説明

入浴設備の汚染度の判定方法、浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法及び浴槽水の水質管理方法

【課題】高い精度で、簡便に短時間で、入浴設備の汚染度の判定を行なうことができる、入浴設備の汚染度の判定方法を提供する。
【解決手段】入浴設備から採取された、粒子を含む疑いのある試料について、フローサイトメトリーにより、粒子から発せられる散乱光の強度と蛍光の強度とを測定し、それらの測定値が、それぞれ入浴設備の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を汚染微生物として分類し、計数し、計数された粒子の数に基づいて、入浴設備の汚染度を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴設備の汚染度の判定方法、浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法及び浴槽水の水質管理方法に関する。より詳しくは、本発明は、入浴設備の汚染度の判定方法及びそれに用いる装置、浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法及びそれに用いる装置、並びに浴槽水の水質管理方法及びそれに用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界の水環境や人工の水環境、例えば、噴水、浴槽水等には、病原微生物、汚染の原因となる微生物等が含まれている場合がある。例えば、レジオネラ属細菌は、前記水環境に広く生息している細菌である。前記レジオネラ属細菌は、レジオネラ症の原因微生物として知られており、水、例えば、冷却塔に貯留された水、温泉の水、循環風呂の水等が、このレジオネラ属細菌に汚染されている場合、ヒトが、これらの水から生じたエアロゾルを吸い込むことにより、レジオネラ症が引き起こされることがある。
【0003】
従来、自然界の水環境や人工の水環境、例えば、噴水、浴槽水等に含まれる微生物の検査は、前記水環境から採取した試料を専用の培地でインキュベーションすることにより生育する微生物の有無を調べることにより行なわれている。具体的には、例えば、入浴設備におけるレジオネラ属細菌の検査は、当該入浴設備から採取した試料を、レジオネラ選択寒天培地上で、所定条件下にインキュベーションし、前記レジオネラ選択寒天培地上におけるレジオネラ属細菌のコロニーの形成を確認することにより行なわれる(例えば、非特許文献1を参照)。
【0004】
一方、微生物の計数や検出には、フローサイトメータが用いられることがある(特許文献1、特許文献2等を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−89034号公報
【特許文献2】特開平2−31892号公報
【非特許文献1】「新版 レジオネラ症防止指針」、監修 厚生省生活衛生局企画課、財団法人ビル管理センター、平成11年11月発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1記載の方法は、培地上でレジオネラ属細菌を培養して検査結果を得るのに時間を要するため、検査のための培養期間の途中では、検査結果の確認が困難であり、当該水環境の安全性を早期に判断することができず、検査結果に対してとるべき対策を施すことが遅くなること、用いられる培地で生育する微生物以外の評価が困難であること等の欠点がある。また、特許文献1及び特許文献2に記載の方法には、浴槽水等の入浴設備における、汚染度の判定方法や殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法について、全く記載されていない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高い精度で、簡便に短時間で、入浴設備の汚染度の判定を行なうことができる、入浴設備の汚染度の判定方法及び入浴設備の汚染度の判定装置を提供することを1つの目的とする。また、本発明は、簡便に、短時間で浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果を判定することができる、浴槽水の殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法及び浴槽水の殺微生物剤の殺微生物効果の判定装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、高い精度で、簡便にリアルタイムに浴槽水の水質を管理することができる、浴槽水の水質管理方法及び浴槽水の水質管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法は、(A)入浴設備から採取された、粒子を含む疑いのある試料と、微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とを混合して、測定試料を調製するステップ、
(B)前記ステップ(A)で得られた測定試料をフローサイトメータのフローセル内に導入して流すステップ、
(C)前記ステップ(B)でフローセルに光を照射し、このフローセル内を流れる測定試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と、蛍光の強度とを測定するステップ、
(D)前記ステップ(C)で測定された散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、入浴設備の汚染に関与する汚染微生物として分類するステップ、
(E)前記ステップ(D)で汚染微生物として分類された粒子の数を計数するステップ、及び
(F)前記ステップ(E)で汚染微生物として計数された粒子の数に基づいて、入浴設備の汚染度を判定するステップ、
を含むことを特徴としている。
【0009】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法では、前記ステップ(C)において、粒子から発せられる散乱光の強度と蛍光の強度とを測定し、前記ステップ(D)において、散乱光強度及び蛍光強度が、入浴設備の汚染に関与する微生物に対応する所定の散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、汚染微生物として分類するため、簡便に短時間で、入浴設備の汚染に関与する微生物を検出できるとともに、汚染微生物を高い精度で検出することができる。そのため、本発明の入浴設備の汚染度の判定方法によれば、高い精度で、簡便に入浴設備の汚染度を判定することができる。
【0010】
前記蛍光色素は、核酸染色性の蛍光色素であることが好ましい。
【0011】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法では、前記入浴設備は、貯湯タンク、ろ過槽、ヘアキャッチャー、配管、浴槽、浴室の壁、浴室の床、浴室の目地又はシャワー設備であることが好ましい。
【0012】
前記試薬は、界面活性剤をさらに含有する試薬であることが好ましい。
【0013】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法では、散乱光強度及び蛍光強度のそれぞれを座標軸とする分布図上で、ステップ(C)で測定された粒子の分布を表示するとともに、前記分布図上で汚染微生物に対応する範囲を表示するステップをさらに含むことが好ましい。
【0014】
汚染微生物は、レジオネラ属細菌であることが好ましい。
【0015】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法では、前記ステップ(F)において、汚染微生物として計数された粒子の数と閾値とを比較することにより、入浴設備の汚染度を判定することが好ましい。
【0016】
本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法は、(a)殺微生物剤で処理された、粒子を含む疑いのある浴槽水と、微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とを混合して、測定試料を調製するステップ、
(b)前記ステップ(a)で得られた測定試料をフローサイトメータのフローセル内に導入して流すステップ、
(c)前記ステップ(b)でフローセルに光を照射し、このフローセル内を流れる測定試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と、蛍光の強度とを測定するステップ、
(d)前記ステップ(c)で測定された散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類するステップ、
(e)前記ステップ(d)で汚染微生物として分類された粒子の数を計数するステップ、及び
(f)前記ステップ(e)で汚染微生物として計数された粒子の数に基づいて、殺微生物剤の殺微生物効果を判定するステップ、
を含むことを特徴としている。
【0017】
本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法では、前記ステップ(d)において、前記ステップ(c)でフローサイトメータにより測定された粒子の散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類するとともに、前記ステップ(f)において、汚染微生物として計数された粒子の数に基づいて、殺微生物剤の殺微生物効果が判定される。したがって、本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法によれば、高い精度で、簡便に、短時間で浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果を判定することができる。
【0018】
前記殺微生物剤は、酸化性バイオサイドであることが好ましい。前記酸化性バイオサイドは、水中で次亜塩素酸及び/又は次亜臭素酸を発生する化合物、過酸化物、又はオゾンであることが好ましい。
【0019】
本発明の浴槽水の水質管理方法は、(I)経時的に浴槽水から分取された、粒子を含む疑いのある試料それぞれと、微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とを混合し、測定試料を調製するステップ、
(II)前記ステップ(I)で得られた測定試料をフローサイトメータのフローセル内に導入して流すステップ、
(III)前記ステップ(II)でフローセルに光を照射し、このフローセル内を流れる測定試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と、蛍光の強度とを測定するステップ、
(IV)前記ステップ(III)で測定された散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類するステップ、
(V)ステップ(IV)で汚染微生物として分類された粒子の数を計数するステップ、及び
(VI)前記ステップ(V)で汚染微生物として計数された粒子の数に基づき、前記浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報を表示可能に出力するステップ
を含むことを特徴としている。
【0020】
本発明の浴槽水の水質管理方法は、前記ステップ(III)において、経時的に採取した浴槽水中の粒子の散乱光強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光強度とを、フローサイトメータにより測定し、前記ステップ(IV)において、散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類するため、経時的に、簡便に浴槽水中における汚染微生物を検出できるとともに、汚染微生物を高い精度で検出することができる。したがって、本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法によれば、高い精度で、経時的に、簡便に浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果を判定することができる。
【0021】
汚染微生物の数の経時的変化に関する情報は、散乱光強度及び蛍光強度のそれぞれを座標軸する2次元分布図上で、測定された粒子の分布を表示するとともに、前記2次元分布図上で汚染微生物の範囲が表示された2次元分布図の経時的変化を示した図を含むことが好ましい。
【0022】
前記浴槽水は、温泉水を含むことが好ましい。
【0023】
本発明の入浴設備の汚染度の判定装置は、入浴施設から採取された、粒子を含む疑いのある試料中の、当該粒子から発せられる散乱光の強度と、蛍光の強度とを測定するフローサイトメータと、前記フローサイトメータで測定された粒子の散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、入浴設備の汚染に関与する汚染微生物として分類する微生物分類部と、前記微生物分類部で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する粒子計数部と、汚染微生物の数と入浴設備の汚染度とを関連付けた情報を記憶する汚染度情報記憶部と、前記粒子計数部で汚染微生物として計数された粒子の数の数値と、前記汚染度情報記憶部に記憶された情報とに基づき、入浴設備の汚染度を判定する汚染度判定部とを備えていることを特徴としている。
