説明

入力装置

【課題】本発明は、引出配線層と平坦化層との段差が入力装置の表面に転写されることを抑制し、平坦性を向上させることが可能な入力装置を提供することを目的とする。
【解決手段】空間を設けて対向配置された1対の透明基材と、前記1対の透明基材の対向する面の入力領域にそれぞれ形成された透明導電層と、前記入力領域の外周の非入力領域にそれぞれ形成された引出配線層と、を有し、前記1対の透明基材は、前記非入力領域に設けられた粘着層51を介して接着されており、少なくとも一方の前記透明基材の前記非入力領域において、前記引出配線層と所定の間隔を設けて平坦化層が形成されており、前記粘着層51の、前記引出配線層と対向する位置に開口部53が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置に関し、特に粘着層を介して1対の透明基材間が接合される入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯用の電子機器などの表示部として透光型入力装置が用いられており、液晶パネルや有機ELパネル等の表示装置に重ねて配置されている。これにより、操作者は表示装置に表示される画像のメニュー項目やオブジェクトを直接、指などで操作して座標入力を行うことができる。このような入力装置として、抵抗膜式の入力装置が知られている。
【0003】
抵抗膜式の入力装置は、1対の透明基材が空間を設けて対向配置されており、粘着層を介して接合される。各透明基材の対向する面の入力領域には透明電極膜が形成され、入力領域を囲む非入力領域には入力位置情報を出力するための引出配線層が形成されている。入力面側の透明基材は、柔軟なフィルム状の材料を用い形成されており、操作者が入力領域の任意の箇所を押圧操作すると、透明基材が変形されて1対の透明電極膜が接触し、その接触点での抵抗値変化を読み取ることで入力位置情報を検知することができる。
【0004】
また、このような入力装置は、電子機器に組み込まれて電子機器の筐体の一部、あるいは操作面の一部として使用されるため、入力装置の表面は操作者から直接視認されることになる。したがって、入力装置の表面には凹凸が無く、平坦であることが求められている。
【0005】
図9には、特許文献1に記載の抵抗膜式の入力装置110について、引出配線層付近の部分拡大断面図を示す。図9に示すように、従来の入力装置110において、第1引出配線層132及び第2引出配線層142の両側面にそれぞれ第1平坦化層136及び第2平坦化層146が形成されている。これにより、可撓性を有する第1透明基材130が粘着層151に引っ張られて撓むことを防ぎ、入力装置110表面の凹凸を小さくすることが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−033310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引出配線層と平坦化層とはそれぞれ異なる材料を用いて、スクリーン印刷法等の印刷法で形成されるため、同一の厚さで形成することは困難である。図10には、本発明の課題を説明するための、入力装置111の模式断面図を示す。入力装置111において、第1引出配線層132及び第2引出配線層142には導電性を有する銀または銅などからなる導電性ペーストを用い、第1平坦化層136及び第2平坦化層146には絶縁性の樹脂材料が用いられている。そのため、第1引出配線層132と第1平坦化層136、及び第2引出配線層142と第2平坦化層146との間で通常2μm〜10μm程度の厚みの差が生じ、段差が形成される。
【0008】
また、第1透明基材130の入力面側には加飾フィルム120が積層されており、加飾フィルム120の非入力領域には着色された加飾層121が設けられている。加飾層121は、各引出配線層及び各平坦化層が操作者から直接視認されることがないように、各引出配線層及び各平坦化層と平面的に重なる位置に形成されている。第1透明基材130及び加飾フィルム120は、押圧操作により柔軟に変形可能なフィルム状の材料が用いられている。
【0009】
例えば第1引出配線層132、第2引出配線層142に対して第1平坦化層136、第1平坦化層146が厚く形成された場合に、粘着層151を介して第1透明基材130と第2透明基材140とを貼り合わせると、図10に示すように、凹部を形成する第1引出配線層132が粘着層151の粘着力により第2透明基材140の方向に引っ張られることになる。入力面側に配置された第1透明基材130及び加飾フィルム120は可撓性を有するフィルム状の材料であるため、第1引出配線層132と第1平坦化層136との段差、及び第2引出配線層142と第2平坦化層146との段差が転写されて、入力装置111表面の加飾領域122にうねりや凹凸が発生してしまう。
