説明

免疫測定法

【課題】 共焦点測定法において、測定対象物の密度を大きくすることによる、高感度で高精度な免疫測定法を提供する。
【解決手段】 試料中の測定対象物の有無を判定するかまたは測定対象物を定量するための免疫測定法であって、試料と、測定対象物に対する特異的結合物質を担持した固相担体と、標識体と、を溶液中で接触させ、得られた複合体をフィルターでろ過し、該フィルター上に濃縮された複合体を、共焦点測定装置を用いて測定することを特徴とする免疫測定法。測定対象物に対する特異的結合物質として抗体または抗原を、標識体として蛍光物質で標識されているものを好適に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共焦点測定による高感度で高精度な免疫測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の免疫測定法としては、抗原性物質等の測定対象物を固相担体上に固定化し、蛍光体等の標識体でこの測定対象物を標識化して、そのシグナルの強度を測定する方法が広く普及している。このような免疫測定法においては、測定対象物が微量である場合でも精度よく検出できることが求められており、そのような測定法として、共焦点測定法が種々検討されている。
【0003】
共焦点測定法とは、共焦点レンズとノイズ遮断用のピンホールを備えた共焦点顕微鏡を用いて、主に蛍光標識サンプルを測定する方法である。
通常の蛍光顕微鏡を用いた場合、光軸方向に厚みを有するサンプルを観察すると、光軸方向に対して垂直な、観察したいサンプル面の上下方向の面のシグナルも検出してしまい、得られる観察画像中にノイズが載ってしまう、すなわち、焦点深度が深いという問題点がある。これは、サンプルの厚みが厚くなるほど、また、微弱なシグナルの検出が必要な時ほど、測定対象物のより正確な測定の妨げとなってしまう。
【0004】
これに対して共焦点測定法では、共焦点顕微鏡により、焦点深度が極めて浅い観察画像が得られるため、この画像中に載るノイズを大幅に低減できるという利点がある。
共焦点測定法には主に、測定対象物をプレートタイプの固相担体に固定化して、このプレート上のシグナルを検出する方法(例えば、特許文献1参照)と、測定対象物を粒子等の固相担体に固定化して、この粒子一つごとにシグナルを検出するフローサイトメトリ法とがある。
【特許文献1】特表2004−538460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これら共焦点測定法においては、測定できるサンプル面の領域が狭いため、測定領域内における測定対象物の量が少なくなることが多く、感度が低くなってしまう。
フローサイトメトリ法では、共焦点域にある粒子を一つずつ観察するため、シグナル強度の低いサンプルを観察する場合には、この微弱なシグナルを検出できない可能性がある。
また、プレートを測定する方法は、免疫測定が平衡化するまで長時間を要し、さらにシグナル強度が低い場合、あるいは、測定対象物が微量である場合に、シグナルを検出できない可能性がある。
【0006】
プレートを測定する方法では、このようなシグナルの検出漏れを回避するために、プレートに固定化する測定対象物の密度を大きくすることが考えられる。例えば、測定対象物に対する抗体または抗原を固相担体に結合させ、この固相担体を予めプレート上に高密度に結合させる方法等である。
しかし、固相担体を高密度に結合させたプレートは、その調製が複雑で困難であるという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、共焦点測定法において、高感度で高精度な免疫測定法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、試料中の測定対象物の有無を判定するかまたは測定対象物を定量するための免疫測定法であって、試料と、測定対象物に対する特異的結合物質を担持した固相担体と、標識体と、を溶液中で接触させ、得られた複合体をフィルターでろ過し、該フィルター上に濃縮された複合体を、共焦点測定装置を用いて測定することを特徴とする免疫測定法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記標識体が、前記測定対象物に特異的に結合し得るものであることを特徴とする請求項1に記載の免疫測定法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記