持若しくは下げる組成物の能力は、治療効果の指標となるであろう。
【0128】
正確な量は、標準試験を用いて当業者により容易に測定される。GapCプラスミン結合タンパク質濃度は、一般的に組成物の約1%から約95%(w/w)の間になり、又は適当であればこれより高いか、より低い。本ワクチン製剤では、1動物につき1〜3mlの用量が投与されるとき、注射された溶液1mlにつき5〜500μgの活性成分が、免疫応答を引き出すのに十分となるはずである。
【0129】
対象を免疫化するために、ワクチンは一般的に非経口的に投与されるが、通常、筋肉内注射によリ投与される。しかし、他の方式の投与、例えば、皮下、腹腔内及び静脈内注射も許容される。投与される量は、治療する動物、動物免疫系の抗体を合成する能力、及び所望の保護度に依存する。有効投薬量は、用量反応曲線を確立するルーチン試験を通して、当業者により容易に設定される。対象の免疫化は、ワクチンの最低1回分の用量、好ましくは2回分の用量の投与によって行う。さらに、感染に対する免疫状態を維持するために必要な回数分の用量を動物に投与してもよい。
【0130】
他の投与方式に適当な別のワクチン製剤として、座薬、及び場合によってはエアゾール、経鼻及び経口製剤、並びに徐放製剤が含まれる。坐薬に関しては、ビヒクル組成物としては、伝統的な結合剤とキャリヤー、例えばポリアルカリグリコール又はトリグリセリドが含まれる。そのような坐薬は、活性成分を約0.5%から約10%(w/w)、好ましくは約1%から約2%含有する混合物から形成されてもよい。経口用のビヒクルとしては、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、マグネシウム、ステアラート、ナトリウムサッカリン繊維素、炭酸マグネシウム、などの通常使用されるビヒクルが含まれる。これらの経口ワクチン組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放性製剤又は散剤の形で投与でき、活性成分を約10%から約95%、好ましくは約25%から約70%含有することができる。
【0131】
鼻腔内投与製剤は、通常、鼻粘膜に刺激を引き起こさず線毛機能を著しく妨げもしないビヒクルを含む。水、食塩水、又は他の公知の物質のような希釈液は、当発明で使用できる。鼻用製剤には、それに限定されないがクロロブタノール及び塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤が含まれてもよい。鼻粘膜による当タンパク質の吸収を強化するために、界面活性剤が含まれてもよい。
【0132】
制御放出性の又は徐放性製剤は、タンパク質をキャリヤー又はビヒクル、例えばリポソーム、エチレン酢酸ビニル共重合体及びHytrel(登録商標)共重合体のような非再吸収性、不浸透性のポリマー、ヒドロゲルのような膨潤性ポリマー、又はコラーゲン、ある種のポリ酸、若しくは再吸収性縫合糸に使われるようなポリエステルなどの再吸収性ポリマーに取り込むことにより作成される。GapCプラスミン結合タンパク質は、当技術分野で公知の植込み型ミニポンプを使っても送達できる。
【0133】
本発明のタンパク質は、それを発現するキャリヤーウイルスを通じても投与できる。本発明で利用できるキャリヤーウイルスとしては、それに限定されないが、ワクシニアウイルスと他のポックスウイルス、アデノウイルス及びヘルペスウイルスが含まれる。例として、新規タンパク質を発現する組換ワクシニアウイルスは、次のように構築できる。特定のタンパク質をエンコードしているDNAを先ず適当なベクターに挿入し、それをワクシニアプロモーター及び隣接するワクシニアDNA配列、例えばチミジンキナーゼ(TK)をエンコードする配列に隣接させる。次にこのベクターを用いて、ワクシニアに感染させるのと同時に細胞をトランスフェクションする。相同組み換えは、ウイルスゲノムにワクシニアプロモーターと当のタンパク質をエンコードしている遺伝子を挿入するのに役立つ。結果として生じるTK組換体を選抜するには、5−ブロムデオキシウリジン存在下で細胞を培養して、それに耐性のウイルスプラークを拾う。
【0134】
別の投与経路には、遺伝子治療又は核酸免疫化が含まれる。このように、対象のタンパク質をエンコードしているヌクレオチド配列(と付属する調節要素)は、そのin vivo翻訳のために直接対象に投与できる。或いは、遺伝子導入は、生体外で対象の細胞又は組織をトランスフェクションして、宿主に形質転換体を再導入することによリ達成できる。DNAは直接、つまり注射により、宿主生物に導入できる(国際出願第WO/90/11092号、及びWolff et al. (1990) Science 247:1465〜1468を参照)。リポソームを介した遺伝子導入は、公知の方法を使用してもできる。例えば、Hazinski et al.(1991) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 4:206〜209;Brigham et al.(1989) Am. J. Med. Sci. 298:278〜281; Canonico et al.(1991)Clin.Res.39:219A;及びNabel et al.(1990)Science 249:1285〜1288を参照。ターゲッティング剤、例えば、特異的な細胞型上で発現する表面抗原を標的にした抗体はリポソームの表面へ共有結合で結合でき、それにより核酸を感染に感受性の特異的な組織及び細胞に送達できる。
【0135】
本発明の実施に有用な株の保存
以下の株の生物学的に純粋な培養体が、ブダペスト条約の規定により、アメリカ基準株保存機構(ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、Virginiaにより保存された。示されたアクセッション番号は、生存力検査を通過し、必要な料金が支払われた後に割り当てられた。指定の保存株は、保存開始から30年間、又は最終保存要請から5年間のいずれか長い期間維持される。培養物が生育不能になった場合、又は不注意に破壊された場合、或いはプラスミド含有株の場合、そのプラスミドが消失した場合は、その培養物は同じ分類学基準に適合する生育可能な培養物と交換される。
【0136】
本出願で提示された配列と保存プラスミドにおける関心遺伝子の配列との間で、ルーチンの配列決定の誤りのために相違が生じた場合、保存プラスミドの配列が優先する。
細菌株 プラスミド 遺伝子 保存日 ATCC番号
E.coli (大腸菌) BL21 pET15bgapC gapC 2000年5月31日 PAT-1976
DE3 (S. dysgalactiae)
E.coli (大腸菌) BL21 pMF521c gapC 2000年5月31日 PAT-1975
DE3 (S. agalactiae)
E.coli (大腸菌) BL21 pMF521a gapC 2000年5月31日 PAT-1973
DE3 (S. uberis)
E.coli (大腸菌) BL21 pMF521e gapC 2000年5月31日 PAT-1972
DE3 (S. iniae)
【0137】
3.実験
下記は、本発明を実施するための特定の実施形態の例である。実施例は例示目的のためだけに示されており、いかなる方法であれ本発明の範囲を限定するものではない。
【0138】
用いた数字(例えば、量、温度、その他)に関しては正確を期したが、当然ながら若干の実験誤差と偏差は考慮に入れられなければならない。
【0139】
材料と方法
酵素は一般市場から購入し、製造業者の指示に従って使用した。
【0140】
DNA断片の単離では、記載された場合を除き、すべてのDNA操作を標準手法によって行った。Sambrook他、同上を参照。制限酵素、TDNAリガーゼ、大腸菌、DNAポリメラーゼII、クレノーフラグメント、及び他の生物学的試薬は一般市場から購入でき、メーカーの指示に従って使用できる。二重鎖DNA断片は、アガロースゲルで分離した。
【0141】
化学試薬の供給先としては、通常、Sigma Chemical Company、St.Louis、MO;Alrich、Milwaukee、WI;Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、INが含まれる。
【実施例1】
【0142】
S.dysgalactiaeのGapCプラスミン結合タンパク質の調製、増幅、配列決定、発現、精製及び特性検査
A.S.dysgalactiae染色体DNAの調製
ウシ乳房炎臨床症例からのS.dysgalactiae分離株(ATCCアクセッション番号ATCC43078)を、アメリカ基準株保存機構(10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110-2209)から得、DNA源として使用した。この微生物は、通常、TSA羊血寒天培地(PML Microbiologicals、Mississauga、Ontario)を用いて37℃で18時間、又は0.3%の酵母エキス(THB−YE)を添加したトッド−ヒューウィット培地(Oxoid Ltd.、Hampshire、England)を用いて37℃、5%COで培養した。
【0143】
染色体DNAは、A600が0.8〜1.0になるまで、20mMのグリシンを添加した100mlのTHB−YEで約6時間培養したS.dysgalactiaeから調製された。細胞を収穫し、50mMのEDTA,50mMのTris−HCl,0.5%のTween20(登録商標)(Sigma、St.Louis、MO)で再懸濁し、RNアーゼA(200mg/ml)、プロテイナーゼK(20mg/ml)、リゾチーム(100mg/ml)及びムタノリシン(mutanolysin)(100mg/ml)(SIGMA、St.Louis、MO)を添加した。激しく振盪しながら37℃で30分間細菌溶解をした後、塩酸グアニジンとpH5.5のTween2(登録商標)を溶解物を混合して、それぞれ0.8Mと5%の最終濃度を得た。この混合液を50℃で30分間インキュベートした。次に、染色体のDNAをQiagen genomic−tip 100g(Qiagen、Santa Clarita、CA)を使って精製し、0.7容量のイソプロパノールを使って沈殿した。結果として生じるペレットは70%エタノールで洗浄し、0.5mlの10mMTris−HCl(pH8.8)で再懸濁した。