【0010】
特に、着色された加飾領域122に段差が転写された場合、わずかなうねりや凹凸であっても、光の反射によって操作者から容易に認識されることになるため、外観品質上好ましくない。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決し、特に引出配線層と平坦化層との段差が入力装置の表面に転写されることを抑制し、平坦性を向上させることが可能な入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の入力装置は、空間を設けて対向配置された1対の透明基材と、前記1対の透明基材の対向する面の入力領域にそれぞれ形成された透明電極層と、前記入力領域の外周の非入力領域にそれぞれ形成された引出配線層と、を有し、前記1対の透明基材は、前記非入力領域に設けられた粘着層を介して接着されており、少なくとも一方の前記透明基材の前記非入力領域において、前記引出配線層と所定の間隔を設けて平坦化層が形成されており、前記粘着層の、前記引出配線層と対向する位置に開口部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、粘着層に形成された開口部により、引出配線層と平坦化層との段差が緩和される。したがって、引出配線層と平坦化層との段差が入力装置の表面に転写されることを抑制できるため、入力装置の表面に生じる凹凸を小さくし、平坦性を向上させることが可能となる。
【0014】
本発明の入力装置は、前記透明基材の前記非入力領域において、前記引出配線層の両側面に前記平坦化層が形成されており、前記粘着層に形成された前記開口部が、前記平坦化層に挟まれた前記引出配線層と対向して形成されていることが好適である。引出配線層の両側面に平坦化層が形成された構成では、引出配線層と平坦化層との段差が入力装置の表面に転写されると、より顕著に表面の凹凸やうねりが視認されてしまう。したがって、平坦化層に挟まれた引出配線層と対向して開口部を設けることで、より効果的に平坦性を向上させることが可能となる。
【0015】
本発明の入力装置において、前記開口部は、前記平坦化層に挟まれた前記引出配線層に沿ったスリット状に形成されており、前記開口部の幅は前記引出配線層の幅よりも大きく、前記引出配線層を挟み対向する前記平坦化層の間隔よりも小さいことが好ましい。これによれば、引出配線層が形成された領域において、より確実に段差の影響が緩和されて、入力装置の表面に段差が転写されることを抑制できる。したがって、より効果的に入力装置表面の平坦性を向上させることができる。また、平坦化層の表面に設けられた粘着層を介して1対の透明基材が貼り合わされるため、透明基材間の粘着力、密封性を確保することが可能となる。
【0016】
本発明の入力装置において、前記透明基材の前記非入力領域には、前記引出配線層及び前記平坦化層に亘って絶縁層が形成されていることが好ましい。これによれば、粘着層に設けられた開口部により、入力装置表面の平坦性をより向上させることが可能であり、また、一対の透明基材に形成された引出配線層間の電気的絶縁性を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、粘着層に形成された開口部により、引出配線層と平坦化層との段差を緩和することができる。したがって、引出配線層と平坦化層との段差が入力装置の表面に転写されることを抑制できるため、入力装置の表面に生じる凹凸を小さくし、平坦性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態における入力装置を示す斜視図である。
【図2】本実施形態における入力装置を示す分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III線で切断した入力装置の断面図である。
【図4】(a)第1引出配線層及び第1平坦化層の模式平面図、(b)第1粘着層の模式平面図である。
【図5】本実施形態の入力装置を図4のV−V線に沿って切断したときの部分拡大断面図である。
【図6】本実施形態の第1の変形例を示す、入力装置の部分拡大断面図である。
【図7】本実施形態の第2の変形例を示す、(a)第1引出配線層及び第1平坦化層の模式平面図、(b)第1粘着層の模式平面図である。
【図8】(a)本発明の実施例、及び(b)比較例における、入力装置の加飾領域の表面形状を測定した実験結果である。
【図9】従来の入力装置を示す、部分拡大断面図である。
