説明

免疫応答を促進するためのミョウバンおよびTh1免疫応答誘起アジュバントの使用

本発明は、1型誘起アジュバントの存在下で抗原に対する抗原特異的な1型免疫応答を促進するための医薬の調製のためのミョウバンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫応答を促進するためのミョウバンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
侵入する病原体からの宿主の防御には細胞系のエフェクターおよび体液系のエフェクターが関与しており、非適合(non-adaptive)(生得)免疫および適合(adaptive)(獲得)免疫の両者の協調作用の結果得られる。後者はレセプターによって媒体される特異的な免疫学的認識に基づくものであり、最近獲得された免疫系であり、脊椎動物にのみ存在する。前者は適合免疫が発達する前から進化しており、あらゆる生物にわたって分布する様々な細胞および分子からなり、潜在的な病原体を制御下におくことを役目としている。
【0003】
BおよびTリンパ球は獲得された抗原特異的な適合免疫のメディエーターであり、免疫学的記憶の発達を含むが、これはワクチンの製造を成功させる主たる目標である。抗原提示細胞(APC)は、抗原をプロセシングし、プロセシングしたその断片をリンパ球の活性化に必要な分子とともに細胞表面に提示することのできる高度に特殊化した細胞である。このことは、特異的な免疫応答の開始にはAPCが非常に重要であることを意味する。Tリンパ球活性化のための主たるAPCは、樹状細胞(DC)、マクロファージ、およびB細胞であり、一方、Bリンパ球活性化のための主たるAPCは濾胞樹状細胞(follicular dendritic cells)である。一般に、DCが、休止したナイーブなおよびメモリーBおよびTリンパ球を刺激する免疫応答を開始させる観点から最も強力なAPCである。
【0004】
末梢にあるAPC(たとえば、DCやランゲルハンス細胞)の天然の役目は抗原を捕捉しプロセシングすることであり、それによって活性化されてリンパ球コスティミュレート分子の発現を開始し、リンパ器官に移動し、サイトカインを分泌して抗原を異なる集団のリンパ球に提示し、かくして抗原特異的な免疫応答を開始させる。APCは、ある環境下でリンパ球を活性化するのみならず、抗原に対してT細胞を寛容にもする。
【0005】
Tリンパ球による抗原の認識は、主要組織適合複合体(MHC)により拘束されている。ある特定のTリンパ球は、ペプチドが特定のMHC分子に結合している場合にのみ抗原を認識する。一般に、Tリンパ球は自己のMHC分子の存在下でのみ刺激され、抗原は自己のMHC分子に結合したペプチドとしてのみ認識される。MHC拘束は、認識される抗原の観点から、およびそのペプチド断片に結合するMHC分子の観点から、Tリンパ球の特異性を定めるものである。
【0006】
細胞内および細胞外の抗原は、認識および適切な応答の両観点から免疫系に対して極めて異なった攻撃を提示する。T細胞への抗原の提示は、2つの別個のクラスの分子、MHCクラスI(MHC−I)およびMHCクラスII(MHC−II)によって媒体され、これらは別個の抗原プロセシング経路を利用している。大概は、発達してきた2つの主要な抗原プロセシング経路を識別することが可能である。細胞内抗原に由来するペプチドはMHCクラスI分子(該分子は実質的にあらゆる細胞で発現される)によってCD8T細胞に提示されるのに対し、細胞外抗原に由来するペプチドはMHCクラスII分子によってCD4T細胞に提示される。しかしながら、この二分法にはある種の例外が存在する。エンドサイトーシスされた粒状または可溶性のタンパク質に由来するペプチドが、マクロファージ並びに樹状細胞のMHC−I分子上に提示されることを幾つかの研究が示している。それゆえ、樹状細胞のように末梢に存在するAPCは、細胞外抗原を捕捉およびプロセシングし、これら抗原をMHC−I分子上でTリンパ球に提示する高い潜在能力を発揮し、インビトロおよびインビボにて抗原で細胞外にて追跡する(pulsing)ための興味深い標的である。
【0007】
様々なタイプの白血球に対する刺激活性を含むAPCの重要かつ独特の役割は、ワクチン開発を成功させるに際して適切な戦略のための標的としての中心的な位置を反映している。理論的には、このことを行う一つの方法は、APCの天然の役割である抗原の取り込みを促進または刺激することである。ワクチンの対象とされる適当な抗原を適用されたら(pulsed)、APCは取り込まれた抗原のプロセシングを開始し、それによって活性化され、リンパ球コスティミュレート分子を発現し、リンパ器官に移動し、サイトカインを分泌し、リンパ球の異なる集団に抗原を提示し、かくして免疫応答を開始するに違いない。
【0008】
活性化されたT細胞は、一般に多数のエフェクターサイトカイン、たとえば、インターロイキン2(IL−2)、IL−4、IL−5、IL−10およびインターフェロン−γ(IFN−γ)を高度に制御された仕方で分泌する。特定の抗原(たとえば、腫瘍抗原、一般にワクチンにて投与される抗原)に対する細胞障害性Tリンパ球応答の機能的検出は、サイトカイン産生を単一細胞レベルで分析する技術であるELISpotアッセイ(酵素結合免疫スポットアッセイ)によって一般にモニターされる。本発明では細胞免疫(1型免疫応答)促進サイトカインIFN−γのためのELISpotアッセイを、首尾よいペプチド特異的T細胞活性化をモニターするのに用いる。さらに、サイトカインIL−4を、通常、強力な体液性応答の促進に関与している2型応答の指標として決定する。加えて、体液性免疫応答をELISA(IgG1を2型応答の指標として、またIgG2bを1型応答の指標として)により決定した。
