説明

全芳香族ポリアミドフィラメントの製造方法及び当該方法によって製造された全芳香族ポリアミドフィラメント

全芳香族ポリアミドフィラメントの製造方法及び当該方法によって製造される全芳香族ポリアミドフィラメントを開示する。本発明の方法は、紡糸ドープ製造用押出機内に全芳香族ポリアミド重合体を投入する時点を、全芳香族ポリアミド重合体の粒子サイズ及び/又は固有粘度(IV)に基づいて調節することを特徴とする。
本発明によれば、紡糸ドープ製造工程中、硫酸溶媒による全芳香族ポリアミド重合体の脆化を著しく抑制することによって、全芳香族ポリアミドフィラメントの強度、特に側面衝撃強度を向上されることができ、また重合工程中に必然的に発生する低IVの重合体をも使用でき、それによって製造コストをが節減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全芳香族ポリアミド(本明細書中、“アラミド”と称する場合がある。)フィラメントの製造方法及び当該方法によって製造されたアラミドフィラメントに関する。より詳細には、フィラメント製造工程中で紡糸ドープを製造する際に、溶媒で使用される硫酸に起因する重合体の脆性を著しく抑えられることを特徴とする、高強度アラミドフィラメントの製造方法及び当該方法によって製造されたアラミドフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
全芳香族ポリアミドフィラメントは米国特許第3,869,492号及び米国特許第3,869,430号などの公知文献に記載されているように、芳香族ジアミン(aromatic diamine)と芳香族二塩基酸塩化物(aromatic diacid chloride)をN−メチル−2−ピロリドン(N-methyl-2-pyrrollidon)を含む重合溶媒中で重合させて全芳香族ポリアミド重合体を製造する工程と、前記重合体を濃硫酸溶媒に溶解させて紡糸原液を製造する工程と、前記紡糸原液を紡糸口金(40)を通して紡糸し、紡糸物を得る工程と、当該紡糸物を非凝固性流体層を通じて凝固液浴槽内(50)へ通過させてフィラメントを形成する工程と、前記フィラメントを水洗、乾燥及び熱処理工程を経って製造される。
【0003】
図2は、乾湿式紡糸方式で全芳香族ポリアミドフィラメントを製造する従来方法の概略図である。
【0004】
従来方法では、通常、前記の紡糸ドープ製造用押出機(Extruder)内に2以上のアラミド重合体を同時に投入する。したがって、当該方法は、一定の粒子径が75〜850μmであり、固有粘度(IV)が5.5以上、より好ましいのは6.0以上であるアラミド重合体を必要とする。
【0005】
より具体的には、粒子径が75μm以下であるか、固有粘度が5.0未満であるアラミド重合体は、硫酸溶媒によく溶解されるが、硫酸溶媒によって著しく脆くなり、それによって、アラミドフィラメント製造の際に、強度、特に側面衝撃強度が顕著に低下してしまう。
【0006】
さらに、従来方法に従って、粒子径が比較的大きいアラミド重合体と粒子径が比較的小さいアラミド重合体を同時に紡糸ドープ製造用の押出機内に投入する場合、前記各アラミド重合体の押出機内の滞留時間は、粒子径が相対的に大きいアラミド重合体が硫酸溶媒に完全に溶解する時間に応じて長くなる。その結果、粒子径が比較的小さいアラミド重合体は、硫酸溶媒によって著しく脆くなり、それによって、固有粘度(IV)が過剰に低下して、高強度アラミドフィラメント製造には不適合な、紡糸ドープが生じる。異なるIVを有する複数のアラミド重合体を押出機内に同時に投入する場合、前記と同じ理由で重合体が著しく脆化される問題が発生する。
【0007】
このため、IVが5.0以下、及び/又は直径が75μm以下であるアラミド重合体は、低価格のアラミドパルプの製造に使用されている。
【0008】
更に、IVが5.0〜5.5であるアラミド重合体を使用する場合であっても、当該アラミド重合体を用いて形成されたアラミドフィラメントの強度の多少の低下があった。
【0009】
このように、従来方法では粒子径が小さ過ぎるか、もしくは大き過ぎるアラミド重合体、又はIVが5.5未満であるアラミド重合体は、アラミドフィラメント製造には使用できず、それによって製造コストが高くなる問題があった。
【0010】
