説明

免疫誘導能増強方法

【課題】 抗原性ペプチドによる免疫の場合に、簡便な手法により免疫誘導でき、効率的かつ安定的な免疫増強方法を提供することを課題とする。すなわち、抗原性ペプチドの免疫投与において、鉱物油によるエマルジョン化や、水酸化アルミニウムによる複合体形成をしなくても免疫誘導を可能とする免疫誘導能増強方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 抗原性ペプチドの抗原決定基としての配列に影響をおよぼさない部位に塩基性アミノ酸を付加した塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチド、並びにオリゴDNAを用いて被験体を免疫することによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原としての機能を有するペプチドを用いて免疫を行う際、効率的、安定的に免疫反応を惹起させることを可能とする免疫誘導能増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部から抗原が侵入すると、その抗原を捕食したマクロファージなどの喰食細胞は抗原を小さなペプチドに分解し、MHCクラスII分子と結合して細胞表面に抗原を提示する。このペプチド抗原を認識可能なレセプターを細胞表面にもったヘルパーT細胞は、そのレセプターとCD4分子によって、抗原性ペプチド−MHCクラスII分子複合体を同時に認識する。認識したと同時にヘルパーT細胞へ刺激が伝わり、ヘルパーT細胞は活性化し、増殖し、サイトカインを産生し始める。産生されたサイトカインは血流を通じてB細胞に到達し、B細胞を刺激し、B細胞能増殖を促進し形質細胞(プラズマ細胞,抗体産生細胞)や記憶細胞へと分化させ、免疫応答を増強させる。このような、免疫応答に関連するペプチドをMHCクラスIまたはMHCクラスII拘束性のペプチドといい、抗原性ペプチドともいう。
【0003】
抗原性ペプチドを皮内または皮下投与する場合、水溶液の状態では拡散が早く免疫担当細胞に認識される前に抗原が拡散して、高い免疫誘導が得られない。
抗原性ペプチドを用いて被験体に免疫を行う際、抗原を生理食塩液に溶解したのみでは免疫誘導能が低く効率的ではない。そこで、免疫効果を増強させるために、抗原性ペプチドおよびフロイントの完全または不完全アジュバントなどの鉱物油とのエマルジョン化や、抗原性ペプチドと水酸化アルミニウムとの不溶性複合体を生成させて、被験体の皮内や皮下に投与し、免疫を行っている。これらのエマルジョンや不溶性複合体が、皮内や皮下での抗原拡散を抑制して、免疫誘導能を効果的に増強している。しかし、これら免疫時に用いる調製方法は、エマルジョンなどの場合であれば調製に手間がかかるなどの問題がある。また、鉱物油などをエマルジョン化した状態では長期保存できず、要時調製が必要であるため医療現場では不便であるといった問題があった。
【0004】
DNAのシトシン−グアニン(CpG)ジヌクレオチド配列は、6個の塩基を基本とする配列で、中心部にシトシン(C)とグアニン(G)が並ぶ。CpG配列は、哺乳類には少なく微生物には多く認められる。哺乳類のゲノムDNAでは、CpG配列の頻度が少なく、高度にメチル化されているため、免疫賦活作用はない。一方、細菌のCpG配列含有DNAは宿主の免疫を賦活化させることが以前より知られていた。
少なくとも1つのCpG配列を含む核酸が、免疫応答に影響するという報告がある。CpG配列含有オリゴヌクレオチドおよびサイトカインの組み合わせを用いて、相乗効果的な免疫応答を誘導するための方法および産物に関して、開示がある(特許文献1)。また、免疫刺激的CpG配列含有オリゴヌクレオチドを用いる免疫方法が報告されている(特許文献2)。しかしながら、抗原性ペプチドによる免疫能増強方法に関する報告はない。
【0005】
【特許文献1】米国特許US6194388号公報
