免疫調節物質
ある種の血管障害を含めて、自己免疫疾患又は自己免疫異常の治療用医薬品の製造に使用される、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に由来する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節物質、特に細胞免疫応答を調節するワクチン及びその使用に関する。本発明は、ある種の血管障害を含めて自己免疫疾患又は自己免疫異常の治療及び/又は予防用医薬品の製造における免疫調節物質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、体を防御し、細菌、ウイルス及び他の侵入異物に起因する感染を排除するのに通常働く細胞及び細胞成分(分子)の複雑なネットワークである。人が自己免疫疾患を有する場合、免疫系は誤って自己を攻撃し、人自身の体の細胞、組織及び器官を標的にする。標的部位における免疫系細胞及び分子の集合は、大まかに炎症と称することができる。
【0003】
多数の異なる自己免疫疾患があり、それらは各々異なる方法で体に影響を及ぼし得る。自己免疫疾患の多くはまれなものである。しかし、グループとすると、自己免疫疾患は数百万人が罹患している。
【0004】
一部の自己免疫疾患は、ウイルス感染、寄生虫感染、慢性細菌感染などのある誘因によって開始又は悪化することが知られている。それほど理解されていない他の作用が免疫系に影響を及ぼし、自己免疫疾患の過程は加齢、慢性ストレス、ホルモン及び妊娠を含む。
【0005】
自己免疫疾患は慢性であることが多く、人が健康に見える又は感じることができるときでも生涯にわたる注意及び監視が必要である。現在、ほとんどの自己免疫疾患は治療によって治癒又は寛解することができない。
【0006】
医師は、ほとんどの場合、自己免疫疾患に起因する炎症の結果を患者が管理する助けとなる。一部の人においては、限定された数の免疫抑制薬物療法が疾患の寛解をもたらすことがある。しかし、彼らの疾患が寛解した場合でも、患者は薬物療法を中止できることはまれである。免疫抑制薬物療法の長期副作用はかなりのものになり得る。
【0007】
血管損傷の開始及び進行は複雑でさまざまな原因によって起こるプロセスであるが、炎症反応が重要な役割を果たしている証拠が増えている。血管損傷は、アテローム性動脈硬化症の発症及び心筋梗塞、発作、末梢動脈閉塞などの急性虚血性症候群をもたらす血栓プロセスに関与する
【0008】
免疫機構は、アテローム性動脈硬化症及びMIH(myointimal hyperplasia)の発症及び維持に重要となり得る。
【0009】
MIHは、バルーン血管形成術などの傷害に対する過度の治癒応答とみなすことができる。一連の事象は、基底膜の損失、VSMC(vascular smooth muscle cell)の中膜から内膜への移動、VSMCの増殖及びより分泌性である線維芽細胞型への表現型の変化並びに細胞外基質の生成増加をもたらし、血管の狭窄又は閉塞を最終的にもたらす。これはバイパス移植及びバルーン血管形成術後に起こり、臨床実務におけるかかる症例の約30%に影響を及ぼす。これはかかる手順の失敗の主原因であり、生じた狭窄及び閉塞血管/移植片の治療は問題となる。MIHをもたらす基本的な細胞機序は十分に理解されておらず、それを有効に防止することができる療法は現在まで開発されていない。本特許の臨床的な妥当性は、英国及び世界中で毎年実施されるきわめて多数の冠動脈血管形成術に関係する。薬物を溶出するステントは有望な結果を現在生み出しているが、それが再狭窄を完全に防止しそうにはない。本特許に提案される免疫療法などの安全で比較的安価な補助的治療は、臨床的に重大な影響を有する。
【0010】
再狭窄に対する免疫療法に関わるこれらの機序は複雑であり、完全には解明されていない。血管形成術に起因する内皮傷害は、hspに対する宿主免疫応答によって増悪し得る。Hspは、アテローム性動脈硬化症を含めてさまざまな免疫障害の病態発生及び病態生理に結び付けられるストレスを受けた細胞によって産生されるタンパク質である(Xu Q et al.、Arterioscler Thromb 1992; 12: 789-799)。これは、血管形成領域中の内皮及び平滑筋細胞上に存在する可能性がある。事実上、hspは、免疫系によってその後攻撃され得る自己抗原として働く。この状況は、ウサギ及びマウスにおいて内皮損傷をもたらす交差反応性マイコバクテリアhsp(hsp65)で免疫化することによって実験的に引き起こすことができる(Xu Q et al.、Arterioscler Thromb 1992; 12: 789-799及びGeorge J et al.、Circ. Res. 2000; 86: 1203-1210)。この効果は、Th2リンパ球によって分泌されるIL−4に依存すると考えられ、抗体によっておそらく媒介されるGeorge J et al.、Circ. Res. 2000; 86: 1203-1210及びSchett G et al.、J Clin. Invest. 1995; 96: 2569-2577)。これらの観察とヒトとの関連性は、hsp65カラムから溶出し親和性によって精製されたヒト抗体が、ストレスを受けたヒト内皮細胞をin vitroで損傷する能力によって示唆される。この知見は、この抗体が、hsp65のヒト相同体であるhsp60と交差反応し、ストレスを受けた内皮細胞の膜上で発現されたときに抗体に接近することができることを示唆する。ストレスを受けた内皮細胞に結合したかかる抗体が、心臓移植後の冠動脈疾患を発生させる要因であることが示唆された(Crisp SJ et al.、J Heart Lung Transplant 1994; 81-91)。Mukherjee et al.(Thromb Haemost 1996; 75: 258-60)は、手術前のhsp65に対する抗体のレベルと冠動脈再狭窄との関連性がないことを示したが、血管形成術後にかかる抗体レベルが低下した患者はより再狭窄しにくいことを示した。実際には、血管疾患患者は抗体が増加するだけでなく、hspレベル自体も増加するので、hspに対する抗体の役割は複雑になり得る(Wright BH et al.、Heart Vessels 2000; 15: 18-22)。したがって、抗体レベルの見掛けの低下は、単にこのタンパク質レベルの増加を示しているに過ぎない恐れがある。さらに、hspは調節効果を有し、動脈の平滑筋細胞に結合し、内在化を必要とせずにより長く残存する(Johnson AD et al.、Atherosclerosis 1990; 84: 111-119)。
【非特許文献1】Xu Q et al.、Arterioscler Thromb 1992; 12: 789-799
【非特許文献2】George J et al.、Circ. Res. 2000; 86: 1203-1210
【非特許文献3】Schett G et al.、J Clin. Invest. 1995; 96: 2569-2577)
【非特許文献4】Crisp SJ et al.、J Heart Lung Transplant 1994; 81-91)
【非特許文献5】Mukherjee et al.(Thromb Haemost 1996; 75: 258-60)
【非特許文献6】Wright BH et al.、Heart Vessels 2000; 15: 18-22)
【非特許文献7】Johnson AD et al.、Atherosclerosis 1990; 84: 111-119)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、対象に投与された放線菌類ロドコッカス(Rhodococcus)属、ゴルドニア(Gordonia)属、ノカルジア(Nocardia)属、ダイエツィア(Dietzia)属、ツカムレラ(Tsukamurella)属及びノカルジオイデス(Nocardioides)属のいずれか1種の属に属する細菌の全細胞が、その対象の免疫系、特に細胞免疫系の改変を誘発することができ、自己免疫疾患又は自己免疫異常、特に例えば血管内膜の炎症を含むものに対する防止及び/又は治療効果をもたらすという予想外の発見に基づく。
【0012】
自己免疫疾患及び自己免疫異常、特に例えば血管内膜の炎症を含むものを有効に治療及び/又は予防するために、放線菌類ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属のいずれか1種の属に属する細菌の全細胞を含む組成物を使用する利点は、この治療及び/又は予防が、常法に従って現在使用されている化学療法、すなわち免疫抑制薬物療法よりも長期副作用を抑えつつ実施されるということであろう。
【0013】
本明細書では「細胞免疫系」という句は、Tリンパ球の存在に依存する細胞性免疫応答を含む。「Tリンパ球」という用語は、細胞傷害性Tリンパ球、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞及び調節性T細胞を含む。例えば自己免疫疾患又は異常を含めた細胞性免疫不全を例えば克服するために細胞性免疫応答の改変を使用することができる。
【0014】
本明細書では「調節する(modulate)」、「改変する(modify)」、「改変(modification)」という用語及び他のその派生語は、細胞免疫系の成分を下方制御、阻害、誘導、刺激、上方制御、変更し、又はそれに影響を及ぼすことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、さらに、自己免疫疾患又は自己免疫異常を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用を提供する。
【0016】
適切には、自己免疫疾患又は自己免疫異常は、対象自身の免疫系が対象組織の1個又は複数に損傷を与える型のものである。適切には、自己免疫応答は、対象内の何か又は対象の環境内の何かによって引き起こされることがある。
【0017】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、誘因後のものであり得る。例えば、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、感染及び/又は他のある誘因に起因するものであり得る。潜在的誘因は、例として、老齢、感染(例えば寄生虫感染)、ステロイド治療、ミョウバンを用いたワクチン接種の繰り返し、妊娠及び/又は癌であり得る。
【0018】
本発明は、さらに、自己免疫疾患を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用であって、自己免疫疾患又は自己免疫異常が血管内膜の炎症を含む、使用を提供する。
【0019】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、血管内膜の炎症を含むと同様に、血管筋層又は心筋の炎症を含む。
【0020】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、血管障害が先行するもの又は血管障害に起因するものであり得る。
【0021】
本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、関節炎、特に関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節症、強皮症、甲状腺炎、移植後の内膜増殖、移植片拒絶及び血管障害の1つ又は複数であり得る。
【0022】
適切には、本発明による血管障害は、自己免疫エレメント、例えば自己免疫応答に起因するものを含む任意の血管疾患又は異常を含むことができる。
【0023】
適切には、本発明による血管障害は、レイノー病又はレイノー現象、前部ブドウ膜炎、閉塞性血管障害、(動脈硬化症としても知られる)アテローム形成、動脈炎、(自然又は血管形成術後の)筋内膜増殖、血管の内膜及び/又は筋層の炎症性及び自己免疫性肥厚、炎症性血管病変、アテローム硬化性心疾患、再潅流傷害、心臓伝導障害、心筋炎、心筋梗塞の1つ又は複数を含むことができる。
【0024】
適切には、本発明による移植片拒絶は、特に免疫抑制薬の非存在下での慢性移植片拒絶とすることができる。したがって、本発明による組成物は、移植前、移植中及び/又は移植後に投与される従来の免疫抑制薬の代用品として使用することができる。本発明による組成物は、角膜、骨髄、器官(例えば、腎臓、肝臓)、水晶体、ペースメーカー、天然又は人工皮膚組織、島細胞の1つ又は複数などの天然又は人工細胞、組織及び器官を移植するときに使用することができる。
【0025】
本発明は、さらに、血液障害を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用を提供する。
【0026】
本発明は、さらに、関節炎、特に関節リウマチを治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用を提供する。
【0027】
本発明は、さらに、移植片拒絶を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用を提供する。
【0028】
さらに別の態様においては、本発明は、さらに、乾癬を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用を提供する。
【0029】
本明細書では「免疫調節物質」という用語は、対象の細胞免疫系を調節する物質を意味する。
【0030】
本明細書では「全細胞」という用語は、完全な細菌又は実質的に完全な細菌を意味する。特に、本明細書では「完全な」という用語は、全細胞、特に生細胞全体に存在する成分のすべてを含む細菌及び/又はそれから1個若しくは複数の成分を除去するために特に処理されていない細菌を意味する。本明細書では「実質的に完全」という用語は、細菌を得るのに使用される単離及び/又は精製プロセスが、例えば、細胞にわずかな改変をもたらし、且つ/又は細胞の1個若しくは複数の成分を除去し得るが、かかる改変及び/又は除去が起こる程度が重要でないことを意味する。特に、本発明による実質的に完全な細胞は、それから1個又は複数の成分を除去するために特に処理されていない。
【0031】
細菌細胞の個々の成分はアジュバント効果を誘発するために使用できることが示唆されるが、本発明によるロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞の使用は本発明の前に企図されなかった。驚くべきことに、前記属に属する細菌の全細胞を使用することによって、自己免疫疾患又は自己免疫異常の治療及び/又は予防を実施できるということが見出された。前記細菌の前記全細胞の投与に起因する細胞免疫応答の改変は、細菌の個々の成分の投与によって誘発される応答よりも有利には長時間持続することができる。
【0032】
好ましくは、本発明による組成物は、1個を超える全細胞を含み、より好ましくは複数の全細胞を含む。
【0033】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物は抗原及びアジュバントを含むことができ、前記アジュバントは、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞を含む。前記抗原は、これらの属によって、他の微生物及び真核生物細胞、例えば脊椎動物細胞のミトコンドリアと共有されるものとすることができる。
【0034】
別の態様においては、免疫調節物質組成物は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞を含む薬剤組成物であって、薬剤として許容される担体、希釈剤又は賦形剤を場合によっては含んでいてもよい薬剤組成物とすることができ、使用される前記免疫調節物質組成物は細胞免疫応答を改変する。
【0035】
さらに別の態様においては、免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞と、例えばインターロイキン2などの少なくとも1種の追加のサイトカインとを含むことができる。サイトカインは、本発明の免疫調節作用を強化するのに役立ち得る。
【0036】
適切には、抗原又は抗原決定基は、(英国特許第0025694.1号に教示される)BCG(bacillus of Calmette and Guerin)ワクチン、ジフテリアトキソイドワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(DTP又は三種混合)ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風トキソイドワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、経口ポリオワクチン(OPV(oral poliomyelitis vaccine))及びマイコバクテリアワクチン(Mycobacterium vaccae)又はその一部の1又は2以上からの抗原又は抗原決定基とすることができる。このリストは決して限定的なものではなく、他の出所に由来する適切な抗原を本発明による組成物に添加することができる。これらの抗原に対する応答も、本発明による組成物の投与に起因して誘導された応答調節の恩恵を受けることができる。他の適切な抗原は、本発明による調節物質組成物中に天然に存在しない他のウイルス、腫よう、寄生生物又は他の細菌に由来する抗原とすることができる。
【0037】
適切には、免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物は、2個以上のかかる抗原又は抗原決定基を含むことができる。
【0038】
さらに別の態様においては、本発明によるロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物はワクチン中で使用することができ、又はワクチンとして使用することができる。
【0039】
適切には、ワクチンは予防ワクチン又は治療ワクチンとすることができる。
【0040】
さらに別の態様においては、本発明は、自己免疫疾患又は自己免疫異常の治療又は予防に使用されるロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物を提供する。
【0041】
一態様においては、本発明による細菌の全細胞は、Th2応答を下方制御することができる。
【0042】
別の態様においては、本発明による細菌の全細胞は、Th1応答を上方制御することができる。
【0043】
適切には、本発明による細菌の全細胞は、Th2応答を下方制御しTh1応答を上方制御することができる。
【0044】
或いは、本発明による細菌の全細胞は、Th2応答に影響を及ぼさずにTh1応答を上方制御することができる。
【0045】
或いは、本発明による細菌の全細胞は、Th2応答を下方制御し、Th1応答も下方制御することができる。
【0046】
或いは、本発明による細菌の全細胞は、Th2応答を上方制御し、Th1応答も上方制御することができる。
【0047】
別の態様においては、本発明は、自己免疫疾患又は自己免疫異常を治療又は予防する方法であって、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物の有効量を対象に投与するステップを含み、前記組成物が細胞免疫応答を調節する、方法を提供する。
【0048】
適切には、有効量の薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物を単回投与することができる。或いは、有効量の薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物を複数回(繰り返し)、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、10回以上又は20回以上繰り返し投与することができる。
【0049】
特に、かかる繰り返し投与は、例えば定着した慢性症状の治療に必要とされることがある。
【0050】
本発明のさらに別の態様においては、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞を含む薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物を投与することを含む、自己免疫疾患又は自己免疫異常に対して免疫を含めて対象を防御する方法が提供される。
【0051】
本明細書では「防御された」という用語は、本発明による組成物を用いた治療を受けていない対象又は本発明による組成物を投与されていない対象よりも、対象が疾患/障害に罹患し難いこと、及び/或いは本発明による組成物を用いた治療を受けていない対象又は本発明による組成物を投与されていない対象よりも、対象が疾患/障害に対抗する又は疾患/障害を克服することができることを意味する。
【0052】
別の態様においては、本発明は、本発明による薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物の有効量を対象に投与するステップであって、前記組成物が抗原又は抗原決定基と同時投与されるステップを提供する。
【0053】
本組成物が本発明によって抗原又は抗原決定基と同時投与されるときには、抗原又は抗原決定基は、適切には、(英国特許第0025694.1号に教示される)BCGワクチン、ジフテリアトキソイドワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(DTP又は三種混合)ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風トキソイドワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、経口ポリオワクチン(OPV)及びマイコバクテリアワクチン又はその一部の1個若しくは複数からの抗原又は抗原決定基とすることができる。適切には、かかる抗原又は抗原決定基の2個以上又は3個以上を本発明による薬剤組成物又は免疫調節物質組成物と同時投与することができる。
【0054】
好ましくは、本発明による医薬品は、自己免疫疾患又は自己免疫異常の治療又は予防に使用される。
【0055】
本発明のさらに別の態様においては、本発明による薬剤組成物又は免疫調節物質組成物は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1種を超える属に属する細菌を含むことができる。適切には、本組成物は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属のいずれか1種に属する2個以上又は3個以上の細菌を含ロドコッカスむことができる。
【0056】
好ましくは、本発明に従って使用される細菌は、例えばゴルドニア・ブロンチアリス(Gordonia bronchialis)、ゴルドニア・アマレア(G. amarae)、ゴルドニア・スプチ(G. sputi)、ゴルドニア・テレア(G. terrae)、ノカルジア・アステロイド(Nocardia asteroides)、ダイエツィア・マリス(Dietzia maris)、ツカムレラ・パウロメタボラ(Tsukamurella paurometabola)、ロドコッカス・ルベル(Rhodococcus ruber)、ロドコッカス・ロドニイ(Rhodococcus rhodnii)、ロドコッカス・コプロフィラス(R. coprophilus)、ノカルジオイデス・アルバス(Nocardioides albus)、ツカムレラ・インコネンシス(Tsukamurella inchonensis)などのこれらの属のいずれかに属する任意の種を含めて、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する。適切には、特定の各属から使用される種は、低抗原性培地、好ましくは非抗原性培地である培地上で増殖することができるものである。単なる例として、適切な非抗原性培地はソートン培地である。
【0057】
適切には、本発明に従って使用される細菌は、(以前はノカルジア・ルブラ(Nocardia rubra)として知られた)ロドコッカス・ルベル、ロドコッカス・ルホドクラウス(Rhodococcus rhodocrous)、ロドコッカス・ロドニイ、ロドコッカス・コプロフィラス、ロドコッカス・オパカス(Rhodococcus opacus)、ロドコッカス・エリトポレス(Rhodococcus erythopolis)を含めて、ロドコッカス属に属することができる。
【0058】
適切には、本発明に従って使用される細菌はロドコッカス・ルベルとすることができる。
【0059】
好ましくは、本発明による細菌は使用前に死滅させる。適切には、本発明による細菌は、その熱処理、例えば、オートクレーブ中121℃で15分間の熱処理によって死滅させることができる。
【0060】
他の適切な滅菌処理としては、紫外若しくは電離放射線、フェノール、アルコール、ホルマリンなどの化学物質による処理などが挙げられる。
【0061】
適切には、本発明による細菌は精製及び/又は単離することができる。
【0062】
適切には、本発明による細菌は、水又は緩衝食塩水、適切にはpH8で緩衝されたボラート中に懸濁することができる。
【0063】
本明細書では「対象」という用語は動物を意味する。適切には、対象は、トリ、(例えばエビなどの)甲殻類、魚及び哺乳動物を含む、例えば、任意の動物とすることができる。好ましくは、対象は、例えば家畜及びヒトを含めて、哺乳動物である。本発明の一部の態様においては、対象は適切にはヒトとすることができる。
【0064】
薬剤組成物又は免疫調節物質組成物を(1回を超える投与がなされる場合には初めて)家畜に投与するときには、家畜が初めて授乳した後に投与することが好ましい。特に、一部の適用例では、(1回を超える投与がある場合には)初回又は1回のみの薬剤組成物又は免疫調節物質組成物を投与する前に親の初乳を乳児に摂取及び/又は消化させることが重要なことがある。不確かさを回避するために、一部の適用例では、薬剤組成物又は免疫調節物質組成物の最初の投与は、生後約1〜4日目、好ましくは生後1〜3日目、より好ましくは生後1〜2日目、好ましくは生後2〜3日目で行うべきである。次の投与は、最初の注射から7日後及び/又は8〜12週後に行うことができる。
【0065】
本明細書では「免疫調節物質」という用語はワクチンを含む。
【0066】
細菌は放線菌目(Actinomycetales)に属する細菌であることが好ましい。しかし、細菌はマイコバクテリアワクチンではないことが好ましい。一実施形態においては、細菌はマイコバクテリア属に由来しないことが好ましい。
【0067】
治療用途
本発明の免疫調節物質は治療に使用することができる。特にかかる化合物は、in vivoでのTリンパ球応答を調節するために使用することができ、且つ/又はin vivoでの免疫応答に関与する他の細胞を調節するために使用することができる。
【0068】
T細胞増殖及び/又は分化及び/又は活性を調節、特に遮断することができる免疫調節物質/薬剤組成物は、適応免疫応答、すなわち細胞免疫応答の調節によって予防又は治療に感受性が高いあらゆる障害に対して使用することができる。
【0069】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、対象自身の免疫系が対象組織の1つ又は複数に損傷を与える型のものである。適切には、自己免疫応答は、対象内の何か又は対象の環境内の何かによって引き起こされることがある。
【0070】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は誘因後のものであり得る。例えば、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、感染及び/又は他のある誘因に起因するものであり得る。潜在的誘因は、例として、老齢、感染(例えば寄生虫感染)、ステロイド治療、アラムを用いたワクチン接種の繰り返し、妊娠及び/又は癌であり得る。
【0071】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、血管内膜の炎症を含むものとすることができる。
【0072】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、血管内膜の炎症を含むと共に、血管筋層又は心筋の炎症を含む。
【0073】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、血管障害が先行するもの又は血管障害に起因するものであり得る。
【0074】
本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、関節炎、特に関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節症、強皮症、甲状腺炎、移植後の内膜増殖、移植片拒絶及び血管障害の1つ又は複数とすることができる。
【0075】
適切には、本発明による血管障害は、自己免疫エレメント、例えば自己免疫応答に起因するものを含む任意の血管疾患又は異常を含むことができる。
【0076】
適切には、本発明による血管障害は、レイノー病及びレイノー現象、前部ブドウ膜炎、閉塞性血管障害、(動脈硬化症としても知られる)アテローム形成、動脈炎、(自然又は血管形成術後の)筋内膜増殖、血管の内膜及び/又は筋層の炎症性及び自己免疫性肥厚、炎症性血管病変、アテローム硬化性心疾患、再潅流傷害、心臓伝導障害、心筋炎、心筋梗塞の1つ又は複数を含むことができる。