本発明の目的は、このような従来の問題点を解決することで、適正範囲外の、一定の粒子径及び/又はIVを有するアラミド重合体を用いて、高強度のアラミドフィラメントを製造する方法を提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来技術で知られている適正範囲外の平均粒子径及び/又はIVがアラミド重合体を高強度アラミドフィラメント形成に使用し、製造コストが低い、アラミドフィラメントの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は前記の方法で製造された、優れた強度、特に優れた側面衝撃強度を有するアラミドフィラメント(以下、優れた側面衝撃強度を有するフィラメントと称する。)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を達成するため、本発明のアラミドフィラメント製造方法は、
アラミド重合体を硫酸溶媒に溶解させて紡糸ドープを調製する工程、
前記紡糸ドープを紡糸口金を通して紡糸し、紡糸物を得る工程、
前記紡糸物を非凝固性流体層を通じて凝固液浴槽内へ通過させる工程、及び
水洗、乾燥、及び熱処理を順に行い、アラミドフィラメントを製造する工程
を有する。
【0014】
前記方法は、紡糸ドープ製造用押出機(以下、「押出機」と略称する。)内に前記アラミド重合体を投入する時点を、アラミド重合体の粒子サイズ又はIVに基づいて調節することを特徴とする。
【0015】
本発明で製造されるアラミドフィラメントは、好ましくは、ASTM−D1822の方法で測定した側面衝撃強度が10〜15kg・cm/cmである。
【0016】
以下、添付した図面などを参照して本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明においては、押出機内にアラミド重合体を投入する時点をアラミド重合体の粒子サイズに基づいて調節されうる。より具体的には、粒子サイズが大きいアラミド重合体は、硫酸溶媒を押出機内に投入する前に、前記押出機に先に投入される。一方、粒子サイズが小さいアラミド重合体は、まず硫酸溶液を紡糸ドープ製造用押出機内に投入した後に、前記押出機に投入される。
【0018】
さらに、本発明は、押出機内にアラミド重合体を投入する時点をアラミド重合体の固有粘度によって調節することを含む。
【0019】
本発明の方法は、硫酸溶媒による重合体全体の脆化を著しく抑えることに有効である。本発明の方法は、重合体の重合工程で必然的に発生する重合体の粒度(すなわち、粒子径)分布に基づいて投入順序を変更する。すなわち、小さい粒度を持つアラミド重合体(以下“重合体”と略称する)は、大きい粒度を持つ重合体に比べて硫酸による脆化が早く生じるので、押出機内への投入を遅らせて、脆化程度を抑制しなければならない。一方、大きい粒子径を持つ重合体は、小さい粒子径の重合体よりも先に、押出機内に投入して、その完全な溶解を導かなくてはならない。このような、製造された紡糸ドープは、硫酸による重合体の脆化が最小化されている一方で、重合体が硫酸溶媒に均一に溶解された状態が維持されるので、最終産物としてのフィラメントの強度が改善される。
【0020】
通常、紡糸ドープの脆化は、主に、重合体が硫酸溶媒と混合されて溶解される紡糸ドープ製造工程で発生する。これは、ここで、紡糸ドープ製造の間の温度が最も高く、同時に、極めて強い剪断力がかかるからである。したがって、紡糸ドープの調製の間のみ、硫酸による重合体の脆化を最小化すれば、側面衝撃強度に優れるアラミドフィラメントが得られる基本的な条件を完全に達成できると考えられる。
【0021】
また、本発明は、異なるIVを有する他の重合体(複数)を使用して紡糸ドープを製造する場合にも有用である。より具体的には、低IVの重合体は硫酸に対する溶解度は高く、それによって、フィラメントの重大な物性低下が生じる。したがって、このような物性低下を避けるためには、当該重合体の押出機内への投入順序を遅らせることが好ましく、高IVの重合体は、これとは反対に、紡糸ドープ製造用押出機内への投入順序を早めて、重合体全体の硫酸による脆化を著しく減少させながら、均一な溶解状態を維持して、望ましい紡糸ドープの完全な調製を導く。
【0022】
通常、IVが5.0以下である重合体は高強度フィラメントの製造に適さないので、公知のパルプ製造方法による低価格パルプ製品の製造に用いられている。IVが5.0〜5.5である重合体を用いて形成されたフィラメントは、強度が多少低い傾向がある。しかしながら、本発明の方法は、前記のように押出機内への重合体の投入順序を調節することによって、IVが5.0〜5.5である重合体を使用した場合でも、重合体の脆化を最小化することができ、それによって、慣用の高強度フィラメントと実質的に同じ強度を有するフィラメントにおいて、経済的な利点をもたらす。
