説明

入浴用担架

【課題】浴槽内に導入する際に被介助者の足が浴槽内の壁面に当たることを防止するとともに、浴槽内に移動された後には、被介助者の足がはみ出すことを防止して入浴姿勢を保持することができ、さらに、被介助者の入浴スペースを広く確保することが可能な入浴用担架を提供する。
【解決手段】入浴用担架30において、担架本体35における被介助者の足先側の左右両側に一対の支軸47、47を配設し、これら支軸47、47のそれぞれに、鉛直面に沿った板状をなすフットガード40、40を支軸47、47の半径方向に延在するように取り付け、該フットガード40、40を互いの先端側を近接させた第一位置と、前記担架本体35の側面に沿った第二位置との間で回動可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病人や寝たきりの老人、身体障害者等の被介助者を載せて入浴させる入浴用担架に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、寝たきりの老人や身体障害者や手術直後の患者のような被介助者を入浴させる入浴システムとして、被介助者が載せられた入浴用担架をストレッチャーで入浴装置の浴槽に横付けし、このストレッチャー上から浴槽内の支持台に移動させるよう構成される入浴システムが知られている。
【0003】
この入浴システムは、被介助者が載せられた入浴用担架を、浴槽の側方に横付けした状態から支持台を介してスライドさせることによって浴槽内に案内する。そして、その後浴槽内に湯を溜めて被介助者を湯に浸からせるようになっている(例えば特許文献1参照)。
なお、このように浴槽内に入浴用担架をスライドさせる際には、浴槽の側壁に設けられた扉部が下降して開放状態とされ、入浴用担架がこの開放部を通過して浴槽内に導かれる構成とされている。
このような入浴装置によれば、被介助者を介護する介護者が、比較的労力を必要とせずとも被介助者を入浴させることが可能となっている。
【特許文献1】特開平11−104205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような入浴装置の浴槽においては、浴室のスペースを有効活用するためや、湯量を削減して給湯に要する時間・費用を低減するために浴槽自体のコンパクト化を図ることが要求されている。しかしながら、浴槽がコンパクト化されると、浴槽内に入浴用担架をスライドさせて導入する際に、被介助者の足先が浴槽内の壁面に当たることがあり、入浴用担架の導入を円滑に行うことができないという問題があった。
【0005】
また、浴槽内に入浴用担架が導入された後は、浴槽側壁の扉部が上昇して閉鎖状態とされるが、この際、被介助者の足が入浴用担架からはみ出して扉部に当たることがないよう保護することが求められる。さらに、入浴時においては、被介助者の不用意な開脚を防止して入浴姿勢を保持できることが望ましい。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、被介助者が載せられた入浴用担架を浴槽内にスライドさせる際に、被介助者の足が浴槽の壁面に当たることを防止するとともに、浴槽内に移動された後には、被介助者の足がはみ出すことを防止して入浴姿勢を保持することができる入浴用担架を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る入浴用担架は、担架本体に被介助者を載せて入浴させる入浴用担架であって、前記被介助者の足を保護するフットガードが設けられ、該フットガードが、前記被介助者の足先に当接する第一位置と、前記担架本体の側面に沿った第二位置とを選択的にとり得るようにしたことを特徴としている。
【0008】
フットガードが第一位置にあるときには、被介助者の足先がガードされ担架本体の長手方向外側にはみ出すことはない。
また、担架本体が浴槽内に導入された後は、フットガードを第二位置に移動させることによって、被介助者は足をゆったりと伸ばすことができる他、担架本体の両側方がフットガードによってガードされた状態となるため、被介助者の足が担架本体から側方にはみ出すのを防止することができる。したがって、浴槽側壁の扉部が上昇する際の被介助者の安全性を担保することができるとともに、入浴時における被介助者の不用意な開脚を防止することができる。
【0009】
また、本発明に係る入浴用担架においては、前記担架本体における前記被介助者の足先側の左右両側に一対の支軸が配設され、前記フットガードが前記支軸のそれぞれに水平方向に回動可能に取り付けられたこと特徴としている。
【0010】
このような特徴の入浴用担架によれば、フットガードを水平方向に回動させることをもって、足先をガードする第一位置と担架本体の両側方をガードする第二位置とを選択的にとり得ることができる。
【0011】
また、上記入浴用担架においては、前記フットガードの回動角度を前記第一位置と前記第二位置との間に制限する角度制限機構が設けられたことを特徴としている。