【0024】
本発明の入浴設備の汚染度の判定装置では、フローサイトメータで測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、それぞれ入浴設備の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かが判定され、微生物分類部により、散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、前記範囲内に含まれると判定された粒子が、汚染微生物として分類される。したがって、本発明の入浴設備の汚染度の判定装置によれば、入浴設備に存在する汚染微生物を高い精度で、簡便に短時間で測定できるため、高い精度で、簡便に短時間で、入浴設備の汚染度の判定を行なうことができる。
【0025】
本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定装置は、殺微生物剤で処理された、粒子を含む疑いのある浴槽水中の、当該粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒蛍光の強度とを測定するフローサイトメータと、前記フローサイトメータで測定された粒子の散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類する微生物分類部と、前記微生物分類部で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する粒子計数部と、
汚染微生物の数と殺微生物剤の殺微生物効果とを関連付けた情報を記憶する殺微生物効果情報記憶部と、前記殺微生物効果情報記憶部に記憶された情報と前記粒子計数部で汚染微生物として計数された粒子の数とに基づき、前記殺微生物剤の殺微生物効果を判定する殺微生物効果判定部とを備えていることを特徴としている。
【0026】
本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定装置では、微生物分類部により、フローサイトメータで測定された粒子の散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、それぞれ浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する所定の散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かが判定され、前記所定の範囲内に含まれる粒子が汚染微生物として分類されるとともに、汚染微生物の数と殺微生物剤の殺微生物効果とを関連付けた情報と浴槽水の汚染に関与する微生物として分類され、計数された粒子の数とに基づき、殺微生物効果判定部により、前記殺微生物剤の殺微生物効果が判定される。そのため、本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定装置によれば、殺微生物剤で処理した浴槽水中に存在する汚染微生物を、簡便に測定できるため、簡便に、浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果を判定することができる。
【0027】
本発明の浴槽水の水質管理装置は、経時的に採取された、粒子を含む疑いのある浴槽水中の当該粒子から発せられる散乱光の強度と、蛍光の強度を測定するフローサイトメータと、前記フローサイトメータで測定された粒子の散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類する微生物分類部と、前記微生物分類部で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する粒子計数部と、前記粒子計数部で汚染微生物として計数された粒子の数に基づき、浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報を表示可能に出力する水質情報出力部とを備えていることを特徴としている。
【0028】
本発明の浴槽水の水質管理装置は、経時的に採取された浴槽水中の粒子について、フローサイトメータで測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、微生物分類部により、それぞれ浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する所定の散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かが判定され、前記所定の範囲内に含まれる粒子が、汚染微生物として分類されるとともに、汚染微生物として分類され、計数された粒子の数の数値と、浴槽水の汚染に関与する微生物の数と水質とを関連付けた情報とに基づき、水質判定部により、浴槽水の水質が判定される。そのため、本発明の浴槽水の水質管理装置によれば、経時的に、簡便に浴槽水中における汚染微生物を検出できるとともに、汚染微生物を高い精度で検出することができる。したがって、本発明の浴槽水の水質管理装置によれば、高い精度で、経時的に、簡便に、しかも短時間でリアルタイムに浴槽水の水質を管理することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法及び入浴設備の汚染度の判定装置によれば、高い精度で、簡便に短時間で、入浴設備の汚染度の判定を行なうことができる。また、本発明の浴槽水の殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法及び浴槽水の殺微生物剤の殺微生物効果の判定装置は、高い精度で、簡便に、短時間で浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果を判定することができる。さらに、本発明の浴槽水の水質管理方法及び浴槽水の水質管理装置によれば、高い精度で、簡便に、リアルタイムで浴槽水の水質を管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
〔1〕入浴設備の汚染度の判定方法及び入浴設備の汚染度の判定装置
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法は、(A)入浴設備から採取された、粒子を含む疑いのある試料と、微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とを混合して、測定試料を調製するステップ〔図1中、「測定試料調製ステップ」(ステップS11)〕、
(B)前記ステップ(A)で得られた測定試料をフローサイトメータのフローセル内に導入して流すステップ〔図1中、「測定試料導入ステップ」(ステップS12)〕、
(C)前記ステップ(B)でフローセルに光を照射し、このフローセル内を流れる測定試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光の強度とを測定するステップ〔図1中、「測定ステップ」(ステップS13)〕、
(D)前記ステップ(C)で測定された散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、入浴設備の汚染に関与する汚染微生物として分類するステップ〔図1中、「微生物分類ステップ」(ステップS14)〕、
(E)前記ステップ(D)で汚染微生物として分類された粒子の数を計数するステップ〔図1中、「微生物計数ステップ」(ステップS15)〕、及び
(F)前記ステップ(E)で汚染微生物として計数された粒子の数に基づいて、入浴設備の汚染度を判定するステップ〔図1中、「汚染度判定ステップ」(ステップS16)〕、
を含む方法である。
【0031】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法は、入浴設備から採取された試料について、前記ステップ(C)でフローサイトメトリーにより測定された散乱光強度の測定値と蛍光強度の測定値とが、入浴設備の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、前記ステップ(D)において、汚染微生物として分類するとともに、汚染微生物として分類された粒子の数に基づき、前記ステップ(F)において、汚染度を判定する。このように、本発明の入浴設備の汚染度の判定方法によれば、前記ステップ(C)及び前記ステップ(D)が行われているため、簡便に短時間で、汚染微生物を検出できるとともに、汚染微生物を高い精度で検出することができる。また、本発明の入浴設備の汚染度の判定方法によれば、前記ステップ(C)及び前記ステップ(D)に加えて、前記ステップ(F)を行なうため、計数された粒子の数に基づき、入浴設備の汚染度を高い精度で判定することができる。したがって、本発明の入浴設備の汚染度の判定方法によれば、高い精度で、簡便に入浴設備の汚染度を判定することができる。
【0032】
本明細書において、微生物とは、水環境に存在する微小な生物であれば、特に制限されない。例えば、細菌、アメーバ等を包含する。
【0033】
前記入浴設備の汚染に関与する微生物、すなわち汚染微生物としては、水系感染性のグラム陰性無芽胞桿菌であればよく、特に限定されないが、例えば、アシネトバクター カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アエロモナス ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、アエロモナス ソブリア(Aeromonas sobria)、アエロモナス カビエ(Aeromonas caviae)、カンピロバクター ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター コリ(Campylobacter coli)、クロモバクテリウム ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)、シトロバクター フロインディ(Citrobacter freundii)、シトロバクター スピーシーズ(Citrobacter sp.)、エンテロバクター スピーシーズ(Enterobacter sp.)、エシェリシア コリ セロタイプ(Escherichia coli serotypes)、フラボバクテリウム メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)、フランシセラ チュラレンシス(Francisella tularensis)、フソバクテリウム ネクロホラム(Fusobacterium necrophorum)、クレブシエラ ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、レジオネラ ニューモフィラ(Legionella pneumophilla)、レジオネラ デュモフィ(Legionella dumoffii)、レジオネラ ミクダデイ(Legionella micdadei)、レジオネラ サンチクルシス(Legionella santicrucis)、レジオネラ イスラエレンシス(Legionella israelensis)、レジオネラ パリシェンシス(Legionella parisiensis)、レジオネラ スピリテンシス(Legionella spiritensis)、レジオネラ ハッケリエ(Legionella hackeliae)、レジオネラ エリスラ(Legionella erythra)、レジオネラ ルブリルセンス(Legionella rubrilucens)、レジオネラ アニサ(Legionella anisa)、レジオネラ ジェムストウニエンシス(Legionella jamestowniensis)、モルガネラ モルガニ(Morganella morganii)、プレシオモナス シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、シュードモナス エルギノーサ(Pseudomonas aeruginos)、シュードモナス シュードマレイ(Pseudomonas pseudomallei)、プロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス ブルガリス(Proteus vulgaris)、サルモネラ エンテリチディス(Salmonella enteritidis)、サルモネラ スピーシーズ(Salmonella sp.)、サルモネラ パラティフィ(Salmonella paratyphi)、サルモネラ チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ チフィリミュリウム(Salmonella typhimurium)、セラチア マルセセンス(Serratia marcescens)、シゲラ ディセンテリエ(Shigella dysenteriae)、シゲラ フレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ ゾンネイ(Shigella sonnei)、ビブリオ アルギノリティカス(Vibrio alginolyticus)、ビブリオ コレラエ(Vibrio cholerae)、ビブリオ フルビアリス(Vibrio fluvialis)、ビブリオ ミミカス(Vibrio mimicus)、ビブリオ パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、イエルシナイア エンテロコリチカ(Yersinaia enterocolitica)等が挙げられる。本発明においては、レジオネラ属細菌が好ましい。
