説明

入浴装置

【課題】 最初から適当な温度のシャワーを浴びせることができる入浴装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 内部に入浴者を収容する浴槽と、浴槽内に湯を噴射する噴射ノズル48及び噴射ノズル48に湯を供給する給湯管13を有するシャワー手段とが備えられている入浴装置において、給湯管13内に残留する湯を排水する排水手段12が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の不自由な入浴者を入浴させる入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、身体が不自由な要介助者(入浴者)を入浴させる入浴装置が数多く提供されており、例えば、身体が不自由な入浴者を車椅子に着座させたまま入浴させる装置がある。この装置は、一部が開閉して車椅子に着座した入浴者を車椅子ごと収容する浴槽と、浴槽内の入浴者にシャワーを浴びせるシャワー手段とが備えられたシャワー式の入浴装置である。シャワー手段には、湯を噴射する複数の噴射ノズル、湯が貯められたタンク、噴射ノズルとタンクとを接続する給湯管、及びタンク内の湯を噴射ノズルに圧送するポンプがそれぞれ備えられており、タンク内に貯留された湯を噴射ノズルから噴射させることで入浴者にシャワーが浴びせられる。上記した入浴装置によれば、複数の噴射ノズルから噴射される湯によって入浴者の身体を洗い流すことができ、入浴者は車椅子に着座したままの状態で入浴することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−342647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の入浴装置では、入浴者にシャワーを浴びせる際、前回使用したときの湯(水)が給湯管内に残留しているため、最初は、冷めた残留水が噴射ノズルから噴射され、入浴者に冷めたシャワーを浴びせることになるという問題が存在する。特に、寒冷期には残留水の温度は低くなって噴射ノズルから最初に噴射される水は冷水となるため、心臓の弱い入浴者の場合には、入浴者を浴槽内に入れる前に残留水を出しておくなどの処置が必要である。
【0004】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、最初から適当な温度のシャワーを浴びせることができる入浴装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、内部に入浴者を収容する浴槽と、該浴槽内に湯を噴射する噴射ノズル及び該噴射ノズルに湯を供給する給湯管を有するシャワー手段とが備えられている入浴装置において、前記給湯管内に残留する湯を排水する排水手段が備えられていることを特徴としている。
【0006】
このような特徴により、給湯管内に残留する湯を排出することで、噴射ノズルには最初から適温の湯が供給される。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の入浴装置において、前記排水手段には、前記給湯管の最も低い部分に設けられた弁体と、該弁体を介して前記給湯管に接続されて下方に向かって配管された排水管とが備えられていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、弁体を切り換えて排水管を給湯管に連通させることで、給湯管内に残留した湯は、排水管内に流れ落ちて排水される。このとき、ポンプ等の圧送設備を使用しなくても、給湯管内に残留した湯は排水管内に流れ落ちる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る入浴装置によれば、給湯管内に残留する湯を排水する排水手段が備えられており、給湯管内に残留する湯を排出することで、噴射ノズルには最初から適温の湯が供給されるため、最初から適当な温度の湯を噴射ノズルから噴射させることができ、入浴者に適温のシャワーを浴びせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る入浴装置の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0011】