【0144】
B.S.dysgalactiae gapC遺伝子の増幅とクローニング
gapC遺伝子はPCRによって増幅された(Mullis他、米国特許第4683195号、Mullis、米国特許第4683202号を参照)。順方向プライマー、gapC1にはNde1制限部位(配列番号1、表1で示される)が、逆方向プライマー、gapC1rにはBamHI部位(配列番号2、表1で示される)が含まれていた。表1に示す以前のプライマーでは、下線は原配列に加えられたヌクレオチドを、太字は制限酵素認識部位の位置を示す。
【0145】
PCRは、Vent DNAポリメラーゼ(New England Biolabs、Mississauga、ON、カナダ)を使って行った。S.dysgalactiae染色体DNA0.7μgを、以前のプライマーを各々1μM、dATP、dTTP、dCTP及びdGTPを各200μM、3mMの硫酸マグネシウム、1倍濃度のThermopol緩衝液(New England Biolabs、Mississauga、ON、カナダ)、並びに2単位のVent DNAポリメラーゼが含まれた反応混合物中でインキュベートした。この混合液は、94℃で1分、50℃で3分、及び72℃で1分10秒の3つの増幅周期でインキュベートし、次に、95℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で1分の増幅周期でのインキュベートを27回行い、最後に72℃で5分の周期で1回インキュベートした。
【0146】
【表1】

【0147】
gapCPCR生成物は、BamHIとNdeIで消化された発現ベクターpET15B(Novagen、Madison、WI)にクローニングされた。この部位へのPCR生成物のクローニングにより、gapCコード配列に対してヘキサヒスチジル(6×His)標識のフレーム内コード配列が付加された。以降の発現により、ヒスチジン標識が付属した完全長タンパク質が生成され、その標識は金属キレートクロマトグラフィーを使った非変性条件下での前記タンパク質の精製を可能にする。
【0148】
この構築物を使用して、大腸菌BL21DE3(Life Technologies、Gaithersburg、MD)を形質転換した。本形質転換株は、BL21 DE3と名付けられた(pET15bgapC)(ATCC No.PTA−1976)。
【0149】
C.S.agalactiae、S.uberis、S.parauberis及びS.iniaeからの染色体DNAの単離並びにgapC遺伝子の増幅とクローニング
gapC遺伝子は、基本的に前記したように他の分離株から調製された。
【0150】
S.agalactiae、S.uberis及びS.parauberisの染色体DNAは、アメリカ基準株保存機構から得た株(10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110-2209;ATCC番号27541、9927及び13386)から分離された。S.iniaeの染色体DNAは、Mount Sinai Hospital、University of Torontoから得た9117と名付けられた株から分離された。
【0151】
上記連鎖球菌株からのgapC遺伝子の増幅に使用されたプライマーは、S.dysgalactiaeで使用されたものと同じで、即ち、プライマーgapC1(配列番号1)とプライマーgapC1r(配列番号2)である。
【0152】
増幅の後、各ケースのPCR生成物は、PCR−Script Ampクローニングキット(Stratagene、La Jolla、CA)に記載のクローニングプロトコルを用いてpPCR−Scriptにクローニングし、大腸菌XL10−Gold(Stratagene、La Jolla、CA)を形質転換するために用いた。PCR生成物インサートは、次にNdeIとBamHIを使って切り取り、pE15bのそれらの部位に従来のクローニングプロトコル(例えば、Sambrook他、前記を参照)を用いて再クローニングし、大腸菌DH5αF’lac1qを形質転換するために使用した。この結果生じたS.agalactiae、S.uberis、S.parauberis及びS.iniaeを含むプラスミドは、それぞれpMF521c(ATCC No.PTA−1975)、pMF521a(ATCC No.PTA−1973)、pMF521d及びpMF521e(ATCC No.PTA−1972)と称された。(6×His)GapCタンパク質の発現のために、前記したように構築物を使用して大腸菌BL21DE3を形質転換した。
【0153】
D.gapC遺伝子のヌクレオチド配列及び導かれたアミノ酸配列
S.equisimilis相同体のgapCと相同な配列(Gase et al.(1996)European J.of Biochem.239:42〜51)は、当初、S. dysgalactiae中の連結しているが無関係な遺伝子の配列決定中に同定された。S. dysgalactiaeのgapC遺伝子の完全な配列を得るために、上述のプライマー、即ちプライマーgapC1及びプライマーgapC1rを使ってPCRを行った。
【0154】
配列の決定は、Plant Biotechnology Institute(PBI、Saskatoon、カナダ)において、ABI 373 DNA自動シーケンサー(Applied Biosystems、Emeryville、CA)の蛍光標識ターミネーターを使って行った。
【0155】
図1A〜1Bは、S. dysgalactiaeからのgapC遺伝子のコード配列(DysGapC)(配列番号3)と導かれたアミノ酸配列(配列番号4)を表す。
【0156】
S.agalactiae、S.uberis、S.parauberis及びS.iniaeから単離されたGapCタンパク質の配列は、同じ方法で決定された。
【0157】
図2から5は、S.dysgalactiaeのGapCタンパク質(DysgalGapC)のヌクレオチド配列と予測されたアミノ酸配列(配列番号3及び配列番号4)、並びにS.agalactiaeのGapCタンパク質(AgalGapC)(配列番号5及び配列番号6)、S.uberis(UberGapC)(配列番号7及び配列番号8)、S.parauberis(PUberGapC)(配列番号9及び配列番号10)、並びにS.iniae(IniaeGapC)(配列番号11及び配列番号12)のヌクレオチド配列と予測されたアミノ酸配列をそれぞれ示す。
【0158】
図1A〜1Bに示したS.dysgalactiaeのGapCタンパク質遺伝子は、シグナル配列と膜アンカー領域のいずれも含むようには見えない336個のアミノ酸タンパク質をコードする。BLASTXプログラムを使用したGenBankデータベースの検索で、オープンリーディングフレームはS.equisimilisのGapC(GenBankアクセッション番号X97788)と95.5%相同で、S.pyogenesのGapC(GenBankアクセッション番号M95569)と99.4%相同であることが分かった。GapCタンパク質の予測されたアミノ酸配列も、ウシのグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GenBankアクセッション番号U85042)に対して43%のアミノ酸同一性を示した。
【0159】
同様に、S.agalactiae、S.uberis、S.parauberis及びS.iniaeのGapCタンパク質配列に関しても、シグナル配列や膜アンカー領域が存在しているようには見えない。
【0160】
配列同一性を表2に示す。
【0161】
【表2】

【0162】
E.組換えS.dysgalactiae GapCプラスミン結合タンパク質の発現と精製
ヘキサヒスチジル標識GapCタンパク質は、メーカーの指示により、金属キレート(Ni−NTA)アガロース(Qiagen、Santa Clarita、CA)アフィニティークロマトグラフィーを非変性条件下で用いて発現、精製した。
【0163】
組換えプラスミドを含有する大腸菌BL21 DE3は、100μg/mlのアンピシリンが含まれたルーリア培地で、A600が約0.5になるまで培養した。次に、1mMのイソプロピル−β,D−チオガラクトシド(IPTG)(Sigma、St.Louis、MO)を添加してGapCタンパク質の発現を誘発した。37℃で3時間のインキュベーションの後、細胞を収穫し、カラム緩衝(50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.0、0.3MのNaCl、10mMのイミダゾール)で洗浄して、音波処理により溶解した。
【0164】
組換えタンパク質の約40%は超音波処理細胞の可溶性画分で、培養物容積1リットルあたり組換えタンパク質が約50mgの収率であることが、標準としてウシ血清アルブミン(Pierce、Rockford、IL)を用いたDCプロテインアッセイキット(Bio-Rad Laboratories、Mississauga、ON、カナダ)を使用して決定された。
【0165】
溶解物は遠心によって清澄化し、可溶画分はNi−NTAカラム(Qiagen)に入れ、次に、このカラムをカラム10倍量のカラム緩衝(20mMのイミダゾールを含有することを除いて上と同様)で洗浄した。カラム緩衝(250mMのイミダゾールを含有することを除いて上と同様)を用いてヘキサヒスチジル標識GapCを溶出し、GapC濃度が10〜15mg/mlの同質のタンパク分画が得られた。その画分は、2000容のPBSA(136mM塩化ナトリウム、2.6mM塩化カリウム、8.1mM二塩基性リン酸ナトリウム、1.46mM一塩基性リン酸カリウム)で透析した。
