説明

入力装置およびその入力装置を用いた電子機器

【課題】薄型化することが可能な入力装置およびその入力装置を用いた電子機器を提供すること。
【解決手段】押圧動作の履歴から操作信号を規制する入力装置2は、押圧されることで変形する導電性シート5と、変形によって導電性シート5と接触し導通する固定接点7が配置されている基板4と、対向する導電性シート5の面と基板4との間に配置される絶縁部材6と、を備えるものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置およびその入力装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に用いられる入力装置の一部には、いわゆる、ポインティングデバイスが採用されている。ポインティングデバイスとしては、感圧部材が押圧されることにより、押圧された領域および押圧量を検出するものが知られている(たとえば、特許文献1を参照。)。
【0003】
上述の感圧部材としては、樹脂製のシートに抵抗膜が形成されたものが用いられ、また、抵抗膜と隙間を隔てて対向するプリント基板には、感圧用パターン(固定接点)が設けられている。
【0004】
上述のポインティングデバイスにおいて、樹脂製のシートを、プリント基板の方向へ押圧すると、抵抗膜が固定接点に接触し、それらが電気的に導通する。さらに、抵抗膜と固定接点との接触面積が大きくなると、流れる電流量が増加することから、押圧された領域の押圧量を検出できるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−99188号公報(特許請求の範囲など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の発明では、ポインティングデバイスを薄型化するのが困難であるという問題がある。なぜなら、抵抗膜と固定接点とが接触しないように、抵抗膜と固定接点との隙間を十分に設ける必要があるためである。
【0007】
また、押圧量を精度よく検出するためには、抵抗膜が一定以上の厚みを有している必要がある。そのため、さらに一層、ポインティングデバイスを薄型化するのが困難である。
【0008】
そこで、本発明は、薄型化することが可能な入力装置およびその入力装置を用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る入力装置は、押圧動作の履歴から操作信号を生成する入力装置において、押圧されることで変形する導電性シートと、変形によって導電性シートと接触し導通する固定接点が配置されている基板と、対向する導電性シートの面と基板の面との間に配置される絶縁部材と、を備える。
【0010】
本発明に係る入力装置によれば、初期状態として、導電性シートと基板の面との両者で絶縁部材を挟み込む状態とすることができる。この本発明の入力装置は、従来の抵抗膜のような大きな厚みを要する部材を要しない。よって、薄型化することが可能な入力装置を提供できる。
【0011】
また、他の本発明に係る入力装置は、上述の発明に加え、押圧シートを有し、押圧シートの面には突起部が設けられ、突起部が前記固定接点と対向されている。この構成を採用することによって、押圧によって確実に導電性シートと固定接点とを接触させることができる。
【0012】
また、他の本発明に係る入力装置は、上述の発明に加え、絶縁部材は、導電性シートの面に固着されている。この構成を採用することによって、絶縁部材が、導電性シートに対して固着されているため、絶縁部材を所望の位置に配置しやすいものとなる。
【0013】
また、本発明に係る電子機器は、上述の入力装置と、入力装置からの信号に基づいて操作される内容を判断する判断部と、判断部の判断に基づいて操作内容を実行する実行部と、実行される内容を表示する表示部とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、入力装置およびその入力装置を用いる電子機器の薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子機器を操作面側から見た斜視図である。
【図2】図1のA−A線で切断した断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】図1の入力装置が有する基板を表面から見た場合の上面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る入力装置の製造方法の流れについて説明するフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係る電子機器を操作面側から見た斜視図である。
