説明

全方向反射器

【課題】0度から45度の角度から見た場合に100nm未満の電磁波バンドを反射する全方向反射器を提供する。
【解決手段】この全方向反射器は、高屈折率材料の複数の層と低屈折率材料の複数の層とを有する多層スタックを含んでいる。複数の高屈折率材料層と低屈折率材料層は交互に積層され或いは互いに交差し、かつ、非周期的層構造が形成されるような厚さを有している。言い換えると、高屈折率材料の複数の層は、H1、H2、H3・・・Hnとして特定され、低屈折率材料の複数の層は、L1、L2、L3・・・Lnとして特定され、それぞれに予め決定された厚さdH1、dH2、dH3・・・dHn及びdL1、dL2、dL3・・・dLnを有する層を備え、かつ、高屈折率層の種々の厚さは通常、互いに等しくなく、および/または、低屈折率層の種々の厚さは通常、互いに等しくない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全方向反射器に関し、特に、構造色であり、かつ比較的低い屈折率を有する材料で作られた、全方向反射器に関する。
【背景技術】
【0002】
一次元(1−D)フォトニック結晶の理論計算に基づいて、全方向(角度に依存しない)構造色のための設計基準が、同時出願の米国特許出願第11/837、529号(米国特許出願公開第2009/0046368号、以下’529)において教示されるように、開発されている。’529において教示するように、図1aは、高屈折率ペア低屈折率の関数としてプロットされた、電磁放射の横磁場モード(TMモード)と横電場モード(TEモード)に対するミッドレンジ対レンジ比が0.2%に等しい、グラフを示している。この図はさらに、2個のデータポイントを示している。一個は、屈折率が2.8の第1の材料と屈折率が2.5の第2の材料で形成した“理想的な”多層スタックに該当し、もう一個は、真空蒸着で形成した、結果としての屈折率が2.3のTiO2と結果としての屈折率が2.0のHfO2を有する、実際に製造した多層スタックに該当する。
【0003】
図1bを参照すると、入射角の関数としての反射率のプロットが、0度から90度の間の角度から見た場合の理想的な多層スタックによって提示される、全方向特性を示している。反対に、図1cは、実際に製造された多層スタックによって提示される、全方向特性の低下、特に、0−90度から0−60度への、角度に依存しない反射率における低下、を示している。
【0004】
反射率対波長のプロット上で、反射電磁波の角度無依存バンドは、図1dにおいて両方向矢印で示される波長範囲によって示されるように、0度とθ度間の角度から見る場合、多層スタックの共通の反射率である。本発明の目的に対して、角度無依存反射放射のこのバンドは、2個の反射率曲線(0度とθ度)に対して半値全幅(FWHM)の平均値において測定され、かつ、以降において、角度0度とθ度間で見た場合の全方向バンドとして言及される。図1bと1cに対する全方向反射の範囲、即ちθが、それぞれ90度と60度であることが好ましい。
【0005】
所望のものより小さい屈折率で全方向構造色を製造することによって、結果として、所望のものより小さい角度無依存反射を生じうることが好ましい。さらに、比較的高い屈折率を示す材料で全方向構造色を製造することは、恐ろしく高くつくことがある。従って、全方向構造色を提供し、かつ、比較的低い屈折率を有する材料で製造が可能な、多層スタックが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、0度と45度間の角度から見た場合、100nm未満の電磁波バンドを反射することが出来る、全方向反射器を開示している。この全方向反射器は、高屈折率材料の複数の層と低屈折率材料の複数の層とを有する多層スタックを含んでいる。複数の高屈折率材料層と低屈折率材料層は交互に積層され或いは互いに交差し、かつ、非周期的層構造が形成されるような厚さを有している。言い換えると、高屈折率材料の複数の層は、H1、H2、H3・・・Hnとして特定され、低屈折率材料の複数の層は、L1、L2、L3・・・Lnとして特定され、それぞれに予め決定された厚さdH1、dH2、dH3・・・dHn及びdL1、dL2、dL3・・・dLnを有する層を備え、かつ、高屈折率層の種々の厚さは通常、互いに等しくなく、および/または、低屈折率層の種々の厚さは通常、互いに等しくない。
【0007】
場合によっては、全方向反射器は、0度と65度間の角度から見た場合に100nm未満の電磁波反射バンドを有する、多層スタックを含んでいる。他の場合には、全方向反射器は、0度と90度間の角度から見た場合、100nm未満の電磁波バンドを反射することが可能な多層スタックである。
