説明

入り組んだ形態のフォームを用いた多層長寿命フィルタ

【課題】簡単且つ安価に製造して据え付けることができる内燃エンジン用濾過装置を提供する。
【解決手段】本発明は、濾過装置(10)の濾過層(12,14,16,18)は、フォームで作られ、これらの少なくとも1つの表面(18)には、回旋部(42)が設けられる。フィルタハウジング内に配置されるようになった複数の濾過層を有し、少なくとも1つの前記濾過層の少なくとも1つの表面は、フォームで作られ、少なくとも1つの入り組んだ表面を含む、フィルタエレメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置に関し、特に、入り組んだ表面を有する少なくとも1つの濾過層を含む濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンは、現行の効率及び耐久性に関する要件を満たすために清浄で濾過された空気を必要とする。エンジンに流入する空気から塵粒子、ミスト、煙粒子等を含む粒子状汚染要因物を除去するために種々の濾過装置が用いられている。
【0003】
典型的には、濾過装置は、ハウジング内に配置された濾過材を有する。流体、例えば空気が、ハウジング内に流入し、濾過材を通過する。流体が濾過材を通過しているときに、粒子状汚染要因物が流体から除去される。流体は、濾過材を通過した後、ハウジングから流出して所望の場所、例えば自動車エンジンに流入する。
【0004】
最大濾過能力及び効率を有すると共に通過する流体の流れ絞りを最小限に抑える濾過材を作ることが望ましい。米国特許第4,178,161号明細書は、剛性化された回旋状フォームの製造方法を開示しており、この場合、結果的に得られた製品をエアフィルタとして使用することができる。フォームを剛性化するための製造方法では、複数枚の回旋状フォームシートを嵌め合わせ、しかる後、フォームシートに熱硬化性メラミン、ウレア(尿素)又はベンゾグアナミン樹脂及び架橋剤の混合物を含浸させる。この樹脂混合物が反応した後、嵌め合わされたフォームシートを分離する。嵌め合わせ状態を解いた各シートを回旋状自立形エアフィルタとして使用することができる。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,178,161号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
簡単且つ安価に製造して据え付けることができ、濾過材により生じる流れ絞りが最小限に抑えられると共にその濾過能力及び効率が最大限に高められた内燃エンジン用濾過装置を製造することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従って、簡単且つ安価に製造して据え付けることができる内燃エンジン用濾過装置であって、濾過材により生じる流れ絞りが最小限に抑えられると共にその濾過能力及び効率が最適化された濾過装置が開発されたことは、驚くべきことである。
【0008】
一実施形態では、フィルタエレメントは、フィルタハウジング内に配置されるようになった複数の濾過層を有し、少なくとも1つの濾過層の少なくとも1つの表面は、フォーム又は発泡体で作られ、少なくとも1つの回旋状表面又は入り組んだ表面を含む。
【0009】
別の実施形態では、フィルタエレメントは、複数のフォーム濾過層を有し、フォーム濾過層は各々、少なくとも1つの回旋状表面を含む。
【0010】
別の実施形態では、フィルタエレメントは、フィルタハウジング内に配置されるようになった第1の濾過層と、フィルタハウジング内に第1の濾過層に隣接して配置された第2の濾過層と、フィルタハウジング内に第2の濾過層に隣接して配置された第3の濾過層と、フィルタハウジング内に第3の濾過層に隣接して配置された第4の濾過層とを有し、第1の濾過層、第2の濾過層、第3の濾過層、及び第4の濾過層のうちの少なくとも1つの濾過層の少なくとも1つの表面は、フォームで作られ、少なくとも1つの回旋状表面を含む。
【0011】
本発明の上記目的及び利点並びに他の目的及び利点は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面と関連して読むと、当業者には容易に明らかになろう。
【0012】