【0077】
適切には、本発明による移植片拒絶は、特に免疫抑制薬の非存在下での慢性移植片拒絶とすることができる。したがって、本発明による組成物は、移植前、移植中及び/又は移植後に投与される従来の免疫抑制薬の代用品として使用することができる。本発明による組成物は、角膜、骨髄、器官(例えば、腎臓、肝臓)、水晶体、ペースメーカー、天然又は人工皮膚組織、島細胞の1つ又は複数などの天然又は人工の細胞、組織及び器官を移植するときに使用することができる。
【0078】
Tヘルパー細胞
本明細書では「Th1」という用語は、1型Tヘルパー細胞(Th1)を指す。この用語は、かかる細胞型によって媒介される応答又はかかる細胞型を介した応答を指すのに本明細書では使用することもできる。かかる応答は、インターロイキン−2(IL−2)の分泌、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)の分泌、マクロファージの活性化、細胞傷害性T細胞の活性化又は任意の他のTh1関連事象の1つ若しくは複数を含むことができる。したがって、「Th1」という用語は、Th1細胞及びかかる細胞が生成する免疫応答を含むことができる。
【0079】
本明細書では「Th2」という用語は、2型Tヘルパー細胞(Th1)を指す。この用語は、かかる細胞型によって媒介される応答又はかかる細胞型を介した応答を指すのに本明細書では使用することもできる。かかる応答は、インターロイキン−4(IL−4)の分泌、スプライスバリアントインターロイキンIL−4δ2の分泌、インターロイキン−5(IL−5)の分泌、リンパ球上の細胞決定因子30(CD30)レベルの増加、血中又は血液の好酸球中の免疫グロブリン−E(IgE)レベルの増加又は任意の他のTh2関連事象の1つ若しくは複数を含むことができる。したがって、「Th2」という用語は、Th2細胞及びかかる細胞が生成する免疫応答を含むことができる。
【0080】
さまざまな条件は、特にTh1及び/又はTh2の活性化及び/又は増殖において、制御されていない細胞免疫応答又は不適当に調節された細胞免疫応答をもたらし、或いはそれらの細胞免疫応答に起因し得ることが知られている。これは、調節されていない場合又は不適当に調節されたままにされた場合、対象に対して1つ又は複数の有害な効果をもたらすことが見出された。
【0081】
調節されていない又は不適当に調節された細胞免疫応答は、例えば動脈硬化症などの炎症性血管疾患、血管形成術後の筋内膜増殖、前部ブドウ膜炎などの自己免疫異常において、また、移植/拒絶中にも認められる。さらなる例として、Stansby et al.、Eur J Vasc Endovasc Surg 2002; 23: 23-28は、抗体応答を調節するマイコバクテリア調製物による治療によって、ラット血管形成モデルにおいて血管疾患、すなわち再狭窄が減少するという仮説を検定した。ヒトにおける使用に適切なマイコバクテリア材料による免疫調節はMIHを抑制できることが判明した。かかる調節は低リスクなので、これは、再狭窄と闘う重要な新しい治療様式の見通しを開くものである。
【0082】
したがって、本発明の一目的は、調節されていない又は不適当に調節された細胞免疫応答のマイナス効果を克服するように、Th1及び/又はTh2の制御又は調節を含めて細胞免疫応答の制御を促進し確立することである。
【0083】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の使用によって、Th1又はTh2応答、すなわち例えば組織損傷をもたらすTh1又はTh2応答が制御される。
【0084】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の使用によって、Th1応答を減少させ、Th2応答を減少させることができる。
【0085】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の使用によって、Th2応答に影響を及ぼさずにTh1応答を増大させることができる。
【0086】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の使用によって、Th1応答を増大させ、Th2応答を減少させることができる。
【0087】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の使用によって、Th1応答を増大させ、Th2応答を増大させることができる。
【0088】
適切には、当業者は、本発明による各属の特定の種を試験して、その特定のTh1/Th2応答を測定することができる。
【0089】
調節されていない又は不適当に調節された免疫応答は、一部の疾患がTh1及び/又はTh2応答を変化させるという事実或いはTh1及び/又はTh2応答の変化の結果であるという事実のために、疾患の確立においてある役割を果たす。これらの非定型Th1及びTh2反応に付随するのは、組織病理の根底にある機序に関与し得る一連の異常な炎症反応である。
【0090】
単なる例として、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物は自己免疫疾患又は自己免疫異常に対抗することができる。
【0091】
ワクチン
1個又は複数の物質を活性成分として含有するワクチンの調製は当業者に公知である。一般に、かかるワクチンは溶液又は懸濁液として、注射剤として調製される。注射前に溶液又は懸濁液にするのに適切な固体剤形を調製することもできる。調製物は乳化することもでき、リポソームに封入された活性成分とすることもできる。活性成分は、薬剤として許容され該活性成分と適合性である賦形剤と混合されることが多い。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなど及びこれらの組合せである。或いは、ワクチンは、例えば、経口摂取されるように、且つ/又は吸入可能なように調製することができる。
【0092】
また、必要に応じて、ワクチンは、少量の湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤などの補助的物質を含有することができる。
【0093】
投与
一般に、医師は、個々の対象に最も適切であるワクチン、免疫調節物質組成物及び薬剤組成物の実際の投与量を決定する。それは、個々の患者の年齢、体重及び応答に応じて変わる。以下の投与量は平均的な症例の例示である。高い又は低い投与量範囲が有利である個々の場合があり得るのは言うまでもない。
【0094】
使用する実際の投与量は、対象に対する毒性が最小限に抑えられることが好ましい。
【0095】
本発明の組成物は、直接注射によって投与することができる。本組成物は、非経口、粘膜、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、皮内又は経皮投与用に処方することができる。
【0096】
適切には、本発明による組成物は、生物1ナノグラムから100ミリグラム、好ましくは生物10ナノグラムから10ミリグラム、より好ましくは生物100ナノグラムから5ミリグラム、さらにより好ましくは生物100ナノグラムから1ミリグラムの用量で投与することができる。一般に、本発明による組成物は、ヒト及び動物用に細菌100マイクログラムから1ミリグラムの用量で投与することができる。
【0097】
本発明の組成物を免疫増強剤として投与する場合には、ヒト及び動物用に生物1ナノグラムから100ミリグラム/回、好ましくは生物10ナノグラムから10ミリグラム/回、より好ましくは生物100ナノグラムから5ミリグラム/回、さらにより好ましくは生物100ナノグラムから1ミリグラム/回、さらにより好ましくは、細菌100マイクログラムから1ミリグラム/回を規則的な間隔で投与することができる。
【0098】
当業者には容易に理解されるように、投与量は、その用量が投与される生物によって決まる。
【0099】
「投与する」という用語は、注射、脂質によって媒介される形質移入、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、CFA(cationic facial amphiphile)及びそれらの組合せ、さらにはウイルスの送達を含めた送達機序による送達を含む。かかる送達機序の経路としては、粘膜、鼻、口、非経口、胃腸、局所又は舌下経路などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0100】
「投与する」という用語は、例えば、吸入用点鼻薬若しくはエアゾール剤として粘膜経路による送達、又は摂取溶液、カプセル剤若しくは錠剤としての送達、送達が例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下経路などの注射用剤形による親経路を含むが、これらだけに限定されない。
【0101】
「同時投与する」という用語は、本発明のアジュバント、抗原及び/又は抗原決定基の各々の投与部位及び時間が、免疫系の必要な調節が達成されるようなものであることを意味する。したがって、抗原とアジュバントは同時に同じ部位に投与することができるが、アジュバントとは異なる時間で異なる部位に抗原及び/又は抗原決定基を投与することが有利なこともある。抗原及び/又は抗原決定基とアジュバントは同じ送達ビヒクルで送達することさえできる。抗原及び/又は抗原決定基とアジュバントは結合及び/又は非結合とすることができ、且つ/或いは遺伝子的に結合及び/又は非結合とすることができる。単なる例として、本発明による免疫調節物質組成物は、1又は2以上の抗原又はさらに別の抗原の投与前、投与と同時に又は投与後に投与することができる。
【0102】
抗原、抗原決定基、ペプチド若しくは相同体又はそれらの模倣体は、単回投与又は複数回投与で宿主対象に別個にでも同時にでも投与することができる。
【0103】
本発明の免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物は、(非経口、皮下、皮内及び筋肉内注射を含む)注射、鼻腔内、粘膜、経口、膣内、尿道、眼球投与などいくつかの異なる経路によって投与することができる。
【0104】
本発明においては、投与は注射によることが好ましい。注射は皮内であることがより好ましい。
【0105】
本発明においては、投与は、経口的に許容される組成物によることが好ましい。
【0106】
ワクチン接種の場合には、本組成物は、水溶液、好ましくは緩衝生理食塩水0.1から0.2mlで提供することができ、非経口的に、例えば皮内接種によって投与する。本発明によるワクチンは好ましくは皮内注射する。軽度の膨潤及び発赤、時折かゆみも注射部位において見られることがある。投与方法、用量及び投与回数は、当業者が公知の方法で最適化することができる。
【0107】
抗原
本明細書では「抗原」は、免疫適格性宿主に導入されたときに、実体と組み合わせることができる特異抗体又は抗体の産生を変える実体並びに/或いはTh2及び/又はTh1などの関連するTh応答を変える実体を意味する。抗原は、(細胞、細胞断片、細胞超音波処理物を含めて)純粋な物質、物質の混合物、可溶性材料又は粒子材料とすることができる。この意味で、この用語は、任意の適切な抗原決定基、交差反応抗原、同種抗原、異種抗原、寛容原、アレルゲン、ハプテン及び免疫原又はそれらの一部並びにそれらの任意の組合せを含み、これらの用語は本明細書を通して区別なく使用される。
【0108】
本明細書では「抗原決定基又はエピトープ」という用語は、抗体若しくはT細胞受容体によって認識される抗原上の部位又はTヘルパー細胞応答を惹起する原因である抗原上の部位を指す。これは、タンパク質抗原に由来する短いペプチド又はタンパク質抗原の一部としての短いペプチドであることが好ましい。しかし、この用語は、糖ペプチド及び炭水化物エピトープも含むものとする。この用語は、生物全体を認識する応答を刺激するアミノ酸の改変配列又は炭水化物も含む。
【0109】
「防止」又は「予防」ワクチンは、投薬を受けたことがない個体に投与して、防御免疫を刺激することなどによって発症を防止するワクチンである。
【0110】
「治療」ワクチンは、既存の症状を有する個体に投与されて症状を軽減し、又は最小限に抑え、或いは症状の免疫病理学的結果を抑止するワクチンである。
【0111】
アジュバント
本明細書では「アジュバント」という用語は、免疫応答の影響を増大させることができる実体又はそれに関与することができる実体を意味する。アジュバントは、抗原に対する免疫応答を助け、増大させ、下方制御し、改変し、又は多様化する任意の物質又は物質の混合物である。
【0112】
本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物は、免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の有効性を高める1個又は複数のアジュバントを含むことができる。有効であり得る追加のアジュバントの例としては、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水型乳濁液、水中油型乳濁液、ムラミルジペプチド、菌体内毒素、脂質X、コリネバクトリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)(プロピオノバクテリウム・アクネス(Propionobacterium acnes))、百日咳菌(Bordetella pertussis)、マイコバクテリアワクチン、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、インターロイキン2、インターロイキン12などのインターロイキン、サポニン、リポソーム、レバミソール、DEAE−デキストラン、ブロックドコポリマー又は他の合成アジュバントが挙げられるが、これらだけに限定されない。かかるアジュバントは、さまざまな供給源から商業的に入手可能であり、例えば、Merck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.)又はフロイント不完全アジュバント及び完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, Michigan)である。ヒト用には水酸化アルミニウムのみが認可されている。例えばマイコバクテリアワクチンなどの他のアジュバントの一部は、臨床試験が認可された。
【0113】
適切には、アジュバントは、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属のいずれか1種に属する細菌の全細胞とすることができる。
【0114】
当技術分野では、金粒子に結合した本質的にDNA配列であり、ヘリウム銃によって皮膚中に発射されるDNAワクチンは、効率的なワクチン送達システムであることが知られている。従来のワクチンとは異なり、これらのDNAワクチンは在来のアジュバント成分を必要としない。本発明の別の態様によれば、本明細書の免疫調節物質組成物は、適切には、かかるDNAワクチンと併用して、免疫応答の影響を増大させ、又はそれに関与することができる。
【0115】
薬剤組成物
本発明は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞の治療有効量を含む薬剤組成物であって、薬剤として許容される担体、希釈剤又は賦形剤を(それらの組合せを含めて)場合によっては含んでいてもよい薬剤組成物にも関する。
【0116】
本薬剤組成物は、第1の成分が抗原を含み、第2の成分がそのアジュバントを含む2種類の成分を含むことができる。第1の成分と第2の成分は、連続して、同時又は一緒に、さらには異なる投与経路によって送達することができる。
【0117】
本薬剤組成物は、ヒトの医学及び獣医学においてヒト又は動物に使用することができ、一般に、薬剤として許容される希釈剤、担体又は賦形剤のいずれかの1又は2以上を含む。治療用に許容される担体又は希釈剤は、薬剤技術においては周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。薬剤担体、賦形剤又は希釈剤は、意図する投与経路及び製薬上の標準的実務に照らして選択することができる。
【0118】
薬剤組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として又はそれらに加えて、任意の適切なバインダー、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤を含むことができる。
【0119】
防腐剤、安定剤、色素、さらには香味料も薬剤組成物中に入れることができる。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられる。酸化防止剤及び懸濁剤も使用することもできる。
【0120】
異なる送達系に応じて様々な組成/処方要件があり得る。例として示すと、本発明の薬剤組成物は、ミニポンプを用いて、或いは粘膜経路によって、例えば、吸入又は摂取可能な溶液用の経鼻スプレー又はエアゾール剤として、或いは、例えば、静脈内、筋肉内、皮内又は皮下経路による送達用に該組成物が注射用剤形によって処方される非経口で送達されるように処方することができる。或いは、本製剤は、両方の経路によって送達されるように設計することができる。
【0121】
本発明においては、本製剤は注射用剤形であることが好ましい。本製剤は皮内注射されることがより好ましい。
【0122】
本発明においては、本製剤は経口的に許容される組成物であることが好ましい。
【0123】
薬剤は、胃腸管粘膜を経由して送達される場合には、消化管通過中に安定なままでいることができるようにすべきである。例えば、薬剤はタンパク質分解に抵抗性であり、酸pHにおいて安定であり、胆汁の洗浄効果に抵抗性とすべきである。
【0124】
適切な場合には、薬剤組成物は、吸入によって、坐剤又はペッサリーの形で、ローション、溶液、クリーム、軟膏又は散布粉の剤形で局所的に、皮膚貼付薬を使用して、デンプン、ラクトースなどの賦形剤を含む錠剤の形で経口で、或いはカプセル剤又は胚珠(ovule)を単独又は賦形剤との混合物で、或いは香味料若しくは着色剤を含むエリキシル剤、溶液又は懸濁液の剤形で投与することができ、或いは、非経口、例えば、静脈内、筋肉内又は皮下注射することができる。非経口投与の場合には、組成物は、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩又は単糖を含むことができる無菌水溶液の剤形で最適に使用することができる。頬又は舌下投与の場合には、組成物は、従来の方法で処方することができる錠剤又は舐剤の形で投与することができる。
【0125】
薬剤の組合せ
本発明の薬剤は、1個又は複数の薬剤的に活性な他の物質と一緒に投与することができる。例として、本発明は、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物並びに1個若しくは複数のステロイド、鎮痛薬、抗ウイルス性、IL−2などのインターロイキン又は薬剤的に活性な他の物質との同時又は連続治療を網羅する。
【0126】
これらの投薬計画は、それらの物質を連続的に、同時又は一緒に投与することを含むことを理解されたい。
【0127】
免疫増強剤
本明細書では「免疫増強剤」という用語は、対象に投与されたときにその対象の健康を利する単離又は培養された1個又は複数の細菌を意味する。この利点は、対象の細胞免疫応答を改変することによって得られることが好ましい。
【0128】
本発明によれば、免疫増強剤は、例えば、自己免疫疾患又は自己免疫異常の治療又は予防に使用することができる。
【0129】
免疫増強剤は、特別に設計された食物又は動物の餌に入れて消費することによって投与することができる。
【0130】
免疫増強剤は、直接注射などの他の経路によって投与することもできる。
【0131】
細菌は、生きた生成物を維持する困難を回避するために死滅されることが好ましい。
【0132】
細胞免疫応答を調節する細菌の特定
別の態様においては、本発明は、細胞免疫応答を調節する(例えば、改変する)ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の1個又は複数の全細胞を同定する方法であって、(a)第1の試験動物を免疫賦活薬と接触させるステップと、(b)第2の試験動物を、細菌と混合された免疫賦活薬と接触させるステップと、(c)前記試験動物の各々における細胞免疫応答を測定するステップと、(d)前記試験動物の各々における細胞免疫応答を比較するステップとを含み、細菌と混合された免疫賦活薬からの細胞免疫応答が免疫賦活薬単独よりも小さいことによって細菌による細胞免疫応答の改変が示される方法に関する。
【0133】
別の態様においては、本発明は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属から選択される細菌種のTh1/Th2応答を測定する方法であって、ツベルクリン皮膚試験の利用を含む方法に関する。マウスにおいては、ツベルクリン皮膚試験は、好ましくは足跡に対して実施される。支配的なTh1反応においては、陽性の足跡免疫応答は24時間で最大であり、48時間で減少する。しかし、Th2反応性が増大するにつれ、48時間の陽性足跡免疫応答が増大し、24時間における足跡免疫応答を超えることさえある。
【0134】
BCGワクチン接種の効果は、このツベルクリン皮膚試験を用いて詳細に記録されている。したがって、この試験アッセイは、本発明による免疫調節物質組成物を導入することによってBCG細胞免疫応答が調節されるかどうかを評価するために使用することができる。
【0135】
本明細書では「試験動物」という用語は、免疫賦活薬に対して細胞免疫応答を誘発するあらゆる動物を指す。試験動物は哺乳動物であることが好ましい。試験動物はラット、ハムスター、ウサギ、モルモット又はマウスであることがより好ましい。試験動物はマウスであることがより好ましい。
【0136】
細菌はTヘルパー細胞応答を改変することが好ましい。適切には、細菌は、Th1及びTh2応答を減少させることによってTヘルパー細胞応答を改変することができる。適切には、細菌は、Th1応答を増大させ、Th2応答を減少させることによってTヘルパー細胞応答を改変することができる。適切には、細菌は、Th2応答に影響を及ぼすことなくTh1応答を増大させることによってTヘルパー細胞応答を改変することができる。
【0137】
免疫賦活薬は、既知のTh1及びTh2応答を有することが好ましい。例えば、免疫賦活薬BCGを用いて、それがTh1応答の指標であるときには、反応は通常は24時間で最も大きく、48時間における反応は通常はそれよりも小さく、Th2の寄与を含む。BCGは主としてTh1応答を刺激することが知られている。かかる免疫賦活薬を使用することによって、試験細菌のTh1/Th2応答を測定することができ、したがって、特定の疾患及び/又は障害を治療及び/又は予防する所望のTh1/Th2応答を有する1又は2以上の細菌を特定することができる。
【0138】
細胞免疫応答はツベルクリン皮膚試験によって測定されることが好ましい。BCGなどの免疫賦活薬によるワクチン接種によって、その後試験したときにツベルクリン(Tubercle bacilliの可溶性製剤)を用いた皮膚試験に対して応答が誘導される。局所反応は、ツベルクリン注射後さまざまな間隔、例えば、24時間、48時間及び72時間目に測定する。手短に述べると、ツベルクリンに対して陽性の免疫応答を誘導する免疫賦活薬(例えば、BCG)が使用される。試験動物においては、ツベルクリン皮膚試験は、好ましくは足跡に対して実施される。支配的なTh1反応においては、陽性の足跡免疫応答は通常は24時間で最大であり、48時間で減少する。しかし、Th2反応性が増大するにつれ、48時間の陽性足跡免疫応答が増大し、24時間における足跡免疫応答を超えることさえある。したがって、このアッセイは、本発明による免疫調節物質組成物を導入することによって細胞免疫応答が調節されるかどうかを評価するために使用することができる。
【0139】
免疫賦活薬はBCGであることが好ましい。
【0140】
本発明を実施例によって以下にさらに詳細に説明する。これらの実施例は、当業者が本発明を実施するのを助けるのに役立つものであって、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0141】
実施例
方法
ツベルクリン皮膚試験
ツベルクリン皮膚試験は、細胞免疫応答に対する免疫調節物質組成物、すなわち本発明による死滅された細菌細胞全体を含む細菌組成物/懸濁液の効果を評価する適切なモデルアッセイである。
【0142】
BCGワクチン接種は、ツベルクリンに対して陽性の免疫応答を誘導する。マウスにおいては、ツベルクリン皮膚試験は、好ましくは足跡に対して実施される。支配的なTh1反応においては、陽性の足跡免疫応答は24時間で最大であり、48時間で減少する。しかし、Th2反応性が増大するにつれ、48時間の陽性足跡免疫応答が増大し、24時間における足跡免疫応答を超えることさえある。
【0143】
BCGワクチン接種の効果は、このツベルクリン皮膚試験を用いて詳細に記録されている。したがって、この試験アッセイは、本発明による免疫調節物質組成物を導入することによってBCG細胞免疫応答が調節されるかどうかを評価するために使用することができる。
【0144】
細菌懸濁液の調製
ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌種は、発酵槽中でソートン培地など抗原を含まない培地中で2から28日間増殖させることができる。或いは、目的とする細菌種を固体勾配上で増殖させることができる。代替方法は、当業者に容易に利用可能なはずである。
【0145】
生成した細菌集団を収集し、直接又は洗浄後に使用して緩衝剤懸濁液を調製することができる。細菌細胞懸濁液は、100ナノグラムから10ミリグラムかん菌/回を含むように調製される。細菌細胞は水又は食塩水中に再懸濁される。食塩水は、ホウ酸塩によってpH8.0に緩衝されることが好ましい。かん菌は、適切には、オートクレーブ中で121℃で15分間加熱することによって不活性化される(死滅される)ことが好ましい。生成した細菌懸濁液は全細胞を含む。
【実施例1】
【0146】
ロドコッカス・ルベル(R.r.)による細胞免疫応答の調節
群1:若年成体メス非近交系マウスは、対照群としてワクチン接種を行わなかった。
群2:若年成体メス非近交系マウスは、0日目に首筋にBCG(かん菌105個)(Evans)を接種された。
群3:若年成体メス非近交系マウスは、加熱滅菌したマイコバクテリアワクチン(M.v.)(かん菌107個)が添加されたBGC(かん菌105個)を0日目に首筋に接種した。
【0147】
群1〜3中の全マウスは、10日目及び30日目にツベルクリン免疫応答について足跡試験された。次いで、各マウスは、加熱滅菌したマイコバクテリアワクチン(かん菌107個)を40日目に注射された。50日目に足跡に対するツベルクリン検査が繰り返された。
【0148】
群4:若年成体メス非近交系マウスは、さらなる対照群としてワクチン接種を行わなかった。
群5:若年成体メス非近交系マウスは、0日目に首筋にBCG(Evans)(かん菌105個)を接種した。
群6:若年成体メス非近交系マウスは、加熱滅菌したマイコバクテリアワクチン(かん菌107個)が添加されたBGC(かん菌105個)を0日目に首筋に接種した。
群7:若年成体メス非近交系マウスは、加熱滅菌したロドコッカス・ルベル(かん菌107個)が添加されたBGC(かん菌105個)を0日目に首筋に接種した。
群8:若年成体メス非近交系マウスは、加熱滅菌したロドコッカス・ルベル(かん菌106個)が添加されたBCG(かん菌105個)を0日目に首筋に接種した。
【0149】
群4〜7の全マウスは、30日目にツベルクリン免疫応答について足跡試験した。次いで、40日目に、各群は、各群の半数がそれ以上治療せず、各群の残り半数がロドコッカス・ルベル(かん菌107個)の注射を受けるように分割した。50日目に足跡に対するツベルクリン検査を繰り返した。
実施例1の結果を表1に示す。
【0150】
【表1】
【0151】
対照群1において、マイコバクテリアワクチン治療は、24時間後(p<0.01)と48時間後(p<0.001)の両方でツベルクリンに対する免疫応答の統計的に有意な増加をもたらした。しかし、対照群4においては、ロドコッカス・ルベルを用いた治療は、24時間後でも48時間後でもツベルクリンに対する免疫応答に有意な変化をもたらさなかった。両方の時点において、M.v.の結果はR.r.の結果よりもかなり大きかった(p<0.02)。
【0152】
BCG群(群2及び群5)においては、24時間と48時間の間のツベルクリンに対する応答の減少は、ロドコッカス・ルベルによる治療を受けたマウス(平均減少は28.2±15.7であった)がマイコバクテリアワクチンによる治療を受けたマウス(平均減少は14.9±9.6であった)よりも大きかった(p=0.06)。
【0153】
BCG+マイコバクテリアワクチン群(群3及び群6)においては、24時間と48時間の間のツベルクリンに対する応答の減少は、ロドコッカス・ルベルによる治療を受けた群(平均減少は41.0±41.0であった)がマイコバクテリアワクチンによる治療を受けたマウス(平均減少は12.7±7.0であった)よりもやはり大きかった(p<0.05)。
【0154】
これらのデータによれば、ロドコッカス・ルベルによる治療後にTh2応答が下方制御される。これはマイコバクテリアワクチンによる治療後には見られない。
【0155】