これにより、フットガードが不用意な方向に回動することなく、必要な範囲のみで回動させることができるため、取扱いを容易にすることが可能となる。
【0012】
さらに、本発明に係る入浴用担架においては、前記第一位置又は前記第二位置において、前記フットガードを回動不能に固定するロック機構が設けられたことを特徴としている。
これによりフットガードは、入浴用ガードを浴槽内に導入する際は第一位置に固定され、当該浴槽内に導入された後には第二位置に固定される。したがってフットガードが不用意に回動してしまうことがないため、安全性を担保することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明における入浴用担架及び入浴システムによれば、被介助者の足先をガードする第一位置と担架本体の側方をガードする第二位置とを選択的にとり得るフットガードを設けることによって、入浴用担架を浴室内に導入する際には被介助者の足が浴槽内の壁面に当たるのを防止し、導入された後には被介助者の足が側方にはみ出すことを防止して入浴姿勢を保持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態である入浴用担架について、図1から図6を用いて詳細に説明する。なお、本発明の実施形態の入浴用担架については、入浴システムとともに詳細に説明する。
図1は実施形態に係る入浴システムを示す側面図、図2は実施形態に係る入浴システムの平面図、図3はフットガードが第一位置にある場合の入浴用担架の斜視図、図4はフットガードの角度制限機構を説明する平断面図、図5はフットガードのロック機構を説明するための平断面図、図6はフットガードが第二位置にある場合の入浴用担架の斜視図である。
【0015】
入浴システム60は、寝たきりの老人や身体障害者や手術直後の患者のような被介助者を入浴させる際に使用され、図1及び図2に示すように、入浴装置10と、ストレッチャ20と、入浴用担架30とから概略構成されている。
【0016】
入浴装置10は、図1及び図2に示すように、入浴装置本体2と、この入浴装置本体2の上部に開口して設けられる浴槽1と、入浴装置本体2の第一側壁2aに設けられる扉部4と、入浴装置10の操作を行うための操作部5とを備えている。
【0017】
図1及び図2に示すように、この入浴装置10の第一側壁2aの上部には開口部2bが形成されており、この第一側壁2aに設けられた扉部4は、該第一側壁2aの高さ方向に沿って移動可能に構成され、開口部2bを開閉することができるように構成されている。また、この扉部4が上方へと移動され開口部2bが閉じられた状態において、扉部4の浴槽1側の面に設けられるシール部材(図示省略)が、この開口部2bの上方を除く周囲三方を液密に密閉させることができるように構成されている。
【0018】
また、浴槽1の底部上面には、図示しない支持台が配置されている。この支持台は、入浴用担架30を浴槽1内に導入する際にはガイドとなり、該入浴用担架30が浴槽1内に導入された後は入浴用担架30を浴槽1上に固定する役割を有する。
【0019】
図1及び図2に示すように、ストレッチャー20は、担架30を載置するための天板21と、この天板21を水平状態に保つ支柱25と、このストレッチャー20を支持し自在に移動させるための4つの車輪24とを備えている。
【0020】
図2に示すように、天板21の上面には、天板21の長手方向と直交する方向に平行に離間して延在する2本のガイドレール21a、21bが固定されている。また天板21の上面には、両ガイドレール21a、21bの配置される略中央部にフック付きのツメを有するロック部材21cが配設されている。
【0021】
入浴用担架30は、被介助者を載せた状態でストレッチャー20上に載置されて搬送されるとともに、入浴時には上述の入浴装置10の支持台上に載せられるものであり、図1から図3に示すように、被介助者が載せられる担架本体35を備えており、該担架本体35は、被介助者の下半身が載せられる座部31と、該座部31の一端側に連結されこの連結部を支点として傾動可能な背もたれ部32とを備えている。なお、これら座部31及び背もたれ部32は、ブロー成形により形成されて内部に空気層が存在しており、軽量なものとされている。
【0022】
座部31の上面には、座部マット31aが敷設されているとともに、該座部31の長手方向と平面視直交する方向の両端部には、被介助者の落下を防止するための柵部31b、31bが設けられている。
また、背もたれ部32の上面には長手方向一方の端部側から順にヘッドレスト32a、背もたれマット32bが設けられている。
さらに、座部31及び背もたれ部32のそれぞれには、被介助者の身体部を固定するためのバンド31c、32cが設けられている。
そして被介助者が、ヘッドレスト32aにその頭部を載せ、長手方向の他方の側に足部を向けるようにして、上半身を背もたれ部32に、下半身を座部31に体重を預けてこの担架30に載せられるようになっている。
【0023】