【0166】
F.S.agalactiae、S.uberis、S.parauberis及びS.iniaeからの組換えGapCタンパク質の発現と精製
これらの連鎖球菌からの組換えタンパク質の発現及び精製は、前記実施例1Eで記載の同じ方法で達成できる。S.agalactiae、S.uberis、S.parauberis及びS.iniaeの組換えGapCタンパク質の発現のために使用された形質転換された細菌株は、それぞれ、BL21 DE3(pMF521c)(ATCC No.PTA−1975)、BL21 DE3(pMF521a)(ATCC No.PTA−1973)、BL21 DE3(pMF521d)及びBL21 DE3(pMF521e)(ATCC No.PTA−1972)と称された。
【0167】
G.組換えS.dysgalactiae GapCタンパク質の特性解析
1.SDS−Page分析
溶出タンパク質試料のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析は、Laemli(Laemli、英国、(1970) Nature 227:680〜685)が記載した方法を使用した。結果を図18に示す。図中、レーン1:分子量マーカー(20.5〜103kDa;BioRad Laboratories、Emeryville、CA);レーン2:Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィーによって精製されたS.dysgalactiaeの可溶性組換えGapCタンパク質)。
【0168】
これらの結果は、Ni−NTAカラムでのアフィニティークロマトグラフィーによる精製により、相同のタンパク分画が得られることを実証している。
【0169】
2.組換えGapC及びS.dysgalactiae完全細胞のグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)活性
GAPDHは、NAD及び無機リン酸塩存在下で、D−グリセルアルデヒド−3−リン酸の1,3−ジホスホグリセリン酸への酸化的リン酸化を触媒する。GapCと連鎖球菌のグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素との高い相同性は、GapCが本酵素活性を示す可能性を示唆した。
【0170】
S.dysgalactiae完全細胞(1010CFU)と組換えGapCタンパク質のGAPDH活性は、NADのNADHへの還元の測定により定量した。アッセイ緩衝液は、40mMトリエタノールアミン、50mMのNaHPO及び5mMのEDTAから成り、pHは6.8であった。S.dysgalactiae細胞又は精製された組換えタンパク質の5mgを、7mlのグリセルアルデヒド−3−リン酸(49mg/ml;Sigma Chemical Company)、最終容積1ml中75μlのNAD(15mM;Sigma Chemical Company)を含有しているアッセイ緩衝液でインキュベートした。ネガティブコントロールは、グリセルアルデヒド−3−リン酸塩及び組換えGapC分子/S.dysgalactiae細胞を含有していないサンプルから成った。NADからNADHへの還元は、340nmの吸光度を分光測光法でモニターした。
【0171】
結果は、組換えタンパク質並びに未変性のS.dysgalactiae野生株細胞は酵素活性を有することを示した(表示せず)。さらに、S.dysgalactiae細胞をトリプシンで処理して表面タンパク質を消化すると、GAPDH活性は消失した。このように、未変性の野生型細胞で観察された酵素活性は、細胞内のGAPDHによるものではなかった。
【0172】
このデータは、GapCタンパク質は、ヌクレオチド又はアミノ酸におけるシグナル配列又は膜アンカー領域の明らかな欠如にもかかわらず、細胞表面上に限局されることを示唆している。
【0173】
3.S.dysgalactiae組換えGapCプラスミン結合タンパク質及びS.dysgalactiae完全細胞のプラスミン結合活性
マイクロプレートアッセイを用いて、組換えGapCタンパク質がウシのプラスミンを結合できるか、もしできるとすれば、結合したプラスミンは酵素活性型であるかどうかを確定した。
【0174】
96穴マイクロタイタープレートを5mgの精製された組換えGapCタンパク質でコーティングし、0.05%TWEEN−20が含まれた0.1%のゼラチン−PBSA(PBSGT)で3回洗浄した。穴は同じ緩衝液中で37℃で1時間ブロックし、洗浄後、200mlのウシのプラスミン(0.25mg/ml;Boehringer Mannheim、Indianapolis、IN)と37℃で1時間インキュベートした。穴は、その後8回、PBSGTで洗浄した。合成基質クロマジン−PL(Tos−Gly−Pro−Lys−4−NA、0.3mg/ml)200mlを穴に加え、37℃で1時間インキュベートした。関連したプラスミン活性の存在は、上清に放出され405nmの吸光度に基づき検出されるパラニトロアナリド(paranitroanalide)(4−ニトラニリン)の濃度を測定して確定した。類似の方法を用いてS.dysgalactiae完全細胞のプラスミン結合活性を測定したが、ここでは1010個の細胞をPBSGTで洗浄し、400μlのクロマジン−PL(0.3mg/ml)で再懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。
【0175】
図19に示した結果は、精製された組換えタンパク質は酵素活性のあるウシプラスミンと結合することを証明している。同様に、S.dysgalactiae完全細胞を用いた場合、類似した結果が得られた。図では、データは個々の3つのアッセイの平均を表す。
【0176】
このように、プラスミン受容体はS.dysgalactiaeの表面に位置し、前記精製されたタンパク質は生物学的活性を保持する。
【実施例2】
【0177】
S.dysgalactiaeのGapCによる免疫化及びウシの試験的感染
ワクチンは、それらがオイルベースのアジュバントVSA3(VIDO、Saskatoon、Saskatchewan、カナダ;van Drunen Littel-van den Hurk et al.(1993)Vaccine 11:25〜35)に50mg/mlの親和性精製組換えGapCを含むように製剤された。VSA3は、Emulsigen Plus(商標)(MVP Laboratories、Ralston、Nebraska)とジメチルジオクタデシル臭化アンモニウム(Kodak、Rochester、New York)とを組み合わせたものである。ワクチン製剤のために使われるアフィニティー精製組換えGapCタンパク質を図18に示す。
【0178】
S.dysgalactiae感染の病歴のない24頭の非授乳ホルスタインが、カナダのサスカチュワン州の様々な農場から得られた。ワクチン接種の1週間前に、すべての動物をCepha−dry(商標)(Ayerst Laboratories、Montreal、カナダ)で処置(1乳房区につき300mg)し、ワクチン接種の段階の前に乳房のいかなる感染も取り除いた。
【0179】
8動物からなる群を、S.dysgalactiaeのGapC、Mig(S.dysgalactiaeから分離されたFC受容体タンパク質で同時に評価された)、又はプラセボを含有するワクチンを、3週間の接種間隔で2用量を皮下経路で投与して免疫化した。2回目の接種から2週間後、動物の3つの乳房区は乳房注入カニューレで650cfuのS.dysgalactiaeに曝された。各動物の第4の乳房区は、非感染コントロールとして用いられた。
【0180】
すべての動物は、毎日、病気の臨床徴候がないか調べられ、また、すべての乳房区からのサンプルを毎日採取した。サンプルは粘稠度と体細胞数、並びに細菌数が観察された。
【実施例3】
【0181】
GapC特異抗体の測定
ウシ血清中のGapC特異抗体は、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)を使って測定された。手短に言うと、マイクロタイタープレート(NUNC、Naperville、Illinois)を、50mMの炭酸ナトリウム緩衝(pH9.6)中の精製組換え抗原を1穴あたり1マイクログラムを加えることによってコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。液を取り除き、穴を37℃で1時間、3%のウシ血清アルブミンでブロックした。次に、ウシ血清の連続希釈液(1対4から1対6,400まで)を穴に加え、室温で2時間インキュベートした。穴を吸引、洗浄し、100mlのアルカリホスファターゼ抱合ヤギ抗ウシIgG(Kirkgaard & Perry Laboratories Inc.、Gaithersburg、MD)と室温で1時間インキュベートした。穴を再び洗浄し、100μlのp−ニトロフェノールリン酸塩(SIGMA、St.Louis、MO)を、アルカリホスファターゼ活性を見つけるための基質として加えた。基質と室温で1時間インキュベーション後に、405nmにおける吸光度を記録した。
【0182】
図で参照されている場合、比抗体価はバックグラウンドレベルより上の活性を示す希釈倍率の逆数で表されている。
【実施例4】
【0183】
細菌の定着
細菌は、TSA羊血寒天プレートの上に系列希釈(10から10−3)を直接塗抹し、一晩37℃、5%COでインキュベーションして計数した。定着は、感染生物の回収が>500cfu/mlと定義される。
【0184】