BCG+R.r.群(群7及び8)においては、R.r.107(群7)又は106(群8)をBCGに添加する効果はきわめて類似しており、R.r.の2回目の注射後に24時間と48時間の間で応答が実質的に減少した(15.5±10.0)。
【実施例2】
【0156】
ノカルジア・アステロイド(N.a.)、ゴルドニア・ブロンチアリス(G.b.)又はツカムレラ・インコネンシス(T.p.)を用いた細胞免疫応答の調節
この実験は、6匹のマウスからなる群にBCG単独又は107M.v.、R.r.、ノカルジア・アステロイド(N.a.)、ゴルドニア・ブロンチアリス(G.b.)若しくはツカムレラ・インコネンシス(T.p.)を添加して接種してから28日後にツベルクリンを用いた足跡試験の効果を比較するように設計した。これらの添加生物の各々に対する免疫応答に対する効果を見るために、動物群は、ツベルクリンを用いて試験した28日後に、それらのワクチン接種(ワクチン、Rubin、Asterin、Bronchialin及びInchonensin)に含まれる生物でできた皮膚試験試薬を用いてもう一方の足跡で試験した。
【0157】
結果を表2に詳細に示す。
【0158】
【表2】
【0159】
細菌懸濁液のすべてによって、BCG単独に続く場合と比較して24時間と48時間の両方で測定された28日ツベルクリン応答が低下した(p=0.05;p=0.2)。
【0160】
これは、ツベルクリン及びワクチンを除いて、これらの皮膚試験試薬のいずれかが使用された最初であった。新しい試薬に対する24時間における応答性の差は、タンパク質評価による場合を除いておそらくは平衡になっていないためであった。しかし、50日目における24時間と48時間の間の応答はすべて低下し、免疫調節性活性が示唆された。
【実施例3】
【0161】
成体モルモットにおける皮内注射に対する局所的皮膚反応
3匹の動物の左脇腹をせん毛して、108マイコバクテリアワクチンを含む皮内注射0.1mlを動物の頭部末端に、109マイコバクテリアワクチンを含む0.1mlを尾部末端側5cmに投与した。
【0162】
別の3匹の動物の右脇腹をせん毛して、108ロドコッカス・ルベルを含む皮内注射0.1mlを動物の頭部末端に、109ロドコッカス・ルベルを含む0.1mlを尾部末端側5cmに投与した。
【0163】
硬結部(in duration)の直径(単位mm)
【0164】
【0165】
3匹のモルモットにおける109ロドコッカス・ルベル(ヒト及び動物用途に対する典型的な用量)の皮内注射(獣医及び医事に一般に使用される注射経路)に対する局所反応は、別の3匹のモルモットにおける同じ用量のマイコバクテリアワクチンに対する反応と類似していた。注射後48時間において、ロドコッカス・ルベルに対する反応はマイコバクテリアワクチンに対する反応よりも小さかった(p<0.05)。7日又は14日において差はなかった。したがって、ロドコッカス・ルベルはマイコバクテリアワクチンよりも薬剤としてはるかに許容することができる。用量108においてどちらの製剤にも局所反応はない。
【実施例4】
【0166】
皮下注射後の毒性
1日齢、14日齢及び28日齢のときにロドコッカス・ルベルを3回注射した17匹のラットにおいて、皮下投与に対する毒性の証拠は認められなかった。
【0167】
7日目及び14日目において差はなかった。多数のマウスに本発明のさまざまな細菌種を注射したが、毒性の証拠は何らなかった。
【実施例5】
【0168】
Th1応答のみを増大させる細菌の決定
アジュバント関節炎は、動物において油とマイコバクテリア抽出物の混合物(マイコバクテリア・ブチリカム(Mycobacterium butyricum)を含む調製物が特に有効である)によって誘発される実験上の重篤な関節炎である。この応答を誘導するには強力なTh1アジュバントが必要と考えられる。この関節炎は、Th2を下方制御する機序によって調節される(関節炎はTh1とTh2の両方の機序を必要とする)。
【0169】
実験1:ロドコッカス・ルベルがアジュバント関節炎を誘発することができるかどうかを明らかにすること。
60〜90日齢のラットからなる3群の右後足足跡に、
1.マイコバクテリア・ブチリカムの油懸濁液1mg/0.1mL(n=8)
2.ロドコッカス・ルベルの油懸濁液1mg(n=8)
3.油と食塩水の乳濁液(n=8)
を投与した。
【0170】
第1の群の動物は四肢すべてを含めた関節炎を発症したのに対して、ロドコッカス・ルベルの油懸濁液を投与されたラットは注射された足のみが罹患した。
【0171】
実験2:マイコバクテリア・ブチリカムの油懸濁液を投与した後にロドコッカス・ルベルがTh2調節性応答を誘導することができるかどうかを明らかにすること。
これを試験するために、マイコバクテリア・ブチリカムの油乳濁液を投与する42、28及び14日前にロドコッカス・ルベル107個の緩衝食塩水を15匹のラットの異なる部位に皮下注射した。10匹のラットからなる対照群は、同じスケジュールに従って生理食塩水で前処理され、さらに投与された。
【0172】
アジュバント関節炎の巨視的評価は、個々の関節を目視採点することによって実施された(J Rheumatol 1992; 19:513-5)。各肢は0〜4で採点され、最大で16点/ラットに達する。
【0173】
【0174】
両方の群は、関節炎病変の発症時間(通常、誘導後9〜11日)にも関節炎徴候の重症度にも違いがなかった。動物は、疾患の進行のために倫理的理由によって18日目に屠殺された。
【0175】
結論
これらの実験は、ロドコッカス・ルベルがTh1アジュバント活性を有するがTh2「調節性」活性を持たないことを明確に示している。アジュバント関節炎における関節損傷は、Th1とTh2の複合作用である。
【実施例6】
【0176】
毒性、特に新生仔マウスにおける成長速度及びその後のBCGワクチン接種に対するロドコッカス・コプロフィラス NCIMB 11211、ゴルドニア・ブロンチアリス NC10667及びツカムレラ・インコネンシスNC13040の効果を検討すること
毒性の代替試験は、ゴルドニア・ブロンチアリス、ロドコッカス・コプロフィラス又はツカムレラ・インコネンシスの皮下注射が誕生日になされ、21日目に離れた部位に再度なされるものである。これらの動物及び食塩水を注射された対照は、3カ月間規則的な間隔で計量された。
【0177】
方法
9匹の後期妊娠Balb Cマウスを使用する。
【0178】
滅菌された細菌懸濁液の調製:10日間のソートン消泡ブロス培養から調製し、遠心分離し、10mg/mlのホウ酸塩緩衝食塩水として再懸濁し、加圧滅菌し、4℃で貯蔵した懸濁液。10mg/ml、1010/mlをホウ酸塩で1/2希釈して5×109とし、次いでホウ酸塩緩衝剤で1/10希釈して、20μ中最終濃度107として使用する。
【0179】
1日目
新生仔マウスを誕生日に個々に取り出し、同腹仔の首筋に107滅菌懸濁液を注射し、母親に戻す。
【0180】
対照同腹仔の首筋にM15ホウ酸塩緩衝食塩水20μリットルを注射する。
同腹仔1=メス2匹+オス3匹(ロドコッカス・コプロフィラス NCIMB 11211)
同腹仔2=メス2匹+オス3匹(ロドコッカス・コプロフィラス NCIMB 11211)
同腹仔3=メス5匹+オス3匹(ゴルドニア・ブロンチアリス NC10667)
同腹仔4=メス3匹+オス4匹(ゴルドニア・ブロンチアリス NC10667)
同腹仔5=メス1匹+オス1匹(ホウ酸塩緩衝食塩水)
同腹仔6=メス3匹+オス1匹(ホウ酸塩緩衝食塩水)
同腹仔7=メス5匹+オス3匹(ツカムレラ・インコネンシス NC13040)
同腹仔8=メス5匹+オス4匹(ツカムレラ・インコネンシス NC13040)
同腹仔9=メス4匹+オス5匹(ホウ酸塩緩衝食塩水)
【0181】
21日目
マウスを離乳させ、性別を見分け、同腹仔をオスとメスの2群に分割する。
【0182】
計量し、ワクチンを再接種する。消えないペンで尾部にマーキングすることによって個体を標識する。
【0183】
3カ月間計量し、毎週尾部に再マーキングする(re tail mark)。
【0184】
図1に、離乳から12週間の体重増加平均値/同腹仔メス試験及び対照の結果を示す。
【0185】
図2に、離乳から12週間の体重増加平均値/同腹仔オス試験及び対照の結果を示す。
【0186】
体重増加は全群で同じであり、わずか2/57動物しか3カ月間に死亡しなかった。両方ともオスであり、離乳後に他のオスと一緒にした直後に死亡した。したがって、動物の体重増加及び発育は、試験された3種によって影響されなかったと結論することができる。
【実施例7】
【0187】
ツベルクリン皮膚試験応答によって測定されたBCG免疫化に対する効果
免疫調節物質試験モデルは、4週間後に試験したときにBCGワクチン接種によってツベルクリン(Tubercle bacilliの可溶性製剤)皮膚試験に対する応答が誘導されるという原理に基づいて考案されている。局所反応はツベルクリン注射後24時間、48時間及び72時間後に測定する。マウスにおいては、局所反応は通常24時間で最大であり、それがツベルクリン中の抗原に対するTh1応答の指標である。48時間における局所反応は通常それよりも小さく、Th2の寄与を含む。72時間における局所反応は48時間におけるよりもわずかに小さいことが多く、Th2応答である。このBCG後ツベルクリン反応は、前の初回抗原刺激によって調節することができ、その結果、反応のTh1及びTh2成分は初回刺激試薬の性質を反映する。
【0188】
方法
3カ月齢のときに実施例6に従って初回抗原刺激されたマウスは、各試験の半分及び対照群が106BCG100μlを首筋に注射した。
【0189】
4カ月における試薬T1475 1mg/mlによるツベルクリン検査。100μリットルを1.9mlで希釈して、最終濃度を50μg/mlにする。4℃で貯蔵する。用量は、後足足跡に投与された2.5μgの50μリットル溶液である。24、48及び72時間においてマイクロメータを用いて測定されたツベルクリン応答膨潤。
【0190】
結果
図3は、ゴルドニア・ブロンチアリスが24時間TH1効果を増大させることを示している。
【0191】
図4は、ツカムレラ・インコネンシスが24時間TH1応答を増大させ、72時間TH2応答を抑制することを示している。
【0192】
図5は、ロドコッカス・コプロフィラスがTH1応答とTH2応答の両方を抑制することを示している。
【0193】
結論
上記3種は、BCG投与後のツベルクリン検査に対して各々異なる効果をもたらした。
【0194】
ゴルドニア・ブロンチアリスは、Th2応答を変えずにTh1応答を増大させた。ロドコッカス・ルベルもこの機能を有する。
【0195】
ツカムレラ・インコネンシスは、Th1応答を増大させ、Th2応答を下方制御した。
【0196】
ロドコッカス・コプロフィラスは、Th1応答とTh2応答の両方を下方制御した。
【0197】
これらの試薬のいずれかをアジュバントとして投与すると、その後の抗原に対する免疫応答を調節することができる。
【0198】
これらの結果は、本発明の代表的な3種のいずれかによる2回の初回抗原刺激免疫の影響が2回目の免疫後少なくとも9週間持続することも明確に示している。
【実施例8】
【0199】
免疫調節物質試験モデル
免疫調節物質試験モデルは、4週後に試験されたときにBCGワクチン接種によってツベルクリン(Tubercle bacilliの可溶性製剤)皮膚試験に対する応答が誘導されるという原理に基づいて考案されている。局所反応はツベルクリン注射後24時間、48時間及び72時間後に測定する。局所反応は通常24時間で最大であり、それがツベルクリン中の抗原に対するTh1応答の指標である。48時間における局所反応は通常それよりも小さく、Th2の寄与を含む。72時間における局所反応は48時間におけるよりもわずかに小さいことが多く、Th2応答である。このBCG後ツベルクリン反応は、前の初回抗原刺激によって調節することができ、その結果、反応のTh1及びTh2成分は初回刺激試薬の性質を反映する。
【0200】
公知の免疫賦活薬であるBCGを若い3週齢マウスの首筋に注射し、マウス足跡へのツベルクリン皮下注射によってツベルクリン応答を1カ月後に測定する。次いで、生成する膨潤、すなわち「ツベルクリン応答」を24、48及び72時間で測定する。24時間における膨潤は初期又はTh1媒介応答とみなされ、48及び72時間における膨潤は後期又はTh2媒介応答とみなされる。健康なマウスにおいてBCGはTh1応答を主として刺激する。
【0201】
方法
(a)BCG皮内ワクチン10回分のバイアル(Evans Medical)
シリンジ及び針を用いて供給滅菌水1mlで戻して、5分間溶解する。1×107/mlとすべきである。
【0202】
シリンジ及び針を用いてワクチンのすべてを除去し、プラスチックビジューボトル(bijou bottle)に移す。
【0203】
0.15mlをM15ホウ酸塩緩衝食塩水1.35m1で1/10希釈して105 100μリットルとする。
【0204】
用量は105 100μlであり、首筋に投与される。
【0205】
(b)ツベルクリン
T1475 1mg/ml。
【0206】
100μリットルを1.9mlで希釈して、最終濃度を50μg/mlにする。
【0207】
4℃で貯蔵する。
【0208】
用量は2.5μg 50μlであり、後足足跡に皮内投与される。
【0209】
ツベルクリン応答は、24、48及び72時間においてマイクロメータを用いて測定される。
【0210】
図6に、非ワクチン接種対照と比較された1カ月後のBCGに対するツベルクリン応答を示す。
【0211】
(c)試験懸濁液の調製
培養物は、遠心分離によって収集したソートンブロス中で増殖させ、M15ホウ酸塩緩衝食塩水に濃度10mg/mlで再懸濁し、4℃で貯蔵する。
【0212】
10mg/ml=100μl中109
【0213】
1/10希釈=100μl中108
【0214】
150μl 108をM15ホウ酸塩1.2mlに添加し、BCG150μlを添加する。
【0215】
用量は、今回、105BCG+107試験生物100μlであり、首筋に注射する。
【0216】
結果
図7は、3種類の細菌によるBCG効果の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24及び48時間目に測定する。代表的な種は、(Na)ノカルジア・アステロイド、(Gb)ゴルドニア・ブロンチアリス及び(Tp)ツカムレラ・インコネンシスである。
【0217】
図8は、2種類の細菌によるBCG/BCG+の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24、48及び72時間目に測定する。代表的な種は(Rrh)ロドコッカス・ルホドクラウス及び(Dm)ダイエツィア・マリスである。
【0218】
図9は、ロドコッカス属内の選択された種によるBCG効果の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24、48及び72時間目に測定する。(Rrh)ロドコッカス・ルホドクラウス、(Rru)ロドコッカス・ルベル、(Rrhod)ロドコッカス・ロドニイ、(Rcop)ロドコッカス・コプロフィラス、(Ropa)ロドコッカス・オパカス、(Reryth)ロドコッカス・エリトポレス。
【0219】
図10は、ロドコッカス・ルベルの108から104の対数希釈で改変されたBCGを用いたロドコッカス・ルベルの最適用量をBCG単独と比較して示すグラフである。
【0220】
結論
このスクリーニング試験は、試験懸濁液をBCGと混合し、BCG単独と比較することによって、28日後にツベルクリン検査がBCGに対する応答の測定値として調節又は改変されたことを示している。この簡単なモデルにおいては、免疫調節は、24時間と48時間目両方における応答サイズの低下として示される。これは、より長期の実験においてさらに検討することができる。試験懸濁液を用いた初回抗原刺激は、BCG投与とそれに続くツベルクリン検査の数週間前に実施する。
【実施例9】
【0221】
細菌の全細胞の懸濁液が細胞抽出物よりも免疫調節に有効であることを示すために、比較調製物が作り、BCG投与/ツベルクリン皮膚試験系において試験する
あらかじめ計量された遠心管中の緩衝食塩水(pH8.0)にツカムレラ・インコネンシス100mgを生物10mg湿重量/mlの濃度で懸濁する。全量10mlを超音波処理器で処理して、生物の大多数(70〜80%)を破壊した。
【0222】
超音波処理物を管中で15000rpmで1時間遠心分離し、上清を慎重に除去し、試験抽出物として孔径0.2μmのメンブランフィルターを通過させる。堆積物を含む管を再度計量して、破壊されていない全生物と細胞壁破片などの割合を求める。これは64mgである。次いで、ツカムレラ・インコネンシス0.01mgに等しい抽出体積を推定し、これを相当物の全かん菌(107個に近い)0.01mgと比較する。
【0223】
10匹の動物からなる群に抽出物又は(0.01mg/回に等しい)かん菌全細胞懸濁液又は緩衝食塩水プラセボを離乳時及び7日後に首筋に注射する。2週間後に動物にBCGを投与する。28日後にツベルクリン検査を実施し、24、48及び72時間で読取る。
【0224】
結果:
初回抗原刺激なしで、或いはホウ酸塩緩衝剤、ツカムレラ・インコネンシス全細胞又は可溶性抗原(ろ過された超音波処理物)の初回抗原刺激後に投与されたBCGワクチン接種後のマウスにおけるツベルクリン応答。
【0225】
初回抗原刺激されていない動物に投与されたBCGに続くツベルクリン応答:
No. 24時間 48時間 72時間
6 9±4.2 7.7±3.39 3.67±3.5
【0226】
ホウ酸塩緩衝剤単体で初回刺激された動物に投与されたBCGに続くツベルクリン応答:
6 9±5.7 6.3±7.1 3.17±2.93
【0227】
ホウ酸塩緩衝剤による初回刺激は、BCG後ツベルクリン検査に対して効果がない。
【0228】
加熱滅菌ツカムレラ・インコネンシス全体で初回刺激された動物に投与されたBCGに続くツベルクリン応答:
6 7.3±1.03 6.17±3.87 1.5±2.07
【0229】
ツカムレラ・インコネンシス全体で初回抗原刺激するとツベルクリン応答が特に72時間において減少する(Th2応答性)。
【0230】
ツカムレラ・インコネンシス可溶性調製物(ろ過された超音波処理物)で初回刺激された動物に投与されたBCGに続くツベルクリン応答:
6 6.8±6.8 11.0±8.0 4.6±6.8
【0231】
ツカムレラ・インコネンシスろ過超音波処理物で初回刺激すると48時間及び72時間における応答が増大する(Th2応答性)。これは、おそらく、BCGとツカムレラ・インコネンシスで共有された抗原に対する炎症性抗体産生が増加したためである。これらの結果は、超音波処理物による初回刺激が、死滅生物全体による初回刺激後の応答とは異なる応答をもたらすことを示している。
【0232】
予備調査によれば、細菌の全細胞は細胞抽出物よりも免疫調節に有効であることが示唆される。
【実施例10】
【0233】
血管疾患モデル−ラット血管形成術試験
このモデルは、バルーン血管形成術後に認められたラットの総頚動脈内膜層の誘導された肥厚減少に基づく。
【0234】
実験群は各々15匹のオスのラットからなる。
【0235】
群1はpH8のホウ酸塩緩衝食塩水0.1mlを皮下注射されたラットであった(対照)。
【0236】
群2は、加熱滅菌された環境雑菌ゴルドニア・ブロンチアリスを含むpH8のホウ酸塩緩衝食塩水0.1mlを皮下注射されたラットであった。
【0237】
群3は、加熱滅菌された環境雑菌ロドコッカス・コプロフィラスを含むpH8のホウ酸塩緩衝食塩水0.1mlを皮下注射されたラットであった。
【0238】
群4は、加熱滅菌された環境雑菌ツカムレラ・インコネンシスを含むpH8のホウ酸塩緩衝食塩水0.1mlを皮下注射されたラットであった。
【0239】
群5は、加熱滅菌された環境雑菌マイコバクテリアワクチンを含むpH8のホウ酸塩緩衝食塩水0.1mlを皮下注射されたラットであった(正の対照)。
【0240】
実験の手順予定表:
すべての動物は、0日目に実験を開始する前に7〜10日順応された。すべての動物を0日目に計量し、その後は健康の指標として週間隔で計量した。
【0241】
全群のラットは、標準ラット固形飼料を給餌され、水を自由に摂取することができた。
【0242】
0日目にラットに上記対照又は活性薬剤を皮下注射した(生物の用量は0.1ml中50マイクログラム、すなわち500マイクログラム/mlであった)。
【0243】
21日目にラットに第2の用量の対照/活性薬剤を皮下注射した(生物の用量は0.1ml中100マイクログラム、すなわち1mg/mlであった)。
【0244】
49日目に血液0.75mLを各ラットの尾静脈から採取し、サイトカインのRNAを後で測定できるように適切な方法で貯蔵した。
【0245】
56日目に全ラットに麻酔下で左総頚動脈バルーンによる外傷を与えた。
【0246】
70日目に全ラットを計量し、一級分類表(Schedule 1)法によって安楽死させ、頚動脈、ひ臓、左腎臓、左肺の一部、肝臓中葉の一部、心臓及び胸部大動脈を組織学的及び免疫学的分析のために採取した。血液もさらなる分析のために採取された。
【0247】
各左頚動脈の横断面を切断し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。筋肉層及び内膜層は個別に顕微鏡測定され、血管の断面域として表された。さらなる断面は、存在する免疫細胞型及び放出されているサイトカインを特定する免疫組織化学用に使用される。
【0248】
49日目及び70日目に採取された血液試料は、サイトカイン、ケモカイン及び血管疾患に関連する他の物質のRNAをその後分析するために適切な方法で貯蔵された。
【0249】
結果
ラット体重の結果を下表及び図11に示す。
【0250】
【0251】
ゴルドニア・ブロンチアリス(2)の注射で初回刺激された動物は、2つの時点においてプラセボ群(1)よりもかなりの重量増加を示す。
【0252】
内膜及び中膜厚さの測定結果を下表に示す。内膜/中膜比の結果を図12に示す。
【0253】
*検査された断面数
【0254】
【0255】
活性薬剤のレシピエントとプラセボのレシピエントの間で大きな有意差が見られる。
【0256】
内膜の結果が低いのは、血管形成術後の筋内膜増殖の減少を示している。これは全4種類の細菌調製物で起こり、ゴルドニア・ブロンチアリス、ツカムレラ・インコネンシス及びマイコバクテリアワクチンで最も顕著である。この効果は、血管形成術の成功に大きく寄与することができる。
【0257】
プラセボ群において失われた中膜厚さは、積極的治療群において保持され、ロドコッカス・コプロフィラス及びT・インチネンシス(T.inchinensis)の後で最も顕著である。減少した内膜厚さと保持された中膜厚さとの組合せは、ツカムレラ・インコネンシスによる治療後に最もよく見られ、慢性移植片拒絶の潜在的抑制における重要な進歩を証明することができる。
【実施例11】
【0258】
トリパノソーマ症感染ラットにおける心筋炎
動物の調製
i)1日齢オス「1」ラットの首筋に107ゴルドニア・ブロンチアリス、ロドコッカス・ルベル、ロドコッカス・コプロフィラス、ツカムレラ・インコネンシス又はマイコバクテリアワクチン0.1mlを皮下注射した。(これは下表に示すように2回の実験で実施された)。
ii)14日後、オス「1」ラットの左側に107の同じ生物0.1mlの第2の皮下注射をした。
iii)動物に、クルーズ・トリパノソーマ(T.cruzi)のツラフエン(Tulahuen)系統の106錐鞭毛体を用いて生きたクルーズ・トリパノソーマを21日目に皮下経路で投与した。感染血液錐鞭毛体は、CBiマウスにおける連続継代によって維持した。
iv)クルーズ・トリパノソーマの血流型は、pi(post-infection)7及び14日においてヘパリン処置尾部静脈血5μlの直接顕微鏡観察によって標準条件下で評価した。データは寄生生物数/50視野として表した。
v)7日後に、107個の同じ生物0.1mlの追加の皮下注射を右側に投与した。
【0259】
対照動物のみにクルーズ・トリパノソーマを投与した。
【0260】
別の動物群は、比較のために投与しなかった。
【0261】
【0262】
クルーズ・トリパノソーマ対照と比較してマイコバクテリアワクチンはP<0.01及びロドコッカス・ルベルはP=0.001
【0263】
動物の調製
1日齢オス「1」ラットの首筋に107ゴルドニア・ブロンチアリス、ロドコッカス・コプロフィラス又はツカムレラ・インコネンシス0.1mlを皮下注射した。(これは下表に示すように2回の実験で実施された)
【0264】
14及び28日後、オス「1」ラットの左側に107の同じ生物0.1mlの第2及び第3の皮下注射をした。
【0265】
動物に、クルーズ・トリパノソーマのツラフエン系統の106錐鞭毛体を用いて生きたクルーズ・トリパノソーマを21日目に皮下経路で投与した。感染血液錐鞭毛体は、Cbiマウスにおける連続継代によって維持された。
【0266】
対照動物のみにクルーズ・トリパノソーマを投与した。
【0267】
別の動物群は、比較のために放置した。
【0268】
【0269】
クルーズ・トリパノソーマ対照と比較してロドコッカス・コプロフィラスの7日目でP=0.032及び14日目でP=0.05(Kruskall-Wallis分散分析)。
【0270】
クルーズ・トリパノソーマ感染から28日後のクルーズ・トリパノソーマに特異的な血清IgG抗体
【0271】
クルーズ・トリパノソーマ投与から7、14及び21日後の心筋中のCD4+ve細胞
【0272】
さらに別の対象の心筋を、慢性心筋炎の評価のためにクルーズ・トリパノソーマ感染から3カ月後に分析する。予備調査によれば、マイコバクテリアワクチンは慢性心筋炎を軽減するのに有益な効果を有することが判明し、上記データから、試験生物の一部は慢性心筋炎の予防に有益な効果を有すると予想される。
【実施例12】
【0273】
冠動脈血管形成術後のMIHを低減するためのツカムレラ・インコネンシスの使用
アテローム硬化型血管疾患は、世界中で最も一般的な死因及び能力障害原因である。アテローム性動脈硬化症の発症は複雑なプロセスであり、脂質の沈着が動脈の狭窄及び内皮機能不全をもたらす。血管損傷部位における炎症反応がアテローム性動脈硬化症の素因において鍵となる役割を果たす証拠が増加しつつある(Schett G et al.、J Clin. Invest. 1995, 96: 2569-2477)。アテローム硬化型プラークの破裂は、心筋梗塞、発作、末梢動脈閉塞などの急性虚血性症候群をもたらす突然の動脈閉塞の最も一般的な原因である。急性虚血性症状の出現に続いて、ある種のサイトカイン及びCRP(C-reactive protein)を含めていくつかの炎症性マーカーが増加する(George et al.、Circ. Res. 2000; 86: 1203-1210; Hansson et al.、Arteriosclerosis 1989; 9: 567-578; Yokota et al.、J Intern Med. 1995; 238; 479-489; Ikeda J. Mol. Cell. Cardiol. 1992 Jun 24 (6): 579-584; Hojo et al.、Heart 2000 Jul; 84 (1) 83-7。
【0274】
ストレスタンパク質の発現は、内膜への完全な応力損傷部位においてさえ局所的免疫応答をもたらし、そのときの個体において優勢である免疫応答型に従って中膜及び内膜中にサイトカインが放出される(Chan et al.、Eur J. Vasc. Enodvasc. Surg. 1999 Nov. 18(5): 381-5; Mukherjee et al.、Thromb. Haemost 1996; 75: 258-260; Wright Heart Vessels 2000; 15: 18-22; Sanchez-Margalet et al.、Clin Chem Lab. Med 2002 Aug; 40(8); 769-774)。一部のサイトカインは、内膜の肥厚及び中膜の平滑筋細胞における表現型の変化をもたらし、同時にMIHを生じる。他のサイトカインの局所的放出によって、血流の閉塞を最小限に抑えながら内膜が修復される(Hansson et al.、Proc. Natl Acac. Sci. USA 1991; 88: 10530-10534; D'Elios et al.、Transplant Proc 1998; 30: 2373-7; Feldman et al.、Circulation 2000 Feb 29; 101(8): 908-916; Tashiro Coron Artery Dis 2001 Mar.; 12(2): 107-13; Hojo et al.、Atherosclerosis 2001 May; 156(1): 165-170; Yang et al.、Circulation 2000 Mar 7; 101(9); 1019-26; Anguera et al.、Am. Heart J. 2002 Nov. 144(5): 811-817; Takase et al.、Can J. Cardiol. 2003 July; 19(8): 902-906; Tutar et al.、Circulation 2003 Sep 30; 108(13):1581-1584 E-pub 2003 Sep 15; Del Prete et al.、Blood 1995 Jul 1; 86(1): 250-257)。本発明者らの提案の目的は、後者の機序が確実に実施されるようにすることである。
【0275】
MIHと炎症の関連:
【0276】