【0034】
前記入浴設備としては、特に限定されないが、例えば、貯湯タンク、ろ過槽、ヘアキャッチャー、配管、浴槽、浴室の壁、浴室の床、浴室の目地、シャワー設備等が挙げられる。本発明の入浴設備の汚染度の判定方法は、これらの入浴設備の汚染度の判定に好適である。
【0035】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法では、微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬が用いられている。そのため、本発明の入浴設備の汚染度の判定方法では、入浴設備から採取された試料中に微生物が存在している場合には、当該試薬の蛍光色素が当該微生物に結合又は会合するため、この蛍光色素からの蛍光に基づき、微生物を検出することが可能になる。したがって、本発明の入浴設備の汚染度の判定方法によれば、入浴設備の汚染に関与する微生物を高い精度で検出することができる。
【0036】
前記微生物に結合又は会合する蛍光色素としては、例えば、核酸染色性の蛍光色素、微生物に特異的なマーカー(例えば、ポリペプチド、糖鎖等)に結合する検出可能な物質(例えば、標識抗体、標識リガンド等)等が挙げられる。本発明の入浴設備の汚染度の判定方法においては、操作の容易性の向上、生存細胞の検出の精度の向上等の観点から、好ましくは、核酸染色性の蛍光色素が望ましい。
【0037】
本発明においては、前記蛍光色素を、微生物内に取り込ませ、より効率よく微生物に結合又は会合させる観点から、前記試薬は、界面活性剤をさらに含有することが好ましい。
【0038】
本明細書において、「微生物に結合又は会合する」とは、微生物そのもの(例えば、微生物の細胞膜等)との結合又は会合に加え、前記微生物内に存在する核酸等に結合又は会合することを意味する。
【0039】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法では、フローサイトメータが用いられているため、前記蛍光色素を含む試薬が用いられていることと相まって、簡便に、短時間で微生物を検出できることができる。したがって、本発明の入浴設備の汚染度の判定方法によれば、簡便に短時間で、入浴設備の汚染度の判定を行なうことができる。
【0040】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法は、例えば、図2及び図6に示される入浴設備の汚染度の判定装置Aを用いることにより好適に行なわれる。
【0041】
判定装置Aは、図2に示されるように、フローサイトメータ(測定装置)1と情報処理装置2とから構成されている。
【0042】
図3に、フローサイトメータ1の光学検出部の概略説明図を示す。光学検出部は、フローセル101に試料を導入し、フローセル101中に試料の液流を発生させ、フローセル101内を通過する液流に含まれる粒子に半導体レーザ光を照射して測定するものである。この光学検出部は、シースフロー系100、ビームスポット形成系110、前方散乱光受光系120、側方散乱光受光系130及び側方蛍光受光系140を有している。シースフロー系100は、フローセル101内を試料がシース液に包まれた状態で粒子が一列に並んだ状態で流れ、粒子の計数の正確度と再現性を向上させるものとなっている。ビームスポット系110は、半導体レーザ111から照射された光が、コリメータレンズ112とコンデンサレンズ113を通って、フローセル101に照射されるよう構成されている。また、ビームスポット系110は、ビームストッパ114も備えている。前方散乱光受光系120は、前方への散乱光を前方集光レンズ121によって集光し、ピンホール122を通った光を前方散乱光受光部123で受光するように構成されている。側方散乱光受光系130は、側方への散乱光を側方集光レンズ131にて集光するとともに、一部の光をダイクロイックミラー132で反射させ、側方散乱光受光部133で受光するよう構成されている。側方蛍光受光系140は、ダイクロイックミラー132を透過した光をさらに分光フィルタ141に通し、蛍光受光部142で受光するよう構成されている。各受光部123、133、142で光を受光すると、各受光部123,133,142は、電気パルス信号を出力する。この電気パルス信号から測定データが作成される。測定データは、フローサイトメータ1から情報処理装置2へ送信され、情報処理装置2において、処理・分析が行われる。
【0043】
散乱光は、粒子が光の進行方向に障害物として存在し、光がその進行方向を変えることによって生じる。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさや材質に関する情報を得ることができ、なかでも、前方散乱光からは、粒子の大きさに関する情報を得ることができる。また、側方散乱光からは、粒子内部の情報を得ることができる。
【0044】
なお、本明細書において、散乱光は、特に制限されるものではなく、前方散乱光及び側方散乱光のいずれも含むが、前方散乱光が好ましい。
【0045】
図6に、入浴設備の汚染度の判定装置Aの機能ブロック図を示す。図6に示される判定装置Aは、フローサイトメータ1と、情報処理装置2とから構成される。フローサイトメータ1は、殺微生物剤で処理された浴槽水中の粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光の強度とを測定する。情報処理装置2は、微生物分類部12と、粒子計数部13と、汚染度情報記憶部14と、汚染度判定部15と、表示部16と、記憶部23とを備える。
【0046】
フローサイトメータ1は、入浴施設から採取された試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光の強度とを測定する。
【0047】
情報処理装置2において、微生物分類部12は、フローサイトメータ1で測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、それぞれ浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かを判定し、前記範囲内に含まれると判定された粒子を、汚染微生物として分類する。さらに、粒子計数部13は、微生物分類部12で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する。汚染度情報記憶部14は、汚染微生物の数と入浴設備の汚染度とを関連付けた情報として、所定の閾値を記憶する。汚染度判定部15は、粒子計数部13で汚染微生物として計数された粒子の数の数値と、汚染度情報記憶部14に記憶された閾値とに基づき、入浴設備の汚染度を判定する。表示部16は、汚染度判定部15による判定の結果を表示する。記憶部23は、微生物分類部12で用いられる汚染微生物の散乱光強度の範囲と蛍光強度の範囲との情報を記憶している。
【0048】
図22は、情報処理装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。前記情報処理装置2は、本体S110と、出力デバイスS120(表示部16)と、入力デバイスS130とから主として構成されたコンピュータによって構成されている。本体S110は、CPU S110aと、ROM S110bと、RAM S110cと、ハードディスクS110dと、読出装置S110eと、入出力インタフェースS110fと、通信インタフェースS110gと、画像出力インタフェースS110hとから主として構成されており、CPU S110a、ROM S110b、RAM S110c、ハードディスクS110d、読出装置S110e、入出力インタフェースS110f、通信インタフェースS110g、及び画像出力インタフェースS110hは、バスS110iによってデータ通信可能に接続されている。
【0049】
CPU S110aは、ROM S110bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM S110cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、アプリケーションプログラムS140aを当該CPU S110aが実行することにより、前記のような各機能ブロックが実現され、コンピュータが情報処理装置2として機能する。
ROM S110bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU S110aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
【0050】
RAM S110cは、SRAM又はDRAM等によって構成されている。RAM S110cは、ROM S110b及びハードディスクS110dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU S110aの作業領域として利用される。
ハードディスクS110dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU S110aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。アプリケーションプログラムS140aも、このハードディスクS110dにインストールされている。
【0051】
読出装置S110eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体S140に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体S140には、コンピュータを本発明のシステムとして機能させるためのアプリケーションプログラムS140aが格納されており、コンピュータが当該可搬型記録媒体S140から本発明に係るアプリケーションプログラムS140aを読み出し、当該アプリケーションプログラムS140aをハードディスクS110dにインストールすることが可能である。
【0052】
なお、前記アプリケーションプログラムS140aは、可搬型記録媒体S140によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラムがインターネット上のアプリケーションプログラム提供サーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスクS110dにインストールすることも可能である。
【0053】
また、ハードディスクS110dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、アプリケーションプログラムS140aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0054】
入出力インタフェースS110fは、例えばUSB、IEEE1394、RS−232C等のシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェースS110fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイスS130が接続されており、ユーザが当該入力デバイスS130を使用することにより、コンピュータにデータを入力することが可能である。
【0055】
通信インタフェースS110gは、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。コンピュータは、その通信インタフェースS110gにより、所定の通信プロトコルを使用してフローサイトメータ1との間でデータの送受信が可能である。
【0056】
画像出力インタフェースS110hは、LCDまたはCRT等で構成されたディスプレイS120に接続されており、CPU S110aから与えられた画像データに応じた映像信号を出力デバイスS120に出力するようになっている。出力デバイスS120は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0057】
ハードディスクS110dは、汚染度情報記憶部14と記憶部23に対応する記憶領域を有し、更に、各種コンピュータプログラムがインストールされている記憶領域を有している。本実施形態の入浴施設の汚染度を判定するコンピュータプログラムは、CPU S110aを、フローサイトメータ1で測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、記憶部23に記憶された入浴設備の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かを判定し、上記範囲に含まれる粒子を汚染微生物として分類する微生物分類部12と、微生物分類部12で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する粒子計数部13と、粒子計数部14で汚染微生物として計数された粒子の数の数値と、汚染度情報記憶部14に記憶された情報とに基づき、入浴設備の汚染度を判定する汚染度判定部15として機能させる。
