説明

全方位カメラ

【課題】凸面鏡と反射鏡とを用いた全方位カメラにおいて、反射鏡に起因する死角領域を解消した全方位画像を得ること。
【解決手段】反射鏡102は、反射鏡制御部106からの状態制御信号S1によって、ミラー状態と透過状態とが切り替えられる。反射鏡102がミラー状態に制御されている場合には、図中の一点鎖線で示すように、カメラ103には凸面鏡101及び反射鏡102によって反射された光が入射され、カメラ103によって全方位画像が撮像される。一方、反射鏡102が透過状態に制御されている場合には、図中の二点鎖線で示すように、カメラ103には反射鏡102を透過した光が入射され、カメラ103によって反射鏡102の向こう側の画像が撮像される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸面鏡と反射鏡とを用いて全方位画像を得る全方位カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全方位カメラは、例えば監視カメラとして用いられている。
【0003】
全方位カメラの一つとして、例えば特許文献1で開示されているような、凸面鏡と反射鏡とを用いて全方位画像を得るものがある。なお、凸面鏡を主鏡、反射鏡を副鏡と呼んでもよい。
【0004】
この種の全方位カメラでは、凸面鏡及び反射鏡によって順次反射された光がカメラで受光される。これにより、カメラによって全方位画像が撮像される。具体的には、凸面鏡の内部にカメラが設けられ、凸面鏡の凸方向に反射鏡が設けられる。そして、凸面鏡により反射された光が反射鏡に入射され、反射鏡により反射された光が凸面鏡に形成された貫通穴を介してカメラに入射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−331654号公報
【特許文献2】特開2007−102197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したような、凸面鏡と反射鏡とを用いた従来の全方位カメラによって撮像された撮像画像10は、図1に示すように、全方位画像(有効領域)11と死角領域(無効領域)12とを有する。死角領域12は、カメラ正面に配置された反射鏡に相当する領域であり、撮影画像10の中心部分に現れる。つまり、カメラ正面には反射鏡が配置されているので、反射鏡が邪魔となって反射鏡の向こう側の領域は死角となる。なお、図1では、模式的に死角領域12を黒塗りで示してあるが、実際上、死角領域12にはカメラ自身が写っている。
【0007】
このように、凸面鏡と反射鏡とを用いた従来の全方位カメラにおいては、撮像画像の中心部分に死角領域が現れるといった不都合があった。例えば、全方位カメラを床方向に向けて天井に取り付けて、監視カメラとして用いる場合には、全方位カメラの真下が死角領域となるので、全方位カメラの真下に不審者などがいる場合には、それを撮像することが困難であった。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、凸面鏡と反射鏡とを用いた全方位カメラにおいて、反射鏡に起因する死角領域を解消した全方位画像を得ることができる全方位カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の全方位カメラの一つの態様は、凸面鏡と、反射鏡と、前記凸面鏡及び前記反射鏡によって順次反射された光を受光するカメラと、を有する全方位カメラであって、前記反射鏡は、ミラー状態と透過状態の切り替えが可能であり、前記全方位カメラは、さらに、前記反射鏡をミラー状態と透過状態とで切り替え制御する状態制御部を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、凸面鏡と反射鏡とを用いた全方位カメラにおいて、ミラー状態と透過状態の切り替えが可能な反射鏡を用いたので、反射鏡による死角を無くすることができ、死角の無い全方位画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の、凸面鏡と反射鏡とを用いた全方位カメラによって撮像された撮像画像を示す図
【図2】実施の形態の全方位カメラの全体構成を示す図
【図3】画像合成部による合成のイメージを示す図であり、図3Aはミラー状態画像のイメージを示す図、図3Bは透過状態画像のイメージを示す図、図3Cは合成画像のイメージを示す図
【図4】画像合成部による合成のイメージを示す図であり、図4Aはミラー状態画像のイメージを示す図、図4Bは透過状態画像のイメージを示す図、図4Cは補正画像のイメージを示す図、図4Dは合成画像のイメージを示す図
