説明

全細胞生体触媒によりスクロース−6−アセテートを生成する方法

【課題】 TGSの単離及び精製が出来るだけ簡単になるように、他のモノアシル化物又はより高次のアシル化物を形成することなくスクロース−6−アセテートを生成する生成プロセスが望ましい。
【解決手段】 トリクロロガラクトスクロース合成の中間体である6−O−保護されたスクロース生成のための、スクロースと6−O−保護されたグルコースとの反応を触媒するために、アウレオバシジウム・プルランスを含む、フルクトシルトランスフェラーゼ群の酵素を精製可能な微生物の、固定化された又は固定化されていない全細胞調製を用いるプロセスが説明される。6−O−保護されたスクロースは、500ダルトン以上の分子量を有する、高い分子量の反応の副生成物から、逆浸透を用いて分離され、カラムクロマトグラフィによってさらに精製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間体であるスクロース−6−アセテートの生成のために全細胞生体触媒を用いることを含む、1’−6’−ジクロロ−1’−6’−ジデオキシ−β−フルクトフラノシル−4−クロロ−4−デオキシ−ガラクトピラノシド(TGS)を生成する新規方法及び新規方針に関する。
【背景技術】
【0002】
4,1’,6’トリクロロガラクトスクロース(TGS)の従来の生成方法の方針は、主に、6−O−保護された(6位のヒドロキシル基を保護された)スクロースを塩素化して6アセチル4,1’,6’トリクロロガラクトスクロースを生成するために、種々の塩素化剤、例えばオキシ塩化リン、塩化オキサリル、五塩化リン等、及び、ジメチルホルムアミド(DMF)等の第3級アミド等由来のビルスマイヤー・ハック試薬を用いることにより、6−O−保護されたスクロースを塩素化することに関するものである。前記塩素化反応の後、反応マスは、カルシウム、ナトリウム等の適切なアルカリ性水酸化物を用いてpH7.0〜pH7.5に中和される。その後、中和された反応マスのpHはさらに9.5以上に上げられ、6アセチル4,1’,6’トリクロロガラクトスクロースを脱アシル化/脱アセチル化して、4,1’,6’トリクロロガラクトスクロース(TGS)を生成する。
【0003】
本発明は、微生物生体触媒により、塩素化糖である4,1’,6’トリクロロガラクトスクロースを製造するための重要な中間体であるスクロース−6−アセテートを生成することに関する。
【0004】
スクロース−6−アセテートは、TGS生成のための上記スキームにおける重要な中間体である。Mufti他(1983)は、特許文献1において、無水酢酸のピリジン溶液における、−20℃未満でのスクロースのアシル化反応の主要生成物がスクロース−6−アセテートであるプロセスを報告した。不純物は、他のモノアシル化物及びいくつかのより高次のアシル化物を含む。このプロセスは、所望のモノアシル化物を純粋な形で他から単離及び取得するか、又はこれらすべてのアシル化物を塩素化し、TGSを他の塩素化された糖から分離する手段を考案することに依存していた。
【特許文献1】米国特許第4380476号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
TGSの単離及び精製が出来るだけ簡単になるように、他のモノアシル化物又はより高次のアシル化物を形成することなくスクロース−6−アセテートを生成する生成方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[発明の概要]
本発明の実施形態は、フルクトシルトランスフェラーゼを生成可能な微生物由来の全細胞マスを含むバイオマスを用いて、フルクトシル二糖類から受容体単糖類又は受容体単糖類の誘導体へのフルクトース部分の転移を触媒して、フルクトシル二糖類又はフルクトシル二糖類の誘導体を生成する方法を説明する。
【0007】