【0058】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法では、ステップ(A)において、入浴設備から採取された試料と、微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とが混合され、測定試料が調製される。
【0059】
その後、調製された測定試料は、ステップ(A)において、フローサイトメータ1のフローセル内に導入され、このフローセル内に流される。
【0060】
その後、ステップ(C)において、フローサイトメータ1において、フローセルに光が照射される。その結果、フローサイトメータ1により、このフローセル内を流れる測定試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光の強度とが測定される。
【0061】
ついで、ステップ(D)において、微生物分類部12は、散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、入浴設備の汚染に関与する、汚染微生物として分類する。具体的には、フローサイトメータ1で測定された散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値は、情報処理装置2の微生物分類部12に送信される。その後、フローサイトメータ1で測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、入浴設備の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれる場合、汚染微生物として分類される。
【0062】
その後、ステップ(E)において、粒子計数部13により、汚染微生物として分類された粒子の数が計数される。
【0063】
つぎに、ステップ(F)において、汚染度判定部15により、汚染微生物として計数された粒子の数に基づいて、入浴設備の汚染度が判定される。このステップ(F)では、より高い精度で汚染度を判定する観点から、入浴設備の汚染に関与する微生物として計数された粒子の数と閾値(汚染度情報)とを比較することにより、入浴設備の汚染度を判定している。なお、汚染度情報記憶部14に上記の閾値に代えて、汚染度と汚染微生物数との関係を示すテーブルを記憶させるようにしても良い。
【0064】
本発明の入浴設備の汚染度の判定方法は、汚染度の判定をより視覚的に簡便に行なう観点から、(G)散乱光強度及び蛍光強度のそれぞれを座標軸する分布図上で、ステップ(C)で測定された粒子の分布を表示するとともに、前記分布図上で入浴設備の汚染に関与する微生物に対応する範囲を表示するステップをさらに含むことが好ましい。前記分布図としては、例えば、図10に示される散乱光と蛍光とに基づく細菌のスキャッタグラムの模式図に示される図等が挙げられる。図10において、特異領域I201は、前記水系感染性のグラム陰性無芽胞桿菌に対応する範囲であり、特異領域II203は、前記水系感染性のグラム陰性無芽胞桿菌のうち、特にレジオネラ属細菌に対応する範囲である。また、図10において、非生物領域202は、死んでいる微生物、無機粒子等に対応する範囲である。
【0065】
〔2〕浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法及び浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定装置
本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法は、(a)殺微生物剤で処理された、粒子を含む疑いのある浴槽水と、微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とを混合して、測定試料を調製するステップ〔図4中、「測定試料調製ステップ」(ステップS21)〕、
(b)前記ステップ(a)で得られた測定試料をフローサイトメータのフローセル内に導入して流すステップ〔図4中、「測定試料導入ステップ」(ステップS22)〕、
(c)前記ステップ(b)でフローセルに光を照射し、このフローセル内を流れる測定試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光の強度とを測定するステップ〔図4中、「測定ステップ」(ステップS23)〕、
(d)前記ステップ(c)で測定された散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する、汚染微生物として分類するステップ〔図4中、「微生物分類ステップ」(ステップS24)〕、
(e)前記ステップ(d)で汚染微生物として分類された粒子の数を計数するステップ〔図4中、「微生物計数ステップ」(ステップS25)〕、及び
(f)前記ステップ(e)で汚染微生物として計数された粒子の数に基づいて、殺微生物剤の殺微生物効果を判定するステップ〔図4中、「殺微生物効果判定ステップ」(ステップS26)〕、
を含む方法である。
【0066】
本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法では、殺微生物剤で処理した浴槽水について、前記ステップ(c)でフローサイトメータにより測定された粒子の散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、前記ステップ(d)において、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類するとともに、汚染微生物として分類され、計数された粒子の数に基づいて、前記ステップ(f)において、殺微生物剤の殺微生物効果を判定する。したがって、本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法によれば、高い精度で、簡便に、短時間で浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果を判定することができる。
【0067】
本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法では、殺微生物効果は、汚染微生物として計数された粒子の数に基づいて判定される。具体的には、汚染微生物の数と所定の閾値と、を比較することにより実行される。
【0068】
本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法では、前記ステップ(f)において、浴槽水と微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とを混合した試料中に粒子が存在する場合に前記粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光の強度とから浴槽水の汚染に関与する微生物として分類された粒子の数を対照として用いて、当該対照の粒子の数と前記ステップ(e)で汚染微生物として計数された粒子の数とを比較して、殺微生物剤の殺微生物効果を判定してもよい。この場合、対照の粒子の数と前記ステップ(e)で汚染微生物として計数された粒子の数との間の差異の程度に応じて、殺微生物剤による殺微生物効果の程度を評価することもできるという利点がある。
【0069】
前記殺微生物剤としては、水環境に存在する、生存する微生物を減少させるものであれば、特に制限されるものではないが、酸化性バイオサイドが好ましい。前記酸化性バイオサイトとしては、特に限定されないが、例えば、水中で次亜塩素酸及び/又は次亜臭素酸を発生する化合物、過酸化物、オゾン等が挙げられる。
【0070】
浴槽水の汚染に関与する微生物は、前記入浴設備の汚染に関与する微生物と同様である。
【0071】
前記殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法は、例えば、図7に示される浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定装置Bを用いることにより好適に行われる。
【0072】
判定装置Bは、図7に示されるように、フローサイトメータ1と、情報処理装置200とからなる。フローサイトメータ1は、殺微生物剤で処理された浴槽水中の粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光の強度とを測定する。情報処理装置200は、微生物分類部12と、粒子計数部13と、殺微生物効果情報記憶部17と、殺微生物効果判定部18と、表示部16と、記憶部23とを備える。
【0073】
情報処理装置200において、微生物分類部12は、フローサイトメータ1で測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、記憶部23に記憶された情報である浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かを判定し、前記範囲内に含まれると判定された粒子を、汚染微生物として分類する。さらに、粒子計数部13は、微生物分類部12で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する。殺微生物効果情報記憶部17は、汚染微生物の数と殺微生物剤の殺微生物効果とを関連付けた情報である閾値を記憶する。殺微生物効果判定部18は、殺微生物効果情報記憶部17に記憶された情報と粒子計数部13で汚染微生物として計数された粒子の数とに基づき、前記殺微生物剤の殺微生物効果を判定する。表示部16は、殺微生物効果判定部18による判定の結果を表示する。記憶部23は、微生物分類部12で用いられる前記微生物の散乱光強度の範囲と蛍光強度の範囲との情報を記憶している。
【0074】
判定装置Bでは、微生物分類部12により、フローサイトメータ1で測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、それぞれ浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かが判定され、前記範囲内に含まれると判定された粒子が、汚染微生物として分類されるとともに、汚染微生物の数と殺微生物剤の殺微生物効果とを関連付けた情報と汚染微生物として分類され、計数された粒子の数とに基づき、殺微生物効果判定部18により、前記殺微生物剤の殺微生物効果が判定される。そのため、判定装置Bによれば、殺微生物剤で処理した浴槽水中に存在する汚染微生物を、簡便に測定できるため、簡便に、浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果を判定することができる。
【0075】
情報処理装置200のハードウェアの構成は、図22に示すように上記の情報処理装置2と同様のため、説明を省略する。
【0076】
ハードディスク S110dは、殺微生物効果情報記憶部17と記憶部23に対応する記憶領域を有し、更に、各種コンピュータプログラムがインストールされている記憶領域を有している。本実施形態の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定するコンピュータプログラムは、CPU S110aを、フローサイトメータ1で測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、記憶部23に記憶された浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かを判定し、上記範囲に含まれる粒子を汚染微生物として分類する微生物分類部12と、微生物分類部12で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する粒子計数部13と、殺微生物効果情報記憶部17に記憶された情報と粒子計数部13で汚染微生物として計数された粒子の数とに基づき、前記殺微生物剤の殺微生物効果を判定する殺微生物効果判定部18として機能させる。
【0077】
本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法において、前記ステップ(a)、ステップ(b)、ステップ(c)、ステップ(d)、ステップ(e)は、殺微生物剤で処理された、粒子を含む疑いのある浴槽水と微生物に結合又は会合する蛍光試薬を含む試薬とを混合した測定試料が用いられることと、浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲が判定に用いられることを除き、前記入浴設備の汚染度の判定方法のステップ(A)、ステップ(B)、ステップ(C)、ステップ(D)及びステップ(E)と実質的に同様の操作が行われる。
【0078】