【0009】
以前にポリカチオンがMHCクラスI適合(matched)ペプチドの腫瘍細胞中への取り込みを有効に促進することが示されており、これは「トランスローディング(TRANSloading)」と呼ばれるペプチドまたはタンパク質適用(pulsing)法である。さらに、ポリカチオンがペプチドまたはタンパク質を抗原提示細胞中に「トランスロード」できることがインビボ並びにインビトロで示されている。さらに、ポリL−アルギニンまたはポリL−リシンとワクチンとしての適当なペプチドとの混合物を同時に注射すると、マウスモデルにおいて動物が腫瘍増殖から保護される。この化学的に規定されたワクチンは、非常に多数の抗原/ペプチド特異的なT細胞を誘発することができる。これは、少なくとも部分的にはポリカチオンによって媒体されたAPC中へのペプチドの促進された取り込みによるものであることが示されており、APCはインビボで抗原を適用されたときに該投与抗原に対してT細胞媒体免疫を誘発しうることを示している。
【0010】
獲得免疫(高度に特異的だが応答が比較的遅い)とは異なり、生得免疫は宿主と比較して微生物成分の構造上の差異により誘起されるエフェクター機構に基づいている。これら機構はかなり迅速な初期応答を開始することができ、これは主として有毒物質の中和に導く。生得免疫の反応は低級な門の動物の唯一の防御戦略であり、獲得免疫系が動員される前の第一線の宿主防御として脊椎動物でも保持されている。
【0011】
より高等な脊椎動物では、生得免疫のエフェクター細胞は、好中球、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞およびおそらく樹状細胞であるのに対し、この経路の体液成分は補体カスケードおよび種々の異なる結合性タンパク質である。
【0012】
生得免疫の迅速かつ有効な成分は、長さが12から100アミノ酸残基の間の非常に様々な殺菌性ペプチドの産生である。数百の異なる抗菌ペプチドが、海綿動物、昆虫から動物およびヒトにいたる様々な生物で単離されており、これら分子の広範な分布を指し示している。抗菌ペプチドはまた、競合生物に対する拮抗物質として細菌によっても産生される。
【0013】
CD4T細胞の主要な2つのサブセット(1型Tヘルパー(Th1)および2型Tヘルパー(Th2))が、異なるサイトカイン分泌のプロファイルおよび異なるエフェクター機能に基づいてマウスおよびヒトで同定されている。Th1細胞は、主として、いわゆる1型免疫応答の生成に関与しており、この免疫応答は典型的に、遅延型過敏症応答、細胞媒体免疫、IgG2a/IgG2bへの免疫グロブリンクラススイッチおよびたとえばインターフェロンγの分泌を特徴とする。対照的に、Th2細胞は、いわゆる2型応答の生成に関与しており、この免疫応答は、B細胞を活性化することによる体液性免疫の誘発を特徴とし、IgGおよびIgEへのクラススイッチを含む抗体産生に導く。2型応答はまた以下のサイトカインの分泌を特徴とする:IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10。
【0014】
大抵の状況において、誘発された応答の型(1型または2型)は、ワクチンの防禦能に対して有意の影響を及ぼす。別のアジュバントは応答の特定の型に対して有利の傾向がある。しかしながら、アジュバント選択は、機能的な予測可能性によって、また商業的な制約や利用可能性によって錯綜している。
【0015】
アルミニウム塩(たとえば、水酸化アルミニウム(ミョウバン)(Rompp、第10版、139/140頁)、リン酸アルミニウム)は、現在、殆どすべての利用できるヒトワクチンにおいてワクチンアジュバントとして用いられている[1]。しかしながら、アルミニウム塩は、動物と同様にヒトにおいて、2型応答(細胞性:IL−4産生、体液性:IgG、IgE)へのシフトのみを増大させることが示された[2]。アルミニウム塩が1型細胞媒体免疫応答(細胞性:IFN−γ産生、体液性:IgG)を誘起できないことは、アジュバントとして使用するうえでの主たる制限である。とりわけ細胞内ウイルスおよび細菌感染に対するワクチンにとって細胞障害性T細胞応答の欠如は致命的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
それゆえ、1型指向の免疫応答を示す改良されたワクチンまたは2型応答に加えて免疫反応の1型シフトをも可能にするワクチンを提供することの必要性が存在する。さらに、すでに利用できるワクチンも、1型応答の誘起を可能とする改良された形態で提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
それゆえ、本発明は、
−抗原、
−1型アジュバントおよび
−ミョウバン
を含む新規医薬組成物であって、ただし、1型誘起アジュバントはCpGモチーフ(非メチル化CpGモチーフ)を含むオリゴデオキシヌクレオチドでないものを提供する。
【0018】
驚くべきことに、ミョウバンがワクチン中の所定の1型誘起アジュバントの性能を促進しうる(そして、2型の性能は一般に影響を受けない)ことが本発明で示された。このことは従来技術からは予測しえなかったことである、なぜならミョウバンは2型にのみ指向していると考えられていたからである。実際、所定の抗原の免疫反応は、単独またはミョウバンと組み合わせて適用したときに、ミョウバンが存在する場合には1型反応に関して(2型活性は保存される)有意に促進される。それゆえ、1型応答に対するミョウバンのいかなる(わずかであっても)正の作用または中性の作用であっても従来技術によっては予想しえなかった。