標識体が、前記測定対象物に対する特異的結合物質に、特異的に結合し得るものであることを特徴とする請求項1に記載の免疫測定法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記測定対象物に対する特異的結合物質が、抗体または抗原であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の免疫測定法である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記フィルターのろ過部分の形状が、直径10μm〜1mmの円形状、または一辺の長さが10μm〜1mmの方形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の免疫測定法である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記固相担体が、平均粒径20nm〜10μmの微粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の免疫測定法である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記固相担体が、長さおよび幅が20nm〜10μmの繊維状物質であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の免疫測定法である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記標識体が、蛍光物質で標識されているものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の免疫測定法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定対象物が微量である場合、あるいは標識化された複合体のシグナル強度が低い場合でも、標識化された複合体を含有する液をフィルターでろ過することにより、フィルター上に標識化された複合体を濃縮してその密度を大きくすることができるため、高感度且つ高精度な免疫測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の免疫測定法は、試料中の測定対象物の有無を判定するかまたは測定対象物を定量するための免疫測定法であって、試料と、測定対象物に対する特異的結合物質を担持した固相担体と、標識体と、を溶液中で接触させ、得られた複合体をフィルターでろ過し、該フィルター上に濃縮された複合体を、共焦点測定装置を用いて測定することを特徴とする。
【0018】
本発明に用いられる測定対象物としては、例えば、抗原または抗体が挙げられ、具体的には、タンパク質、少なくとも4個のアミノ酸からなるポリペプチド、ハプテン、核酸、ポリヌクレオチド、ホルモン、オリゴ糖、多糖、天然または合成薬剤、これらの誘導体または複合体、もしくはこれらに対する抗体を挙げることができる。
【0019】
本発明に用いられる試料としては、前記測定対象物を含んでいる可能性のあるものが挙げられ、例えば、全血、血清、血漿、尿、リンパ液等の体液を挙げることができる。
【0020】
また、本発明に用いられる 測定対象物に対する特異的結合物質としては、抗体または抗原を好ましいものとして挙げることができる。
【0021】
本発明に用いられる標識体としては、各種標識化合物が結合し、前記測定対象物、または前記測定対象物に対する特異的結合物質に、特異的に結合し得るものが挙げられる。すなわち、サンドイッチ法または拮抗法で通常用いられるものを挙げることができる。具体的には、例えば、サンドイッチ法であれば、測定対象物に特異的に結合する、標識化された抗体または抗原を挙げることができ、拮抗法であれば、標識化された測定対象物を挙げることができる。
【0022】
前記測定対象物と、標識体に用いる抗体との組み合わせは、免疫測定が可能なものであれば、特に限定されない。前記標識体に用いる抗体としては、例えば、前記抗原性物質、アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等のペプチドキャリヤーと前記抗原性物質との複合体が挙げられる。
タンパク質等を測定対象物とする場合は、抗体としてモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびファージ抗体等を用いることができる。さらに、抗体を酵素処理及び/又は還元処理して得られるFab、Fab'、F(ab')2 等の抗体フラグメントも用いることができる。これら抗体および抗体フラグメントは、従来公知の方法で得られるもので良い。