また、担架30の座部31の裏面には、図1及び図3に示すように、ローラー34a、34bがそれぞれ複数ずつ設けられている。これらのローラー34a、34bは担架30の長手方向と平面視直交する方向に同一線上に並べられ、ローラー34aの列とローラー34bの列とが互いに平行に離間するように設けられている。また両ローラー34a、34bの配置される間隔は、ストレッチャー20のガイドレール21a、21bが離間して配置される間隔と同一とされている。この両ローラー34a、34bは、ローラー支持体36により軸支されその軸線を中心に回転可能とされ配設されている。
【0024】
また、両ローラー34a、34bの内側の略中央部には入浴装置10に設けられたロック部材3のツメと係合するためのピンを設けるロック受部38が備えられている。
【0025】
そして、この入浴用担架30における担架本体35の座部31の足先側には、被介助者の足先及び足側方をガード可能な一対のフットガード40、40が配設されている。
このフットガード40、40はフットガード支持部材45によって座部31に取り付けられており、該フットガード支持部材45は、支持パイプ46と一対の支軸47、47とから構成されている。
【0026】
支持パイプ46は、平面視にて略コの字状をなすパイプであって、コの字の開口端が座部31の裏面に固定されているとともに、コの字の開口と対向する直線部分46aが座部31の表面上に足先側端部に沿うように設けられている。これにより、直線部分46aは入浴用担架30の左右方向に沿って延在して配設されている。
また、支軸47、47は鉛直方向に延びる軸状の部材であり、支持パイプ46における直線部分46aの左右両端に一対が配設されている。
【0027】
さらに、両支軸47、47には、例えば図4に示すように、その径方向外側に頭部48aが突出するようにして捩じ込まれたネジ部材48が設けられている。
また、支軸47には、例えば図5に示すように、その径方向外側に向けて付勢されて径方向に進退可能ボールプランジャ49が設けられている。
なお、これらネジ部材38及びボールプランジャ49は、両支軸47、47において高さの異なる箇所に設けられている。
【0028】
フットガード40は、鉛直方向に延びる有底筒状をなす支軸取付部40aと、鉛直面に沿った板状をなし支軸取付部40の半径方向に延在するように配設されたフットガード本体40bとから構成されており、支軸取付部40aが支軸47に外嵌されることにより、該支軸47に回動可能に取り付けられている。
【0029】
また、図4に示すように、支軸取付部40aにおけるネジ部材48に対応する高さ位置には、該ネジ部材47aの頭部が収納可能な貫通溝40cが形成されている。この貫通溝40cは、平面視にて支軸取付部40aの周方向に一定の角度(本実施形態では110°)で開口するように形成されており、支軸47に取り付けられたネジ部材48の頭部48aがこの貫通溝40c内のみを移動することで、支軸47に対する支軸取付部40aの回動角度が制限されている。これによって、フットガード40、40は互いの先端側を近接させた第一位置(図1から図3参照)と、座部32の側面側に沿った第二位置(図6参照)との間のみで回動可能とする角度制限機構が構成される。
【0030】
さらに、図5に示すように、支軸取付部40aの内周面におけるボールプランジャ49に対応する高さ位置には、ボールプランジャ49の突出部分49aが嵌り込む溝40d、40dが周方向に上記貫通溝40cの開口角度(本実施形態では110°)に対応する間隔を空けて二つが形成されている。
これにより、フットガード40が上記第一位置又は第二位置にある際には、ボールプランジャ49の突出部分49aが溝40d、40dに嵌りこむことによって、僅かなの力では固定されないようにフットガード40が支軸47に対して固定されるロック機構が構成される。
なお、上記突出部分49aは径方向外側に向けて付勢されているものの進退可能であるため、ある程度の力でもってフットガード40を回動させようとした際には、突出部分49aが後退してフットガード40の回動が許容されるようになっている。
【0031】
次に、上記のように構成される入浴システム60における入浴用担架30の作用について説明する。
入浴装置10は、予め扉部4を下げ開口部2bを開口状態としておく。そして、被介助者が載せられた入浴担架30を載置したストレッチャー20を、入浴装置10の第一側壁2aの側へ横付けし、入浴用担架30を浴槽1内に導入可能な状態にする。
【0032】
ここで入浴用担架30が浴槽1内に導入される際には、フットガード40、40を図1から図3に示すような互いの先端側を近接させた第一位置にする。
これにより座部31の足先側端部に二枚のフットガード40、40が立設された状態となり、被介助者の足先が当該フットガード40、40に当接してガードされるため、被介助者の足が担架本体の長手方向外側にはみ出すことはない。したがって、被介助者の足先の安全性を担保しながら入浴用担架30を円滑に浴槽1内に導入することが可能となる。
【0033】
