説明

入眠起床用音環境生成装置

【課題】入眠又は起床に適した音環境を容易に且つ効果的に構築可能な入眠起床用音環境生成装置を提供する。
【解決手段】入眠起床用音環境生成装置は、一対のスピーカ22,22と、これらのスピーカ22,22への音声信号を生成する音声処理装置1とを有する。音声処理装置1は、複数の音源データの中から再生する音源データを選択する音源選択部13と、利用者Pの身体情報を検出する身体情報検出部14と、音源、再生時間及び音量を少なくとも含む音源パラメータに従って音源データを再生したときの身体情報検出部14の検出結果に基づいて、再生した音源データによる眠り易さ又は起床のし易さを評価し、評価結果を記憶部12aに記憶する学習処理部12とを備え、音源選択部13は、再生する音源データを選択する際に、記憶部12aに記憶した評価結果に基づいて相対的に評価の高い音源データを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、快適な入眠を誘導したり、目覚めのよい起床を可能にする環境音を生成する入眠起床用音環境生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、利用者をリラックスさせて入眠に導き、目覚めのよい起床を可能にする睡眠起床サポートシステムが提供されている(例えば特許文献1参照)。この睡眠起床サポートシステムでは、例えばCDプレーヤーによってリラクゼーション用の音楽や自然音を再生することで利用者を快適な入眠へと導くことができ、また起床覚醒用の音楽や自然音を再生することで利用者を目覚めのよい起床へと導くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−334283号公報(段落[0026]、及び、第1図、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に示した睡眠起床サポートシステムでは、利用者の好みに応じた音環境(入眠又は起床に適した音環境)を構築できるものの、利用者がそのとき設定した再生パターン(例えば再生した曲名や再生時間、再生順など)をシステムに記憶させていないため、利用者は利用毎に同様の設定作業をしなければならず、使い勝手の更なる向上が期待されていた。しかも、本システムには利用者の身体情報を検出する手段が設けられていないため、構築した音環境が入眠又は起床に対して効果的でない場合もあった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、入眠又は起床に適した音環境を容易に且つ効果的に構築可能な入眠起床用音環境生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、電気音響変換装置と、該電気音響変換装置への音声信号を生成する音声処理装置とを有し、音声処理装置は、複数の音源データの中から再生する音源データを選択する音源選択部と、利用者の身体情報を検出する身体情報検出部と、音源、再生時間及び音量を少なくとも含む音源パラメータに従って音源データを再生したときの身体情報検出部の検出結果に基づいて、再生した音源データによる眠り易さ又は起床のし易さの何れか一方を評価し、評価結果を記憶部に記憶する学習処理部とを備え、音源選択部は、再生する音源データを選択する際に、記憶部に記憶した評価結果に基づいて相対的に評価の高い音源データを選択することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、電気音響変換装置は、利用者に対して所定の位置に固定された2チャンネルのスピーカであって、音声処理装置は、利用者に音像を三次元的に認識させるように音源データに対する頭部伝達関数を制御してスピーカから出力する音の音像を制御する音像定位処理部を備え、音源パラメータには音源の位置が含まれており、音源選択部は、再生する音源データの音源パラメータに含まれる音源の位置に従って、音像定位処理部により該音源データの音像を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、音源選択部は、学習処理部による評価が相対的に低い音源データを選択しないか、又は該音源データの優先度を現状よりも低く設定することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1又は2の発明において、学習処理部は、相対的に評価の高い音源データの音源パラメータを記憶部に記憶することを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかの発明において、身体情報検出部は、音源データの再生開始時に身体情報を検出し、学習処理部は、再生した音源データを、検出した身体情報に基づいて、予め設定した複数の身体状態の何れかに分類するとともに、分類した身体状態を評価結果とともに記憶部に記憶し、音源選択部は、音源データの再生開始時に検出した身体情報に基づいて分類した身体状態と一致する身体状態が記憶部に記憶された音源データの中から、再生する音源データを選択することを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れかの発明において、学習処理部は、音源選択部が有する複数の音源データの再生順による眠り易さ又は起床のし易さの何れか一方を評価するとともに、評価結果を記憶部に記憶し、音源選択部は、記憶部に記憶した評価結果に基づいて相対的に評価の高い再生順を選択し、選択した再生順に従って音源データを再生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、選択した音源データを再生したときの利用者の身体情報に基づいて再生した音源データによる眠り易さ又は起床のし易さを評価しているので、その評価結果から入眠又は起床に対して効果的な音源データを選択することができ、しかも複数の音源データの中から入眠又は起床に適した相対的に評価の高い音源データを自動的に再生するので、従来例のように利用毎に設定作業をしなくてもよく、したがって入眠又は起床に適した音環境を容易に且つ効果的に構築することができるという効果がある。
【0013】
請求項2の発明によれば、再生する音源データの音像を制御することによって、利用者は音像を立体的に感じることができ、音源に包まれたような音環境を構築できることから、より入眠又は起床に適した音環境を構築することができるという効果がある。
【0014】
請求項3の発明によれば、音源データの再生中に、突然好ましくない音源データが再生されるのを抑えることができ、結果的に入眠又は起床に適した音環境を構築することができるという効果がある。
【0015】
請求項4の発明によれば、相対的に評価の高い音源データの音源パラメータのみを記憶部に記憶させているので、記憶部の容量が小さくてすみ、また再生する音源データを記憶部に記憶したものの中から選択することで、入眠効果又は起床効果の高い音環境を構築することができるという効果がある。
【0016】
請求項5の発明によれば、再生した音源データを、検出した身体情報に基づいて、予め設定した複数の身体状態の何れかに分類し、この分類結果を記憶部に記憶しているので、音源データの再生開始時に検出した身体情報から分類される身体状態に適した音源データを選択することが可能であり、その結果入眠又は起床に適した音環境を構築することができるという効果がある。
【0017】
請求項6の発明によれば、音源データの再生順による眠り易さ又は起床のし易さを評価しているので、相対的に評価の高い再生順に従って音源データを再生することで、入眠又は起床に適した音環境を構築することができ、しかも利用する音源データが異なっていても、相対的に評価の高い再生順であれば同様に入眠又は起床に適した音環境を構築できることから、複数の再生パターンを設定することが可能であり、その結果利用者は飽きることなくその音環境を楽しむことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の入眠起床用音環境生成装置を示す概略構成図である。
【図2】同上に用いられる身体情報検出部の具体例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る入眠起床用音環境生成装置の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。本発明に係る入眠起床用音環境生成装置は、図2に示すように、例えばベッド2上で就寝姿勢にある利用者Pに対して音楽や自然音による聴覚刺激を与え、利用者Pを快適な睡眠若しくは目覚めのよい起床へと導くために用いられるものである。
【0020】
図1は本実施形態の入眠起床用音環境生成装置の概略構成図であり、ベッド2のヘッドボード21に組み込まれた左右一対のスピーカ(電気音響変換装置)22,22と、これらのスピーカ22,22への音声信号を生成する音声処理装置1とを有している。
【0021】
音声処理装置1は、例えば携帯型のオーディオプレーヤー(商品名「メモリーオーディオ」)や据置型のオーディオプレーヤーからなる音源3に保存した音源データ(例えば音楽や自然音など)を入力するための音源入力部(例えば入力用コネクタや入力用ジャックなど)15と、複数の音源データの中から再生する音源データを選択する音源選択部13と、利用者Pの所定の身体情報(例えば心拍や体動など)を検出する身体情報検出部14と、再生した音源データによる利用者Pの眠り易さ(又は起床のし易さ)を評価し、その評価結果を記憶部12aに記憶する学習処理部12と、音源データに対する頭部伝達関数を制御してスピーカ22,22から出力する音の音像を制御する音像定位処理部11とを備えている。
【0022】