本発明の好適な実施形態は、微生物生体触媒により、塩素化糖である4,1’,6’トリクロロガラクトスクロースを製造するための重要な中間体であるスクロース−6−アセテートを生成することに関する。本実施形態は、アウレオバシジウム・プルランス(ド・バリー)アルノーの全細胞によって生体触媒されたグルコース−6−アセテート又は各6−O−保護されたグルコースから、スクロース−6−アセテート及び類似化合物を作製する方法を説明する。こうして得られたスクロース−6−アセテートを、膜濾過を用いて、より高い分子量の糖類から分離し、ハロゲン化糖類の生成に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
様々な微生物によって生成される、種々の異なるタイプのフルクトシルトランスフェラーゼ酵素が存在する。様々な生成源からの種々のフルクトシルトランスフェラーゼの挙動は、「Enzyme and microbial technology」19, 107-117, 1996に記述されている。
【0009】
フルクトシルトランスフェラーゼ群を代表する酵素であるレバンスクラーゼは、スクロースにおけるグルコース−フルクトース結合を分断して、フルクトースを受容体糖に転移させるプロセスを繰り返すことによって、ポリフルクトース誘導体であるレバンの形成を触媒することで知られている。したがって、その受容体糖がスクロース自体である場合、それは高分子量のフルクトース鎖を形成する。Biochem. J. 69(1958), pp. 388-398におけるHestrin and Avigadの著作は、その能力の度合いは様々であるが、様々な糖類が、レバンの形成と競合して形成を阻害する良好なフルクトース受容体として作用したことを示している。置換グルコースは不良な受容体と見なされた。しかしながら、受容体の比率に対してフルクトースドナー(すなわち、スクロース)の比率が高く(典型的には5:1〜10:1)、濃度が低いときには、置換グルコースも受容体として機能し得ることが示された。したがって、Kunst他は、Eur. J. Biochem. 42, 611-620 (1974)において、バシラス・サブティリス、マールブルグ株168の変異体から誘導された酵素を用いて、D−グルコース6−リン酸塩を受容体としてスクロースと共に用いることに成功した。同様に、英国特許第2046757号は、種々のアルドース出発材料を、受容体としてスクロース又はラフィノースと共に用いることを開示した。ここでは、アクチノミセスビスコサス及びB.サブティリス(株ATCC6051、すなわち、マールブルグ株)を含む種々の微生物から誘導されたレバンスクラースが用いられた。しかしながら、この特許出願では、おそらく鎖形成反応を最小にするために、アルドースは常に未誘導体化糖であり、ドナーと使用された受容体とのモル比は1:5であった。
【0010】
Rathbone他(1986)は、米国特許第4617269号において、スクロース又はラフィノース又はスタキオースの存在下で、また、こうしたプロセスにおいて使用されるフルクトシルトランスフェラーゼはバクテリアから単離されるという特別な制限の下で、対応する6−誘導体化されたグルコース又はガラクトースをフルクトシルトランスフェラーゼと反応させることによって、6−誘導体化されたスクロース誘導体を生成するプロセスを主張した。
【0011】
本発明の実施形態では、フルクトース部分をスクロースからグルコース−6−エステルに転移させてスクロース−6−エステルを生成するために、微生物の全細胞生成が首尾よく用いられる。上記微生物は、フルクトシルトランスフェラーゼ群の1つ又は複数の酵素を合成可能である。これらの微生物の全細胞は、濾過、遠心分離等を含む簡単な分離プロセスによって反応混合物から分離しやすい。こうした大まかな生成でも、転換の収率は非常に良好であり、方法の経済性及び利便性を向上させることが分かった。好適な実施形態では、グルコース−6−アセテートをスクロースと反応させることによりスクロース−6−アセテートの生成を達成するための生体触媒として、酵母アウレオバシジウム・プルランス(ド・バリー)アルノーが用いられる。しかしながら、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・シドウィ、アウレオバシジウム属、アスペルギルス・ニガー、ペニシリウム・ロックフォルティ、ストレプトコッカス・ミュータンス、ペニシリウム・ジャンセゾウスキー、サッカロマイセス、バシラス・サブティリス、エルビニア等を含むがこれらに限定されない、アウレオバシジウム・プルランスと同じ挙動及び機能を示す任意の他の微生物を本発明の実施形態の方法において用いてもよい。