【0019】
本発明は、1型誘起アジュバントがすでにワクチンに存在するなら、ワクチンによって誘起される1型応答をミョウバンが効率的に促進することができるという事実に基づくものである。そのような1型誘起アジュバントが存在しない場合には、1型応答の促進は起こらない。
【0020】
本明細書においてミョウバンとは、ヒトおよび動物の医薬および研究において使用されるあらゆる形態のAl3+ベースのアジュバントを含む。とりわけ、ミョウバンは、Rompp、第10版、139/140頁によって定められるような水酸化アルミニウム、そのゲル形、リン酸アルミニウムなどのすべての形態を含む。
【0021】
本発明によれば、IgG応答を低減することなく細胞性1型応答の明らかな改良が提供される(IFN−g)。
【0022】
本発明に従って使用する抗原は重要ではないが、明確な(あるいは排他的な)1型応答が特に必要な場合は、T細胞エピトープ(上記導入部を参照)が抗原として好ましい。好ましくは抗原はウイルス、寄生虫または細菌の抗原である。実施例では、本発明は原則として肝炎ウイルス抗原、すなわちB型肝炎ウイルス表面抗原を用いて証明されるが、該抗原は本発明に従って好ましい抗原である。
【0023】
もちろん、医薬製剤は所望の免疫応答により2またはそれ以上の抗原をも含んでいてよい。抗原はまた、免疫応答をさらに促進すべく修飾してよい。
【0024】
好ましくは、ウイルスまたは細菌病原体からの、真菌または寄生虫からのタンパク質またはペプチド、並びに腫瘍抗原(癌ワクチン)または自己免疫疾患において推定の役割を有する抗原を抗原(糖付加した、脂質付加した(lipidated)、糖付加および脂質付加した(glycolipidated)またはヒドロキシル化した抗原などの誘導体化した抗原を含む)として用いる。さらに、炭水化物、脂質または糖脂質を抗原自体として用いることができる。誘導体化プロセスは、特定のタンパク質またはペプチドの病原体からの精製、病原体の不活化、並びにそのようなタンパク質またはペプチドのタンパク質加水分解によるまたは化学的な誘導体化または安定化を含む。あるいは、病原体それ自体を抗原として用いることができる。抗原は、ペプチドまたはタンパク質、炭水化物、脂質、糖脂質またはそれらの混合物であるのが好ましい。
【0025】
本発明の好ましい態様によれば、T細胞エピトープを抗原として用いる。別態様として、T細胞エピトープとB細胞エピトープとの組合せを用いることもできる。
【0026】
また、異なる抗原の混合物も、もちろん本発明に従って用いることが可能である。好ましくは、ウイルスまたは細菌病原体から、または真菌または寄生虫から単離したタンパク質またはペプチド(またはその組換え体)をそのような抗原(誘導体化抗原または糖付加したまたは脂質付加した抗原または多糖または脂質を含む)として用いる。抗原の他の好ましい採取源は腫瘍抗原である。好ましい病原体は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型およびB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、インフルエンザウイルス、ロタウイルス、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumonias)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、マイコバクテリウム・チューバーキュローシス(Mycobacterium tuberculosis)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumonias)、バシラス・アントラシス(Bacillus anthracis)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、プラスモジウム種(プラスモジウム・ファルシパルム(Pl. falciparum)、プラスモジウム・ビバックス(Pl. vivax)など)、アスペルギルス種またはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)から選ばれる。抗原はまた、癌細胞によって発現された分子であってもよい(腫瘍抗原)。誘導体化プロセスは、特定のタンパク質またはペプチドの病原体/癌細胞からの精製、病原体の不活化、並びにそのようなタンパク質のタンパク質加水分解によるまたは化学的な誘導体化または安定化を含む。同様に、腫瘍抗原(癌ワクチン)または自己免疫抗原も本発明による医薬組成物に用いることができる。そのような組成物を用いて腫瘍のワクチン接種または自己免疫疾患の治療を行うことができる。
【0027】
ペプチド抗原の場合、ペプチドのミモトープ(mimotopes)/アゴニスト/スーパーアゴニスト/アンタゴニストまたは免疫学的特性に影響を及ぼすことなくある種の位置で変化させたペプチドまたは非ペプチドのミモトープ/アゴニスト/スーパーアゴニスト/アンタゴニストの使用が本発明に含まれる。ペプチド抗原はまた、ポリカチオン性化合物または免疫促進化合物との相互作用を容易にする伸長を該ペプチド抗原のカルボキシ末端かまたはアミノ末端のいずれかに含んでいてよい。自己免疫疾患の治療のためにはペプチドアンタゴニストを適用することができる。
【0028】
抗原はまた、抗原提示および抗原の抗原提示細胞へのターゲティングを促進する分子を含ませるべく誘導体化することもできる。