図1は入浴装置1の斜視図であり、図2は入浴装置1の側断面図であり、図3は入浴装置1の平面図である。図1、図2,図3に示すように、入浴装置1は、車椅子2に着座した入浴者Mを車椅子2に乗せたままの状態で入浴させる装置である。
【0012】
入浴装置1には、前端部に形成された扉4が開閉されて入浴者Mが車椅子2に着座したままの状態で内部に移送されるとともに内部に湯が溜まるように上端が開放された箱状に形成された浴槽3と、浴槽3の両側上端部にそれぞれ配置されて鉛直方向に回転可能に取り付けられたアーム部材29と、浴槽3の内部に湯を供給して浴槽3内に湯を張る給湯手段5と、浴槽3の内部に向けてシャワーを噴射するシャワー手段6と、浴槽3内の湯を排出する槽内排水手段7と、浴槽3内に張られた湯の中にバブルを発生させるバブル洗浄手段8と、後述する図6に示す第1のシャワー給湯管13内に残留する湯を排水する管内排水手段12と、給湯手段5,シャワー手段6,槽内排水手段7,バブル洗浄手段8及び管内排水手段12を一元的に制御する制御手段9とが備えられている。
【0013】
図4は、入浴装置1の正面図である。図1,図2,図3,図4に示すように、浴槽3は、前方側(図3において左側)が開口された浴槽本体28と、開口された浴槽本体28の前端部に設けられた扉4とから構成されており、浴槽本体28及び扉4は、防水性を有する板状のガラス繊維強化プラスチック(FRP)からそれぞれなっているとともに、それぞれ中空に形成されている。浴槽3には上方に開放されて内部に湯が溜められる湯船部28aが形成されており、浴槽本体28の下部には車椅子2の台座10が入れられる窪み部28bが形成されている。湯船部28aは入浴者Mの下半身が納まる程度の深さに形成されている。
【0014】
扉4の一側部は浴槽本体28の前端一側部にヒンジ30を介して回転自在に取り付けられており、扉4は開閉自在に設けられている。また、扉4の他側部と浴槽本体28の前端他側部とはロック機構78によりロックされ、扉4は閉塞状態に保持される。また、浴槽本体28の前端面に対向する扉4の端面には帯状のパッキン31が付設されており、このパッキン31が浴槽本体28の前端面と扉4の端面との間に介在されることにより閉塞状態の扉4と浴槽本体28との間は止水される。
【0015】
浴槽本体28の底部の前端部中央には、開口された前端から後方に延在するスリット部32が形成されている。スリット部32は支持ロッド11の直径よりも若干大きい幅に形成されており、入浴者Mを浴槽3内に移送する際にはスリット部32内に車椅子2の支持ロッド11が嵌入される。スリット部32の下方には、車椅子2が浴槽本体28内部の所定位置に配置されるときに、支持ロッド11を左右両側から挟み込んでスリット部32をシールする一対の底部シール部材33が左右方向(図5において縦方向)に移動自在に設けられている。
【0016】
底部シール部材33は、シール性を発揮できるよう適度な柔軟性を有しているとともに耐水性を有する材料、例えば多数の独立した気泡を有するスポンジ状のもの、発泡スチロール、あるいはゴム等で作られる。一対の底部シール部材33は前後方向(図5において横方向)にそれぞれ延在されており、底部シール部材33の後端部には支持ロッド11が嵌合される湾曲形の凹部が形成されている。
【0017】
図5は底部シール部材33を左右方向に移動させる駆動機構を表す断面図である。図5に示すように、底部シール部材33は、浴槽本体28の湯船部28aの底部にそれぞれ固着されたステンレス板34と、ステンレス板34に垂設された断面L字状の支持部材35との間に挟み込まれて配置されている。また、底部シール部材33は底部シール部材33自体の形を保持するための断面L字状の補強部材36に取り付けられており、補強部材36の底面とステンレス板34の上面との間には両者間の良好な滑りを確保する例えばフッ素樹脂等からなる滑り部37が介在されている。