泌乳から回収される細菌がS.dysgalactiaeであることを確認するために、各動物から回収され選抜されたコロニーを、API strep−20検査(bioMerieux SA、Hazelwood、Missouri)をメーカーの指示通りに使って検査した。本試験は、酵素活性と糖の発酵の測定のための20の生化学検査を組み合わせた標準方法である。反応は読取り表に従って読み取り、分析プロフィール指数を参照して、又は確認ソフトウェアを使用して確認される。
【0185】
感染の後、すべての群の動物はS.dysgalactiaeが定着していることが示された(図20)。GapCで免疫化したウシだけは、感染させた乳房区の数と乳房区あたりの分離細菌総数において統計学的に有意な減少を示した。従って、GapCによる免疫化は、S.dysgalactiaeによる感染後の細菌の定着を減らした。
【0186】
抗GapC抗体価と細菌定着の間の関係を図21と22に示す。抗GapC血清抗体レベルと、いずれの乳房区における最大細菌数(CFU(log10/乳汁1mlで表示)(r=0.74)(図21)との間、並びに感染乳房区総数(r=0.74)(図22)との間に強い相関が見られた。相関は、GraphPad Prismソフトウェアver.2.01(GraphPad Software Inc.、San Diego、カリフォルニア)を使用して計算した。
【0187】
この相関は図23及び図24にも例示されており、そこではGapC免疫化群は高力価応答体と低力価応答体にさらに分割されている。これらの図では、「低力価応答体」はGapCに対して最も弱い応答を示した4動物を指し、「高力価応答体」は前記群の残りの動物を指す。高力価群では定着は起こらなかったが、低力価群でさえ3日後には回収細菌数の減少が見られた。
【実施例5】
【0188】
炎症性反応の測定
炎症性反応は、体細胞数(即ち、リンパ球、好中球及び単球)の関数として測定された。体細胞数は、Agriculture and Agri-Food Canada Pamphlet IDF50B(1985)Milk and Milk products-Methods of Samplingの推奨に従って、標準の手法を使ってコールターカウンターで測定した。サンプルは、感染後1〜7日に、常に採取及び固定から48時間以内に判読された。
【0189】
腺に存在する体細胞数は、感染後の毎日測定された。感染させなかった乳房区からの数は試験期間を通して一定であったが、1日後のGapC群ではプラセボ接種群より低かった(図25)。GapC群とプラセボ群の間の相違は、統計学的に有意であった。1日後の個々のデータを図26に示す;感染後7日間におけるGapC処置動物のデータを図27に示す。GapC接種動物の乳房区からのサンプルは、感染させなかった乳房区と見分けがつかなかった。
【0190】
従って、GapCによる免疫化は、S.dysgalactiaeによる感染後の炎症性反応を減らした。
【実施例6】
【0191】
泌乳牛の免疫化と感染
S.uberis及びS.dysgalactiaeを含むワクチンの泌乳牛における効果を試験するための同様の実験を下記のように行った。合計99頭の泌乳ホルスタイン牛を、S.uberis完全細胞、GapCとCAMP、別の連鎖球菌抗原に対する血清IgGが存在するかスクリーニングした。8動物からなる4群を、プラセボ、S.uberisの(6×His)GapC、S.dysgalactiaeの(6×His)GapC、及びCAMP−3によるワクチン接種のために選抜した。各ワクチン用量(2ml)には、100μg/mlの精製された(6×His)GapC、CAMP−3又は抗原が含まれないプラセボ(0.85%(w/v)食塩水)、及び30%のVSA3(VIDO、Saskatoon、Saskatchewan、カナダ;van Drunen Littel-van den Hurk et al. (1993) Vaccine 11:25〜35)が含まれた。ウシは、感染の36日前(day 0)と15日前に、皮下注射を首に2回受けた。感染の8日前に、各乳房区からの乳サンプルの細菌の存在を分析し、感染していた動物は試験から排除された。その後、各群の6頭のウシを感染させた。感染の3時間前に、乳首を清潔な暖かい水で洗浄し、乾燥して、アルコールで拭いた。乳サンプルは体細胞数計測(SCC)と細菌学的検査のために採取した。左の乳房区は、コントロールとして感染させなかった。0.85%(w/v)食塩水に懸濁したS.uberis SU21(Animal Health Laboratory、Alberta、カナダから得られた臨床分離株)の対数増殖期培養物の3.0×10cfu/mlを含有した接種菌の3mlを、乳房内注入により各動物の右の乳房区に投与した。乳サンプルは、感染後7日間毎日すべての乳房区から集め、SSCの測定と細菌学的検査を行った。すべてのサンプルは氷の上で保存し、採取から48時間以内に分析された。動物の臨床評価には、直腸温と乳房腫脹(目視検査及び触診による)の計測が含まれた。1(正常)から3.5(重症乳腺炎)までの数値スコアを各動物に割り当て、ワクチン群間での乳腺炎の重症度の比較手段として用いた。乳汁品質はクロットの存在により評価した。
【0192】
血清IgG力価は、第1回目及び2回目のワクチン接種時、感染8日前(day 28)、及び感染11日後(day 47)に測定した。同様に、乳汁IgG力価をday 21とday 43に測定した。血清IgA力価をday 21及びday 47に、乳汁IgA力価をday 21とday 43に測定した。丸底96穴マイクロタイタープレート(Nunc)をCAMP−3及びS.uberis及びS.dysgalactiaeの(6×His)GapC(100ng/穴、100μlの炭酸塩緩衝溶液、pH9.6)を用いて4℃で一晩コーティングし、200μlのPBSTgを用いて37℃で1時間ブロックした。試験サンプルを1穴あたり100μl加え、プレートを室温で2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ抱合型ヤギ抗ウシIgG(H&L;Kirkegaard and Perry Labs.Inc.、Gaithersburg、MD)を加え(100μl/穴)、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、1Mジエタノールアミン(pH9.8)と0.5mM MgClに溶かしたp−ニトロフェニルリン酸塩と室温で1.5時間インキュベーションした後に、405nmでアルカリホスファターゼ活性を検出した。
【0193】
乳汁IgGとIgAの測定は、乳汁を市販のレンニン溶液で処理した後に以下のように行った。Rennet(CHRHANSEN)1錠を40mlの水に溶かし、この溶液の0.1mlを2mlの乳汁に加えて、室温で4時間インキュベートした。凝固したカゼインを3,000×gで20分間の遠心にかけてペレット化し、中間層を取り出し(上層は脂肪を含む)、血清サンプルとして分析した。血清と乳汁の力価の測定は、OD405対希釈対数の最小二乗回帰と血清を含有していない穴から得られたOD405との交差により測定された。
【0194】
乳サンプルからのSCCの測定は、Pacific Milk Analysis Laboratory(Chilliwak、British Columbia)で実施された。サンプルは防腐剤入りの14mlのポリスチレン製の丸底管(Falcon)で採取された。SCCは、0.5mlの乳サンプルを10μlの固定液(0.2mg/mlのエオシン、3.3%ホルムアルデヒド溶液)と30℃で18時間混合して固定した。サンプルは乳化電解溶液(12%のエタノール、0.02%トリトンX−100,0.1MのNaCl)で100倍に希釈し、80℃で10分間インキュベートした。室温まで冷却後、SCCをコールターカウンターで測定した。処理間、及び経時的なSCC反復測定値の分散分析は、SYSTAT 10ソフトウェアパッケージ(SPSS Science、シカゴ、米国)を使って行った。
【0195】
表3は、感染前及び後の力価を示すが、これらは各投与群のすべての動物から得られた血清力価の自然対数変換値の算術平均として示されている(括弧内は標準偏差を示す)。ワクチン接種の前には、いかなる程度であれ(6×His)GapCに対して検出可能な血清IgG力価を示した動物は4個体だけであった。ワクチン接種の後、(6×His)GapCによるワクチン接種をしたすべての動物は血清及び乳汁の抗(6×His)GapC−IgG力価における有意な上昇を示し、それらは一貫して対照動物より最低10倍高いレベルを維持したが、CAMP−3によるワクチン接種をした動物の抗(6×His)GapC−IgG力価は対照群のそれと類似していた。乳汁中の抗(6×His)GapC−IgG力価は、血清中の対応する値より一貫して低かった。しかしなから、感染の直前には、対照動物及びCAMP−3接種動物と比較して、(6×His)GapC接種動物における血清及び乳汁のIgG力価の上昇が明らかであった。血清抗(6×His)GapC−IgAレベルは、感染前にはすべての群で検出できたが、感染後には著しく上昇した。CAMP−3でワクチン接種された群でさえ血清抗(6×His)GapC−IgA力価の上昇を示し、これは恐らく、S.uberis感染細菌の細胞表面関連のGapCに曝露されたことが原因と考えられる。CAMP−3ワクチン接種を受けた動物では、抗(6×His)GapC乳IgG力価における感染後の増加も観察されたが、対応する増加は血清IgG力価では観察されなかった。血清と対照的に、乳汁抗(6×His)GapC−IgAは、感染の前でも後でも、実質的にすべての群で検知されなかった。
【0196】