図2は本実施形態の身体情報検出部14の一例であり、例えばベット2上に配置した圧力マットセンサ4や、天井5に設置されたカメラ6などを用い、身体情報として利用者Pの心拍や体動などを検出する。
【0023】
圧力マットセンサ4は、ベッド2上に敷設された空気圧型や圧電型のセンサであり、ベッド2上に横たわった利用者Pの微小な体動や振動を能動的に検出する。空気圧型の圧力マットセンサ4は、マット本体内に空気が封入されたものであり、利用者Pの微小な体動や振動を空気圧の変化として捉え、この空気圧の変化をチューブを介してマイクに伝達することで電気信号に変換する。また、圧電型の圧力マットセンサ4は、利用者Pの微小な体動や振動に応じて生じるマット本体そのものの微小な形状変化をそのまま電気信号に変換する。何れの場合も利用者Pの微小な体動や振動を検出するので、睡眠中(又は起床時)における利用者Pの呼吸、心拍、体動等を電気的な生体信号として取得することができる。そして、圧力マットセンサ4で検出した生体信号は学習処理部12に入力され、学習処理部12ではこの生体信号から利用者Pが睡眠状態か否か(又は起床状態か否か)を判別するのである。
【0024】
一方、カメラ6は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラからなり、本装置の作動中において、ベッド2上に横たわった利用者Pの上半身又は全身を上方から常時撮像する。そして、カメラ6によって撮像された映像信号は学習処理部12に入力され、学習処理部12ではこの映像信号から利用者Pが睡眠状態か否か(又は起床状態か否か)を判別するのである。ここにおいて、利用者Pの就寝時には室内が暗くなることから、カメラ6としては赤外線まで感度分布を持つCCDカメラに、赤外線LEDランプ照明を用いるのが好ましい。また、遠赤外線を利用したサーモグラフィーなどで利用者Pの体温を検出し、測定した体温から利用者Pが睡眠状態か否か(又は起床状態か否か)を判別するようにしてもよい。なお、図2中の破線Aはカメラ6による撮像範囲を示している。
【0025】
学習処理部12は、再生中の音源データが入眠(又は起床)に適しているか否か、すなわち再生中の音源データによる眠り易さ(又は起床のし易さ)を評価しており、本実施形態では、音源データの再生中における身体情報検出部14の検出結果(具体的には利用者Pの心拍や体動など)から利用者Pが睡眠状態か否か(又は起床状態か否か)を判別し、その判別結果から再生した音源データによる眠り易さ(又は起床のし易さ)を評価する。例えば、利用者Pが睡眠状態(又は起床状態)になるまでの時間を評価パラメータとした場合には、この時間が短いほど眠り易い(又は起床し易い)ことを表し、高評価となる。したがって、この時間が長い場合には眠り難い(又は起床し難い)ことになるので、このような音源データについては、音源選択部13により選択できないようにするか、又は、評価を低く設定してなるべく再生しないようにするのが好ましい。なお、上記の評価結果は、対応する音源データの後述する音源パラメータとともに学習処理部12の記憶部12aに記憶される。ここに、入眠に適した音楽の具体例としては、例えばテンポがゆっくりなヒーリング音楽などが挙げられ、起床に適した音楽の具体例としては、例えばボサノバなどのリズムがはっきりして、テンポが速めの音楽などが挙げられる。また、入眠に適した自然音の具体例としては、フクロウや鈴虫、こおろぎの声や風、木々のざわめきなどの夜に聞こえる音が挙げられ、起床に適した自然音の具体例としては、小鳥のさえずりや川のせせらぎなどの朝に聞こえる音が挙げられる。
【0026】
音源選択部13は、音源入力部15を介して入力された複数の音源データの中から利用者Pが再生したい音源データを選択する機能と、学習処理部12の記憶部12aに記憶した上記の評価結果に基づいて相対的に評価の高い音源データを選択する機能とを有している。そして、後者の機能によって選択した相対的に評価の高い音源データを再生することで、利用者Pにとって入眠(又は起床)に適した音環境を構築することができるのである。
【0027】
音像定位処理部11は、音源データに対する頭部伝達関数(耳殻、人頭及び肩まで含めた周辺物によって生じる音の変化を伝達関数として表現したもの)を制御し、スピーカ22,22から出力する音の音像を制御する機能を有しており、利用者Pはこの機能によって音像を三次元(立体)的に認識するのである。つまり、利用者Pには、スピーカ22,22が設置されている方向からだけでなく、周囲の様々な方向から音が聞こえるかのように認識され、所謂擬似サラウンドの音響空間が形成されるのである。
【0028】
ここで、表1は、各音源データ1〜7に対応する形で記憶部12aに記憶させた制御データを示し、特に表1では、音源、再生時間、音量及び音源の位置からなる音源パラメータを示している。
【0029】
【表1】

【0030】