【0029】
本発明の一つの態様において、医薬組成物は自己免疫疾患に関与するタンパク質またはタンパク質断片およびペプチドに対する耐性を付与することができる。この態様において用いる抗原は、自己免疫プロセスに関与するエピトープに対して免疫系を耐性にするまたは免疫応答をダウンレギュレーションすることができる。
【0030】
好ましくは、抗原は、5〜60、好ましくは6〜30、とりわけ8〜11のアミノ酸残基からなるペプチドである(たとえば、天然から単離した、組換えによりまたは化学的に製造した、とりわけ免疫原性エピトープを有する病原体由来タンパク質の断片)。この長さの抗原は、とりわけT細胞活性化に適していることがわかっている。抗原はさらに、たとえばWO01/78767、米国特許第5,726,292号またはWO98/01558に従ってテールとカップリングすることができる。
【0031】
ミョウバンと組み合わせて用いる1型誘起アジュバント(イミュナイザー(Immunizer))の構造的性質は、本発明とは低い関連性しか有しないことが示されている;相乗作用は、ミョウバンと組み合わせたときにアジュバント(イミュナイザー)またはアジュバント(イミュナイザー)混合物の殆ど機能的な1型指向能とのみ関連している。好ましくは、1型誘起アジュバント(イミュナイザー)は、ポリカチオン性ポリマー、脂質粒子エマルジョン、とりわけMF59、スクアレンとプルロニドとのポリマーおよびムラミルジペプチドのトレオニルアナログの安定な調合物(シンテックスアジュバント調合物(SAF))、モノホスホリル脂質A(MPL)、サポニン、とりわけQS21、免疫促進オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(ただし、該免疫促進オリゴデオキシヌクレオチドはCpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドではない)、およびそれらの組合せよりなる群から選ばれる。
【0032】
天然に存在するカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体が、免疫応答促進活性を有し、それゆえ高度に有効な1型誘起アジュバント(イミュナイザー)を構成することが以前に(WO02/13857)示されている。抗菌ペプチドの主たる採取源は、好中球および呼吸路、胃腸管および尿生殖路に整列する上皮細胞の顆粒である。一般に、該採取源は、微生物の侵入に最も暴露される解剖学的部位に認められ、内部の体液に分泌され、あるいは専門の食細胞(好中球)の細胞質顆粒に貯蔵される。
【0033】
WO02/32451には、特定の同時投与した抗原に対する免疫応答を強く促進することができ、それゆえ高度に有効なアジュバントを構成する1型誘起アジュバント(イミュナイザー)が開示されている。WO02/32451によるアジュバント(イミュナイザー)は、配列:R−XZXZXZX−R(式中、Nは3〜7の全数、好ましくは5、Xは正に荷電した天然および/または非天然アミノ酸残基、ZはL、V、I、Fおよび/またはWよりなる群から選ばれたアミノ酸残基、RおよびRは互いに独立して−H、−NH、−COCH、−COH、20までのアミノ酸残基またはペプチド反応性の基を有するペプチドまたはペプチドを有するかまたは有しないペプチドリンカーから選ばれる;X−RはまたC末端アミノ酸残基のアミド、エステルまたはチオエステルであってよい)を含むペプチドである。特に好ましいペプチドはKLKLLLLLKLKである。
【0034】
天然に存在する抗菌ペプチドに加え、合成抗菌ペプチドが製造され研究されている。合成抗菌ペプチドKLKLLLLLKLK−NHは、スタフィロコッカス・アウレウス感染マウスにおいて有意の化学療法活性を有することが示された;ヒト好中球は活性化されて細胞表面カルレティキュリンによりスーパーオキサイドアニオン(O)を産生した。KおよびLの正確な数および位置が、この合成ペプチドの抗菌活性にとって重要であることが見出された(Nakajima, Y. (1997); Cho, J-H. (1999))。
【0035】
本発明により1型促進剤として使用するポリカチオン性ポリマーまたは化合物は、WO97/30721による特徴的な作用を示すものであれば(そして、もちろん、それに対して免疫しようとする抗原ではないものであれば)いかなるポリカチオン性化合物であってよい。好ましいポリカチオン性化合物は、塩基性ポリペプチド、有機ポリカチオン、塩基性ポリアミノ酸またはその混合物から選ばれる。これらポリアミノ酸は、少なくとも4アミノ酸残基の鎖長を有していなければならない。特に好ましいのは、ポリリシン、ポリアルギニン、および8を超える、とりわけ20を超えるアミノ酸残基の範囲に20%を超える、とりわけ50%を超える塩基性アミノ酸を含むポリペプチドまたはその混合物のようなペプチド結合を含む物質である。他の好ましいポリカチオンおよびその医薬組成物は、WO97/30721(たとえば、ポリエチレンイミン)およびWO99/38528に記載されている。好ましくは、これらポリペプチドは20〜500アミノ酸残基、とりわけ30〜200残基を含む。
【0036】
これらポリカチオン性化合物は化学的にまたは組換えにより製造してよく、あるいは天然の採取源に由来してもよい。
【0037】