CAMP−3によるウシのワクチン接種の後に、対照及び(6×His)GapC接種動物のそれらと比較して、血清及び乳汁の抗CAMP−IgG力価の著しい増加があった。さらに、抗(6×His)GapC−IgG力価と対照的に、抗CAMP−3力価は感染後に上昇し、一方、(6×His)GapCのそれはわずかに減少した。原因は不明であるが、この観察はすべてのワクチン接種群を通して一貫していた。感染後の血清抗(6×His)GapC−IgG力価は減少することが分かったが、対応する乳汁の力価は増加した(S.dysgalactiaeの(6×His)GapC接種群は除く)。感染前の血清抗CAMP−3−IgA力価は、同時(day 21)に測定された対応する血清抗(6×His)GapC力価よりも高く、感染後の血清サンプル採取時には、抗CAMP−3−IgAレベルはすべての群で上昇しており、最も著しかったのはCAMP−3接種群であった。これに対して、感染の前でも後でも、乳汁抗CAMP−3−IgA力価は実質的に検出されなかった。
【0197】
S.uberis SU21による感染の後には、ワクチン接種されたかそうではない動物から、細菌はどの時点でも回収されなかった。このことは前の研究(Finch et al. (1994)Infect.Immun.62:3599〜3603)の結果と一致しているが、その研究では加熱殺菌S.uberisでワクチン接種された乳牛からは感染後に細菌が分離されなかったが、ワクチン接種されなかった対照動物からは細菌が分離された。この研究においては、投与された接種菌密度が、ワクチン接種されない動物においてさえ、持続的な感染を起こさずに乳腺炎を起こす程度に十分に低かった可能性がある。しかし、細菌が回収されなかったにもかかわらず、動物は病気の臨床徴候を示し、SCCは炎症の存在を示していた。従って、感染は成功したと考えられた。ワクチン群の間では、直腸温に有意差は観察されなく、また、臨床スコアは感染程度に有意差がないことを示していた。乳汁収率の差はどの動物においても観察されなかったけれども、乳汁の品質は以下で記すようにすべての群でわずかに影響を受けた。
【0198】
ウシの乳房は連結していない乳房区から成るが、S.uberisにより2つの乳房区のみを感染させることによって、各動物では内部防御が備わる。図28は試験期間中の各特定ワクチン群のSCCを示す。初期解析の結果、対照群で報告されたSCCはいくらか変化しているようである。しかし、全体的には時間と共にSCCは増加し、二次関係(p=0.02)で説明された。day 2の後、対照群のSCCは著しく増加し、感染後4日にはその最高レベルに達した。その後SCCはわずかに減少し、感染後7日までには再び著しく上昇した。この幾分不安定な傾向は、別の論文(Finch et al.(1997)Vaccine 15:1138〜1143;Finch et al.(1994)Infect.Immun.62:3599〜3603)で報告されている、泌乳牛をS.uberisで感染させた場合のSCC値と一致している。S.dysgalactiae(6×His)GapCで接種した動物のSCCは感染直後に鋭く上昇し、day 3には最大に到達したが、その後試験の残りの期間は不安定に減少した。しかしながら、感染後4日以降の見かけの相違にかかわらず、SCCの減少はどの時点でも対照群のそれと統計学的に有意に異なることはなかった。この結果は、S.dysgalactiaeの(6×His)GapCはS.uberisのそれほど保護的でないことが原因かもしれない。
【0199】
S.uberis(6×His)GapCによるワクチン接種は、対照群と比較してSCCの有意な減少をもたらした。day 3以降、この群のSCCは対照群のそれよりも統計学的に有意に低かった(p値は、感染後3日は0.023、4日は0.001、5日は0.011、6日は0.006、7日は0.000)。CAMP−3抗原でワクチン接種をしたウシのSCCはS.uberisの(6×His)GapC接種動物のそれよりもわずかに高かったが、それでもまだ対照群のそれよりも明らかに低かった。対照群とCAMP−3ワクチン接種群のSCCの比較で、感染後3日(p=0.033)、6日及び7日(それぞれ、p=0.032及びp=0.046)に統計学的に有意な差が明らかになったが、4日後及び5日後は、これらの日にはSCCがCAMP−3接種群で明らかに低かったけれどもそのようなことはなかった。
【0200】
SU21による感染の後、乳汁品質への影響が残っていた時間は、ワクチン群間で変動した。対照群、S.dysgalactiae(6×His)GapC、CAMP−3,及びS.uberis(6×His)GapC接種群における感染後の乳汁品質は、それぞれ計21日、24日、11日及び9日間低下した。このデータによると、S.dysgalactiae(6×His)GapC接種群における乳腺炎は、対照群のそれよりも悪くはないにしてもより軽いものではなかった。反対に、S.uberis(6×His)GapCによるワクチン接種では乳汁品質の劣化を完全に予防できなかったが、乳汁品質が影響を受けた延べ時間をかなり減らした。CAMP−3によるワクチン接種も乳汁品質が低下した延べ時間を短縮したようであるが、S.uberis(6×His)GapC群ほどではなく、これはSCCの結果と一致する。
【0201】
このように、S.uberis(6×His)GapCによるワクチン接種は、異種感染に対して著しい保護をもたらし、S.uberisのGapCは従ってS.uberis乳腺炎並びに異種株による乳腺炎に対してもワクチン抗原としての利用に適当である。
【0202】
【表3】

【0203】
このように、各種GapCプラスミン結合タンパク質のクローニング、発現、及び特性解明がその利用方法と並んで開示されている。本発明の好ましい実施形態がある程度詳細に記載されたが、添付の請求項に定義されているような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、明らかな変更を加えることができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1A】S.dysgalactiaeのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列及び導いたアミノ酸配列を表す図である(配列番号3及び配列番号4)。
【図1B】S.dysgalactiaeのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列及び導いたアミノ酸配列を表す図である(配列番号3及び配列番号4)。
【図2A】S.agalactiaeのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列及び導いたアミノ酸配列を表す図である(配列番号5及び配列番号6)。
【図2B】S.agalactiaeのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列及び導いたアミノ酸配列を表す図である(配列番号5及び配列番号6)。
【図3A】S.uberisのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列及び導いたアミノ酸配列を表す図である(配列番号7及び配列番号8)。
【図3B】S.uberisのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列及び導いたアミノ酸配列を表す図である(配列番号7及び配列番号8)。
【図4A】S.parauberisのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列及び導いたアミノ酸配列を表す図である(配列番号9及び配列番号10)。
【図4B】S.parauberisのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列及び導いたアミノ酸配列を表す図である(配列番号9及び配列番号10)。
【図5A】S.iniaeのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列及び導いたアミノ酸配列を表す図である(配列番号11及び配列番号12)。
【図5B】S.iniaeのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列及び導いたアミノ酸配列を表す図である(配列番号11及び配列番号12)。
【図6A】PileUpによって作成されPrettyソフトウェア(Canadian Bioinformatics ResourceのSeqWeb配列解析パッケージVer.1.1によって提供されるGCGウィスコンシンパッケージVer.10の構成体)で表示されたDNA配列を示す図である。 図は、S.dysgalactiae(DysGapC、Check 9344)、S.agalactiae(AgalGapC、 Check 2895)、S.uberis(UberGapC、Check 5966)、S.parauberis(ParaUbGapC、Check 9672)及びS.iniae(SiniGapC、Check 990)からのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列を表す。S.equisimilis(SeqGapC、Check 5841)、化膿連鎖球菌(SpyGapC、Check 4037)及びウシのGAPDHタンパク質(BovGapC、check 5059)の既知の配列も含まれる。長さと重量パラメータは、すべての配列で同一であった(それぞれ1018及び1.00)。DNAの塩基配列比較において使われるパラメータは、次の通りであった:Plurality-2.00;Threshold-1;Aveweight-1.00;AveMatch-1.00;AveMisMatch-0.00;Symbol comparison table-pileupdna.cmp;CompCheck-6876;GapWeight-5;GapLengthWeight-1;PileUp MSF-1018;Type-N;Check-3804。同図において、ダッシュは同一のヌクレオチドを意味し、点は配列表を作成するためにソフトウェアによって導入されるギャップを表し、波形符号は遺伝子配列の長さの相違のために配列全体に含まれない領域を表す。