以下の詳細な説明及び添付の図面は、本発明の種々の例示の実施形態を記載している。詳細な説明及び図面は、当業者が本発明を構成して利用することができるようにするのに役立つが、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、第1の濾過層12、第2の濾過層14、第3の濾過層16及び第4の濾過層18を有するフィルタエレメント10を示している。追加の又はこれよりも少ない濾過層(図示せず)を用いてフィルタエレメント10を所望通りに形成しても良いことは言うまでもない。フィルタエレメント10は、フィルタハウジング(図示せず)内に配置されるようになっている。
【0014】
第1の濾過層12、第2の濾過層14及び第3の濾過層16は、平面図で見て、実質的に矩形の形状を有する。第1の濾過層12、第2の濾過層14及び第3の濾過層16は、所望に応じて他の形状を有しても良いことは言うまでもない。第1の濾過層12、第2の濾過層14及び第3の濾過層16は、汚染要因物、例えば落ちた炭素粉塵を集めることができるフォームで形成される。連続気泡フォーム、網状フォーム又は網状「連続気泡」ポリウレタンフォームを用いると、好ましい結果が得られることが判明した。連続気泡フォームの密度は、約1.75ポンド/立方フィート、即ち796g/立方フィート、即ち28,111g/m3である。他の材料を用いて第1の濾過層12、第2の濾過層14及び第3の濾過層16を所望通りに形成しても良いことは言うまでもない。図示の第1の濾過層12は、気孔(細孔)が1インチ(2.54cm)当たり約15〜30個、即ち、約15〜30ppi(pore(s) per inch)の気孔率を有する。図示の第2の濾過層14は、気孔(細孔)が1インチ(2.54cm)当たり約30〜65個、即ち、約30〜65ppi(pore(s) per inch)の気孔率を有する。図示の第3の濾過層16は、気孔(細孔)が1インチ(2.54cm)当たり約65〜80個、即ち、約65〜80ppi(pore(s) per inch)の気孔率を有する。第1の濾過層12、第2の濾過層14及び第3の濾過層16は、所望に応じて他の気孔率を有しても良いことは言うまでもない。
【0015】
第1の濾過層12、第2の濾過層14及び第3の濾過層16のそれぞれの第1の表面20,26,34は、それぞれこれらから側方外方に延びる複数個の突起22,28,36を有している。複数個の突起22,28,36は、それぞれの第1の表面20,26,34上に回旋部を形成するよう互いに協働する。図示の実施形態では、突起22,28,36は、それぞれの第1の表面20,26,34から複数の行及び列をなして規則的なパターンで延びている。突起22,28,36を所望に応じて他のパターン、例えばランダムなパターンで配置しても良いことは言うまでもない。オプションとして、隣り合う濾過層12,14,16相互間の相対運動を止めるようにするために、突起28,36のうちの1つ又は2つ以上の遠位端部30,38上には接着剤(図示せず)、例えばグルーが施されるのが良い。
【0016】
図示の実施形態では、第1の濾過層12、第2の濾過層14及び第3の濾過層16のそれぞれの第2の表面24,32,40は、実質的に平らである。第2の表面24,32,40は、所望に応じて他の形状、例えば第1の表面20,26,34について上述した形状を有しても良いことは言うまでもない。
【0017】
第4の濾過層18は、平面図で見て実質的に矩形の形状を有している。第4の濾過層18は、所望に応じて他の形状を有しても良いことは言うまでもない。第4の濾過層18は、汚染要因物、例えば落ちた炭素粉塵を集めることができるフォームで形成される。連続気泡フォーム、網状フォーム又は網状「連続気泡」ポリウレタンフォームを用いると、好ましい結果が得られることが判明した。連続気泡フォームの密度は、約1.75ポンド/立方フィート、即ち796g/立方フィート、即ち28,111g/m3である。他の材料を用いて第4の濾過層18を所望通りに形成しても良いことは言うまでもない。図示の第4の濾過層18は、気孔(細孔)が1インチ(2.54cm)当たり約80〜100個、即ち、約80〜100ppi(pore(s) per inch)の気孔率を有する。第4の濾過層18は、所望に応じて他の気孔率を有しても良いことは言うまでもない。
【0018】
図示の実施形態では、第4の濾過層18の第1の表面42は、これから側方外方に延びる複数個の突起44を有している。複数個の突起44は、第1の表面42上に回旋部を形成するよう互いに協働する。突起44は、第1の表面42から複数の行及び列をなして規則的なパターンで延びている。回旋部42を所望に応じて他のパターン、例えばランダムなパターンで配置しても良いことは言うまでもない。オプションとして、隣り合う濾過層16,18相互間の相対運動を止めるようにするために、突起44のうちの1つ又は2つ以上の遠位端部46上には接着剤(図示せず)、例えばグルーが施されるのが良い。