【0023】
図1は本発明で用いられる紡糸ドープ製造装置の一例においておいてもちいられる押出機の断面図である。図1における矢印は、重合体と硫酸溶媒混合物の進行方向を表す。アラミド重合体投入口(22)に粒子サイズが大きい重合体を先に投入して、その後、硫酸溶媒投入口(23)に硫酸溶媒を投入して、前記重合体が十分に溶解させる。一方、他のアラミド重合体投入口(24)に、粒子サイズが小さい重合体を投入して、紡糸ドープを製造し、次の工程に移送する。前記押出機の使用によって、溶解を完了される間の、粒子サイズが小さい重合体の硫酸溶媒による脆化を著しく低減でき、かつ、粒子サイズが大きい重合体を十分に溶解させることができるので、前記本発明の実施態様によって調製された紡糸ドープは、優れた均一性と最小の脆性を示し得る。結果として、前記紡糸ドープを用いて、側面衝撃強度に優れるアラミドフィラメントを製造できる。
【0024】
さらに、本発明では、従来は高強度アラミドフィラメント製造に使用できなっかたIVが5.5以下の重合体も使用可能である。順に、IVが5.5以上、好ましくは6.0以上である重合体を先に重合体投入口(22)に投入し、硫酸溶媒投入口(23)に硫酸溶媒を投入し、重合体投入口(24)にIVが5.5以下である重合体を投入すると、高強度、特に優れた側面衝撃強度を有する、アラミドフィラメントを製造することができる。
【0025】
粒子が大きいアラミド重合体は、粒子サイズが500〜1500μmであり、IVが5.5以上、6.0以上であることが、より好ましい。
【0026】
前記に粒子が小さいアラミド重合体は、粒子サイズが60〜500μm未満であり、IVは5.5未満であることが、好ましい
本発明によって製造されたアラミドフィラメントは、分子鎖間の水素結合と構造のコンパクトさを改良するのに十分であるように高度に調整されたIVを有する紡糸ドープを含み、10〜15kg・cm/cmの、優れた、ASTM−D 182の方法で測定した側面衝撃強度(これは、繊維軸に垂直方向への引張強度である)を有するので、防弾用製品など製造に有用する。
【0027】
本発明のアラミドフィラメントは、紡糸ドープ調製工程における硫酸による重合体の脆化によって生じる分子鎖の切断が減少することによって、平均分子量が大きく、ピークが狭い分子量分布が得られ、それによって分子量分布度ピークが狭くて結晶配向、結晶化度、強度、弾性率、側面衝撃強度、クリープ特性などの改善がもたらされる。
【0028】
次に、側面衝撃強度の測定方法に対して説明する。
【0029】
ASTM−D1822による方法を図3を参照して、より詳細に説明する。まず、アラミドフィラメントなどの試料(110)を側面衝撃強度測定機器(モデル名:OLSEN-60、テニアスオルセン(TiniusOlsen)社)の振り子頭[Pendulum head(120)]及び鋸歯状顎[Serrated Jaw(130)]に装着する。装着完了後、試料をアンビル[Anvil(160)]に対して垂直方向に移動させた後、振り子頭(Pendulum Head)と鋸歯状顎(Serrated Jaw)を円周方向に落下させる。落下する力によって振り子頭(Pendulum head)は円周方向に持続的に運動し、一方、鋸歯状顎(Serrated Jaw)は水平位置で強制に停止させられるので、試料は、側面衝撃強度に相当する力を受ける。この力に対する試料の耐性を側面衝撃強度と定義する。
【0030】
本発明のアラミドフィラメントは、コードモジュラス(Chord modulus)が550〜650g/dであり、フィラメント最大強度の50%荷重を与えた状態でASTM D6992の方法で測定したクリープ(Creep)値が0.012〜0.047%/decadeである。前記クリープ値を測定する時の初期500妙のクリープ値は、結果値の算出から除外する。
【発明の効果】
【0031】
上述のように、本発明によれば、適正範囲外の平均粒子径及び/又は固有粘度を持つアラミド重合体を高強度アラミドフィラメントの製造に使用することができる。その結果、本発明は、製造コストを下げるとともに、アラミドフィラメントの製造収率が改善されるという有利な特徴を有する。
【0032】
本発明の上記の目的、特徴、および利点は、添付の図面によって、当業者にとって、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に用いられる紡糸ドープ製造用押出機を示す断面図である。