【0012】
アウレオバシジウム・プルランスのコロニーの特性は、麦芽エキス寒天において急速に成長し、平滑となり、その後すぐに、クリーム色又はピンク、そしてほとんどが後に茶色又は黒色となる粘液性の浸出液に覆われるということである。
【0013】
微生物アウレオバシジウム・プルランスからの酵素は、様々な種類の受容体としての単糖類、糖アルコール、アルキルアルコール、配糖体、オリゴ糖等の存在下でスクロースに作用し、フルクトシル基を、非常に広い受容体特異性を示す受容体分子に転移させる。アウレオバシジウム・プルランスからの酵素は、スクロース、ネオケストース、キシルスクロース、ラフィノース及びスタキオースの分解において活性である。全細胞の反応は、銀イオン、水銀イオン、亜鉛イオン、銅イオン及び錫イオンの阻害効果の影響を受けやすい。
【0014】
上記受容体分子は、以下のうちのいずれかであり得る:D−アラビノース、L−フルクトース、6−デオキシグルコース、6−O−メチルガラクトース、グルコース−6−アセテート、グルコース−6−プロピオネート、グルコース−6−ラウラート、メリビオース、ガラクトース、キシロース、グルコース−6−ホスファート、グルコース−6−グルタラート、ラクトース、ガラクトース−6−アセテート、マンノース、マルトース、1−チオ−グルコース、マルトトリオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、イソマルトース、L−アラビノース、リボース、リキソース、グルコン酸、L−ラムノース、6−O−メチルグルコース、メチル α−D−グルコサイド、キシリトール、グリセロール等。アウレオバシジウム・プルランス(ド・バリー)アルノーは、微生物、酵母の1つであり、フルクトシルトランスフェラーゼ(SST)酵素を生成し、細胞内及び細胞外の両方で見られる。アウレオバシジウム培養液からの酵素は、フルクトシル転移反応において非常に位置特異的である。本発明の実施形態では、フルクトシルトランスフェラーゼを生成するアウレオバシジウム培養液、ATCC9348が、スクロースを6−O−アセチルグルコースと反応させることによるスクロース−6−アセテートの生成を実行するために用いられる。生成された他のより高い分子量の糖類は、分子分離及びクロマトグラフィ技術によってスクロース−6−アセテートから分離される。
【0015】
フルクトシルトランスフェラーゼは、適切な培地を用いて72時間水中で発酵させることによって、アウレオバシジウム・プルランスにより生成される。本発明の実施形態では、酵素は微生物から単離されず、代わりに全細胞が用いられて触媒を達成する。本発明の実施形態では、遠心分離及び脱イオン水による洗浄によって、微生物細胞を液体培地から単離することが好ましい。しかしながら、臨界成長の段階を達成した後、トランスフルクトシル反応を実行するのに十分なバイオマスを生成するために、ドナー、及びトランスフルクトシル反応の受容体、及び反応終了後に単離及び生成される反応の生成物を溶解するための培地として、分離されることなく残った培地自体と共に細胞が使用されることが考えられる。
【0016】
微生物細胞は、緩衝液中にスクロース及びグルコース−6−アセテートを含有する反応培地に直接懸濁される。反応のために用いられるスクロースに対するグルコース−6−アセテートは2:0.5である。攪拌しながら反応が維持され、スクロース−6−アセテートの形成がHPLCにより観察される。所望の生成物の形成に影響を及ぼすおそれのある副反応を避けるために、コンデュリトール−B−エポキシド、トレスタチン等のインベルターゼ阻害剤を含むがこれらに限定されない適切な添加剤が反応物に添加される。スクロース−6−アセテートの適切な滴定値が得られるとすぐに、攪拌が中止され、反応混合物は微生物を分離するために濾過される。
【0017】