【図6】第2の実施の形態に係る入力装置を図5のB−B線で切断した断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図7】第2の実施の形態に係る入力装置の基盤を表面から見た場合の上面図である。
【図8】第3の実施の形態に係る入力装置を図5のB−B線で切断した断面を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の実施の形態に係る電子機器について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、第1の実施の形態に係る電子機器1の斜視図である。電子機器1は、略直方体状であり、その操作面には、略長方形の入力装置2と表示部3とが露出している。以後、操作面側を表面側、操作面と逆の面側を裏面側という。
【0018】
図2は、電子機器1を、図1中のA−A線を含む操作面に略垂直な面で切断し、矢印方向に見た場合の断面を拡大して示す拡大断面図である。なお、図を見やすくするため、各層の縮尺は一定ではない。図3は、入力装置2の基板4を、表面側から見た場合の上面図である。
【0019】
図2に示すように、入力装置2は、その表面側に導電性シート5を有すると共に、導電性シート5の裏面側には、隙間を有して導電性シート5と対向する基板4を有する。基板4と導電性シート5との間であって、点線で示される位置に、複数の絶縁部材6が介在することにより、その基板4と導電性シート5との隙間が形成されている。また、隣り合う絶縁部材6は、互いに離間している。また、基板4の表側の一部であって、絶縁部材6と重ならない位置には、固定接点7が形成されている。
【0020】
基板4としては、固定接点7等の配線が形成されているプリント基板を好適に用いることができる。具体的には、絶縁性のある樹脂を含浸した基板4に、銅箔等の導電体にて固定接点7およびそれらを接続する配線(不図示)等が形成されている。
【0021】
導電性シート5は、その表面側から押圧されると、基板4の方向に向かって押しこまれることにより、固定接点7と導通し、電気信号を生じさせる部材である。したがって、導電性シート5としては、指が触れた際に変形することのできる柔らかく、かつ導電性の高い材料で形成されるのが好ましい。また、このような導電性シート5は、導電性シート5と固定接点7とが接触した際に十分な電流が流れると共に、絶縁部材6よりも導電率が高い材料から構成されることが好ましい。なお、導電性シート5は、加飾されていてもよい。あるいは、加飾された別の可撓性のシートあるいはフィルムを、導電性シート5に貼り合わせるようにしてもよい。具体的には、厚さが約0.05〜0.1mmであり、かつショアA硬度が20〜90である導電性シート5が特に好適に用いられる。そのような導電性シート5として、例えば、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムあるいは天然ゴム等に、カーボン等の導電性フィラーを分散させたものを好適に用いることができる。
【0022】
絶縁部材6は、導電性シート5と固定接点7との間に隙間を形成するための介在部材である。絶縁部材6は、たとえば、直径が1mmの略半球状の部材である。本実施の形態において、絶縁部材6は、その半球の断面が導電性シート5に固着されて、その球面が基板4の方向へ突出している。絶縁部材6が導電性シート5から突出している高さの分だけ、導電性シート5と固定接点7との間に隙間が形成される。また、絶縁部材6は、ショアA硬度が50〜80度の弾性体から主に形成されるのが好ましい。なぜなら、ユーザが導電性シート5を基板4に向かって押圧した際に、絶縁部材6も、その押圧に伴い変形し、導電性シート5が固定接点7に接触しやすくなるからである。
【0023】
固定接点7は、たとえば、めっき等により基板4に形成された導電部分である。本実施の形態において、固定接点7は、図3に示すように、約5mmの直径を有する円形であり、櫛歯状の一対の電極がその円の中に互いに接触することなく噛み合った状態で形成されている。また、固定接点7は、基板4の操作領域(図3のPで示される領域)に配列されている。より具体的には、図3に示すように、15個の固定接点7が、3行5列で配列している。
【0024】
上述のような入力装置2に指が触れると、触れた部分の導電性シート5が撓み、導電性シート5が固定接点7の一部に接触する。すると、固定接点7を構成する一対の電極は、短絡する。さらに、指が固定接点7と重なるような位置で導電性シート5を押圧すると、固定接点7と導電性シート5との接触面積が増加する。1つまたは複数の固定接点7について、固定接点7と導電性シート5との接触面積の変化に応じて生じる電圧値あるいは抵抗値の変化を、電子機器1の内部に配置される判断部、および実行部としての中央処理装置(不図示)が測定することにより、入力装置2は、指の触れている位置を把握することができる。