【0023】
本発明で用いられる標識化合物としては、免疫測定に用いられる従来公知のものが挙げられ、特に好ましいものとして、各種蛍光物質を挙げることができる
前記蛍光物質としては、例えば、フルオレセイン、ローダミン、ウンベリフェロン、フィコエリスリン等を挙げることができる。
本発明においては、これら標識化合物のシグナルを、共焦点測定装置を用いて検出する。
【0024】
前記標識体を作製する方法としては、従来公知の方法を適用すれば良い。
例えば、前記標識化合物と抗体または抗原とを結合させて標識体を作製する方法としては、前記標識化合物と抗体または抗原とを共有結合または非共有結合を介して結合させる従来公知の方法を挙げることができる。共有結合を介して結合させる方法としては、例えば、グルタールアルデヒド法、過ヨウ素酸法、マレイミド法、ピリジル・ジスルフィド法、従来公知の各種架橋剤を用いる方法等を挙げることができる(例えば、「蛋白質核酸酵素」別冊31号、37〜45頁(1985)参照)。
また、抗体または抗原と標識化合物とを、ウシアルブミンなどのタンパク質やナノ微粒子等を介して結合させても良い。
【0025】
標識化合物と抗体または抗原とを共有結合を介して結合させるにあたっては、抗体または抗原に存在する官能基と、標識化合物中の官能基との間で共有結合を形成させる方法や、抗体または抗原に、例えば、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基等の官能基を導入した後、該官能基と標識化合物中の官能基との間で共有結合を形成させる方法等を適用することができる。この時、抗体または抗原に前記各種官能基を導入する方法としては、従来公知の方法を用いれば良く、例えば、酵素を用いて各種官能基を導入する方法も適用することができる。
【0026】
また、非共有結合を介して結合させる方法としては、例えば、物理的吸着法を挙げることができる。すなわち、抗体または抗原と標識化合物との間で生じるファンデルワールス力、疎水結合等の分子間引力によって、これらを結合させる。
このような非共有結合は、従来公知の方法に従って形成させればよい。
【0027】
本発明で用いる固相担体は、免疫測定用に従来用いられているものであり、フィルターでフィルター上にろ別することができるものであれば特に限定されない。なかでも、例えば、平均粒径20nm〜10μmの微粒子、あるいは、長さおよび幅が20nm〜10μmの繊維状物質を好ましいものとして挙げることができる。
【0028】
これら固相担体の材質としては、従来公知のものを用いることができ、特に限定されないが、微粒子であれば、例えば、ガラスビーズ、ポリスチレン等の各種プラスチックビーズ、ラテックス粒子および各種フェライト粒子(例えば、特開平3−115862号公報参照)等を挙げることができる。
また、繊維状物質としては、例えば、セルロース、ニトロセルロース、キトサン、ポリエチレングリコール重合体、シラン重合体等を構成成分とするものを挙げることができる。
【0029】
本発明において、測定対象物を固相担体へ結合させる方法としては、従来公知の方法を用いれば良く、サンドイッチ法でも拮抗法でも構わない。なかでも、抗原または抗体である測定対象物に特異的に結合可能な抗体または抗原を固相担体上に担持させ、担持された抗体または抗原と前記測定対象物との間で免疫複合体を形成させる方法が好ましい。すなわち、サンドイッチ法により、測定対象物を固相担体に結合させ、標識化する方法が好適である。
なお、拮抗法の場合、複合体は、前記抗体または抗原を担持した固相担体と標識体とからなるものとなる。
【0030】
前記測定対象物に対する特異的結合物質を固相担体に担持させる方法としては、従来公知の方法を適用すれば良く、例えば、測定対象物に対する特異的結合物質が抗体または抗原である場合には、前記の標識化合物と抗体または抗原とを結合させる方法をそのまま適用すれば良い。
【0031】
また、固相担体に担持させる抗体または抗原は、前記標識体に用いる抗体または抗原と同様のものでよく、従来公知の方法で得られるもので良い。
また、固相担体に担持させる抗体と標識体に用いる抗体は、同一であっても異なっていても構わない。なかでも、測定対象物と、互いに異なる抗原決定基で結合するものが好ましい。前記二つの抗体(固相担体に担持させる抗体と標識体に用いる抗体)は同一のクラスまたはサブクラスのものであっても良い。