【0018】
また、補強部材36には左右方向に延在するロッド部材38の一端が接合されている。ロッド部材38の他端にはく字状に屈曲自在のリンク部材39が回転自在に取り付けられており、リンク部材39には斜め上方に向けて配置されたシリンダー40のピストン40aの先端が回転自在に取り付けられている。シリンダー40は、左右の底部シール部材33に対してそれぞれ複数設けられており、それらシリンダー40は浴槽本体28内に配される支持フレーム41によって支持されている。
【0019】
図1,図2に示すように、アーム部材29は、例えばFRP等の板材を中空箱形に成形してなり、全体的に弓形に形成されている。また、アーム部材29は、浴槽3の上端両側部の上方で前後方向に延在されており、浴槽3内に居る入浴者Mの上半身の側方に配置されている。アーム部材29の後端部(入浴者Mの頭部が配置される頭側の端部)には回転軸29aが設けられており、アーム部材29は手動により上下方向に開閉される。アーム部材29の先端には、浴槽3の上端に当接する凸部材29bが付設されており、アーム部材29は、閉じられた状態のときには略水平状態が保たれる。また、回転軸29aには図示せぬストッパーが設けられており、アーム部材29は、開けられた状態のときには略鉛直状態が保たれる。
【0020】
両側のアーム部材29の間には、アーム部材29に両側部がそれぞれ固定されて浴槽3の上面を覆うフード14が設けられている。フード14は、例えばFRP等の板材からなり、フード14の前後端および両側端は裏側方向に向けて立ち上げられるように成形されている。立ち上げられたフード14の両側端部は両側のアーム部材29の内側面にそれぞれボルト固定されている。フード14の全体的な形状としては、前後方向および左右方向にそれぞれ湾曲に形成されており、フードの後端部(入浴者の頭部が配置される頭側の端部)には、入浴者Mの頭部を出すための凹部15が形成されている。また、凹部15の縁についてもフード14の前後端および両側端と同様に裏側方向に向けて立ち上げられるように成形されており、フード14の裏面には凹部15の縁に沿って立上り部16が形成されている。
【0021】
図6は入浴装置1の給水給湯及び排水の配管図である。図2,図3,図6に示すように、給湯手段5は、湯が貯留された貯湯タンク42と、貯湯タンク42内の湯を圧送する送湯ポンプ43と、送湯ポンプ43により圧送された湯を浴槽3内に放出する給湯口44と、貯湯タンク42と送湯ポンプ43を接続する第1の槽内給湯管45と、送湯ポンプ43と給湯口44を接続する第2の槽内給湯管46とから構成されている。貯湯タンク42及び送湯ポンプ43は中空の浴槽本体28の中に格納されている。給湯口44は、後端側に位置する浴槽本体28の内壁下部に形成されており、浴槽3の湯船部28a内には湯が溜められる。また、浴槽3には、湯船部28a内に溜められた湯の高さを検知する図示せぬ検知手段が備えられている。
【0022】
また、シャワー手段6は、上記した貯湯タンク42と、中空の浴槽本体28の中に格納されて貯湯タンク42内の湯を圧送するシャワーポンプ47と、湯を浴槽3の内部に向けて噴射する複数の噴射ノズル48と、シャワーポンプ47と噴射ノズル48を接続して噴射ノズル48に湯を供給する第1のシャワー給湯管13と、貯湯タンク42とシャワーポンプ47を接続する第2のシャワー給湯管17とから構成されている。複数の噴射ノズル48は、浴槽本体28の両側の内壁面,入浴者Mの背面に対向する浴槽本体28の後方の内壁面,入浴者Mの臀部に対向する浴槽本体28の底面,及び両側のアーム部材29にそれぞれ付設されている。
【0023】
