説明

入力系操作者判別装置

【課題】機器の操作手段がどの座席に着座した操作者により操作されたかを生体通信で検出する際、その操作者判別を簡素な判別処理で行うことができる入力系操作者判別装置を提供する。
【解決手段】高周波信号Fを発信可能な信号発生器11に、切換スイッチ12を介してD席シート電極5とP席シート電極6とを接続し、切換スイッチ12を介してこれら電極5,6から交互に高周波信号Fを出力する。ドライバー又はパッセンジャーがスイッチ電極10に触れると、生体通信により生じる人体の容量結合増加によって、コントローラ13に出力される検出信号Soutの電圧レベルが上昇する。コントローラ13は、切換スイッチ12のスイッチ状態と、検出信号Soutの電圧レベル変化とを用い、その時の入力スイッチ9の操作者がドライバーかパッセンジャーのどちらであるかを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者が機器を操作した際に、複数存在する操作者のうちどの操作者が機器を操作したのかを電極間を人体で繋ぐ生体通信を用いて判別する入力系操作者判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、車内運転環境の向上を目的に様々な各種装置が搭載されているが、その中の一つに、車内空調環境調整を行うエアーコンディショナー装置(以下、エアコン装置と記す)がある。この種のエアコン装置には、車内温度や風向きを設定する際の入力系となる各種スイッチが設けられるが、これらスイッチ類は運転席及び助手席のどちら側からでも操作できるように一般的に車内センタークラスターに配置されることが多い。また、場合によっては、運転者やパセンジャーがそのままの座った体勢でエアコン操作ができるように、例えば運転席や助手席の双方に専用のスイッチ類を各々設けることもあった。
【0003】
ところで、近年の車両においては、車両運行時に運転者に対して画面上に現在位置や目的地への走行経路案内を行うカーナビゲーション装置を搭載するものが増えている。この種のカーナビゲーション装置は、安全面を考慮して走行中における目的地設定等のスイッチ操作を禁止しなければならないが、仮に走行中において全操作を禁止してしまうと、パッセンジャー4bによる各種設定操作も禁止することになる。そこで、例えば上記したエアコン装置の例と同様に、運転席と助手席との各々にカーナビゲーション装置のスイッチを設けて、走行中のパッセンジャー4bによるカーナビゲーション操作を許容するとも考えられるが、この方法を用いると入力系の部品点数が多くなることから採用には難がある。
【0004】
そこで、少ない入力系部品で操作者判別を行うために、例えば特許文献1等には、入力系を共用して操作者判別を行うことが可能な生体通信を用いた技術が開示されている。この技術では、操作機器の操作部に1つの共用電極を設け、各座席シートに各々個別の電極を設ける。そして、座席に着座した操作者がカーナビゲーション装置の操作部を操作した際は電極間が人体で繋がることから、その時にカーナビゲーション装置が生体通信を介してリクエストを座席電極に送り、座席がそのリクエストに応答して自身の座席位置を生体通信でカーナビゲーション装置に知らせ、その際の操作者がどの座席の着座者かを判別する。
【特許文献1】特開2006−160115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術は、生体通信を用いて操作者判別を行っているものの、その操作者判別に際しては、カーナビゲーション装置がリクエストを座席に送り、そのリクエストに座席を応答させて座席から座席位置を返信させるという込み入った判別処理が必要になる。このように、カーナビゲーション装置と座席との間で信号を交互にやり取りする判別処理を用いると、カーナビゲーション装置と座席との各々に、生体通信による入力信号を読み取らせてそれに応じた処理を行わせる機能が必要となり、判別処理が複雑となる問題があった。
【0006】