その後、スクロース−6−アセテート及び他のより高分子量の糖類を含有する濾液を分子分離させる。ここでは、適切な膜分離システムを用いて500ダルトンよりも高い分子量の分子が分離される。低分子量の糖類は濃縮される。得られたスクロース−6−アセテートの純度は60%だということが分かった。水を移動相として用いる、シラン化シリカによるクロマトグラフィによって、さらなる精製が実行された。
【0018】
上記の反応は、スクロース対グルコース−6−アセテートの比を一定に維持して、反応を順方向に保つことにより、継続させることができる。また、反応物から分離された微生物細胞は、酵素の活性に応じて再利用することができる。
【0019】
従来技術において既知のいくつかの全細胞固定化方法のうちの1つにより、微生物細胞のマスを固定化することもできる。ここで用いられた例示的な方法は、Geri, B., Sassi, G., Specchia, V., Bosco, F. and Marzona, M.著、Process Biochem., 1991, 21,331-335を採用したものである。
【0020】
精製されたスクロース−6−アセテートは、TGSの生成のために塩素化される。
【0021】
以下に記述するのは、本発明の範囲を決して限定することなく、本発明の実施形態の動作を例示する実施例である。記載される反応物、用いられる反応物の比率、反応条件の範囲は例示に過ぎず、それらの類似の反応物、反応条件、及び類似の包括的性質の反応にまで範囲が拡大される。概して、塩素化スクロースの生成分野の当業者にとって明らかな任意の均等な代替物は、本明細書の範囲内に包含される。したがって、「アセテート」への言及は、同じ機能を実行することができる任意の均等なアシル基を包含し、置換グルコースを用いることは、類似の反応条件下で類似のタイプの反応を起こす任意の置換アルドースを包含するものとする。当業者には実施形態のいくつかの他の適応例が容易に予期されるであろう。これらの適応例も本明細書の範囲内に包含される。単数形での言及は、その文脈において特に指定されない限り、その複数形も包含するように解釈される。すなわち、抽出に「有機溶媒(an organic solvent)」を用いることは、1つ又は複数の有機溶媒を順に、又は混合物として組み合わせて用いることを包含する。
【実施例1】
【0022】
[生体触媒のためのアウレオバシジウム細胞の成長]
実験において、ATCC9348から得られた1ループのアウレオバシジウム培養液をスラントから接種することによって、アウレオバシジウム培養液の純粋な培養液を200mlの振盪フラスコ内で成長させた。「Maida」(インド製の精製小麦粉)大豆粉、酵母エキス、リン酸塩及び塩素化合物を用いて、最適レベルの炭素源及び窒素源から成る培養液培地を生成した。培養液を、ロータリーシェイカー内で200RPMで48時間成長させた。
【0023】
良好に成長した細胞を、第2段階の成長培養液に移し、成長を120時間継続させた。120時間後に得られたブロスを8000RPMで遠心分離して細胞を分離した。細胞に付着しているすべての培地成分を除去するために、細胞を緩衝液で2度洗浄した。その後、細胞を冷凍し、次に使用されるまで凍結乾燥した。
【実施例2】
【0024】
[アウレオバシジウム細胞による、グルコース−6−アセテートのスクロース−6−アセテートへの転換]
100gのグルコース−6−アセテート及び380gのスクロースが反応に用いられた。反応物を、pH6.5〜7.0の酢酸ナトリウム緩衝液1.2リットルに溶解した。溶液を攪拌し続けた。250gの凍結乾燥したアウレオバシジウム細胞を溶液に懸濁し、温度を35℃までわずかに上昇させた。インベルターゼ活性を阻害するために、0.25gのトレスタチンを反応マスに添加した。
【0025】
スクロース−6−アセテートの形成をHPLCにより観察した。90時間の反応時間の後、反応混合物における45gのスクロース−6−アセテートの形成が記録された。反応をさらに120時間まで継続させ、転換のために添加されたグルコース−6−アセテートの最大45%が転換された。
【0026】