【図6B】PileUpによって作成されPrettyソフトウェア(Canadian Bioinformatics ResourceのSeqWeb配列解析パッケージVer.1.1によって提供されるGCGウィスコンシンパッケージVer.10の構成体)で表示されたDNA配列を示す図である。 図は、S.dysgalactiae(DysGapC、Check 9344)、S.agalactiae(AgalGapC、 Check 2895)、S.uberis(UberGapC、Check 5966)、S.parauberis(ParaUbGapC、Check 9672)及びS.iniae(SiniGapC、Check 990)からのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列を表す。S.equisimilis(SeqGapC、Check 5841)、化膿連鎖球菌(SpyGapC、Check 4037)及びウシのGAPDHタンパク質(BovGapC、check 5059)の既知の配列も含まれる。長さと重量パラメータは、すべての配列で同一であった(それぞれ1018及び1.00)。DNAの塩基配列比較において使われるパラメータは、次の通りであった:Plurality-2.00;Threshold-1;Aveweight-1.00;AveMatch-1.00;AveMisMatch-0.00;Symbol comparison table-pileupdna.cmp;CompCheck-6876;GapWeight-5;GapLengthWeight-1;PileUp MSF-1018;Type-N;Check-3804。同図において、ダッシュは同一のヌクレオチドを意味し、点は配列表を作成するためにソフトウェアによって導入されるギャップを表し、波形符号は遺伝子配列の長さの相違のために配列全体に含まれない領域を表す。
【図6C】PileUpによって作成されPrettyソフトウェア(Canadian Bioinformatics ResourceのSeqWeb配列解析パッケージVer.1.1によって提供されるGCGウィスコンシンパッケージVer.10の構成体)で表示されたDNA配列を示す図である。 図は、S.dysgalactiae(DysGapC、Check 9344)、S.agalactiae(AgalGapC、 Check 2895)、S.uberis(UberGapC、Check 5966)、S.parauberis(ParaUbGapC、Check 9672)及びS.iniae(SiniGapC、Check 990)からのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列を表す。S.equisimilis(SeqGapC、Check 5841)、化膿連鎖球菌(SpyGapC、Check 4037)及びウシのGAPDHタンパク質(BovGapC、check 5059)の既知の配列も含まれる。長さと重量パラメータは、すべての配列で同一であった(それぞれ1018及び1.00)。DNAの塩基配列比較において使われるパラメータは、次の通りであった:Plurality-2.00;Threshold-1;Aveweight-1.00;AveMatch-1.00;AveMisMatch-0.00;Symbol comparison table-pileupdna.cmp;CompCheck-6876;GapWeight-5;GapLengthWeight-1;PileUp MSF-1018;Type-N;Check-3804。同図において、ダッシュは同一のヌクレオチドを意味し、点は配列表を作成するためにソフトウェアによって導入されるギャップを表し、波形符号は遺伝子配列の長さの相違のために配列全体に含まれない領域を表す。
【図6D】PileUpによって作成されPrettyソフトウェア(Canadian Bioinformatics ResourceのSeqWeb配列解析パッケージVer.1.1によって提供されるGCGウィスコンシンパッケージVer.10の構成体)で表示されたDNA配列を示す図である。 図は、S.dysgalactiae(DysGapC、Check 9344)、S.agalactiae(AgalGapC、 Check 2895)、S.uberis(UberGapC、Check 5966)、S.parauberis(ParaUbGapC、Check 9672)及びS.iniae(SiniGapC、Check 990)からのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列を表す。S.equisimilis(SeqGapC、Check 5841)、化膿連鎖球菌(SpyGapC、Check 4037)及びウシのGAPDHタンパク質(BovGapC、check 5059)の既知の配列も含まれる。長さと重量パラメータは、すべての配列で同一であった(それぞれ1018及び1.00)。DNAの塩基配列比較において使われるパラメータは、次の通りであった:Plurality-2.00;Threshold-1;Aveweight-1.00;AveMatch-1.00;AveMisMatch-0.00;Symbol comparison table-pileupdna.cmp;CompCheck-6876;GapWeight-5;GapLengthWeight-1;PileUp MSF-1018;Type-N;Check-3804。同図において、ダッシュは同一のヌクレオチドを意味し、点は配列表を作成するためにソフトウェアによって導入されるギャップを表し、波形符号は遺伝子配列の長さの相違のために配列全体に含まれない領域を表す。
【図6E】PileUpによって作成されPrettyソフトウェア(Canadian Bioinformatics ResourceのSeqWeb配列解析パッケージVer.1.1によって提供されるGCGウィスコンシンパッケージVer.10の構成体)で表示されたDNA配列を示す図である。 図は、S.dysgalactiae(DysGapC、Check 9344)、S.agalactiae(AgalGapC、 Check 2895)、S.uberis(UberGapC、Check 5966)、S.parauberis(ParaUbGapC、Check 9672)及びS.iniae(SiniGapC、Check 990)からのgapC遺伝子の単離されたヌクレオチド配列を表す。S.equisimilis(SeqGapC、Check 5841)、化膿連鎖球菌(SpyGapC、Check 4037)及びウシのGAPDHタンパク質(BovGapC、check 5059)の既知の配列も含まれる。長さと重量パラメータは、すべての配列で同一であった(それぞれ1018及び1.00)。DNAの塩基配列比較において使われるパラメータは、次の通りであった:Plurality-2.00;Threshold-1;Aveweight-1.00;AveMatch-1.00;AveMisMatch-0.00;Symbol comparison table-pileupdna.cmp;CompCheck-6876;GapWeight-5;GapLengthWeight-1;PileUp MSF-1018;Type-N;Check-3804。同図において、ダッシュは同一のヌクレオチドを意味し、点は配列表を作成するためにソフトウェアによって導入されるギャップを表し、波形符号は遺伝子配列の長さの相違のために配列全体に含まれない領域を表す。
【図7A】PileUpによって作成されPretty(同上)で表示されたアミノ酸配列順序を示す図である。この配列はS.dysgalactiae(DysGapC、Check 6731)、S.agalactiae(AgalGapC、 Check 1229)、S.uberis(UberGapC、Check 8229)、S.parauberis(PUberGapC、Check 8889)及びS.iniae(IniaeGapC、Check 8785)から導かれたGapCタンパク質のアミノ酸配列を表す。S.equisimilis(SeqGapC、Check 8252)、化膿連鎖球菌(SpyGapC、Check 6626)及びウシのGAPDHタンパク質(BovGapC、Check 8479)の既知の配列も含まれる。同図において、ダッシュは同一のアミノ酸残基を意味し、点はPileUpソフトウェアによって導入されるギャップを表し、波形符号は遺伝子配列の長さの相違のために配列全体に含まれない領域を表す。
【図7B】PileUpによって作成されPretty(同上)で表示されたアミノ酸配列順序を示す図である。この配列はS.dysgalactiae(DysGapC、Check 6731)、S.agalactiae(AgalGapC、 Check 1229)、S.uberis(UberGapC、Check 8229)、S.parauberis(PUberGapC、Check 8889)及びS.iniae(IniaeGapC、Check 8785)から導かれたGapCタンパク質のアミノ酸配列を表す。S.equisimilis(SeqGapC、Check 8252)、化膿連鎖球菌(SpyGapC、Check 6626)及びウシのGAPDHタンパク質(BovGapC、Check 8479)の既知の配列も含まれる。同図において、ダッシュは同一のアミノ酸残基を意味し、点はPileUpソフトウェアによって導入されるギャップを表し、波形符号は遺伝子配列の長さの相違のために配列全体に含まれない領域を表す。