本発明の目的は、機器の操作手段がどの座席に着座した操作者により操作されたかを生体通信で検出する際、その操作者判別を簡素な判別処理で行うことができる入力系操作者判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、座席に座った着座者が機器の操作手段を操作した際、複数ある前記座席のうちどの座席に座った前記着座者が前記操作手段を操作したのかを判別する入力系操作者判別装置であって、人体を経由可能な通知信号を発生する信号発生手段と、前記座席ごとに各々設けられ、前記信号発生手段から前記通知信号の供給を各々受ける複数の座席電極と、前記操作手段に設けた操作電極と、前記着座者が前記操作手段に触れて前記座席電極と前記操作電極とが人体を介して通電された際、その時の生体通信によって前記操作電極に流れる前記通知信号を取り込み、当該通知信号を用いて操作者判別を行う判別手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、座席に着座した操作者が機器の操作手段を操作すると、座席電極と操作電極とが人体で繋がり、信号発生手段から発生される通知信号が生体通信によって判別手段に出力される。判別手段はその取得した通知信号を用い、その時に操作手段を操作したのはどこの座席の着座者であるかを判別する操作者判別を行う。従って、生体通信時にやり取りされる信号は座席側から機器側という一方向のみの流れとなるので、例えば座席と機器との間で信号を交互にやり取りをする判別処理を用いた場合に比べ、生体通信の判別処理が簡素となる。
【0009】
本発明では、前記信号発生手段は、前記通知信号を発信する1つの信号発生器と、当該信号発生器が発信した前記通知信号の出力先を複数の前記座席電極の間で選択的に切り換える切換回路とを備えるとともに、前記判別手段は、前記切換回路の接続状態を見て前記通知信号の前記出力先を逐次認識し、操作者による前記操作手段の操作有無で変化する前記通知信号の信号レベル変化を検出し、前記出力先と前記信号レベル変化とを用いて前記操作者判別を行うことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、操作者が機器の操作手段を操作した際は人体による容量結合発生に伴って信号レベルが変化することから、判別手段はその信号レベル変化を見て操作手段の操作有無を認識する。そして、切換回路の接続状態を見れば、その時の通知信号はどこの座席電極から出力されたか分かるので、判別手段は切換回路の接続状態を見つつ、信号レベル変化を見ることによって操作者判別を行っている。この構成を用いれば、複数の座席電極間で1つの信号発生器が共用されるので、装置サイズ(回路基板サイズ)が小さく済む。
【0011】
本発明では、前記座席電極には、前記通知信号が印加される信号入力電極の他に、前記機器の基準電位点に繋がるグランド電極が設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、操作者とボディアースとの間の結合が一定になるので、操作者が電極に触れて生じる電気回路の結合容量は、操作者が操作手段を操作する際にボディアースに接触しても、それによって値は変化しない。このため、通知信号の信号レベル値は操作者のボディアース接触有無により変化しないので、操作者判別の精度を向上することが可能となる。
【0012】
本発明では、前記信号発生手段は、周波数の異なる前記通知信号を各々発信する複数の信号発生器を備えるとともに、前記判別手段は、前記生体通信確立時に前記電極及び前記操作者を通じて得られる前記通知信号の周波数を識別することにより、前記操作者判別を行うことを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、機器の操作者が操作手段を操作した際は、その操作者が変わる度に判別手段に出力される通知信号の周波数が変わるので、判別手段はその時々に入力した通知信号の周波数を見ることによって操作者判別を行っている。従って、この構成を用いれば、操作者が操作手段を操作したそのタイミングで、座席位置に応じた通知信号が判別手段に出力されることになり、操作手段が操作された際は直ぐに操作者判別の処理が開始されるので、仮に操作者検出対象が増えたとしても操作者判別を行う際に必要な処理時間が短時間で済む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機器の操作手段がどの座席に着座した操作者により操作されたかを生体通信で検出する際、その操作者判別を簡素な判別処理で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した入力系操作者判別装置の第1実施形態を図1〜図8に従って説明する。