測定対象物は、固相担体に担持させる抗体と標識体に用いる抗体とが、該測定対象物に別々に結合できるよう、二種類以上の抗原決定基を持つものが好ましい。
【0032】
測定対象物、該測定対象物に対する特異的結合物質を担持した固相担体および標識体とからなる複合体の調製方法は特に限定されず、サンドイッチ法であれば、従来公知の1ステップ法、ディレイ1ステップ法、2ステップ法等を用いればよい。例えば、2ステップ法では、前記方法により得られた固相担体に担持された抗体を各種緩衝液に懸濁させ、該懸濁液に、前記方法により得られた標識体、および測定対象物を含んでいる可能性のある試料を加えて、インキュベーション(例えば、5〜50℃、5分〜1日)することで前記複合体を調製することができる。
拮抗法による、測定対象物に対する特異的結合物質を担持した固相担体と標識体とからなる複合体の調製方法も特に限定されない。
このような方法で得られた複合体を含有する液は、そのまま、フィルターによるろ過に供することができる。
【0033】
フィルターによるろ過に供する、前記複合体を含有する液は、いかなる濃度、量であっても構わない。許容されるろ過時間により適宜設定することができる。一般的には濃度が高く、量が多いとろ過時間が長くなり、濃度が低く、量が少ないとろ過時間は短くなる。
【0034】
試料中に測定対象物が含まれていれば、サンドイッチ法の場合、フィルター上には、前記測定対象物、前記測定対象物に対する特異的結合物質を担持した固相担体、前記標識体とからなる複合体が濃縮されるので、この複合体のシグナルを測定する。
一方、拮抗法の場合、フィルター上には、前記測定対象物に対する特異的結合物質に特異的に結合し得る標識体と前記測定対象物に対する特異的結合物質を担持した固相担体からなる複合体、および前記測定対象物と前記測定対象物に対する特異的結合物質を担持した固相担体とからなる複合体が濃縮されるので、前記標識体と前記固相担体とからなる複合体のシグナルを測定する。
【0035】
ろ過操作に用いるろ過器は、ろ過が遅滞なく正常に行えるものであれば特に限定されず、例えば、プレートに孔を開け、この孔に前記フィルターを被せたもの等を挙げることができる。
この時のプレートの材質は、孔の形成が容易であれば特に限定されず、例えば、ガラス、各種プラスチック等を挙げることができる。また、プレートのサイズは、測定するサンプルの数に応じて決めれば良く、厚みも孔の形成が容易であれば、特に限定されない。孔の数もサンプルの数に応じて決めればよい。
【0036】
また、本発明で用いるフィルターは、前記複合体をろ別でき、シグナル測定時にノイズを発生させず、ろ過が遅滞なく正常に行えるものであれば、特に限定されない。具体的には、フィルターのポアサイズの大きさが固相担体の大きさ、すなわち、固相担体が微粒子であればその粒径、固相担体が繊維状物質であればその長さおよび幅、よりも小さければよい。材質としては、例えば、ニトロセルロース、ポリエーテルスルホン、ナイロン、ポリビニルデンフロライド等を挙げることができる。
また、固相担体として、荷電しているものを用いる場合には、静電引力を利用して該固相担体を補足できるよう、固相担体と反対に荷電しているフィルターを用いることもできる。このようなものとしては、例えば、ニトロセルロース、ナイロン等を挙げることができる。
【0037】
前記のようなフィルターを備えるろ過器は、例えば、前記材質のプレートに、所望の形状の孔を開け、この孔にフィルターを被せる等して備えることで、容易に作製することができる。孔の開いたプレートを得る方法としては、ドリル等による機械切削法、射出成型法およびホットエンボス法等、如何なる方法を適用しても良い。
【0038】
フィルターの、前記複合体をろ過する部分の大きさは、前記複合体を濃縮するために小さくする必要があるが、固相担体の大きさよりも大きくする必要があり、また、用いる共焦点測定装置の焦点域よりも大きくすることが好ましい。最も小さいものでは、直径10μmの円形であれば、概ねこの条件を満たすことができる。ただし、固相担体が荷電しており、静電引力を利用してフィルターに捕捉される場合は、フィルターのポアサイズは固相担体より大きくても構わない。
前記条件も勘案し、フィルターのろ過部分の形状は、直径10μm〜1mmの円形状、または一辺の長さが10μm〜1mmの方形状であることが好ましい。
【0039】