【0019】
図示の実施形態では、第4の濾過層18の第2の表面48は、これから側方外方に延びる複数個の突起50を有している。複数個の突起50は、第2の表面48上に回旋部を形成するよう互いに協働する。突起50は、第2の表面48から複数の行及び列をなして規則的なパターンで延びている。突起50を所望に応じて他のパターン、例えばランダムなパターンで配置しても良いことは言うまでもない。
【0020】
図示のように、濾過層16,18の長さ及び幅は、第4の濾過層18から第3の濾過層16まで減少している。濾過層16,18の長さ及び幅は、フィルタハウジングの寸法に実質的に適合するよう減少している。オプションとして、濾過層12,14,16,18の寸法は、フィルタハウジングの寸法よりも僅かに大きくても良い。したがって、濾過層12,14,16,18は、フィルタハウジング内に収納されたとき、フィルタハウジングの内部に嵌まるよう僅かに圧縮されるようになる。種々の寸法を有するフィルタハウジングの場合、濾過層12,14,16,18の寸法は、それに応じて変化することができる。
【0021】
フィルタエレメント10を組み立てるため、濾過層12,14,16,18を積み重ね関係に位置合わせする。接着剤を用いる場合、この接着剤を突起28,36,44の遠位端部30,38,46に施して濾過層12,14,16,18を互いにくっつける。次に、フィルタエレメント10をフィルタハウジングの内部に収納して所望の位置に配置する。
【0022】
使用にあたり、流体(図示せず)、例えば空気が、フィルタハウジングの入口を通って流れる。流体が第1の濾過層12を流通すると、汚染要因物、例えば塵粒子、ミスト、煙粒子等が流体から濾過される。第1の濾過層12の山部P1及び谷部V1が、第1の濾過層12の全表面積を最大にし、それにより第1の濾過層12の濾過能力を最大にしている。
【0023】
流体は、次に、第2の濾過層14を通って流れ、ここで、汚染要因物が更に濾過される。第2の濾過層14の気孔率は、第1の濾過層12の気孔率よりも大きいので、小さなサイズの汚染要因物は、第2の濾過層14によって濾過される。第2の濾過層14上に形成された回旋部は、第2の濾過層14の全表面積を最大にしている。かくして、第2の濾過層14の濾過能力は、最大限に高められている。
【0024】
次に、流体は、第3の濾過層16を通って流れ、ここで汚染要因物が更に濾過される。第3の濾過層16の気孔率は、第2の濾過層14の気孔率よりも大きいので、小さなサイズの汚染要因物は、第3の濾過層16によって濾過される。第3の濾過層16上に形成された回旋部は、第3の濾過層16の表面積を最大にしており、それにより、第3の濾過層16の濾過能力は、最大限に高められている。
【0025】
次に、流体は、第4の濾過層18を通って流れ、ここで汚染要因物が更に濾過される。第4の濾過層18の気孔率は、第3の濾過層16の気孔率よりも大きいので、小さなサイズの汚染要因物は、第4の濾過層18によって濾過される。第4の濾過層18上に形成された回旋部は、第4の濾過層18の表面積を最大にしている。したがって、第4の濾過層18の濾過能力は、最大限に高められている。第4の濾過層18の第2の表面48から延びる突起50が、フィルタエレメント10により生じる騒音を減少させることができ、他方、フィルタエレメント10を通る流体の流れを最大にすることが判明した。
【0026】
濾過層12,14,16,18の各々は、突起22,28,36,44,50を含む少なくとも1つの表面20,26,34,42,48を有するものとして示されているが、濾過層12,14,16,18のうち幾つかは、オプションとして、実質的に平らであり、回旋部を備えていなくても良い。変形例として、回旋部を濾過層のそれぞれの他の表面24,32,40上に形成しても良い。加うるに、濾過層12,14,16,18の気孔率を第1の濾過層12から第4の濾過層18まで増大するものとして説明したが、他の形態を所望に応じて用いることができ、例えば、全ての濾過層12,14,16,18は、実質的に同一の気孔率を有し、1つ又は2つ以上の隣り合う層の気孔率は、実質的に同一であり、又は、濾過層12,14,16,18の気孔率は、例えば、第1の濾過層12から第4の濾過層18まで減少する。
【0027】
上記説明から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明を種々の使用法及び条件に適合させるよう本発明の種々の変更及び改造を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態としてのフィルタ要素の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