【0016】
図1に示すように、乗用車等の車両1には、例えばカーナビゲーション装置2等の車載機器が車内のどの席に着座した者が操作したかを判別するスイッチ操作者判別装置3が設けられている。スイッチ操作者判別装置3は、座席着座者4の人体を信号通信経路として用いてスイッチ操作者を判別する生体通信式であって、本例においては運転席に着座したドライバー4aと助手席に着座したパッセンジャー4bとのどちらがカーナビゲーション装置2を操作しているのかを判別する。なお、カーナビゲーション装置2が機器に相当する。
【0017】
図2に示すように、スイッチ操作者判別装置3には、車内の各シートに埋設された複数(本例は運転席と助手席の2つ)の電極5,6が設けられている。本例においては、運転席シート7に埋設した電極をD席シート電極5とし、助手席シート8に埋設した電極をP席シート電極6とする。D席シート電極5及びP席シート電極は、例えば銅箔等を材質とした薄膜形状を成し、各々のシートにおいてそこに着座した着座者が接触可能となる位置に配置されている。なお、電極5,6が座席電極を構成し、シート7,8が座席を構成する。
【0018】
また、カーナビゲーション装置2の入力スイッチ9には、各種電極材から成るスイッチ電極10が設けられている。スイッチ電極10は、入力スイッチ9が通常の押しボタンやスライドスイッチ等から成る構造の場合、銅材等を材質としてこれらスイッチ内部に埋設され、カーナビゲーション装置2がタッチパネル式の場合、透明電極を材質としてカーナビゲーション装置2のタッチ画面に埋設される。入力スイッチ9が操作手段に相当し、スイッチ電極10が操作電極に相当する。
【0019】
スイッチ操作者判別装置3には、D席シート電極5やP席シート電極6に高周波信号Fを出力可能な信号発生器11が設けられている。信号発生器11は、車両のイグニッションスイッチが例えばACC位置やIGオン位置に操作されてスイッチ操作者判別装置3が稼働してから高周波信号Fを出力し続ける動作をとり、信号出力先を切り換える切換スイッチ12を介してD席シート電極5及びP席シート電極6に電気接続されている。本例のスイッチ操作者判別装置3は、信号発生器11の高周波信号Fの出力先を、D席シート電極5とP席シート電極6との間で繰り返し切り換えてスイッチ操作者判別を行うタイミング識別式が用いられている。
【0020】
切換スイッチ12は、D席シート電極5に繋がるD席側固定接点12aと、P席シート電極6に繋がるP席側固定接点12bと、これら固定接点12a,12bの間で位置状態が切り換わる可動接点12cとから成る。可動接点12cがD席側固定接点12aに接続して切換スイッチ12が第1スイッチ状態(図2の実線で示す状態)となると、信号発生器11はD席シート電極5と電気的に結線された状態となり、可動接点12cがP席側固定接点12bに接続して切換スイッチ12が第2スイッチ状態(図2の破線で示す状態)となると、信号発生器11はP席シート電極6と電気的に結線された状態となる。なお、信号発生器11が信号発生手段を構成し、切換スイッチ12が信号発生手段(切換回路)を構成し、高周波信号Fが通知信号に相当する。
【0021】
スイッチ操作者判別装置3には、スイッチ操作者判別系のコントロールユニットとしてコントローラ13が設けられている。このコントローラ13は、CPU、ROM、RAM及び駆動回路等の各種デバイスから成るとともに、その出力系端子13aが切換スイッチ12に接続され、入力系端子13bが検出回路14を介してスイッチ電極10に接続されている。検出回路14は、スイッチ電極10から搬送されてきた高周波信号Fを増幅して出力するアンプ15と、そのアンプ15から得た入力信号をAM検波して出力する検波器16とから成る。なお、コントローラ13及び検出回路14が判別手段を構成する。
【0022】