本発明において、前記複合体を含有する液をフィルターでろ過する方法は、特に限定されず、例えば、前記ろ過器に設けられているフィルターに対して前記液をチャージして、吸引ポンプ等を用いてフィルターを介して液を吸引する方法が挙げられる。この時、シグナルの測定精度を高めるため、フィルター上にろ別された複合体は、各種緩衝液等を洗浄液としてB/F分離(洗浄)することが好ましい。この時のB/F分離の方法としては、例えば、フィルター上の前記複合体に対して洗浄液をチャージして、吸引ポンプ等を用いてフィルターを介してこの洗浄液を吸引する方法が挙げられる。また、洗浄液としては、TritonXやTween20等の界面活性剤を含んだ緩衝液等を好ましいものとして挙げることができる。
一方、固相担体としてフェライト粒子を用いる場合には、ろ過時に磁石を併用することで、前記複合体の濃縮を効率的に行うこともできる。
【0040】
このようにして、極めて狭い面積のフィルターを用いて前記液をろ過することにより、該フィルター上に前記複合体をろ別して濃縮することができるため、該複合体中のシグナルを高感度且つ高精度に検出することができる。
【0041】
本発明で用いる共焦点測定装置は、測定対象物を標識化した標識化合物のシグナル検出の方法に応じて適宜選択すれば良い。
また、共焦点測定装置を用いたシグナルの検出方法としては、標識化合物の種類に応じて従来公知の検出方法をそのまま適用すれば良い。
【実施例】
【0042】
以下、本発明について、具体的な実施例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
本発明の方法による免疫測定を、拮抗法による抗体検出で行った。以下に詳細を示す。
(固相担体への抗体の結合)
20mMリン酸緩衝液(pH4.5)5mLに、5%カルボキシル化ラテックス粒子(セラダイン社製、粒径0.3μm)5mgを分散させ、これに水溶性カルボジイミド5mgを加えて室温で20分間反応させた。反応終了後、遠心機(クボタ社製、KUBOTA1900、ローターRA−78J)を用いてこの反応液を15000回転で5分間遠心し、上清を除去した。
続いて、20mMリン酸緩衝液(pH4.5)にマウス抗体(ジャクソン社製)を、その濃度が1mg/mLになるように加えて懸濁し、該懸濁液200μLを、上清を除去した前記反応物に添加して、エンドオーバーエンドミキサーを用いて室温で2時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応物を2%BSA緩衝液(0.1Mトリス−塩酸pH7.5)で5回洗浄し、マウス抗体が結合したラテックス粒子(以下「マウス抗体結合粒子」と記す)を得た。
【0043】
(ろ過器の作製)
プラスチック製スライドガラス(縦75mm、横25mm)に両面接着型プラスチックフィルム(Adhesive Research社製、「Arcore7841」)を貼り、テーブルドリル(キソパワーツール社製、「PROXXON」)を用いて直径0.8mm、および5mmの孔を開けた。これらの孔を防ぐようにフィルター(ミリポア社製、「MAGVNOB」、ポアサイズ0.2μm)を貼り付け、試料と、測定対象物に結合する固相担体と、測定対象物に特異的に結合する標識体とを含有する液を濾過するためのろ過器(以下「ろ過器1」と記す)とした。
【0044】
(複合体の作製)
マウス抗体が結合したラテックス粒子10μgを2%BSA緩衝液に懸濁させ、該懸濁液と、50μg/mLのR−フィコエリスリン標識抗マウスイムノグロブリンヤギ抗体(DAKO社製、R0480)50μLと、2%BSA緩衝液20μLとを混合しエンドオーバーエンドミキサーを用いて室温で30分間反応させ、反応液Aを得た。
また、マウス抗体が結合したラテックス粒子10μgを2%BSA緩衝液に懸濁させ、該懸濁液と、50μg/mLのR−フィコエリスリン標識抗マウスイムノグロブリンヤギ抗体(DAKO社製、R0480)50μLと、2%BSA緩衝液に懸濁した50μg/mLマウス抗体(自社製)20μLを混合しエンドオーバーエンドミキサーを用いて室温で30分間反応させ、反応液Bを得た。
【0045】
(蛍光シグナルの測定)
前記の反応液Aまたは反応液Bを前記ろ過器1に設けた各フィルター上に滴下し、吸引ポンプ(ULVAC社製、MDA−015)を用いて反応液を吸引する事によって各フィルター上に濃縮された前記反応液に、2%BSA緩衝液を100μLずつ滴下した後、吸引ポンプによって反応液を吸引する事によってB/F(Bound/Free)分離を行った。このB/F分離操作を5回繰り返し、共焦点蛍光測定マイクロスキャナー(パッカードバイオサイエンス社製、ScanArray)を用いてフィルター上に濃縮された前記複合体の蛍光シグナルを、RPE(R−フィコエリスリン)用のフィルターを用いて、ゲート:40、感度:40の条件で測定した。フィルターの直径と得られた蛍光シグナル強度の関係を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