第1のシャワー給湯管13は、シャワーポンプ47に水平に接続され、一旦上方に屈曲されてから下方に折り返され、その後一度水平に屈曲されてから再度上方に屈曲されるように形成されており、Sトラップ状に配管されている。また、第1のシャワー給湯管13のうち再度上方に屈曲された部分は、先ず、浴槽本体28の底面の方向(低位方向)と、浴槽本体28の両側及び後方の内壁面の方向(中位方向)と、両側のアーム部材29の方向(高位方向)とに三又に分岐されており、中位方向に伸びた部分は、更に浴槽本体28の両側及び後方の各々の噴射ノズル48に向かって三又に分岐され、また、高位方向に伸びた部分は、両側のアーム部材29に向かって二又に分岐されている。また、第1のシャワー給湯管13の低位方向に伸びた部分と低,中,高位方向に分岐される手前の部分とには、開閉弁18がそれぞれ設けられている。
【0024】
上記した給湯手段5により、湯船部28aには浴槽3内に移送された入浴者Mの下半身が配置され、湯船部28a内に溜められた湯の中には入浴者Mの下半身が浸けられる。また、上記したシャワー手段6により、噴射ノズル48から噴射するシャワーは浴槽3内に移送された入浴者Mの上半身に浴びせられる。したがって、浴槽3は、入浴者Mの下半身を浸けるための湯が張られる下半身浴部49と、入浴者Mの上半身にシャワーを浴びせて流すシャワー浴部50とに区分されている。
【0025】
図7は槽内排水手段7を表す断面図である。図6,図7に示すように、槽内排水手段7は、浴槽本体28の底面に形成された排水孔51と、排水孔51に接続された槽内排水管52と、排水孔51を塞ぐ排水栓53と、排水栓53を開閉させる排水栓開閉機構54とから構成されている。排水孔51は、浴槽本体28の底面に段々状に円形の窪み部55が形成され、窪み部55の下端面に孔56が複数あけられている構成からなり、浴槽3の湯船部28a内の湯は窪み部55内に集水されて孔56から排出される。
【0026】
排水孔51の下端は槽内排水管52に接続されている。槽内排水管52は、排水孔51の下方に室部57aが設けられ、室部57aの側壁に形成された連結部57bにジャバラ管57cが接続されて構成されている。ジャバラ管57cは室部57aに連通されているとともに浴槽3外部の床に形成された排水側溝Gまで伸ばされている。排水栓53は、例えばゴム材などからなり、排水孔51の窪み部55に上下方向に出し入れ自在に嵌入されている。
【0027】
排水栓開閉機構54は、上下方向に往復移動するピストン58aを有する排水栓開閉シリンダー58からなり、排水栓開閉シリンダー58は室部57aの下方に上向きで配置されて室部57aの底部に吊持されている。排水栓開閉ピストン58は室部57aの底部に貫通されており、室部57a内のピストン58aの先端と排水栓53の下面とは室部57内に配置されたロッド材59を介して接続されている。ロッド材59は、窪み部55の下端面中央に設けられて鉛直方向に延在する円筒部材60の中に挿通されている。
【0028】
図6に示すように、管内排水手段12は、第1のシャワー給湯管13に設けられた弁体19と、該弁体19を介して第1のシャワー給湯管13に接続された管内排水管20とから構成されている。弁体19は、電動式の三方弁であり、第1のシャワー給湯管13と管内排水管20とを連通させる状態と、第1のシャワー給湯管13と管内排水管20とを連通させずにシャワーポンプ47で圧送された湯を噴射ノズル48の方向に流通させる状態とに切り替えられるものである。弁体19は、Sトラップ状に形成された第1のシャワー給湯管13の最も低い部分に設けられており、具体的には、弁体19は、第1のシャワー給湯管13のうち、下方に折り返された後に屈曲されて水平に形成された部分13aに設けられている。また、管内排水管20は、下方に向かって配管されており、浴槽3外部の床に形成された排水側溝Gまで伸ばされている。
【0029】
図2,図3に示すように、バブル洗浄手段8は、エアを送り出すブロア61と、エアが噴射されて湯船部28a内に溜められた湯にバブルを発生させるバブル発生部62とから構成されている。ブロア61は浴槽本体28内に格納され、バブル発生部62は浴槽3の底面上に配置されており、ブロア61とバブル発生部62とは図示せぬエア配管を介して接続されている。
【0030】