10 フィルタエレメント
12,14,16,18 濾過層
20,26,34 第1の表面
22,28,36,44 突起
24,32,40 第2の表面
42 回旋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタエレメントであって、
フィルタハウジング内に配置されるようになった複数の濾過層を有し、少なくとも1つの前記濾過層の少なくとも1つの表面は、フォームで作られ、少なくとも1つの入り組んだ表面を含む、フィルタエレメント。
【請求項2】
前記少なくとも1つの濾過層の長さ及び幅は、前記フィルタハウジングの長さ及び幅よりも大きい、請求項1記載のフィルタエレメント。
【請求項3】
各前記濾過層は、フォームで作られ、少なくとも1つの入り組んだ表面を含む、請求項1記載のフィルタエレメント。
【請求項4】
前記少なくとも1つの濾過層は、15〜30ppiの気孔率を有する、請求項3記載のフィルタエレメント。
【請求項5】
前記少なくとも1つの濾過層は、30〜65ppiの気孔率を有する、請求項3記載のフィルタエレメント。
【請求項6】
前記少なくとも1つの濾過層は、65〜80ppiの気孔率を有する、請求項3記載のフィルタエレメント。
【請求項7】
前記少なくとも1つの濾過層は、80〜100ppiの気孔率を有する、請求項3記載のフィルタエレメント。
【請求項8】
前記濾過層は、積み重ね関係をなして配置されている、請求項1記載のフィルタエレメント。
【請求項9】
前記濾過層は、約15〜約100ppiの気孔率を有する、請求項1記載のフィルタエレメント。
【請求項10】
フィルタエレメントであって、
複数のフォーム濾過層を有し、前記フォーム濾過層は各々、少なくとも1つの入り組んだ表面を含む、フィルタエレメント。
【請求項11】
前記濾過層は、積み重ね関係をなして配置されている、請求項1記載のフィルタエレメント。
【請求項12】
少なくとも1つの前記濾過層の長さ及び幅は、フィルタハウジングの長さ及び幅よりも大きい、請求項10記載のフィルタエレメント。
【請求項13】
前記濾過層は、約15〜約100ppiの気孔率を有する、請求項10記載のフィルタエレメント。
【請求項14】
フィルタエレメントであって、
フィルタハウジング内に配置されるようになった第1の濾過層と、
前記フィルタハウジング内に前記第1の濾過層に隣接して配置された第2の濾過層と、
前記フィルタハウジング内に前記第2の濾過層に隣接して配置された第3の濾過層と、
前記フィルタハウジング内に前記第3の濾過層に隣接して配置された第4の濾過層とを有し、前記第1の濾過層、前記第2の濾過層、前記第3の濾過層、及び前記第4の濾過層のうちの少なくとも1つの濾過層の少なくとも1つの表面は、フォームで作られ、少なくとも1つの入り組んだ表面を含む、フィルタエレメント。
【請求項15】
前記第1の濾過層、前記第2の濾過層、前記第3の濾過層、及び前記第4の濾過層は、約15〜100ppiの気孔率を有する、請求項14記載のフィルタエレメント。
【請求項16】
前記フィルタハウジングは、車両の空気取入口内に配置されるようになっている、請求項14記載のフィルタエレメント。
【請求項17】
少なくとも1つの前記濾過層の長さ及び幅は、前記フィルタハウジングの長さ及び幅よりも大きい、請求項14記載のフィルタエレメント。
【請求項18】
前記第1の濾過層、前記第2の濾過層、前記第3の濾過層、及び前記第4の濾過層は各々、フォームで作られ、少なくとも1つの入り組んだ表面を含む、請求項14記載のフィルタエレメント。
【請求項19】
前記濾過層は、積み重ね関係をなして配置されている、請求項14記載のフィルタエレメント。
【請求項20】
前記第1の濾過層は、15〜30ppiの気孔率を有し、前記第2の濾過層は、30〜65ppiの気孔率を有し、前記第3の濾過層は、65〜80ppiの気孔率を有し、前記第4の濾過層は、80〜100ppiの気孔率を有する、請求項14記載のフィルタエレメント。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−229615(P2008−229615A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−54029(P2008−54029)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】