【図8】S.dysgalactiaeから単離されたGapCタンパク質のKyte−Doolittleハイドロパシープロット(7のウィンドウで平均)、Emini表面確率プロット、Karplus−Schulz鎖屈折プロット、Jameson−Wolf抗原性指数プロット並びにChou−Fasman及びGarnier−Osguthorpe−Robsonの両方の二次構造プロットを示す図である。
【図9】S.agalactiaeから単離されたGapCタンパク質のKyte−Doolittleハイドロパシープロット(7のウィンドウで平均)、Emini表面確率プロット、Karplus−Schulz鎖屈折プロット、Jameson−Wolf抗原性指数プロット並びにChou−Fasman及びGarnier−Osguthorpe−Robsonの両方の二次構造プロットを示す図である。
【図10】S.uberisから単離されたGapCタンパク質のKyte−Doolittleハイドロパシープロット(7のウィンドウで平均)、Emini表面確率プロット、Karplus−Schulz鎖屈折プロット、Jameson−Wolf抗原性指数プロット並びにChou−Fasman及びGarnier−Osguthorpe−Robsonの両方の二次構造プロットを示す図である。
【図11】S.parauberisから単離されたGapCタンパク質のKyte−Doolittleハイドロパシープロット(7のウィンドウで平均)、Emini表面確率プロット、Karplus−Schulz鎖屈折プロット、Jameson−Wolf抗原性指数プロット並びにChou−Fasman及びGarnier−Osguthorpe−Robsonの両方の二次構造プロットを示す図である。
【図12】S.iniaeから単離されたGapCタンパク質のKyte−Doolittleハイドロパシープロット(7のウィンドウで平均)、Emini表面確率プロット、Karplus−Schulz鎖屈折プロット、Jameson−Wolf抗原性指数プロット並びにChou−Fasman及びGarnier−Osguthorpe−Robsonの両方の二次構造プロットを示す図である。
【図13】S.dysgalから単離されたGapCタンパク質のChou−Fasman二次構造プロットを図示した図である。
【図14】S.agalactiaeから単離されたGapCタンパク質のChou−Fasman二次構造プロットを図示した図である。
【図15】S.uberisから単離されたGapCタンパク質のChou−Fasman二次構造プロットを図示した図である。
【図16】S.parauberisから単離されたGapCタンパク質のChou−Fasman二次構造プロットを図示した図である。
【図17】S.iniaeから単離されたGapCタンパク質のChou−Fasman二次構造プロットを図示した図である。
【図18】大腸菌DE3で生成された組換えS.dysgalactiaeのGapCのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す図である。レーン1、分子量マーカー(20.5〜103kDa;BioRad、Emeryville、CA);レーン2、Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィーによって精製された組換えS.dysgalactiaeの可溶性GapC。図の左の数字は分子量マーカーの位置を示す(単位:kDa)。
【図19】手つかずのS.dysgalactiae細胞と結合したウシのプラスミン、組換えS.dysgalactiaeのアフィニティー精製GapCタンパク質と結合したウシのプラスミン、手つかずのS.dysgalactiae細胞単独、組換えS.dysgalactiaeのアフィニティー精製GapCタンパク質単独、及びウシのプラスミン単独の酵素活性を比較した柱状グラフである。活性は、合成基質chromozine−PL(Roche Diagnostics、Laval、ケベック、カナダ)からのparanitroanalideの放出後の405nmにおける吸光度の上昇で測定された。データは、個々の3つのアッセイの平均を表す。
【図20】以下の3実験群における、7日間にS.dysgalactiaeに感染させた乳房区の割合の変化を比較した図である。(1)ワクチン接種をしない対照動物群。(2)Mig Fc結合タンパク質でワクチン接種された動物群。(3)GapCでワクチン接種された動物。感染は、泌乳1mlにつきS.dysgalactiaeが>500cfu回収されるときと定義された。
【図21】いかなる乳房区におけるS.dysgalactiaeの最大数を血清抗GapC抗体価(バックグラウンドレベルより上の活性を示す希釈倍率の逆数で表されている)に対してプロットした図である。血清抗GapCタイターは、GraphPad Software、Inc、サンディエゴ、CA、のGraphPad PrismソフトウェアVer.2.01を使用して解析されたように、乳腺から回収された最大cfu/ml値と相関する(R=0.74)ことが示された。
【図22】感染させた乳房区の累積数を血清抗体価(バックグラウンドレベルより上の活性を示す希釈倍率の逆数で表されている)に対してプロットした図である。抗GapC抗体血清抗体レベルと感染させた乳房区の合計数との間に高い相関が観察された。
【図23】GapCで免疫化した動物からの細菌回収を例示した図である。データポイントは、平均細菌回収数/乳汁1ml対時間(感染後日数)でプロットされている。同図において、ダイヤモンド(−◆−)は非ワクチン接種動物を表し、正方形(−■−)は低タイターの動物(即ち、GapCに対して抗体価に関して低い応答を示す動物)を表し、三角形(−△−)は高タイター動物(即ち、残りの動物)を表す。
【図24】GapCで免疫化した動物からのS.dysgalactiaeの回収を示した図で、乳房区感染率対感染後日数で表される時間でプロットされている。同図において、点バーは非ワクチン接種動物を表し、クロスハッチバーは低タイターの動物(即ち、GapCに対して抗体価に関して低い応答を示す動物)を表し、ブランクバーは高タイター動物(即ち、残りの動物)を表す。
【図25】観察されたS.dysgalactiae感染に対する炎症性反応を表す図で、各実験群における平均体細胞数(SCC)対感染後日数でプロットされている。同図において、ダイヤモンド(−◆−)は感染させない、非ワクチン接種動物を表し、正方形(−■−)は感染させた、非ワクチン接種動物を表し、三角形(−△−)は感染させた、Migワクチン接種動物を表し、x(−x−)は感染させたGapCワクチン接種動物を表す。
【図26】感染後1日目の1乳房区あたりの体細胞数を例示する図である。同図において、バーは各群の平均を表す。正方形(−■−)は非ワクチン接種動物を表し、三角形(−▲−)はGapCワクチン接種動物を表し、逆三角形(−▼−)はMigワクチン接種動物を表す。
【図27】感染後7日間の非ワクチン接種、非感染、及びGapC免疫化高タイター動物(即ち、特定群の8動物中最も高い抗体価を示す4動物)の体細胞数を表す図で、平均体細胞数のlog10/1ml乳汁対感染後日数でプロットされている。ダイヤモンド(−◆−)は感染させない、非ワクチン接種動物を表し、正方形(−■−)は感染させた、非ワクチン接種動物を表し、三角形(−△−)は感染させたGapCワクチン接種動物を表す。
【図28】実施例6で記載された牛群におけるS.uberis感染させた乳房区における感染後7日間の幾何平均SCC(プラス1標準偏差)を示す図である。データセットは、0日後(左端のバー)、1日後(左から2番目のバー)、2日後(左から3番目のバー)、3日後(左からの4番目のバー)、4日後(左から5番目のバー)、5日後(左から6番目のバー)、6日後(左から7番目のバー)及び7日後(左から8番目のバー)に対応する。図の外観にもかかわらず、S.dysgalactiaeの(6×His)GapCでワクチン接種した動物の7日後及び8日後のSCC、並びにCAMP−3ワクチン接種動物の感染後4日後及び5日後のSCCは、対照群のそれらと統計学的に有意に異ならなかった。
【図29】LipoF:CAMP3キメラのヌクレオチド及びアミノ酸の配列を表す図である(配列番号13及び14)。LipoFシグナル配列と融合したCAMP−3キメラのヌクレオチド及びタンパク質の配列が示されている。ヌクレオチド番号は図の左の数字で示され、アミノ酸残基の番号は右に示されている。下線を引いた配列は、LipoFシグナル配列を表す。スペーサーアミノ酸は、87、145及び146の位置に見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)薬剤として許容されるビヒクルと、(b)図29の27〜314位置で表した連続アミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでいるキメラCAMP因子ポリペプチドと、(c)GapCタンパク質とを含み、前記GapCタンパク質が、
(i)図1A〜1B(配列番号4)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(ii)図2A〜2B(配列番号6)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(iii)図3A〜3B(配列番号8)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(iv)図4A〜4B(配列番号10)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(v)図5A〜5B(配列番号12)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、並びに、
(vi)(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)の免疫原性断片であって、少なくとも約5つのアミノ酸を含む断片
からなる群から選択されるワクチン組成物。
【請求項2】