【0008】
高屈折率材料は、1.5と2.6を含む間の屈折率を有し、低屈折率材料は、0.75と2.0を含む間の屈折率を有する。多層スタックは少なくとも3層を有し、ある場合には少なくとも7層を有し、他の例では少なくとも13層を有することができる。さらに別の例では、多層スタックは少なくとも19層を有する。
【0009】
本発明はさらに、電磁波の狭いバンドを全方向で反射するための方法を開示し、この方法は、多層スタックを上述したように提供し、広帯域電磁波源を提供し、多層スタックを広帯域電磁波源に暴露し、さらに、多層スタックが、0度と45度間の角度から見た場合に、又ある場合には、0度と65度間の角度から見た場合に、或いはその代わりに0度と90度間の角度から見た場合に、100nm未満のバンドを反射する、各ステップを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】全方向構造色に必要な屈折率ゾーンを示すグラフ表現である。
【図1b】完全な全方向性を示す、計算された即ち理想的なバンド構造を示すグラフ表現である。
【図1c】製造された全方向反射器の実際のバンド構造を示すグラフ表現である。
【図1d】多層スタックの全方向バンドを示すグラフ表現である。
【図2】2個の異なる材料と該当する一個の等価層から作られた3層構造を示す。
【図3】全方向反射器と一個の等価層設計の、オリジナルプロトタイプ構造を示す。
【図4】屈折率2.5の低屈折率材料と屈折率2.89の高屈折率材料で作られた13層構造に置き換えた、第1の材料と第2の材料で形成される39層等価構造に対する、反射率対波長のグラフ表現である。
【図5】等価層近似の改良された設計概念を示す。
【図6】13層構造に等価の39層構造に対する、反射率対波長のグラフ表現である。
【図7】39層構造と13層構造間の、最大波長差(ΔX)と最大反射率差(ΔY)のグラフ表現である。
【図8】0度と45度の入射角に対する、13層周期構造と等価13層非周期的構造間のΔXの、低屈折率材料と高屈折率材料に対する屈折率値の関数としてのプロットである。
【図9】0度と45度の入射角に対する、23層周期構造と等価23層非周期的構造間のΔXの、低屈折率材料と高屈折率材料に対する屈折率値の関数としてのプロットである。
【図10】0度と45度の入射角に対する、13層周期構造と等価13層非周期的構造間のΔYの、低屈折率材料と高屈折率材料に対する屈折率値の関数としてのプロットである。
【図11】0度と45度の入射角に対する、23層周期構造と等価23層非周期的構造間のΔYの、低屈折率材料と高屈折率材料に対する屈折率値の関数としてのプロットである。
【図12】本発明の一実施形態に係る13層非周期構造の層に対する、層厚と屈折率のプロットである。
【図13】本発明の一実施形態に係る23層非周期構造の層に対する、層厚と屈折率のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、0度と45度間の角度から見た場合に、100nm未満の電磁波バンドを反射することが出来る、全方向反射器を開示する。言い換えると、この全方向反射器は、0度と45度間の角度から見た場合に、100nm未満の全方向バンドを有している。この全方向反射器は、高屈折率材料の複数の層と低屈折率材料の複数の層とを有する多層スタックを含んでいても良い。高屈折率材料の複数の層と低屈折率材料の複数の層は交互に重なり合いおよび/または互いに交差し、かつ、非周期構造が形成されるような厚さを持つことができる。ある場合には、0度と65度の間の角度から見た場合、この全方向バンドは100nm未満であり、その他の場合、全方向バンドは、0度と90度間の角度から見た場合に100nm未満である。
【0012】
高屈折率材料は、1.5と2.6を含む間の屈折率を有し、低屈折率材料は、0.75と2.0を含む間の屈折率を有することができる。ある場合には、多層スタックは少なくとも全体で3層を有し、別の場合には、多層スタックは少なくとも全体で7層を有することができる。さらに別の場合には、多層スタックは少なくとも19層を有する。
【0013】