【0025】
たとえば、図3の矢印に沿って、操作面を指でなぞると、まず、Aに示す領域では、固定接点7aが通電する。この結果、固定接点7aに指が触れられていることが検出される。次に、指がBに示す領域に移動すると、固定接点7aと固定接点7bとが通電する。さらに、固定接点7aと導電性シート5との接触面積および固定接点7bと導電性シート5との接触面積が小さいため、固定接点7aおよび固定接点7bには、その面積に応じて導電シート5に印加された電圧値が変化する。この変化した電圧値は、たとえば、A/D(Analog to Digital)変換器(不図示)で検出できる。さらに、指がCに示す領域に移動すると、固定接点7bが通電する。この結果、固定接点7aから固定接点7bの方向に、向かって指が移動したことが検出される。
【0026】
上述のように、入力装置2は、指の触れた位置の移動方向を検出することができる。また、絶縁部材6が導電性シート5と基板4との間に介在するため、導電性シート5と固定接点7とが非接触の状態を維持できる。特に、入力装置2に加えられた振動等により、導電性シート5と固定接点7とが誤接触する危険性が低くなる。このように、絶縁部材6を形成して導電性シート5と固定接点7とを確実に離すことができるので、入力装置2の薄型化が容易となる。
【0027】
次に、入力装置2の製造方法について説明する。図4は、入力装置2の製造方法の流れを説明するフローチャートである。
【0028】
まず、導電性フィラー(たとえば、カーボン粒子等の導電性粒子)が混入された導電性シート5を用意する。具体的には、まず、ケッチェンブラックを10%程度配合したシリコーンゴムコンパウンドKE9510(信越化学工業株式会社製)10重量部、生ゴムKE78VBS(信越化学工業株式会社製)2重量部、および架橋剤C8(信越化学工業株式会社製)1重量部を加えて混練した。そして、混練された未加硫導電ゴムを、プレス機で加熱成型し導電性シート5を成型した。
【0029】
その導電性シート5の片面に、ディスペンサ等により絶縁部材6を塗布し硬化させる(ステップS101:絶縁部材形成ステップ)。たとえば、シリコーンゴムを主に含むインキにて、0.5mmの半径を有する半球状の絶縁部材6を、固定接点を囲む位置に形成する。ここで、絶縁部材6は、ディスペンサに限らず、絶縁部材6を別に形成し、接着剤にて貼り付ける、あるいは、導電性シート5と絶縁部材6とを一体成形もしくはスクリーン印刷、ピン転写するような形態であってもよい。
【0030】
次に、固定接点7等の配線が形成されている基板4を用意し、固定接点7が配置されている基板4の面に、絶縁部材6が配置されている面が対向するように、導電性シート5を配置する(ステップS102:配置ステップ)。
【0031】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る電子機器10およびその電子機器10が備える入力装置11について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図5は、第2の実施の形態に係る電子機器10の斜視図である。また、図6は、図5の入力装置11を、B−B線を含む操作面に略垂直な面で切断し、矢印方向に見た場合の断面図である。さらに、図7は、第2の実施の形態において、基板4の面を表面側から見た場合の上面図である。なお、Mで示す点線には、操作パネル12が配置され、Nで示す一点鎖線の領域には、キートップ13が配置される。また、押圧方向に投影した絶縁部材16の領域を点線で示している。なお、以後の説明において、第1の実施の形態にて用いる要素と同じものには、同じ番号を用いて説明する。
【0033】
第2の実施の形態に係る電子機器10に組み込まれる入力装置11の操作面には、押圧シートとしての環状の操作パネル12と、操作パネル12の内周に配置されるキートップ13と、が露出している。
【0034】
図6に示すように、第2の実施の形態に係る入力装置11において、操作パネル12とキートップ13は、弾性シート14に貼り付けられている。また。弾性シート14の裏面側において、固定接点7と重なる位置に、突起部としての弾性部材15が固定されている。さらに、弾性部材15の先端は、絶縁部材16を裏面に有する導電性シート17が配置されている。本実施の形態において、導電性シート17は、環状であると共に、操作パネル12の裏面に対応する領域に配置されている。
【0035】