MIHの発生及び維持をもたらす免疫機構は、制限された血流、脂肪線条の沈着及びアテローム性動脈硬化症のプラークに付随する応力の増加をもたらす。損傷が最小限に抑えられた内膜細胞上で発現されるストレスタンパク質に対するIgG2抗体レベルの上昇は、補体カスケードの局所的誘導及び損傷細胞の破壊をもたらす(Schett et al.(前記);Chan et al.(前記);Crisp et al.、J. Heart Lung Transplant 1994; 81-91; Johnson et al.、Atherosclerosis 1990; 84: 111-119)。この部位に、局所的サイトカイン産生を惹起するTリンパ球が引きつけられる(Hansson 1991(前記);D'Elios(前記);Mickelson et al.、J Am Coll Cardiol. 1996 Aug; 28(2): 345-53)。脂肪線条は損傷内膜上に堆積し、その下で修復又はアテローム硬化型の進行を決定する有益又は有害なサイトカイン活性が発生する。局所的炎症の非特異的な結果として、サイトカインIL(interleukin)−1ベータ及びTNF−α(tumour necrosis factor alpha)はIL−6を誘導し、IL−6は肝細胞による急性期タンパク質(例えば、フィブリノーゲン、CRP)の生合成を増強する(Ikeda et al.(前記);Hojo et al.(前記);Spaziani et al.、Ital Heart J. 2002 Oct: 3(10): 593-597)。
【0277】
MIHは、PCI(percutaneous coronary intervention)後の血管損傷に対する過度の治癒応答とみなすことができる。
・基底膜の損失
・中膜から内膜へのVSMCの移行
・VSMC増殖及びより分泌性である線維芽細胞型への表現型の変化
・細胞外基質の産生増加
を含めて、最終的に血管狭窄又は閉塞をもたらす一連の事象が起こりうる。
【0278】
臨床的な再狭窄は、PCIバルーン血管形成術後に起こり、臨床実務においてかかる症例の約30%に影響を及ぼす。これはかかる手順の失敗の主原因であり、生じた狭窄及び閉塞血管/移植片の治療は問題が多い。MIHをもたらす根本的細胞機序は十分に理解されていないが、サイトカインIL−4及びIL−5を産生するTh2(helper T cells of type 2)の優勢に関連すると考えられ、その存在下でTNF−αは組織損傷的になる(Hernandez-Pando et al.、Immunology 1994; 82: 591-595)。このプロセスを有効に防止することができる治療はこれまで開発されていない。しかし、より全身的な現象にその後なり得る局所的に媒介された炎症反応の役割は、PCIの失敗の鍵となる部分として認められている。現行プロジェクトの臨床的な妥当性は、英国(約40,000)及び世界中で毎年実施されるきわめて多数の経皮冠動脈インターベンションに関係する。新世代の薬物溶出ステントは、「むき出しの金属」ステントよりも再狭窄率がきわめて低いが、再狭窄を完全に防止できそうになく高価である。このプロトコルに提案される免疫療法などMIHを防止する安全で比較的安価な補助的治療は臨床的に重大な影響を有する。
【0279】
ある細菌種は、死滅したときに、それらに提示される熱ショックタンパク質などの抗原に対する免疫応答を調節する能力を有する。かかる死滅細菌の懸濁液は使用するのにきわめて安全であり、さまざまな種を用いて所望の免疫調節を得ることができる。本発明者らの研究室における最近の研究によれば、アテローム性動脈硬化症患者はTh1免疫が同年齢の対照よりも減少し得ることが判明した。したがって、血管傷害に対する炎症反応は、適切な免疫療法によって応答パターンを変えることによって改変することができる。
【0280】
結核、喘息、関節リウマチ、いくつかの自己免疫症状など他のさまざまなヒト疾患においてTh1及びTh2サイトカインが果たす役割は非常に注目されている(D'Elios M, Del PG. Transplant Proc 1998; 30: 2373-7;Shirakawa T et al.、Science 1996; 275: 77-79及びHernandez-Pando R, Rook GAW. Immunology 1994; 82: 591-595)。Th1細胞は、IFN−γ、IL−2(interleukin-2)及びTNFを産生する。Th2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10及びIL−13を産生する(Lin E et al.、Surgery 2000; 127: 117-126)。どちらの型のT細胞も細胞性炎症を起こすことができ、抗体を形成することができるが、異なる免疫グロブリンサブクラスが含まれ、Th2応答に付随する抗体量は通常はるかに多い。Th1応答の調節が失敗すると、多発性硬化症などのTh1によって媒介される自己免疫疾患が起こり得る(Genain CP et al.、Science 1996; 274: 2054-2057)。調節されていないTh2応答は、アレルギー反応、Th2媒介自己免疫及びIPF(idiopathic pulmonary fibrosis)において見られるものなどの慢性線維性炎症をも含めてさまざまな病態をもたらし得る(Wallace W et al.、Clin. Exp. Immunol. 1995; 101: 436-441及びDu Bois RM. New Engl. J Med 1999; 341: 1302-1304)。
【0281】
内皮及びVSMC抗原に対するかかるTH2応答は、臨床のMIHにおいて原因となる類似した役割を果たす。
【0282】
結核、関節リウマチなどの一部の状況においては、Th1サイトカインとTh2サイトカインの同時産生はさらなる組織損傷をもたらし得る。これに対する少なくとも1つの機序は、Th2サイトカインIL−4及びIL−5の存在下でTh1関連TNF−γの組織壊死活性が増大することである。かかる複合活性によって演じられる役割はMIHでは不確かであるが、それが起こる結核、ウシのヨーネ病などの放線菌疾患はアテローム性動脈硬化症の素因になることが知られている(Alibasoglu M et al.、Am J Vet Res. 1962 Jan; 23: 49-57)。
【0283】
炎症は、現在、アテローム硬化型血管疾患の進行と結び付けられている。プラークの自発的破裂又は血管形成術によって自然に起こる血管損傷は、治癒に有害に作用して筋内膜増殖を起こし得る炎症反応を刺激する。本発明による加熱滅菌細菌に由来する調製物は、症候性冠動脈疾患に対して経皮冠動脈インターベンションを行った患者において血管損傷に対する免疫応答を調節する。ストレスタンパク質、ある範囲のサイトカイン、コルチゾル、DHEA(de-hydro epi-androsterone)及びC反応性タンパク質に対する抗体の静脈血レベルによって測定される炎症反応は、この活性調製物を投与された対象において改変されるはずである。50人の患者のサンプルサイズは、これらのマーカーレベルの約20%の差を検出するのに十分である。
【0284】
免疫調節は炎症反応に影響を及ぼし得る。
【0285】
加熱滅菌ツカムレラ・インコネンシスの作用様式は、細菌調製物とヒト組織のそれとで共有される抗原に関係したT細胞成熟の制御因子としてであると考えられる。特に、これらは、細菌的な65及び70kDa熱ショックタンパク質とそのアミノ酸鎖長相同性の約60%を共有することが知られているミトコンドリア起源の60及び70kDaストレスタンパク質を含む。ツカムレラ・インコネンシスの調節活性は、Th2機序を抑制し、Th1機序を増強し、ストレスタンパク質の内膜発現に対する応答を変化させ、サイトカインを局所的に産生することによってVSMCの表現型を制御する。ストレスタンパク質に対して高い抗体力価を有する優勢なTh2応答によって、2型サイトカイン(IL−4、IL−5及びIL−13)が局所的に放出され、補体活性化経路によってこれらのタンパク質を発現する内膜細胞が破壊され、VSMCの表現型が迅速な複製の1つに改変される。Th1応答では、ストレスタンパク質を発現する内膜細胞は、1型サイトカイン(IL−2、IFN−α及びTNF−α)を放出するT細胞によって個々に破壊され、VSMCにおけるより低増殖性の表現型変化及び局所的組織修復を誘導すると考えられる。これらの機序のうち第1の機序はさらなる損傷及び再狭窄をもたらすのに対して、第2の機序は再狭窄を刺激せずに内膜の修復をもたらすはずである。
【0286】
Th細胞活性のかかる変化は血漿コルチゾルの減少と血漿DHEAの増加を伴い、炎症を効果的に調節するとC反応性タンパク質などが正常値に戻る。
【0287】
理論に拘泥するものではないが、血管壁中の1個の自己免疫標的はHSP(heat shock protein)70とすることができる。
【0288】
免疫療法が血管損傷後の炎症反応を改変する機序は十分には理解されていないが、かん菌と組織とで共有される抗原と一緒に、ツカムレラ・インコネンシスの特定のアジュバント活性の組合せは、免疫媒介組織損傷を抑制するものに対して免疫調節をもたらすと考えられる。血管形成術に起因する内皮傷害は、HSPに対する宿主免疫応答によって増悪し得る。ストレスタンパク質の密接に類似した形のこれらのHSPは、アテローム性動脈硬化症を含めてさまざまな免疫障害の病態発生及び病態生理に関係している、ストレスを受けた細胞によって産生される(Xu et al.、Arterioscler. Thromb. 1992; 12: 789-799)。これは、血管形成領域中の内皮及び平滑筋細胞上に存在する可能性がある。実際にはhsp/ストレスタンパク質は、免疫系によって適切な方法でその後に扱うことができる自己抗原として働く。この状況は、ウサギ及びマウスにおいて内皮損傷をもたらす交差反応性マイコバクテリアhsp(hsp65)で免疫することによって実験的に誘導することができる。この効果は、上述したように、Th2リンパ球によって分泌されるIL−4に依存すると考えられ、おそらく抗体によって媒介される。
【0289】
動物試験からのこれらの観察とヒトとの関連性は、hsp65カラムから溶出し親和性によって精製されたヒト抗体が、ストレスを受けたヒト内皮細胞をin vitroで損傷する能力によって示唆される(Schett et al.(前記))。この知見は、この抗体が、hsp65のヒト相同体であるhsp60と交差反応し、ストレスを受けた内皮細胞の膜上で発現されたときに抗体に接近することができることを示唆する。ストレスを受けた内皮細胞に結合するかかる抗体は、心臓移植後に冠動脈疾患を生成する要因であることが示唆された(Crisp et al.(前記))。Mukherjee et al.は、hsp65に対する手術前抗体レベルと冠動脈再狭窄との関連性がないことを示したが、かかる抗体レベルが血管形成術後に低下した患者はより再狭窄しにくいことを示した(Mukherjee et al.(前記))。彼らは、hsp 65に対する抗体が属するIgGサブクラスを明らかにせず、記録された低レベルはIgG4(Th1関連抗体)への転換のためであった可能性がある。実際には、血管疾患患者は抗体が増加するだけでなく、hsp/ストレスタンパク質レベル自体も増加するので、hspに対する抗体の役割は複雑になり得る(Wright et al.(前記))。したがって、抗体レベルの見掛けの低下は、タンパク質レベル又はタンパク質に結合する抗体レベルの増加を単に反映している可能性がある。さらに、hsp/ストレスタンパク質は調節効果を有し、動脈の平滑筋細胞に結合し、内在化を必要とせずにより長く残存する(Johnson et al.(前記))。
【0290】
加熱滅菌ツカムレラ・インコネンシスから調製された免疫調節試薬を用いて経皮冠動脈インターベンションを行うための患者の前処置によって、炎症プロセスが下方制御され、局所的筋内膜増殖の生成とそれに続く動脈のアテローム形成及び再狭窄が抑制される。これは、22種類の異なるサイトカインを測定するきわめて高感度の「Luminex」法を用いて、末梢血中のサイトカイン含量の変化によって確認することができる。それは、ある種のストレスタンパク質及びそれらに対する抗体のレベルの変化並びに血清コルチゾル、DHEA(dehydroepiandrosterone)及びそれらの誘導体の変化によっても検出可能である。
【0291】
待機的PCI(percutaneous coronary angioplasty)後に観察される(i)インターフェロン−γ、TNF−α、IL−6、IL−10のレベルによって測定される炎症反応、(ii)Tヘルパー細胞調節及び機能の他の尺度、(iii)循環ストレスタンパク質及びそれに対する抗体のレベル、(iv)C反応性タンパク質並びに(5)コルチゾル及びデヒドロエピアンドロステロンの血漿中濃度に対するツカムレラ・インコネンシスの加熱殺菌調製物の注射の効果を試験するために、無作為化二重盲検対照並行群試験が使用される。
【0292】
臨床的理由でPCIを必要とする患者は参加する資格がある。試験サイズは、ツカムレラ・インコネンシス又は不活性ビヒクルを用いた免疫治療に対して無作為化される50人の患者である。患者は、血管形成術の6週間前と3週間前に2回の注射を受け、処置の4週間後に3回目の注射を受ける。炎症マーカーは、最初の注射の前、処置の直前、処置の24から48時間後及び処置の6から8週間後に測定される。
【0293】
試験は2段階あり、最初の段階においては無作為化され、活性生成物又はプラセボを投与される10人の患者が前記全パラメータによる検査を受ける。第2段階では、残りの患者が、第1段階から最も適切として選択された方法によって検査される。
【0294】
最初の注射は、予定された血管形成術の6週間前に上腕又は肩部域に皮内投与され、2回目の注射はその3週間後に投与される。処置は2回目の注射から3〜5週間後に実施され、3回目及び最終の注射は、処置から4週間後に投与される。PCIは通常示されるように行われるべきであり、6〜8週間でさらに経過観察されるべきである。これは定常的な臨床の取り決めと一致すべきである。免疫学的マーカー及び炎症性マーカー用の血液試料は、ベースライン(最初の免疫治療又はプラセボ注射前)、PCI処置の直前、PCI処置後24〜48時間及びPCI処置後6〜8週間において採取されるべきである。
【0295】
血液試料採取プロトコル:静脈血試料10〜15mlは前記4回の機会の各々で収集される。これらは、定常的な血液学的試験及び生化学試験、一連の血清サイトカイン及びケモカイン評価、循環ストレスタンパク質及びそれに対する抗体のレベル測定、血漿コルチゾル及びDHEAの評価、炎症性マーカー及び血管疾患マーカーの測定並びに細胞内サイトカイン産生の分析用RNAの貯蔵のためである。
【0296】
免疫治療調製物の詳細:調製物は、M/15、ホウ酸塩緩衝(pH8)非発熱性生理食塩水(プラセボ)であり、又は同じホウ酸塩緩衝剤に10mg/mlで懸濁された好気性放線菌種ツカムレラ・インコネンシスの加熱滅菌生物の懸濁液である。
【0297】
かん菌は獣医学研究局(Veterinary Medicines Directorate)によって動物ウイルスがないと承認された)非抗原性非動物産物液体培地上で増殖させた。インキュベーションは32℃の振とう水浴中であった。かん菌は、良好な成長がインキュベーション10日後に得られたときに収集した。
【0298】
プラセボ及び細菌懸濁液は無菌2ml複数回投与用バイアル中に個々の投与量0.5±0.1ml体積で分注した。バイアルは、定期的に維持されたオートクレーブ中で効果指示薬と一緒に121℃で15分間加圧滅菌された。冷却後、バイアルを標識し、試験専用の箱中で4℃±1℃で貯蔵した。
【0299】
無作為化:これは、(離脱患者又はバイアルの故障を埋め合わせるために)コンピュータによって作成される無作為な数列、1から10及び11から60の生成による。
【0300】
バイアルの標識は、患者の試験数とそれが1回目、2回目又は3回目の注射に使用されるかどうかを示すA、B又はCとによる(投与日に対して患者の注意を持続させることができ、はがして使われる自己粘着性ラベルを各バイアルに貼付する)。プラセボ及び活性生成物のバイアルは、コンピュータが作成した無作為化スキームに従って同様に標識され、使用順に箱に保存される。
【0301】
インターベンションの投与は、左肩部から始まって交互の三角筋にわたる皮内注射による。患者に対して正確なバイアルを冷蔵庫から取り出す。シリンジに吸い取る直前にバイアルを約20秒間激しく振とうしてかん菌粒子を懸濁させる。次いで、「BDミクロファイン(BD Microfine)+0.33mm(29G)×12.7(融着)針付き1ml U−100インスリンシリンジ」に0.1mlを吸い取り、小面積の橙皮状皮膚を生じるように注意しながらすぐに投与する。全用量0.1mlを注射すべきである。
【0302】
注射後、その内容物を含む残りのバイアルを今後の検査のために冷蔵庫中の特別な箱に必要に応じて戻す。
【0303】
【0304】
インターベンション試験は血管形成術前2回とその後1回の3回実施される。最初の2回は21±3日離れているべきである。血管形成術は2回目の注射から28〜52日後とすべきであり、試験治療の3回目の注射は血管形成術から28±3日後(すなわち2回目の注射から52〜80日後)とすべきである。
【0305】
試験結果:対象となる主要な結果は、免疫調節及び急性期反応のレベルの変化を指標又は炎症として示す血清マーカーである。血液試料はさまざまなマーカーについて分析されるが、試験の主な結果基準は、ベースライン試料及びPCI直前に採取された試料と比較された追跡血液試料における2つの投与群間で検出される差の比較である。
【0306】
以下の調査を、試験の第1段階において10人の患者について実施した。
1.22個の異なるサイトカインのルミネックス(Luminex)評価。
2.血漿コルチゾル、DHEA及び代謝産物。
3.60/65kDa及び70kDa hsp/ストレスタンパク質及びそれらに対する抗体の血清レベル。
4.C反応性タンパク質レベル。
5.賛辞活性化。
6.血管疾患マーカー。
7.定常的血液学など。
8.上記試験の結果が不適当である場合には、細胞内サイトカインのPax−Geneシステム研究を実施する。
【0307】
試験の第2のより大きな段階に実施すべき調査は、以下に示すように、段階1から得られる結果から選択する。
【0308】
最初の10人の患者に対して得られた結果は、
1.血液試料1と2で差を示す患者(免疫調節効果)。
2.血液試料2と3で差を示す患者(手術手技の効果)。
3.血液試料1と4で差を示す患者(治療及び処置の長期効果)。
について研究者の各々によって分析される。
【0309】
次いで、それらの結果は患者の積極的治療又はプラセボ治療に従って分析される。これら2群間で差を示す選択調査は、試験の第2の主要な局面に適用される。
【0310】
二次的成果:一定分量の血液試料は、エンドセリン、フォンウィルブランド因子などの他の血管炎症性マーカーのありうる後日の分析のために貯蔵される。
【0311】
予備調査によれば、ツカムレラ・インコネンシスは冠動脈血管形成術後のMIHを抑制すると示唆される。
【0312】
上記明細書に述べられたすべての刊行物を参照により本明細書に援用する。本発明に記載の方法及びシステムの様々な改変形態及び変更形態が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明を具体的な好ましい実施形態と関連して説明したが、特許請求する本発明がかかる具体的実施形態に不当に限定されるべきでないことを理解すべきである。実際、生化学及びバイオテクノロジー又は関連分野の当業者に明白である本発明の記載された実施形態の様々な変形形態は、以下の特許請求の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0313】
【図1】離乳から12週間の体重増加平均値/同腹仔メス試験及び対照の結果を示すグラフである。
【図2】離乳から12週間の体重増加平均値/同腹仔オス試験及び対照の結果を示すグラフである。
【図3】ゴルドニア・ブロンチアリスが初期のTH1効果を増強することを示すグラフである。
【図4】ツカムレラ・インコネンシスが初期のTH1応答を増強し、後期のTH2応答を抑制することを示すグラフである。
【図5】ロドコッカス・コプロフィラスがTH1応答とTH2応答の両方を抑制することを示すグラフである。
【図6】非ワクチン接種対照と比較された1カ月後のBCGに対するツベルクリン応答を示すグラフである。
【図7】3種類の細菌によるBCG効果の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24及び48時間目に測定する。代表的な種は、(Na)ノカルジア・アステロイド、(Gb)ゴルドニア・ブロンチアリス及び(Tp)ツカムレラ・インコネンシスである。
【図8】2種類の細菌によるBCG/BCG+の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24、48及び72時間目に測定する。代表的な種は、(Rrh)ロドコッカス・ルホドクラウス及び(Dm)ダイエツィア・マリスである。
【図9】ロドコッカス属内の選択された種によるBCG効果の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24、48及び72時間目に測定する。(Rrh)ロドコッカス・ルホドクラウス、(Rru)ロドコッカス・ルベル、(Rrhod)ロドコッカス・ロドニイ、(Rcop)ロドコッカス・コプロフィラス、(Ropa)ロドコッカス・オパカス、(Reryth)ロドコッカス・エリトポレス。
【図10】ロドコッカス・ルベルの108から104の対数希釈で改変されたBCGを用いたロドコッカス・ルベルの最適用量をBCG単独と比較して示すグラフである。
【図11】未処理対照及びマイコバクテリアワクチンで処理された対照と比較された、ゴルドニア・ブロンチアリス、ロドコッカス・コルプロフィラス(Rhodococcus corprophilus)又はツカムレラ・インコネンシスで処理後の平均ラット体重増加を示すラット血管形成術試験からのグラフである。
【図12】未処理対照及びマイコバクテリアワクチンで処理された対照と比較された、ゴルドニア・ブロンチアリス、ロドコッカス・コルプロフィラス又はツカムレラ・インコネンシスで処理後のラットにおける内膜/中膜厚さ比の結果を示すグラフである。GP1=対照、GP2=ゴルドニア・ブロンチアリス、GP3=ロドコッカス・コプロフィラス、GP4=ツカムレラ・インコネンシス、GP5=マイコバクテリアワクチン)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節物質、特に細胞免疫応答を調節するワクチン及びその使用に関する。本発明は、ある種の血管障害を含めて自己免疫疾患又は自己免疫異常の治療及び/又は予防用医薬品の製造における免疫調節物質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、体を防御し、細菌、ウイルス及び他の侵入異物に起因する感染を排除するのに通常働く細胞及び細胞成分(分子)の複雑なネットワークである。人が自己免疫疾患を有する場合、免疫系は誤って自己を攻撃し、人自身の体の細胞、組織及び器官を標的にする。標的部位における免疫系細胞及び分子の集合は、大まかに炎症と称することができる。
【0003】
多数の異なる自己免疫疾患があり、それらは各々異なる方法で体に影響を及ぼし得る。自己免疫疾患の多くはまれなものである。しかし、グループとすると、自己免疫疾患は数百万人が罹患している。
【0004】
一部の自己免疫疾患は、ウイルス感染、寄生虫感染、慢性細菌感染などのある誘因によって開始又は悪化することが知られている。それほど理解されていない他の作用が免疫系に影響を及ぼし、自己免疫疾患の過程は加齢、慢性ストレス、ホルモン及び妊娠を含む。
【0005】
自己免疫疾患は慢性であることが多く、人が健康に見える又は感じることができるときでも生涯にわたる注意及び監視が必要である。現在、ほとんどの自己免疫疾患は治療によって治癒又は寛解することができない。
【0006】
医師は、ほとんどの場合、自己免疫疾患に起因する炎症の結果を患者が管理する助けとなる。一部の人においては、限定された数の免疫抑制薬物療法が疾患の寛解をもたらすことがある。しかし、彼らの疾患が寛解した場合でも、患者は薬物療法を中止できることはまれである。免疫抑制薬物療法の長期副作用はかなりのものになり得る。
【0007】
血管損傷の開始及び進行は複雑でさまざまな原因によって起こるプロセスであるが、炎症反応が重要な役割を果たしている証拠が増えている。血管損傷は、アテローム性動脈硬化症の発症及び心筋梗塞、発作、末梢動脈閉塞などの急性虚血性症候群をもたらす血栓プロセスに関与する
【0008】
免疫機構は、アテローム性動脈硬化症及びMIH(myointimal hyperplasia)の発症及び維持に重要となり得る。
【0009】
MIHは、バルーン血管形成術などの傷害に対する過度の治癒応答とみなすことができる。一連の事象は、基底膜の損失、VSMC(vascular smooth muscle cell)の中膜から内膜への移動、VSMCの増殖及びより分泌性である線維芽細胞型への表現型の変化並びに細胞外基質の生成増加をもたらし、血管の狭窄又は閉塞を最終的にもたらす。これはバイパス移植及びバルーン血管形成術後に起こり、臨床実務におけるかかる症例の約30%に影響を及ぼす。これはかかる手順の失敗の主原因であり、生じた狭窄及び閉塞血管/移植片の治療は問題となる。MIHをもたらす基本的な細胞機序は十分に理解されておらず、それを有効に防止することができる療法は現在まで開発されていない。本特許の臨床的な妥当性は、英国及び世界中で毎年実施されるきわめて多数の冠動脈血管形成術に関係する。薬物を溶出するステントは有望な結果を現在生み出しているが、それが再狭窄を完全に防止しそうにはない。本特許に提案される免疫療法などの安全で比較的安価な補助的治療は、臨床的に重大な影響を有する。
【0010】
再狭窄に対する免疫療法に関わるこれらの機序は複雑であり、完全には解明されていない。血管形成術に起因する内皮傷害は、hspに対する宿主免疫応答によって増悪し得る。Hspは、アテローム性動脈硬化症を含めてさまざまな免疫障害の病態発生及び病態生理に結び付けられるストレスを受けた細胞によって産生されるタンパク質である(Xu Q et al.、Arterioscler Thromb 1992; 12: 789-799)。これは、血管形成領域中の内皮及び平滑筋細胞上に存在する可能性がある。事実上、hspは、免疫系によってその後攻撃され得る自己抗原として働く。この状況は、ウサギ及びマウスにおいて内皮損傷をもたらす交差反応性マイコバクテリアhsp(hsp65)で免疫化することによって実験的に引き起こすことができる(Xu Q et al.、Arterioscler Thromb 1992; 12: 789-799及びGeorge J et al.、Circ. Res. 2000; 86: 1203-1210)。この効果は、Th2リンパ球によって分泌されるIL−4に依存すると考えられ、抗体によっておそらく媒介されるGeorge J et al.、Circ. Res. 2000; 86: 1203-1210及びSchett G et al.、J Clin. Invest. 1995; 96: 2569-2577)。これらの観察とヒトとの関連性は、hsp65カラムから溶出し親和性によって精製されたヒト抗体が、ストレスを受けたヒト内皮細胞をin vitroで損傷する能力によって示唆される。この知見は、この抗体が、hsp65のヒト相同体であるhsp60と交差反応し、ストレスを受けた内皮細胞の膜上で発現されたときに抗体に接近することができることを示唆する。ストレスを受けた内皮細胞に結合したかかる抗体が、心臓移植後の冠動脈疾患を発生させる要因であることが示唆された(Crisp SJ et al.、J Heart Lung Transplant 1994; 81-91)。Mukherjee et al.(Thromb Haemost 1996; 75: 258-60)は、手術前のhsp65に対する抗体のレベルと冠動脈再狭窄との関連性がないことを示したが、血管形成術後にかかる抗体レベルが低下した患者はより再狭窄しにくいことを示した。実際には、血管疾患患者は抗体が増加するだけでなく、hspレベル自体も増加するので、hspに対する抗体の役割は複雑になり得る(Wright BH et al.、Heart Vessels 2000; 15: 18-22)。したがって、抗体レベルの見掛けの低下は、単にこのタンパク質レベルの増加を示しているに過ぎない恐れがある。さらに、hspは調節効果を有し、動脈の平滑筋細胞に結合し、内在化を必要とせずにより長く残存する(Johnson AD et al.、Atherosclerosis 1990; 84: 111-119)。
【非特許文献1】Xu Q et al.、Arterioscler Thromb 1992; 12: 789-799
【非特許文献2】George J et al.、Circ. Res. 2000; 86: 1203-1210
【非特許文献3】Schett G et al.、J Clin. Invest. 1995; 96: 2569-2577)
【非特許文献4】Crisp SJ et al.、J Heart Lung Transplant 1994; 81-91)
【非特許文献5】Mukherjee et al.(Thromb Haemost 1996; 75: 258-60)
【非特許文献6】Wright BH et al.、Heart Vessels 2000; 15: 18-22)