非周期構造に関して、高屈折率材料の複数の層は、H1、H2、H3・・・Hnとして特定され、低屈折率材料の複数の層は、L1、L2、L3・・・Lmとして特定され、これらの層は、dH1、dH2、dH3・・・dHnとdL1、dL2、dL3・・・dLmとして特定される厚さを有する。さらに、厚さdH1は通常、厚さdH2、dH3又はdHnの少なくとも1個と同じではなく、厚さdL1は通常、厚さdL2、dL3又はdLmの少なくとも1個と同じではない。ある場合には、厚さdH1はdH2とdH3とは異なり、および/または、厚さdL1はdL2とdL3とも異なる。その他の場合、厚さdH1はdH2、dH3・・・及びdHnと異なり、および/または、厚さdL1はdL2、dL3・・・及びdLmと異なる。
【0014】
多層スタックは、フレーク(薄片)の形状であっても良く、このフレークは0.5と5μm間の範囲の平均厚さおよび/または5と5μm間の平均径を有していても良い。このフレークは、塗料および/または紫外保護被膜を提供するために、バインダー(結合剤)と混合されても良い。
【0015】
電磁波の狭いバンドを全方向に反射する方法も又開示される。この方法は、H1、H2、H3・・・Hnとして特定される高屈折率材料の複数の層と、L1、L2、L3・・・Lmとして特定される低屈折率材料の複数の層とを有する多層スタックを提供するステップを含む。異なる材料の層が交互に重なり合いおよび/または交互に交差する。高屈折率材料と低屈折率材料の複数の層は、それぞれ、dH1、dH2、dH3・・・dHn及びdL1、dL2、dL3・・・dLmとして特定される既定の厚さを有し、かつ、厚さdH1はdH2、dH3・・・および/またはdHnと異なり、さらに、厚さdL1は、dL2、dL3・・・および/またはdLmと異なっても良い。このようにして、多層スタックは非周期層構造を有することができる。
【0016】
広帯域電磁波源がさらに提供され、かつ、多層スタックを照明するために使用される。その後、100nm未満の全方向バンドが、0度から45度の角度から見た場合に、多層スタックから反射される。ある場合には、0度から65度の範囲の角度から見た場合、さらに別の場合には、0度から90度の範囲の角度から見た場合、100nm未満の全方向バンドは角度無依存である。全方向バンドは、可視光領域内であり、又は、紫外領域内であり或いは赤外領域内であり得る。さらに、多層スタックはフレーク(薄片)の形状であり、かつ、このフレークは、全方向構造色である塗料を作るために、バインダーと混合されても良く、或いはされなくても良い。
【0017】
発明性を有する多層スタックの開発を、理論的制約に捕らわれず、以下で議論する。等価層技術の研究において開発され、本発明におけるように全方向性に対処するのではない等価層理論では、単一の材料の光学特性は、予め設定された高及び低屈折率を有する3層構造の対称性のある組合せによって複製可能である、と述べている(Alexander V.Tikhonravov、Michael K. Trubetskov、 Tatiana V. Amotchkina、 and Alfred Thelen、 “Optical coating design algorithm based on the equivalent layers theory”Appl.Optics、45、7、1530、2006参照)。例えば、n1及びn2に等しい屈折率を有し、かつ、物理的厚さd1及びd2を有する3層2材料構造が、屈折率Nと厚さDを有する材料の1個の層に等価であることを、図2が示している。特性マトリックス(M)は構造光学特性の全てを記述することが可能であり、Herpinの理論は、等価のマトリックス(ME)を達成することが出来れば、等価単層構造は、3層構造と同一の光学特性を有し得る、と述べている。
【0018】
Eに対する解は、結果として、オリジナル構造に近似する、非固有の解集合を生じる。それで、以下の式1及び2に示すM及びMEに対する表現は、2個のマトリックスM及びMEの各マトリックス要素が互いに等しい、等価な3層構造の存在に対する基準を確立するために用いることができる。
【数1】

このようにすることによって、3層構造のために用いられる2個のマトリックスの構造パラメータに対して、以下の表現が導かれる。
【数2】

そして、理想的な全方向反射器のオリジナル設計が、異なる出発材料で作られた等価構造で複製することができる。
【0019】
以下に、全方向構造色を設計しおよび/または提供するために、等価層理論を使用する、説明的な事例について議論する。
【0020】
(事例)
屈折率2.89の高屈折率材料と屈折率2.5の低屈折率材料から出発し、4分の1波長厚み基準を使用して、与えられたターゲット波長λに対する高屈折率材料dHの厚さと低屈折率材料dLの厚さは、以下の式4から計算することができる。
H=λ/4nH、 dL=λ/4nL (4)
【0021】