【図5】画像合成部の構成を示すブロック図
【図6】画像合成部による画像合成の説明に供する図であり、図6Aはメモリに格納された撮像画像の時系列での様子を示す図、図6Bは合成の様子を示す図
【図7】補正用のレンズを配置した例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[1]全体構成
図2に、本発明の実施の形態に係る全方位カメラの構成を示す。
【0014】
全方位カメラ100は、凸面鏡101と、反射鏡102と、カメラ103と、を有する。カメラ103は凸面鏡101の内部に設けられている。反射鏡102はカメラ103の正面方向(すなわちカメラ103の視線方向)に設けられている。凸面鏡101における、カメラ103と反射鏡102との間の位置には貫通穴104が形成されており、これにより、反射鏡102によって反射された光が貫通穴104を介してカメラ103に入射するようになっている。また、図の例の場合、凸面鏡101は透明なカバー105によって覆われており、反射鏡102はカバー105に取り付けられている。
【0015】
図中の一点鎖線像は、カメラ103に入射されるまでの光の様子を示す。先ず、光は透明カバー105を透過した後、凸面鏡101の表面で反射される。反射された光は反射鏡102に入射され、反射鏡102によってカメラ103の方向に反射される。この光は、貫通穴104を介してカメラ103に入射される。
【0016】
このように、全方位カメラ100においては、凸面鏡101と反射鏡102とを用いることで、カメラ103にて全方位画像を撮像できるようになっている。カメラ103は、例えば天井に下向きに設置される。
【0017】
本発明の全方位カメラ100は、反射鏡102として、ミラー状態と透過状態の2つの状態を持つことが可能な反射鏡が用いられている。反射鏡102は、反射鏡制御部106からの状態制御信号S1に基づいて、ミラー状態又は透過状態のいずれかに制御される。例えば、反射鏡102は、1秒間に10回の頻度でミラー状態と透過状態とが切り換えられる。
【0018】
ここで、反射鏡102がミラー状態に制御されている場合には、図中の一点鎖線で示すように、カメラ103には凸面鏡101及び反射鏡102によって反射された光が入射され、カメラ103によって全方位画像が撮像される。一方、反射鏡102が透過状態に制御されている場合には、図中の二点鎖線で示すように、カメラ103には反射鏡102を透過した光が入射され、カメラ103によって反射鏡102の向こう側の画像が撮像される。
【0019】
以下では、反射鏡102がミラー状態のときにカメラ103によって撮像された画像をミラー状態画像と呼び、反射鏡102が透過状態のときにカメラ103によって撮像された画像を透過状態画像と呼ぶことにする。透過状態画像は、反射鏡102がミラー状態のときに撮像された全方位画像の死角領域を補完する画像である。
【0020】
画像合成部107には、カメラ103からミラー状態画像及び透過状態画像からなる撮像画像S2が入力される。画像合成部107は、状態制御信号S1に基づくタイミングでミラー状態画像と透過状態画像とを合成することにより、合成後の全方位画像S3を得る。全方位画像S3は、ミラー状態画像の死角領域を、透過状態画像で補完した画像である。
【0021】
合成後の全方位画像S3は、画像出力部108を介して外部の通信機器やディスプレイ等に出力される。
【0022】
[2]反射鏡の構成
次に、本実施の形態で用いられる反射鏡102の構成について説明する。反射鏡102は、ミラー状態と透過状態の2つの状態を持つことが可能な反射鏡であれば、どのようなものを用いてもよい。
【0023】
反射鏡102としては、例えば、
1)光学特性を電気的に制御することでミラー状態と透過状態とを切り替え可能なもの、
2)機械的にミラー状態と透過状態とを切り替え可能なもの、
のいずれかを用いることができる。
【0024】
上記1)の例としては、エレクトロクロミック方式の調光ミラーガラスがある。このエレクトロクロミック方式の調光ミラーガラスは、例えば特許文献2に記載されている。エレクトロクロミック方式の調光ミラーガラスは、マグネシウム−ニッケル合金薄膜のように、水素及びプロトンを吸収/放出することで透明状態とミラー状態とが切り替わる反射調光層を設け、この反射調光層への前記水素及びプロトンを吸収/放出を電気的に調節することで、ミラー状態と透過状態とを切り換えることができる。
【0025】
