説明

全天候散水システム

【課題】必要な水撒き量の判定にかかる主要な要素を入れて水撒き量を判定できる全天候散水システムを得る。
【解決手段】接続された給水電磁弁20を制御するコントローラ11を有するポール10と、該ポール10とインターネット50等を介して接続された管理用コントロールサーバ30とを有し、該管理用コントロールサーバ30は、情報受送信手段32と、この情報受送信手段32を通じて情報を受信し記録する、前日から現在の降雨記録手段31、前日から現在の雨量記録手段34、雨予報記録手段36、天気予報記録手段38、前日の水撒き量記録手段40と、これらの手段に基づき水撒き量を判定する水撒き量判定手段46と、該水撒き量判定手段46の結果に基づき、コントローラ11に水撒き量時間の指示信号を送る時間指示手段47とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、最適な全天候に対応可能な自動散水を行う全天候散水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、緑化運動が盛んに行われている。都心部では特に、屋上緑化や屋上菜園が地球温暖化対策として着目されている。屋上は日当たりがよく、風が強く土壌が乾きやすいところでもある。そのための他のエリアにもまして水撒きが大きなポイントである。
【0003】
従来の自動散水方式はタイマー式であり、天候に関係なく毎日決まった時間だけ散水していた。雨量計と連動したものや外気温度、湿度を取り入れたものも行われているが散水時間の設定は一般に一定時間のみである。
【0004】
このような事情の中で、天候による日照度,気温,湿度,風速など諸条件の変動に対応して、散水条件検出手段を用いることにより最適量の散水を自動的に行うことのできる自動散水装置を提示しているもの(例えば、特許文献1参照)、また、遠隔地から通信される天気予報を取込んだ天候情報抽出手段が抽出した今後の天候の変化と、給水情報記憶手段に記憶された植物の季節毎の給水時間及び気温による水の供給量と、環境検出手段で検出した植物近傍の環境条件である温湿度等との情報によって求められた給水時間及び給水時限を受ける給水制御装置を提示しているもの(例えば、特許文献2参照)がある。
【特許文献1】特開平6−320081号公報(要約、段落0005、図1)
【特許文献2】特開平10−165017号公報(要約、段落0005、0006、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の特許文献1に記載の発明では、天気予報を入れて水撒き量を検討していない、また、特許文献2に記載の発明では、天候情報のみが中心で、水撒き量を決めている。そこで、本発明では、必要な水撒き量の判定にかかる主要な要素を入れて水撒き量を判定できる全天候散水システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、接続された給水電磁弁を制御するコントローラを有するポールと、該ポールとインターネット、イントラネット、回線又は無線のいずれかを介して接続された管理用コントロールサーバとを有し、該管理用コントロールサーバは、情報受送信手段と、この情報受送信手段を通じて情報を受信し記録する、前日から現在の降雨記録手段、前日から現在の雨量記録手段、雨予報記録手段、天気予報記録手段、前日の水撒き量記録手段と、これら前日から現在の降雨記録手段、前日から現在の雨量記録手段、雨予報記録手段、天気予報記録手段、前日の水撒き量記録手段のデータに基づき水撒き量を判定する水撒き量判定手段と、該水撒き量判定手段の結果に基づき、前記コントローラに水撒き量時間の指示信号を送る時間指示手段とを備える全天候散水システムとする。これによって、前日からの雨量と前日から現在の降雨時間をファクターに温度、湿度を加味し、前日の水撒き量をも考慮し、天気予報をももとに散水時間を設定することで、雨が降っている、午後から雨等でも水播きしている、などが原則として生じる事が無く、適切な水撒きが可能となる。
【0007】
また、前記雨予報記録手段と前記天気予報記録手段のいずれかのデータが、インターネットを通じて得られる外部の気象データから前記情報受送信手段を介して取得したデータに基づいて記録される全天候散水システムとすれば、さらに、管理の充実を図ることができる。
【0008】
また、前記ポールが、降雨感知手段と雨量計測手段の少なくともいずれかを備え、前記管理用コントロールサーバが、前記情報受送信手段を通じてこれらの情報を、前日から現在の降雨記録手段又は前日から現在の雨量記録手段に記録する全天候散水システムとすれば、現場のポールからのデータによってより適切な水撒き量の判定が可能となる。