反応物を濾過して、懸濁した細胞を除去し、逆浸透分離によってスクロース−6−アセテートを単離した。RO(Reverse osmosis:逆浸透)膜は、グルコース又はフルクトース等のすべての低分子量の化合物を分離し、高分子量の化合物は保持された。その後、保持された化合物を再び水で1:5になるように希釈し、ナノ濾過して、500ダルトンよりも高い分子量の分子を除外し、透過物を収集した。この収集された透過物は主に、スクロース−6−アセテート、及び分子量が350〜400ダルトン以内の他の化合物であった。これらの化合物は再びRO濾過され、20%よりも高い濃度に濃縮された。ここで、スクロース−6−アセテートの純度は約85%であり、その後、シラン化シリカゲルカラムにロードされた。
【0027】
用いられた移動相は、pH9.0〜9.5のアセテート緩衝液であり、純粋なスクロース−6−アセテートのフラクションが分離され、さらに濃縮及び水除去された。水の完全な除去後、スクロース−6−アセテートをDMFに入れ、塩素化した。
【0028】
単離されたスクロース−6−アセテートは純度90%であり、これはTGSの生成に用いられた。
【実施例3】
【0029】
[Eudragit RL100(アクリル樹脂のコポリマー)に固定化されたアウレオバシジウム細胞による、グルコース−6−アセテートのスクロース−6−アセテートへの転換]
アウレオバシジウム細胞は、以下の方法によりEudragit RL100に固定化された。
【0030】
遠心分離により分離された350gのアウレオバシジウム細胞を、350gのアルギン酸ナトリウムと混合し、ビーズのように押出成形することにより、アルギン酸ナトリウムに封入した。これらのビーズをその後、ポリアクリル樹脂のコポリマーであるEudragit RL100で被覆した。
【0031】
100gのグルコース−6−アセテート及び380gのスクロースを反応に用いた。反応物を、pH6.5〜7.0の酢酸ナトリウム緩衝液1.2Lに溶解した。溶液を攪拌し続けた。Eudragit RL100に固定化されたアウレオバシジウム細胞175gをこの溶液に添加し、温度を45℃までわずかに上昇させた。
【0032】
スクロース−6−アセテートの形成をHPLCにより観察した。75時間の反応時間の後、反応混合物における52gのスクロース−6−アセテートの形成が記録された。反応をさらに100時間まで継続させ、最大62gのスクロース−6−アセテートの転換が達成され、これは出発スクロースの32%であった。
【0033】
反応物を濾過して、懸濁した細胞を除去し、逆浸透分離によってスクロース−6−アセテートを単離した。RO膜は、グルコース又はフルクトース等のすべての低分子量の化合物を分離し、高分子量の化合物は保持された。その後、保持された化合物を再び水で1:5になるように希釈し、ナノ濾過して、500ダルトンよりも高い分子量の分子を除外し、透過物を収集した。この透過物は主に、スクロース−6−アセテート、及び分子量が350〜400ダルトン以内の他の化合物であった。これらの化合物を再びRO濾過して、20%よりも高い濃度に濃縮した。ここで、スクロース−6−アセテートの純度は約85%であり、その後、シラン化シリカゲルカラムにロードされた。
【0034】
用いられた移動相は、pH9.0〜9.5のアセテート緩衝液であり、純粋なスクロース−6−アセテートのフラクションが分離され、さらに濃縮及び水除去を受けた。水の完全な除去後、スクロース−6−アセテートをDMFに入れ、塩素化した。単離されたスクロース−6−アセテートは純度92%であり、これはTGSの生成に用いられた。
【実施例4】
【0035】
[TGS生成のための、ビルスマイヤー試薬を用いたスクロース−6−アセテートの塩素化]
275mlのジメチルホルムアミドを3リットルの反応フラスコ内に入れ、0〜5℃に冷却した。その後、反応マスの温度を30度未満に維持しつつ、158gの5塩化リンを攪拌しながらゆっくりと添加してビルスマイヤー試薬を形成した。このマスをさらに0℃未満に冷却し、実施例1において生成したスクロース−6−アセテートを0〜5℃においてゆっくりと添加した。その後、この反応マスを80℃まで過熱してそのまま1時間保ち、さらに100℃まで加熱して6時間保ち、最後に110〜115℃に加熱して2〜3時間保った。反応の進行をHPLC分析により観察した。