バブル発生部62は、浴槽3底面の両側部に2本平行に配置された第1のバブラー管62aと、浴槽底面の中央部に配置された第2のバブラー管62bとから構成されており、第1のバブラー管62aは入浴者Mの大腿部裏側に対向されており、第2のバブラー管62bは入浴者Mの臀部に対向されている。第1のバブラー管62a及び第2のバブラー管62bはエアが噴き出る複数の孔を有する管からなり、第2のバブラー管62bはT字形に形成されている。
【0031】
また、図2,図3,図6に示すように、入浴装置1には、シャワー手段6により噴射されるシャワーの中に液状の洗剤を混入させる洗剤混入手段63が備えられている。洗剤混入手段63は、浴槽本体28の中に格納されて洗剤(ボディシャンプー)Sを貯留する洗剤タンク64と、洗剤Sを送り出す洗剤ポンプ66と、洗剤ポンプ66と第1のシャワー給湯管13を接続する第1の洗剤管69と、洗剤タンク64と洗剤ポンプ66を接続する第2の洗剤管67とから構成されている。
【0032】
図8は入浴装置1の駆動システムの概略を表すブロック図である。図1,図3,図8に示すように、入浴装置1には操作盤70が設けられており、操作盤70には上記した送湯ポンプ43、シャワーポンプ47、ブロア61、洗剤ポンプ66のオンオフ切り換えを個別にそれぞれ行うスイッチ71,72,73,74、排水栓開閉シリンダー58を個別に伸縮させるスイッチ76、および弁体19の切換を行なうスイッチ75がそれぞれ備えられている。
【0033】
また、操作盤70には、給湯手段5、シャワー手段6、槽内排水手段7、バブル洗浄手段8,管内排水手段12及び洗剤混入手段63による入浴時の一連の工程を一括して行う全自動スイッチ77が備えられている。全自動スイッチ77による信号は、送湯ポンプ43、シャワーポンプ47、排水栓開閉シリンダー58、ブロア61、洗剤ポンプ66及び弁体19を一元的に制御する制御手段9に配信され、制御手段9から送湯ポンプ43、シャワーポンプ47、排水栓開閉シリンダー58、ブロア61、洗剤ポンプ66及び弁体19にそれぞれ送信される。
【0034】
また、アーム部材29の回転軸29aには、リミット機構21が設けられている。リミット機構21は、アーム部材29が下げられているときにはオフ状態となって、送湯ポンプ43、シャワーポンプ47、ブロア61及び洗剤ポンプ66をそれぞれ停止させるとともに、弁体19を第1のシャワー給湯管13と管内排水管20とが連通する状態に切り替えるものである。リミット機構21は、アーム部材29の回転軸29aに付設された係止ピン22と、回転軸29aの近傍に配置された検知部23とからなり、アーム部材29が下げられているときには係止ピン22が検知部23を押圧してオン状態となり、アーム部材29が上げられているときには係止ピン22が検知部23から離れてオフ状態となる。
【0035】
図9は制御手段9による全自動時のフローチャート図である。制御手段9からの信号を受信した送湯ポンプ43、シャワーポンプ47、排水栓開閉シリンダー58、ブロア61、洗剤ポンプ66及び弁体19は、図9に示すフローチャート図の工程のようにオンオフ切り換えや伸縮等が行なわれ、全自動的にそれぞれ作動される。なお、入浴装置1には、図6に示すように、ハンドシャワー設備65が設けられている。また、図3に示す符号79は油圧ユニットを示し、符号80はリレーボックスを示している。
【0036】
次に、上記した構成からなる入浴装置1の使用方法について説明する。
【0037】
上記した入浴装置1により、入浴者Mを入浴させる場合には、まず、入浴者Mを車椅子2上に着座させるとともに、アーム23を上方へ引き上げて車椅子2のフットレストを斜め上に引き上げ、この状態で予め扉4をあけておいた浴槽3の内部に挿入する。このとき、車椅子2の支持ロッド11を浴槽本体28のスリット部32に侵入させる。なお、このように、扉4をあけて車椅子2ごと入浴者Mを浴槽3内に侵入させるとき、浴槽2内には湯が溜められてなく、湯は貯湯タンク42に貯留されていることは言うまでもない。また、このとき、両側のアーム部材29はそれぞれ略鉛直に立てられており、フード14は開けられている。
【0038】