本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法では、前記ステップ(f)において、殺微生物効果判定部18により、汚染微生物として計数された粒子の数に基づいて、殺微生物剤の殺微生物効果が判定される。具体的には、例えば、殺微生物効果情報記憶部17に記憶された汚染微生物の数と殺微生物剤の殺微生物効果とを関連付けた情報と、汚染微生物として分類され、計数された粒子の数とに基づき、殺微生物効果判定部18により前記殺微生物剤の殺微生物効果が判定される。そのため、簡便に殺微生物剤で処理した浴槽水中における前記微生物を検出できるとともに、汚染微生物を高い精度で検出することができる。したがって、本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法によれば、高い精度で、簡便に、短時間で浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果を判定することができる。
【0079】
本発明の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法では、表示部により、殺微生物効果の判定結果が表示される(ステップ(g))。
【0080】
なお、殺微生物効果情報記憶部17は、浴槽水と微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とを混合した試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光の強度とから汚染微生物として分類された粒子の数を対照として記憶していてもよい。この場合、殺微生物効果判定部18は、例えば、前記対照の粒子の数と、計数された粒子の数との差異の程度に基づき、殺微生物剤の殺微生物効果の程度を判定することができる。
【0081】
〔3〕浴槽水の水質管理方法及び浴槽水の水質管理装置
本発明の浴槽水の水質管理方法は、(I)経時的に浴槽水から分取された、粒子を含む疑いのある試料それぞれと、微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とを混合し、測定試料を調製するステップ〔図5中、「測定試料調製ステップ」(ステップS31)〕、
(II)前記ステップ(I)で得られた測定試料をフローサイトメータのフローセル内に導入して流すステップ〔図5中、「測定試料導入ステップ」(ステップS32)〕、
(III)前記ステップ(II)でフローセルに光を照射し、このフローセル内を流れる測定試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光の強度とを測定するステップ〔図5中、「測定ステップ」(ステップS33)〕、
(IV)前記ステップ(III)で測定された散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類するステップ〔図5中、「微生物分類ステップ」(ステップS34)〕、
(V)ステップ(IV)で汚染微生物として分類された粒子の数を計数するステップ〔図5中、「微生物計数ステップ」(ステップS35)〕、及び
(VI)前記ステップ(V)で汚染微生物として計数された粒子の数に基づき、前記浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報を表示可能に出力するステップ〔図5中、「出力ステップ」(ステップS36)〕
を含む方法である。
【0082】
本発明の浴槽水の水質管理方法では、経時的に浴槽水から分取された試料について、前記ステップ(III)において、フローサイトメータで測定された粒子の散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、前記ステップ(IV)において、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類するとともに、汚染微生物として分類され、計数された粒子の数の数値と、汚染微生物の数と水質とを関連付けた情報である閾値とに基づき、前記ステップ(VI)において、浴槽水の水質を判定する。そのため、本発明の浴槽水の水質管理方法によれば、経時的に、簡便に浴槽水中における汚染微生物を検出できるとともに、汚染微生物を高い精度で検出することができる。したがって、本発明の浴槽水の水質管理装置によれば、高い精度で、経時的に、簡便に、しかも短時間でリアルタイムに浴槽水の水質を管理することができる。
【0083】
汚染微生物の数の経時的変化に関する情報は、水質管理を視覚的に簡便に行うことができる観点から、散乱光強度及び蛍光強度のそれぞれを座標軸する2次元分布図上で、測定された粒子の分布を表示するとともに、前記2次元分布図上で汚染微生物の範囲が表示された2次元分布図を経時的変化を示した図を含むことが好ましい。
【0084】
本発明の浴槽水の水質管理方法は、前記浴槽水は、温泉水を含む浴槽水である場合に好適である。
【0085】
本発明の浴槽水の水質管理方法は、図8に示される浴槽水の水質管理装置C、図9に示される浴槽水の水質管理装置Dにより、好適に実施される。
【0086】
図8に示される浴槽水の水質管理装置Cは、フローサイトメータ1と、情報処理装置300とから構成される。フローサイトメータ1は、入浴施設から採取された試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光の強度とを測定する。水質管理装置Cにおいて、水質管理装置Cの情報処理装置300は、微生物分類部12と、粒子計数部13と、水質情報出力部19と、表示部16とを備える。
【0087】
情報処理装置300において、微生物分類部12は、フローサイトメータ1で測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、記憶部23に記憶された情報である浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かを判定し、前記範囲内に含まれると判定された粒子を、汚染微生物として分類する。粒子計数部13は、微生物分類部12で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する。水質情報出力部19は、粒子計数部13で汚染微生物として計数された粒子の数に基づき、浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報を表示可能に出力する。表示部16は、水質情報出力部19から出力された情報を表示する。記憶部23は、微生物分類部12で用いられる汚染微生物の散乱光強度の範囲と蛍光強度の範囲との情報を記憶している。
【0088】
情報処理装置300のハードウェア構成は、図22に示すように上記の情報処理装置2と同様のため、説明を省略する。
【0089】
ハードディスク S110dは、殺微生物効果情報記憶部17と記憶部23に対応する記憶領域を有し、更に、各種コンピュータプログラムがインストールされている記憶領域を有している。本実施形態の浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定するコンピュータプログラムは、CPU S110aを、フローサイトメータ1で測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、記憶部23に記憶された浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かを判定し、上記範囲に含まれる粒子を汚染微生物として分類する微生物分類部12と、微生物分類部12で入浴設備の汚染に関与する汚染微生物として分類された粒子の数を計数する粒子計数部13と、粒子計数部13で汚染微生物として計数された粒子の数に基づき、浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報を表示可能に出力する水質情報出力部19として機能させる。
【0090】
本発明の浴槽水の水質管理方法において、前記ステップ(I)、ステップ(II)、ステップ(III)、ステップ(IV)及びステップ(V)は、経時的に浴槽水から分取された、粒子を含む疑いのある試料それぞれと、微生物に結合又は会合する蛍光試薬を含む試薬とを混合した測定試料が用いられることと、浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲が判定に用いられることを除き、前記入浴設備の汚染度の判定方法のステップ(A)、ステップ(B)、ステップ(C)、ステップ(D)及びステップ(E)と実質的に同様の処理が行われる。
【0091】
前記ステップ(VI)において、水質情報出力部19により、粒子計数部13で汚染微生物として計数された粒子の数に基づき、浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報が表示可能に出力される。
【0092】
本発明の浴槽水の水質管理方法では、表示部16により、浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報等が表示される(ステップ(VII))。
【0093】
図9に示される水質管理装置Dは、フローサイトメータ1と、情報処理装置400とから構成される。フローサイトメータ1は、入浴施設から採取された試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と、前記粒子に結合又は会合している蛍光色素に基づく蛍光の強度とを測定する。水質管理装置Cにおいて、情報処理装置400は、微生物分類部12と、粒子計数部13と、水質情報記憶部20と、水質判定部21と、水質情報出力部22、表示部16と、記憶部23とを備える。
【0094】
水質管理装置Dの情報処理装置400において、微生物分類部12は、フローサイトメータ1で測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、それぞれ浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かを判定し、前記範囲内に含まれると判定された粒子を、汚染微生物として分類する。粒子計数部13は、微生物分類部12で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する。水質情報記憶部20は、汚染微生物の数と、水質とを関連付けた情報である閾値を記憶する。水質判定部21は、粒子計数部13で汚染微生物として計数された粒子の数の数値と水質情報記憶部20に記憶された情報とに基づき、水質を判定する。水質情報出力部22は、水質判定部21で判定された水質の情報及び浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報を表示可能に出力する。表示部16は、水質情報出力部22から出力された情報を表示する。記憶部23は、微生物分類部12で用いられる汚染微生物の散乱光強度の範囲と蛍光強度の範囲との情報を記憶している。
【0095】
水質管理装置Dによれば、前記ステップ(VI)において、水質判定部21により、粒子計数部13で汚染微生物として計数された粒子の数に基づき、水質情報記憶部20により記憶された汚染微生物の数と水質とを関連付けた情報が参照され、水質が判定されるとともに、水質情報出力部22により、判定された水質の情報と、浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報とが表示可能に出力されることとなる。
【0096】
情報処理装置400のハードウェアの構成は、図22に示すように前記情報装置2と同様のため、説明を省略する。
【0097】
ハードディスクS110dは、水質情報記憶部20と記憶部23に対応する記憶領域を有し、更に、各種コンピュータプログラムがインストールされている記憶領域を有している。本実施形態の浴槽水の水質管理するコンピュータプログラムは、CPU S110aを、フローサイトメータ1で測定された粒子の散乱光強度の測定値及び蛍光強度の測定値が、が、記憶部23に記憶された浴槽水の汚染に関与する微生物に対応する散乱光強度の範囲及び蛍光強度の範囲に含まれるか否かを判定し、上記範囲に含まれる粒子を汚染微生物として分類する微生物分類部12と、微生物分類部12で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する粒子計数部13と、粒子計数部13で汚染微生物として計数された粒子の数の数値と水質情報記憶部20に記憶された情報とに基づき、水質を判定する水質判定部21と、水質判定部21で判定された水質の情報及び浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報を表示可能に出力する水質情報出力部22として機能させる。
【0098】
本発明の浴槽水の水質管理方法では、表示部16により、浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報等が表示される(ステップ(VII))。
【0099】
水質管理装置C及び水質管理装置Dは、所定の水質を所定の標準水質になるように調整する水質調整手段を備える水質調整部と、前記水質調整手段の情報を記憶する水質調整手段情報記憶部と、前記水質判定部で判定された水質の結果と、前記水質調整手段情報記憶部に記憶された情報とに基づき、前記水質調整部に備えられた水質調整手段を選択する水質調整手段選択部と、前記水質調整手段選択部で選択された水質調整手段を制御する水質調整手段制御部とをさらに備えていてもよい。