なお、すべての音源データの音源パラメータを記憶部12aに記憶させてもいいし、相対的に評価の高い音源データの音源パラメータのみを記憶部12aに記憶させてもいいが、特に後者の場合には、すべての音源パラメータを記憶させる場合に比べて記憶部12aの容量が小さくてすむとともに、再生する音源データを記憶部12aに記憶したものの中から選択することで、入眠効果(又は起床効果)の高い音環境を構築することが可能になる。
【0031】
さらに本実施形態では、学習処理部12による評価が相対的に低い音源データについては、音源選択部13が選択しないようになっており、例えば表1中の音源データ1,3,7が音源データ2,4,5,6に比べて相対的に評価が低い場合には、音源選択部13はこれらの音源データ1,3,7を選択することなく、音源データ2,4,5,6の中から再生する音源データを選択することになる。なおこのとき、評価の高低は、例えば音源データを再生したときの利用者Pの心拍に基づいて行い、心拍が所定の閾値を超えた場合には入眠に適しない音源データであると判断して低評価とし、心拍が所定の閾値以下である場合には入眠に適した音源データであると判断して高評価とする。また、起床時に再生する音源データについては、心拍が所定の閾値を超えた場合には起床に適した音楽データであると判断して高評価とし、心拍が所定の閾値以下である場合には起床に適しない音源データであると判断して低評価とする。
【0032】
このように、入眠(又は起床)に適しない音源データについては音源選択部13の選択対象から除外することで、音源データの再生中に、突然好ましくない音源データが再生されるのを抑えることができ、結果的に入眠(又は起床)に適した音環境を構築することができる。なお、本例では、低評価の音源データを音源選択部13が選択しないようにしているが、例えば優先度を現状よりも低く設定することで再生されにくくしてもよい。
【0033】
次に、本実施形態の入眠起床用音環境生成装置の動作について説明する。本装置を最初に利用する際には、学習処理部12によって評価された音源データが存在しないため、音源選択部13に入力される音源データの中から利用者Pが選択した音源データを再生するか、又は、音源選択部13に入力される音源データをランダムに再生することになる。なおこのとき、音源選択部13は、再生している音源データの音源パラメータに含まれる音源の位置に従って、音像定位処理部11により再生音の音像を制御し、利用者Pの周りに擬似サラウンドの音響空間を形成するのである。
【0034】
上記何れかの方法によって音源データを再生しているときの身体情報(例えば利用者Pの心拍など)を身体情報検出部14により検出し、検出した身体情報を学習処理部12に入力する。学習処理部12では、入力された身体情報から利用者Pが睡眠状態か否か(又は起床状態か否か)を判別し、睡眠状態(又は起床状態)にあると判断した場合には睡眠(又は起床)に至るまでの時間から音源データに対する評価を行う。例えば、睡眠(又は起床)に至るまでの時間が所定の基準値(例えば30分)よりも短い場合には高評価とし、長い場合には低評価とする。そして、高評価の音源データについては、上述したようにその音源パラメータを記憶部12aに記憶する。
【0035】
利用者Pが次に本装置を利用する際には、音源選択部13は、学習処理部12の記憶部12aに記憶した高評価の音源データの中から再生する音源データを選択し、選択した音源データを再生するのであるが、このとき音源パラメータに含まれる再生時間、音量及び音源の位置に従って該音源データを再生する。なお、このときにも身体情報検出部14によって利用者Pの身体情報を検出しており、学習処理部12では、この検出結果から再生した音源データに対する再評価を行う。そして、再評価の結果、相対的に評価の高い音源データの音源パラメータのみを記憶部12aに記憶する。以下同様にして音源データの評価を繰り返し、より評価の高い音源データを選択することで、入眠(又は起床)に対してより効果的な音環境を構築することが可能になる。なお、起床の効果を高めるために、アラーム音などの電子音や不快な物音(例えば扉の開閉音や食事の音など)、人の動きを感じる音、朝を感じさせる音(例えば鳥のさえずりなど)などの音源を予め用意し、再生パターンに付加したり、またそのものだけを呈示することも有効である。
【0036】
而して、本実施形態によれば、選択した音源データを再生したときの利用者Pの身体情報(利用者Pの心拍や体動など)に基づいて該利用者Pが睡眠状態か否か(又は起床状態か否か)を判別し、その判別結果に基づいて再生した音源データによる眠り易さ(又は起床のし易さ)を評価しているので、その評価結果から入眠(又は起床)に対して効果的な音源データを選択することができ、しかも複数の音源データの中から入眠(又は起床)に適した相対的に評価の高い音源データを自動的に再生するので、従来例のように利用毎に設定作業をしなくてもよく、したがって入眠(又は起床)に適した音環境を容易に且つ効果的に構築することができる。
【0037】