【図10】本発明の課題を説明するための、入力装置の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態における入力装置1について、図面を参照しながら説明する。なお、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法の比率などは適宜異ならせて示してある。
【0020】
図1には、本実施形態における入力装置1の斜視図を、図2には入力装置1の分解斜視図を示す。図3は、図1のIII−III線で切断した入力装置1の断面図である。なお本実施形態では、入力面側に配置される第1透明基材30及び加飾フィルム20の構成について主に説明するため、図2に示す分解斜視図において第1透明基材30に積層される部材の構成を分解して示し、第2透明基材40に積層される各部材については分解せずに示している。
【0021】
本実施形態の入力装置1は、抵抗膜式の入力装置を構成する。図1及び図2に示すように入力装置1は、第1透明基材30、第2透明基材40、加飾フィルム20を有し構成される。また入力装置1は、入力操作を行う入力領域11と、入力領域11を囲むように枠状に設けられた非入力領域12とを有する。
【0022】
図2及び図3に示すように、第1透明基材30と第2透明基材40とは、非入力領域12に設けられた第1粘着層51を介して接着されている。また、第1透明基材30の入力面側には第2粘着層52を介して加飾フィルム20が接着されている。第1粘着層51及び第2粘着層52には、アクリル系両面テープまたはアクリル系粘着剤を用いることができる。
【0023】
図2及び図3に示すように、第1透明基材30及び第2透明基材40の対向する面の入力領域11には、入力位置情報を検知するための第1透明電極層31及び第2透明電極層41がそれぞれ積層されている。また、第1透明基材30の非入力領域12には、入力位置情報を出力するための第1引出配線層32が引き回されており、第1透明電極層31と電気的に接続されている。第2透明基材40の非入力領域12にも同様に、第2引出配線層42が引き回されて、第2引出配線層42と第2透明電極層41とが電気的に接続されている。そして、第1引出配線層32及び第2引出配線層42は、例えばY2側の非入力領域12に引き出されて、フレキシブルプリント基板(FPC)60と接続される。
【0024】
入力面側に配置された第1透明基材30は、その厚みが100μm〜200μm程度に形成された可撓性を有するフィルム状の材料であり、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明樹脂材料を用いることができる。第2透明基材40は、第1透明基材30よりも高い剛性を有するように0.5mm〜2.0mm程度の厚みで形成されており、例えばPC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明樹脂材料を用いることができる。
【0025】
また、第2透明基材40として、第1透明基材30と同様にPET等からなるフィルム状の透明樹脂材料を用いてもよい。その場合には、より高い剛性を有する支持基板を別に設けて、第2透明基材40と積層する必要がある。支持基板には、0.5mm〜2.0mm程度の厚みを有する透明樹脂材料を用いることができる。
【0026】
第1透明電極層31及び第2透明電極層41は、可視光領域で透光性を有するITO(Indium Tin Oxide)、SnO、ZnO等の透明導電材料を用いて、スパッタ法や蒸着法により成膜される。その厚みは、0.01μm〜0.05μm、例えば0.02μm程度で形成される。また、スパッタ法や蒸着法以外の方法では、あらかじめ透明電極膜が形成されたフィルムを用意し透明電極膜のみを基材に転写する方法や、液状の原料を塗布する方法により成膜することも可能である。
【0027】
第1透明電極層31及び第2透明電極層41と接続して形成される第1引出配線層32及び第2引出配線層42は、銅または銀などからなる導電性ペーストを用い、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法等の印刷法により形成される。各引出配線層の厚みは、5μm〜20μm程度に形成することができる。
【0028】
図3に示すように、第1透明基材30と第2透明基材40とは、各透明電極層が所定の間隔を有するように対向配置されており、非入力領域12に積層された第1粘着層51を介して接着されている。
【0029】
入力装置1の入力操作時において、入力面の入力領域11を指やペン形状の入力器具により押圧操作すると、可撓性を有する第1透明基材30及び加飾フィルム20が撓んで第1透明電極層31と第2透明電極層41とが接触する。第1透明電極層31には、例えばY1−Y2方向に電圧が印加されており、押圧操作による各透明電極層の接触位置に応じたY1−Y2方向の分圧比によりY座標を検知することができる。同様に、第2透明電極層41にはX1−X2方向に電圧が印加されており、各透明電極層の接触により生じた分圧比によりX座標を検知することができる。