【0036】
その後、反応混合物を−5〜−8℃に冷却し、このマスのpHが5.5〜6.5になるように、水酸化ナトリウムの20%溶液をゆっくりと添加した。これは、生成物を酢酸型に維持するために行われた。酢酸型により、所望の生成物が有機溶媒に分離しやすくなるためである。この方法によって得られた収率は、スクロース−6−アセテート投入量の42.3%であった。
【実施例5】
【0037】
[Eudragit RL100(アクリル樹脂のコポリマー)に固定化されたアウレオバシジウム細胞によるグルコース−6−ベンゾエートのスクロース−6−ベンゾエートへの転換]
pH6.5の酢酸ナトリウム緩衝液で、グルコース−6−ベンゾエートの3%溶液(600ml)を生成した。この溶液を、蠕動ポンプを用いて、アウレオバシジウム細胞を封入した12gのEudragit RL100を充填したカラム(直径2cm×高さ8cm)に注送した。カラムからの流出物を、フィードフラスコに再送した。流量は5ml/分に維持した。60gのスクロースをフィードフラスコに添加して溶解し、常に攪拌し続けた。
【0038】
グルコース−6−ベンゾエートからスクロース−6−ベンゾエートへの転換及び他の不純物の形成を定期的に分析しながら、反応を36時間継続した。36時間の終了時、1.2gのスクロース−6−ベンゾエートが形成され、反応は停止された。溶液において見積もられたグルコース−6−ベンゾエートは1%未満であることが分かり、これに新たなグルコース−6−ベンゾエートを添加することで3%にした。pHも6.5に調整して、反応を継続した。これにより、72時間の終了時に、3.6gのスクロース−6−ベンゾエートの転換が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルクトシル二糖類からフルクトシル二糖類又はその誘導体のエステルを生成する方法であって、
(a)フルクトシルトランスフェラーゼ生成微生物のバイオマスの存在下で、前記フルクトシル二糖類を、アルドースの対応するエステル又はアルドースの誘導体の対応するエステルと接触させて、前記フルクトシル二糖類又はその誘導体の前記エステルを生成し、
(b)前記フルクトシル二糖類又はその誘導体の前記エステルを単離する
生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生成方法であって、
前記フルクトシル二糖類誘導体は、スクロース−6−アセテート、スクロース−6−ベンゾエート、6−O−メチルスクロース、6−デオキシスクロース、ガラクトスクロース、キシルスクロース、スクロース−6−グルタラート、スクロース−6−プロピオネート、スクロース−6−ラウラート等を含む1つ又は複数のエステルを含み、
前記フルクトシル二糖類は、スクロース、ラフィノース及びスタキオースのうちの1つ又は複数を含み、
前記アルドースのエステル又は前記アルドースの誘導体の対応するエステルは、グルコース、ガラクトース、グルコース−6−アセテート、グルコース−6−ベンゾエート、スクロース−6−ブチレート、スクロース−6−グルタラート、スクロース−6−ラウラート、スクロース−6−プロピオネート、スクロース−6−ベンゾエート等のうちの1つ又は複数を含み、
前記フルクトシル二糖類の前記単離は、濾過、逆浸透、ナノ濾過、カラムクロマトグラフィ等を含む単離及び精製の1つ若しくは複数の方法又は方法の組み合わせにより達成される
生成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の生成方法であって、
前記微生物は、アウレオバシジウム・プルランス、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・シドウィ、アウレオバシジウム属、アスオペルギルス・ニガー、ペニシリウム・ロックフォルティ、ストレプトコッカス・ミュータンス、ペニシリウム・ジャンセゾウスキー、サッカロマイセス、バシラス・サブティリス、エルビニア等を含む1つ又は複数のフルクトシルトランスフェラーゼ生成微生物を含む