ターゲット波長575nmを使用すると、高屈折率材料の層厚は約49.7nmとなり、低屈折率材料の層厚は約57.5nmとなる。このような構造の、結果的な波長対反射率は、MATLABのために書かれた一次元(1−D)フォトニック計算機(Photonic Calculator)を使用して生成することができる。この計算機は、1−D光学的層状媒質の反射率、透過率及び吸収率を計算するために、行列方法を使用する。
【0022】
異なる出発材料を用いた等価設計に関して、屈折率1.28の第1の材料と屈折率2.0の第2の材料が仮定された。さらに、50%のTEモードと50%のTMモードを有する自然光である照射電磁波に対して0度の入射角と、空気の移動媒体と、ガラス基板が仮定された。3個の等価層によってそれぞれのオリジナル層を置き換えた概略表現を図3に示す。この図に示すように、オリジナルプロトタイプの各層に置き換えて使用される各等価層の厚さが、決定すべき値となる。
【0023】
オリジナルプロトタイプの高屈折率材料に対する屈折率と低屈折率材料に対する屈折率の入力によって、シミュレーションを開始することができる。さらに、2個の材料の厚さを含めることができ、そして、1−Dフォトニック計算機が反射率対波長のプロットを生成することができる。
【0024】
各単層の光学特性に一致させるために3つの等価層を提供することに関して、第1の層と第3の層が等しいと仮定し、結果的な波長対反射率曲線をオリジナル基準と比較して、個々の等価層の厚さを変えることにより、最適化を行うことができる。オリジナル13層スタックの各層を3つの等価層で置き換えるシミュレーションの一例を、図4に示す。図4では、図3に示す全13層のオリジナル基準構造を、各オリジナル層を3個の等価層で複製している。従って、13×3=39層に対するシミュレーションを出発材料として選択し、ここで第1の材料(n1=1.28)と第2の材料(n2=2.0)の厚さを、1から500nmまで変化させた。図4は、第1の材料の厚さ99nmと第2の材料の厚さ14nmの等価39層構造の最適化が、オリジナル13層構造と比較した場合に、波長の関数としての反射率に対して同様の結果を提供したことを、示している。等価な39層構造はさらに、オリジナルな13層構造に存在する側波帯を大きく減少させる結果となる。このように、屈折率2.89の高屈折率材料と屈折率2.5の低屈折率材料を有する、オリジナルな2材料の13層構造が、屈折率2.0の高屈折率材料と屈折率1.28の低屈折率材料を有する2材料の39層構造と置き換え可能であることを示している。
【0025】
材料選択と製造技術に関して更なる柔軟性を持たせるために、層厚の最適化計算において層を結合しない概念を導入する。このように、オリジナル13層スタックの層を等価な3層スタックの繰り返しと置き換える以前の概念は放棄され、そして、各層は、その最終的な厚さを決定する、それぞれの乗数を有する。例えば、39層構造は、39個の異なる多重変数を有し、従って、それぞれが異なる厚さを有する39層を持つことができる。
【0026】
図5は、2個の材料を使用し、その一個は高屈折率(Nhigh)を有し、もう一個は低屈折率(Nlow)を有する、39層構造を示している。この図に示すように、これらの層のそれぞれの厚さは、乗数(Multi)に基準波長を掛けたものをそれぞれの屈折率と4又は8の何れかで割ったものに等しい。さらに、高屈折率材料の交互の層は、H1、H2、H3・・・Hnとして特定され、低屈折率材料の交互の層はL1、L2、L3・・・Lnとして特定される。さらに、各層は、図示するように、dH1、dH2、dH3・・・dHn及びdL1、dL2、dL3・・・dLmとして特定される厚さを有している。4分の1或いは8分の1の乗算を実施する必要はないが、しかし、この時例において、このような乗数は、以前の実験および/または計算の経験に単に基づいて、含まれた。
【0027】
以下の表1を参照すると、MATLABからの最適化ツールボックス内のLSQCURVEFIT(商標)を用いて、39層構造に対して決定された乗数値のリストが示されている。
【表1】

表1の乗数と、入射角0、15、30及び45度を使用して反射率の計算を行い、色変化、即ち反射バンドのシフトが異なる角度で起こるか否かを決定した。角度を増加させても平均波長は変化せず、その結果、真に全方向色となることが望ましい。図6に示すように、入射角が増加すると、計算は、平均反射波長の連続した“ブルーシフト”を示した。しかし、このシフトは75nm未満であり、従って、全方向構造色を示す非周期的層構造が提供された。
【0028】