カチオン性(ポリ)ペプチドはまた、ポリカチオン性で抗菌性の微生物ペプチドであってもよい。これら(ポリ)ペプチドは、原核生物または動物または植物起源のものであってよく、化学的にまたは組換えにより製造されてよい。ペプチドはまたデフェンシンのクラスに属していてもよい。そのような宿主防御ペプチドまたはデフェンシン(defensives)もまた、本発明によるポリカチオン性ポリマーの好ましい形態である。一般に、好ましくはAPC(樹状細胞を含む)によって媒介される獲得免疫系を最終生成物として活性化(またはダウンレギュレーション)することを可能にする化合物はポリカチオン性ポリマーとして用いる。
【0038】
さらに、(ヒト)成長ホルモンなどの神経刺激性の化合物(たとえば、WO01/24822に記載)もまたTh1免疫促進剤(イミュナイザー)として用いることができる。
【0039】
天然の採取源に由来するポリカチオン性化合物としては、HIV−REVまたはHIV−TAT(由来のカチオン性ペプチド、アンテナペディア(antennapedia)ペプチド、キトサンまたはキトサンの他の誘導体)または生化学的な製造または組換え製造によりこれらペプチドまたはタンパク質に由来する他のペプチドが挙げられる。他の好ましいポリカチオン性化合物は、カテリン(cathelin)またはカテリシジンの関連物質またはカテリシジンに由来する物質、とりわけマウス、ウシまたは特にヒトのカテリシジンおよび/またはカテリシジンである。カテリシジンの関連物質またはカテリシジンに由来する物質はカテリシジン配列の全部または一部を含み、少なくとも15〜20アミノ酸残基を有する。誘導体化は、20の標準アミノ酸以外のアミノ酸による天然アミノ酸の置換または修飾を含む。さらに、さらなるカチオン性残基がそのようなカテリシジン分子中に導入されてよい。これらカテリシジン分子は、本発明による抗原/ワクチン組成物と組み合わせるのが好ましい。しかしながら、これらカテリン分子は驚くべきことに、さらなるアジュバントを加えなくとも抗原に対するアジュバントとして有効なことがわかった。それゆえ、そのようなカテリシジン分子は、さらなる免疫促進性物質を用いまたは用いることなく、ワクチン製剤において有効なアジュバントとして用いることが可能である。
【0040】
本発明の有意に好ましい態様によれば、医薬組成物は、(1またはそれ以上の)デオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン残基を含むデオキシヌクレオチド;2’デオキシイノシン−モノホスフェートまたは−モノチオホスフェートの3’側に隣接した少なくとも一つの2’デオキシシトシン−モノホスフェートまたは−モノチオホスフェートを含むデオキシヌクレオチド、とりわけデオキシイノシン−デオキシシトシン26−mer;およびイノシンおよびシチジンベースのODNよりなる群から選ばれた免疫促進ODNを含む。
【0041】
本発明による医薬組成物はまた、1を超える1型誘起アジュバント(イミュナイザー)の混合物を含んでいてよく、すなわち1型誘起アジュバント(イミュナイザー)組成物である。この1型誘起アジュバント(イミュナイザー)組成物では、3〜7の疎水性アミノ酸のリンカーによって隔てられた少なくとも2つのKLKモチーフを含む合成ペプチド、好ましくは配列KLKLLLLLKLKを有するペプチド;ポリカチオン性ペプチド、とりわけポリアルギニン、ポリリシンおよび抗菌ペプチド、とりわけカテリシジン由来の抗菌ペプチドよりなる群から選ばれた(1またはそれ以上の)ポリカチオン性ポリマーをさらに提供するのが好ましい。上記に記載したように、そのようなペプチド性イミュナイザーを上記の特に好ましい選択したオリゴデオキシヌクレオチド(I−またはU−ODN)と組み合わせるのが特に好ましい。そのようなI−またはU−ODNは、とりわけ、式:
【化1】

(式中、R1はヒポキサンチンおよびウラシルから選ばれる、
XはいずれもOまたはS、
NMPはいずれも、デオキシアデノシン−、デオキシグアノシン−、デオキシイノシン−、デオキシシトシン−、デオキシウリジン−、デオキシチミジン−、2−メチル−デオキシイノシン−、5−メチル−デオキシシトシン−、デオキシプソイドウリジン−、デオキシリボースプリン−、2−アミノ−デオキシリボースプリン−、6−S−デオキシグアニン−、2−ジメチル−デオキシグアノシン−またはN−イソペンテニル−デオキシアデノシン−モノホスフェートまたは−モノチオホスフェートよりなる群から選ばれた2'デオキシヌクレオシドモノホスフェートまたはモノチオホスフェート、
NUCは、デオキシアデノシン−、デオキシグアノシン−、デオキシイノシン−、デオキシシトシン−、デオキシイノシン−、デオキシチミジン−、2−メチル−デオキシウリジン−、5−メチル−デオキシシトシン−、デオキシプソイドウリジン−、デオキシリボースプリン−、2−アミノ−デオキシリボースプリン−、6−S−デオキシグアニン−、2−ジメチル−デオキシグアノシン−またはN−イソペンテニル−デオキシアデノシンよりなる群から選ばれた2'デオキシヌクレオシド、
aおよびbは0〜100の整数であり、ただしa+bは4〜150である、
BおよびEは核酸分子の5'末端または3'末端の一般的な基)による構造を有する免疫促進オリゴデオキシ核酸分子(ODN)として特徴付けられる。
【0042】
本発明の他の側面によれば、本発明はまた、1型誘起アジュバント(イミュナイザー)の存在下で抗原に対する抗原特異的な1型免疫応答を促進するための医薬の調製のためのミョウバンの使用にも関する。
【0043】
さらに詳細には、ミョウバンは、本発明に従って1型誘起活性が促進されたワクチンの調製のために用いる。
【0044】
本発明はまた、1型誘起アジュバント(イミュナイザー)と1型誘起アジュバント(イミュナイザー)としてのミョウバンとの組合せの使用にも関する。それゆえ、改良された1型誘起アジュバント(1型アジュバント組成物)が本発明により提供される。