【図2】慣用の乾湿式紡糸方法によるアラミドフィラメント製造方法を示す概略図である。
【図3】アラミドフィラメントの側面衝撃強度を測定する機器を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、下記の好適な実施例及び比較例を用い、図を参照して本発明を詳細に説明する。
【0035】
しかしながら、これらは本発明の好ましい態様としての発明を説明することを意図するものであって、本発明の保護範囲が限定するものではない。
【実施例1】
【0036】
80℃に維持した1,000kgのN−メチル−2−ピロリドンに、80kgの塩化カルシウムと48.76kgのパラ-フェニレンジアミンを溶かして、芳香族ジアミン溶液を製造した。
【0037】
前記パラ-フェニレンジアミンと同モル量の溶融テレフタロイルクロライド(Terephthaloyl Chloride)を、前記の芳香族ジアミン溶液と一緒に、重合用反応機内へ同時に投入した後、これらを攪拌して固有粘度(IV)が6.8であるポリ(パラ-フェニレンテレフタルアミド(poly(para-phenylene terephthalamide)))重合体を製造した。
【0038】
次に、製造された前記の重合体をサイズ別に分ける工程を経て、まず、粒子サイズが5000〜1,500μmである重合体を、紡糸ドープ製造用設備(20)、すなわち図1に示した押し出し機の重合体投入口(22)に投入した。次に、硫酸溶媒投入口(23)に99%濃硫酸を投入し、別の重合体投入口(24)に粒子サイズが60〜500μmである、別の選択された重合体を投入した。混合物を完全に溶解させて、重合体18重量%を含有する光学的非等方性紡糸溶液(ドープ)を調製した。
【0039】
得られた溶液を図2に示すように紡糸口金(40)を通じて紡糸し、紡糸物を得た後、当該紡糸物を7mmの空気層を通じて凝固液としての水が入った部位に移動させてアラミドフィラメントを形成させた。
【0040】
形成されたアラミドフィラメントを、水洗及び乾燥などの一連の処理をしてポリ(パラ-フェニレンテレフタルアミド)アラミドフィラメントを製造した。得られたアラミドフィラメントは、13〜15kg・cm/cmという優れた側面衝撃強度を示した。
【実施例2】
【0041】
IVが6.0である重合体を用いたことを除いては実施例1と同様に、アラミドフィラメントを製造した。得られたアラミドフィラメントは、11〜14kg・cm/cmという好適な側面衝撃強度を示した。
【実施例3】
【0042】
IVが5.5である重合体を用いたことを除いては実施例1と同様に、アラミドフィラメントを製造した。得られたアラミドフィラメントは、10〜12kg・cm/cmという好適な側面衝撃強度を示した。
【実施例4】
【0043】
図1に示した紡糸ドープ製造用設備(20)の重合体投入口(22)には粒子サイズが200〜1,500μmである重合体を投入して、重合体投入口(24)には粒子サイズが60〜200μmである別の重合体を投入したことを除いては実施例1と同様に、アラミドフィラメントを製造した。得られたアラミドフィラメントは12〜14kg・cm/cmという好適な側面衝撃強度を示し、防弾用製品の製造に使用可能なことが確認された。
【実施例5】
【0044】
80℃で維持した1,000kgのN−メチル−2−ピロリドンに、80kgの塩化カルシウムと48.67kgのパラ-フェニレンジアミンを溶かして、芳香族ジアミン溶液を製造した。
【0045】
前記パラ-フェニレンジアミンと同モル量の溶融テレフタロイルクロライドを、前記の芳香族ジアミン溶液と一緒に、重合用反応機内へ同時に投入した後、これらを攪拌してポリ(パラ-フェニレンテレフタルアミド)重合体を製造した。
【0046】
次に、製造された前記の重合体をIV別に分ける工程を経て、まず、IVが5.5以上である重合体を、紡糸ドープ製造用設備(20)、図1に示した押し出し機の重合体投入口(22)に投入した。次に、硫酸溶媒投入口(23)に99%の濃硫酸を投入し、別の重合体投入口(24)にIVが5.5未満である別の選択された重合体を投入した。混合物を完全に溶解させて、重合体18重量%を含有する光学的非等方性紡糸溶液(ドープ)を調製した。
【0047】
得られた溶液を、図2に示したように、紡糸口金(40)を通じて紡糸し、紡糸物を得た後、当該紡糸物を7mmの空気層を通じて凝固液としての水が入った部位に移動させてアラミドフィラメントを形成させた。