【非特許文献7】Johnson AD et al.、Atherosclerosis 1990; 84: 111-119)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、対象に投与された放線菌類ロドコッカス(Rhodococcus)属、ゴルドニア(Gordonia)属、ノカルジア(Nocardia)属、ダイエツィア(Dietzia)属、ツカムレラ(Tsukamurella)属及びノカルジオイデス(Nocardioides)属のいずれか1種の属に属する細菌の全細胞が、その対象の免疫系、特に細胞免疫系の改変を誘発することができ、自己免疫疾患又は自己免疫異常、特に例えば血管内膜の炎症を含むものに対する防止及び/又は治療効果をもたらすという予想外の発見に基づく。
【0012】
自己免疫疾患及び自己免疫異常、特に例えば血管内膜の炎症を含むものを有効に治療及び/又は予防するために、放線菌類ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属のいずれか1種の属に属する細菌の全細胞を含む組成物を使用する利点は、この治療及び/又は予防が、常法に従って現在使用されている化学療法、すなわち免疫抑制薬物療法よりも長期副作用を抑えつつ実施されるということであろう。
【0013】
本明細書では「細胞免疫系」という句は、Tリンパ球の存在に依存する細胞性免疫応答を含む。「Tリンパ球」という用語は、細胞傷害性Tリンパ球、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞及び調節性T細胞を含む。例えば自己免疫疾患又は異常を含めた細胞性免疫不全を例えば克服するために細胞性免疫応答の改変を使用することができる。
【0014】
本明細書では「調節する(modulate)」、「改変する(modify)」、「改変(modification)」という用語及び他のその派生語は、細胞免疫系の成分を下方制御、阻害、誘導、刺激、上方制御、変更し、又はそれに影響を及ぼすことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、さらに、自己免疫疾患又は自己免疫異常を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用を提供する。
【0016】
適切には、自己免疫疾患又は自己免疫異常は、対象自身の免疫系が対象組織の1個又は複数に損傷を与える型のものである。適切には、自己免疫応答は、対象内の何か又は対象の環境内の何かによって引き起こされることがある。
【0017】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、誘因後のものであり得る。例えば、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、感染及び/又は他のある誘因に起因するものであり得る。潜在的誘因は、例として、老齢、感染(例えば寄生虫感染)、ステロイド治療、ミョウバンを用いたワクチン接種の繰り返し、妊娠及び/又は癌であり得る。
【0018】
本発明は、さらに、自己免疫疾患を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用であって、自己免疫疾患又は自己免疫異常が血管内膜の炎症を含む、使用を提供する。
【0019】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、血管内膜の炎症を含むと同様に、血管筋層又は心筋の炎症を含む。
【0020】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、血管障害が先行するもの又は血管障害に起因するものであり得る。
【0021】
本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、関節炎、特に関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節症、強皮症、甲状腺炎、移植後の内膜増殖、移植片拒絶及び血管障害の1つ又は複数であり得る。
【0022】
適切には、本発明による血管障害は、自己免疫エレメント、例えば自己免疫応答に起因するものを含む任意の血管疾患又は異常を含むことができる。
【0023】
適切には、本発明による血管障害は、レイノー病又はレイノー現象、前部ブドウ膜炎、閉塞性血管障害、(動脈硬化症としても知られる)アテローム形成、動脈炎、(自然又は血管形成術後の)筋内膜増殖、血管の内膜及び/又は筋層の炎症性及び自己免疫性肥厚、炎症性血管病変、アテローム硬化性心疾患、再潅流傷害、心臓伝導障害、心筋炎、心筋梗塞の1つ又は複数を含むことができる。
【0024】
適切には、本発明による移植片拒絶は、特に免疫抑制薬の非存在下での慢性移植片拒絶とすることができる。したがって、本発明による組成物は、移植前、移植中及び/又は移植後に投与される従来の免疫抑制薬の代用品として使用することができる。本発明による組成物は、角膜、骨髄、器官(例えば、腎臓、肝臓)、水晶体、ペースメーカー、天然又は人工皮膚組織、島細胞の1つ又は複数などの天然又は人工細胞、組織及び器官を移植するときに使用することができる。
【0025】
本発明は、さらに、血液障害を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用を提供する。
【0026】
本発明は、さらに、関節炎、特に関節リウマチを治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用を提供する。
【0027】
本発明は、さらに、移植片拒絶を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用を提供する。
【0028】
さらに別の態様においては、本発明は、さらに、乾癬を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用を提供する。
【0029】
本明細書では「免疫調節物質」という用語は、対象の細胞免疫系を調節する物質を意味する。
【0030】
本明細書では「全細胞」という用語は、完全な細菌又は実質的に完全な細菌を意味する。特に、本明細書では「完全な」という用語は、全細胞、特に生細胞全体に存在する成分のすべてを含む細菌及び/又はそれから1個若しくは複数の成分を除去するために特に処理されていない細菌を意味する。本明細書では「実質的に完全」という用語は、細菌を得るのに使用される単離及び/又は精製プロセスが、例えば、細胞にわずかな改変をもたらし、且つ/又は細胞の1個若しくは複数の成分を除去し得るが、かかる改変及び/又は除去が起こる程度が重要でないことを意味する。特に、本発明による実質的に完全な細胞は、それから1個又は複数の成分を除去するために特に処理されていない。
【0031】
細菌細胞の個々の成分はアジュバント効果を誘発するために使用できることが示唆されるが、本発明によるロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞の使用は本発明の前に企図されなかった。驚くべきことに、前記属に属する細菌の全細胞を使用することによって、自己免疫疾患又は自己免疫異常の治療及び/又は予防を実施できるということが見出された。前記細菌の前記全細胞の投与に起因する細胞免疫応答の改変は、細菌の個々の成分の投与によって誘発される応答よりも有利には長時間持続することができる。
【0032】
好ましくは、本発明による組成物は、1個を超える全細胞を含み、より好ましくは複数の全細胞を含む。
【0033】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物は抗原及びアジュバントを含むことができ、前記アジュバントは、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞を含む。前記抗原は、これらの属によって、他の微生物及び真核生物細胞、例えば脊椎動物細胞のミトコンドリアと共有されるものとすることができる。
【0034】
別の態様においては、免疫調節物質組成物は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞を含む薬剤組成物であって、薬剤として許容される担体、希釈剤又は賦形剤を場合によっては含んでいてもよい薬剤組成物とすることができ、使用される前記免疫調節物質組成物は細胞免疫応答を改変する。
【0035】
さらに別の態様においては、免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞と、例えばインターロイキン2などの少なくとも1種の追加のサイトカインとを含むことができる。サイトカインは、本発明の免疫調節作用を強化するのに役立ち得る。
【0036】
適切には、抗原又は抗原決定基は、(英国特許第0025694.1号に教示される)BCG(bacillus of Calmette and Guerin)ワクチン、ジフテリアトキソイドワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(DTP又は三種混合)ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風トキソイドワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、経口ポリオワクチン(OPV(oral poliomyelitis vaccine))及びマイコバクテリアワクチン(Mycobacterium vaccae)又はその一部の1又は2以上からの抗原又は抗原決定基とすることができる。このリストは決して限定的なものではなく、他の出所に由来する適切な抗原を本発明による組成物に添加することができる。これらの抗原に対する応答も、本発明による組成物の投与に起因して誘導された応答調節の恩恵を受けることができる。他の適切な抗原は、本発明による調節物質組成物中に天然に存在しない他のウイルス、腫よう、寄生生物又は他の細菌に由来する抗原とすることができる。
【0037】
適切には、免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物は、2個以上のかかる抗原又は抗原決定基を含むことができる。
【0038】
さらに別の態様においては、本発明によるロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物はワクチン中で使用することができ、又はワクチンとして使用することができる。
【0039】
適切には、ワクチンは予防ワクチン又は治療ワクチンとすることができる。
【0040】
さらに別の態様においては、本発明は、自己免疫疾患又は自己免疫異常の治療又は予防に使用されるロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物を提供する。
【0041】
一態様においては、本発明による細菌の全細胞は、Th2応答を下方制御することができる。
【0042】
別の態様においては、本発明による細菌の全細胞は、Th1応答を上方制御することができる。
【0043】
適切には、本発明による細菌の全細胞は、Th2応答を下方制御しTh1応答を上方制御することができる。
【0044】
或いは、本発明による細菌の全細胞は、Th2応答に影響を及ぼさずにTh1応答を上方制御することができる。
【0045】
或いは、本発明による細菌の全細胞は、Th2応答を下方制御し、Th1応答も下方制御することができる。
【0046】
或いは、本発明による細菌の全細胞は、Th2応答を上方制御し、Th1応答も上方制御することができる。
【0047】
別の態様においては、本発明は、自己免疫疾患又は自己免疫異常を治療又は予防する方法であって、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物の有効量を対象に投与するステップを含み、前記組成物が細胞免疫応答を調節する、方法を提供する。
【0048】
適切には、有効量の薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物を単回投与することができる。或いは、有効量の薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物を複数回(繰り返し)、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、10回以上又は20回以上繰り返し投与することができる。
【0049】
特に、かかる繰り返し投与は、例えば定着した慢性症状の治療に必要とされることがある。
【0050】
本発明のさらに別の態様においては、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞を含む薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物を投与することを含む、自己免疫疾患又は自己免疫異常に対して免疫を含めて対象を防御する方法が提供される。
【0051】
本明細書では「防御された」という用語は、本発明による組成物を用いた治療を受けていない対象又は本発明による組成物を投与されていない対象よりも、対象が疾患/障害に罹患し難いこと、及び/或いは本発明による組成物を用いた治療を受けていない対象又は本発明による組成物を投与されていない対象よりも、対象が疾患/障害に対抗する又は疾患/障害を克服することができることを意味する。
【0052】
別の態様においては、本発明は、本発明による薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物の有効量を対象に投与するステップであって、前記組成物が抗原又は抗原決定基と同時投与されるステップを提供する。
【0053】
本組成物が本発明によって抗原又は抗原決定基と同時投与されるときには、抗原又は抗原決定基は、適切には、(英国特許第0025694.1号に教示される)BCGワクチン、ジフテリアトキソイドワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(DTP又は三種混合)ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風トキソイドワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、経口ポリオワクチン(OPV)及びマイコバクテリアワクチン又はその一部の1個若しくは複数からの抗原又は抗原決定基とすることができる。適切には、かかる抗原又は抗原決定基の2個以上又は3個以上を本発明による薬剤組成物又は免疫調節物質組成物と同時投与することができる。
【0054】
好ましくは、本発明による医薬品は、自己免疫疾患又は自己免疫異常の治療又は予防に使用される。
【0055】
本発明のさらに別の態様においては、本発明による薬剤組成物又は免疫調節物質組成物は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1種を超える属に属する細菌を含むことができる。適切には、本組成物は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属のいずれか1種に属する2個以上又は3個以上の細菌を含ロドコッカスむことができる。
【0056】
好ましくは、本発明に従って使用される細菌は、例えばゴルドニア・ブロンチアリス(Gordonia bronchialis)、ゴルドニア・アマレア(G. amarae)、ゴルドニア・スプチ(G. sputi)、ゴルドニア・テレア(G. terrae)、ノカルジア・アステロイド(Nocardia asteroides)、ダイエツィア・マリス(Dietzia maris)、ツカムレラ・パウロメタボラ(Tsukamurella paurometabola)、ロドコッカス・ルベル(Rhodococcus ruber)、ロドコッカス・ロドニイ(Rhodococcus rhodnii)、ロドコッカス・コプロフィラス(R. coprophilus)、ノカルジオイデス・アルバス(Nocardioides albus)、ツカムレラ・インコネンシス(Tsukamurella inchonensis)などのこれらの属のいずれかに属する任意の種を含めて、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する。適切には、特定の各属から使用される種は、低抗原性培地、好ましくは非抗原性培地である培地上で増殖することができるものである。単なる例として、適切な非抗原性培地はソートン培地である。
【0057】
適切には、本発明に従って使用される細菌は、(以前はノカルジア・ルブラ(Nocardia rubra)として知られた)ロドコッカス・ルベル、ロドコッカス・ルホドクラウス(Rhodococcus rhodocrous)、ロドコッカス・ロドニイ、ロドコッカス・コプロフィラス、ロドコッカス・オパカス(Rhodococcus opacus)、ロドコッカス・エリトポレス(Rhodococcus erythopolis)を含めて、ロドコッカス属に属することができる。
【0058】
適切には、本発明に従って使用される細菌はロドコッカス・ルベルとすることができる。
【0059】
好ましくは、本発明による細菌は使用前に死滅させる。適切には、本発明による細菌は、その熱処理、例えば、オートクレーブ中121℃で15分間の熱処理によって死滅させることができる。
【0060】
他の適切な滅菌処理としては、紫外若しくは電離放射線、フェノール、アルコール、ホルマリンなどの化学物質による処理などが挙げられる。
【0061】
適切には、本発明による細菌は精製及び/又は単離することができる。
【0062】
適切には、本発明による細菌は、水又は緩衝食塩水、適切にはpH8で緩衝されたボラート中に懸濁することができる。
【0063】
本明細書では「対象」という用語は動物を意味する。適切には、対象は、トリ、(例えばエビなどの)甲殻類、魚及び哺乳動物を含む、例えば、任意の動物とすることができる。好ましくは、対象は、例えば家畜及びヒトを含めて、哺乳動物である。本発明の一部の態様においては、対象は適切にはヒトとすることができる。
【0064】
薬剤組成物又は免疫調節物質組成物を(1回を超える投与がなされる場合には初めて)家畜に投与するときには、家畜が初めて授乳した後に投与することが好ましい。特に、一部の適用例では、(1回を超える投与がある場合には)初回又は1回のみの薬剤組成物又は免疫調節物質組成物を投与する前に親の初乳を乳児に摂取及び/又は消化させることが重要なことがある。不確かさを回避するために、一部の適用例では、薬剤組成物又は免疫調節物質組成物の最初の投与は、生後約1〜4日目、好ましくは生後1〜3日目、より好ましくは生後1〜2日目、好ましくは生後2〜3日目で行うべきである。次の投与は、最初の注射から7日後及び/又は8〜12週後に行うことができる。
【0065】
本明細書では「免疫調節物質」という用語はワクチンを含む。
【0066】
細菌は放線菌目(Actinomycetales)に属する細菌であることが好ましい。しかし、細菌はマイコバクテリアワクチンではないことが好ましい。一実施形態においては、細菌はマイコバクテリア属に由来しないことが好ましい。
【0067】
治療用途
本発明の免疫調節物質は治療に使用することができる。特にかかる化合物は、in vivoでのTリンパ球応答を調節するために使用することができ、且つ/又はin vivoでの免疫応答に関与する他の細胞を調節するために使用することができる。
【0068】
T細胞増殖及び/又は分化及び/又は活性を調節、特に遮断することができる免疫調節物質/薬剤組成物は、適応免疫応答、すなわち細胞免疫応答の調節によって予防又は治療に感受性が高いあらゆる障害に対して使用することができる。
【0069】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、対象自身の免疫系が対象組織の1つ又は複数に損傷を与える型のものである。適切には、自己免疫応答は、対象内の何か又は対象の環境内の何かによって引き起こされることがある。
【0070】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は誘因後のものであり得る。例えば、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、感染及び/又は他のある誘因に起因するものであり得る。潜在的誘因は、例として、老齢、感染(例えば寄生虫感染)、ステロイド治療、アラムを用いたワクチン接種の繰り返し、妊娠及び/又は癌であり得る。
【0071】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、血管内膜の炎症を含むものとすることができる。
【0072】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、血管内膜の炎症を含むと共に、血管筋層又は心筋の炎症を含む。
【0073】
適切には、本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、血管障害が先行するもの又は血管障害に起因するものであり得る。
【0074】
本発明による自己免疫疾患又は自己免疫異常は、関節炎、特に関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節症、強皮症、甲状腺炎、移植後の内膜増殖、移植片拒絶及び血管障害の1つ又は複数とすることができる。
【0075】
適切には、本発明による血管障害は、自己免疫エレメント、例えば自己免疫応答に起因するものを含む任意の血管疾患又は異常を含むことができる。
【0076】
適切には、本発明による血管障害は、レイノー病及びレイノー現象、前部ブドウ膜炎、閉塞性血管障害、(動脈硬化症としても知られる)アテローム形成、動脈炎、(自然又は血管形成術後の)筋内膜増殖、血管の内膜及び/又は筋層の炎症性及び自己免疫性肥厚、炎症性血管病変、アテローム硬化性心疾患、再潅流傷害、心臓伝導障害、心筋炎、心筋梗塞の1つ又は複数を含むことができる。
【0077】
適切には、本発明による移植片拒絶は、特に免疫抑制薬の非存在下での慢性移植片拒絶とすることができる。したがって、本発明による組成物は、移植前、移植中及び/又は移植後に投与される従来の免疫抑制薬の代用品として使用することができる。本発明による組成物は、角膜、骨髄、器官(例えば、腎臓、肝臓)、水晶体、ペースメーカー、天然又は人工皮膚組織、島細胞の1つ又は複数などの天然又は人工の細胞、組織及び器官を移植するときに使用することができる。
【0078】
Tヘルパー細胞
本明細書では「Th1」という用語は、1型Tヘルパー細胞(Th1)を指す。この用語は、かかる細胞型によって媒介される応答又はかかる細胞型を介した応答を指すのに本明細書では使用することもできる。かかる応答は、インターロイキン−2(IL−2)の分泌、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)の分泌、マクロファージの活性化、細胞傷害性T細胞の活性化又は任意の他のTh1関連事象の1つ若しくは複数を含むことができる。したがって、「Th1」という用語は、Th1細胞及びかかる細胞が生成する免疫応答を含むことができる。
【0079】
本明細書では「Th2」という用語は、2型Tヘルパー細胞(Th1)を指す。この用語は、かかる細胞型によって媒介される応答又はかかる細胞型を介した応答を指すのに本明細書では使用することもできる。かかる応答は、インターロイキン−4(IL−4)の分泌、スプライスバリアントインターロイキンIL−4δ2の分泌、インターロイキン−5(IL−5)の分泌、リンパ球上の細胞決定因子30(CD30)レベルの増加、血中又は血液の好酸球中の免疫グロブリン−E(IgE)レベルの増加又は任意の他のTh2関連事象の1つ若しくは複数を含むことができる。したがって、「Th2」という用語は、Th2細胞及びかかる細胞が生成する免疫応答を含むことができる。
【0080】
さまざまな条件は、特にTh1及び/又はTh2の活性化及び/又は増殖において、制御されていない細胞免疫応答又は不適当に調節された細胞免疫応答をもたらし、或いはそれらの細胞免疫応答に起因し得ることが知られている。これは、調節されていない場合又は不適当に調節されたままにされた場合、対象に対して1つ又は複数の有害な効果をもたらすことが見出された。
【0081】
調節されていない又は不適当に調節された細胞免疫応答は、例えば動脈硬化症などの炎症性血管疾患、血管形成術後の筋内膜増殖、前部ブドウ膜炎などの自己免疫異常において、また、移植/拒絶中にも認められる。さらなる例として、Stansby et al.、Eur J Vasc Endovasc Surg 2002; 23: 23-28は、抗体応答を調節するマイコバクテリア調製物による治療によって、ラット血管形成モデルにおいて血管疾患、すなわち再狭窄が減少するという仮説を検定した。ヒトにおける使用に適切なマイコバクテリア材料による免疫調節はMIHを抑制できることが判明した。かかる調節は低リスクなので、これは、再狭窄と闘う重要な新しい治療様式の見通しを開くものである。
【0082】
したがって、本発明の一目的は、調節されていない又は不適当に調節された細胞免疫応答のマイナス効果を克服するように、Th1及び/又はTh2の制御又は調節を含めて細胞免疫応答の制御を促進し確立することである。
【0083】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の使用によって、Th1又はTh2応答、すなわち例えば組織損傷をもたらすTh1又はTh2応答が制御される。
【0084】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の使用によって、Th1応答を減少させ、Th2応答を減少させることができる。
【0085】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の使用によって、Th2応答に影響を及ぼさずにTh1応答を増大させることができる。
【0086】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の使用によって、Th1応答を増大させ、Th2応答を減少させることができる。
【0087】
適切には、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の使用によって、Th1応答を増大させ、Th2応答を増大させることができる。
【0088】
適切には、当業者は、本発明による各属の特定の種を試験して、その特定のTh1/Th2応答を測定することができる。
【0089】
調節されていない又は不適当に調節された免疫応答は、一部の疾患がTh1及び/又はTh2応答を変化させるという事実或いはTh1及び/又はTh2応答の変化の結果であるという事実のために、疾患の確立においてある役割を果たす。これらの非定型Th1及びTh2反応に付随するのは、組織病理の根底にある機序に関与し得る一連の異常な炎症反応である。
【0090】
単なる例として、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物は自己免疫疾患又は自己免疫異常に対抗することができる。
【0091】
ワクチン
1個又は複数の物質を活性成分として含有するワクチンの調製は当業者に公知である。一般に、かかるワクチンは溶液又は懸濁液として、注射剤として調製される。注射前に溶液又は懸濁液にするのに適切な固体剤形を調製することもできる。調製物は乳化することもでき、リポソームに封入された活性成分とすることもできる。活性成分は、薬剤として許容され該活性成分と適合性である賦形剤と混合されることが多い。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなど及びこれらの組合せである。或いは、ワクチンは、例えば、経口摂取されるように、且つ/又は吸入可能なように調製することができる。
【0092】
また、必要に応じて、ワクチンは、少量の湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤などの補助的物質を含有することができる。
【0093】
投与
一般に、医師は、個々の対象に最も適切であるワクチン、免疫調節物質組成物及び薬剤組成物の実際の投与量を決定する。それは、個々の患者の年齢、体重及び応答に応じて変わる。以下の投与量は平均的な症例の例示である。高い又は低い投与量範囲が有利である個々の場合があり得るのは言うまでもない。
【0094】
使用する実際の投与量は、対象に対する毒性が最小限に抑えられることが好ましい。
【0095】
本発明の組成物は、直接注射によって投与することができる。本組成物は、非経口、粘膜、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、皮内又は経皮投与用に処方することができる。
【0096】
適切には、本発明による組成物は、生物1ナノグラムから100ミリグラム、好ましくは生物10ナノグラムから10ミリグラム、より好ましくは生物100ナノグラムから5ミリグラム、さらにより好ましくは生物100ナノグラムから1ミリグラムの用量で投与することができる。一般に、本発明による組成物は、ヒト及び動物用に細菌100マイクログラムから1ミリグラムの用量で投与することができる。