そして、被介助者が載せられた入浴用担架30は、ストレッチャー20のガイドレール21a、21b上から入浴装置10の図示しない支持台上へローラー34a、34bを回転させつつ水平移動されることで、浴槽1内に入浴用担架30が導入される。
【0034】
入浴用担架30が入浴装置10の支持台上まで移動されると、ロック受部38が入浴装置10のロック部材3と係合されて、入浴用担架30はその長手方向と直交する向きにロックされ浴槽1内に固定される。
なお、この際には、フットガード40、40を第二位置へと回動させる。これにより、被介助者の足先側に足の伸張を妨げるものはなく足をゆっくり伸ばすことができ、被介助者の入浴スペースを広くとることが可能となる。
さらに当該フットガード40、40が被介助者の足の両側方をガードした状態となるため、被介助者の足が担架本体から側方にはみ出すことはない。これによって、入浴装置1の扉部4を上方へと移動させる際に、被介助者の足が扉部4に当たることを避けることができるため、被介助者の安全性を担保するとともに、扉部4の円滑な閉鎖を行うことが可能となる。
また、浴槽1内に湯を溜めて入浴している際には、当該フットガード40、40により被介助者が不用意に開脚してしまうのを防止することができるため、被介助者の入浴姿勢を保持して、当該被介助者を快適に入浴させることが可能となる。
【0035】
以上のように、本発明の実施形態の入浴用担架30においては、座部31の足先側端部をガードする第一位置と座部31の側面側をガードする第二位置との間で回動可能なフットガード40、40を設けることによって、入浴用担架30を浴槽1内に導入する際には被介助者の足が浴槽1内の壁面に当たるのを防止し、導入された後には、被介助者のスペースを広く確保することができ、かつ被介助者の足が側方にはみ出すことを防止して入浴姿勢を保持することが可能となる。
したがって、安全性及び快適性を備えた理想的な入浴用担架30を提供することが可能となる。
【0036】
また、角度制限機構が備えられているため、フットガード40、40が不用意に回動することなく、さらにロック機構によってフットガード40、40が第一位置又は第二位置において固定されることにより、当該フットガード40、40の不用意な回動を避けることができるため、入浴用担架30の安全性及び取扱い性を担保することが可能となる。
【0037】
以上、本発明に係る入浴用担架30の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態においては、フットガード30を支持するフットガード支持部材45は支持パイプ46と一対の支軸47、47とから構成されているが、支軸47、47が座部31の足先側両端に直接的に取り付けられたものであってもよい。
また、支軸47、47には、角度制限機構及びロック機構のいずれか一方が設けられたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態に係る入浴システムを示す側面図である。
【図2】実施形態に係る入浴システムの平面図である。
【図3】フットガードが第一位置にある場合の入浴用担架の斜視図である。
【図4】フットガードの角度制限機構を説明する平断面図である。
【図5】フットガードのロック機構を説明するための平断面図である。
【図6】フットガードが第二位置にある場合の入浴用担架の斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 浴槽
10 入浴装置
20 ストレッチャー
30 入浴用担架
35 担架本体
40 フットガード
40c 貫通溝(角度制限機構)
40d 溝(ロック機構)
48 ネジ部材(角度制限機構)
48a 頭部(角度制限機構)
47 支軸
49 ボールプランジャ(ロック機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担架本体に被介助者を載せて入浴させる入浴用担架であって、
前記被介助者の足を保護するフットガードが設けられ、
該フットガードが、前記被介助者の足先に当接する第一位置と、前記担架本体の側面に沿った第二位置とを選択的にとり得るようにしたことを特徴とする入浴用担架。
【請求項2】
前記担架本体における前記被介助者の足先側の左右両側に一対の支軸が配設され、
前記フットガードが前記支軸のそれぞれに水平方向に回動可能に取り付けられたこと特徴とする請求項1に記載の入浴用担架。
【請求項3】
前記フットガードの回動角度を前記第一位置と前記第二位置との間に制限する角度制限機構が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の入浴用担架。
【請求項4】
前記第一位置又は前記第二位置において、前記フットガードを固定するロック機構が設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の入浴用担架。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate