説明

全身性紅斑性狼瘡および強皮症の診断およびモニタリング方法

【課題】全身性紅斑性狼瘡または強皮症を有する患者の診断および/またはモニタリングに関し、この作業を実行するための方法およびキットを提供する。
【解決手段】診断またはモニタリングを受ける個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを測定し、かつ選択的に赤血球の表面上に沈着した補体受容体CR1もまた測定することにより、全身性紅斑性狼瘡(SLE)または強皮症を診断およびモニタリングするための方法で、診断のためには、健常個体の赤血球上に存在するC4d(および選択的にCR1)の量と比較する。モニタリングのためには、個々の患者からこれまでに得た試料における値と比較する。その比較は、C4dおよびCR1に関する個々の値、および/または正常個体において見出される2者の比を用いて行ってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2001年9月10日に提出された米国仮出願第60/318,541号の一部継続出願であり、これは参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府が資金援助する研究または開発
本明細書に記載される一部の研究はNIHおよびピッツバーグ大学の間でグラント番号第N01AR92239号により支援された。政府は本発明に一定の権利を有する可能性がある。
【0003】
発明の分野
本発明は全身性紅斑性狼瘡または強皮症を有する患者の診断および/またはモニタリングに関し、この作業を実行するための方法およびキットを含む。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
本発明は全身性紅斑性狼瘡(SLE)を有する患者および全身性硬化症(強皮症)を有する患者の診断および/またはモニタリングに関する。本発明はまた、その2つの疾病を区別するための方法を提供し、医師がSLEおよび強皮症と他の疾患とを区別するのに役立つ。
【0005】
全身性紅斑性狼瘡(SLE)または狼瘡は、原型的な自己免疫疾患であり、多臓器障害を招く。この抗自己反応は、様々な核および細胞質の細胞成分を標的とした自己抗体によって特徴づけられる。これらの自己抗体はそれらのそれぞれの抗原に結合して免疫複合体を形成し、それらは循環して最終的に組織内に沈着する。この免疫複合体の沈着が慢性炎症および組織の損傷を引き起こす。
【0006】
SLEを有する患者において疾患活動性を診断およびモニタリングすることは両方とも厄介である。診断が厄介なのは、疾患の範囲が広く、かすかなまたは曖昧な症状から生死にかかわる多臓器不全にまで渡るからである。多システム併発を伴うその他の疾患で全身性狼瘡と間違われる他の疾患があり、または逆もあり得る。1971年に、疾患を分類するの目的で診断基準が作成され(Cohen, ASら、1971、「全身性紅斑性狼瘡の分類のための予備的診断基準(Preliminary criteria for the classification of systemic lupus erythematosus)」、Bull Rheum Dis 21:643-648(非特許文献1))、1982年(Tan, EMら、1982、「全身性紅斑性狼瘡の分類のための1982年改正診断基準(The 1982 revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus)」、Arth Rheum 25:1271-1277(非特許文献2))および1997年(Hochberg, MC、1997、「全身性紅斑性狼瘡の分類のための米国リウマチ病学大学改正診断基準の更新(Updating the American College of Rheumatology revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus)」、Arth Rheum 40:1725(非特許文献3))に改正された。これらの診断基準は、地理的位置の異なる患者が比較されることを保証するように意図されている。11の診断基準のうち4つまたはそれ以上が連続して存在するかまたは同時に存在すれば、患者を、SLEを有するとして分類するのに十分である。この診断基準は、狼瘡を他の関連する免疫疾患から区別する特徴を思い起こすための便利な注意書きとして機能するが、それらは誤りに陥りがちであることは避けられない。診断基準の存在または非存在を判定するために、しばしば解釈が必要とされる。もし、徴候または症候の存在または非存在を判定するために甘い基準が適用されれば、実際にはそうでない場合に患者が狼瘡を有すると容易に診断され得る。同様に、SLEの臨床的発現の範囲は、11の診断基準によって記載される範囲よりはるかに大きいし、おのおのの発現は、活動性および重症度のレベルについて患者ごとに異なり得る。困難な診断をさらに複雑にすることには、SLEの症候は病気の経過に渡って継続的に進展する。以前には冒されていなかった臓器における新しい症候が、次第に進展する可能性がある。狼瘡のための決定的な検査はなく、ゆえに、しばしば誤診される。
【0007】
狼瘡を有する患者の管理において、疾患活動性のモニタリングも厄介である。狼瘡は、ひと続きの発赤つまり急性疾患期およびその後の寛解期を経て進行する。発赤の症候は、患者の間で、そして同一患者においてでさえ相当に異なり、倦怠感、発熱、対称性関節痛、および羞明(短い日光曝露後の発疹の発現)を含む。その他の狼瘡の症候には、脱毛症、粘膜の潰瘍、ならびに胸痛をもたらす心臓および肺の内膜の炎症が含まれる。赤血球、血小板、および白血球は狼瘡の標的となる可能性があり、貧血および出血の問題をもたらす。さらに深刻なことに、血管内における免疫複合体沈着および慢性的炎症は、結果として腎臓障害および場合によっては透析または腎臓移植を必要とする不全をもたらす可能性がある。狼瘡における自己免疫反応の主要な標的は血管であるため、早発性の脳卒中および心疾患が稀ではない。しかしながら、時が経つにつれ、これらの発赤が不可逆性の臓器損傷をもたらす可能性がある。そのような損傷を最小に抑えるためには、疾患の発赤をより早期に、そしてより正確に検出することが、適切な治療を早めるばかりでなく、不必要な介入の頻度を減ずると思われる。研究の観点からは、個々の臓器系において、または一般的な指標として、「炎症の程度」または疾患の活動性を画一的に記載する能力は、極めて貴重な研究手段となる。さらに、疾患活動性の指標は、治療上の試みにおける反応変数として用いることが出来る。
【0008】
全身性狼瘡疾患活動性指数(SLEDAI)(Bombardier, C.、D.D. Gladmanら (1992)、 「SLEDAIの誘導、狼瘡患者の疾患活動性指数、SLE予後診断検討委員会(Derivation of the SLEDAI. A disease activity index for lupus patients. The comittee on aprognosis Studies in SLE.)」、Arth Rheum 35:630-40(非特許文献4))および全身性狼瘡活動性指標(SLAM)(Liang, M.H.、S.A. Socherら (1989)、「全身性紅斑性狼瘡の疾患活動性の臨床評価のための6つの系の信頼性および有効性(Reliability and validity of six systems for the clinical assesment of disease activity in systemic lupus erythematosus)」、Arth Rheum 32:1107-18(非特許文献5))は、最も広く用いられている手段のうちの2つである。SLEDAIは、9つの臓器系を表す24項目を含む。変数は、病歴、身体検査、および検査評価によって得られる。関係する臓器の重要性に基づいて、それぞれの項目は1から8に重みづけされる。例えば、口内炎は2と得点され、発作は8と得点される。SLEDAIに含まれる検査パラメータには、白血球数、血小板数、検尿、血清C3、C4、および抗dsDNAが含まれる。総計の最大得点は105である。SLAMは11の臓器系を表す32項目を含む。項目は存在/非存在として得点されるばかりでなく、重篤さに基づいて1から3の段階に格付けされる。SLAMの可能な総得点は86である。SLEDAIおよびSLAMの両方とも、有効で信頼性があり、時間経過に渡る変化に感受性であることが示されてきており(Liang, M.H.、S.A. Socherら (1989)、 「全身性紅斑性狼瘡の疾患活動性の臨床評価のための6つの系の信頼性および有効性(Reliability and validity of six systems for the clinical assesment of disease activity in systemic lupus erythematosus)」、Arth Rheum 32:1107-18(非特許文献5))、そして研究プロトコールおよび臨床試験に広く用いられている。これらの指針は、SLEの疾患活動性について新しく提案された血清マーカーまたは炎症マーカーの重要性を検討するために特に有用である。
【0009】
それらの手段の明白な有用性にも拘らず、いくつかの欠点が存在する。第一に、同じ一連の患者について、SLAMとSLEDAIとの間で常に完全な合致があるわけではない。これらの不一致にはいくつかの考えられる理由がある。SLEDAIと異なり、SLAMは活動性SLEに起因するかどうかわからない倦怠感および発熱といった全身症状を含む;つまりこの活動性指標は医師の解釈に依存する。加えて、SLEDAIは一部の臓器系における穏かな程度の活動性を捕捉せず、溶血性貧血のようないくつかの種類の活動性についての記述子を持たない。これらの、および他の理由により、ほとんどの調査は1つより多くの疾患活動度の指標を採り入れる。
【0010】
最新技術の一般的な総説は、Ramsey-Goldman R.およびManzi, S.、「全身性紅斑性狼瘡(Systemic Lupus Erythematosus)」、GoldmanおよびHatch編、「女性と健康(Women and Health)」、Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ、2000:704-723(非特許文献6)に見出すことができる。
【0011】
全身性硬化症(強皮症)は、結合組織の慢性疾患であり、炎症および線維症、並びに血管、皮膚、消化管、肺、心臓、および腎臓の変性変化によって特徴づけられる。強皮症は、身体に障害を引き起こし、また生命にかかわる疾患である。強皮症を有する患者の分類のために診断基準が作成されてきた(Masi, AT、Rodnan GP、Medsger, TA Jrら、「全身性硬化症(強皮症)の分類のための予備的診断基準(Preliminary criteria for the classification of cyctemic sclerosis (scleroderma))」、Arth Rheum 1980;23:581-590(非特許文献7))。これらの診断基準は、研究調査における広範な一連の患者の記載を対象としたものであり、個々の患者の診断のためのものではない。主要な診断基準は、指に近接した任意の場所における強皮症性の皮膚変化(皮膚の厚化)である。任意の2つまたは3つの副次的な診断基準[強指症(指を含む皮膚の厚化)、指尖虫食状瘢痕(digital pitting scars)、両側肺底部肺間質性線維症(bibasilar pulmonary interstitial fibrosis)]の追加により、診断の感度が増加する。しかしながら、明確な強皮症を有する個体の10%近くはこれらの診断基準を満たさない(Medsger, TA Jr.「強皮症診断基準共同研究の解説(Comment on scleroderma criteria cooperative study)」、Black, CM、Myers, AR編、「リウマチ学の最新の話題:全身性硬化症(Current Topics in Rheumatology: Systemic Sclerosis)」、ニューヨーク: Gower Medical Publishing、1985:16-17(非特許文献8))。
【0012】
強皮症患者の状態または所定の時間における彼/彼女の疾患の「重症度」は、不可逆性の変化または「損傷」および潜在的に可逆性の変化または「活動性」の、ある組み合わせに相当する。疾患の経過の初期における炎症は、後に線維症および瘢痕につながる。もし炎症活動性を正しく検出することができれば、初期の介入により将来の不可逆性の損傷を防止できる可能性がある。しかしながら、臨床医にとって、疾患損傷と疾患活動性を区別することはしばしば困難である。これは一つには活動性の臨床的徴候が極めて微妙であり得ることによる可能性がある。加えて、炎症についての信頼できる検査指標が存在しない。疾患の損傷および活動性についての縦横の評価は、個々の患者および臨床試験の両方において、疾患の自然な病歴を評価することや、介入の効果を評価することにとって不可欠である。本疾患についての総説は、Medsger, TA Jr.「全身性硬化症(強皮症):臨床的局面(Systemic Sclerosis (scleroderma): clinical aspects)」、Koopman, WJ編、「関節炎および関連した状態(Arthritis and Allied Conditions)」、第13版、フィラデルフィア: Lea and Febiger、1997:1433-1464(非特許文献9)に見出すことができる。
【0013】
補体系は、体液性免疫および炎症のエフェクター機能の多くを提供すべく高度に調節された状態で相互作用する30より多くの機能的に連関したタンパク質の複雑なネットワークからなり、それによって細菌および菌の感染に対する主要な防御機構としての役割を果たしている。このタンパク質の系は、異物有機体による侵襲に対して3つの別個の経路:(抗体の存在下での)古典経路、または(抗体の非存在下での)代替経路、およびレクチン経路、を介して作用する。いったん活性化すると、それぞれの経路におけるタンパク質は、反応を引き起こした異種抗原を根絶することを目的とした様々な機能を遂行する多分子複合体への連続的な自己集合を伴うカスケードを構成する。
【0014】
古典経路は、通常、異物に結合した抗体によって誘発される。それは古典経路に特有ないくつかの成分であって、C1、C4、C2(経路においてこの順番になる)と呼ばれる成分から成る。
【0015】
古典経路では、最初の成分C1qは抗原-抗体複合体に結合し、経路を活性化する。この事象に、2つのセリンプロテアーゼC1rおよびC1sの連続的な活性化が続く。活性化したC1sは2つの基質、古典経路の最後の2つのタンパク質すなわちC4およびC2、を有する。タンパク質C4はC4aおよびC4bに切断される。タンパク質C2は切断され、C2aおよびC2bを生ずる。断片C4bおよびC2aは会合してC4b2aを形成し、それがタンパク質C3をC3aおよびC3bに切断し、古典経路の活性化が完結する。
【0016】
断片C4bおよびC3bはI因子によるさらなる分解の対象となる。この因子はC4bを切断してC4dを生成し、C3bも切断してiC3bを生成し、続いてC3dを生成する。このように補体の古典経路の活性化は、免疫複合体またはその他の活性化表面に、C4dおよびiC3bを含む多くのの断片を沈着させることができる。これらの断片は赤血球上の補体受容体1型(CR1)のリガンドである。
【0017】
補体タンパク質およびSLEに関しては、矛盾した報告が存在している。SLEを有する患者について報告されている1つの証明は、正常な個体と比較したときの赤血球[E-CR1]上の補体受容体CR1の発現低下である。これは、例えばRossら、J. Immunol. 135巻、2005頁(1985)(非特許文献10)、Corvettaら、J. Rheumatol. 18巻、1021(1991)(非特許文献11)およびその他によって報告されている。他の研究は、何の相関性も存在しないことを示しているように思われる。Iidaら、J. Exp. Med. 155、1427(1982)(非特許文献12)は、赤血球上のCR1数が疾患活動性に反比例して変化し、SLEが最も重篤に発現する期間により少い数が生じ、同じ患者における寛解期にはより多くの数が観察されることを指摘した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Cohen, ASら、1971、「全身性紅斑性狼瘡の分類のための予備的診断基準(Preliminary criteria for the classification of systemic lupus erythematosus)」、Bull Rheum Dis 21:643-648
【非特許文献2】Tan, EMら、1982、「全身性紅斑性狼瘡の分類のための1982年改正診断基準(The 1982 revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus)」、Arth Rheum 25:1271-1277
【非特許文献3】Hochberg, MC、1997、「全身性紅斑性狼瘡の分類のための米国リウマチ病学大学改正診断基準の更新(Updating the American College of Rheumatology revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus)」、Arth Rheum 40:1725
【非特許文献4】Bombardier, C.、D.D. Gladmanら (1992)、 「SLEDAIの誘導、狼瘡患者の疾患活動性指数、SLE予後診断検討委員会(Derivation of the SLEDAI. A disease activity index for lupus patients. The comittee on aprognosis Studies in SLE.)」、Arth Rheum 35:630-40
【非特許文献5】Liang, M.H.、S.A. Socherら (1989)、「全身性紅斑性狼瘡の疾患活動性の臨床評価のための6つの系の信頼性および有効性(Reliability and validity of six systems for the clinical assesment of disease activity in systemic lupus erythematosus)」、Arth Rheum 32:1107-18
【非特許文献6】Ramsey-Goldman R.およびManzi, S.、「全身性紅斑性狼瘡(Systemic Lupus Erythematosus)」、GoldmanおよびHatch編、「女性と健康(Women and Health)」、Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ、2000:704-723
【非特許文献7】Masi, AT、Rodnan GP、Medsger, TA Jrら、「全身性硬化症(強皮症)の分類のための予備的診断基準(Preliminary criteria for the classification of cyctemic sclerosis (scleroderma))」、Arth Rheum 1980;23:581-590
【非特許文献8】Medsger, TA Jr.「強皮症診断基準共同研究の解説(Comment on scleroderma criteria cooperative study)」、Black, CM、Myers, AR編、「リウマチ学の最新の話題:全身性硬化症(Current Topics in Rheumatology: Systemic Sclerosis)」、ニューヨーク: Gower Medical Publishing、1985:16-17
【非特許文献9】Medsger, TA Jr.「全身性硬化症(強皮症):臨床的局面(Systemic Sclerosis (scleroderma): clinical aspects)」、Koopman, WJ編、「関節炎および関連した状態(Arthritis and Allied Conditions)」、第13版、フィラデルフィア: Lea and Febiger、1997:1433-1464
【非特許文献10】Rossら、J. Immunol. 135巻、2005頁(1985)
【非特許文献11】Corvettaら、J. Rheumatol. 18巻、1021(1991)
【非特許文献12】Iidaら、J. Exp. Med. 155、1427(1982)
【発明の概要】
【0019】
本発明は、補体成分C4d、および赤血球の表面に存在する受容体であってC4およびC3のタンパク質分解断片の受容体として作用する補体受容体CR1の測定を利用することを含む。
【0020】
第1の局面において、本発明には、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを測定する段階、および(b)この測定を、全身性紅斑性狼瘡を有しない個体の赤血球の表面上に沈着した成分C4dの量と比較する段階を含む、個体において全身性紅斑性狼瘡を診断する方法が含まれる。
【0021】
第2の局面において、本発明には、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを測定する段階、および(b)この測定を、その個体からこれまでに得た赤血球の表面上に沈着した成分C4dの量と比較する段階を含む、個体において全身性紅斑性狼瘡をモニタリングする方法が含まれる。
【0022】
他の局面において、本発明には、(a)個体からの赤血球を含む血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを測定する段階、および(b)成分の測定を、強皮症を有しない個体の赤血球の表面上に存在することが知られている成分の量と比較する段階を含む、個体において強皮症を診断する方法が含まれる。
【0023】
本発明にはさらに、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを測定する段階、および(b)この測定を、その個体からこれまでに得た赤血球の表面上に沈着した成分C4dの量と比較する段階を含む、個体において強皮症をモニタリングする方法が含まれる。
【0024】
本発明の好ましい局面において、本方法は、試料中の赤血球の表面上の補体受容体CR1を測定する段階、およびその測定を、SLEまたは強皮症を有しない患者の赤血球の表面上に存在するCR1の量とそれぞれ比較する段階もまた含む。
【0025】
本発明のその他の好ましい局面においては、赤血球の表面上のC4dとCR1の比を測定して、SLEもしくは強皮症を有しない患者における比とそれぞれ比較し、または患者のモニタリングを実施している場合には、その比を、これまでにその患者について(またはその患者からこれまでに得た細胞について)測定した比と比較する。
【0026】
本発明の他の好ましい局面において、本方法は、試料中の赤血球の表面上の補体受容体CR1を測定する段階、ならびに、疾患活動性をモニタリングする方法として、この測定を、全身性紅斑性狼瘡および強皮症を有する患者からこれまでに得た赤血球の表面上に沈着したCR1の量とそれぞれ比較する段階もまた含む。
【0027】
本発明は、自動化された上述の形式の方法、そのような自動化された方法を実行するためのコンピュータ・ソフトウエア、および本明細書に記載の方法を実行するためのキットもまた含む。
【0028】
本発明の詳細な説明
総括議論
本発明の方法によりSLEおよび強皮症の診断および/またはモニタリングが可能になる。これらの2つの状態は深刻な健康上の問題であるため、これらの状態を比較的正確で早期に診断する必要性がある。同様に、これらの疾患の活動性をモニターできる能力は非常に重要である。
【0029】
本発明は、補体成分C4dの測定、および/または赤血球の表面に存在する受容体であってC4およびC3のタンパク質分解断片の受容体として作用する補体受容体CR1の測定を利用することを含む。
【0030】
最も一般的な意味において、本発明の方法は、患者の赤血球の表面上に沈着したC4dの測定がSLEかまたは強皮症の診断マーカーとして役立ち得る、という本発明者らによる発見に基づく。以下に議論するように、この測定と、同一患者の赤血球の表面上に発現したCR1の測定とを組み合わせることにより、SLEと強皮症とを区別し、かつこの2つの疾患と、同様な徴候を有する他の疾患とを医師が区別する際の手助けとして役立ち得る。
【0031】
どちらかの疾患の発生、あるいはこれまでの発生を診断する際には、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを測定する。好ましくは、同じ赤血球の表面上の補体受容体CR1もまた同時に測定する。次にそれらの測定の一方または両方を、SLEまたは強皮症を有しない個体の赤血球の表面上に通常見出されるC4dおよびCR1の量とそれぞれ比較する。
【0032】
どちらかの疾患を有する患者の疾患活動性をモニタリングする際には、患者の血液試料について同一の測定を行い、次にそれを過去に同じ患者から得た試料の赤血球の表面に存在するC4dおよびCR1の量の測定と比較する。
【0033】
両方の例において、「測定」および「量」というとき、発明者らは物質の絶対的な分量または量、および(加えて、または代わりに)C4dとCR1の比、の両方を含むことを意図する。以下に議論するように、特に患者においてSLEまたは強皮症のいずれかを診断するとき、これらの測定のどちらか一方または両方を用いることができる。
【0034】
本明細書中で引用する全ての出版物および特許出願は、それぞれ個別の出版物または特許出願が具体的かつ個別に参照として組み入れられると示されているように、参照として本明細書に組み入れられる。
【0035】
一般的手法
本発明は、患者から得た血液試料に対してアッセイ法を実施し、C4dを、および好ましくはCR1も測定することを含む。
【0036】
患者から血液の試料を得て、補体活性化を抑えるためにEDTA(エチレンジアミン四酢酸)で処理する。試料は室温または低温状態で保存する。好ましくは48時間以内にアッセイ法を行う。
【0037】
C4dおよびCR1の測定は、フローサイトメトリー、赤血球溶解物を用いたELISA、および放射性免疫測定法を含む多数の方法によって行ってもよい。本発明の1つの態様では、C4dおよびCR1のレベルの測定はフローサイトメトリー法を用いて行い、2つの分子のそれぞれに特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体を用いた直接または間接免疫蛍光検査によって計測する。これらの2つの分子のそれぞれは、別々の試料または単一の試料を用いて計測することができる。赤血球CR1およびC4dの平均蛍光チャンネル(MFC)は、個々に測定する。同じ形式のアッセイ法は、SLEまたは強皮症を有することが分かっている患者の診断または疾患活動性のモニタリングに用いてもよい。
【0038】
CR1およびC4dについてのこの形式のアッセイ法の開発は、当技術分野において知られており、Freysdottirら、J. Immunol. Meth. 135巻、2005 (1991)に記載されている。そのアッセイ法は、赤血球上のCR1ならびにタンパク質断片C4dおよびC3dについてのフローサイトメトリーアッセイ法であり、比較的高いかまたは比較的低いレベルのCR1を有する個体の同定を可能にするとされた。しかしながら、赤血球C4dおよびC3dは少なく、しばしばバックグラウンドを超える検出ができない(検出の限界)。これらの著者は、患者における免疫複合体の負荷または浄化に関する一般的な情報を提供することにつき彼らのアッセイ法の可能な用途を示唆している。しかしながら、彼らの研究は一般的用途のためのアッセイ法を開発することに限定されていた。彼らは、彼らの研究を特定の疾患の活動性の診断またはモニタリングに利用または応用することに対して調査をしていない。
【0039】
キット
疾患の診断および疾患活動性のモニタリングの両方をアッセイするためのキットは、本発明の一部である。キットは、本明細書に記載した方法を実行するのに必要な様々な試薬のうちいかなる試薬をも使用する。例えば免疫蛍光アッセイ法を利用する場合、キットは通常、補体成分C4dに特異的なモノクローナル抗体と蛍光部分との結合体を含み、好ましくは補体受容体CR1に特異的なモノクローナル抗体と別の蛍光部分との結合体もまた含む。加えて、キットはこの形式のアッセイ法を行うのに必要となり得るようなその他の材料、例えば緩衝液、放射性標識抗体、比色計試薬などを含む。
【0040】
これらの方法およびキットに用いる抗体は知られている。抗CR1抗体を分泌するハイブリドーマはメリーランド州のアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手可能である(ATCC HB8592番)。一般的な参考文献は、米国特許第4,672,044号、スクリップス医学研究所研究財団(Scripps Clinic and Research Foundation)、カリフォルニア州ラホーヤである。抗C4d抗体は、カリフォルニア州サンディエゴのキデル社(Quidel Corp)より入手可能であり(A213番)、Rogers, J.、N. Cooperら、「アルツハイマー病におけるベータアミロイドによる補体活性化(Complement activation by beta-amyloid in Alzheimer disease)」、PNAS 89:10016-10020、1992;Schwab, C.ら、「グアム・パーキンソン痴呆の神経原線維変化は反応性小グリア細胞および補体タンパク質と関連する(Neurofibrillary tangles of Guam Parkinson-dementia are associated with reactive microglia and complement proteins)」、Brain Res 707(2):196、 1996;Gemmell, C.、「人工表面上の補体活性化産物の吸着を定量化するためのフローサイトメトリー免疫測定法(A flow cytometric immunoassay to quantify adsorption of complement activation products on artificial surfaces)」、J Biomed Mater Res 37:474-480、1997;およびStoltzner, S.E.ら、「アルツハイマー病を伴うダウン症候群の患者におけるアミロイド斑中の補体タンパク質の一時的増加(Temporal accrual of complement proteins in amyloid plaques in patients with Down's syndrome with Alzheimer's disease)」、Am J Path 156:489-499、2000、に一般的に記載されている。
【0041】
C4dおよびCR1値の測定は、またはELISAのような多くの標準的な計測技術を用いて行うことが可能である。蛍光標識の代わりに、放射性および比色標識のような、他の形式の慣用の標識であってもよい。そのような他の形式のアッセイ法を用いる場合、キットは、放射性ヨウ素、アビジン、ビオチン、またはペルオキシダーゼのような酵素などの適当な標識を結合した、C4dおよびCR1に特異的なモノクローナル抗体を含むことになる。
【0042】
診断方法
SLEまたは強皮症を有する患者の診断は、C4dおよび好ましくは同様にCR1の測定を、正常な個体の赤血球の表面上に典型的に存在するこれらの要素の量の基準値または値域と比較することによって行われる。正常な個体では、C4dは赤血球の表面上に比較的低いレベルで存在する。フローサイトメトリー測定を間接免疫蛍光検査と共に用いた場合、健常個体の赤血球上のC4dのMFCは1.06から16.12(平均5.7)の範囲であった(表2および表7)。SLEを有する患者における赤血球C4dのMFCは健常個体のそれより高く、2.66から155.03(平均23.9)の範囲であった(表3および表7)。強皮症を有する患者もまた健常個体と比較して高いレベルのC4dを有していた。強皮症を有する患者においては、赤血球C4dのMFCは2.86から28.89(平均11.6)の範囲であった(表6および表5)。
【0043】
逆に、当技術分野において一般に知られているように、SLEを有する個体における赤血球の表面上のCR1のレベルは通常健常個体におけるより低かった。後者において赤血球CR1のMFCの値が10.53から50.83(平均25.4)の範囲であった(表2および表7)のに対し、SLEを有する患者からの赤血球CR1のMFCは、1.41から40.89(平均12.4)の範囲であった(表3および表7)。強皮症を有する患者は、健常個体よりは低いがSLEを有する個体よりは高い赤血球CR1のMFC値(4.69から38.26の範囲、平均18.4)(表6および表7)を有していた。
【0044】
SLEの診断のさらなる指示は、これらの検定における赤血球CR1と赤血球C4dの比に基づく。SLEを有する患者のうち93%より多くが3.00より低いCR1:C4d比を有したのに対し、健常個体のうち77%より多くが3.00より高い比を有した。従って、個体において3.00より低いCR1:C4dの比はSLEを示す。
【0045】
SLEの診断と強皮症の診断とを区別するためのさらなる方法は、赤血球CR1:C4d比を比較することである。SLEを有する患者のうち47%より多くが0.69より低いCR1:C4d比を有したのに対し、強皮症を有する患者では30人に1人しか0.69より低いCR1:C4d比を有さなかった。従って、CR1:C4d比が0.69より低いことによって、SLEは強皮症から区別される。
【0046】
患者のモニタリング
本発明の方法に特有な特徴は、患者の疾患の活動性をモニターできることである。赤血球の寿命はおよそ120日である。従って、このアッセイ法または方法に特有な特徴は、先行する数週間またはさらに数ヶ月の間に患者に生じたSLEまたは強皮症の活動性を示すかまたは反映することである。赤血球の表面上に沈着したC4dが持続するために、この手法を用い、これまでの数週間または可能ならばさらにこれまでの数ヶ月間におけるSLEまたは強皮症の急激な再燃の発生を確認することができる。これまでの発生時期は、C4dを持った赤血球を試料から分離し、密度勾配遠心分離法(Rennie, C.M., S. Thompsonら、(1979)、「パーコール密度勾配によるヒト赤血球の分画(Human erythrocyte fractionation in Percoll density gradients)」、Clinica Chimica Acta 98:119-125)のような従来技術によって赤血球の古さ(age)を確認することによって概算することが可能である。
【0047】
同様に重要なのは、本発明の方法により、相対的に非炎症性疾患である強皮症において補体活性化の証拠を検出できることである。今のところ、強皮症の疾患活動性を計測するための有用な循環マーカー、あるいはさらに言えばいかなる種のマーカーも、存在しない。
【0048】
オートメーションおよびコンピュータ・ソフトウエア
上述したような、C4dおよびCR1の測定ならびに診断および疾患活動性のモニタリングの方法は、手作業で行うことができるが、多くの場合自動化された系および/または装置を用いて手頃に行われ、血液試料は必要な測定をするべく自動的に分析されて、その目的にふさわしいコンピュータ・ソフトウエアを用いて自動的に基準値または参照値との比較が行われる。
【0049】
従って、ある局面において、本発明は、個体において全身性紅斑性狼瘡を診断またはモニタリングするための方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dおよび補体受容体CR1を自動的に測定する段階、ならびに(b)この測定を、赤血球の表面上の成分C4dおよび受容体CR1の参照値とそれぞれ自動的に比較する段階を含む方法を含む。別の局面において、この自動化された方法には、参照値にC4d:CR1比を含めた方法が含まれる。
【0050】
本発明は、個体において強皮症を診断またはモニタリングするための方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dおよび補体受容体CR1を自動的に測定する段階、ならびに(b)この測定を、赤血球の表面上の成分C4dおよび受容体CR1の参照値とそれぞれ自動的に比較する段階を含む方法もまた含む。別の局面において、この自動化された方法には、参照値にC4d:CR1比を含めた方法もまた含まれる。
【0051】
本発明の他の局面は、個体において全身性紅斑性狼瘡を診断またはモニタリングするための方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを自動的に測定すること、および(b)この測定を、赤血球の表面上に沈着した成分C4dの参照値と自動的に比較することを含む方法を含む。
【0052】
本発明のさらなる局面は、個体において強皮症を診断またはモニタリングするための方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを自動的に測定する段階、および(b)この測定を、赤血球の表面上に沈着した成分C4dの参照値と自動的に比較する段階を含む方法を含む。
【0053】
本発明の方法で用いるためのコンピュータ・ソフトウエア、またはコンピュータで読み取り可能な媒体には、
(1):コンピュータで読み取り可能な媒体であって、
(a) 赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dの測定に対応するデータを受信するためのコード;
(b)個体の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dの参照値を取り出すためのコード;および
(c) (a)のデータを(b)の参照値と比較するためのコード;
を含む媒体と、
(2):このようにコンピュータで読み取り可能な媒体であって、さらに
(d) 赤血球の表面上に沈着した補体受容体CR1の測定に対応するデータを受信するためのコード;
(e) 個体の赤血球の表面上に沈着した補体受容体CR1の参照値の値域を取り出すためのコード;および
(f) (d)のデータを(e)の参照値と比較するためのコード
を含む媒体とが含まれる。
【0054】