弾性シート14は、操作パネル12およびキートップ13を電子機器1の操作面に保持するためのシート状部材である。弾性シート14は、操作パネル12あるいはキートップ13の押し込みに伴い容易に変形する必要から、弾性に富み、軟質の材料から構成されるものが好ましい。特に、弾性シート14の材料としては、シリコーンゴムが好適である。また、キーシートとして、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence: EL)シート(以後、「ELシート」という。)を用いることもできる。ELシートとしては、無機ELシートが好適である。代表的な無機ELシートの構造は、発光体層(例えば、ZnS+Cuを含む層)と誘電体層(例えば、BaTiOの層)を隣接させ、これらの両側を電極層で挟み、さらに、発光面側(発光体層側の電極の外側)に透明樹脂フィルムを貼付した構造である。このように、キートップ13の下方にELシートを配置することにより、操作パネル12あるいはキートップ13の特定部分(例えば、操作パネル12の天面、あるいは操作パネル12とキートップ13との隙間)を光らせることができる。
【0036】
弾性部材15は、弾性シート14から固定接点7に向かって突出する、直径が約2.5〜4.5mmで高さが0.2〜1.0mmの半球状の弾性体である。弾性部材15としては、操作パネル12の表面に指が触れることにより容易に変形するような弾性体であって、例えば、カーボン材料等を含むショアA硬度が約50度から90度のゴム若しくはエラストマーが好ましい。ショアA硬度が50度から90度の弾性体を用いることにより、ユーザが指を操作パネル12の上を滑らせた際に、操作パネル12が大きく沈み込み過ぎることがない。加えて、ユーザの指が操作パネル12上を滑ることにより生じる圧力を、固定接点7が確実に検出できる。
【0037】
また、導電性シート17の裏面であって、キートップ13の裏面の部分には、押圧子18が形成されている。一方、導電性シート17の裏面であって、操作パネル12の裏面の部分には、絶縁部材16が形成されている。
【0038】
本実施の形態において、絶縁部材16は、たとえば、高さが0.5mmの直方体状の弾性体から構成される部材である。そのような絶縁部材16の1面が導電性シート17に固着されているため、絶縁部材16は、導電性シート17の裏面から基板4の方向へ突出している。なお、押圧方向に投影した絶縁部材16の領域と固定接点7の領域とは、重ならないように、絶縁部材16は、配置されている。
【0039】
基板4の表面において、キートップ13に対向する位置には、固定接点19、導電部20、および固定接点19を覆うと共に導電部20と電気的に接続される皿バネ状部材21が設けられている。また、皿バネ状部材21と押圧子18とは、例えば、接して対向するように設けられている。
【0040】
キートップ13は、入力時のクリック感を向上させ、あるいは、入力時に指を滑らせることができるように配置されている。操作パネル12およびキートップ13としては、樹脂、金属あるいはそれらのコンポジット等からなる部材を好適に用いることができる。また、操作パネル12およびキートップ13は、単一成形体であるか複数の層から成る成形体であるかを問わない。複数の層から成る操作パネル12およびキートップ13を採用する場合、操作パネル12およびキートップ13は、それらの表面が樹脂シートで被覆されている部材であるのが好ましく、被覆領域が一部であっても全部であっても良い。本実施の形態に係る樹脂製の操作パネル12およびキートップ13の材料には、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂あるいはポリアミド樹脂等の各樹脂を使用できるが、それらの中でも特に好ましい樹脂は、ポリカーボネート樹脂あるいはアクリル樹脂である。
【0041】
第2の実施の形態において、操作パネル12としては、例えば、外周円の直径が約20mm、内周円の直径が約7mmの平面部を有する厚さが約1mmである環状の操作パネル12を好適に用いることができる。また、操作パネル12に指を沿わせて環状になぞることを容易にする目的で、例えば、約0.2mm間隔で同心円状の溝を形成しても良い。また、操作パネル12の位置が指触にてわかるように、操作パネル12の外周部分の厚さを外周以外の部分よりも厚くすることで、円輪状の縁を形成しても良い。さらに、基板4の表面側であって、操作パネル12と重なる領域には、固定接点7が配置される。
【0042】
導電性シート17は、たとえば、シリコーンゴム等の弾性シートの片面に、導電性ポリマーを塗布したものを用いることにより、光透過率が高い導電性シート17が得られる。光透過率が高い導電性シート17を採用した場合には、より効率的に導電性シート17の裏面側から照光することができる。操作パネル12およびキートップ13の外周を照光できるため、暗所でも操作パネル12およびキートップ13の位置がわかりやすくなる。なお、光透過率の低い導電性シート17としてもよい。その場合には、導電性シート17を照光する照光部材(不図示)に対向する導電性シート17の領域に、穴を設ける等の工夫により、導電性シート17の裏面側から照光できるものとなる。