【0097】
本発明の組成物を免疫増強剤として投与する場合には、ヒト及び動物用に生物1ナノグラムから100ミリグラム/回、好ましくは生物10ナノグラムから10ミリグラム/回、より好ましくは生物100ナノグラムから5ミリグラム/回、さらにより好ましくは生物100ナノグラムから1ミリグラム/回、さらにより好ましくは、細菌100マイクログラムから1ミリグラム/回を規則的な間隔で投与することができる。
【0098】
当業者には容易に理解されるように、投与量は、その用量が投与される生物によって決まる。
【0099】
「投与する」という用語は、注射、脂質によって媒介される形質移入、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、CFA(cationic facial amphiphile)及びそれらの組合せ、さらにはウイルスの送達を含めた送達機序による送達を含む。かかる送達機序の経路としては、粘膜、鼻、口、非経口、胃腸、局所又は舌下経路などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0100】
「投与する」という用語は、例えば、吸入用点鼻薬若しくはエアゾール剤として粘膜経路による送達、又は摂取溶液、カプセル剤若しくは錠剤としての送達、送達が例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下経路などの注射用剤形による親経路を含むが、これらだけに限定されない。
【0101】
「同時投与する」という用語は、本発明のアジュバント、抗原及び/又は抗原決定基の各々の投与部位及び時間が、免疫系の必要な調節が達成されるようなものであることを意味する。したがって、抗原とアジュバントは同時に同じ部位に投与することができるが、アジュバントとは異なる時間で異なる部位に抗原及び/又は抗原決定基を投与することが有利なこともある。抗原及び/又は抗原決定基とアジュバントは同じ送達ビヒクルで送達することさえできる。抗原及び/又は抗原決定基とアジュバントは結合及び/又は非結合とすることができ、且つ/或いは遺伝子的に結合及び/又は非結合とすることができる。単なる例として、本発明による免疫調節物質組成物は、1又は2以上の抗原又はさらに別の抗原の投与前、投与と同時に又は投与後に投与することができる。
【0102】
抗原、抗原決定基、ペプチド若しくは相同体又はそれらの模倣体は、単回投与又は複数回投与で宿主対象に別個にでも同時にでも投与することができる。
【0103】
本発明の免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物は、(非経口、皮下、皮内及び筋肉内注射を含む)注射、鼻腔内、粘膜、経口、膣内、尿道、眼球投与などいくつかの異なる経路によって投与することができる。
【0104】
本発明においては、投与は注射によることが好ましい。注射は皮内であることがより好ましい。
【0105】
本発明においては、投与は、経口的に許容される組成物によることが好ましい。
【0106】
ワクチン接種の場合には、本組成物は、水溶液、好ましくは緩衝生理食塩水0.1から0.2mlで提供することができ、非経口的に、例えば皮内接種によって投与する。本発明によるワクチンは好ましくは皮内注射する。軽度の膨潤及び発赤、時折かゆみも注射部位において見られることがある。投与方法、用量及び投与回数は、当業者が公知の方法で最適化することができる。
【0107】
抗原
本明細書では「抗原」は、免疫適格性宿主に導入されたときに、実体と組み合わせることができる特異抗体又は抗体の産生を変える実体並びに/或いはTh2及び/又はTh1などの関連するTh応答を変える実体を意味する。抗原は、(細胞、細胞断片、細胞超音波処理物を含めて)純粋な物質、物質の混合物、可溶性材料又は粒子材料とすることができる。この意味で、この用語は、任意の適切な抗原決定基、交差反応抗原、同種抗原、異種抗原、寛容原、アレルゲン、ハプテン及び免疫原又はそれらの一部並びにそれらの任意の組合せを含み、これらの用語は本明細書を通して区別なく使用される。
【0108】
本明細書では「抗原決定基又はエピトープ」という用語は、抗体若しくはT細胞受容体によって認識される抗原上の部位又はTヘルパー細胞応答を惹起する原因である抗原上の部位を指す。これは、タンパク質抗原に由来する短いペプチド又はタンパク質抗原の一部としての短いペプチドであることが好ましい。しかし、この用語は、糖ペプチド及び炭水化物エピトープも含むものとする。この用語は、生物全体を認識する応答を刺激するアミノ酸の改変配列又は炭水化物も含む。
【0109】
「防止」又は「予防」ワクチンは、投薬を受けたことがない個体に投与して、防御免疫を刺激することなどによって発症を防止するワクチンである。
【0110】
「治療」ワクチンは、既存の症状を有する個体に投与されて症状を軽減し、又は最小限に抑え、或いは症状の免疫病理学的結果を抑止するワクチンである。
【0111】
アジュバント
本明細書では「アジュバント」という用語は、免疫応答の影響を増大させることができる実体又はそれに関与することができる実体を意味する。アジュバントは、抗原に対する免疫応答を助け、増大させ、下方制御し、改変し、又は多様化する任意の物質又は物質の混合物である。
【0112】
本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物は、免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物の有効性を高める1個又は複数のアジュバントを含むことができる。有効であり得る追加のアジュバントの例としては、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水型乳濁液、水中油型乳濁液、ムラミルジペプチド、菌体内毒素、脂質X、コリネバクトリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)(プロピオノバクテリウム・アクネス(Propionobacterium acnes))、百日咳菌(Bordetella pertussis)、マイコバクテリアワクチン、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、インターロイキン2、インターロイキン12などのインターロイキン、サポニン、リポソーム、レバミソール、DEAE−デキストラン、ブロックドコポリマー又は他の合成アジュバントが挙げられるが、これらだけに限定されない。かかるアジュバントは、さまざまな供給源から商業的に入手可能であり、例えば、Merck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.)又はフロイント不完全アジュバント及び完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, Michigan)である。ヒト用には水酸化アルミニウムのみが認可されている。例えばマイコバクテリアワクチンなどの他のアジュバントの一部は、臨床試験が認可された。
【0113】
適切には、アジュバントは、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属のいずれか1種に属する細菌の全細胞とすることができる。
【0114】
当技術分野では、金粒子に結合した本質的にDNA配列であり、ヘリウム銃によって皮膚中に発射されるDNAワクチンは、効率的なワクチン送達システムであることが知られている。従来のワクチンとは異なり、これらのDNAワクチンは在来のアジュバント成分を必要としない。本発明の別の態様によれば、本明細書の免疫調節物質組成物は、適切には、かかるDNAワクチンと併用して、免疫応答の影響を増大させ、又はそれに関与することができる。
【0115】
薬剤組成物
本発明は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の全細胞の治療有効量を含む薬剤組成物であって、薬剤として許容される担体、希釈剤又は賦形剤を(それらの組合せを含めて)場合によっては含んでいてもよい薬剤組成物にも関する。
【0116】
本薬剤組成物は、第1の成分が抗原を含み、第2の成分がそのアジュバントを含む2種類の成分を含むことができる。第1の成分と第2の成分は、連続して、同時又は一緒に、さらには異なる投与経路によって送達することができる。
【0117】
本薬剤組成物は、ヒトの医学及び獣医学においてヒト又は動物に使用することができ、一般に、薬剤として許容される希釈剤、担体又は賦形剤のいずれかの1又は2以上を含む。治療用に許容される担体又は希釈剤は、薬剤技術においては周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。薬剤担体、賦形剤又は希釈剤は、意図する投与経路及び製薬上の標準的実務に照らして選択することができる。
【0118】
薬剤組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として又はそれらに加えて、任意の適切なバインダー、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤を含むことができる。
【0119】
防腐剤、安定剤、色素、さらには香味料も薬剤組成物中に入れることができる。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられる。酸化防止剤及び懸濁剤も使用することもできる。
【0120】
異なる送達系に応じて様々な組成/処方要件があり得る。例として示すと、本発明の薬剤組成物は、ミニポンプを用いて、或いは粘膜経路によって、例えば、吸入又は摂取可能な溶液用の経鼻スプレー又はエアゾール剤として、或いは、例えば、静脈内、筋肉内、皮内又は皮下経路による送達用に該組成物が注射用剤形によって処方される非経口で送達されるように処方することができる。或いは、本製剤は、両方の経路によって送達されるように設計することができる。
【0121】
本発明においては、本製剤は注射用剤形であることが好ましい。本製剤は皮内注射されることがより好ましい。
【0122】
本発明においては、本製剤は経口的に許容される組成物であることが好ましい。
【0123】
薬剤は、胃腸管粘膜を経由して送達される場合には、消化管通過中に安定なままでいることができるようにすべきである。例えば、薬剤はタンパク質分解に抵抗性であり、酸pHにおいて安定であり、胆汁の洗浄効果に抵抗性とすべきである。
【0124】
適切な場合には、薬剤組成物は、吸入によって、坐剤又はペッサリーの形で、ローション、溶液、クリーム、軟膏又は散布粉の剤形で局所的に、皮膚貼付薬を使用して、デンプン、ラクトースなどの賦形剤を含む錠剤の形で経口で、或いはカプセル剤又は胚珠(ovule)を単独又は賦形剤との混合物で、或いは香味料若しくは着色剤を含むエリキシル剤、溶液又は懸濁液の剤形で投与することができ、或いは、非経口、例えば、静脈内、筋肉内又は皮下注射することができる。非経口投与の場合には、組成物は、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩又は単糖を含むことができる無菌水溶液の剤形で最適に使用することができる。頬又は舌下投与の場合には、組成物は、従来の方法で処方することができる錠剤又は舐剤の形で投与することができる。
【0125】
薬剤の組合せ
本発明の薬剤は、1個又は複数の薬剤的に活性な他の物質と一緒に投与することができる。例として、本発明は、本発明による免疫調節物質組成物及び/又は薬剤組成物並びに1個若しくは複数のステロイド、鎮痛薬、抗ウイルス性、IL−2などのインターロイキン又は薬剤的に活性な他の物質との同時又は連続治療を網羅する。
【0126】
これらの投薬計画は、それらの物質を連続的に、同時又は一緒に投与することを含むことを理解されたい。
【0127】
免疫増強剤
本明細書では「免疫増強剤」という用語は、対象に投与されたときにその対象の健康を利する単離又は培養された1個又は複数の細菌を意味する。この利点は、対象の細胞免疫応答を改変することによって得られることが好ましい。
【0128】
本発明によれば、免疫増強剤は、例えば、自己免疫疾患又は自己免疫異常の治療又は予防に使用することができる。
【0129】
免疫増強剤は、特別に設計された食物又は動物の餌に入れて消費することによって投与することができる。
【0130】
免疫増強剤は、直接注射などの他の経路によって投与することもできる。
【0131】
細菌は、生きた生成物を維持する困難を回避するために死滅されることが好ましい。
【0132】
細胞免疫応答を調節する細菌の特定
別の態様においては、本発明は、細胞免疫応答を調節する(例えば、改変する)ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌の1個又は複数の全細胞を同定する方法であって、(a)第1の試験動物を免疫賦活薬と接触させるステップと、(b)第2の試験動物を、細菌と混合された免疫賦活薬と接触させるステップと、(c)前記試験動物の各々における細胞免疫応答を測定するステップと、(d)前記試験動物の各々における細胞免疫応答を比較するステップとを含み、細菌と混合された免疫賦活薬からの細胞免疫応答が免疫賦活薬単独よりも小さいことによって細菌による細胞免疫応答の改変が示される方法に関する。
【0133】
別の態様においては、本発明は、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属から選択される細菌種のTh1/Th2応答を測定する方法であって、ツベルクリン皮膚試験の利用を含む方法に関する。マウスにおいては、ツベルクリン皮膚試験は、好ましくは足跡に対して実施される。支配的なTh1反応においては、陽性の足跡免疫応答は24時間で最大であり、48時間で減少する。しかし、Th2反応性が増大するにつれ、48時間の陽性足跡免疫応答が増大し、24時間における足跡免疫応答を超えることさえある。
【0134】
BCGワクチン接種の効果は、このツベルクリン皮膚試験を用いて詳細に記録されている。したがって、この試験アッセイは、本発明による免疫調節物質組成物を導入することによってBCG細胞免疫応答が調節されるかどうかを評価するために使用することができる。
【0135】
本明細書では「試験動物」という用語は、免疫賦活薬に対して細胞免疫応答を誘発するあらゆる動物を指す。試験動物は哺乳動物であることが好ましい。試験動物はラット、ハムスター、ウサギ、モルモット又はマウスであることがより好ましい。試験動物はマウスであることがより好ましい。
【0136】
細菌はTヘルパー細胞応答を改変することが好ましい。適切には、細菌は、Th1及びTh2応答を減少させることによってTヘルパー細胞応答を改変することができる。適切には、細菌は、Th1応答を増大させ、Th2応答を減少させることによってTヘルパー細胞応答を改変することができる。適切には、細菌は、Th2応答に影響を及ぼすことなくTh1応答を増大させることによってTヘルパー細胞応答を改変することができる。
【0137】
免疫賦活薬は、既知のTh1及びTh2応答を有することが好ましい。例えば、免疫賦活薬BCGを用いて、それがTh1応答の指標であるときには、反応は通常は24時間で最も大きく、48時間における反応は通常はそれよりも小さく、Th2の寄与を含む。BCGは主としてTh1応答を刺激することが知られている。かかる免疫賦活薬を使用することによって、試験細菌のTh1/Th2応答を測定することができ、したがって、特定の疾患及び/又は障害を治療及び/又は予防する所望のTh1/Th2応答を有する1又は2以上の細菌を特定することができる。
【0138】
細胞免疫応答はツベルクリン皮膚試験によって測定されることが好ましい。BCGなどの免疫賦活薬によるワクチン接種によって、その後試験したときにツベルクリン(Tubercle bacilliの可溶性製剤)を用いた皮膚試験に対して応答が誘導される。局所反応は、ツベルクリン注射後さまざまな間隔、例えば、24時間、48時間及び72時間目に測定する。手短に述べると、ツベルクリンに対して陽性の免疫応答を誘導する免疫賦活薬(例えば、BCG)が使用される。試験動物においては、ツベルクリン皮膚試験は、好ましくは足跡に対して実施される。支配的なTh1反応においては、陽性の足跡免疫応答は通常は24時間で最大であり、48時間で減少する。しかし、Th2反応性が増大するにつれ、48時間の陽性足跡免疫応答が増大し、24時間における足跡免疫応答を超えることさえある。したがって、このアッセイは、本発明による免疫調節物質組成物を導入することによって細胞免疫応答が調節されるかどうかを評価するために使用することができる。
【0139】
免疫賦活薬はBCGであることが好ましい。
【0140】
本発明を実施例によって以下にさらに詳細に説明する。これらの実施例は、当業者が本発明を実施するのを助けるのに役立つものであって、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0141】
実施例
方法
ツベルクリン皮膚試験
ツベルクリン皮膚試験は、細胞免疫応答に対する免疫調節物質組成物、すなわち本発明による死滅された細菌細胞全体を含む細菌組成物/懸濁液の効果を評価する適切なモデルアッセイである。
【0142】
BCGワクチン接種は、ツベルクリンに対して陽性の免疫応答を誘導する。マウスにおいては、ツベルクリン皮膚試験は、好ましくは足跡に対して実施される。支配的なTh1反応においては、陽性の足跡免疫応答は24時間で最大であり、48時間で減少する。しかし、Th2反応性が増大するにつれ、48時間の陽性足跡免疫応答が増大し、24時間における足跡免疫応答を超えることさえある。
【0143】
BCGワクチン接種の効果は、このツベルクリン皮膚試験を用いて詳細に記録されている。したがって、この試験アッセイは、本発明による免疫調節物質組成物を導入することによってBCG細胞免疫応答が調節されるかどうかを評価するために使用することができる。
【0144】
細菌懸濁液の調製
ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属に属する細菌種は、発酵槽中でソートン培地など抗原を含まない培地中で2から28日間増殖させることができる。或いは、目的とする細菌種を固体勾配上で増殖させることができる。代替方法は、当業者に容易に利用可能なはずである。
【0145】
生成した細菌集団を収集し、直接又は洗浄後に使用して緩衝剤懸濁液を調製することができる。細菌細胞懸濁液は、100ナノグラムから10ミリグラムかん菌/回を含むように調製される。細菌細胞は水又は食塩水中に再懸濁される。食塩水は、ホウ酸塩によってpH8.0に緩衝されることが好ましい。かん菌は、適切には、オートクレーブ中で121℃で15分間加熱することによって不活性化される(死滅される)ことが好ましい。生成した細菌懸濁液は全細胞を含む。
【実施例1】
【0146】
ロドコッカス・ルベル(R.r.)による細胞免疫応答の調節
群1:若年成体メス非近交系マウスは、対照群としてワクチン接種を行わなかった。
群2:若年成体メス非近交系マウスは、0日目に首筋にBCG(かん菌105個)(Evans)を接種された。
群3:若年成体メス非近交系マウスは、加熱滅菌したマイコバクテリアワクチン(M.v.)(かん菌107個)が添加されたBGC(かん菌105個)を0日目に首筋に接種した。
【0147】
群1〜3中の全マウスは、10日目及び30日目にツベルクリン免疫応答について足跡試験された。次いで、各マウスは、加熱滅菌したマイコバクテリアワクチン(かん菌107個)を40日目に注射された。50日目に足跡に対するツベルクリン検査が繰り返された。
【0148】
群4:若年成体メス非近交系マウスは、さらなる対照群としてワクチン接種を行わなかった。
群5:若年成体メス非近交系マウスは、0日目に首筋にBCG(Evans)(かん菌105個)を接種した。
群6:若年成体メス非近交系マウスは、加熱滅菌したマイコバクテリアワクチン(かん菌107個)が添加されたBGC(かん菌105個)を0日目に首筋に接種した。
群7:若年成体メス非近交系マウスは、加熱滅菌したロドコッカス・ルベル(かん菌107個)が添加されたBGC(かん菌105個)を0日目に首筋に接種した。
群8:若年成体メス非近交系マウスは、加熱滅菌したロドコッカス・ルベル(かん菌106個)が添加されたBCG(かん菌105個)を0日目に首筋に接種した。
【0149】
群4〜7の全マウスは、30日目にツベルクリン免疫応答について足跡試験した。次いで、40日目に、各群は、各群の半数がそれ以上治療せず、各群の残り半数がロドコッカス・ルベル(かん菌107個)の注射を受けるように分割した。50日目に足跡に対するツベルクリン検査を繰り返した。
実施例1の結果を表1に示す。
【0150】
【表1】
【0151】
対照群1において、マイコバクテリアワクチン治療は、24時間後(p<0.01)と48時間後(p<0.001)の両方でツベルクリンに対する免疫応答の統計的に有意な増加をもたらした。しかし、対照群4においては、ロドコッカス・ルベルを用いた治療は、24時間後でも48時間後でもツベルクリンに対する免疫応答に有意な変化をもたらさなかった。両方の時点において、M.v.の結果はR.r.の結果よりもかなり大きかった(p<0.02)。
【0152】
BCG群(群2及び群5)においては、24時間と48時間の間のツベルクリンに対する応答の減少は、ロドコッカス・ルベルによる治療を受けたマウス(平均減少は28.2±15.7であった)がマイコバクテリアワクチンによる治療を受けたマウス(平均減少は14.9±9.6であった)よりも大きかった(p=0.06)。
【0153】
BCG+マイコバクテリアワクチン群(群3及び群6)においては、24時間と48時間の間のツベルクリンに対する応答の減少は、ロドコッカス・ルベルによる治療を受けた群(平均減少は41.0±41.0であった)がマイコバクテリアワクチンによる治療を受けたマウス(平均減少は12.7±7.0であった)よりもやはり大きかった(p<0.05)。
【0154】
これらのデータによれば、ロドコッカス・ルベルによる治療後にTh2応答が下方制御される。これはマイコバクテリアワクチンによる治療後には見られない。
【0155】
BCG+R.r.群(群7及び8)においては、R.r.107(群7)又は106(群8)をBCGに添加する効果はきわめて類似しており、R.r.の2回目の注射後に24時間と48時間の間で応答が実質的に減少した(15.5±10.0)。
【実施例2】
【0156】
ノカルジア・アステロイド(N.a.)、ゴルドニア・ブロンチアリス(G.b.)又はツカムレラ・インコネンシス(T.p.)を用いた細胞免疫応答の調節
この実験は、6匹のマウスからなる群にBCG単独又は107M.v.、R.r.、ノカルジア・アステロイド(N.a.)、ゴルドニア・ブロンチアリス(G.b.)若しくはツカムレラ・インコネンシス(T.p.)を添加して接種してから28日後にツベルクリンを用いた足跡試験の効果を比較するように設計した。これらの添加生物の各々に対する免疫応答に対する効果を見るために、動物群は、ツベルクリンを用いて試験した28日後に、それらのワクチン接種(ワクチン、Rubin、Asterin、Bronchialin及びInchonensin)に含まれる生物でできた皮膚試験試薬を用いてもう一方の足跡で試験した。
【0157】
結果を表2に詳細に示す。
【0158】
【表2】
【0159】
細菌懸濁液のすべてによって、BCG単独に続く場合と比較して24時間と48時間の両方で測定された28日ツベルクリン応答が低下した(p=0.05;p=0.2)。
【0160】
これは、ツベルクリン及びワクチンを除いて、これらの皮膚試験試薬のいずれかが使用された最初であった。新しい試薬に対する24時間における応答性の差は、タンパク質評価による場合を除いておそらくは平衡になっていないためであった。しかし、50日目における24時間と48時間の間の応答はすべて低下し、免疫調節性活性が示唆された。
【実施例3】
【0161】
成体モルモットにおける皮内注射に対する局所的皮膚反応
3匹の動物の左脇腹をせん毛して、108マイコバクテリアワクチンを含む皮内注射0.1mlを動物の頭部末端に、109マイコバクテリアワクチンを含む0.1mlを尾部末端側5cmに投与した。
【0162】
別の3匹の動物の右脇腹をせん毛して、108ロドコッカス・ルベルを含む皮内注射0.1mlを動物の頭部末端に、109ロドコッカス・ルベルを含む0.1mlを尾部末端側5cmに投与した。
【0163】
硬結部(in duration)の直径(単位mm)
【0164】
【0165】
3匹のモルモットにおける109ロドコッカス・ルベル(ヒト及び動物用途に対する典型的な用量)の皮内注射(獣医及び医事に一般に使用される注射経路)に対する局所反応は、別の3匹のモルモットにおける同じ用量のマイコバクテリアワクチンに対する反応と類似していた。注射後48時間において、ロドコッカス・ルベルに対する反応はマイコバクテリアワクチンに対する反応よりも小さかった(p<0.05)。7日又は14日において差はなかった。したがって、ロドコッカス・ルベルはマイコバクテリアワクチンよりも薬剤としてはるかに許容することができる。用量108においてどちらの製剤にも局所反応はない。
【実施例4】
【0166】
皮下注射後の毒性
1日齢、14日齢及び28日齢のときにロドコッカス・ルベルを3回注射した17匹のラットにおいて、皮下投与に対する毒性の証拠は認められなかった。
【0167】
7日目及び14日目において差はなかった。多数のマウスに本発明のさまざまな細菌種を注射したが、毒性の証拠は何らなかった。
【実施例5】
【0168】
Th1応答のみを増大させる細菌の決定
アジュバント関節炎は、動物において油とマイコバクテリア抽出物の混合物(マイコバクテリア・ブチリカム(Mycobacterium butyricum)を含む調製物が特に有効である)によって誘発される実験上の重篤な関節炎である。この応答を誘導するには強力なTh1アジュバントが必要と考えられる。この関節炎は、Th2を下方制御する機序によって調節される(関節炎はTh1とTh2の両方の機序を必要とする)。
【0169】
実験1:ロドコッカス・ルベルがアジュバント関節炎を誘発することができるかどうかを明らかにすること。
60〜90日齢のラットからなる3群の右後足足跡に、
1.マイコバクテリア・ブチリカムの油懸濁液1mg/0.1mL(n=8)
2.ロドコッカス・ルベルの油懸濁液1mg(n=8)
3.油と食塩水の乳濁液(n=8)
を投与した。
【0170】
第1の群の動物は四肢すべてを含めた関節炎を発症したのに対して、ロドコッカス・ルベルの油懸濁液を投与されたラットは注射された足のみが罹患した。
【0171】
実験2:マイコバクテリア・ブチリカムの油懸濁液を投与した後にロドコッカス・ルベルがTh2調節性応答を誘導することができるかどうかを明らかにすること。
これを試験するために、マイコバクテリア・ブチリカムの油乳濁液を投与する42、28及び14日前にロドコッカス・ルベル107個の緩衝食塩水を15匹のラットの異なる部位に皮下注射した。10匹のラットからなる対照群は、同じスケジュールに従って生理食塩水で前処理され、さらに投与された。
【0172】
アジュバント関節炎の巨視的評価は、個々の関節を目視採点することによって実施された(J Rheumatol 1992; 19:513-5)。各肢は0〜4で採点され、最大で16点/ラットに達する。
【0173】
【0174】
両方の群は、関節炎病変の発症時間(通常、誘導後9〜11日)にも関節炎徴候の重症度にも違いがなかった。動物は、疾患の進行のために倫理的理由によって18日目に屠殺された。
【0175】
結論
これらの実験は、ロドコッカス・ルベルがTh1アジュバント活性を有するがTh2「調節性」活性を持たないことを明確に示している。アジュバント関節炎における関節損傷は、Th1とTh2の複合作用である。
【実施例6】
【0176】
毒性、特に新生仔マウスにおける成長速度及びその後のBCGワクチン接種に対するロドコッカス・コプロフィラス NCIMB 11211、ゴルドニア・ブロンチアリス NC10667及びツカムレラ・インコネンシスNC13040の効果を検討すること
毒性の代替試験は、ゴルドニア・ブロンチアリス、ロドコッカス・コプロフィラス又はツカムレラ・インコネンシスの皮下注射が誕生日になされ、21日目に離れた部位に再度なされるものである。これらの動物及び食塩水を注射された対照は、3カ月間規則的な間隔で計量された。
【0177】
方法
9匹の後期妊娠Balb Cマウスを使用する。
【0178】
滅菌された細菌懸濁液の調製:10日間のソートン消泡ブロス培養から調製し、遠心分離し、10mg/mlのホウ酸塩緩衝食塩水として再懸濁し、加圧滅菌し、4℃で貯蔵した懸濁液。10mg/ml、1010/mlをホウ酸塩で1/2希釈して5×109とし、次いでホウ酸塩緩衝剤で1/10希釈して、20μ中最終濃度107として使用する。
【0179】
1日目
新生仔マウスを誕生日に個々に取り出し、同腹仔の首筋に107滅菌懸濁液を注射し、母親に戻す。
【0180】
対照同腹仔の首筋にM15ホウ酸塩緩衝食塩水20μリットルを注射する。
同腹仔1=メス2匹+オス3匹(ロドコッカス・コプロフィラス NCIMB 11211)
同腹仔2=メス2匹+オス3匹(ロドコッカス・コプロフィラス NCIMB 11211)
同腹仔3=メス5匹+オス3匹(ゴルドニア・ブロンチアリス NC10667)
同腹仔4=メス3匹+オス4匹(ゴルドニア・ブロンチアリス NC10667)
同腹仔5=メス1匹+オス1匹(ホウ酸塩緩衝食塩水)
同腹仔6=メス3匹+オス1匹(ホウ酸塩緩衝食塩水)