また、再生する音源データの音像を音像定位処理部11により制御することによって、利用者Pは音像を立体的に感じることができ、音源に包まれたような音環境を構築できることから、より入眠(又は起床)に適した音環境を構築することができる。
【0038】
次に、表2は学習処理部12の記憶部12aに記憶させた制御データの他の例を示し、表1に示す例では音源、再生時間、音量及び音源の位置からなる音源パラメータのみであったが、表2に示す例では音源パラメータの他に、音源データの再生開始時に検出した利用者Pの身体情報から分類される身体状態が記憶されている。
【0039】
【表2】

【0040】
例えば本例では、身体状態として、利用者Pが横になっている状態(Aグループ)と、体を起こしている状態(Bグループ)に分類し、記憶部12aに記憶させている。ここにおいて、利用者Pが横になっているか、又は体を起こしているかを判別する方法として、ベッド2上に複数の圧力センサを配置し、利用者Pによってオンになる圧力センサの個数で判別する。例えば、オンになる圧力センサの個数が所定数以上である場合には学習処理部12は利用者Pが横になっていると判断し、所定数未満である場合には利用者Pが体を起こしていると判断するのである。
【0041】
そして、利用者Pが横になっていると判断した場合には、表2中の音源データ1,4,7(Aグループ)の中から再生する音源データを選択し、利用者Pが体を起こしていると判断した場合には、表2中の音源データ2,3,5,6(Bグループ)の中から再生する音源データを選択するのである。
【0042】
このように、利用者Pの身体状態(本例では利用者Pが横になっているか、又は体を起こしているかの何れかに分類)を各音源データに対応する形で記憶部12aに記憶させているので、音源データの再生開始時に検出した身体情報から分類される身体状態に適した音源データを選択することが可能であり、その結果入眠(又は起床)に適した音環境を構築することができる。また、再生する音源データを利用ごとに異ならせることで、利用者Pは飽きることなくその音環境を楽しむことができる。
【0043】
なお、上記説明では、利用者Pが横になっているか、又は体を起こしているかの何れかに分類しているが、例えば身体情報検出部14によって検出した利用者Pの心拍から、利用者Pが高揚状態にあるか、又は鎮静状態にあるかの何れかに分類してもよく、同様に身体状態に応じた音源データを選択することで、入眠(又は起床)に適した音環境を構築することができる。また、本例では、各身体状態において複数の音源データの中から再生する音源データを選択できるようになっているが、各身体状態に対応する音源データは複数である必要はなく、1つであってもよい。
【0044】
次に、表3は学習処理部12の記憶部12aに記憶させた制御データのさらに他の例を示しており、本例では音源データの再生順についても学習処理部12が評価し、その評価結果を記憶部12aに記憶させている。
【0045】
【表3】

【0046】
その結果、表3に示すように再生パターン1,2を設定することができ、且つ、これらの再生パターン1,2はともに再生順が相対的に評価の高いものであるから、音源選択部13により何れかの再生パターン1又は2を選択することによって、入眠効果(又は起床効果)の高い音環境を構築することができる。
【0047】
このように、音源データの再生順による眠り易さ(又は起床のし易さ)を評価しているので、相対的に評価の高い再生順に従って音源データを再生することで、入眠(又は起床)に適した音環境を構築することができ、しかも再生パターン1,2のように利用する音源データが異なっていても、相対的に評価の高い再生順であれば同様に入眠(又は起床)に適した音環境を構築できることから、例えば再生パターン1又は2を利用回に応じて再生することによって、利用者Pは飽きることなくその音環境を楽しむことができる。
【0048】
次に、表4は学習処理部12の記憶部12aに記憶させた制御データのさらに他の例を示しており、本例では表3に示す内容に加えて音源データを再生したときの利用者Pの心拍も記憶部12aに記憶させている。
【0049】
【表4】

【0050】
例えば、表4に示すように再生パターン1に含まれる音源データ7と、再生パターン3に含まれる音源データ9は、利用者Pの心拍が同じ60であることから、両音源データ7,9を相互に入れ替えても同じ効果が期待できると考えられる。そこで、本実施形態では、音源選択部13において、例えば心拍が同じで再生パターンの異なる音源データ同士を入れ替えて新たな再生パターンを構築し、構築した新たな再生パターンに従って音源データを再生できるようになっている。すなわち、再生パターン1の音源データ7と再生パターン3の音源データ9を相互に入れ替えた再生パターン4(音源データ1,4,9)や再生パターン5(音源データ6,8,7)を構築し、それぞれの再生パターン4,5を再生しても、同様に入眠(又は起床)に適した音環境を構築することができる。