全方向反射器を作るために使用することができる可能な材料の広範囲の評価を展開するために、“高”屈折率材料に対して1.4から2.3の範囲で、“低”屈折率材料に対して1.2から2.1範囲の屈折率を有する材料に対して、計算を行った。最適化パラメータは、オリジナルのプロトタイプと等価層設計の間で最大波長差(ΔX)の絶対値として、かつオリジナルのプロトタイプと等価層設計の間での最大反射率差(ΔY)の絶対値として、定義した。図7にΔXとΔYの例を示す。オリジナルなプロトタイプ構造と等価層設計に対するX及びY座標を、ΔX及びΔYを計算するために選択した。さらに、屈折率ペアの関数として、ΔX及びΔYを可視的に示すために、図8−11のようなプロットを展開し、以下に検討する。
【0029】
図8は、入射角0度と45度における、オリジナルの13層プロトタイプと等価13層非周期設計間のΔXにおける違いを示し、グラフに示す陰影を付した円の直径は、オリジナルプロトタイプと等価層設計間のΔXに比例している。陰影付きの円が大きくなれば成る程、ΔXの値が大きくなり、その結果、オリジナル13層プロトタイプとより低い屈折率を有する2個の材料で作られた等価非周期層設計との間の最大波長シフトも大きくなる。この方法で、オリジナル13層プロトタイプと等価非周期層設計間の最大波長において、小さな相違が存在する屈折率ペアを、容易に識別することができる。同様に、図9は、入射角が0度と45度における、オリジナル23層プロトタイプと等価23層非周期設計間のΔXを示している。
【0030】
図10及び11を参照すると、13層および23層オリジナルプロトタイプと等価13層及び23層非周期層設計間のΔYがそれぞれ、入射角0度と45度に対して屈折率ペアの関数として示されている。図8及び9と同様に、図10及び11を再検討することによって、オリジナル多層プロトタイプと等価非周期多層設計間のΔXとΔYにおいて、差が小さな屈折率ペアを識別することができる。例えば、図8−11を検討することによって、1.5から1.7の範囲の屈折率を有する第1の材料と2.0から2.3の範囲の屈折率を有する第2の材料が、約575nmに中心を有する色/反射バンドを有する全方向構造色を提示する、非周期多層スタックを作るのに適していることが分かる。
【0031】
ターゲットの反射バンド(即ち、異なる色)を変えること或いは異なるものを選択することで、図8−11に示す実際の傾向を変化させることが好ましい。しかしながら、傾向は依然として存在し、その結果、適切な屈折率ペアの識別が提供される。
【0032】
非周期的全方向構造色に対して実際の設計厚さを示す図12は、屈折率2.0を有する第1の材料と屈折率1.6を有する第2の材料とから形成される13層非周期的多層に対して、厚さの概略プロットを示している。種々の層の厚さを細長い四角によって示しており、この四角は左側のY軸に対応し、各層の屈折率を黒い菱形で示し、これは右側のY軸に対応する。同様に、屈折率2.2の第1の材料と屈折率1.7の第2の材料を使用して作られた23層非周期全方向構造色に対する層厚が、図13に示されている。
【0033】
この方法で、以前に入手可能なものよりも大きな範囲の材料を使用して、殆ど全ての所望の波長に対して、全方向構造色を設計し、製造することができる。このような材料は、金属、半導体、セラミック、ポリマー及びそれらの組合せを含む。より大きな範囲の材料を使用する機会は、所望の多層スタック/構造を作るために、より広い範囲の製造技術を利用可能とする。
【0034】
本発明は、上記の事例に限定されるものではない。これらの事例は、発明の範囲を限定することを意図するものではなく、ここに記載された方法、装置、構成、材料などは、例示的であり、発明の範囲を限定するべく意図されたものではない。当業者は、変更及び他の使用方法を実施しうる。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高屈折率材料H1、H2、H3・・・Hnの複数の層と低屈折率材料L1、L2、L3・・・Lmの複数の層を有する多層スタックであって、前記高屈折率材料の複数の層と低屈折率材料の複数の層は、互いの上に交互に積層されている、多層スタックを備え、
前記高屈折率材料の複数の層と前記低屈折率材料の複数の層はそれぞれ、予め定義された厚さdH1、dH2、dH3・・・dHnとdL1、dL2、dL3・・・dLmを有し、前記多層スタックが非周期的層構造を有するように、前記厚さdH1は通常、前記dH2、dH3・・・又はdHnとは等しくなく、かつ前記厚さdL1は通常、前記dL2、dL3・・・又はdLmとは等しくなく、さらに、