【0030】
また、図1から図3に示すように、第1透明基材30の入力面側には、加飾フィルム20が設けられている。加飾フィルム20はPET等の透明樹脂材料から形成されており、その厚さは100μm〜200μm程度に形成することができる。そして、加飾フィルム20の非入力領域12には加飾層21が着色されて形成されている。加飾層21は、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法等の印刷法で形成することができる。
【0031】
加飾層21は、各引出配線層やFPC60との接続部と平面的に重なるように設けられて、各引出配線層等が操作者から直接視認されないように遮蔽する効果を有する。また、入力装置1は電子機器の表示部に搭載されて、加飾層21は操作者から直接視認されることになるため、加飾層21が形成された加飾領域22には特に厳しい外観品質が求められることになる。例えば、加飾層21は着色されたり、模様、マーク、文字等が描かれたりするため、わずかな凹凸であっても光の反射の影響により操作者から視認され易くなり、外観品質上の不具合となることがある。
【0032】
次に、第1透明基材30の非入力領域12に積層される各部材(第1引出配線層32、第1平坦化層54、絶縁層56)、及び第1粘着層51の構成について説明する。
【0033】
図4(a)には、第1透明基材30に積層される第1引出配線層32及び第1平坦化層54について模式平面図を示す。また、図4(b)には、第1透明基材30と第2透明基材40とを接着する第1粘着層51について模式平面図を示す。なお、図4(a)及び図4(b)は、入力装置1の入力面側から見たときの模式平面図である。
【0034】
第1引出配線層32及び第1平坦化層54について構成を説明するために、部分的に符号をつけて説明する。
【0035】
第1引出配線層32は、入力領域11を囲むように非入力領域12に引き回されている。図4(a)に示すように、Y2側の非入力領域12でX1−X2方向に延出して形成された第1引出配線層32aは、Y2側の第1透明電極層31と電気的に接続されている。また、Y1側の第1透明電極層31と接続された第1引出配線層32cは(Y1側の構成は図4では省略する)、X2側非入力領域12を引き回されて、Y2側非入力領域12でX1−X2方向に延出した第1引出配線層32bを経由して、FPC60との接続部に接続されている。
【0036】
第1引出配線層32はスクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの印刷法により形成され、その厚みは5μm〜20μm程度、例えば約10μmの厚さを有する。第1引出配線層32と第1透明基材30との段差が、加飾フィルム20の表面に転写されると、外観品質上の不具合となってしまう。これを防ぎ入力装置1の平坦性を向上させるために、図4(a)に示すように、第1透明基材30の非入力領域12において、第1引出配線層32と所定の間隔を設けて第1平坦化層54が形成されている。
【0037】
第1平坦化層54には、レジスト材料、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができるが、特に紫外線硬化型樹脂を用いることが好適である。紫外線硬化型樹脂を用いることにより、第1平坦化層54の硬化工程において加熱や乾燥の時間を短時間に行えるため入力装置1の製造コストを低減することが可能となる。
【0038】
また、第1平坦化層54は、第1引出配線層32と所定の間隔を設けて形成されている。これは、印刷時の位置精度の誤差や、印刷ペーストのだれ等により、第1引出配線層32と第1平坦化層54とが重なって形成されてしまうことを防ぎ、より効果的に平坦性を向上させるために設けられたものである。本実施形態において第1引出配線層32と第1平坦化層54との間には、0.2mm〜1.0mm程度、例えば約0.5mmの間隔が設けられている。
【0039】
第1引出配線層32と第1平坦化層54とは、全く同一の厚さで均一に形成されることが理想的であるが、それぞれ異なる材料を用いて形成されるため、同一の厚みで形成することは困難である。実際には、印刷ペーストの粘度のばらつきや、印刷条件の違いにより、第1引出配線層32と第1平坦化層54との厚みは、2μm〜10μm程度の差が生じる場合がある。この第1引出配線層32と第1平坦化層54との段差により、入力装置111の表面の加飾領域22に凹凸が転写されてしまうと、前述のように、加飾領域22においては厳しい外観品質が要求されるため、外観品質上の不具合となる可能性が高い。
