説明

入浴剤及びその製法

【課題】 入浴剤としての凝灰岩の利点を生かし、且つ麦飯石の吸着性を利用して、凝灰岩を入浴剤とすることの欠点を補うことにより、効能優れた入浴剤を明らかにするものである。
【解決手段】 凝灰岩と麦飯石とを一緒に煮沸した、その上澄み液を入浴剤とする。
凝灰岩はその成分に石灰とソーダを含んでおり、凝灰岩を煮沸することで熱湯に石灰、ソーダが溶出する。従ってその上澄み液である液状入浴剤、或いは上澄み液を材料として得た粒状入浴剤は石灰分、ソーダ分を含む。入浴剤を湯に投入すると、石灰分、ソーダ分が湯に溶けて酸化炭素や炭酸水素が発生し、炭酸泉の効能を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴剤及びその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
凝灰岩は遠赤外線を放射するから、温熱効果、抗菌・消臭効果を奏するとして、凝灰岩を入浴剤に用いることが提案されている(特許文献1)。
凝灰岩には石灰やソーダが含まれており、水に投入することで成分の一部である石灰やソーダが水中に溶け出す。凝灰岩を入浴剤として使用することで、強い保温作用、発汗作用が促進される。
又、麦飯石は細菌に対して吸着性があるとして、麦飯石の粉末を治療用入浴剤とすることが提案されている(特許文献2)
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3054959号公報
【特許文献2】特開平10−139671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の入浴剤の場合、石灰やソーダは刺激が強く、皮膚障害や目の粘膜への強い刺激があるので、入浴剤の材料としては問題がある。
又、特許文献2の入浴剤は、麦飯石の粉末は、湯(以下、「湯」とは浴槽の湯を指す)に混じるが、湯に溶けるのではないので、沈殿して浴槽の掃除が面倒となり、又、排水管を傷める問題がある。
本発明は、入浴剤としての凝灰岩の利点を生かし、且つ麦飯石の吸着性を利用して、凝灰岩を入浴剤とすることの欠点を補うことにより、効能優れた入浴剤を明らかにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液状入浴剤は、凝灰岩と麦飯石とを一緒に煮沸した、その上澄み液である。
【0006】
本発明の粒状入浴剤は、凝灰岩と麦飯石とを一緒に煮沸した、その上澄み液に自然海塩を投入し、煮詰めることで生成される結晶物である。
【発明の効果】
【0007】
凝灰岩はその成分に石灰とソーダを含んでおり、凝灰岩を煮沸することで熱湯に石灰、ソーダが溶出する。従ってその上澄み液である液状入浴剤、或いは上澄み液を材料として得た粒状入浴剤は石灰分、ソーダ分を含む。
入浴剤を湯に投入すると、石灰分、ソーダ分が湯に溶けて酸化炭素や炭酸水素が発生する。
【0008】
二酸化炭素や炭酸水素が多く溶け込まれている温泉を炭酸泉というが、炭酸泉は淡水よりも温熱効果が高く、湯冷めし難い。これは、炭酸泉中の炭酸ガスが皮膚から血中に溶け込み、血管を拡張し、血行を良くするためである。血行が良くなると、血中の乳酸や二酸化炭素、老廃物の排出が促される。その結果、体の中から浄化されるのである。
加えて、炭酸泉には疲労回復効果も認められている。
従って、本発明の入浴剤は、血行を良くし、体内の浄化作用、疲労回復に効果を有す。
【0009】
但し、多量の石灰やソーダが一度に湯に溶けると、湯の水素イオン濃度が高まり、pHが小さくなり、酸性になる。それは、皮膚への刺激となり、皮膚や粘膜を痛める虞れがある。そのため、皮膚に対する適度なイオン濃度となるように、入浴剤に含まれる石灰やソーダが湯に溶ける速度を調節するための、ある種の緩衝剤が必要である。
【0010】
本発明の入浴剤には、麦飯石の成分も溶け込んで、麦飯石の優れた吸着性が付与されているから、麦飯石の成分が石灰やソーダの分子を包む様に吸着して、石灰やソーダが湯に溶けることを幾分邪魔する緩衝剤の役割をなす。このため、入浴剤を湯に投入しても、石灰やソーダが一挙に溶けることが防止され、湯の水素イオン濃度の過剰な高まりを抑え、酸性になる傾向を抑えることができ、皮膚にやさしく、且つ、凝灰岩の入浴剤成分としての特性を損なうことはない。
【0011】
本発明の入浴剤は、液状入浴剤或いは液状入浴剤に自然海塩を投入し、煮詰める生成される結晶物より粒状入浴剤であるから、湯に完全に溶けて沈殿することはなく、浴槽の掃除が楽であり、又、浴槽や排水管を傷めることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の液状入浴剤は、下記の手順で製造する。
[1].水を容れた容器内に、凝灰岩粉末と麦飯石粉末を投入し、攪拌した後、加熱沸騰(以下、「煮沸」という)。
凝灰岩粉末と麦飯石の割合は1:1程度とし、粉末の合計量は、水の量の3〜6重量%を目安とする。
凝灰岩、麦飯石は岩石のままでは表面積が小さいので、岩石中の石灰やソーダが水に溶け出しに難い。このため、岩石を粉末にすることで表面積を飛躍的に大きくして、粉末の成分を溶け出し易くしている。