前記キメラCAMP因子ポリペプチドが図29の27〜314の位置で表した連続アミノ酸配列を含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
前記GapCタンパク質が、図1A〜1B(配列番号4)の1から336までのアミノ酸位置に示されたストレプトコッカス ディスガラクティエのGapCタンパク質のアミノ酸配列、又はその免疫原性断片を含み、前記断片が少なくとも約5つのアミノ酸を含む、請求項1又は2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
前記GapCタンパク質が図1A〜1B(配列番号4)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
前記GapCタンパク質が、図2A〜2B(配列番号6)の1から336までのアミノ酸位置に示されたストレプトコッカス アガラクティエのGapCタンパク質のアミノ酸配列、又はその免疫原性断片を含み、前記断片が少なくとも約5つのアミノ酸を含む、請求項1又は2に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記GapCタンパク質が図2A〜2B(配列番号6)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
前記GapCタンパク質が、図3A〜3B(配列番号8)の1から336までのアミノ酸位置に示されたストレプトコッカス ウベリスのGapCタンパク質のアミノ酸配列、又はその免疫原性断片を含み、前記断片が少なくとも約5つのアミノ酸を含む、請求項1又は2に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
前記GapCタンパク質が図3A〜3B(配列番号8)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
前記GapCタンパク質が、図4A〜4B(配列番号10)の1から336までのアミノ酸位置に示されたストレプトコッカス パラウベリスのGapCタンパク質のアミノ酸配列、又はその免疫原性断片を含み、前記断片が少なくとも約5つのアミノ酸を含む、請求項1又は2に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
前記GapCタンパク質が図4A〜4B(配列番号10)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列を含む、請求項9に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
前記GapCタンパク質が、図5A〜5B(配列番号12)の1から336までのアミノ酸位置に示されたストレプトコッカス イニエのGapCタンパク質のアミノ酸配列、又はその免疫原性断片を含み、前記断片が少なくとも約5つのアミノ酸を含む、請求項1又は2に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
前記GapCタンパク質が図5A〜5B(配列番号12)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列を含む、請求項11に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
アジュバントをさらに含む、請求項1又は2に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
ワクチン組成物を製造する方法であって、
(a)図29の27〜314の位置で表した連続アミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでいるキメラCAMP因子ポリペプチドと、
(b)GapCタンパク質であって、前記GapCタンパク質が、
(i)図1A〜1B(配列番号4)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(ii)図2A〜2B(配列番号6)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(iii)図3A〜3B(配列番号8)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(iv)図4A〜4B(配列番号10)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(v)図5A〜5B(配列番号12)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、並びに、
(vi)(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)の免疫原性断片であって、少なくとも約5つのアミノ酸を含む断片
からなる群から選択されるGapCタンパク質と、
(c)薬剤として許容されるビヒクルとを組み合わせることを含む、ワクチン組成物の製造方法。
【請求項15】
脊椎動物対象の細菌感染症の治療又は予防の方法であって、前記対象に請求項1から14のいずれかに記載のワクチン組成物の治療的有効量を投与することを含む方法。
【請求項16】
前記細菌感染症が連鎖球菌感染症である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細菌感染症が乳房炎を起こす、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
脊椎動物対象の細菌感染症の治療又は予防のためのキメラCAMP因子ポリペプチド及びGapCタンパク質の使用であって、前記キメラCAMP因子ポリペプチドが図29の27〜314の位置で表した連続アミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記GapCタンパク質が、
(a)図1A〜1B(配列番号4)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(b)図2A〜2B(配列番号6)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(c)図3A〜3B(配列番号8)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(d)図4A〜4B(配列番号10)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(e)図5A〜5B(配列番号12)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、並びに、
(f)(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)の免疫原性断片であって、少なくとも約5つのアミノ酸を含む断片
からなる群から選択される使用。
【請求項19】
前記細菌感染症が連鎖球菌感染症である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記細菌感染症が乳房炎を起こす、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
脊椎動物対象の細菌感染症を治療又は予防する薬剤の製造におけるキメラCAMP因子ポリペプチド及びGapCタンパク質の使用であって、前記キメラCAMP因子ポリペプチドが図29の27〜314の位置で表した連続アミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記GapCタンパク質が、
(a)図1A〜1B(配列番号4)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(b)図2A〜2B(配列番号6)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(c)図3A〜3B(配列番号8)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(d)図4A〜4B(配列番号10)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、
(e)図5A〜5B(配列番号12)の1から336までのアミノ酸位置に示されたアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むGapCタンパク質、並びに、
(f)(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)の免疫原性断片であって、少なくとも約5つのアミノ酸を含む断片
からなる群から選択される使用。
【請求項22】
前記細菌感染症が連鎖球菌感染症である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記細菌感染症が乳房炎を起こす、請求項22に記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2006−503803(P2006−503803A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−587837(P2003−587837)
【出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【国際出願番号】PCT/CA2003/000586
【国際公開番号】WO2003/091279
【国際公開日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【出願人】(504398270)ユニバーシティー オヴ サスカチュワン (1)
【Fターム(参考)】