【特許文献2】特表2002−510644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、抗原性ペプチドによる免疫の場合に、簡便な手法により免疫誘導でき、効率的かつ安定的な免疫増強方法を提供することを課題とする。すなわち、抗原性ペプチドの免疫投与において、鉱物油によるエマルジョン化や、水酸化アルミニウムによる複合体形成をしなくても免疫誘導を可能とする免疫誘導能増強方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、抗原性ペプチドの抗原決定基としての配列を阻害しない部位に塩基性アミノ酸を付加させ、さらにオリゴDNAと混合することにより、塩基性アミノ酸由来の陽性荷電およびオリゴDNA由来の陰性荷電の相互作用により、抗原性ペプチドが複合体を形成し、不溶化され、抗原が免疫担当細胞に認識される前に拡散するのが抑制され、抗原性ペプチド投与において効果的に免疫誘導能を得ることが可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.抗原性ペプチドの抗原決定基としての配列に影響をおよぼさない部位に塩基性アミノ酸が付加されてなる塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチド、並びにオリゴDNAを用いて被験体を免疫することを特徴とする免疫誘導能増強方法。
2.抗原性ペプチドの抗原決定基としての配列に影響をおよぼさない部位が、抗原性ペプチドのN末端および/またはC末端である前項1に記載の免疫誘導能増強方法。
3.塩基性アミノ酸が、アルギニン、ヒスチジン、リジンから選ばれる、前項1または2に記載の免疫誘導能増強方法。
4.抗原性ペプチドに付加された塩基性アミノ酸由来の陽性荷電量が、オリゴDNA由来の陰性荷電量より上回る比率で用いられる前項1〜3のいずれか一項に記載の免疫誘導能増強方法。
5.オリゴDNAがシトシン−グアニンジヌクレオチド配列(CpG配列)を含む前項1〜4のいずれか一項に記載の免疫誘導能増強方法。
6.以下の1)または2)の方法により、被験体の皮内若しくは皮下で、塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドおよびオリゴDNAの複合体を形成させる工程を含む前項1〜5のいずれか一項に記載の免疫誘導能増強方法:
1)塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドを含む溶液およびオリゴDNAを含む溶液を、各々個別に被験体に免疫投与する;
2)塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドおよびオリゴDNAを含む溶液を、被験体に免疫投与する。
7.前項1〜6のいずれか一項に記載の免疫誘導能増強方法において使用する塩基性アミノ酸が付加されてなる塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチド。
8.抗原性ペプチドの抗原決定基としての配列に影響をおよぼさない部位に塩基性アミノ酸が付加されてなる塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドおよびオリゴDNAを含む免疫キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明の免疫誘導能増強方法によると、抗原性ペプチドに塩基性アミノ酸を付加しない場合や、オリゴDNAを用いずに免疫投与した場合に比べて、抗原性ペプチドの複合体の形成および免疫活性において優れた効果が認められた。本発明に使用するオリゴDNAは、凍結乾燥保存することができるので、要時溶解して、塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドと混合し、または各々別に投与することで、容易に免疫投与が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、「抗原性ペプチド」とは抗原性を有するペプチドであれば良く、特に限定されない。本明細書における「抗原性を有する」とは、免疫学の分野において使用される一般的な意味に解釈される。一般的には、抗原が特定の抗体と反応若しくは結合しうる能力を有することをいい、さらにT細胞やB細胞による免疫誘導にかかわる能力を有することも含む。免疫誘導とは、例えばB細胞により免疫グロブリンが産生されることや、T細胞により細胞性免疫が誘導されることをいう。このような免疫誘導のために、MHCクラスIやMHCクラスIIが発現される。したがって、抗原性ペプチドを、MHCクラスIまたはMHCクラスII拘束性の配列を有するペプチドということもできる。
特に本明細書では、「抗原性ペプチド」とは塩基性アミノ酸を付加していないペプチドをいい、塩基性アミノ酸が付加されたペプチドは、「塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチド」と区別する。
【0011】
本発明に使用する抗原性ペプチドは、自体公知のペプチドであっても良く、今後開発されるであろう抗原性ペプチドであっても良い。抗原性ペプチドは、多くの場合は7〜20残基、好ましくは10〜18残基のペプチドが用いられ、合成により調製することができる。6残基以下のペプチドでも抗原性を示すが、アミノ酸数が12〜16残基以上のペプチドは、いくつかのエピトープを含んでいたり、二次構造を形成し、効果的に抗原性を示すことが考えられる。また、アミノ酸数が20残基を超えるペプチドは、アミノ酸数が少ない場合に比べて、合成が困難となる。
【0012】
本発明において、塩基性アミノ酸は、抗原性ペプチドを陽性に荷電する目的で付加するものであって、該抗原性ペプチドの抗原決定基としての配列を阻害しない部位に付加する。本発明における塩基性アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジンから選ばれる天然型塩基性アミノ酸でもよいが、塩基性の非天然型アミノ酸であっても良い。付加させる塩基性アミノ酸の数は特に限定されないが、抗原性ペプチドのアミノ酸の配列や、本発明において使用するオリゴDNAとの関係によって、適宜決定することができる。付加させるアミノ酸残基数は、例えば、塩基性アミノ酸が付加された抗原性ぺプチドの陽性荷電量が、オリゴDNAの有するマイナスの荷電量に比べて過剰となる条件で決定することが好ましい。具体的には、2残基以上、好ましくは4〜10残基、より好ましくは7〜9残基とすることができる。付加させるアミノ酸は一種のアミノ酸のみでも良いし、二種以上のアミノ酸を含む複数種アミノ酸であっても良い。
【0013】
抗原決定基としての配列を阻害しない部位とは、抗原性ペプチドの抗原能を阻害しない部位をいい、具体的には抗原性ペプチド中の抗原決定基としての配列以外の部位をいう。例えば、抗原性ペプチドの全体が抗原決定基としての配列の場合には、N末端またはC末端、あるいはN末端およびC末端の両端が挙げられる。抗原性ペプチドに、抗原決定基に関与しない配列を含む場合には、前記と同様に、N末端またはC末端、あるいはN末端およびC末端の両端が挙げられる他、抗原性ペプチドの配列中であって、抗原決定基としての配列に影響を及ぼさない部位を挙げることができる。付加するアミノ酸の位置は、抗原性ペプチド中の一箇所でも良いし、二箇所以上であっても良い。塩基性アミノ酸は、自体公知の通常の方法により付加することができる。
【0014】
本発明に使用するオリゴDNAは、DNAであればどのような配列であっても良く、直鎖状・環状のいずれも利用可能である。オリゴDNAに含まれる塩基数は、特に限定されないが、上述のように塩基性アミノ酸が付加された抗原性ぺプチドの陽性荷電量を考慮して決定することができる。具体的には3塩基以上であることが好ましく、3〜15塩基が好適であり、5〜9塩基がより好適である。オリゴDNAは、CpG配列を含む配列とすることができる。CpG配列を含むオリゴDNAの使用により、さらに免疫誘導能を増強することが期待される。
【0015】
本発明の免疫誘導能の増強は、次のいずれかの工程を含む方法により皮内若しくは皮下で塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドおよびオリゴDNAの複合体を形成させることにより行うことができる。
1)塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドを含む溶液およびオリゴDNAを含む溶液を、各々個別に被験体に免疫投与する。
2)塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドおよびオリゴDNAを含む溶液を、被験体に免疫投与する。
上記の場合において、塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドおよびオリゴDNAは、蒸留水、生理食塩液または一般的に使用される緩衝液を用いて溶解することができる。塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドは10〜1000μM、好ましくは50〜500μMの範囲で溶解することができ、オリゴDNAは1〜100μM、好ましくは2〜50μMの範囲で溶解することができる。
また、免疫投与とは、免疫能を獲得するために行われる一般的な投与をいい、皮下投与、皮内投与あるいは腹腔内投与とすることができる。
【0016】
本発明は、上記免疫誘導能増強方法において使用する塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチド、オリゴDNAを含む免疫キットにもおよぶ。例えば、抗原性ペプチドを、ワクチン等として医療現場で使用する場合は、免疫医薬キットにもおよび、実験室レベルの免疫試薬として使用する場合には、免疫試薬キットにもおよぶ。
【実施例】
【0017】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0018】
(実施例1)
卵白アルブミン由来のペプチド(OVAペプチド)を用いてマウス(C57BL/6、メス、8週齢)への免疫を実施した。ペプチドとして、8個のアミノ酸より構成される通常のOVAペプチド(配列番号1)またはOVAペプチドにアルギニン7残基付加したもの(R7−OVAペプチド:配列番号2)を用いた。オリゴDNAは、CpG配列を含む20塩基からなるCpG含有オリゴDNA(配列番号3)またはCpG配列を含まない20塩基からなるCpG非含有オリゴDNAを用いた。
OVAペプチド(Sigma Genosys社) :SIINFEKL (配列番号1)
R7−OVAペプチド (Sigma Genosys社) :RRRRRRRSIINFEKL(配列番号2)
CpG含有オリゴDNA (Sigma Genosys社) :TCCATGACGTTCCTGATGCT(配列番号3)
CpG非含有オリゴDNA (Sigma Genosys社):TCCAGGATTTCCTCAGGTT (配列番号4)
【0019】
生理食塩液0.2mLあたり、抗原性ペプチドについては100nmol、オリゴDNAについては5nmol含まれるように溶解した。
マウス(C57BL/6、メス、8週齢)の皮内注射によって、下記のペプチド溶液および/またはオリゴDNA溶液を0.2mLずつ1週間間隔で2回投与し、免疫した。ペプチド溶液および/またはオリゴDNA溶液を投与しない群では、生理食塩液を投与した。各群について、マウス4匹について免疫投与した。免疫投与終了後1週間に、マウスの脾臓を摘出して細胞を回収し、ELISPOT法により免疫活性を評価した。
【0020】
ELISPOT法による免疫活性の確認は、フナコシ株式会社製のサイトカイン産生細胞検出キット(IFN−γ Mouse)を用い、以下の手順で行った。
1)試薬
(1) 培養液
RPMI1640培地(シグマ社)500mL
ウシ胎児血清(FBS)(和光純薬工業株式会社) 10v/v%
ペニシリン(和光純薬工業株式会社)100U/mL
ストレプトマイシン(和光純薬工業株式会社)100μg/mL
(2) 刺激用抗原ぺプチド
OVAペプチド(Sigma Genosys社)(配列番号1)
【0021】
2)手順
(1) 免疫したマウスの脾臓細胞を摘出し、1×10cells/mLとなるように培養液を用いて懸濁し、細胞浮遊液を調製した。
(2) 培養液に、配列表の配列番号1に示す配列のペプチドを溶解し、刺激用抗原ペプチド溶液 (200μM)を調製した。該ペプチド溶液 (200μM)をELISPOT用キットに含まれるマイクロプレートの各ウェルに各50μLずつ分注した。
(3) 上記各ウェルに、(1)で調製した1×10cells/mLに調製した細胞浮遊液を50μLずつ添加した。
(4) マイクロプレートを5%COインキュベーター内におき、脾臓細胞を37℃、20時間培養した。
(5) 各ウェルから培養液を除去し、キット付属洗浄用バッファー300μLで3回洗浄した。
(6) キットの使用説明書に従い、所定濃度に希釈した検出用一次抗体を各ウェルに100μLずつ分注し、4℃で16時間反応させた。
(7) 各ウェルを、キット付属洗浄用バッファー300μLで3回洗浄した。
(8) キットの使用説明書に従い、所定濃度に希釈したストレプトアビジン−アルカリホスファターゼを100μLずつ各ウェルに分注し、室温で2時間反応させた。
(9) 各ウェルを、キット付属洗浄用バッファー300μLで3回洗浄した。
(10) キット付属発色基質を100μLずつ各ウェルに分注し、遮光して室温で1時間発色反応させた。
(11) 発色基質溶液を除去し、脱イオン水100μLで3回洗浄した。マイクロプレートを完全に乾燥させた後、プレート底部のメンブレンに着色したスポット数を観察した。スポット数が、20以上の場合は○、20未満の場合は×と判定した。すなわち、○と判定されたものについては、IFNγ活性が認められ、CTL活性の上昇があり、免疫活性があったものとして判定した。
【0022】
ペプチドの複合体の形成は、生理食塩液に各ペプチドおよび/またはオリゴDNAを混合したものについて、目視により判定した。
複合体の形成および免疫活性の結果を表1に示した。
【0023】
【表1】

【0024】
塩基性アミノ酸を付加したR7−OVAペプチドとCpG含有またはCpG非含有オリゴDNAを混合した群では、生理食塩液投与でも複合体形成および免疫活性が認められた。効果として、R7−OVAペプチドとオリゴDNAが不溶性の複合体を形成して、投与後に皮下でのOVAペプチドの拡散が抑制され、免疫効果が現れたと考えられる。その他のアルギニン(R7)を付加していないペプチド群や、オリゴDNAを用いない群では複合体の形成は認められず、免疫活性の上昇も認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上説明したように、本発明の免疫誘導能増強方法によると、抗原性ペプチドに塩基性アミノ酸を付加しない場合や、オリゴDNAを使用しないで免疫投与した場合に比べて、抗原性ペプチドの複合体の形成および免疫活性において優れた効果が認められた。
本発明において使用するオリゴDNAは、凍結乾燥保存でき、要時溶解して塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドと混合し、または各々別に投与することで、免疫投与が可能となる。これにより、従来のフロイントの完全または不完全アジュバントなどの鉱物油によるエマルジョン化や、水酸化アルミニウムと抗原性ペプチドの不溶性複合体を生成させる方法に比べ、免疫投与前作業が軽減化できる。
塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドおよびオリゴDNAを用いると、例えば医療現場においても簡便、かつ効果的に免疫操作を行うことが可能となる。また、実験用の免疫試薬キットにすることにより、実験室レベルにおいても簡便に免疫操作を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原性ペプチドの抗原決定基としての配列に影響をおよぼさない部位に塩基性アミノ酸が付加されてなる塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチド、並びにオリゴDNAを用いて被験体を免疫することを特徴とする免疫誘導能増強方法。
【請求項2】
抗原性ペプチドの抗原決定基としての配列に影響をおよぼさない部位が、抗原性ペプチドのN末端および/またはC末端である請求項1に記載の免疫誘導能増強方法。
【請求項3】
塩基性アミノ酸が、アルギニン、ヒスチジン、リジンから選ばれる、請求項1または2に記載の免疫誘導能増強方法。
【請求項4】
抗原性ペプチドに付加された塩基性アミノ酸由来の陽性荷電量が、オリゴDNA由来の陰性荷電量より上回る比率で用いられる請求項1〜3のいずれか一項に記載の免疫誘導能増強方法。
【請求項5】
オリゴDNAがシトシン−グアニンジヌクレオチド配列を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の免疫誘導能増強方法。
【請求項6】
以下の1)または2)の方法により、被験体の皮内若しくは皮下で、塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドおよびオリゴDNAの複合体を形成させる工程を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の免疫誘導能増強方法:
1)塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドを含む溶液およびオリゴDNAを含む溶液を、各々個別に被験体に免疫投与する;
2)塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドおよびオリゴDNAを含む溶液を、被験体に免疫投与する。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の免疫誘導能増強方法において使用する塩基性アミノ酸が付加されてなる塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチド。
【請求項8】
抗原性ペプチドの抗原決定基としての配列に影響をおよぼさない部位に塩基性アミノ酸が付加されてなる塩基性アミノ酸付加抗原性ペプチドおよびオリゴDNAを含む免疫キット。

【公開番号】特開2007−45730(P2007−45730A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230506(P2005−230506)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】