生成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の生成方法であって、
前記アウレオバシジウム・プルランスの全細胞のバイオマスは、
(c)急速な成長を促進させるのに十分な栄養分を含んだ液体培地において、純粋な培養物から継代培養を繰り返し、
(d)1つ又は複数の分離方法によって、好ましくは遠心分離によって前記培地から細胞を分離し、
(e)好ましくは、前記培地を含有しない前記細胞を洗浄し、
(f)触媒のために、全細胞マスを、そのまま用いるか、又は精製後に用いるか、又は凍結乾燥を含む保存工程後に用いる
ことによって生成される
生成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の生成方法であって、
前記全細胞のバイオマスは、自由形態、又は1つ若しくは複数の固相担体に固定化された形態で用いられる
生成方法。
【請求項6】
請求項5において、6−O−保護されたスクロース、好ましくはスクロース−6−アセテート又はスクロース−6−ベンゾエートを生成する方法であって、
(g)自由形態か、又はアクリル樹脂のコポリマーであるEudragit RL100で被覆されたアルギン酸ビーズへの固定化を含む固定化方法によって固定化された形態のアウレオバシジウム・プルランスの凍結乾燥したバイオマスの存在下で、スクロースと、6−O−保護されたグルコース、好ましくはグルコース−6−アセテート又はグルコース−6−ベンゾエートとを接触させ、さらに好ましくは振盪しながら接触させ、
(h)分離方法、好ましくは濾過によって、自由形態か又は固定化された形態の細胞のバイオマスを除去し、
(i)形成された6−O−保護されたスクロースの単離のために、プロセスストリームを逆浸透にかける
生成方法。
【請求項7】
請求項5において、6−O−保護されたスクロース、好ましくはスクロース−6−アセテート又はスクロース−6−ベンゾエートを生成する方法であって、
(g)固相担体に固定化されたアウレオバシジウム・プルランスのバイオマスをカラムに充填し、
(h)スクロース及び6−O−保護されたグルコースの溶液を繰り返し通過させて6−O−保護されたスクロースを形成し、
(i)前記6−O−保護されたスクロースをプロセスストリームから分離する
生成方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の生成方法であって、
(j)6−O−保護されたスクロース及び不純物を含有する化合物を得るために、6−O−保護されたスクロースを含有する前記プロセスストリームを逆浸透にかけて、グルコース、フルクトース等を含む1つ又は複数の低分子量の成分を除去し、
(k)6−O−保護されたスクロースを主に含有する浸透物を得るために、前記化合物を、好ましくは1:5に希釈した後にナノ濾過して、分子量が500ダルトンよりも大きい化合物を除去し、
(l)6−O−保護されたスクロースを含有する前記透過物を逆浸透にかけて、約20%以上に濃縮し、
(m)前記濃縮された透過物を、カラムクロマトグラフィによりさらに精製及び単離する
生成方法。
【請求項9】
請求項8に記載のカラムクロマトグラフィの方法であって、
前記濃縮された透過物は、
(n)約pH9.0〜9.5のアルカリ性緩衝液、好ましくはアセテート緩衝液を移動相として用いてシラン化シリカゲルカラムにロードされ、
(o)スクロース−6−アセテートを純粋なフラクションとして単離する
カラムクロマトグラフィ方法。

【公表番号】特表2009−508518(P2009−508518A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531891(P2008−531891)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際出願番号】PCT/IN2006/000384
【国際公開番号】WO2007/054972
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(507279428)ファームド メディケア プライヴェート リミテッド (4)
【Fターム(参考)】