入浴者Mを乗せた車椅子2を浴槽3の内方所定位置まで押し込んだ後、扉4を閉めて、扉4の他側部と浴槽本体28の前端他側部との間に設けられたロック機構78によりロックする。そして、この状態で、浴槽本体28の底面の下方に左右対称に設けられたシリンダー40を同期させながら駆動させ、一対の底部シール部材33を互いに近接するように移動させて、車椅子2の支持ロッド11を両側から挟み込む。これにより、浴槽本体28のスリット部32をシールする。また、略鉛直状態に立てられているアーム部材29を略水平状態になるように回転させて、アーム部材29を入浴者Mの上半身の側方に配置させるとともにフード14を閉じて浴槽3を閉塞させる。このとき、フード14の凹部15から入浴者Mの頭部は出されている。
【0039】
次に、図5,図8に示す操作盤70の全自動スイッチ77を押して、浴槽3内に配置された入浴者Mを全自動で入浴させる。具体的には、図9に示すように、全自動スイッチ77を押してスタートさせると、まず、弁体19が、第1のシャワー給湯管13と管内排水管20とを連通させる状態に切り換わる。弁体19が切り換わると、第1のシャワー給湯管13内に残留していた水は、第1のシャワー給湯管13内から管内排水管20に流入し、排水側溝Gに流出する。
【0040】
全自動スイッチ77を押してから所定時間(数秒程度)が経過後に、管内排水管20の入口を塞いで第1のシャワー給湯管13内が一端から他端まで連通するように再び弁体19が切り換わるとともに、送湯ポンプ43、シャワーポンプ47、洗剤ポンプ66がそれぞれオンになって作動する。
【0041】
送湯ポンプ43が作動すると、貯湯タンク42内に貯留されている湯は、第1の槽内給湯管45内を通過して送湯ポンプ43内に流入し、送湯ポンプ43の圧力によって送湯ポンプ43内から送り出されて第2の槽内給湯管46内を通過して給湯口44に至り、給湯口44から浴槽3の湯船部28a内に流出する。
【0042】
また、シャワーポンプ47が作動すると、貯湯タンク42内に貯留されている湯は、貯湯タンク42とシャワーポンプ47とを接続する図示せぬシャワー管内を通過してシャワーポンプ47内に流入し、シャワーポンプ47の圧力によってシャワーポンプ47内から送り出されてシャワーポンプ47と噴射ノズル48とを接続する図示せぬシャワー管内を通過して噴射ノズル48に至り、噴射ノズル48から浴槽3の内部に配置された入浴者Mの身体に向かって噴出する。
【0043】
また、洗剤ポンプ66が作動すると、洗剤タンク64内に貯留されている洗剤Sは、第2の洗剤管67を通過して洗剤ポンプ66内に流入し、洗剤ポンプ66の圧力によって洗剤ポンプ66内から第1の洗剤管69内に送り出されて第1のシャワー給湯管13内に流出する。第1のシャワー給湯管13内に流入した洗剤Sは、第1のシャワー給湯管13内を通過する湯と混ざり合い、噴射ノズル48から噴射されるシャワーは洗剤S入りのシャワーとなる。この洗剤S入りのシャワーは、入浴者Mの上半身や脚部等に向けて噴射され、入浴者Mの上半身や脚部等を洗浄する。
【0044】
また、このとき、排水栓開閉シリンダー58のピストン58aは下方に移動した状態にあり、排水栓53は窪み部55に嵌入して排水孔51を塞いでいるため、浴槽3の湯船部28a内には洗剤入りの湯が溜まる。湯船部28a内に所定の高さまで湯が張られると図示せぬ検知手段が働き、ブロア61をオンにして作動させる。ブロア61が作動すると、ブロア61により発生するエアは、図示せぬエア配管を通って第1、第2のバブラー管62a,62b内に至り、第1、第2のバブラー管62a,62bの孔から浴槽3の湯船部28a内に溜められた湯の中に出て、洗剤入りの湯にはバブルが発生し、このバブルは入浴者Mの臀部及び大腿部裏側を洗浄する。
【0045】
浴槽3の湯船部28a内に、更に洗剤入りの湯が溜まり、所定の高さまで湯が張られると図示せぬ検知手段が働き、送湯ポンプ43をオフにし、給湯口44から流出する湯を止める。シャワーポンプ47、洗剤ポンプ66及びブロア61については引き続き運転させて入浴者Mの身体を洗浄する。
【0046】