【0100】
以下、本発明を、実施例等により詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0101】
公衆浴場及び旅館の合計23施設から採取した225検体(浴槽水121検体、泉源水37検体、貯湯タンク水31検体、ヘアキャッチャー水24検体、配管水8検体)の一般細菌数、従属栄養細菌数及びフローサイトメトリーによる細菌数それぞれを測定した。23施設のうち、12施設は、温泉施設であり、単純酸性泉1施設、硫酸塩泉3施設、塩化物泉5施設及び炭酸水素塩泉5施設である。残りの11施設は、非温泉施設である。
【0102】
一般細菌数及び従属栄養細菌数は、井上らの方法(厚生科学研究費補助金 健康科学総合研究事業「掛け流し式温泉における適切な衛生管理手法の開発等に関する研究」平成17年度総括・分担報告書 掛け流し式温泉実態調査 細菌検査マニュアル、第115頁−第119頁、厚生科学研究成果データベース参照)に準拠して、以下のように測定した。検体を滅菌生理的食塩水(0.85%塩化ナトリウム水溶液)で適切に希釈し、試料0.1mlを得た。予め121℃で20分間高圧滅菌した後、標準寒天培地(栄研化学株式会社製)又はR2A寒天培地(ベクトンディッキンソン製)を平板に固めた。得られた各平板に、前記検体0.1mlを滅菌コンラージ棒で塗布した。標準寒天培地の平板上に塗布した試料は、35℃で、48時間インキュベーションした。また、R2A寒天培地の平板上に塗布した試料は、42℃で、7日間インキュベーションした。その後、平板1枚あたり30〜300CFU(Colony Forming Unit)の計数対象コロニーが形成された平板について、コロニーを計数した。相関解析は、30CFUを超えた平板のみを対象とした。
【0103】
一方、フローサイトメトリーによる細菌数は、図6に示される判定装置Aを用いて測定した。検体120μlmlを、サンプルチューブ(商品名:SU−40、シスメックス株式会社製)に入れ、空チューブとともに、図6に示される判定装置Aのサンプルテーブルにセットして測定を開始した。自動的に試料50μl,希釈液(商品名:バクトクイック希釈液)340μlが定量そして混合され、さらに核酸染色性の蛍光色素(商品名:バクトクイック染色液)10μlが混合される。混合された測定試料は検出部に導かれる。前記蛍光色素でその核酸が染色された細菌がレーザ光を横切る時に生じる散乱光と蛍光とを検出し、散乱光強度と蛍光強度とを測定し、散乱光と蛍光とに基づき、検出した細菌の分布図(スキャッタグラム)を作製した。散乱光と蛍光とに基づく細菌のスキャッタグラムを図11に示す。なお、図11のスキャッタグラムは、測定によって得られる散乱光強度と蛍光強度との2つの信号により構成される。前記散乱光強度は、細菌の大きさに比例し、前記蛍光強度は、核酸染色の強さ(核酸量)に比例する。散乱光強度及び蛍光強度それぞれの増大に伴い、スキャッタグラムにおける細菌の分布位置は、右上方向へ移動する。細菌数は、入浴設備の汚染に関与する微生物である水系感染性のグラム陰性無芽胞桿菌に対応してスキャッタグラムの中に予め設定した特異領域1(微生物出現領域)に基づいて、最初に検出した細菌の粒子を再解析することにより得た。図11のスキャッタグラムの領域は、特異領域1と、核酸染色されない非生物領域2と、前記特異領域1と非生物領域2との間に存在するその他の領域3とにわけて定義した。
【0104】
また、標準寒天培地に形成されたコロニーから求められた一般細菌数と、フローサイトメトリーによる細菌数との相関図を図12に示した。さらに、R2A寒天培地に形成されたコロニーから求められた従属栄養細菌数に対する、フローサイトメトリーによる細菌数との相関図を図13に示した。
【0105】
図12に示される結果から、123検体において、一般細菌数とフローサイトメトリーによる細菌数との間では、相関係数R=0.5361の比較的高い正の相関があることがわかる。また、図13に示される結果から、123検体において、従属栄養細菌数とフローサイトメトリーによる細菌数との間では、相関係数R=0.8006の非常に高い正の相関があることがわかる。これらの結果から、フローサイトメトリーによる細菌数は、従来、水環境における細菌存在量の指標として用いられる一般細菌数や従属栄養細菌数と同等の定量性を有することがわかる。
【0106】
一方、従属栄養細菌数の計測には、一般的に7日間を要するが、フローサイトメトリーによる細菌数の測定は、2分間で評価できるため、フローサイトメトリーによる細菌数の測定方法は、入浴設備の汚染度を、高い精度で、簡便に、短時間で評価できる方法として有用であることが示唆される。
【実施例2】
【0107】
1つの温泉施設の2つの貯湯タンクにおいて、洗浄前後における内壁等の細菌汚染の変化を観察した。なお、前記貯湯タンクの容量は、それぞれ、10トン及び30トンである。前記温泉施設では、揚水ポンプの出口に10トンタンクを備えられていて、温泉水の一次消毒が行なわれている。また、前記10トンタンクと配管で連なっている30トンタンクに、温泉水を貯留させて温度調製した後に、温泉水が、浴槽に給水される。
【0108】
貯湯タンクの洗浄は、水抜き後、高圧洗浄により貯湯タンクから汚濁成分を十分に除去し、その後、12質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を貯湯タンクに散布することにより行なった。次亜塩素酸ナトリウム水溶液を散布する前の高圧洗浄を実施する前後で、壁、床、及び水面上部(温泉が貯留する境界面上部)の各々3カ所を、市販の拭き取り用サンプリングキット(商品名:ふきふきチェックII、栄研化学株式会社)のふき取り用材料を用いて、対象となる壁又は床の約100平方センチメートルの範囲又はそれに相当する面積の範囲を拭き取ることによりサンプリングを行なった。得られたサンプルを滅菌リン酸緩衝生理食塩水10mlに懸濁し、試料を得た。前記試料の一般細菌数、従属栄養細菌数及びフローサイトメトリーによる細菌数それぞれを測定し、それぞれの平均値、汚染の除去率及び汚染の残存率を算出した。結果を表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
表1の結果から、フローサイトメトリーによる細菌数は、洗浄前後の測定値ともに一般細菌数及び従属栄養細菌数それぞれの場合の測定値とほとんど変わらないため、汚染の除去率及び汚染の残存率を、一般細菌数の測定方法及び従属栄養細菌数の測定方法と同程度の精度で測定できることがわかる。
【0111】
次に、洗浄終了後の貯湯タンクにおいて、タンク材質面が残っている水面上部(図14の301)と、原水のスケールが付着・黒色化している壁部(図14の302)と、床部のフロサートメトリーによるスキャッタグラムと各種培養法結果を比較することで、洗浄に使用した高圧洗浄の効果を検証した。その結果を表2及び図15に示す。図15の(A)〜(C)は、それぞれ、水面上部、壁部及び床部の結果を示す。
【0112】
フローサイトメトリーは、前記実施例1の手法に準拠して行なった。
【0113】
また、レジオネラ属細菌数の測定は、前記新版レジオネラ症防止指針に記載の方法に準拠し、以下のように行った。検水500mlを25質量%チオ硫酸ナトリウム水溶液1ml入り滅菌ポリプロピレン瓶(アズワン製)に採取し、試料を得た。得られた試料を、直径47mm、孔径0.45μmのメンブランフィルター(商品名:A045H047A、アドバンテック社製)で吸引ろ過し、得られたフィルターを滅菌蒸留水5mlに浮遊させ、前記フィルターを粉砕した。得られた混合物を、50℃で、20分間加温し、上清0.1mlを、GVPC培地(日本ビオメリュー株式会社製)に加えた。前記上清を加えたGVPC培地を35℃で数日間好気的にインキュベーションした。その後、レジオネラ属細菌である疑いがあるコロニーが検出された場合、血清型別試験及びPCR試験により、前記コロニーを形成している細菌がレジオネラ属細菌であるかどうかを調べた。最終的に10日間までインキュベーションして、コロニーを形成しなかった試料を「検出限界以下」の試料であると判定した。
【0114】
アメーバの検査も、新版レジオネラ症防止指針に記載の方法に準拠し、以下のように行なった。アメーバの検査に用いる供試大腸菌株として、国立感染症研究所から分与された大腸菌DH1株を用いた。前記大腸菌DH1株は、保存培地(商品名:ドルセット卵培地、ニッスイ株式会社製)から普通寒天培地に移して、35℃で48時間培養した。滅菌蒸留水に大腸菌をO.D.=3.0〜5.0程度となるように懸濁させて、懸濁液を調製した。得られた懸濁液を、60℃で1時間加温し、ついで急冷させた。得られた懸濁液中における大腸菌の量は、約109CFU/mlであった。前記懸濁液を、滅菌蒸留水で1/10濃度に希釈した。得られた懸濁液0.5mlを、1.5質量%寒天平板(商品名:Bacto−Agar、BBL製)の表面に均一に塗布し、充分に乾燥させて大腸菌塗布寒天平板培地(以下アメーバ培地)を得た。
【0115】
検体を50ml滅菌遠心ポリプロピレン瓶(岩城硝子株式会社製)に採取した。得られた検体1mlをアメーバ培地に均一に塗布すると共に、残りを1000×g(3000rpm)、25℃、5分間遠心濃縮して得られた残渣を、別のアメーバ培地に塗布した。塗布後のアメーバ培地の表面を乾燥させた後に、このアメーバ培地を、30℃に維持した孵卵器に移して2週間維持し、アメーバ由来のプラークを観察した。前記観察は、肉眼及び倒立型顕微鏡により毎日実施し、プラークが確認されたものは、光学顕微鏡にて形態学的に同定した。
【0116】
【表2】

【0117】
水面上部付近を拭き取った後の拭き取り材料は、表面が平滑で素材面が保存されていたため、水面上部付近は、目視上では清浄度が高いことが予想された。しかしながら、表2及び図15に示される結果から、フローサイトメトリーによる細菌数では、特異領域Iに細菌であることが疑われる粒子が存在することがわかる。この拭き取り材料からは、一般細菌と従属栄養細菌とが共に検出され、レジオネラ属細菌は検出されなかった。しかしながら、レジオネラ属細菌による汚染と関連の深いアメーバ種(アカンソアメーバ)が検出された。
【0118】
一方、表面に泉質由来のスケールが付着し、黒色で表面がラフな外観を呈した壁面及び床面の拭き取り材料からは、フローサイトメトリーにより特異領域Iの菌が確認されず、各種培養法により全ての結果が検出限界値以下であることがわかる。これらの結果から、フローサイトメトリーによる細菌数によれば、高圧洗浄による洗浄後、貯湯タンクの水面上部には細菌成分が残存するが、壁面及び床面部分それぞれの細菌成分は、ほとんどが除去されることが確認できることがわかる。また、フローサイトメトリーによる細菌数の結果は、従来の培養法による結果からも裏付けられることがわかる。
【0119】
これらの結果より、従来の細菌数の計数では、外観の清浄度により惑わされ、不十分な洗浄となっている可能性があることがわかる。一方、フローサイトメトリーによる細菌数の測定法によれば、外観に惑わされることなく、簡便に、短時間で、培養法とほぼ同程度の精度で高圧洗浄の効果を検証することが可能であることがわかる。
【実施例3】
【0120】
表3に示される10種類のレジオネラ属細菌標準株を滅菌リン酸緩衝生理食塩水に懸濁して約107CFU/mlの細菌懸濁液を調製した。得られた細菌懸濁液を、フローサイトメトリーにより計測し、図16の(A)に示される特異領域IIに基づく解析プロファイルで解析した。その結果を、図16の(B)に示す。なお、図16の(B)中、1〜10は、表3中の1〜10に対応する。
【0121】
【表3】

【0122】
図16の(B)の1〜10の結果から、ここで調製したレジオネラ属細菌の粒子のほとんどが特異領域IIで測定できることがわかる。
【実施例4】
【0123】
1温泉施設の貯湯タンク水、浴槽水及び配管水の合計102サンプルについて、前記実施例1と同様の手法で、フローサイトメトリーによる細菌数と従来の培養法による細菌数とを調べることにより、レジオネラ属細菌の検査を行なった。なお、本実施例では、フローサイトメトリーの検出限界を104カウント/ml、レジオネラ属細菌数の検査の検出限界を10CFU/100mlとして計算し、相関解析は、これらの数値を超えた試料のみを対象とした。その結果を表4に示す。
【0124】
【表4】

【0125】
フローサイトメトリーによる細菌数の測定値と従来の培養法による細菌数の測定値との間には高い相関が認められず、定性的な判定についても、フローサイトメトリーによる方法と従来の培養法の両試験方法の間に有意差が認められた(χ二乗検定、P>0.01)。しかしながら、表4に示される結果から、全体のフローサイトメトリーによる細菌数の測定値の約70%は、培養法と判定が一致していることがわかる。また、フローサイトメトリーによる細菌数の測定法で陰性であり、かつ培養法で陽性である検体は、1例のみであることがわかる。前記1例については、培養法による成績が、本来培養法による検出限界である10CFU/100mlであるため、培養法による陽性の判定が誤りである可能性もある。併せて、検査に5〜7日を要する前記培養法に比べ、フローサイトメトリーによる細菌数の測定は、ほぼ2分間で実施できることから、フローサイトメトリーによる細菌数の測定は、水環境におけるレジオネラ属細菌の検出に有用であることがわかる。