【0045】
本発明によれば、1型誘起アジュバント(イミュナイザー)およびミョウバンを含むが、ただし、該1型誘起アジュバントはCpGモチーフ(CpGモチーフを有する非メチル化ODN)を含むオリゴデオキシヌクレオチドではないものである1型誘起アジュバント(イミュナイザー)組成物が提供される。
【0046】
アジュバント(イミュナイザー)(カチオン性ポリアミノ酸と合成ODNとの組合せに基づくものである)を本発明に従ってミョウバンと組合せ、ワクチンアジュバントとして強力な抗原特異的1型免疫応答を誘起させるのが特に好ましい。
【0047】
本発明によれば、アジュバントとしてミョウバンを含むいかなる所定のワクチンも、任意にポリカチオン性ペプチド化合物(ペプチド(1型)アジュバント(イミュナイザー))を混合して、本発明に従って選択した1型誘起アジュバント(イミュナイザー)(組成物)の添加により、とりわけI−および/またはU−ODNの添加により有効に改良することができる。
【0048】
抗原はアジュバント(イミュナイザー)(組成物)と本発明に従って混合でき、あるいは他の仕方で特別に、たとえばリポソーム、徐放製剤などとして、調合できる。
【0049】
本発明は、組合せ医薬を、たとえば、皮下、静脈内、鼻内、経口、筋肉内、皮内または経皮的に投与したときに特に有利である。しかしながら、他の投与形態、たとえば非経口や局所投与も本発明に適している。
【0050】
本発明を以下の実施例および図面によりさらに詳細に記載するが、本発明はこれら特定の態様に限られるわけではない。
【0051】
実施例:
ここでは、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、種々の1型誘起アジュバント(イミュナイザー)およびミョウバンを同時に注射したときに、HBsAg/イミュナイザーを単独で注射したときに比べて1型誘起アジュバント(イミュナイザー)によって誘起される1型応答が少なくともブースター投与後に強く増大することを示す実施例を提供する。しかしながら、ミョウバンにより誘起される2型応答は影響を受けない。
【0052】
材料および方法
マウス:C57B1/6(Harlan-Winkelmann、ドイツ);HBsAg特異的免疫応答に関して低レスポンダーマウス;5マウス/群/時点
【0053】
抗原:B型肝炎表面抗原(HBsAg);投与量:5μg/マウス
【0054】
ポリ−L−アルギニン:平均重合度が43アルギニン残基のポリ−L−アルギニン;Sigma chemicals。投与量:100μg/マウス。
【0055】
KLK:KLKLLLLLKLK−COOHをMPS(Multiple Peptide System、米国)により合成した。投与量:168μg/マウス。
【0056】
I−ODN2:デオキシイノシンを含むチオホスフェート置換ODN:5'tcc atg aci ttc ctg atg ct3'をPurimex Nucleic Acids Technology、ゲッチンゲンにより合成。投与量:5ナノモル/マウス。
【0057】
I−ODN2b:デオキシイノシンを含むODN:5'tcc atg aci ttc ctg atg ct3'をPurimex Nucleic Acids Technology、ゲッチンゲンにより合成。投与量:5ナノモル/マウス。
【0058】
o−d(IC)13:ODN 5’ICI CIC ICI CIC ICI CIC ICI CIC IC3’をPurimex Nucleic Acids Technology、ゲッチンゲンにより合成した。
投与量:5ナノモル/マウス。
【0059】
実験A:
1.HBsAg
2.HBsAg + ミョウバン
3.HBsAg + I−ODN2
4.HBsAg + I−ODN2b
5.HBsAg + o−d(IC)13
6.HBsAg + pR
7.HBsAg + KLK
8.HBsAg + pR + I−ODN2
9.HBsAg + pR + I−ODN2b
10.HBsAg + pR + o−d(IC)13
11.HBsAg + KLK + I−ODN2
12.HBsAg + KLK + I−ODN2b
13.HBsAg + KLK + + o−d(IC)13
【0060】
実験B:
1.HBsAg/ミョウバン
2.HBsAg/ミョウバン + I−ODN2
3.HBsAg/ミョウバン + I−ODN2b
4.HBsAg/ミョウバン + o−d(IC)13
5.HBsAg/ミョウバン + pR
6.HBsAg/ミョウバン + KLK
7.HBsAg/ミョウバン + pR + I−ODN2
8.HBsAg/ミョウバン + pR + I−ODN2b
9.HBsAg/ミョウバン + pR + o−d(IC)13
10.HBsAg/ミョウバン + KLK + I−ODN2
11.HBsAg/ミョウバン + KLK + I−ODN2b
12.HBsAg/ミョウバン + KLK + + o−d(IC)13
【0061】
第0日目および第56日目にマウスの右脇腹の皮下に上記化合物を含む全量100μl/マウスを注射した。第一の注射および第二の注射後のそれぞれ(第7日目)第21日目および第50日目に免疫応答の分析を行った。1群当たりおよび各時点当たり5匹のマウスの脾臓細胞を10μg/mlのHBsAgでイクスビボにて再刺激し、HBsAg特異的なIFN−γ(1型免疫応答)並びにIL−4(2型免疫応答)産生を分析するためにELISPOTアッセイを行った。さらに、血清を所定の時点で採取し、HBsAg特異的IgG2b力価(1型免疫応答)並びにIgG力価(2型免疫応答)を決定した。