【0043】
押圧子18は、固定接点19とその固定接点19を覆う皿バネ状部材21とを接触させるために、導電性シート17の裏面において、キートップ13の裏面側の部分に設けられる。押圧子18は、導電性シート17が押圧子18を有する形状に一体成形されることで形成されていてもよいし、別に作製した押圧子18を、接着剤等で導電性シート17に固定してもよい。
【0044】
皿バネ状部材21は、ドーム形状とされ、その外縁が導電部20に接続されて、固定接点19を覆うように形成されている。この皿バネ状部材21は、固定接点19と導電部20とを接続/非接続する可動接点としての役割を担う。本実施形態における皿バネ状部材21は、例えば、厚みが約0.025mmおよび直径が4mm〜5mmである。また、本実施の形態における皿バネ状部材21の可動距離、すなわち、皿バネ状部材21を皿バネ状部材21の突出方向と逆方向に、1.0〜3.0Nの荷重で押圧した場合に、皿バネ状部材21のドーム頂点が変位できる距離は、0.10〜0.25mmである。しかし、皿バネ状部材21は、金属製に限らず、逆椀上に成型したPET樹脂に導電印刷を施したポリエステル製ドームまたは導電性樹脂等により形成されていても良い。また、例えば、短辺が3mmおよび長辺が4mmの楕円形状の皿バネ状部材21等を用いてもよい。なお、皿バネ状部材21を金属製とする場合には、クリック感により優れ、それによってより良好な操作感覚を得ることができる。
【0045】
以上のように構成された入力装置11は、キートップ13が押下されると、押圧子18が皿バネ状部材21を押圧する。この押圧力(通常は、およそ1.0〜3.0N)によって皿バネ状部材21が座屈する。この座屈した皿バネ状部材21によって固定接点19と導電部20とが接続されて固定接点19が導通状態になる。キートップ13の押下が解放されると、皿バネ状部材21が元の形状に復帰する。これにより、皿バネ状部材21によって接続されていた固定接点19と導電部20とが非接続となり、固定接点19は、非導通状態になる。このように構成された入力装置11の押釦スイッチは、たとえば、決定キー等として機能させてもよい。
【0046】
一方、ユーザが操作パネル12に指を触れると、操作パネル12および操作パネル12の裏面に配置された凸形状の弾性体15を介して、導電性シート17が変形し、押し下げられる。その結果、導電性シート17と固定接点7とが接触する。すなわち、櫛歯状の電極間の電圧が接触面積に比例し変化する。また、導電性シート17と固定接点7との接触面積が増加することで、その抵抗値が減少(あるいは電圧が低下)する。このようにして、入力装置11は、指が触れられていることを把握することができる。また、触れられている指の位置が移動すると、入力装置11は、各固定接点7に流れる電圧の変化により、触れられている指の位置を把握することができる。
【0047】
上述のように、入力装置22は、指が触れた位置だけではなく、その押圧力も検出できる。なぜなら、操作パネル12上に指が軽く触れると、1つまたは複数の弾性部材15が押し下げられて、その先端部分の面積で、導電性シート24と固定接点7に触れる。さらに弾性部材15が大きな押圧力で押圧された場合には、弾性部材15が押しつぶされて、より大きな面積で、導電性シート24が固定接点7と接触する。すなわち、入力装置22の内部の中央処理装置(不図示)が、1つまたは複数の固定接点7の接触面積の変化に応じて生じる電圧値あるいは抵抗値の変化を検出する。このように、入力装置22は、指の触れている位置あるいはその移動方向だけではなく、押圧の強さも同時に検出することができる。そのため、入力装置22は、操作パネル12に加えられたわずかな荷重の差を検出することができるコントロールディスクになる。
【0048】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る入力装置22について、図面を参照しながら説明する。
【0049】
第3の実施の形態に係る入力装置22は、第2の実施の形態の入力装置11と、操作パネル12と、基板4との間の構成が異なる。図8は、図5のB−B線で第3の実施の形態における入力装置22を切断して矢印方向から見た場合の断面図である。
【0050】