【0048】
形成されたアラミドフィラメントを、水洗及び乾燥などの一連の処理をしてポリ(パラ-フェニレンテレフタルアミド)アラミドフィラメントを製造した。得られたアラミドフィラメントは、12〜15kg・cm/cmという優れた側面衝撃強度を示した。
【比較例1】
【0049】
80℃に維持した1,000kgのN−メチル−2−ピロリドンに、80kgの塩化カルシウムと48.67kgのパラ-フェニレンジアミンを溶かして、芳香族ジアミン溶液を製造した。
【0050】
前記パラ-フェニレンジアミンと同モル量の溶融テレフタロイルクロライドを、前記の芳香族ジアミン溶液と一緒に、重合用反応機内へ同時に投入した後、これらを攪拌して固有粘度(IV)が6.8であるポリ(パラ-フェニレンテレフタルアミド)重合体を製造した。
【0051】
次に、製造された前記の重合体をサイズ別に分ける工程を経て、粒子サイズが500〜1,500μmである重合体と粒子サイズが60〜500μmである別の重合体を、紡糸ドープ製造用設備(20)、すなわち図1に示した押し出し機の重合体投入口(22)に同時に投入した。次に硫酸溶媒投入口(23)に99%の濃硫酸を投入して、前記混合物を完全に溶解させて、重合体18重量%を含有する光学的非等方性紡糸溶液(ドープ)を製造した。
【0052】
得られた溶液を、図2に示すように紡糸口金(40)を通じて紡糸し、紡糸物を得た後、当該紡糸物を7mmの空気層を通じて凝固液としての水が入った部位に移動させてアラミドフィラメントを形成させた。
【0053】
形成されたアラミドフィラメントを、水洗及び乾燥などの一連の処理をしてポリ(パラ-フェニレンテレフタルアミド)アラミドフィラメントを製造した。得られたアラミドフィラメントは、8〜9kg・cm/cmという非常に低い側面衝撃強度を示した。
【比較例2】
【0054】
80℃に維持した1,000kgのN−メチル−2−ピロリドンに、80kgの塩化カルシウムと48.67kgのパラ-フェニレンジアミンを溶かして、芳香族ジアミン溶液を製造した。
【0055】
前記パラ-フェニレンジアミンと同モル量の溶融テレフタロイルクロライドを、前記の芳香族ジアミン溶液と一緒に、重合用反応機内へ同時に投入した後、これらを攪拌してポリ(パラ-フェニレンテレフタルアミド)重合体を製造した。
【0056】
次に、製造された前記の重合体をIV別に分ける工程を経て、固有粘度が5.5以上である重合体と固有粘度が5.5未満である重合体を、紡糸ドープ製造用設備(20)、すなわち図1に示した押し出し機の重合体投入口(22)に同時に投入した。次に硫酸溶媒投入口(23)に99%の濃硫酸を投入して、前記混合物を完全に溶解させて、重合体18重量%を含量する光学的非等方性紡糸溶液(ドープ)を製造した。
【0057】
得られた溶液を、図2に示したように紡糸口金(40)を通じて紡糸し、紡糸物を得た後、当該紡糸物を7mmの空気層を通じて凝固液としての水が入った部位に移動させてアラミドフィラメントを形成させた。
【0058】
形成されたアラミドフィラメントを、水洗及び乾燥などの一連の処理をしてポリ(パラ-フェニレンテレフタルアミド)アラミドフィラメントを製造した。得られたアラミドフィラメントは、7〜9kg・cm/cmという非常に低い側面衝撃強度を示した。
【0059】
前記好適な具体例を参照して本発明を説明してきたが、特許請求の範囲に定義された本発明の趣旨及び範囲を逸脱しないような、様々な修飾及び変形が可能であることが、当業者によって理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0060】
前記で詳細に記載したように、本発明によって製造されたアラミドフィラメントは、防弾ジャケット等の防弾服、光ケーブル補強材などに好適に使用される。
【符号の説明】
【0061】
20 紡糸ドープ製造用押出機
21 スクリュー(Screw)
22,24 アラミド重合体投入口
23 硫酸溶媒投入口
30 紡糸原液貯蔵槽
40 紡糸口金
50 凝固液浴槽
60 水洗装置
70 中和装置
80 乾燥装置
90 捲取機
110 試料
120 振り子頭(Pendulum Head)
130 鋸歯状顎(Serrated Jaw)
140 スペーサー(Spacer)
150 クロスヘッドクランプ(Crosshead Clamp)
160 アンビル(Anvil)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全芳香族ポリアミドフィラメントの製造方法であって、