送湯ポンプ43、シャワーポンプ47、洗剤ポンプ66がそれぞれオンになってから所定時間(1分から2分程度)が経過後に、洗剤ポンプ66及びブロア61をオフにして停止し、洗剤入りのシャワー及び洗剤入りの湯のバブルによる洗浄を終了する。そして、引き続きシャワーポンプ47を運転させ、洗剤Sが混入されていない湯を入浴者Mの身体に浴びせて泡を洗い流すとともに、排水栓開閉シリンダー58のピストン58aを上方に移動させて窪み部55に嵌入している排水栓53を上方に持ち上げる。排水栓53が上昇して窪み部55から外されると、湯船部28a内に溜められた洗剤S入りの湯は排水孔51から室部57aに流出し、連結部57bからジャバラ管57c内に流出する。
【0047】
洗剤Sが混入されていない湯による洗い流しを所定時間(30秒程度)行った後に、引き続きシャワーポンプ47を運転させるとともに、排水栓開閉シリンダー58のピストン58aを下方に移動させて窪み部55に排水栓53を嵌入させ、さらに送湯ポンプ43をオンにして作動させる。送湯ポンプ43が作動すると、湯が給湯口44から流出し、排水栓53は窪み部55に嵌入して排水孔51を塞いでいるため、湯船部28a内に湯が溜められる。
【0048】
湯船部28a内に所定の高さまで湯が張られると図示せぬ検知手段が働き、送湯ポンプ43をオフにして給湯を停止する。シャワーポンプ47については引き続き運転させて、入浴者Mの上半身をシャワー浴の状態にするとともに、入浴者Mの下半身を湯船部28a内に溜められた湯によって下半身浴の状態にさせる。そして、所定時間経過後に、シャワーポンプ47をオフにしてシャワー浴を停止するとともに、排水栓開閉シリンダー58のピストン58aを上方に移動させて排水を行う。排水完了後、排水栓開閉シリンダー58のピストン58aは下方に移動して窪み部55に排水栓53が嵌入し、全自動による運転が終了する。
【0049】
ここで、洗い流しが不十分である場合、或いは入浴者Mの髪を洗う場合は、備え付けられたハンドシャワー設備65によって行う。このとき、入浴者Mの側方に配置されたアーム部材29を上方に回転させてフード14を開けて行うこともできる。
【0050】
最後に、浴槽本体28の底面の下方に左右対称に設けられたシリンダー40を同期させながら駆動させ、一対の底部シール部材33を互いに離れる外側方向に移動させて、両側から車椅子2の支持ロッド11を挟み込んでいる底部シール部材33を開く。また、入浴者Mの側方に配置されたアーム部材29を上方に回転させてフード14を開けるとともに、扉4の他側部と浴槽本体28の前端他側部との間に設けられたロック機構78を解除して扉4を開ける。そして、入浴者Mを乗せた車椅子2を浴槽3の前方に移動させて入浴者Mを入浴装置1から出し、入浴を完了する。なお、給湯手段5やシャワー手段6,槽内排水手段7,管内排水手段12等はそれぞれ個別に行うこともできる。
【0051】
上記した構成からなる入浴装置1によれば、第1のシャワー給湯管13内に残留する湯を排水する管内排水手段12が備えられているため、シャワー手段6を使用する前に第1のシャワー給湯管13内に残留する冷めた水は排出され、噴射ノズル48には最初から適温の湯が供給される。これによって、最初から適当な温度の湯を噴射ノズル48から噴射させることができ、入浴者Mに適温のシャワーを浴びせることができる。
【0052】
また、管内排水手段12には、第1のシャワー給湯管13の最も低い部分13aに設けられた弁体19と、弁体19を介して第1のシャワー給湯管13に接続されて下方に向かって配管された管内排水管20とが備えられているため、弁体19を切り換えて管内排水管20を第1のシャワー給湯管13に連通させることで、第1のシャワー給湯管13内に残留した湯は、管内排水管20内に流れ落ちて排水される。このとき、ポンプ等の圧送設備を使用しなくても、第1のシャワー給湯管13内に残留した湯は管内排水管20内に流れ落ちるため、ポンプ等の圧送設備を使用しない分、入浴装置1のコストを抑えることができる。
【0053】
また、アーム部材29の回転軸29aにはリミット機構21が設けられているため、万一入浴装置1の稼動中にアーム部材29が上げられてフード14が開けられた場合には、シャワーポンプ47等が一時停止されてシャワーの噴射が止まるため、浴槽3外に湯が飛散することを防止することができる。