第3の実施の形態に係る入力装置22と、第2の実施の形態に係る入力装置11とでは、導電性シート24に設けられる絶縁部材23の大きさおよび配列が異なる。第3の実施の形態では、導電性シート24の裏面側に、絶縁部材23を裏面に有する導電性シート24が配置されている。また、その絶縁部材23は、固定接点7と押圧方向に投影した場合に重なる位置にも配置されている。
【0051】
絶縁部材23は、弾性部材15よりも十分に小さいものであることが好ましい。たとえば、直径が約2.5〜4.0mmで高さが0.2〜1.0mmの半球状の弾性部材15とする場合には、絶縁部材23は、直径が約0.5mmで高さが0.03〜0.05mmのとすることが好ましい。弾性部材15よりも絶縁部材23が小さい場合には、押圧方向に投影した弾性部材15の領域と絶縁部材23の領域とが重なっていても、弾性部材15の押し込みにより、導電性シート24が容易に下方へ撓み、導電性シート24と固定接点7とが接触しやすくなる。
【0052】
また、導電性シート24の裏面には、絶縁部材23同士が2次元方向に等間隔で配列されていることが好ましい。なぜなら、絶縁部材23同士が等間隔で配列されていることにより、どのような位置で押圧しても固定接点7と導電性シート24との接触面積が、ほぼ同一になりやすいからである。
【0053】
上述のように、導電性シート24を有する入力装置22とすることで、入力装置22を薄型化できる。絶縁部材23を有する導電性シート24を有しない場合には、導電性の弾性部材15と固定接点7とが、非押圧状態で接触することがないように、それらの間を十分な間隙(たとえば、0.2mm)とする必要がある。しかし、絶縁部材23を有する導電性シート24を有する場合には、導電性シート24の裏面に配置された絶縁部材23により、導電性シート24と固定接点7とが、押圧力が加えられない限り接触しない状態で維持される。そのため、弾性部材15と固定接点7との間の距離を近づけることができる。
【0054】
また、上述のように、導電性シート24を有する入力装置22とすることで、弾性部材15それ自体が導電性を有していなくても良い。そのため、導電性の弾性部材15を別途形成した後、弾性部材15と弾性シート14とを一体にするためのインサート成形を行う必要がなく、同じ材料を用いて一度に成形できる。弾性部材15を別途成形し、これを弾性シート14と一体化する場合には、弾性部材15のうち、弾性シート14と接する側に、高さ0.5mm程度の円柱形状部(不図示)を設けることで弾性部材15を配置する位置を一定化できる。なお、円柱形状部の先端部に、感圧機能を持たせるための高さ0.5mm程度の曲面部(不図示)を設けることもできる。しかし、インサート成形を行わずに、弾性部材15と弾性シート14とを一体成形する場合には、弾性部材15の弾性シート14に接する側に円柱形状部を形成しなくても良い。すなわち、その円柱形状部の高さの分、入力装置22を薄型化できる。また、柔軟性、光透過性あるいは成形の容易さ等の要求により、弾性シート14や弾性部材15の材料を選択自在にできる。
【0055】
また、押圧方向に投影した弾性部材15の領域と絶縁部材23の領域とを重複可能な導電性シート24を用いることで、絶縁部材23と固定接点7との位置あわせをしなくてよい。したがって、基板4に絶縁部材23を有する導電性シート24を配置する工程が簡単になる。また、汎用性がある導電性シート24となるためより好ましい。
【0056】
以上、各発明の実施の形態に係る入力装置2,11,22およびそれを用いた電子機器1,10の好適な例について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に何ら限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0057】
例えば、各実施の形態では、好適な直径、硬度あるいは距離等につき言及しているが、これらの値に限らず、他の値を採用しても良い。例えば、操作パネル12の大きさを変化させることで、各パラメータは変化しうるものである。また、本明細書に記載した各値は、その値に正確に限定されるものではなく、誤差あるいは公差を含み得るものとする。
【0058】
各実施の形態において、電子機器1の形態は、入力装置2と表示部3とを有する形態としたが、表示部3は、必須ではない。
【0059】
また、各実施の形態において、固定接点7は、櫛歯型の電極パターンを有するものとしているが、そのような形状に限らない。たとえば、同心円状のパターンを有する固定接点7としてもよいし、他の形状でもよい。また、静電容量により弾性部材15の圧縮量が測定されるようなセンサを用いてもよい。また、かかる圧縮により導電率が向上するような導電性弾性体、あるいは、圧縮されることにより電流抵抗値が変化するような導電性弾性体を用いることにより、その導電性弾性体に加わる圧力を測定するようなシステムにしてもよい。
【0060】