【実施例5】
【0126】
レジオネラ属細菌の一種であるレジオネラ ニューモフィラ株(Legionella pneumophila ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション)33152)を、酸化性バイオサイドの一種である次亜塩素酸ナトリウムと接触させた前後の細菌の状態を、以下のように、フローサイトメトリー、蛍光染色法、遺伝子検査法及び培養法により観察した。
【0127】
−80℃で凍結保存されているレジオネラ ニューモフィラ株を復元して、市販のリン酸緩衝液(シグマ社製)を用いて作製した滅菌リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)10mlが入ったL字型試験管に、初期値約105CFU/mlとなるように、前記レジオネラ ニューモフィラ株を添加し、レジオネラ属細菌懸濁液を調製した。前記レジオネラ属細菌懸濁液に、0.12質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を適量添加して、ほとんどの微生物に対する致死濃度とされる有効塩素濃度10mg/lになるように維持し、得られた混合物を30℃で5分間インキュベーションした。インキュベーション前後の状態を、フローサイトメトリー、蛍光染色法、遺伝子検査法及び培養法により観察した。
【0128】
フローサイトメトリーによる方法では、塩素とのインキュベーション前のレジオネラ属細菌懸濁液120μl及び塩素とのインキュベーション後の混合物120μlを用いて、図7に示される判定装置Bにより測定した。なお、これらの試料は自動的に試料50μl,希釈液(商品名:バクトクイック希釈液)340μlが定量そして混合され、さらに核酸染色性の蛍光色素(商品名:バクトクイック染色液)10μlが混合される。混合された測定試料は検出部に導かれる。
【0129】
蛍光染色法では、塩素とのインキュベーション前のレジオネラ属細菌懸濁液1ml及び塩素とのインキュベーション後の混合物1mlをそれぞれ25mm黒色ポリカーボネートメンブランフィルター(ポアサイズ0.2μm、アドバンテック社製)にトラップさせ、その後、商品名:LIVE/DEAD BacLight Bacterial Viability Kit(インビトロジェン製)を用い、添付の使用説明書に準じて、落射型蛍光顕微鏡(商品名:エクリプスE800、株式会社ニコン製)のB励起によるフィルター上の1000倍で蛍光を観察した。なお、LIVE/DEAD BacLight Bacterial Viability Kitは、特殊な蛍光色素により生きている細胞を緑色に死んだ細胞を赤色に染め分けることができる。
【0130】
培養法では、塩素とのインキュベーション前については、レジオネラ属細菌懸濁液を適宜希釈した溶液0.1mlを、BCYEα培地(日本ビオメリュー株式会社製)に塗沫して、35℃、72時間培養し、1mlあたりの生菌数を算出した。一方、塩素とのインキュベーション後については、塩素とのインキュベーション後の混合物200mlを、ポリカーボネートメンブランフィルターでろ過濃縮し、得られた濃縮物を、滅菌蒸留水2mlに懸濁し、得られた懸濁液を、50℃、20分間加温し、その後、懸濁液の0.1mlをBCYEα培地に塗沫して、35℃、72時間培養し、100mlあたりの生菌数を算出した。
【0131】
遺伝子検査法は、LAMP法により行なった。塩素とのインキュベーション前については、レジオネラ属細菌懸濁液1mlと商品名:QIAamp DNA mini Kit(キアゲン製)とを用いて、レジオネラ属細菌から核酸を抽出した。また、塩素とのインキュベーション後については、塩素とのインキュベーション後の混合物200mlを、ポリカーボネートメンブランフィルターでろ過濃縮し、得られた懸濁液1mlと商品名:QIAamp DNA mini Kit(キアゲン製)とを用いて、レジオネラ属細菌から核酸を抽出した。得られた核酸と、レジオネラ検出試薬キットE(栄研化学株式会社製)とを用いて、レジオネラ属細菌に特異的な遺伝子配列を増幅させ、リアルタイム濁度測定装置(商品名:LA320C、栄研化学株式会社製)で、濁度を測定した。なお、レジオネラ検出試薬キットEは、試験する核酸中にレジオネラ属細菌に特異的な遺伝子配列が存在するときだけ濁度が上昇する。その結果を表5及び図17に示す。図17の(A)〜(D)は、それぞれ、次亜塩素酸ナトリウムとのインキュベーション前の場合のスキャッタグタム、次亜塩素酸ナトリウムとのインキュベーション後の場合のスキャッタグタム、次亜塩素酸ナトリウムとのインキュベーション前の場合のレジオネラ属細菌の形状の観察写真図及び次亜塩素酸ナトリウムとのインキュベーション後の場合のレジオネラ属細菌の形状の観察写真図を示す。また、表5において、塩素処理前は、初期値105CFU/mlになるように調製している。また、表中、*2は、100倍に濃縮濾過したものを測定した値である。
【0132】
【表5】

【0133】
表5に示される結果から、フローサイトメトリーによる細菌数の測定によれば、酸化性バイオサイドである次亜塩素酸ナトリウムとのインキュベーション前後では、フローサイトメトリーによるスキャッタグラムに明瞭な変化が確認され、蛍光染色法、遺伝子検査法及び培養法のいずれによっても検出されない状態を、特徴的な画像により判別できることがわかる。図17の(A)及び(B)に示される結果から、レジオネラ ニューモフィラ株のスキャッタグラムでは、酸化性バイオサイドである次亜塩素酸ナトリウムとのインキュベーション前(図17の(A))は、特異領域Iに検出されていたものが、次亜塩素酸ナトリウムとのインキュベーション後(図17の(A))には、非生物領域にシフトしていることがわかる。また、図17の(C)及び(D)に示される結果から、レジオネラ ニューモフィラ株のスキャッタグラムでは、酸化性バイオサイドである次亜塩素酸ナトリウムとのインキュベーション前(図17の(C))は、レジオネラ属細菌からなる細胞のほとんどが緑に染色されており、生きていることがわかる。一方、次亜塩素酸ナトリウムとのインキュベーション後(図17の(D))には、細胞が抜け殻状態になって、緑色にも赤色にも染色されておらず、ほとんどの細胞が変性していることがわかる。遺伝子検査法では、レジオネラ属細菌と塩素とのインキュベーション後の混合物200mlを、ポリカーボネートメンブランフィルターでろ過濃縮し、得られた懸濁液の1mlから抽出した核酸から、レジオネラ属細菌に特異的な遺伝子配列は増幅されなかった。培養法では、レジオネラ属細菌と塩素とのインキュベーション後の混合物200mlを、ポリカーボネートメンブランフィルターでろ過濃縮し、得られた懸濁液の0.1mlをBCYEα培地に塗布したものからレジオネラ属細菌は検出されなかった。これらの結果から、フローサイトメトリーにより非生物領域で検出される細菌の細胞は、蛍光染色法、遺伝子検査法及び培養法のいずれの方法でも蛍光染色できないほどに遺伝子の構造が破壊されており、ろ過濃縮を伴う遺伝子検査法や培養法でも検出できない状態であることが明らかとなった。
【0134】
したがって、フローサイトメトリーによる細菌数の測定によれば、生存している細菌を高い精度で簡便に測定することができるため、高い精度で、簡便に、短時間で殺微生物剤の殺微生物効果を判定することができることが示唆される。また、フローサイトメトリーによる細菌数の測定によれば、高い精度で、簡便に、水質を管理することができることが示唆される。
【実施例6】
【0135】
5階を最上階とするビル施設における、屋上貯水タンク水、1階の揚水ポンプ水及び3〜5階の各階浴室シャワー水を、各々500ml容滅菌ポリプロピレン製容器に採取した。得られた検体について、有効塩素濃度、一般細菌数、従属栄養細菌数及びフローサイトメトリーによる細菌数をそれぞれ測定した。フローサイトンメトリーは、図7に示される判定装置Bを用いて行なった。有効塩素濃度は、ジエチル−p−フェニレンジアミン法(DPD法)により遊離残留塩素濃度により測定した。一般細菌数、従属栄養細菌数及びフローサイトメトリーによる細菌数の測定は、それぞれ、実施例1と同様の手法により行なった。一般細菌数及び従属栄養細菌数の検出限界については、30CFU/ml、フローサイトメトリーの検出限界については、104カウント/mlとして計算し、それ以下の数値は、ND(Not Detected)とした。結果を表6及び図18に示す。表中、*は、フローサイトメトリーの検出限界である104カウント/ml未満を示す。
【0136】
【表6】

【0137】
表6の結果から、0.05〜0.2mg/lの有効塩素濃度を有する屋上貯水タンク水、1階揚水タンク水、4階シャワー水及び5階シャワー水は、フローサイトメトリーでは、特異領域Iに細菌の存在が認められず、一般細菌数及び従属栄養細菌数の場合でも、細菌は、検出されないことがわかる。有効塩素濃度が全く認められなかった3Fシャワー水は、例えば、図18の囲み部分に示されるように、特異領域Iに細菌の存在が認められ、一般細菌数及び従属栄養細菌数の場合でも共に検出されることがわかる。これらの結果から、0.05〜0.2mg/lの低塩素濃度においても、フローサイトメトリーによる細菌数の測定により、塩素消毒が効果的に効いている試料と効果的でない試料とをはっきりと区別することができ、かつ従来の培養法による結果と一致することがわかる。したがって、フローサイトメトリーによる細菌数の測定によれば、高い精度で、簡便に、短時間で殺微生物剤の殺微生物効果を判定することができることが示唆される。また、フローサイトメトリーによる細菌数の測定によれば、高い精度で、簡便に、水質を管理することができることが示唆される。
【実施例7】
【0138】
水道水、井戸水等のように比較的塩素を阻害する物質を含まない水源を利用した公衆浴場の浴槽水を対象として、有効塩素濃度、一般細菌数、従属栄養細菌数及びフローサイトメトリーによる細菌数を測定した。有効塩素濃度は、DPD法により遊離残留塩素濃度により測定した。一般細菌数、従属栄養細菌数及びフローサイトメトリーによる細菌数の測定は、それぞれ、図8に示される水質管理装置Cにより行なった。結果を表7に示す。また、対応するスキャッタグラムを図19に示す。表中、*は、一般細菌数及び従属栄養細菌数それぞれの測定の最低値1.48logCFU/ml以下を示し、**は、フローサイトメトリーの検出限界である4.0logCounts/ml以下を示す。
【0139】
【表7】

【0140】
表7及び図19の結果から、有効塩素濃度が認められない2サンプル(サンプル番号1及び2)は、フローサイトメトリーにより特異領域Iに、はっきりと細菌の存在が認められ、培養法でも多数の一般細菌数及び従属栄養細菌数が検出された。0.25〜1.0mg/lの有効塩素濃度を有する浴槽水(サンプル番号3〜5)は、低い数値であったがフローサイトメトリーで特異領域Iに細菌が認められ、培養法でも比較的高い一般細菌数と従属栄養細菌数が検出された。0.9〜1.5mg/lの有効塩素濃度を認めた浴槽水(サンプル番号6〜10)では、フローサイトメトリーの特異領域Iに細菌が認められず、一般細菌数及び従属栄養細菌数の場合にも細菌は、ほとんど検出されなかった。これらの結果から、フローサイトメトリーによる細菌数の測定により、塩素が効果的に効いている試料と効果的でない試料がはっきりと区別され、かつ従来の培養法による結果と一致することがわかる。
【実施例8】
【0141】
前記実施例5に示されるように、イン・ビトロでは、例えば、酸化性バイオサイドである次亜塩素酸ナトリウムを、残留塩素濃度10mg/lとなるように3分間〜5分間、検体と接触させた場合、図20の(A)のようなスキャッタグラムが、図20の(B)のようなスキャッタグラムになる。前記残留塩素濃度10mg/lは、試料に対して酸化性バイオサイドを反応させた場合に検出される最終濃度である。鉄(II)イオン、アンモニウムイオン、種々の有機物、微生物成分等の塩素の効力を阻害する阻害物質を豊富に含む温泉水に対しては、これらにより有効塩素が消失又は変性して効力が減退するため、前記阻害物質による阻害作用が消失するまで十分に塩素を作用させなければならない。前記実施例5では、塩素とのインキュベーション前には、特異領域Iに検出された細菌が、残留塩素濃度10mg/lでの塩素とのインキュベーション後には、スキャッタグラムの非生物領域にシフトしており、細菌の核酸が破壊されている。また、残留塩素濃度10mg/lでの塩素とのインキュベーション後には、従来の培養法によるでも、何も検出されていない。
【0142】
前記実施例5と同様の手法が、実際の浴槽施設の検体でも有効かどうかを評価するため、アンモニウムイオンが1.04±1.43mg/l(平均±標準偏差)、最大値8.52、最小値0.051mg/lを示した温泉原水を利用している温泉施設の貯湯タンク水52検体、浴槽水85検体、配管水34検体の合計171サンプルを、1年間にかけて52回にわけて採取し、図7に示される水質管理装置Cを用いて、フローサイトメトリーによる細菌数の測定を行なった。得られたスキャッタグラムと、従来の培養法による結果とを比較した。培養法による一般細菌数及び従属栄養細菌数の測定は、実施例1及び実施例2と同様の手法により行なった。
【0143】