【0009】
また、前記ポールが、風力発電装置又は太陽電池発電装置のいずれか又は両者を備えた自立型発電により駆動される全天候散水システムとすれば、電源用の配線を不要とできるとともに、乾電池などの電池寿命の保守問題をなくすことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前日からの雨量と前日から現在の降雨時間に前日の水撒き量をも考慮し、さらに天気予報をもとに散水時間を設定することで、適切な水撒きを実現できる全天候散水システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態を図を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本発明による一実施の形態としての全天候散水システムの構成を示すブロック図である。全天候散水システム1は、ポール10とインターネット50、イントラネット、回線又は無線のいずれかを介して接続された管理用コントロールサーバ30を基本的に有する。
【0013】
ポール10は接続された給水電磁弁20を制御するコントローラ11を有する。さらに、ここでのポール10は、図1にその構成、図3にその外観を示すように、風力発電装置15、太陽電池発電装置13、観察用FOMA(登録商標)カメラ19が設置されており、その下部のボックス110にはコントローラ11、蓄電池17、タイマー手段116、給水電磁弁20が納められ、降雨感知手段12、雨量計測手段14と接続されている。コントローラ11は、風力発電装置15と太陽電池発電装置13と蓄電池17とのあいだの制御を行う充放電コントローラ111、カメラの画像とその他の信号とを伝達する画像伝送装置112と降雨感知手段12、雨量計測手段14などからの信号伝送装置114を有する。ここでのポール10は、風力発電装置15、太陽電池発電装置13による自立型発電で駆動される。
【0014】
ポール10とインターネット50(その他、イントラネット、回線又は無線のいずれか)を介して接続された管理用コントロールサーバ30は、情報受送信手段32と、この情報受送信手段32を通じて情報を受信しそれぞれの項目を記録する、前日から現在の降雨記録手段31、前日から現在の雨量記録手段34、雨予報記録手段36、天気予報記録手段38、前日の水撒き量記録手段40と、これら前日から現在の降雨記録手段31、前日から現在の雨量記録手段34、雨予報記録手段36、天気予報記録手段38、前日の水撒き量記録手段40のデータに基づき水撒き量を判定する水撒き量判定手段46と、該水撒き量判定手段46の結果に基づき、コントローラ11に水撒き量時間の指示信号を送る時間指示手段47とを備える。時間指示手段47からの指示信号はインターネット50を介してコントローラ11からタイマー手段116に伝達されてタイマー手段116は給水電磁弁20を指示された水撒き量時間開き、散水する。
【0015】
管理用コントロールサーバ30は、インターネット50を通じて外部の気象データサービス55と繋がり、前記情報受送信手段32を介して雨予報記録手段36と天気予報記録手段38には気象データサービス55から取得したデータに基づいて必要な情報を記録する。
【0016】
なお、本実施形態では、前日から現在の降雨記録手段31、前日から現在の雨量記録手段34への情報は、ポール10の降雨感知手段12と雨量計測手段14からの情報によるものとされているが、これについても、外部の気象データサービス55からの情報に基づくことができる。前日の水撒き量記録手段40の情報は、前日の指示時間が記録される。図1の状況確認端末52は、FOMA対応の携帯端末で観察用FOMAカメラ19からの画像を受けて現場の状況を画像確認するものである。
【0017】
次に、図2のフロー図を参照しつつ、水撒き量判定手段46における判定の手順を説明する。前日から現在の降雨記録手段31、前日から現在の雨量記録手段34、雨予報記録手段36、天気予報記録手段38、前日の水撒き量記録手段40には、情報受送信手段32を通じて受信した情報をそれぞれの項目に記録している。図2において、判定手順をステップST1で開始し、ステップSQ1で「雨は降っているか」を前日から現在の降雨記録手段31に問い合わせる。
【0018】