コントローラ13は、切換スイッチ12に矩形波の切換信号Sswを出力して切換スイッチ12のスイッチ状態を切り換えるが、本例においてはHレベルの切換信号Sswを切換スイッチ12に加えることにより切換スイッチ12を第1スイッチ状態とし、Lレベルの切換信号Sswを切換スイッチ12に加えることにより切換スイッチ12を第2スイッチ状態とするスイッチ切り換えを行う。コントローラ13は、切換スイッチ12のスイッチ状態を切り換えるとき、切換信号SswのHLレベルを見ることにより、切換スイッチ12が第1スイッチ状態及び第2スイッチ状態のどちらにあるのかを認識する。
【0023】
車内のシートに着座した着座者4が入力スイッチ9を操作すると、人体を信号通信経路としてシート側電極(即ち、D席シート電極5又はP席シート電極6)とスイッチ電極10とが生体通信により電気的に繋がった状態となる。例えば、ドライバー4aが入力スイッチ9を操作した際は、D席シート電極5とスイッチ電極10とがドライバー4aを介して電気的に繋がった状態となり、D席シート電極5から発せられる高周波信号Fは、ドライバー4aを介した生体通信により、スイッチ電極10から所定の電圧レベルを持った検出信号Soutとしてコントローラ13に出力される。また、パッセンジャー4bが入力スイッチ9を操作した場合も同様である。
【0024】
コントローラ13は、検出回路14から出力される検出信号Soutの電圧値(電圧レベル)を逐次監視し、入力スイッチ9の操作有無を判別する。ところで、電極5,6,10、信号発生器11及び検出回路14等から成る本例のスイッチ操作者判別装置3の判別回路17では、D席シート電極5やP席シート電極6がスイッチ電極10と人体により生体結合した際、人体により第1容量C1が生じた状態となり、判別回路17の容量結合が増加して、図3及び図4に示すように検出信号Soutの電圧値(電圧レベル)Vaが高くなる。コントローラ13は、検出信号Soutの電圧値Vaが最も低いポイントを基準にして電圧差(電圧レベル差)Vkを逐次算出し、その電圧差Vkが規定値Vx以上となったか否かを見ることにより、スイッチ操作者有無を判別する。
【0025】
コントローラ13は、検出信号Soutの電圧差Vkが規定値Vx以上となってスイッチ操作者有りと判別した際、この時の切換信号SswのHLレベルを見ることにより、その時のスイッチ操作者がドライバー4a及びパッセンジャー4bのどちらであるかを判別する。本例においてコントローラ13は、検出信号Soutの電圧差Vkが規定値Vx以上の時に切換信号SswがHレベルであれば、その時のスイッチ操作者をドライバー4aと判別し、検出信号Soutの電圧差Vkが規定値Vx以上の時に切換信号SswがLレベルであれば、その時のスイッチ操作者をパッセンジャー4bと判別する。
【0026】
さて、パッセンジャー4bがカーナビゲーション装置2の入力スイッチ9を操作すると、P席シート電極6とスイッチ電極10とがパッセンジャー4bにより人体結合し、スイッチ操作者判別装置3の判別回路17はパッセンジャー4bにより容量結合が増加する。このときは、図3に示すように、切換信号SswがHレベルとなるタイミングで検出信号Soutの電圧差Vkが規定値Vx以上の値をとる状態となる。これにより、コントローラ13は、切換信号SswがHレベルの時に電圧差Vkが規定値Vx以上となる検出信号Soutを入力することから、この時の入力スイッチ9の操作者がパッセンジャー4bであると判別し、カーナビゲーション装置2の操作を許可する。
【0027】
また、ドライバー4aがカーナビゲーション装置2の入力スイッチ9を操作すると、D席シート電極5とスイッチ電極10とがドライバー4aにより人体結合し、スイッチ操作者判別装置3の判別回路17はドライバー4aにより容量結合が増加する。このときは、図4に示すように、切換信号SswがLレベルとなるタイミングで検出信号Soutの電圧差Vkが規定値Vx以上の値をとる状態となる。これにより、コントローラ13は、切換信号SswがLレベルの時に電圧差Vkが規定値Vx以上となる検出信号Soutを入力することから、この時の入力スイッチ9の操作者がドライバー4aであると判別し、カーナビゲーション装置2の操作を禁止する。
【0028】
従って、本例においては、カーナビゲーション装置2を操作した操作者がドライバー4aかパッセンジャー4bなのかを判別するに際して、各シート7,8と入力スイッチ9とに検出用電極を各々設け、信号発生器11の信号出力先を切換スイッチ12で切換、スイッチ操作者がこれら電極に触れた際に電極を介して得られる検出信号Soutの電圧レベル変化と、信号発生器11の信号出力先とを見てスイッチ操作者を判別する。このため、操作者がシート電極5(6)及びスイッチ電極10に触れてスイッチ操作を行った際、この時にやり取りされる信号は信号発生器11からコントローラ13に送られる高周波信号Fの一方向のみの流れとなるので、例えばシート7(8)とコントローラ13との間でリクエストやその応答をやり取りする判別処理を用いた場合に比べ、判別処理を簡素なものとすることが可能となる。
【0029】
ところで、本例のように各シート7,8に高周波信号Fの出力電極としてD席シート電極5及びP席シート電極6を各々設け、スイッチ操作者が入力スイッチ9に触れた際にそれに内蔵されているスイッチ電極10の出力電圧が変化する特性を用い、スイッチ電極10の電圧差Vkを見てスイッチ操作者を判別する場合、仮にスイッチ操作者がボディアースに接近すると、図5に示すように判別回路17に人体による第2容量C2が生じ、判別回路17の容量結合が増加してしまう。この第2容量C2は、電気回路で見た場合、第1容量C1に対して並列に生じた状態となる。この場合、図6に示すように検出信号Soutのピーク値が大きく現象してしまい、スイッチ操作者が入力スイッチ9を操作しても、その時の検出信号Soutの電圧差Vkが規定値Vx以上とならなくなって、スイッチ操作者誤判別という問題が生じてしまう。
【0030】
そこで、シート電極5,6は、図7に示すように通常の信号入力電極5aの他に、GNDに接地されたGNDパターン5bを設けた構造となっていてもよい。図7に示すシート電極5,6は、円形薄膜状の信号入力電極5aの周囲に、半径方向に所定間隔をおいて例えば銅箔等から成るリング状のGNDパターン5bを配置させ、これら信号入力電極5aとGNDパターン5bとを透明な一対の薄膜状のラミネート18a,18bで挟み込んだ構造をとっている。なお、シート電極5,6は、図8に示すようにくしば状の信号入力電極5aとGNDパターン5bとを噛み合わせた形状を成すものでもよい。
【0031】
このように、シート電極5,6にGNDパターン5bを設ければ、スイッチ操作者とボディアースとの間の結合は一定となる。このため、スイッチ操作者が入力スイッチ9を操作した際に、コントローラ13がスイッチ電極10から得る検出信号Soutの電圧差Vkは、スイッチ操作者がボディアースに接近していても或いは接近していなくても、その値はレベル減少後のVk1をとり、値が大きく変化しないことになる。このため、検出信号Soutの電圧レベルはスイッチ操作者とボディアースとの間での容量結合変化に影響を受けず値が安定することになり、これはスイッチ操作者の誤判定防止に効果が高い。なお、電圧差VkがVk1のように小さな値をとることになっても、これは検出回路14で増幅されるので、電圧レベル判定で問題が生じることはない。
【0032】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)信号発生器11で発生した高周波信号FがD席シート電極5とP席シート電極6とから交互に出力されるようにその信号出力先を切換スイッチ12で切り換え、運転席シート7や助手席シート8に着座した着座者4が入力スイッチ9を操作すると、信号発生器11で出力された高周波信号Fが生体通信によりコントローラ13に流れる。そして、この時にコントローラ13で検出される検出信号Soutの電圧値Vaは人体による容量結合増加に伴って上昇することから、その電圧差Vkが規定値Vx以上となった際に、その時の切換信号Sswのレベル状態を見てどちらのシート電極5,6から信号発信が行われたかを確認し、入力スイッチ9の操作者がドライバー4a及びパッセンジャー4bのどちらであるかを判別する。従って、スイッチ操作者判別処理は、信号発生器11からコントローラ13側に向かって高周波信号Fのみが流れる生体通信を用いた判別処理となるので、生体通信時に流れる信号は一方向のみに流れる通信をとることから、スイッチ操作者判別処理が簡素なものとなる。
【0033】
(2)スイッチ操作者判別方法としてタイミング識別式を用いた場合、D席シート電極5とP席シート電極6との間で信号発生器11が共用されるので、高周波信号Fの発生に必要な信号発生器11を1つで済ますことができ、しかも検出回路14も1つで済む。従って、スイッチ操作者判別装置3の装置サイズ(回路基板サイズ)を小型にでき、これに伴いスイッチ操作者判別装置3の部品に要するコストも低く抑えることができる。
【0034】
(3)シート電極5,6にGNDパターン5bを形成した場合、スイッチ操作者とボディアースとの間の結合は一定となることから、スイッチ操作者が入力スイッチ9を操作する際、スイッチ操作者がボディアースに接近していても或いは接近していなくても、コントローラ13がスイッチ電極10から得る検出信号Soutの電圧値Vaは大きく変化しない。従って、スイッチ操作者がボディアースに接近している時とそうでない時との両方で同じ判別結果を得ることができ、これはスイッチ操作者判別の精度向上に効果が高い。
【0035】
(4)スイッチ操作者有無を判別する際、切換スイッチ12がオフになって信号発生器11と繋がっていない時の電圧値Vaを基準とした電圧差Vkを求め、この電圧差Vkが規定値Vx以上となれば、スイッチ操作有りと判別する。ところで、仮に切換スイッチ12がオンとなってスイッチ操作がない時の電圧値Vaを基準電圧として用いることも可能であるが、この場合は例えば使用環境の変化に伴いピーク値が上昇する懸念もあり、ここを電圧基準とするとスイッチ操作者の誤判別の原因にもなる。しかし、切換スイッチ12がオフになって信号発生器11と繋がっていない時の電圧値Vaは使用環境の変化に問わず不変であることから、この電圧値Vaを電圧基準として電圧差Vkを求めるようにすれば、スイッチ操作者の誤判別は生じ難くなる。
【0036】
(5)例えばスイッチ類を運転席と助手席との各々に設けてスイッチ操作者を判別する方法を用いなくても、スイッチ操作者を判別することができる。従って、入力スイッチ9が操作された際にそのスイッチ操作者がドライバー4aとパッセンジャー4bのどちらであるかの判別を少ない部品点数を行うことができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図9に従って説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態に記載のスイッチ操作者判別方法をタイミング識別式ではなく、これを周波数識別式に変更した点が異なっており、それ以外の基本的な部分については同様の構成であることから、同一部分は同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0038】
図9に示すように、スイッチ操作者判別装置3には、各シート電極5,6ごとに個別の信号発生器11a,11bが設けられている。本例においては、D席シート電極5に接続されたものを第1信号発生器11aとし、P席シート電極6に接続されたものを第2信号発生器11bとする。これら信号発生器11a,11bは、各々異なる周波数の高周波信号F1,F2を発信し、本例においては第1信号発生器11aが第1高周波信号F1をD席シート電極5に供給し、第2信号発生器11bが第2高周波信号F2をP席シート電極6に供給する。
【0039】
また、検出回路14には、予め決められた周波数帯のみの信号を通すバンドパスフィルタ14a,14bが、シート電極5,6の数(本例は2つ)に合わせて設けられている。本例においては、第1信号発生器11aが出力した第1高周波信号F1を通し得るものを第1バンドパスフィルタ14aとし、第2信号発生器11bが出力した第2高周波信号F2を通し得るものを第2バンドパスフィルタ14bとする。D席シート電極5とスイッチ電極10とが人体結合すると、検出回路14には第1高周波信号F1が入り、これは第1バンドパスフィルタ14aを通過してアンプ15及び検波器16を通り、これがD席タッチ検出信号Sout1としてコントローラ13に出力される。また、P席シート電極6とスイッチ電極10とが人体結合すると、検出回路14には第2高周波信号F2が入り、これは第2バンドパスフィルタ14bを通過してアンプ15及び検波器16を通り、これがP席タッチ検出信号Sout2としてコントローラ13に出力される。