アラミド重合体を硫酸溶媒に溶解させて紡糸ドープを調製する工程、
前記紡糸ドープを紡糸口金を通して紡糸する工程、
前記紡糸された紡糸物を非凝固性流体層を通じて凝固液浴槽内へ通過させる工程、及び
水洗、乾燥、及び熱処理を順に行い、前記アラミドフィラメントを製造する工程
を有し、
紡糸ドープ製造用押出機内に前記アラミド重合体を投入する時点を、当該アラミド重合体の粒子サイズに基づいて調節すること
を特徴とする、製造方法。
【請求項2】
粒子サイズが大きい全芳香族ポリアミド重合体は、硫酸溶媒を紡糸ドープ製造用押出機内に投入する前に、前記押出機に先に投入すること、一方、
粒子サイズが小さい全芳香族ポリアミド重合体は、硫酸溶液を紡糸ドープ製造用押出機内に投入した後に、前記押出機に投入すること
を特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記粒子サイズが大きい全芳香族ポリアミド重合体の粒子サイズは500〜1,500μmであること
を特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
粒子サイズが小さい全芳香族ポリアミド重合体の粒子サイズは60〜500μmであること
を特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
全芳香族ポリアミドフィラメントの製造方法であって、
アラミド重合体を硫酸溶媒に溶解させて紡糸ドープを調製する工程、
前記紡糸ドープを紡糸口金を通して紡糸する工程、
前記紡糸された紡糸物を非凝固性流体層を通じて凝固液浴槽内へ通過させる工程、及び
水洗、乾燥及び熱処理を順に行い、前記アラミドフィラメントを製造する工程
を有し、
紡糸ドープ製造用押出機内に前記全芳香族ポリアミド重合体を投入する時点を、当該アラミド重合体の固有粘度(IV)に基づいて調節すること
を特徴とする、製造方法。
【請求項6】
IVが高い全芳香族ポリアミド重合体は、硫酸溶媒を紡糸ドープ製造用押出機内に投入する前に、前記押出機に先に投入すること、一方、
IVが低い全芳香族ポリアミド重合体は、硫酸溶液を紡糸ドープ製造用押出機内に投入した後に、前記押出機に投入すること
を特徴とする、請求項5に記載の全芳香族ポリアミドフィラメントの製造方法。
【請求項7】
前記IVが高い全芳香族ポリアミド重合体の当該IVが5.5以上であること
を特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記IVが低い全芳香族ポリアミド重合体の当該IVが5.5未満であること
を特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
ASTM−D 1822の方法で測定した側面衝撃強度が10〜15kg・cm/cmであること
を特徴とする、パラ系全芳香族ポリアミドフィラメント。
【請求項10】
コードモジュラス(Chord modulus)が550〜650g/dであること
を特徴とする、請求項9に記載のポリアミドフィラメント。
【請求項11】
フィラメント最大強度の50%荷重を与えた状態でASTM−D 6992で測定したクリープ(Creep)値が0.012〜0.047%/decadeであること
を特徴とする、請求項9に記載のポリアミドフィラメント。
【請求項12】
紡糸ドープ製造用押出機内に前記全芳香族ポリアミド重合体を投入する時点を前記アラミド重合体の粒子サイズに基づいて調節すること
を特徴とする、全芳香族ポリアミド紡糸ドープの製造方法。
【請求項13】
紡糸ドープ製造用押出機内に前記全芳香族ポリアミド重合体を投入する時点を前記アラミド重合体のIVに基づいて調節すること
を特徴とする、全芳香族ポリアミド紡糸ドープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−502854(P2010−502854A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527298(P2009−527298)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際出願番号】PCT/KR2007/004303
【国際公開番号】WO2008/030045
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】