本発明の態様においては、1つまたはそれ以上の参照値はデジタル・コンピュータに付随するメモリーに保存されていてもよい。補体C4dの測定に対応するデータを(例えば適当な分析機器から)得た後、デジタル・コンピュータによってそのC4dデータを1つまたはそれ以上の適当な参照値と比較してもよい。この比較が行われた後、デジタル・コンピュータは、補体C4dの測定に対応するデータがSLEと関連づけられるかどうかを自動的に判別することができる。
【0055】
従って、本発明のいくつかの態様は、デジタル・コンピュータによって実行されるコンピュータ・コードによって具現化され得る。デジタル・コンピュータは、例えばWindows(商標)を基盤としたオペレーティング・システムのような、いかなる標準のまたは専用のオペレーティング・システムを用いたマイクロ、ミニ、またはラージ・フレーム・コンピュータであり得る。コードは、いかなる適切なコンピュータ可読媒体に保存され得る。コンピュータ可読媒体の例には、磁気、電子、または光ディスク、テープ、スティック、チップなどが含まれる。同様に、コードは当業者により、C、C++などを含むいかなる適切なコンピュータ・プログラミング言語を使って書かれ得る。
【0056】
本明細書で引用する全ての出版物および特許出願は、それぞれ個別の出版物または特許出願が具体的かつ個別に参照として組み入れられると示されているように、参照として本明細書に組み入れられる。
【0057】
先行の発明は、明確に理解されることを目的とした説明および例としてある程度細部に渡って記載されているが、添付された特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく一定の変更および修正がそこに加えられる可能性があることは、本発明の開示に照らし、当業者に容易に明らかとなるはずである。
【0058】
下記の例は、単に説明を目的として提供されるにすぎず、限定することを目的としていない。当業者は、変更または修正されても本質的に同様な結果をもたらすような、重大ではない種々のパラメータを容易に認めるはずである。
【0059】
実施例および実験データ
下記の例は、単に説明を目的として提供されるにすぎず、限定することを目的としていない。当業者は、変更または修正されても本質的に同様な結果をもたらすような、重大ではない種々のパラメータを容易に認めるはずである。
【0060】
実施例1:健常対照におけるC4dおよびCR1のアッセイ法:経時に渡る最小限の変動
初めに、6人の健常個体を観察した。これらの正常対照のそれぞれは、少なくとも別々の2日において観察し、1個体は3ヶ月間に渡った異なる6日において観察した。表1に示すように、C4dは6人の健常個体のそれぞれの赤血球において低レベルで検出され、検出されたC4dのレベルは、所与の個体において、幾日、幾週間、さらには幾ヶ月に渡り非常に一定していた。これらのデータによって、いかなる個体の赤血球上でもC4dが容易かつ正確に検出し得ることが明らかになり、健常個体において観察された安定したレベルによって、わずかな変動にさえ疾患活動性が反映されることが示唆された。予想されたように、全ての正常個体の赤血球においてCR1はC4dよりかなり高いレベルで存在していたにもかかわらず、CR1レベルも幾日、幾週間、さらには幾ヶ月に渡って最小限の変動しか示さなかった。
【0061】
1mlのEDTA-抗凝固化末梢血の試料をそれぞれの個体から採取し、赤血球の供給源とした。細胞を洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。C4dおよびCR1のレベルをC4dおよびCR1にそれぞれ特異的なモノクローナル抗体を用いた間接免疫蛍光法により計測し、この際C4dおよびCR1はそれぞれ別々の試料を用いて計測した。C4dおよびCR1のレベルは、FACSCalibur血球計測器(Becton Dickinson)を用いたフローサイトメトリーによって定量した。赤血球は前方および側面の散乱により同定し、平均蛍光チャンネル(MFC)をC4dおよびCR1のそれぞれについて個別に測定した。
【0062】
より詳細には、抗凝固剤としてEDTAを含む5ccラベンダー色蓋チューブ(Becton Dickinson、ニュージャージー州フランクリンレイクス)に血液を採取した。全血を1%の仔ウシ血清を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBSB)で希釈した。赤血球はペレットにし、PBSBで洗浄して、抗体染色のために等分した。赤血球に10μg/mlの濃度でモノクローナル抗体(mAb)を加えた。その細胞を4℃で20分間インキュベートし、0.2%アジ化ナトリウムを含む冷PBSBで洗浄した。二次抗体として、ジャクソンイムノリサーチラボラトリーズ(Jackson Immunoresearch Laboratories)(115-096-062番)からのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合ヤギ抗マウスIgGを10μg/mlの濃度で細胞に加えた。細胞は上記のようにインキュベートおよび洗浄し、0.2%アジ化ナトリウムを含むPBSBに再懸濁して、FACSCalibur(Becton Dickinson Immunocytometry Systems、カリフォルニア州サンノゼ)を用いたフローサイトメトリーによって分析した。免疫グロブリンの赤血球への非特異的結合は、アイソタイプ対照抗体MOPC21(ATCCより得た)を用い、同一のアッセイ法を並行して行うことにより測定した。抗C4dおよび抗CR1の特異的結合は、抗C4dおよび抗CR1によりそれぞれ得たMFCから、MOPC21により得たMFCを差し引くことにより測定した。Sibinovic, K.H.、Potter, M、D'Hoostelaere, L.、Rode, B.、Wax, J.、1976、「形質細胞腫およびその他のリンパ細網系の腫瘍の目録(Catalogue of Plasmacytomas and Other Tumors of the Lymphoreticular System)」、第3版、Litton Bionetics Inc.、p33。
【0063】
(表1) 健常個体の赤血球上のC4dおよびCR1

【0064】
実施例2:健常対照からSLEを有する患者を区別するためのCR1およびC4dのアッセイ法
この実施例では、全身性紅斑性狼瘡を診断するための、そして補体成分C4dおよび補体受容体CR1の参照値または値域を確立するための、患者におけるアッセイ法の実施が記載される。