【0040】
コントローラ13は、検出回路14から入力する検出信号(D席タッチ検出信号Sout1、P席タッチ検出信号Sout2)の周波数を見てスイッチ操作者判別を行う、いわゆる周波数識別式を用いてこの種の操作者判別を行う。本例のコントローラ13は、検出回路14から得た入力信号がD席タッチ検出信号Sout1であれば、その時のスイッチ操作者をドライバー4aと判別してカーナビゲーション装置2の操作を禁止し、検出回路14から得た入力信号がP席タッチ検出信号Sout2であれば、その時のスイッチ操作者をパッセンジャー4bと判別してカーナビゲーション装置2の操作を許可する。
【0041】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態の(1)及び(5)に記載の効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
(6)スイッチ操作者判別方法として周波数識別式を用いた場合、スイッチ操作者が入力スイッチ9を操作したそのタイミングで、座席位置に応じた周波数を持つ高周波信号F,1,F2がコントローラ13に送られることになり、入力スイッチ9が操作された際は直ぐにスイッチ操作者判別が開始されることになる。従って、例えば検出する座席数を増やすべくシート電極数が増加したとしても、スイッチ操作者判別に必要な処理時間は不変であることから、スイッチ操作者判別の処理時間を長く要してしまうような心配はない。
【0042】
なお、本実施形態はこれまでの構成に限定されず、以下の態様に変更してもよい。
・ 第1実施形態において、切換回路は必ずしもa接点式の切換スイッチ12に限定されず、例えばこれは、トランジスタ等のスイッチング素子を用いて信号出力先を切り換える回路でもよい。この場合、切換回路のサイズが小型で済み、入力系操作者判別装置の更なる小型化に効果が高い。
【0043】
・ 第1実施形態において、スイッチ操作者有無判別時の電圧差Vkの取り方は、電圧値Vaが最も低いポイントを基準とした差として取る方法に限定されない。例えば、図3及び図4に示す電圧波形では、入力スイッチ9への操作が無い状態で切換スイッチ12がP席側固定接点12bにスイッチ接続された際は電圧値Vaが若干上昇する傾向をとるが、この時の若干量上昇したポイントの電圧値を基準に電圧差Vkを求めてもよい。
【0044】
・ 第1及び第2実施形態において、スイッチ操作者判別対象は、ドライバー4a及びパッセンジャー4bの二者に限定されない。例えば、後部座席シートにも電極を設け、ドライバーとパッセンジャーと後部シート着座者の三者以上の中で誰が入力スイッチ9を操作したかのを判別してもよい。
【0045】
・ 第1及び第2実施形態において、座席着座者によって操作される機器は、必ずしもカーナビゲーション装置2に限定されない。例えば、これはセンタークラスターに存在するエアーコンディショナー装置やオーディオ装置等の他の装置でもよい。
【0046】
・ 第1及び第2実施形態において、信号入力電極5a及びGNDパターン5bの形状組み合わせは、図7に示す円形状及びリング形状や、図8に示すくしば形状及びコ字形状の組み合わせに限らず、シート7,8に着座した着座者と接触可能な形状であれば、これは特に限定されない。
【0047】
・ 第1及び第2実施形態において、電極5,6,10の材質は、必ずしも銅箔に限定されず、これは酸化インジニウムスズ、酸化スズ、亜鉛などでもよい。
・ 第1及び第2実施形態において、本例の入力系操作者判別装置の搭載対象は、必ずしも車両1に限定されない。即ち、複数人の座席着座者が存在する場合に、この中の誰が入力系を操作したのかを判別する必要のある機器や装置であれば、この採用対象は特に限定されない。