【0040】
特に、図4(a)に示したように、X1−X2方向に延出された第1引出配線層32aと第1引出配線層32bとが並設され、第1引出配線層32bの両側面に第1平坦化層54及び第1平坦化層54aが形成された領域では、入力装置1表面の加飾領域22において凹凸やうねりが顕著に現れる。
【0041】
本発明の実施形態においては、図4(b)に示すように第1粘着層51の、第1引出配線層32bと対向する位置に開口部53が形成されている。開口部53は、X1−X2方向に延出した第1引出配線層32bと平面視で重なるように、スリット状に形成されている。なお、図4(b)に示すように、開口部53のX1側に連接してFPC接続用開口部61が設けられているが、これは本発明の本質とは関係なく、開口部53とFPC接続用開口部61とを別々に形成しても何ら問題はない。
【0042】
図5には、図4(b)に示した第1粘着層51を介して第1透明基材30と第2透明基材40とを貼り合わせて入力装置1としたときの、図4(a)のV−V線に沿って切断した入力装置1の部分拡大断面図を示す。図5に示すように、非入力領域12に設けられた第1粘着層51を介して、1対の透明基材が接着されており、各引出配線層及び各平坦化層等と平面視で重なるように加飾層21が形成されている。また、図5に示すように(図4(a)には図示しない)、第1引出配線層32(32a、32b)及び第1平坦化層54、54aに亘って絶縁層56が設けられている。これは、第1透明基材30と第2透明基材40とを貼り合わせて入力装置1を組み立てたときに、対向する第1引出配線層32と第2引出配線層42との間の電気的絶縁を確実にするために設けられている。
【0043】
図5に示すように、開口部53が設けられた箇所では第1粘着層51の粘着力が得られないため、第1引出配線層32bが形成された領域が第2透明基材40側に引っ張られることがない。これにより、第1引出配線層32bと第1平坦化層54、54aとの段差が緩和されて、入力装置1の表面の加飾領域22に凹凸が転写されることを抑制できる。したがって、開口部53を設けることにより、入力装置1の表面の平坦性を向上させることが可能となる。
【0044】
開口部53の大きさ、形状は特に限定されるものではないが、開口部53の幅は、第1引出配線層32bの幅よりも大きく、第1引出配線層32bを挟み対向する第1平坦化層54、54aの間隔よりも小さいことが好適である。こうすれば、第1引出配線層32bが形成された領域が第1粘着層51により引っ張られることが無くなるため、より効果的に入力装置1の表面の平坦性を向上させることができる。また、第1平坦化層54、54aに積層された粘着層51により、1対の透明基材間を接着するための十分な粘着力が得られ、各透明基材間の密着性、密閉性を確実に得ることができる。
【0045】
本実施形態においては、第1透明基材30に積層される各部材について主に説明したが、本発明の効果は、これに限定されるものではない。第2透明基材40においても、非入力領域12には第2引出配線層42、及び第2平坦化層55が設けられており、第1引出配線層32、第1平坦化層54と同様の工程で形成される。そのため、第2引出配線層42と第2平坦化層55とで段差が形成され、入力装置1の表面に転写されてしまう可能性がある。このような場合であっても第1粘着層51の、第2引出配線層42と対向する箇所に開口部53を設けることにより、本実施形態と同様に、段差の影響を緩和して入力装置1の表面の平坦性を向上させることができる。
【0046】
図5には、第1引出配線層32が第1平坦化層54よりも薄く形成されて、第1引出配線層32が凹部を形成する場合について示したが、この態様に限らず、第1引出配線層32が厚く形成され、第1平坦化層54に対し凸段差となる場合であっても、本発明は同様の効果を奏する。図6には、本実施形態の入力装置1について第1の変形例を示す。本変形例では、第1平坦化層54、54aに挟まれた第1引出配線層32bが、第2透明基材40側に向かう凸段差を形成している。そして、凸段差を形成する第1引出配線層32bに対向して、第1粘着層51には開口部53が設けられている。第1引出配線層32bは第1平坦化層54に対して2μm〜10μm程度凸段差になっており、第1粘着層51は20μm〜50μm程度の厚みを有することから、第1引出配線層32bの凸段差は開口部53によって吸収される。したがって、入力装置1の表面の加飾領域22に凸段差が転写されることを抑制し、入力装置1の平坦性を向上させることが可能となる。
【0047】