【0062】
結果:
図1:HBsAg特異的な細胞性1型応答(HBsAg特異的IFN−γの産生)の誘発
HBsAgを単独またはミョウバンと組み合わせて注射するとIFN−γは誘発されないかまたは非常に低レベルのIFN−γしか誘発されないが、一方、HBsAgを異なるイミュナイザー(pR/ODN、KLK/ODN)と組み合わせて注射するとHBsAg特異的なIFN−γの産生が誘発され、これはブースターワクチン接種によりさらに増大させることができる(実験A)。しかしながら、HBsAg/イミュナイザーをミョウバンと同時注射すると、ブースター投与後に誘発されるIFN−γ産生は強く増大される(実験B)。
【0063】
図2:HBsAg特異的な細胞性2型応答(HBsAg特異的IL−4の産生)の誘発
ミョウバンと組み合わせて注射したHBsAgはHBsAg特異的なIL−4産生を誘発し、これは異なるイミュナイザーの同時注射によってさらに影響を受けることはない(実験B)。
【0064】
図3:HBsAg特異的な体液性1型応答(HBsAg特異的IgG2b力価)の誘発
HBsAgを単独またはミョウバンと組み合わせて注射するとHBsAg特異的なIgG2bは誘発されないが、一方、HBsAgを異なるpR/ODNベースのイミュナイザーと組み合わせて注射するとブースター投与後に強力なIgG2b力価を検出することができる(実験A)。ミョウバンの同時注射はこれら力価に実際上の影響を及すことはない(実験B)。HBsAg/KLK−ODNベースのイミュナイザーを注射しても抗体力価は全く誘発されない(実験A、B)。
【0065】
図4:HBsAg特異的な体液性2型応答(HBsAg特異的IgG1力価)の誘発
ミョウバンと組み合わせて注射したHBsAgはHBsAg特異的なIgG1力価を誘発するが、これはpR/ODNベースのイミュナイザーの同時注射によってさらに影響を受けることはない(実験B)。KLK−ODNベースのイミュナイザーを使用すると抗体力価は全く誘発されない(実験A、B)。
【0066】
結論:
イミュナイザーと抗原との注射と比較すると、イミュナイザーとミョウバンとの同時注射は促進された細胞性1型免疫応答(IFN−γ)を誘発するが、ミョウバンにより誘発される2型応答(IL−4)は影響を受けない。この観察は、イミュナイザーを少なくとも2つの観点で非常に魅力的なものにする。一方で、たとえばこれまでウイルス感染に対する治療用ワクチンなどの特別の応用には欠如していた細胞媒体1型応答を誘発するために、現存のミョウバンベースのワクチンを1型誘起イミュナイザーにより改良することができる。他方で、一般に組合せイミュナイザー/ミョウバンをワクチンアジュバントとして使用する場合に、さらに強力な1型応答を誘発させることができる。
【0067】
参照文献:
(1) Shirodkar, S.ら、1990, Aluminum compounds used as adjuvant in vaccines, Pharm Res. 7:1282-1288
(2) Gupta, R.K.およびSiber, G.R.; 1995, Adjuvants for human vaccines - current status, problems and future prospects, Vaccine 13(14) 1263-1276
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】HBsAg単独またはミョウバンおよび他のアジュバント(イミュナイザー)と組み合わせて注射後のHBsAg特異的な細胞性1型応答(HBsAg特異的IFN−γの産生)の誘発を示す。
【0069】
【図2】HBsAg単独またはミョウバンおよび他のアジュバント(イミュナイザー)と組み合わせて注射後のHBsAg特異的な細胞性2型応答(HBsAg特異的IL−4の産生)の誘発を示す。
【0070】
【図3】HBsAg単独またはミョウバンおよび他のアジュバント(イミュナイザー)と組み合わせて注射後のHBsAg特異的な体液性1型応答(HBsAg特異的IgG2b力価)の誘発を示す。
【0071】
【図4】HBsAg単独またはミョウバンおよび他のアジュバント(イミュナイザー)と組み合わせて注射後のHBsAg特異的な体液性2型応答(HBsAg特異的IgG力価)の誘発を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−抗原、
−1型誘起アジュバントおよび
−ミョウバン
を含み、ただし、該1型誘起アジュバントがCpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドでないことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
該抗原が、ウイルス、寄生虫または細菌の抗原である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
該ウイルス抗原が、肝炎ウイルス抗原、とりわけ、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、HIV−、HPV−、またはインフルエンザ抗原である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