【0048】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(1)請求項2又は3において、前記判別手段は、前記切換回路がオフになって前記信号発生器と繋がっていない時の信号レベル値を基準として前記信号レベル差を求め、当該信号レベル差が規定値以上になれば、前記操作者により前記操作手段が操作されたと認識する。この場合、切換回路がオフになって信号発生手段と繋がっていない時の信号レベル値は使用環境の変化に問わず不変であることから、この信号レベル値を基準に求めた信号レベル差で操作者判別を行えば、精度の高い者判別を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態における車内の概略構成を示す平面図。
【図2】入力系操作者判別装置の構成を示すブロック図。
【図3】パッセンジャーが入力系を操作する際の切換信号及び検出信号の波形図。
【図4】ドライバーが入力系を操作する際の切換信号及び検出信号の波形図。
【図5】他の入力系操作者判別装置の構成を示すブロック図。
【図6】パッセンジャーが入力系を操作する際の切換信号及び検出信号の波形図。
【図7】シート電極の具体例を示す分解斜視図。
【図8】他のシート電極の具体例を示す分解斜視図。
【図9】第2実施形態における入力系操作者判別装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0050】
2…機器としてのカーナビゲーション装置、4…着座者、5…座席電極を構成するD席シート電極、5a…信号入力電極、5b…グランド電極としてのGNPパターン、6…座席電極を構成するP席シート電極、7,8…座席としてのシート、9…操作手段としての入力スイッチ、10…操作電極としてのスイッチ電極、11(11a,11b)…信号発生手段を構成する信号発生器、12…信号発生手段(切換回路)を構成する切換スイッチ、13…判別手段を構成するコントローラ、14…判別手段を構成する検出回路、F(F1,F2)…通知信号としての高周波信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に座った着座者が機器の操作手段を操作した際、複数ある前記座席のうちどの座席に座った前記着座者が前記操作手段を操作したのかを判別する入力系操作者判別装置であって、
人体を経由可能な通知信号を発生する信号発生手段と、
前記座席ごとに各々設けられ、前記信号発生手段から前記通知信号の供給を各々受ける複数の座席電極と、
前記操作手段に設けた操作電極と、
前記着座者が前記操作手段に触れて前記座席電極と前記操作電極とが人体を介して通電された際、その時の生体通信によって前記操作電極に流れる前記通知信号を取り込み、当該通知信号を用いて操作者判別を行う判別手段と
を備えたことを特徴とする入力系操作者判別装置。
【請求項2】
前記信号発生手段は、前記通知信号を発信する1つの信号発生器と、当該信号発生器が発信した前記通知信号の出力先を複数の前記座席電極の間で選択的に切り換える切換回路とを備えるとともに、
前記判別手段は、前記切換回路の接続状態を見て前記通知信号の前記出力先を逐次認識し、操作者による前記操作手段の操作有無で変化する前記通知信号の信号レベル変化を検出し、前記出力先と前記信号レベル変化とを用いて前記操作者判別を行うことを特徴とする請求項1に記載の入力系操作者判別装置。
【請求項3】
前記座席電極には、前記通知信号が印加される信号入力電極の他に、前記機器の基準電位点に繋がるグランド電極が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の入力系操作者判別装置。
【請求項4】
前記信号発生手段は、周波数の異なる前記通知信号を各々発信する複数の信号発生器を備えるとともに、
前記判別手段は、前記生体通信確立時に前記電極及び前記操作者を通じて得られる前記通知信号の周波数を識別することにより、前記操作者判別を行うことを特徴とする請求項1に記載の入力系操作者判別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−120211(P2008−120211A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305465(P2006−305465)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】