上記2)の構成例としては、反射鏡102をミラー状態として使用する場合には図1に示すようなカメラ103の視界に入る位置に反射鏡102を移動させ、反射鏡102を透過状態として使用する場合にはカメラ103の視界から外れる位置に反射鏡102を移動させればよい。この移動は、反射鏡制御部106によって機械的に行えばよい。
【0026】
なお、反射鏡102を視界から完全に外れる位置に移動させる必要はない。例えば円形の反射鏡102の半径を軸として回転させる構成にした場合は、反射鏡102は完全にカメラ103の視界から完全に外れることはないが、いままで死角になっていた領域の大半が撮影可能となるため十分な効果を得ることができる。
【0027】
[3]画像合成部
図3に、画像合成部107による合成のイメージを示す。図3Aはミラー状態画像のイメージを示す。図3Bは透過状態画像のイメージを示す。図3Cは画像合成部107によって得られる合成画像のイメージを示す。図中の網掛け部分は有効領域を示し、黒塗り部分は死角領域を示す。図3Cの示す合成画像は、図3Aの死角領域が図3Bの有効領域によって補完されており、死角の無い全方位画像とされている。
【0028】
図4に、画像合成部107による合成のイメージを、より実際に近い形で示す。図中の網掛け部分は有効領域を示し、黒塗り部分は死角領域を示す。図4に示すように、カメラ103により得られる実際の撮像画像は、ミラー状態画像(図4A)と、透過状態画像(図4B)とでは、サイズや歪みが異なる。従って、単純に、ミラー状態画像(図4A)の死角領域に透過状態画像(図4B)を嵌め込むだけでは、所望の合成画像を得ることができない場合が多い。
【0029】
そこで、本実施の形態では、透過状態画像(図4B)のサイズ及び歪みを図4Cに示すように補正した後に、ミラー状態画像(図4A)と合成するようになっている。これにより、合成後の全方位画像を、見た目上、自然な画像とすることができる。
【0030】
図5に、画像合成部107の構成例を示す。画像合成部107は、画像受信部111によってカメラ103からの撮像画像(全方位画像及び補完画像)S2を受信すると共に、制御信号受信部112によって反射鏡制御部106からの状態制御信号S1を受信する。
【0031】
画像種別判定部113は、状態制御信号S1に基づいて、画像受信部111で受信された撮像画像S2がミラー状態画像か透過状態画像かを判定する。
【0032】
メモリ114は、撮像画像S2を、ミラー状態画像か透過状態画像かを示す判定結果と関連付けて格納する。すなわち、メモリ114は、ミラー状態画像か透過状態画像かを示す識別情報を各撮像画像S2に付随させて記憶する。
【0033】
透過状態画像補正部115は、メモリ114に蓄積されている透過状態画像を補正する。具体的には、図4Cに示したように、透過状態画像(図4B)のサイズ及び歪みを、ミラー状態画像(図4A)の死角領域に合わせるように補正する。
【0034】
合成部116は、図4Dに示したように、ミラー状態画像と補正後の透過状態画像とを合成する。
【0035】
図6に、画像合成部107による実際の画像合成の様子を示す。図6Aは、メモリ114に格納された撮像画像の時系列での様子を示す。図6Aの例では、時点t1でミラー状態画像、時点t2でミラー状態画像、時点t3で透過状態画像、時点t4で透過状態画像、時点t5でミラー状態画像が撮像され記憶される。
【0036】
画像合成部107は、図6Bに示すように、最も撮像時間の差が小さいミラー状態画像と透過状態画像との組み合わせを選択しながら、合成処理を行う。これにより、ミラー状態画像と透過状態画像との時間差を小さくできるので、合成後の全方位画像を違和感のないものとすることができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、透過状態画像をミラー状態画像に合うように補正する場合について説明したが、ミラー状態画像を透過状態画像に合うように補正してもよい。要は、ミラー状態画像と透過状態画像とでは、サイズや歪みが異なるので、それらを合成したときに見た目上の違和感が生じないように少なくともいずれかの画像を補正すればよい。
【0038】
また、本実施の形態では、画像種別判定部113は、ミラー状態画像か透過状態画像かを、反射鏡制御部106からの状態制御信号S1を基に判定した場合について述べたが、これに限らず、画像処理を用いてミラー状態画像か透過状態画像かを判定してもよい。例えば、ミラー状態画像は、図1に示したように、撮像画像の決まった位置に死角領域12が存在するので、この死角領域12が存在するか否かを画像処理で検出することで、ミラー状態画像か透過状態画像かを判定することができる。因みに、死角領域12は、一般に、カメラ自身が写っていたり、黒で塗り潰されているので、容易に検出可能である。