その結果、供試した検体のうち、図20の(B)と同じようなスキャッタグラムを示した検体は、図21に一例を示すように、貯湯タンク水16検体、浴槽水33検体、配管水5検体であった。これらの検体について、有効塩素濃度、一般細菌数、従属栄養細菌数及びフローサイトメトリーによる細菌数を表8〜10に示す。表中、*1は、フローサイトメトリーの検出限界である104Counts/ml未満を示す。*2は、レジオネラ属細菌数の測定の検出限界である10CFU/100ml未満を示し、*3は、アメーバ数の測定の検出限界である2PFU/100mlを示す。
【0144】
【表8】

【0145】
【表9】

【0146】
【表10】

【0147】
表8〜10に示される結果から、有効塩素の有無にかかわらず、図20の(B)と同じようなスキャッタグラムを示した検体のうち、5検体に一般細菌が検出され、2検体に従属栄養細菌が検出されているが、全ての検体からレジオネラ属細菌及びアメーバ共に検出されていないことがわかる。これらの結果から、図20の(B)と同じようなスキャッタグラムを示した検体からは、ほとんどの微生物が検出されず、衛生状態が良好であることがわかる。このように、フローサイトメトリーによる細菌数の測定によれば、実際に稼働している浴槽設備の場合であっても、高い精度で、細菌数を測定できることがわかる。したがって、フローサイトメトリーによる細菌数の測定によれば、高い精度で、簡便に、短時間で殺微生物剤の殺微生物効果を判定することができることが示唆される。また、フローサイトメトリーによる細菌数の測定によれば、高い精度で、簡便に、水質を管理することができることが示唆される。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の入浴設備の汚染度の判定方法のステップの概略説明図である。
【図2】本発明の入浴設備の汚染度の判定装置の一実施の態様の概略説明図である。
【図3】フローサイトメータの光学検出部の概略説明図。
【図4】本発明の浴槽水における殺微生物効果の判定方法のステップの概略説明図。
【図5】本発明の浴槽水の水質管理方法のステップの概略説明図。
【図6】本発明の入浴設備の汚染度の判定装置の一実施の態様の機能ブロック図。
【図7】本発明の浴槽水における殺微生物効果の判定装置の一実施の態様の機能ブロック図。
【図8】本発明の浴槽水の水質管理装置の一実施の態様の機能ブロック図。
【図9】本発明の浴槽水の水質管理装置の一実施の態様の機能ブロック図。
【図10】散乱光と蛍光とに基づく細菌のスキャッタグラムの模式図。
【図11】散乱光と蛍光とに基づく細菌のスキャッタグラム。
【図12】標準寒天培地に形成されたコロニーから求められた一般細菌数と、フローサイトメトリーによる細菌数との相関図
【図13】R2A寒天培地に形成されたコロニーから求められた従属栄養細菌数に対する、フローサイトメトリーによる細菌数との相関図
【図14】実施例2に用いた貯湯タンクの一部を示す図面代用写真。
【図15】貯湯タンクの水面上部、壁部及び床部から採取した試料のフロサートメトリーによるスキャッタグラム。
【図16】レジオネラ属細菌標準株のフロサートメトリーによるスキャッタグラム
【図17】酸化性バイオサイドである次亜塩素酸ナトリウムとのインキュベーション(塩素処理)前後の試料のスキャッタグラム及び顕微鏡観察写真図。
【図18】5階を最上階とするビル施設における屋上貯水タンク水、1階の揚水ポンプ水及び3〜5階の各階浴室シャワー水のスキャッタグラム。
【図19】各種有効塩素濃度の公衆浴場の浴槽水のスキャッタグラム。
【図20】実施例5における典型例のスキャッタグラム。
【図21】浴槽施設の検体(貯湯タンク水、浴槽水、配管水)のスキャッタグラム。
【図22】情報処理装置2(200,300,400)のハードウェア構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0149】
1 フローサイトメータ
2 情報処理装置
A 汚染度の判定装置
B 殺微生物効果の判定装置
C 水質管理装置
D 水質管理装置
12 微生物分類部
13 粒子計数部
14 汚染度情報記憶部
15 汚染度判定部
16 表示部
17 殺微生物効果情報記憶部
18 殺微生物効果判定部
19 水質情報出力部
20 水質情報記憶部
21 水質判定部
22 水質情報出力部
23 記憶部
101 フローセル
200 情報処理装置
201 特異領域I
202 非生物領域
203 特異領域II
300 情報処理装置
301 水面上部
302 壁
400 情報処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)入浴設備から採取された、粒子を含む疑いのある試料と、微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とを混合して、測定試料を調製するステップ、
(B)前記ステップ(A)で得られた測定試料をフローサイトメータのフローセル内に導入して流すステップ、
(C)前記ステップ(B)でフローセルに光を照射し、このフローセル内を流れる測定試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と蛍光の強度とを測定するステップ、
(D)前記ステップ(C)で測定された散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、入浴設備の汚染に関与する汚染微生物として分類するステップ、
(E)前記ステップ(D)で汚染微生物として分類された粒子の数を計数するステップ、及び
(F)前記ステップ(E)で汚染微生物として計数された粒子の数に基づいて、入浴設備の汚染度を判定するステップ、
を含む、入浴設備の汚染度の判定方法。
【請求項2】
蛍光色素が、核酸染色性の蛍光色素である、請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
前記試薬が、界面活性剤をさらに含有する、請求項1又は2に記載の判定方法。
【請求項4】
入浴設備が、貯湯タンク、ろ過槽、ヘアキャッチャー、配管、浴槽、浴室の壁、浴室の床、浴室の目地又はシャワー設備である、請求項1〜3いずれか1項に記載の判定方法。
【請求項5】
散乱光強度及び蛍光強度のそれぞれを座標軸とする分布図上で、ステップ(C)で測定された粒子の分布を表示するとともに、前記分布図上で汚染微生物に対応する範囲を表示するステップをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項6】
汚染微生物が、レジオネラ属細菌である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項7】
前記ステップ(F)において、汚染微生物として計数された粒子の数と閾値とを比較することにより、入浴設備の汚染度を判定する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項8】
(a)殺微生物剤で処理された、粒子を含む疑いのある浴槽水と、微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とを混合して、測定試料を調製するステップ、
(b)前記ステップ(a)で得られた測定試料をフローサイトメータのフローセル内に導入して流すステップ、
(c)前記ステップ(b)でフローセルに光を照射し、このフローセル内を流れる測定試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と蛍光の強度とを測定するステップ、
(d)前記ステップ(c)で測定された散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類するステップ、
(e)前記ステップ(d)で汚染微生物として分類された粒子の数を計数するステップ、及び
(f)前記ステップ(e)で汚染微生物として計数された粒子の数に基づいて、殺微生物剤の殺微生物効果を判定するステップ、
を含む、浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定方法。
【請求項9】
前記殺微生物剤が、酸化性バイオサイドである、請求項8に記載の判定方法。
【請求項10】
前記酸化性バイオサイドが、水中で次亜塩素酸及び/又は次亜臭素酸を発生する化合物、過酸化物、又はオゾンである、請求項9に記載の判定方法。
【請求項11】
(I)経時的に浴槽水から分取された、粒子を含む疑いのある試料それぞれと、微生物に結合又は会合する蛍光色素を含む試薬とを混合し、測定試料を調製するステップ、
(II)前記ステップ(I)で得られた測定試料をフローサイトメータのフローセル内に導入して流すステップ、
(III)前記ステップ(II)でフローセルに光を照射し、このフローセル内を流れる測定試料中の粒子から発せられる散乱光の強度と蛍光の強度とを測定するステップ、
(IV)前記ステップ(III)で測定された散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類するステップ、
(V)ステップ(IV)で汚染微生物として分類された粒子の数を計数するステップ、及び
(VI)前記ステップ(V)で汚染微生物として計数された粒子の数に基づき、前記浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報を表示可能に出力するステップ
を含む、浴槽水の水質管理方法。
【請求項12】
汚染微生物の数の経時的変化に関する情報が、散乱光強度及び蛍光強度のそれぞれを座標軸とする2次元分布図上で、測定された粒子の分布を表示するとともに、前記2次元分布図上で汚染微生物の範囲が表示された2次元分布図の経時的変化を示した図を含む、請求項11に記載の水質管理方法。
【請求項13】
前記浴槽水が、温泉水を含む、請求項11又は12に記載の水質管理方法。
【請求項14】
入浴設備の汚染度の判定装置であって、
入浴施設から採取された、粒子を含む疑いのある試料中の、当該粒子から発せられる散乱光の強度と、蛍光の強度とを測定するフローサイトメータと、
前記フローサイトメータで測定された粒子の散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、入浴設備の汚染に関与する汚染微生物として分類する微生物分類部と、
前記微生物分類部で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する粒子計数部と、
汚染微生物の数と入浴設備の汚染度とを関連付けた情報を記憶する汚染度情報記憶部と、
前記粒子計数部で汚染微生物として計数された粒子の数の数値と、前記汚染度情報記憶部に記憶された情報とに基づき、入浴設備の汚染度を判定する汚染度判定部と、
を備えていることを特徴とする入浴設備の汚染度の判定装置。
【請求項15】
浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定装置であって、
殺微生物剤で処理された、粒子を含む疑いのある浴槽水中の、当該粒子から発せられる散乱光の強度と、蛍光の強度とを測定するフローサイトメータと、
前記フローサイトメータで測定された粒子の散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、入浴設備の汚染に関与する汚染微生物として分類する微生物分類部と、
前記微生物分類部で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する粒子計数部と、
汚染微生物の数と殺微生物剤の殺微生物効果とを関連付けた情報を記憶する殺微生物効果情報記憶部と、
前記殺微生物効果情報記憶部に記憶された情報と前記粒子計数部で汚染微生物として計数された粒子の数とに基づき、前記殺微生物剤の殺微生物効果を判定する殺微生物効果判定部と、
を備えていることを特徴とする浴槽水における殺微生物剤の殺微生物効果の判定装置。
【請求項16】
経時的に採取された、粒子を含む疑いのある浴槽水中の、当該粒子から発せられる散乱光の強度と、蛍光の強度を測定するフローサイトメータと、
前記フローサイトメータで測定された粒子の散乱光強度及び蛍光強度に基づいて、所定の散乱光強度及び蛍光強度の範囲に含まれる粒子を、浴槽水の汚染に関与する汚染微生物として分類する微生物分類部と、
前記微生物分類部で汚染微生物として分類された粒子の数を計数する粒子計数部と、
前記粒子計数部で汚染微生物として計数された粒子の数に基づき、浴槽水中に含まれる汚染微生物の数の経時的変化に関する情報を表示可能に出力する水質情報出力部と
を備えていることを特徴とする浴槽水の水質管理装置。

【図2】
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【図3】
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【図22】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−58233(P2009−58233A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223277(P2007−223277)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】