【0051】
このように、同じような身体情報(本例では心拍)を持つ音源データ同士を相互に入れ替えることで、再生パターンのアレンジを容易に行うことができ、さらに再生パターンが増えることで利用者Pは飽きることなくその音環境を楽しむことができる。
【0052】
なお、本実施形態では、入眠起床用音環境生成装置をベッド2に設置した場合を例に説明したが、設置箇所はベッドに限定されるものではなく、例えばマッサージチェアなどに本入眠起床用音環境生成装置を設けてもよい。また、本実施形態では、音像定位処理部11によりスピーカ22,22から出力される音の音像を制御しているが、学習処理部12による評価機能を備えていればよく、必ずしも音像を制御しなくてもよい。さらに、本実施形態では、2チャンネルのスピーカ22,22を用いて擬似的に立体的な音像を形成しているが、例えば4チャンネルや8チャンネルなどの多チャンネルのスピーカを用いて直截的に立体的な音像を形成してもよい。また、本実施形態では、電気音響変換装置がスピーカ22,22の場合について説明したが、例えばイヤホンやヘッドホンなどであってもよく、スピーカに限定されない。
【符号の説明】
【0053】
1 音声処理装置
12 学習処理部
13 音源選択部
14 身体情報検出部
22 スピーカ(電気音響変換装置)
P 利用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気音響変換装置と、該電気音響変換装置への音声信号を生成する音声処理装置とを有し、
前記音声処理装置は、複数の音源データの中から再生する音源データを選択する音源選択部と、利用者の身体情報を検出する身体情報検出部と、音源、再生時間及び音量を少なくとも含む音源パラメータに従って音源データを再生したときの前記身体情報検出部の検出結果に基づいて、再生した音源データによる眠り易さ又は起床のし易さの何れか一方を評価し、評価結果を記憶部に記憶する学習処理部とを備え、前記音源選択部は、再生する音源データを選択する際に、前記記憶部に記憶した評価結果に基づいて相対的に評価の高い音源データを選択することを特徴とする入眠起床用音環境生成装置。
【請求項2】
前記電気音響変換装置は、利用者に対して所定の位置に固定された2チャンネルのスピーカであって、
前記音声処理装置は、利用者に音像を三次元的に認識させるように音源データに対する頭部伝達関数を制御して前記スピーカから出力する音の音像を制御する音像定位処理部を備え、
前記音源パラメータには音源の位置が含まれており、前記音源選択部は、再生する音源データの前記音源パラメータに含まれる音源の位置に従って、前記音像定位処理部により該音源データの音像を制御することを特徴とする請求項1記載の入眠起床用音環境生成装置。
【請求項3】
前記音源選択部は、前記学習処理部による評価が相対的に低い音源データを選択しないか、又は該音源データの優先度を現状よりも低く設定することを特徴とする請求項1又は2記載の入眠起床用音環境生成装置。
【請求項4】
前記学習処理部は、相対的に評価の高い音源データの前記音源パラメータを前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項1又は2記載の入眠起床用音環境生成装置。
【請求項5】
前記身体情報検出部は、音源データの再生開始時に前記身体情報を検出し、前記学習処理部は、再生した音源データを、検出した前記身体情報に基づいて、予め設定した複数の身体状態の何れかに分類するとともに、分類した身体状態を前記評価結果とともに前記記憶部に記憶し、前記音源選択部は、音源データの再生開始時に検出した前記身体情報に基づいて分類した身体状態と一致する身体状態が前記記憶部に記憶された音源データの中から、再生する音源データを選択することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の入眠起床用音環境生成装置。
【請求項6】
前記学習処理部は、前記音源選択部が有する複数の音源データの再生順による眠り易さ又は起床のし易さの何れか一方を評価するとともに、評価結果を前記記憶部に記憶し、前記音源選択部は、前記記憶部に記憶した評価結果に基づいて相対的に評価の高い再生順を選択し、選択した再生順に従って音源データを再生することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の入眠起床用音環境生成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−130099(P2011−130099A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285481(P2009−285481)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】