麦飯石の粒度が凝灰岩の粒度よりも小さいことが望ましく、凝灰岩粉末の粒度は100メッシュ程度、麦飯石の粒度は300メッシュ程度とする。
凝灰岩粉末と麦飯石粉末を煮沸することで、粉末の成分を素早く溶け出させることができる。
容器に水ではなく、最初から温水を容れておいてもよい。
凝灰岩として、例えば大谷石を用いることができ、大谷石は、2%程度の石灰と、3%程度(何れも重量%)のソーダを含む。
[2].火を弱めて、熱湯が1/3程度になるまで煮詰める。
[3].火を止め、粉末が沈殿するのを待つ。
[4].粉末が沈殿した上澄み液を採取して入浴剤とする。
【0013】
入浴剤の使用に際し、100リットルの湯に対して、約100mlの液状入浴剤の投入を目安とすればよい。
凝灰岩はその成分に石灰とソーダを含んでおり、凝灰岩を煮沸することで熱湯に石灰、ソーダが溶出する。従って、その上澄み液である液状入浴剤、或いは上澄み液を材料として得た粒状入浴剤は石灰分、ソーダ分を含む。
入浴剤を湯に投入すると、石灰分、ソーダ分が湯に溶けて酸化炭素や炭酸水素が発生し、炭酸泉の様な効能である血行を良くし、体内の浄化作用、疲労回復に効果を有す。
入浴後、10分程度で冷えを感じていた人は、入浴剤の使用により入浴後30分程度に、
入浴後、30分程度で冷えを感じていた人は、入浴剤の使用により入浴後2時間30分程度に冷えを感じる時間が遅れることが、複数の被験者から得られた。これは入浴剤の保温効果、湯冷めをし難くさせる効果の表れと言える。
【0014】
入浴剤には、麦飯石の成分も溶け込んで、麦飯石の優れた吸着性が付与されているから、麦飯石の成分が石灰やソーダの分子を包む様に吸着して、石灰やソーダが湯に溶けることを幾分邪魔する緩衝剤の役割をなす。このため、入浴剤を湯に投入しても、石灰やソーダが一挙に溶けることが防止され、湯の水素イオン濃度の過剰な高まりを抑え、酸性になる傾向を抑えることができ、皮膚にやさしく、且つ、凝灰岩の入浴剤成分としての特性を損なうことはない。
【0015】
又、麦飯石には、pHを中性にしようとする効果があることも、実験の結果明らかになっている。従って、過度な酸性や塩基性の湯水溶液中に麦飯石の成分を作用させることで、より中性に近い水溶液にすることができる。
温水に溶解した石灰やソーダによって水素イオンや炭酸イオン、炭酸水素イオンやナトリウムイオン、カルシウムイオン等にイオン分解して、酸性に偏りすぎるて皮膚への刺激となり、皮膚や粘膜を痛める虞れがある。本発明の入浴剤の場合、麦飯石の吸着性分が温水中の各イオンと結合することで各種イオンが直接的に刺激を与えることを防止するので、皮膚や粘膜に対する刺激を抑えることができるのである。
【0016】
本発明の粒状入浴剤は、下記の手順で製造する。
1.前記液状入浴剤を準備する。
2.液状入浴剤に、同じ程度の重量割合で自然海塩を投入して撹拌し、結晶が生成されるまで煮詰め、粒状入浴剤とする。
上記粒状入浴剤は、液状入浴剤に含まれる各種の成分が自然海塩と一体となって結晶化しており、液状入浴剤の効果を損なうことはない。
従って、上記粒状入浴剤を、湯に投入すると、前記液状入浴剤の効果を奏する。更に、自然海塩を溶解した温水はイオン分解することで、塩化物泉と同等の効果を持つ。即ち、塩化物泉の性質である保温効果をもつことになる。
100リットルの湯に対して、20gの粒状入浴剤の投入を目安とすればよい。
【0017】
上記液状入浴剤、粒状入浴剤に、アロマオイル等の芳香剤を添加して入浴時に香りも楽しむことができる。
【0018】
又、液状入浴剤に、ヨモギの抽出液(エキス)や、ユズ、ミカン等の柑橘類のエキスを加えてもよい。又、ヨモギエキスやユズのエキスを加えた液状入浴剤から前記の方法で粒状入浴剤を製造することができる。
ヨモギのエキスを添加することで、更なる保湿効果を得ることができ、柑橘類(ゆず、みかん)のエキスを添加することで、更なる保湿効果、温熱効果を得ることができる。
【実施例1】
【0019】
水500mlに、粒度300メッシュの麦飯石10gと、100メッシュの大谷石8gを投入し、強火で沸騰させる。沸騰したら弱火にして約1/3の量なるまで煮詰める。煮詰まったら火を止めて沈殿を待ち、上澄み液を採取する。
別に、水1000mlに、煮だし袋に入れた乾燥ヨモギ20gを投入し、水が約1/3程度になるまで煮詰めて、ヨモギエキスを作っておく。
上記全量のヨモギエキスに対して、自然海塩1.5kgを投入し、撹拌して中火で煮詰め
る。更に、上記全量の上澄み液を投入して煮詰める。結晶が抽出されるとヨモギエキス入り粒状入浴剤が完成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝灰岩と麦飯石とを一緒に煮沸した、その上澄み液である液状入浴剤。
【請求項2】
凝灰岩は大谷石である請求項1に記載の入浴剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液状入浴剤に自然海塩を投入し、煮詰めることで生成される結晶物よりなることを特徴とする粒状入浴剤。
【請求項4】
凝灰岩粉末と麦飯石粉末とを一緒に煮沸し、その上澄み液を採取して入浴剤となす液状入浴剤の製法。
【請求項5】
凝灰岩粉末と麦飯石粉末とを一緒に煮沸し、その上澄み液に自然海塩を投入し、煮詰めることで生成される結晶物よりなることを特徴とする粒状入浴剤の製法。