該1型誘起アジュバントが、ポリカチオン性ポリマー、脂質粒子エマルジョン、とりわけMF59、スクアレンとプルロニドとのポリマーおよびムラミルジペプチドのトレオニルアナログの安定な調合物(シンテックスアジュバント調合物(SAF))、モノホスホリル脂質A(MPL)、サポニン、とりわけQS21、免疫促進オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(ただし、該免疫促進オリゴデオキシヌクレオチドはCpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドではない)、およびそれらの組合せよりなる群から選ばれる、請求項1ないし3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
該免疫促進ODNが、デオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン残基を含むデオキシヌクレオチド;2’デオキシイノシン−モノホスフェートまたは−モノチオホスフェートの3’側に隣接した少なくとも一つの2’デオキシシトシン−モノホスフェートまたは−モノチオホスフェートを含むデオキシヌクレオチド、とりわけデオキシイノシン−デオキシシトシン26−mer;およびイノシンおよびシチジンベースのODNよりなる群から選ばれる、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
該ポリカチオン性ポリマーが、3〜7の疎水性アミノ酸のリンカーによって隔てられた少なくとも2つのKLKモチーフを含む合成ペプチド、好ましくは配列KLKLLLLLKLKを有するペプチド;ポリカチオン性ペプチド、とりわけポリアルギニン、ポリリシンおよび抗菌ペプチド、とりわけカテリシジン由来の抗菌ペプチドよりなる群から選ばれる、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
1型誘起アジュバントの存在下で抗原に対する抗原特異的な1型免疫応答を促進するための医薬の調製のためのミョウバンの使用。
【請求項8】
該抗原が、ウイルス、寄生虫または細菌の抗原である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
該ウイルス抗原が、肝炎ウイルス抗原、とりわけ、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、HIV−、HPV−、またはインフルエンザ抗原である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
該1型誘起アジュバントが、ポリカチオン性ポリマー、脂質粒子エマルジョン、とりわけMF59、スクアレンとプルロニドとのポリマーおよびムラミルジペプチドのトレオニルアナログの安定な調合物(シンテックスアジュバント調合物(SAF))、モノホスホリル脂質A(MPL)、サポニン、とりわけQS21、免疫促進オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、およびそれらの組合せよりなる群から選ばれる、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
該免疫促進ODNが、デオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン残基を含むデオキシヌクレオチド;2’デオキシイノシン−モノホスフェートまたは−モノチオホスフェートの3’側に隣接した少なくとも一つの2’デオキシシトシン−モノホスフェートまたは−モノチオホスフェートを含むデオキシヌクレオチド、とりわけデオキシイノシン−デオキシシトシン26−mer;およびイノシンおよびシチジンベースのODNよりなる群から選ばれる、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
該ポリカチオン性ポリマーが、3〜7の疎水性アミノ酸のリンカーによって隔てられた少なくとも2つのKLKモチーフを含む合成ペプチド、好ましくは配列KLKLLLLLKLKを有するペプチド;ポリカチオン性ペプチド、とりわけポリアルギニン、ポリリシンおよび抗菌ペプチド、とりわけカテリシジン由来の抗菌ペプチドよりなる群から選ばれる、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
Th1活性が促進されたワクチンの調製のためのミョウバンの使用。
【請求項14】
Th1アジュバントとTh1アジュバントとしてのミョウバンとの組合せの使用。
【請求項15】
1型誘起アジュバントおよびミョウバンを含み、ただし、該1型誘起アジュバントがCpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドではないものであることを特徴とする、1型誘起アジュバント組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2006−521321(P2006−521321A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504805(P2006−504805)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003029
【国際公開番号】WO2004/084937
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(502270718)インターツェル・アクチェンゲゼルシャフト (26)
【氏名又は名称原語表記】INTERCELL AG
【Fターム(参考)】