YESであると、ステップSQ3で前日から現在の雨量記録手段34に「雨の降雨量」を問い合わせる。この問い合わせに対する降雨量が多い場合は、時間指示手段47にOFFすなわちタイマー時間0の信号を出す。降雨量が少ない場合には、「少し水撒き」すなわちタイマー時間中の信号を出す。降雨量がわずかな場合には、「水撒き」すなわちタイマー時間大の信号を出す。
【0019】
上記のステップSQ1の回答がNOであると更に次のステップSQ2で「昨日雨は降ったか」を前日から現在の降雨記録手段31に問い合わせる。YESであると、ステップSQ3で前日から現在の雨量記録手段34に「雨の降雨量」を問い合わせる。この問い合わせに対する降雨量が多い場合は、時間指示手段47にOFFすなわちタイマー時間0の信号を出す。降雨量が少ない場合には、「少し水撒き」すなわちタイマー時間中の信号を出す。降雨量がわずかな場合には、「水撒き」すなわちタイマー時間大の信号を出す。
【0020】
ステップSQ2での回答がNOであると、更に次のステップSQ4で「今日雨は降るか」を雨予報記録手段36に問い合わせる。YESであると、ステップSQ5で雨予報記録手段36に「雨の予報の程度は」を問い合わせる。大雨との回答であれば、時間指示手段47にOFFすなわちタイマー時間0の信号を出す。雨との回答であれば、時間指示手段47に「少し水撒き」すなわちタイマー時間中の信号を出す。小雨との回答であれば、時間指示手段47に「水撒き」すなわちタイマー時間大の信号を出す。
【0021】
ステップSQ4の「今日雨は降るか」での回答がNOであると、ステップSQ6で「今日の天気予報は降るか」を天気予報記録手段38に問い合わせる。くもりであれば、次のステップSQ7で「前日水撒きを行ったか」を前日の水撒き量記録手段40に問い合わせる。YESであれば時間指示手段47にOFFすなわちタイマー時間0の信号を出す。NOであれば時間指示手段47に「少し水撒き」すなわちタイマー時間中の信号を出す。
【0022】
ステップSQ6で「今日の天気予報は降るか」の回答が「晴れ、気温25℃以上」であれば時間指示手段47に「たっぷり水撒き」すなわちタイマー時間特大の信号を出す。ステップSQ6で「今日の天気予報は降るか」の回答が「晴れ、気温25℃以下」であれば時間指示手段47に「水撒き」すなわちタイマー時間大の信号を出す。
【0023】
これらの時間指示手段47からの信号は、インターネット50を介してコントローラ11からタイマー手段116に伝達され、給水電磁弁20が制御される。
【0024】
次に全天候散水システムの動作に付き簡単に説明する。
【0025】
ポール10は、太陽電池発電装置13と風力発電装置15の発電の蓄電池17への蓄電と蓄電池17からの放電を充放電コントローラ111に制御され、電源を確保し、動作している。観察用FOMAカメラ19の画像信号は画像伝送装置112を通し、その他の信号は信号伝送装置114を通して、インターネット50を介して、管理用コントロールサーバ30との間でやり取りが行われる。給水電磁弁20を制御するタイマー手段116は、管理用コントロールサーバ30の時間指示手段47からの指示信号を1日の定められた時間に受ける待機状態となる。
【0026】
管理用コントロールサーバ30は、インターネット50を通じて、外部の気象データサービスのウエブサイトなどから、また、ポール10から、降雨情報、雨量情報、雨予報情報、天気予報情報、水撒き量情報を得て、それぞれ、前日から現在の降雨記録手段31、情報受送信手段32、前日から現在の雨量記録手段34、雨予報記録手段36、天気予報記録手段38、前日の水撒き量記録手段40に記録する。
【0027】
その日の水撒き時間が近づくと、水撒き量判定手段46は、上述した水撒き量判定手順を実行し、この結果に基づく指示信号を、時間指示手段47からインターネット50を介してコントローラ11、タイマー手段116に伝達され、給水電磁弁20が制御され、散水が行われる。上記の散水タイミング時とタイマー手段116の待機時、水撒き量判定手段46の動作時は、タイミングを調整されて、セットされる。
【0028】
また、ポール10に、気温、湿度を計測する手段を持たせ、これらによる情報を信号伝達装置114から管理用コントロールサーバ30の情報受送信手段32を通して前日から現在の降雨記録手段31など、または、他の別途設けた記録手段などに記録させ、水撒き量判定手段46の判定情報の一部として用いれば、さらに適切な判定結果を得ることができる。このような実施の形態では、前日からの雨量と降雨時間をファクターに温度、湿度を加味し、天気予報をもとに散水時間を設定することとなる。
【0029】
なお、屋上緑化や屋上菜園の場合、土壌表面近辺に、温度センサ、湿度センサを設け、その時の状態に基づいて、最適な水撒きを行うようにしてもよい。