前記多層スタックは、0度と45度間の角度から見た場合に100nmよりも小さい全方向バインドを有する、全方向反射器。
【請求項2】
請求項1に記載の全方向反射器において、前記多層スタックは、0度と65度間の角度から見た場合、100nm未満の全方向バンドを有する、全方向反射器。
【請求項3】
請求項1に記載の全方向反射器において、前記多層スタックは、0度と90度間の角度から見た場合、100nm未満の全方向バンドを有する、全方向反射器。
【請求項4】
請求項1に記載の全方向反射器において、前記高屈折率材料は1.5と2.5を含むその間の屈折率を有し、前記低屈折率材料は0.75と1.75を含むその間の屈折率を有する、全方向反射器。
【請求項5】
請求項1に記載の全方向反射器において、前記多層スタックは少なくとも全体で3層を有する、全方向反射器。
【請求項6】
請求項1に記載の全方向反射器において、前記多層スタックは少なくとも全体で7層を有する、全方向反射器。
【請求項7】
請求項1に記載の全方向反射器において、前記多層スタックは少なくとも全体で13層を有する、全方向反射器。
【請求項8】
請求項1に記載の全方向反射器において、前記厚さdH1は通常、前記厚さdH2及びdH3に等しくなく、かつ前記厚さdL1は通常、前記dL2及びdL3に等しくない、全方向反射器。
【請求項9】
請求項1に記載の全方向反射器において、前記厚さdH1は通常、前記厚さdH2、dH3・・・及び厚さdHnと等しくない、全方向反射器。
【請求項10】
請求項1に記載の全方向反射器において、前記厚さdL1は通常、前記厚さdL2、dL3・・・及びdLmとは等しくない、全方向反射器。
【請求項11】
請求項1に記載の全方向反射器において、前記厚さdH1は通常、前記厚さdH2、dH3・・・及びdHnと等しくなく、かつ、前記厚さdL1は通常、前記厚さdL2、dL3・・・及びdLmと等しくない、全方向反射器。
【請求項12】
請求項1に記載の全方向反射器において、前記多層スタックはフレークの形状である、全方向反射器。
【請求項13】
請求項12に記載の全方向反射器において、前記フレークは0.5から5μm間の範囲の平均厚さを有している、全方向反射器。
【請求項14】
請求項12に記載の全方向反射器において、前記フレークは5から50μmの範囲の平均径を有している、全方向反射器。
【請求項15】
請求項12に記載の全方向反射器において、前記フレークは、塗料を作るために、バインダーと混合されている、全方向反射器。
【請求項16】
請求項12に記載の全方向反射器において、前記フレークは、紫外保護被膜を作るために、バインダーと混合されている、全方向反射器。
【請求項17】
電磁波の狭いバンドを全方向に反射させるための方法において、前記方法は、
互いに交互に積層された、高屈折率材料H1、H2、H3・・・Hnの複数の層と低屈折率材料L1、L2、L3・・・Lnの複数の層を有する、多層スタックを提供し、
前記高屈折率材料の複数の層と前記低屈折率材料の複数の層は、それぞれが、予め定義された厚さdH1、dH2、dH3・・・dHnとdL1、dL2、dL3・・・dLmを有し、前記多層スタックが非周期的層構造を有するように、前記厚さdH1は通常、前記厚さdH2、dH3・・・或いはdHnとは等しくなく、前記厚さdL1は通常、前記厚さdL2、dL3・・・或いはdLmとは等しくなくされており、
広帯域電磁波源を提供し、
前記多層スタックを前記広帯域電磁波源に暴露し、さらに
0度から45度の角度から見た場合に前記多層スタックによって前記電磁波の100nm未満の全方向バンドを反射する、各ステップを備える、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記厚さdH1は通常、厚さdH2及びdH3とは等しくなく、前記厚さdL1は通常、前記厚さdL2及びdL3とは等しくない、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、前記多層スタックはフレークの形状である、方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法において、前記電磁波の100nm未満の前記全方向バンドは可視光領域内である、方法。
【請求項21】
請求項17に記載の方法において、前記電磁波の100nm未満の前記全方向バンドは紫外領域内である、方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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