図7は本実施形態の入力装置1における第2の変形例を示し、図7(a)には第1引出配線層32及び第1平坦化層54の模式平面図を、図7(b)には第1粘着層51の模式平面図を示す。図7(a)に示すように、Y1−Y2方向に延出する第1引出配線層32c及び第1引出配線層32dのように、一方の側面に所定の間隔を設けて第1平坦化層54が形成された構成であっても、第1平坦化層54と第1引出配線層32c、32dとで段差が生じ、入力装置1の表面の外観品質が低下するおそれがある。このような構成であっても、第1粘着層51の、第1引出配線層32cと対向する位置に開口部53を設けることにより、第1引出配線層32と第1平坦化層54との段差が緩和されて、入力装置1の表面の平坦性を向上させる事が可能となる。
【実施例】
【0048】
図8(a)及び図8(b)は、それぞれ実施例の入力装置及び比較例の入力装置について、加飾領域の表面形状を測定したグラフである。本実施例の入力装置は、図5に示したように、第1粘着層51の、第1引出配線層32bと対向する位置に開口部53を設けて、各透明基材を貼り合わせて構成されている。また、比較例には第1粘着層に開口部を設けずに組み立てた従来の入力装置を用い、その他の構成、部材は実施例と同様である。いずれのグラフも、図5に示す第1平坦化層54a及び第1引出配線層32bが形成された加飾領域22について、Y1−Y2方向に表面形状を測定した。表面形状の測定にはレーザー変位計を用いているため、非接触で測定可能であり、高精度な表面形状測定が可能である。
【0049】
図8(a)に示すように本実施例の入力装置1における表面形状は、第1平坦化層54aが形成された箇所で凸になっており、第1引出配線層32bが形成された箇所で凹となっている。しかし、凹凸の大きさ(最大高さと最小高さの差)は約2.45μmと小さく、その形状は緩やかに変化しているため、操作者が視認できない程度の凹凸であり、良好な表面形状となっているといえる。これに対し、従来の入力装置の表面形状は、凹凸の大きさが約6.94μmと大きく、その段差も急峻であるため、操作者から容易に視認されてしまう。このような凹凸がある場合、外観品質不良となる可能性がある。
【0050】
図8(a)及び図8(b)の結果から、第1粘着層51に開口部53を設けたことにより、第1引出配線層32と第1平坦化層54との段差が表面に転写されることを抑制して、入力装置の表面の平坦性を向上させることが可能であると示された。
【符号の説明】
【0051】
1 入力装置
11 入力領域
12 非入力領域
20 加飾フィルム
21 加飾層
22 加飾領域
30 第1透明基材
31 第1透明電極層
32、32a、32b、32c、32d 第1引出配線層
40 第2透明基材
41 第2透明電極層
42 第2引出配線層
51 第1粘着層
52 第2粘着層
53 開口部
54、54a 第1平坦化層
55 第2平坦化層
56 絶縁層
60 フレキシブルプリント基板(FPC)
61 FPC接続用開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を設けて対向配置された1対の透明基材と、
前記1対の透明基材の対向する面の入力領域にそれぞれ形成された透明電極層と、
前記入力領域の外周の非入力領域にそれぞれ形成された引出配線層と、を有し、
前記1対の透明基材は、前記非入力領域に設けられた粘着層を介して接着されており、
少なくとも一方の前記透明基材の前記非入力領域において、前記引出配線層と所定の間隔を設けて平坦化層が形成されており、
前記粘着層の、前記引出配線層と対向する位置に開口部が形成されていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記透明基材の前記非入力領域において、前記引出配線層の両側面に前記平坦化層が形成されており、
前記粘着層に形成された前記開口部が、前記平坦化層に挟まれた前記引出配線層と対向して形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記平坦化層に挟まれた前記引出配線層に沿ったスリット状に形成されており、前記開口部の幅は前記引出配線層の幅よりも大きく、前記引出配線層を挟み対向する前記平坦化層の間隔よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記透明基材の前記非入力領域には、前記引出配線層及び前記平坦化層に亘って絶縁層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の入力装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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