【0030】
また、水撒き量判定手段として、記憶された各種情報に基づいて、ファジー理論、カオス理論、を用いて散水を行うようにしてもよい。さらに、水撒き時間(1日のうち何時水撒きをするのがベストであるか)や、水撒き量を、データマイニングや重回帰分析等の手法を用いて、最も適切な時間や量を算出し、それに基づいて電磁弁の開閉を制御するようにしてもよい。
【0031】
このように、散水を制御することにより、雨が降っていたり、午後から雨等でも水播きしている、などの状態は、起き難い。
【0032】
また、電源を太陽光発電や風力発電で行うことで地球温暖化対策に寄与できるとともに、電源用の配線を不要とできる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明による全天候散水システムは、緑化エリアの散水システムとして有用である。特に屋上緑化や屋上菜園に適している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による一実施の形態としての全天候散水システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の水撒き量判定手段における判定の一手順を示すフロー図である。
【図3】図1の実施の形態に用いることのできる一例としてのポールの外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 全天候散水システム、10 ポール、11 コントローラ、12 降雨感知手段、13 太陽電池発電装置、14 雨量計測手段、15 風力発電装置、17 蓄電池、19 観察用FOMAカメラ、20 給水電磁弁、30 管理用コントロールサーバ、31 前日から現在の降雨記録手段、32 情報受送信手段、34 前日から現在の雨量記録手段、36 雨予報記録手段、38 天気予報記録手段、40 前日の水撒き量記録手段、46 水撒き量判定手段、47 時間指示手段、50 インターネット、52 状況確認端末、55 気象データサービス、110 ボックス、111 充放電コントローラ、112 画像伝送装置、114 信号伝送装置、116 タイマー手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された給水電磁弁を制御するコントローラを有するポールと、
該ポールとインターネット、イントラネット、回線又は無線のいずれかを介して接続された管理用コントロールサーバとを有し、
該管理用コントロールサーバは、
情報受送信手段と、
この情報受送信手段を通じて情報を受信し記録する、前日から現在の降雨記録手段、前日から現在の雨量記録手段、雨予報記録手段、天気予報記録手段、前日の水撒き量記録手段と、
これら前日から現在の降雨記録手段、前日から現在の雨量記録手段、雨予報記録手段、天気予報記録手段、前日の水撒き量記録手段のデータに基づき水撒き量を判定する水撒き量判定手段と、
該水撒き量判定手段の結果に基づき、前記コントローラに水撒き量時間の指示信号を送る時間指示手段とを備える
ことを特徴とする全天候散水システム。
【請求項2】
前記雨予報記録手段と前記天気予報記録手段のいずれかのデータが、インターネットを通じて得られる外部の気象データから前記情報受送信手段を介して取得したデータに基づいて記録されることを特徴とする請求項1に記載の全天候散水システム。
【請求項3】
前記ポールが、降雨感知手段と雨量計測手段の少なくともいずれかを備え、前記管理用コントロールサーバが、前記情報受送信手段を通じてこれらの情報を、前日から現在の降雨記録手段又は前日から現在の雨量記録手段に記録することを特徴とする請求項1又は2に記載の全天候散水システム。
【請求項4】
前記ポールが、風力発電装置又は太陽電池発電装置のいずれか又は両者を備えた自立型発電により駆動されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の全天候散水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−97509(P2007−97509A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293024(P2005−293024)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【出願人】(500327636)株式会社ブレインズ (11)
【出願人】(593042007)株式会社因幡電機製作所 (25)