[比較例1]
実施例1の反応液Aまたは反応液Bをフィルタープレート(ミリポア社製、「マルチスクリーン」、CatNo MAGVN0B10)に滴下し、ミリポア社製所定のB/F分離ジグにてB/F分離を行い、さらに各フィルター上に濃縮された前記反応液に、2%BSA緩衝液を100μLずつ滴下した後、吸引ポンプによって反応液を吸引することによってB/F分離を行った。このB/F分離操作を5回繰り返し、蛍光測定機ARVO Sx(WALLAC社製)を用いてフィルター上に分離された前記複合体の蛍光シグナルをRPE用のフィルター(Ex:F530,Em:F572)を用いて測定した。得られた蛍光シグナル強度の関係を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
[比較例2]
(固相プレートへの抗体の結合)
蛍光測定用96穴プレート(Nunc社製、C8 White Porisorp)に、20mMリン酸緩衝液(pH4.5)に懸濁したマウス抗体(ジャクソン社製)1.4μg/mL、100μLを添加し室温で2時間、マイクロインキュベーター(TAITEC社製、M−36)で攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応物を2%BSA緩衝液(0.1Mトリス-塩酸pH7.5)で5回洗浄し、マウス抗体が結合した蛍光プレート(以下「マウス抗体結合プレート」と記す)を得た。
【0050】
(複合体の作製)
50μg/mLのR−フィコエリスリン標識抗マウスイムノグロブリンヤギ抗体(DAKO社製、R0480)50μLと、2%BSA緩衝液20μLとの混合液を前記マウス抗体結合プレートに加え、マイクロインキュベーター(TAITEC社製、M−36)で攪拌して、室温で2時間反応させた(反応条件A)。
また、50μg/mLのR−フィコエリスリン標識抗マウスイムノグロブリンヤギ抗体(DAKO社製、R0480)50μLと、2%BSA緩衝液に懸濁した50μg/mLマウス抗体(自社製)20μLとの混合液を前記マウス抗体結合プレートに加え、マイクロインキュベーター(TAITEC社製、M−36)で攪拌して、室温で2時間反応させた(反応条件B)。
【0051】
(蛍光シグナルの測定)
前記の反応条件Aまたは反応条件Bのマウス抗体結合プレートの上清をピペッティングにて吸い上げ、2%BSA緩衝液を100μLずつ滴下した後、吸引ポンプによって反応液を吸引する事によってB/F分離を5回繰り返し、蛍光測定機ARVO Sx(WALLAC社製)を用いてフィルター上に分離された前記複合体の蛍光シグナルを、RPE用のフィルター(Ex:F530,Em:F572)を用いて測定した。得られた蛍光シグナル強度の関係を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
[実施例2]
(ろ過器の作製)
プラスチック製スライドガラス(縦75mm、横25mm)に両面接着型プラスチックフィルム(Adhesive Research社製、「Arcore7841」)を貼り、テーブルドリル(キソパワーツール社製、「PROXXON」)を用いて直径0.5mm、1.0mm、1.2mm、1.5mm、2mm、3mm、4mm、5mmの孔を開けた。これらの孔を塞ぐようにフィルター(ミリポア社製、「MAGVNOB」、ポアサイズ0.2μm)を貼り付け、試料と、測定対象物に結合する固相担体と、測定対象物に特異的に結合する標識体とを含有する液を濾過するためのろ過器(以下「ろ過器2」と記す)とした。
【0054】
(複合体の作製)
マウス抗体が結合したラテックス粒子50μgを2%BSA緩衝液に懸濁させ、該懸濁液と、50μg/mLのR−フィコエリスリン標識抗マウスイムノグロブリンヤギ抗体(DAKO社製、R0480)50μLと、2%BSA緩衝液20μLとを混合しエンドオーバーエンドミキサーを用いて室温で30分間反応させ、反応液Cを得た。
【0055】
(蛍光シグナルの測定)