また、各実施の形態では、コントロールディスクとしても機能する入力装置11,22としているが、入力装置2,11,22は、このような機能を持つものに限られない。例えば、押釦スイッチとして機能させてもよい。さらに、電子機器1,10は、ユーザが、押釦スイッチとしてのみ機能させるか、コントロールディスクとしてのみ機能させるか、あるいは、押釦スイッチとしてもコントロールディスクとしても機能させるかを選択できるものとしてもよい。
【0061】
また、各実施の形態において、キートップ13および操作パネル12と、弾性シート14とを接着剤により貼り合わせたが、接着剤以外のものを用いて固定してもよい。例えば、両面テープで貼り合わせても良いし、熱融着等により貼り合わせても良い。また、キートップ13および操作パネル12において、弾性シート14に対向する平面部は、全面を弾性シート14に固定される必要はない。例えば、隣接するキートップ13の間あるいは、操作パネル12の外周は、弾性シート14に接着しないようにしてもよい。
【0062】
各実施の形態において、絶縁部材6,16,23は、導電性シート5,17,24に固着されているが、このような形態に限らない。絶縁部材6,16,23は、基板4に固着されているような形態であってもよい。たとえば、絶縁部材6,16,23が格子状の形状である場合等には、絶縁部材6,16,23が、導電性シート5,17,24あるいは絶縁部材6,16,23に固着されていなくてもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、絶縁部材6,23および弾性部材15の形状は、半球であり、絶縁部材16の形状は、直方体であるものとしているが、このような形態に限らない。例えば、円柱状、円錐状、あるいは、先端部の曲率半径が2〜25mm程度の凸状物若しくは突起としてもよい。また、絶縁部材6,16,23あるいは弾性部材15の硬度、先端形状あるいは基板4からの距離を適宜調整することで、動作安定性および操作感を調節することができる。
【0064】
また、第2の実施の形態および第3の実施の形態に係る入力装置11,22は、環状の操作パネル12よりも内側、すなわち、操作パネル12に囲まれた内側部分に、いわゆる押釦スイッチを含むものとしているが、当該押釦スイッチは必須ではない。すなわち、押釦スイッチ以外の入力用部材をコントロールディスクに隣接して設けるような形態としてもよい。あるいは、コントロールディスクとして機能する部分のみを有する入力装置11,22としてもよい。また、電子機器1,10が、他の入力装置を備えていてもよい。
【0065】
また、各実施の形態では、入力装置11,22は、長方形あるいは環状の操作パネル12を備えているが、操作パネル12の形状は、長方形あるいは環状に限らない。例えば、環の一部分のみを用いてもよい。あるいは、円、十字、直線、三角、四角以上の多角形、曲線、あるいは楕円等、どのような形態でもよい。しかし、環状の操作パネル12を採用することにより、指の動きを止めることなく、動かし続けて操作するような入力装置11,22とすることができる。
【符号の説明】
【0066】
1,10 電子機器
2,11,22 入力装置
4 基板
5,17,24 導電性シート
6,16,23 絶縁部材
7,20 固定接点
12 操作パネル(押圧シート)
13 キートップ
15 弾性部材(突起部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧動作の履歴から操作信号を規制する入力装置において、
押圧されることで変形する導電性シートと、
上記変形によって上記導電性シートと接触し導通する固定接点が配置されている基板と、
対向する上記導電性シートの面と上記基板との間に配置される絶縁部材と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
押圧シートを有し、上記押圧シートの面には、突起部が設けられ、上記突起部が前記固定接点と対向されていることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記絶縁部材は、前記導電性シートの面に固着されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の入力装置と、
上記入力装置からの信号に基づいて操作される内容を判断する判断部と、
上記判断部の判断に基づいて操作内容を実行する実行部と、
実行される内容を表示する表示部と、を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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