【0039】
[4]効果
以上説明したように、本実施の形態によれば、凸面鏡101と、反射鏡102とを用いて、全方位画像を得る全方位カメラにおいて、ミラー状態と透過状態の切り替えが可能な反射鏡102を用いたことにより、死角の無い全方位画像を得ることができる。
【0040】
[5]変形例
なお、上述の実施の形態では、反射鏡102のミラー状態と透過状態との切り替えを所定のタイミングで行う場合について述べたが、これに限らない。例えば、人物などのターゲット(追跡対象)が死角領域(つまり反射鏡102が邪魔になって写らない領域)に存在することを検知した場合に、反射鏡102をミラー状態から透過状態に切り替えてもよい。このようにすれば、ターゲットがどの位置に移動しても、つまり、ターゲットが反射鏡102に起因する死角領域に移動した場合でも、ターゲットを撮像できるので、死角の無い追跡画像を得ることができる。
【0041】
また、上述の実施の形態では、画像合成部107を設けた場合について述べたが、画像合成部107を設けずに、ミラー状態画像と透過状態画像とを別々に表示してもよい。
【0042】
また、上述の実施の形態では、画像処理によりミラー状態画像及び又は透過状態画像を補正する場合について述べたが、例えば、図7に示すように、反射鏡102から見てカメラ103とは反対の位置に、透過状態画像の歪みがミラー画像の歪みに合うように、カメラ103への入射光を補正するレンズ120を設けてもよい。これにより、透過状態画像補正部115を省略できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明にかかる全方位カメラは、死角の無い全方位画像を得ることができ、例えば監視カメラとして用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0044】
10 撮像領域
11 全方位画像
12 死角領域
100 全方位カメラ
101 凸面鏡
102 反射鏡
103 カメラ
104 貫通穴
105 カバー
106 反射鏡制御部
107 画像合成部
108 画像出力部
113 画像種別判定部
114 メモリ
115 透過状態画像補整部
116 合成部
120 レンズ
S1 状態制御信号
S2 撮像画像
S3 合成後の全方位画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸面鏡と、反射鏡と、前記凸面鏡及び前記反射鏡によって順次反射された光を受光するカメラと、を有する全方位カメラであって、
前記反射鏡は、ミラー状態と透過状態の切り替えが可能であり、
前記全方位カメラは、さらに、前記反射鏡をミラー状態と透過状態とで切り替え制御する状態制御部を具備する、
全方位カメラ。
【請求項2】
前記反射鏡がミラー状態のときに前記カメラによって得られたミラー状態画像と、前記反射鏡が透過状態のときに前記カメラによって得られた透過状態画像とを合成する合成部を、さらに具備する、
請求項1に記載の全方位カメラ。
【請求項3】
前記ミラー状態画像、前記透過状態画像のうちの少なくとも一方を歪み補正する補正部を、さらに具備する、
請求項2に記載の全方位カメラ。
【請求項4】
前記反射鏡から見て前記カメラとは反対の位置に配置され、前記透過状態画像の歪みが前記ミラー画像の歪みに合うように、前記カメラへの入射光を補正するレンズを、さらに具備する、
請求項2に記載の全方位カメラ。
【請求項5】
前記合成部は、最も撮像時間の差が小さいミラー状態画像と透過状態画像との組み合わせを選択して、合成処理を行う、
請求項2に記載の全方位カメラ。
【請求項6】
前記反射鏡は、光学特性を電気的に制御することで、ミラー状態と透過状態とを切り替え可能な構成を有する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の全方位カメラ。
【請求項7】
前記反射鏡の位置を、前記カメラの視界に入る位置と前記カメラの視界から外れる位置との間で機械的に移動させることで、前記反射鏡をミラー状態と透過状態とで切り替える、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の全方位カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−180356(P2011−180356A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44181(P2010−44181)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】