【0054】
以上、本発明に係る入浴装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、入浴者Mを車椅子2に着座させたまま入浴させる入浴装置1について説明しているが、本発明は、例えば担架に乗せられた入浴者を担架ごと入浴させる入浴装置であってもよく、その他の介護用入浴装置であってもよい。
【0055】
また、上記した実施の形態では、下半身浴とシャワー浴とを同時に行なえる入浴装置1について説明したが、本発明は、シャワー浴だけを行う入浴装置1であってもよい。
また、上記した実施の形態では、浴槽3の内壁面からシャワーを噴射させるシャワー手段6の給湯管(第1のシャワー給湯管13)内の残留水を排出する管内排水手段12について説明しているが、本発明は、例えばハンドシャワー設備の給湯管内に残留する水を排出する排出手段であってもよい。
【0056】
また、上記した実施の形態では、シャワー手段6を使用する前に管内排出手段12によって第1のシャワー給湯管13内の残留水を排出しているが、本発明は、シャワー手段6を使用した後に直ちに管内排出手段12によって第1のシャワー給湯管13内の残留水を排出してもよい。
【0057】
また、上記した実施の形では、管内排出手段12は自然排水形式の排水方法によって行なっているが、本発明は、ポンプ排水形式によって強制的に給湯管内の残留水を排出してもよい。
【0058】
また、上記した実施の形態では、浴槽3の前端部が片開き式の扉4となっており、浴槽3の前端部が開閉されるが、本発明は、浴槽3の側部や後端部に開閉する扉が形成されていてもよく、また両開き式でも引き出し式でもよく、開閉部分及び開閉方法を限定するものではなく適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る入浴装置の実施の形態を説明するための斜視図である。
【図2】本発明に係る入浴装置の実施の形態を説明するための側面図である。
【図3】本発明に係る入浴装置の実施の形態を説明するための平面図である。
【図4】本発明に係る入浴装置の実施の形態を説明するための正面図である。
【図5】本発明に係る入浴装置の実施の形態を説明するための部分詳細図である。
【図6】本発明に係る入浴装置の実施の形態を説明するための配管図である。
【図7】本発明に係る入浴装置の実施の形態を説明するための部分詳細図である。
【図8】本発明に係る入浴装置の実施の形態を説明するためのブロック図である。
【図9】本発明に係る入浴装置の実施の形態を説明するための使用方法のタイミングチャート図である。
【符号の説明】
【0060】
1 入浴装置
3 浴槽
6 シャワー手段
12 管内排水手段(排水手段)
13 第1のシャワー給湯管(給湯管)
19 弁体
20 管内排水管(排水管)
48 噴射ノズル
M 入浴者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に入浴者を収容する浴槽と、該浴槽内に湯を噴射する噴射ノズル及び該噴射ノズルに湯を供給する給湯管を有するシャワー手段とが備えられている入浴装置において、
前記給湯管内に残留する湯を排水する排水手段が備えられていることを特徴とする入浴装置。
【請求項2】
請求項1記載の入浴装置において、
前記排水手段には、前記給湯管の最も低い部分に設けられた弁体と、該弁体を介して前記給湯管に接続されて下方に向かって配管された排水管とが備えられていることを特徴とする入浴装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−14851(P2006−14851A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194345(P2004−194345)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000182373)酒井医療株式会社 (46)
【Fターム(参考)】