同腹仔7=メス5匹+オス3匹(ツカムレラ・インコネンシス NC13040)
同腹仔8=メス5匹+オス4匹(ツカムレラ・インコネンシス NC13040)
同腹仔9=メス4匹+オス5匹(ホウ酸塩緩衝食塩水)
【0181】
21日目
マウスを離乳させ、性別を見分け、同腹仔をオスとメスの2群に分割する。
【0182】
計量し、ワクチンを再接種する。消えないペンで尾部にマーキングすることによって個体を標識する。
【0183】
3カ月間計量し、毎週尾部に再マーキングする(re tail mark)。
【0184】
図1に、離乳から12週間の体重増加平均値/同腹仔メス試験及び対照の結果を示す。
【0185】
図2に、離乳から12週間の体重増加平均値/同腹仔オス試験及び対照の結果を示す。
【0186】
体重増加は全群で同じであり、わずか2/57動物しか3カ月間に死亡しなかった。両方ともオスであり、離乳後に他のオスと一緒にした直後に死亡した。したがって、動物の体重増加及び発育は、試験された3種によって影響されなかったと結論することができる。
【実施例7】
【0187】
ツベルクリン皮膚試験応答によって測定されたBCG免疫化に対する効果
免疫調節物質試験モデルは、4週間後に試験したときにBCGワクチン接種によってツベルクリン(Tubercle bacilliの可溶性製剤)皮膚試験に対する応答が誘導されるという原理に基づいて考案されている。局所反応はツベルクリン注射後24時間、48時間及び72時間後に測定する。マウスにおいては、局所反応は通常24時間で最大であり、それがツベルクリン中の抗原に対するTh1応答の指標である。48時間における局所反応は通常それよりも小さく、Th2の寄与を含む。72時間における局所反応は48時間におけるよりもわずかに小さいことが多く、Th2応答である。このBCG後ツベルクリン反応は、前の初回抗原刺激によって調節することができ、その結果、反応のTh1及びTh2成分は初回刺激試薬の性質を反映する。
【0188】
方法
3カ月齢のときに実施例6に従って初回抗原刺激されたマウスは、各試験の半分及び対照群が106BCG100μlを首筋に注射した。
【0189】
4カ月における試薬T1475 1mg/mlによるツベルクリン検査。100μリットルを1.9mlで希釈して、最終濃度を50μg/mlにする。4℃で貯蔵する。用量は、後足足跡に投与された2.5μgの50μリットル溶液である。24、48及び72時間においてマイクロメータを用いて測定されたツベルクリン応答膨潤。
【0190】
結果
図3は、ゴルドニア・ブロンチアリスが24時間TH1効果を増大させることを示している。
【0191】
図4は、ツカムレラ・インコネンシスが24時間TH1応答を増大させ、72時間TH2応答を抑制することを示している。
【0192】
図5は、ロドコッカス・コプロフィラスがTH1応答とTH2応答の両方を抑制することを示している。
【0193】
結論
上記3種は、BCG投与後のツベルクリン検査に対して各々異なる効果をもたらした。
【0194】
ゴルドニア・ブロンチアリスは、Th2応答を変えずにTh1応答を増大させた。ロドコッカス・ルベルもこの機能を有する。
【0195】
ツカムレラ・インコネンシスは、Th1応答を増大させ、Th2応答を下方制御した。
【0196】
ロドコッカス・コプロフィラスは、Th1応答とTh2応答の両方を下方制御した。
【0197】
これらの試薬のいずれかをアジュバントとして投与すると、その後の抗原に対する免疫応答を調節することができる。
【0198】
これらの結果は、本発明の代表的な3種のいずれかによる2回の初回抗原刺激免疫の影響が2回目の免疫後少なくとも9週間持続することも明確に示している。
【実施例8】
【0199】
免疫調節物質試験モデル
免疫調節物質試験モデルは、4週後に試験されたときにBCGワクチン接種によってツベルクリン(Tubercle bacilliの可溶性製剤)皮膚試験に対する応答が誘導されるという原理に基づいて考案されている。局所反応はツベルクリン注射後24時間、48時間及び72時間後に測定する。局所反応は通常24時間で最大であり、それがツベルクリン中の抗原に対するTh1応答の指標である。48時間における局所反応は通常それよりも小さく、Th2の寄与を含む。72時間における局所反応は48時間におけるよりもわずかに小さいことが多く、Th2応答である。このBCG後ツベルクリン反応は、前の初回抗原刺激によって調節することができ、その結果、反応のTh1及びTh2成分は初回刺激試薬の性質を反映する。
【0200】
公知の免疫賦活薬であるBCGを若い3週齢マウスの首筋に注射し、マウス足跡へのツベルクリン皮下注射によってツベルクリン応答を1カ月後に測定する。次いで、生成する膨潤、すなわち「ツベルクリン応答」を24、48及び72時間で測定する。24時間における膨潤は初期又はTh1媒介応答とみなされ、48及び72時間における膨潤は後期又はTh2媒介応答とみなされる。健康なマウスにおいてBCGはTh1応答を主として刺激する。
【0201】
方法
(a)BCG皮内ワクチン10回分のバイアル(Evans Medical)
シリンジ及び針を用いて供給滅菌水1mlで戻して、5分間溶解する。1×107/mlとすべきである。
【0202】
シリンジ及び針を用いてワクチンのすべてを除去し、プラスチックビジューボトル(bijou bottle)に移す。
【0203】
0.15mlをM15ホウ酸塩緩衝食塩水1.35m1で1/10希釈して105 100μリットルとする。
【0204】
用量は105 100μlであり、首筋に投与される。
【0205】
(b)ツベルクリン
T1475 1mg/ml。
【0206】
100μリットルを1.9mlで希釈して、最終濃度を50μg/mlにする。
【0207】
4℃で貯蔵する。
【0208】
用量は2.5μg 50μlであり、後足足跡に皮内投与される。
【0209】
ツベルクリン応答は、24、48及び72時間においてマイクロメータを用いて測定される。
【0210】
図6に、非ワクチン接種対照と比較された1カ月後のBCGに対するツベルクリン応答を示す。
【0211】
(c)試験懸濁液の調製
培養物は、遠心分離によって収集したソートンブロス中で増殖させ、M15ホウ酸塩緩衝食塩水に濃度10mg/mlで再懸濁し、4℃で貯蔵する。
【0212】
10mg/ml=100μl中109
【0213】
1/10希釈=100μl中108
【0214】
150μl 108をM15ホウ酸塩1.2mlに添加し、BCG150μlを添加する。
【0215】
用量は、今回、105BCG+107試験生物100μlであり、首筋に注射する。
【0216】
結果
図7は、3種類の細菌によるBCG効果の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24及び48時間目に測定する。代表的な種は、(Na)ノカルジア・アステロイド、(Gb)ゴルドニア・ブロンチアリス及び(Tp)ツカムレラ・インコネンシスである。
【0217】
図8は、2種類の細菌によるBCG/BCG+の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24、48及び72時間目に測定する。代表的な種は(Rrh)ロドコッカス・ルホドクラウス及び(Dm)ダイエツィア・マリスである。
【0218】
図9は、ロドコッカス属内の選択された種によるBCG効果の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24、48及び72時間目に測定する。(Rrh)ロドコッカス・ルホドクラウス、(Rru)ロドコッカス・ルベル、(Rrhod)ロドコッカス・ロドニイ、(Rcop)ロドコッカス・コプロフィラス、(Ropa)ロドコッカス・オパカス、(Reryth)ロドコッカス・エリトポレス。
【0219】
図10は、ロドコッカス・ルベルの108から104の対数希釈で改変されたBCGを用いたロドコッカス・ルベルの最適用量をBCG単独と比較して示すグラフである。
【0220】
結論
このスクリーニング試験は、試験懸濁液をBCGと混合し、BCG単独と比較することによって、28日後にツベルクリン検査がBCGに対する応答の測定値として調節又は改変されたことを示している。この簡単なモデルにおいては、免疫調節は、24時間と48時間目両方における応答サイズの低下として示される。これは、より長期の実験においてさらに検討することができる。試験懸濁液を用いた初回抗原刺激は、BCG投与とそれに続くツベルクリン検査の数週間前に実施する。
【実施例9】
【0221】
細菌の全細胞の懸濁液が細胞抽出物よりも免疫調節に有効であることを示すために、比較調製物が作り、BCG投与/ツベルクリン皮膚試験系において試験する
あらかじめ計量された遠心管中の緩衝食塩水(pH8.0)にツカムレラ・インコネンシス100mgを生物10mg湿重量/mlの濃度で懸濁する。全量10mlを超音波処理器で処理して、生物の大多数(70〜80%)を破壊した。
【0222】
超音波処理物を管中で15000rpmで1時間遠心分離し、上清を慎重に除去し、試験抽出物として孔径0.2μmのメンブランフィルターを通過させる。堆積物を含む管を再度計量して、破壊されていない全生物と細胞壁破片などの割合を求める。これは64mgである。次いで、ツカムレラ・インコネンシス0.01mgに等しい抽出体積を推定し、これを相当物の全かん菌(107個に近い)0.01mgと比較する。
【0223】
10匹の動物からなる群に抽出物又は(0.01mg/回に等しい)かん菌全細胞懸濁液又は緩衝食塩水プラセボを離乳時及び7日後に首筋に注射する。2週間後に動物にBCGを投与する。28日後にツベルクリン検査を実施し、24、48及び72時間で読取る。
【0224】
結果:
初回抗原刺激なしで、或いはホウ酸塩緩衝剤、ツカムレラ・インコネンシス全細胞又は可溶性抗原(ろ過された超音波処理物)の初回抗原刺激後に投与されたBCGワクチン接種後のマウスにおけるツベルクリン応答。
【0225】
初回抗原刺激されていない動物に投与されたBCGに続くツベルクリン応答:
No. 24時間 48時間 72時間
6 9±4.2 7.7±3.39 3.67±3.5
【0226】
ホウ酸塩緩衝剤単体で初回刺激された動物に投与されたBCGに続くツベルクリン応答:
6 9±5.7 6.3±7.1 3.17±2.93
【0227】
ホウ酸塩緩衝剤による初回刺激は、BCG後ツベルクリン検査に対して効果がない。
【0228】
加熱滅菌ツカムレラ・インコネンシス全体で初回刺激された動物に投与されたBCGに続くツベルクリン応答:
6 7.3±1.03 6.17±3.87 1.5±2.07
【0229】
ツカムレラ・インコネンシス全体で初回抗原刺激するとツベルクリン応答が特に72時間において減少する(Th2応答性)。
【0230】
ツカムレラ・インコネンシス可溶性調製物(ろ過された超音波処理物)で初回刺激された動物に投与されたBCGに続くツベルクリン応答:
6 6.8±6.8 11.0±8.0 4.6±6.8
【0231】
ツカムレラ・インコネンシスろ過超音波処理物で初回刺激すると48時間及び72時間における応答が増大する(Th2応答性)。これは、おそらく、BCGとツカムレラ・インコネンシスで共有された抗原に対する炎症性抗体産生が増加したためである。これらの結果は、超音波処理物による初回刺激が、死滅生物全体による初回刺激後の応答とは異なる応答をもたらすことを示している。
【0232】
予備調査によれば、細菌の全細胞は細胞抽出物よりも免疫調節に有効であることが示唆される。
【実施例10】
【0233】
血管疾患モデル−ラット血管形成術試験
このモデルは、バルーン血管形成術後に認められたラットの総頚動脈内膜層の誘導された肥厚減少に基づく。
【0234】
実験群は各々15匹のオスのラットからなる。
【0235】
群1はpH8のホウ酸塩緩衝食塩水0.1mlを皮下注射されたラットであった(対照)。
【0236】
群2は、加熱滅菌された環境雑菌ゴルドニア・ブロンチアリスを含むpH8のホウ酸塩緩衝食塩水0.1mlを皮下注射されたラットであった。
【0237】
群3は、加熱滅菌された環境雑菌ロドコッカス・コプロフィラスを含むpH8のホウ酸塩緩衝食塩水0.1mlを皮下注射されたラットであった。
【0238】
群4は、加熱滅菌された環境雑菌ツカムレラ・インコネンシスを含むpH8のホウ酸塩緩衝食塩水0.1mlを皮下注射されたラットであった。
【0239】
群5は、加熱滅菌された環境雑菌マイコバクテリアワクチンを含むpH8のホウ酸塩緩衝食塩水0.1mlを皮下注射されたラットであった(正の対照)。
【0240】
実験の手順予定表:
すべての動物は、0日目に実験を開始する前に7〜10日順応された。すべての動物を0日目に計量し、その後は健康の指標として週間隔で計量した。
【0241】
全群のラットは、標準ラット固形飼料を給餌され、水を自由に摂取することができた。
【0242】
0日目にラットに上記対照又は活性薬剤を皮下注射した(生物の用量は0.1ml中50マイクログラム、すなわち500マイクログラム/mlであった)。
【0243】
21日目にラットに第2の用量の対照/活性薬剤を皮下注射した(生物の用量は0.1ml中100マイクログラム、すなわち1mg/mlであった)。
【0244】
49日目に血液0.75mLを各ラットの尾静脈から採取し、サイトカインのRNAを後で測定できるように適切な方法で貯蔵した。
【0245】
56日目に全ラットに麻酔下で左総頚動脈バルーンによる外傷を与えた。
【0246】
70日目に全ラットを計量し、一級分類表(Schedule 1)法によって安楽死させ、頚動脈、ひ臓、左腎臓、左肺の一部、肝臓中葉の一部、心臓及び胸部大動脈を組織学的及び免疫学的分析のために採取した。血液もさらなる分析のために採取された。
【0247】
各左頚動脈の横断面を切断し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。筋肉層及び内膜層は個別に顕微鏡測定され、血管の断面域として表された。さらなる断面は、存在する免疫細胞型及び放出されているサイトカインを特定する免疫組織化学用に使用される。
【0248】
49日目及び70日目に採取された血液試料は、サイトカイン、ケモカイン及び血管疾患に関連する他の物質のRNAをその後分析するために適切な方法で貯蔵された。
【0249】
結果
ラット体重の結果を下表及び図11に示す。
【0250】
【0251】
ゴルドニア・ブロンチアリス(2)の注射で初回刺激された動物は、2つの時点においてプラセボ群(1)よりもかなりの重量増加を示す。
【0252】
内膜及び中膜厚さの測定結果を下表に示す。内膜/中膜比の結果を図12に示す。
【0253】
*検査された断面数
【0254】
【0255】
活性薬剤のレシピエントとプラセボのレシピエントの間で大きな有意差が見られる。
【0256】
内膜の結果が低いのは、血管形成術後の筋内膜増殖の減少を示している。これは全4種類の細菌調製物で起こり、ゴルドニア・ブロンチアリス、ツカムレラ・インコネンシス及びマイコバクテリアワクチンで最も顕著である。この効果は、血管形成術の成功に大きく寄与することができる。
【0257】
プラセボ群において失われた中膜厚さは、積極的治療群において保持され、ロドコッカス・コプロフィラス及びT・インチネンシス(T.inchinensis)の後で最も顕著である。減少した内膜厚さと保持された中膜厚さとの組合せは、ツカムレラ・インコネンシスによる治療後に最もよく見られ、慢性移植片拒絶の潜在的抑制における重要な進歩を証明することができる。
【実施例11】
【0258】
トリパノソーマ症感染ラットにおける心筋炎
動物の調製
i)1日齢オス「1」ラットの首筋に107ゴルドニア・ブロンチアリス、ロドコッカス・ルベル、ロドコッカス・コプロフィラス、ツカムレラ・インコネンシス又はマイコバクテリアワクチン0.1mlを皮下注射した。(これは下表に示すように2回の実験で実施された)。
ii)14日後、オス「1」ラットの左側に107の同じ生物0.1mlの第2の皮下注射をした。
iii)動物に、クルーズ・トリパノソーマ(T.cruzi)のツラフエン(Tulahuen)系統の106錐鞭毛体を用いて生きたクルーズ・トリパノソーマを21日目に皮下経路で投与した。感染血液錐鞭毛体は、CBiマウスにおける連続継代によって維持した。
iv)クルーズ・トリパノソーマの血流型は、pi(post-infection)7及び14日においてヘパリン処置尾部静脈血5μlの直接顕微鏡観察によって標準条件下で評価した。データは寄生生物数/50視野として表した。
v)7日後に、107個の同じ生物0.1mlの追加の皮下注射を右側に投与した。
【0259】
対照動物のみにクルーズ・トリパノソーマを投与した。
【0260】
別の動物群は、比較のために投与しなかった。
【0261】
【0262】
クルーズ・トリパノソーマ対照と比較してマイコバクテリアワクチンはP<0.01及びロドコッカス・ルベルはP=0.001
【0263】
動物の調製
1日齢オス「1」ラットの首筋に107ゴルドニア・ブロンチアリス、ロドコッカス・コプロフィラス又はツカムレラ・インコネンシス0.1mlを皮下注射した。(これは下表に示すように2回の実験で実施された)
【0264】
14及び28日後、オス「1」ラットの左側に107の同じ生物0.1mlの第2及び第3の皮下注射をした。
【0265】
動物に、クルーズ・トリパノソーマのツラフエン系統の106錐鞭毛体を用いて生きたクルーズ・トリパノソーマを21日目に皮下経路で投与した。感染血液錐鞭毛体は、Cbiマウスにおける連続継代によって維持された。
【0266】
対照動物のみにクルーズ・トリパノソーマを投与した。
【0267】
別の動物群は、比較のために放置した。
【0268】
【0269】
クルーズ・トリパノソーマ対照と比較してロドコッカス・コプロフィラスの7日目でP=0.032及び14日目でP=0.05(Kruskall-Wallis分散分析)。
【0270】
クルーズ・トリパノソーマ感染から28日後のクルーズ・トリパノソーマに特異的な血清IgG抗体
【0271】
クルーズ・トリパノソーマ投与から7、14及び21日後の心筋中のCD4+ve細胞
【0272】
さらに別の対象の心筋を、慢性心筋炎の評価のためにクルーズ・トリパノソーマ感染から3カ月後に分析する。予備調査によれば、マイコバクテリアワクチンは慢性心筋炎を軽減するのに有益な効果を有することが判明し、上記データから、試験生物の一部は慢性心筋炎の予防に有益な効果を有すると予想される。
【実施例12】
【0273】
冠動脈血管形成術後のMIHを低減するためのツカムレラ・インコネンシスの使用
アテローム硬化型血管疾患は、世界中で最も一般的な死因及び能力障害原因である。アテローム性動脈硬化症の発症は複雑なプロセスであり、脂質の沈着が動脈の狭窄及び内皮機能不全をもたらす。血管損傷部位における炎症反応がアテローム性動脈硬化症の素因において鍵となる役割を果たす証拠が増加しつつある(Schett G et al.、J Clin. Invest. 1995, 96: 2569-2477)。アテローム硬化型プラークの破裂は、心筋梗塞、発作、末梢動脈閉塞などの急性虚血性症候群をもたらす突然の動脈閉塞の最も一般的な原因である。急性虚血性症状の出現に続いて、ある種のサイトカイン及びCRP(C-reactive protein)を含めていくつかの炎症性マーカーが増加する(George et al.、Circ. Res. 2000; 86: 1203-1210; Hansson et al.、Arteriosclerosis 1989; 9: 567-578; Yokota et al.、J Intern Med. 1995; 238; 479-489; Ikeda J. Mol. Cell. Cardiol. 1992 Jun 24 (6): 579-584; Hojo et al.、Heart 2000 Jul; 84 (1) 83-7。
【0274】
ストレスタンパク質の発現は、内膜への完全な応力損傷部位においてさえ局所的免疫応答をもたらし、そのときの個体において優勢である免疫応答型に従って中膜及び内膜中にサイトカインが放出される(Chan et al.、Eur J. Vasc. Enodvasc. Surg. 1999 Nov. 18(5): 381-5; Mukherjee et al.、Thromb. Haemost 1996; 75: 258-260; Wright Heart Vessels 2000; 15: 18-22; Sanchez-Margalet et al.、Clin Chem Lab. Med 2002 Aug; 40(8); 769-774)。一部のサイトカインは、内膜の肥厚及び中膜の平滑筋細胞における表現型の変化をもたらし、同時にMIHを生じる。他のサイトカインの局所的放出によって、血流の閉塞を最小限に抑えながら内膜が修復される(Hansson et al.、Proc. Natl Acac. Sci. USA 1991; 88: 10530-10534; D'Elios et al.、Transplant Proc 1998; 30: 2373-7; Feldman et al.、Circulation 2000 Feb 29; 101(8): 908-916; Tashiro Coron Artery Dis 2001 Mar.; 12(2): 107-13; Hojo et al.、Atherosclerosis 2001 May; 156(1): 165-170; Yang et al.、Circulation 2000 Mar 7; 101(9); 1019-26; Anguera et al.、Am. Heart J. 2002 Nov. 144(5): 811-817; Takase et al.、Can J. Cardiol. 2003 July; 19(8): 902-906; Tutar et al.、Circulation 2003 Sep 30; 108(13):1581-1584 E-pub 2003 Sep 15; Del Prete et al.、Blood 1995 Jul 1; 86(1): 250-257)。本発明者らの提案の目的は、後者の機序が確実に実施されるようにすることである。
【0275】
MIHと炎症の関連:
【0276】
MIHの発生及び維持をもたらす免疫機構は、制限された血流、脂肪線条の沈着及びアテローム性動脈硬化症のプラークに付随する応力の増加をもたらす。損傷が最小限に抑えられた内膜細胞上で発現されるストレスタンパク質に対するIgG2抗体レベルの上昇は、補体カスケードの局所的誘導及び損傷細胞の破壊をもたらす(Schett et al.(前記);Chan et al.(前記);Crisp et al.、J. Heart Lung Transplant 1994; 81-91; Johnson et al.、Atherosclerosis 1990; 84: 111-119)。この部位に、局所的サイトカイン産生を惹起するTリンパ球が引きつけられる(Hansson 1991(前記);D'Elios(前記);Mickelson et al.、J Am Coll Cardiol. 1996 Aug; 28(2): 345-53)。脂肪線条は損傷内膜上に堆積し、その下で修復又はアテローム硬化型の進行を決定する有益又は有害なサイトカイン活性が発生する。局所的炎症の非特異的な結果として、サイトカインIL(interleukin)−1ベータ及びTNF−α(tumour necrosis factor alpha)はIL−6を誘導し、IL−6は肝細胞による急性期タンパク質(例えば、フィブリノーゲン、CRP)の生合成を増強する(Ikeda et al.(前記);Hojo et al.(前記);Spaziani et al.、Ital Heart J. 2002 Oct: 3(10): 593-597)。
【0277】
MIHは、PCI(percutaneous coronary intervention)後の血管損傷に対する過度の治癒応答とみなすことができる。
・基底膜の損失
・中膜から内膜へのVSMCの移行
・VSMC増殖及びより分泌性である線維芽細胞型への表現型の変化
・細胞外基質の産生増加
を含めて、最終的に血管狭窄又は閉塞をもたらす一連の事象が起こりうる。
【0278】
臨床的な再狭窄は、PCIバルーン血管形成術後に起こり、臨床実務においてかかる症例の約30%に影響を及ぼす。これはかかる手順の失敗の主原因であり、生じた狭窄及び閉塞血管/移植片の治療は問題が多い。MIHをもたらす根本的細胞機序は十分に理解されていないが、サイトカインIL−4及びIL−5を産生するTh2(helper T cells of type 2)の優勢に関連すると考えられ、その存在下でTNF−αは組織損傷的になる(Hernandez-Pando et al.、Immunology 1994; 82: 591-595)。このプロセスを有効に防止することができる治療はこれまで開発されていない。しかし、より全身的な現象にその後なり得る局所的に媒介された炎症反応の役割は、PCIの失敗の鍵となる部分として認められている。現行プロジェクトの臨床的な妥当性は、英国(約40,000)及び世界中で毎年実施されるきわめて多数の経皮冠動脈インターベンションに関係する。新世代の薬物溶出ステントは、「むき出しの金属」ステントよりも再狭窄率がきわめて低いが、再狭窄を完全に防止できそうになく高価である。このプロトコルに提案される免疫療法などMIHを防止する安全で比較的安価な補助的治療は臨床的に重大な影響を有する。
【0279】
ある細菌種は、死滅したときに、それらに提示される熱ショックタンパク質などの抗原に対する免疫応答を調節する能力を有する。かかる死滅細菌の懸濁液は使用するのにきわめて安全であり、さまざまな種を用いて所望の免疫調節を得ることができる。本発明者らの研究室における最近の研究によれば、アテローム性動脈硬化症患者はTh1免疫が同年齢の対照よりも減少し得ることが判明した。したがって、血管傷害に対する炎症反応は、適切な免疫療法によって応答パターンを変えることによって改変することができる。
【0280】
結核、喘息、関節リウマチ、いくつかの自己免疫症状など他のさまざまなヒト疾患においてTh1及びTh2サイトカインが果たす役割は非常に注目されている(D'Elios M, Del PG. Transplant Proc 1998; 30: 2373-7;Shirakawa T et al.、Science 1996; 275: 77-79及びHernandez-Pando R, Rook GAW. Immunology 1994; 82: 591-595)。Th1細胞は、IFN−γ、IL−2(interleukin-2)及びTNFを産生する。Th2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10及びIL−13を産生する(Lin E et al.、Surgery 2000; 127: 117-126)。どちらの型のT細胞も細胞性炎症を起こすことができ、抗体を形成することができるが、異なる免疫グロブリンサブクラスが含まれ、Th2応答に付随する抗体量は通常はるかに多い。Th1応答の調節が失敗すると、多発性硬化症などのTh1によって媒介される自己免疫疾患が起こり得る(Genain CP et al.、Science 1996; 274: 2054-2057)。調節されていないTh2応答は、アレルギー反応、Th2媒介自己免疫及びIPF(idiopathic pulmonary fibrosis)において見られるものなどの慢性線維性炎症をも含めてさまざまな病態をもたらし得る(Wallace W et al.、Clin. Exp. Immunol. 1995; 101: 436-441及びDu Bois RM. New Engl. J Med 1999; 341: 1302-1304)。
【0281】
内皮及びVSMC抗原に対するかかるTH2応答は、臨床のMIHにおいて原因となる類似した役割を果たす。
【0282】
結核、関節リウマチなどの一部の状況においては、Th1サイトカインとTh2サイトカインの同時産生はさらなる組織損傷をもたらし得る。これに対する少なくとも1つの機序は、Th2サイトカインIL−4及びIL−5の存在下でTh1関連TNF−γの組織壊死活性が増大することである。かかる複合活性によって演じられる役割はMIHでは不確かであるが、それが起こる結核、ウシのヨーネ病などの放線菌疾患はアテローム性動脈硬化症の素因になることが知られている(Alibasoglu M et al.、Am J Vet Res. 1962 Jan; 23: 49-57)。
【0283】
炎症は、現在、アテローム硬化型血管疾患の進行と結び付けられている。プラークの自発的破裂又は血管形成術によって自然に起こる血管損傷は、治癒に有害に作用して筋内膜増殖を起こし得る炎症反応を刺激する。本発明による加熱滅菌細菌に由来する調製物は、症候性冠動脈疾患に対して経皮冠動脈インターベンションを行った患者において血管損傷に対する免疫応答を調節する。ストレスタンパク質、ある範囲のサイトカイン、コルチゾル、DHEA(de-hydro epi-androsterone)及びC反応性タンパク質に対する抗体の静脈血レベルによって測定される炎症反応は、この活性調製物を投与された対象において改変されるはずである。50人の患者のサンプルサイズは、これらのマーカーレベルの約20%の差を検出するのに十分である。
【0284】
免疫調節は炎症反応に影響を及ぼし得る。
【0285】
加熱滅菌ツカムレラ・インコネンシスの作用様式は、細菌調製物とヒト組織のそれとで共有される抗原に関係したT細胞成熟の制御因子としてであると考えられる。特に、これらは、細菌的な65及び70kDa熱ショックタンパク質とそのアミノ酸鎖長相同性の約60%を共有することが知られているミトコンドリア起源の60及び70kDaストレスタンパク質を含む。ツカムレラ・インコネンシスの調節活性は、Th2機序を抑制し、Th1機序を増強し、ストレスタンパク質の内膜発現に対する応答を変化させ、サイトカインを局所的に産生することによってVSMCの表現型を制御する。ストレスタンパク質に対して高い抗体力価を有する優勢なTh2応答によって、2型サイトカイン(IL−4、IL−5及びIL−13)が局所的に放出され、補体活性化経路によってこれらのタンパク質を発現する内膜細胞が破壊され、VSMCの表現型が迅速な複製の1つに改変される。Th1応答では、ストレスタンパク質を発現する内膜細胞は、1型サイトカイン(IL−2、IFN−α及びTNF−α)を放出するT細胞によって個々に破壊され、VSMCにおけるより低増殖性の表現型変化及び局所的組織修復を誘導すると考えられる。これらの機序のうち第1の機序はさらなる損傷及び再狭窄をもたらすのに対して、第2の機序は再狭窄を刺激せずに内膜の修復をもたらすはずである。
【0286】
Th細胞活性のかかる変化は血漿コルチゾルの減少と血漿DHEAの増加を伴い、炎症を効果的に調節するとC反応性タンパク質などが正常値に戻る。
【0287】
理論に拘泥するものではないが、血管壁中の1個の自己免疫標的はHSP(heat shock protein)70とすることができる。
【0288】
免疫療法が血管損傷後の炎症反応を改変する機序は十分には理解されていないが、かん菌と組織とで共有される抗原と一緒に、ツカムレラ・インコネンシスの特定のアジュバント活性の組合せは、免疫媒介組織損傷を抑制するものに対して免疫調節をもたらすと考えられる。血管形成術に起因する内皮傷害は、HSPに対する宿主免疫応答によって増悪し得る。ストレスタンパク質の密接に類似した形のこれらのHSPは、アテローム性動脈硬化症を含めてさまざまな免疫障害の病態発生及び病態生理に関係している、ストレスを受けた細胞によって産生される(Xu et al.、Arterioscler. Thromb. 1992; 12: 789-799)。これは、血管形成領域中の内皮及び平滑筋細胞上に存在する可能性がある。実際にはhsp/ストレスタンパク質は、免疫系によって適切な方法でその後に扱うことができる自己抗原として働く。この状況は、ウサギ及びマウスにおいて内皮損傷をもたらす交差反応性マイコバクテリアhsp(hsp65)で免疫することによって実験的に誘導することができる。この効果は、上述したように、Th2リンパ球によって分泌されるIL−4に依存すると考えられ、おそらく抗体によって媒介される。
【0289】
動物試験からのこれらの観察とヒトとの関連性は、hsp65カラムから溶出し親和性によって精製されたヒト抗体が、ストレスを受けたヒト内皮細胞をin vitroで損傷する能力によって示唆される(Schett et al.(前記))。この知見は、この抗体が、hsp65のヒト相同体であるhsp60と交差反応し、ストレスを受けた内皮細胞の膜上で発現されたときに抗体に接近することができることを示唆する。ストレスを受けた内皮細胞に結合するかかる抗体は、心臓移植後に冠動脈疾患を生成する要因であることが示唆された(Crisp et al.(前記))。Mukherjee et al.は、hsp65に対する手術前抗体レベルと冠動脈再狭窄との関連性がないことを示したが、かかる抗体レベルが血管形成術後に低下した患者はより再狭窄しにくいことを示した(Mukherjee et al.(前記))。彼らは、hsp 65に対する抗体が属するIgGサブクラスを明らかにせず、記録された低レベルはIgG4(Th1関連抗体)への転換のためであった可能性がある。実際には、血管疾患患者は抗体が増加するだけでなく、hsp/ストレスタンパク質レベル自体も増加するので、hspに対する抗体の役割は複雑になり得る(Wright et al.(前記))。したがって、抗体レベルの見掛けの低下は、タンパク質レベル又はタンパク質に結合する抗体レベルの増加を単に反映している可能性がある。さらに、hsp/ストレスタンパク質は調節効果を有し、動脈の平滑筋細胞に結合し、内在化を必要とせずにより長く残存する(Johnson et al.(前記))。
【0290】
加熱滅菌ツカムレラ・インコネンシスから調製された免疫調節試薬を用いて経皮冠動脈インターベンションを行うための患者の前処置によって、炎症プロセスが下方制御され、局所的筋内膜増殖の生成とそれに続く動脈のアテローム形成及び再狭窄が抑制される。これは、22種類の異なるサイトカインを測定するきわめて高感度の「Luminex」法を用いて、末梢血中のサイトカイン含量の変化によって確認することができる。それは、ある種のストレスタンパク質及びそれらに対する抗体のレベルの変化並びに血清コルチゾル、DHEA(dehydroepiandrosterone)及びそれらの誘導体の変化によっても検出可能である。
【0291】
待機的PCI(percutaneous coronary angioplasty)後に観察される(i)インターフェロン−γ、TNF−α、IL−6、IL−10のレベルによって測定される炎症反応、(ii)Tヘルパー細胞調節及び機能の他の尺度、(iii)循環ストレスタンパク質及びそれに対する抗体のレベル、(iv)C反応性タンパク質並びに(5)コルチゾル及びデヒドロエピアンドロステロンの血漿中濃度に対するツカムレラ・インコネンシスの加熱殺菌調製物の注射の効果を試験するために、無作為化二重盲検対照並行群試験が使用される。
【0292】
臨床的理由でPCIを必要とする患者は参加する資格がある。試験サイズは、ツカムレラ・インコネンシス又は不活性ビヒクルを用いた免疫治療に対して無作為化される50人の患者である。患者は、血管形成術の6週間前と3週間前に2回の注射を受け、処置の4週間後に3回目の注射を受ける。炎症マーカーは、最初の注射の前、処置の直前、処置の24から48時間後及び処置の6から8週間後に測定される。
【0293】
試験は2段階あり、最初の段階においては無作為化され、活性生成物又はプラセボを投与される10人の患者が前記全パラメータによる検査を受ける。第2段階では、残りの患者が、第1段階から最も適切として選択された方法によって検査される。
【0294】
最初の注射は、予定された血管形成術の6週間前に上腕又は肩部域に皮内投与され、2回目の注射はその3週間後に投与される。処置は2回目の注射から3〜5週間後に実施され、3回目及び最終の注射は、処置から4週間後に投与される。PCIは通常示されるように行われるべきであり、6〜8週間でさらに経過観察されるべきである。これは定常的な臨床の取り決めと一致すべきである。免疫学的マーカー及び炎症性マーカー用の血液試料は、ベースライン(最初の免疫治療又はプラセボ注射前)、PCI処置の直前、PCI処置後24〜48時間及びPCI処置後6〜8週間において採取されるべきである。
【0295】
血液試料採取プロトコル:静脈血試料10〜15mlは前記4回の機会の各々で収集される。これらは、定常的な血液学的試験及び生化学試験、一連の血清サイトカイン及びケモカイン評価、循環ストレスタンパク質及びそれに対する抗体のレベル測定、血漿コルチゾル及びDHEAの評価、炎症性マーカー及び血管疾患マーカーの測定並びに細胞内サイトカイン産生の分析用RNAの貯蔵のためである。
【0296】
免疫治療調製物の詳細:調製物は、M/15、ホウ酸塩緩衝(pH8)非発熱性生理食塩水(プラセボ)であり、又は同じホウ酸塩緩衝剤に10mg/mlで懸濁された好気性放線菌種ツカムレラ・インコネンシスの加熱滅菌生物の懸濁液である。
【0297】
かん菌は獣医学研究局(Veterinary Medicines Directorate)によって動物ウイルスがないと承認された)非抗原性非動物産物液体培地上で増殖させた。インキュベーションは32℃の振とう水浴中であった。かん菌は、良好な成長がインキュベーション10日後に得られたときに収集した。
【0298】
プラセボ及び細菌懸濁液は無菌2ml複数回投与用バイアル中に個々の投与量0.5±0.1ml体積で分注した。バイアルは、定期的に維持されたオートクレーブ中で効果指示薬と一緒に121℃で15分間加圧滅菌された。冷却後、バイアルを標識し、試験専用の箱中で4℃±1℃で貯蔵した。
【0299】
無作為化:これは、(離脱患者又はバイアルの故障を埋め合わせるために)コンピュータによって作成される無作為な数列、1から10及び11から60の生成による。
【0300】
バイアルの標識は、患者の試験数とそれが1回目、2回目又は3回目の注射に使用されるかどうかを示すA、B又はCとによる(投与日に対して患者の注意を持続させることができ、はがして使われる自己粘着性ラベルを各バイアルに貼付する)。プラセボ及び活性生成物のバイアルは、コンピュータが作成した無作為化スキームに従って同様に標識され、使用順に箱に保存される。
【0301】
インターベンションの投与は、左肩部から始まって交互の三角筋にわたる皮内注射による。患者に対して正確なバイアルを冷蔵庫から取り出す。シリンジに吸い取る直前にバイアルを約20秒間激しく振とうしてかん菌粒子を懸濁させる。次いで、「BDミクロファイン(BD Microfine)+0.33mm(29G)×12.7(融着)針付き1ml U−100インスリンシリンジ」に0.1mlを吸い取り、小面積の橙皮状皮膚を生じるように注意しながらすぐに投与する。全用量0.1mlを注射すべきである。
【0302】
注射後、その内容物を含む残りのバイアルを今後の検査のために冷蔵庫中の特別な箱に必要に応じて戻す。
【0303】
【0304】
インターベンション試験は血管形成術前2回とその後1回の3回実施される。最初の2回は21±3日離れているべきである。血管形成術は2回目の注射から28〜52日後とすべきであり、試験治療の3回目の注射は血管形成術から28±3日後(すなわち2回目の注射から52〜80日後)とすべきである。
【0305】
試験結果:対象となる主要な結果は、免疫調節及び急性期反応のレベルの変化を指標又は炎症として示す血清マーカーである。血液試料はさまざまなマーカーについて分析されるが、試験の主な結果基準は、ベースライン試料及びPCI直前に採取された試料と比較された追跡血液試料における2つの投与群間で検出される差の比較である。
【0306】
以下の調査を、試験の第1段階において10人の患者について実施した。
1.22個の異なるサイトカインのルミネックス(Luminex)評価。
2.血漿コルチゾル、DHEA及び代謝産物。
3.60/65kDa及び70kDa hsp/ストレスタンパク質及びそれらに対する抗体の血清レベル。
4.C反応性タンパク質レベル。
5.賛辞活性化。
6.血管疾患マーカー。
7.定常的血液学など。
8.上記試験の結果が不適当である場合には、細胞内サイトカインのPax−Geneシステム研究を実施する。
【0307】
試験の第2のより大きな段階に実施すべき調査は、以下に示すように、段階1から得られる結果から選択する。
【0308】
最初の10人の患者に対して得られた結果は、
1.血液試料1と2で差を示す患者(免疫調節効果)。
2.血液試料2と3で差を示す患者(手術手技の効果)。
3.血液試料1と4で差を示す患者(治療及び処置の長期効果)。
について研究者の各々によって分析される。
【0309】
次いで、それらの結果は患者の積極的治療又はプラセボ治療に従って分析される。これら2群間で差を示す選択調査は、試験の第2の主要な局面に適用される。
【0310】
二次的成果:一定分量の血液試料は、エンドセリン、フォンウィルブランド因子などの他の血管炎症性マーカーのありうる後日の分析のために貯蔵される。
【0311】
予備調査によれば、ツカムレラ・インコネンシスは冠動脈血管形成術後のMIHを抑制すると示唆される。
【0312】
上記明細書に述べられたすべての刊行物を参照により本明細書に援用する。本発明に記載の方法及びシステムの様々な改変形態及び変更形態が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明を具体的な好ましい実施形態と関連して説明したが、特許請求する本発明がかかる具体的実施形態に不当に限定されるべきでないことを理解すべきである。実際、生化学及びバイオテクノロジー又は関連分野の当業者に明白である本発明の記載された実施形態の様々な変形形態は、以下の特許請求の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0313】
【図1】離乳から12週間の体重増加平均値/同腹仔メス試験及び対照の結果を示すグラフである。
【図2】離乳から12週間の体重増加平均値/同腹仔オス試験及び対照の結果を示すグラフである。
【図3】ゴルドニア・ブロンチアリスが初期のTH1効果を増強することを示すグラフである。
【図4】ツカムレラ・インコネンシスが初期のTH1応答を増強し、後期のTH2応答を抑制することを示すグラフである。
【図5】ロドコッカス・コプロフィラスがTH1応答とTH2応答の両方を抑制することを示すグラフである。
【図6】非ワクチン接種対照と比較された1カ月後のBCGに対するツベルクリン応答を示すグラフである。
【図7】3種類の細菌によるBCG効果の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24及び48時間目に測定する。代表的な種は、(Na)ノカルジア・アステロイド、(Gb)ゴルドニア・ブロンチアリス及び(Tp)ツカムレラ・インコネンシスである。
【図8】2種類の細菌によるBCG/BCG+の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24、48及び72時間目に測定する。代表的な種は、(Rrh)ロドコッカス・ルホドクラウス及び(Dm)ダイエツィア・マリスである。
【図9】ロドコッカス属内の選択された種によるBCG効果の免疫調節を示すグラフである。ツベルクリン応答は24、48及び72時間目に測定する。(Rrh)ロドコッカス・ルホドクラウス、(Rru)ロドコッカス・ルベル、(Rrhod)ロドコッカス・ロドニイ、(Rcop)ロドコッカス・コプロフィラス、(Ropa)ロドコッカス・オパカス、(Reryth)ロドコッカス・エリトポレス。
【図10】ロドコッカス・ルベルの108から104の対数希釈で改変されたBCGを用いたロドコッカス・ルベルの最適用量をBCG単独と比較して示すグラフである。
【図11】未処理対照及びマイコバクテリアワクチンで処理された対照と比較された、ゴルドニア・ブロンチアリス、ロドコッカス・コルプロフィラス(Rhodococcus corprophilus)又はツカムレラ・インコネンシスで処理後の平均ラット体重増加を示すラット血管形成術試験からのグラフである。
【図12】未処理対照及びマイコバクテリアワクチンで処理された対照と比較された、ゴルドニア・ブロンチアリス、ロドコッカス・コルプロフィラス又はツカムレラ・インコネンシスで処理後のラットにおける内膜/中膜厚さ比の結果を示すグラフである。GP1=対照、GP2=ゴルドニア・ブロンチアリス、GP3=ロドコッカス・コプロフィラス、GP4=ツカムレラ・インコネンシス、GP5=マイコバクテリアワクチン)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫疾患又は自己免疫異常を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用。
【請求項2】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が血管内膜の炎症を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が血管筋層又は心筋の炎症をさらに含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が、血管障害が先行するもの又は血管障害に起因するものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が、関節炎、特に関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節症、強皮症、甲状腺炎、移植後の内膜増殖、移植片拒絶及び血管障害の1又は2以上から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
血管障害が、自己免疫エレメントを含む血管障害である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
血管障害が、レイノー病又はレイノー現象、前部ブドウ膜炎、閉塞性血管障害、(動脈硬化症としても知られる)アテローム形成、動脈炎、(自然又は血管形成術後の)筋内膜増殖、血管の内膜及び/又は筋層の炎症性及び自己免疫性肥厚、炎症性血管病変、アテローム硬化性心疾患、再潅流傷害、心臓伝導障害、心筋炎、心筋梗塞の1又は2以上から選択される、請求項5又は請求項6に記載の使用。
【請求項8】
移植片拒絶が慢性移植片拒絶である、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
移植片拒絶が免疫抑制薬の非存在下の慢性移植片拒絶である、請求項5に記載の使用。
【請求項10】
細菌が、ゴルドニア・ブロンチアリス、ゴルドニア・アマレア、ゴルドニア・スプチ、ゴルドニア・テレア、ノカルジア・アステロイド、ダイエツィア・マリス、ツカムレラ・パウロメタボラ、ロドコッカス・ルベル、ロドコッカス・ロドニイ、ロドコッカス・コルプロフィラス、ロドコッカス・オパカス、ロドコッカス・エリトポレス、ノカルジオイデス・アルバス及びツカムレラ・インコネンシスからなる群の1又は2以上から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
細菌を死滅させる、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
自己免疫疾患又は自己免疫異常を治療又は予防する方法であって、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物の有効量を対象に投与することを含み、前記組成物が細胞免疫応答を調節する、方法。
自己免疫疾患又は自己免疫異常を治療又は予防する方法であって、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む、細胞免疫応答を調節する薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物の有効量を対象に投与することを含む方法。
【請求項13】
自己免疫疾患又は自己免疫異常に対する免疫を対象に与える方法であって、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物を投与することを含む方法。
【請求項14】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が血管内膜の炎症を含む、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が血管の筋層又は心臓の筋層の炎症をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が、血管障害が先行するもの又は血管障害に起因するものである、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が、関節炎、特に関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節症、強皮症、甲状腺炎、移植後の内膜増殖、移植片拒絶及び血管障害の1又は2以上から選択される、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
血管障害が、自己免疫エレメントを含む血管障害である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
血管障害が、レイノー病又はレイノー現象、前部ブドウ膜炎、閉塞性血管障害、(動脈硬化症としても知られる)アテローム形成、動脈炎、(自然又は血管形成術後の)筋内膜増殖、血管の内膜及び/又は筋層の炎症性及び自己免疫性肥厚、炎症性血管病変、アテローム硬化性心疾患、再潅流傷害、心臓伝導障害、心筋炎、心筋梗塞の1又は2以上から選択される、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
移植片拒絶が慢性移植片拒絶である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
移植片拒絶が免疫抑制薬の非存在下の慢性移植片拒絶である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
細菌が、ゴルドニア・ブロンチアリス、ゴルドニア・アマレア、ゴルドニア・スプチ、ゴルドニア・テレア、ノカルジア・アステロイド、ダイエツィア・マリス、ツカムレラ・パウロメタボラ、ロドコッカス・ルベル、ロドコッカス・ロドニイ、ロドコッカス・コプロフィラス、ロドコッカス・オパカス、ロドコッカス・エリトポレス、ノカルジオイデス・アルバス及びツカムレラ・インコネンシスからなる群の1又は2以から選択される、請求項12から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
細菌を死滅させる、請求項12から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項12から23に実質的に記載された方法。
【請求項25】
請求項1から11に実質的に記載された使用。
【請求項1】
自己免疫疾患又は自己免疫異常を治療又は予防するための医薬品の製造における、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む免疫調節物質組成物又は薬剤組成物の使用。
【請求項2】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が血管内膜の炎症を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が血管筋層又は心筋の炎症をさらに含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が、血管障害が先行するもの又は血管障害に起因するものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が、関節炎、特に関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節症、強皮症、甲状腺炎、移植後の内膜増殖、移植片拒絶及び血管障害の1又は2以上から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
血管障害が、自己免疫エレメントを含む血管障害である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
血管障害が、レイノー病又はレイノー現象、前部ブドウ膜炎、閉塞性血管障害、(動脈硬化症としても知られる)アテローム形成、動脈炎、(自然又は血管形成術後の)筋内膜増殖、血管の内膜及び/又は筋層の炎症性及び自己免疫性肥厚、炎症性血管病変、アテローム硬化性心疾患、再潅流傷害、心臓伝導障害、心筋炎、心筋梗塞の1又は2以上から選択される、請求項5又は請求項6に記載の使用。
【請求項8】
移植片拒絶が慢性移植片拒絶である、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
移植片拒絶が免疫抑制薬の非存在下の慢性移植片拒絶である、請求項5に記載の使用。
【請求項10】
細菌が、ゴルドニア・ブロンチアリス、ゴルドニア・アマレア、ゴルドニア・スプチ、ゴルドニア・テレア、ノカルジア・アステロイド、ダイエツィア・マリス、ツカムレラ・パウロメタボラ、ロドコッカス・ルベル、ロドコッカス・ロドニイ、ロドコッカス・コルプロフィラス、ロドコッカス・オパカス、ロドコッカス・エリトポレス、ノカルジオイデス・アルバス及びツカムレラ・インコネンシスからなる群の1又は2以上から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
細菌を死滅させる、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
自己免疫疾患又は自己免疫異常を治療又は予防する方法であって、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物の有効量を対象に投与することを含み、前記組成物が細胞免疫応答を調節する、方法。
自己免疫疾患又は自己免疫異常を治療又は予防する方法であって、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む、細胞免疫応答を調節する薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物の有効量を対象に投与することを含む方法。
【請求項13】
自己免疫疾患又は自己免疫異常に対する免疫を対象に与える方法であって、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ダイエツィア属、ツカムレラ属及びノカルジオイデス属の1又は2以上の属に属する細菌の全細胞を含む薬剤組成物及び/又は免疫調節物質組成物を投与することを含む方法。
【請求項14】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が血管内膜の炎症を含む、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が血管の筋層又は心臓の筋層の炎症をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が、血管障害が先行するもの又は血管障害に起因するものである、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
自己免疫疾患又は自己免疫異常が、関節炎、特に関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節症、強皮症、甲状腺炎、移植後の内膜増殖、移植片拒絶及び血管障害の1又は2以上から選択される、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
血管障害が、自己免疫エレメントを含む血管障害である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
血管障害が、レイノー病又はレイノー現象、前部ブドウ膜炎、閉塞性血管障害、(動脈硬化症としても知られる)アテローム形成、動脈炎、(自然又は血管形成術後の)筋内膜増殖、血管の内膜及び/又は筋層の炎症性及び自己免疫性肥厚、炎症性血管病変、アテローム硬化性心疾患、再潅流傷害、心臓伝導障害、心筋炎、心筋梗塞の1又は2以上から選択される、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
移植片拒絶が慢性移植片拒絶である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
移植片拒絶が免疫抑制薬の非存在下の慢性移植片拒絶である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
細菌が、ゴルドニア・ブロンチアリス、ゴルドニア・アマレア、ゴルドニア・スプチ、ゴルドニア・テレア、ノカルジア・アステロイド、ダイエツィア・マリス、ツカムレラ・パウロメタボラ、ロドコッカス・ルベル、ロドコッカス・ロドニイ、ロドコッカス・コプロフィラス、ロドコッカス・オパカス、ロドコッカス・エリトポレス、ノカルジオイデス・アルバス及びツカムレラ・インコネンシスからなる群の1又は2以から選択される、請求項12から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
細菌を死滅させる、請求項12から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項12から23に実質的に記載された方法。
【請求項25】
請求項1から11に実質的に記載された使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−511493(P2007−511493A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538953(P2006−538953)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004783
【国際公開番号】WO2005/049056
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(506164545)ユーシーエル バイオメディカ ピーエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004783
【国際公開番号】WO2005/049056
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(506164545)ユーシーエル バイオメディカ ピーエルシー (1)
【Fターム(参考)】
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