前記反応液Cを前記ろ過器2に設けた各フィルター上に滴下し、吸引ポンプ(ULVAC社製、MDA−015)を用いて反応液を吸引することによって各フィルター上に濃縮された前記反応液に、2%BSA緩衝液を100μLずつ滴下した後、吸引ポンプによって反応液を吸引することによってB/F分離を行った。このB/F分離操作を5回繰り返し、共焦点蛍光測定マイクロスキャナー(パッカードバイオサイエンス社製、「ScanArray」)を用いてフィルター上に濃縮された前記複合体の蛍光シグナルを、RPE用のフィルターを用いて、ゲート:40、感度:40の条件で測定した。各フィルター直径と得られた蛍光シグナル強度の関係を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
表1に示すように、本発明の免疫測定法において、直径0.8mmのフィルターを用いた場合には、反応液Aの蛍光シグナル強度を反応液Bの蛍光シグナル強度で割った値(A/B)は、482.7であり、直径5mmのフィルターを用いた場合には、A/Bは54.6であった。
これに対して表2に示すように、通常の蛍光測定機およびフィルタープレートを用いた場合では、ノイズが高いため、A/Bは1.4であった。
さらに表3に示すように、通常の蛍光測定機および蛍光プレートを用いた場合ではノイズが高いため、A/Bは6.4であった。
表1〜3の結果から明らかなように、本発明の免疫測定法では、通常の蛍光測定機を用いた場合に比べA/Bが高くなり高感度測定が可能なことが確認された。
一方、表4に示す結果から明らかなように、ろ過器に用いたフィルターの直径が小さくなるに従い、複合体の蛍光シグナル強度が大きくなること、すなわち、フィルターの直径が小さくなるほど複合体の濃縮度が高くなることが確認された。
したがって、試料中の測定対象物が微量である場合、あるいは標識された測定対象物のシグナル強度が低い場合でも、本発明のようにフィルター上に測定対象物を濃縮することで、高感度で高精度な共焦点測定による免疫測定が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の免疫測定法により、共焦点測定による測定対象物の検出を高感度かつ高精度で行うことができ、しかも、測定を簡便に行うことができるため、各産業界に有用な免疫測定法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の測定対象物の有無を判定するかまたは測定対象物を定量するための免疫測定法であって、
試料と、測定対象物に対する特異的結合物質を担持した固相担体と、標識体と、を溶液中で接触させ、得られた複合体をフィルターでろ過し、該フィルター上に濃縮された複合体を、共焦点測定装置を用いて測定することを特徴とする免疫測定法。
【請求項2】
前記標識体が、前記測定対象物に特異的に結合し得るものであることを特徴とする請求項1に記載の免疫測定法。
【請求項3】
前記標識体が、前記測定対象物に対する特異的結合物質に、特異的に結合し得るものであることを特徴とする請求項1に記載の免疫測定法。
【請求項4】
前記測定対象物に対する特異的結合物質が、抗体または抗原であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の免疫測定法。
【請求項5】
前記フィルターのろ過部分の形状が、直径10μm〜1mmの円形状、または一辺の長さが10μm〜1mmの方形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の免疫測定法。
【請求項6】
前記固相担体が、平均粒径20nm〜10μmの微粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の免疫測定法。
【請求項7】
前記固相担体が、長さおよび幅が20nm〜10μmの繊維状物質であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の免疫測定法。
【請求項8】
前記標識体が、蛍光物質で標識されているものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の免疫測定法。

【公開番号】特開2007−113927(P2007−113927A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302732(P2005−302732)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(306008724)富士レビオ株式会社 (55)
【Fターム(参考)】