【0065】
正常個体における連続的な測定の予備的研究に続いて、SLEを有する患者の研究を行った。この目的のために、本発明者らの外来から狼瘡を有する86人の患者を募った。SLEの診断のためのACR診断基準を満たす86個体(表3)および35の健常対照(表2)につき、同じ検定を用いて、赤血球CR1およびC4dの単一の測定を行った。SLEを有する患者および健常対照のCR1およびC4dの平均値および中央値を表7に示す。健常個体におけるC4dの平均値が5.7であったのに対し、SLEを有する患者の間ではC4dの平均値が23.9であった(p=0.0001)。35人の健常個体の間でCR1の平均MFCが25.4であったのに対し、SLEを有する86人の患者におけるCR1の平均MFCは12.4であった(p=0.0001)。図1(a、b)および図2(a、b)は、それぞれ35人の健常個体および86人のSLEを有する患者におけるC4d対CR1の単一検体測定のグラフを表す。
【0066】
(表2) 健常対照(n=35)

【0067】
(表3) SLE患者(n=86)


【0068】
これらの観察は、赤血球のCR1およびC4dレベルを組み合わせた測定が、SLEの有効な診断アッセイ法によるであろうことを示唆する。本発明者らは、CART統計分析を用いて、コンピュータが生成した切点を使ったSLEの診断における赤血球C4dおよびCR1の感度および特異性を測定した。感度とは、病気を有する人についてアッセイ法が陽性となる確率であり、特異性とは、病気を有しない人についてアッセイ法が陰性となる確率である。これらの切点は、グラフを4つの象限に分割する実線によって図1および図2に明示されている。これらのグラフは、最も一般的に観察された「狼瘡プロファイル」が、低いCR1および高いC4dであったことを明示する。健常対照と比較したSLE患者については、それらの指標の感度および特異性はそれぞれ87%および91%であった(表8)。陽性予測値および陰性予測値も測定した。陽性予測値(PPV)とは、検定が陽性な場合に人が病気を有する確からしさ(likelihood)である。健常対照に対するSLEのPPVは96%であった。陰性予測値(NPV)とは、検定が陰性な場合に人が病気を有しない確からしさである。健常対照に対するSLEのNPVは74%であった。現在利用できるアッセイ法で、そのような高いPPVおよびNPVの組み合わせを有するアッセイ法は他に類を見ない。これらのデータは、SLEの診断において赤血球CR1およびC4を測定することの有用性を示す。
【0069】
実施例3:SLEを有する患者をその他の疾患を有する患者と区別するためのCR1およびC4dのアッセイ法
健常対照に対するSLEを有する患者の研究に続いて、SLEを有する患者をSLE以外の疾患を有すると診断された患者と比較する研究を行った(n=111)。これらの比較のために、本発明者らは、慢性関節リウマチ(n=15)、変形性関節症(n=2)、C型肝炎ウイルス感染(n=17)、多発性筋炎/皮膚筋炎(n=33)、ヴェーゲナー肉芽腫症(n=1)、シェーグレン症候群(n=3)、サルコイドーシス(n=1)、蕁麻疹様血管炎(n=1)、鎌状赤血球貧血(n=8)、重複症候群/未分化結合組織病(n=15)、白血病/リンパ腫(n=9)、一次性レーノー症候群(n=3)、血友病(n=2)、および乾癬性関節炎(n=1)を有する患者を研究した。同じアッセイ法を用いて、赤血球CR1およびC4dの単一検体測定を行った。SLEを有する患者のCR1およびC4dの平均値および中央値を、その他の疾患を有する患者と比較して、表7に示す。その他の疾患を有する患者のC4dの平均値が9.3であったのに対して、SLEを有する患者の間ではC4dの平均値が23.9であった(p=0.0001)。その他の疾患を有する111人の患者の間でCR1の平均MFCが18.3であったのに対し、SLEを有する86人の患者のCR1の平均MFCは12.4であった(p=0.0001)。図3は、その他の疾患を有する111人の患者における、C4d対CR1の単一検体測定のグラフである。その他の疾患を有する患者と比較したSLE患者におけるこれらの指標の感度および特異性は、それぞれ87%および89%であった(表8)。PPVおよびNPVは、それぞれ86%および90%であった。現在利用できるアッセイ法で、そのような高い組み合わせの確率を有するアッセイ法は他に類を見ない。
【0070】
実施例4:SLEを有する患者の疾患活動性を計測するためのCR1およびC4dのアッセイ法
次に本発明者らは、全身性狼瘡活動性指標(SLAM)によって定義されるような疾患活動性の計測における、赤血球C4dおよびCR1レベルの有用性を検討した。本発明者らは、研究に参加した最初の86人の狼瘡患者についての結果を示す。一変量線形回帰分析を用いると、赤血球CR1(p=0.0007)が唯一有意にSLAMを予測した(表4)。血清C3、C4および抗dsDNA抗体は疾患活動性と有意に関連していなかった。全ての変数を操作する多変量モデルでは、赤血球CR1が独立してSLAMと関連していた(p=0.001)(表5)。抗dsDNA抗体の疾患活動性との関連性は、この多変量モデルにおいて統計学的有意に至らなかった。これらのデータは、血清C3、血清C4、および抗dsDNA抗体についての慣習的で「最も標準とされる(gold standard)」計測では得られなかった貴重で臨床的に有用な情報が、赤血球C4dおよびCR1の測定によって提供されることを示す。
【0071】
(表4) SLE疾患活動性との関連性
一変量分析

【0072】
(表5) SLE疾患活動性との関連性
多変量分析

【0073】
実施例5:強皮症の診断のためのC4d測定の利用
30人の強皮症患者(表6)の試料を前と同じ35人の健常個体(表2)と比較して検査すべく、同一の方法論を用いた。健常個体におけるC4dの平均が5.7であったのに対し、強皮症を有する患者の間でのC4dの平均値は11.6(p=0.0001、表7)であった。35人の正常対照の間でCR1の平均MFCが25.4であったのに対し、強皮症を有する30人の患者におけるCR1の平均MFCは18.4であった(p=0.0001、表7)。図4は35人の健常個体についてのC4d対CR1の単一検体測定のグラフである。図5は強皮症を有する30人の患者についてのC4d対CR1の単一検体測定のグラフである。
【0074】
(表6) 強皮症患者(n=30)

【0075】
(表7) 赤血球CR1および赤血球C4の分析

赤血球CR1およびC4はいかなる比較においても正規分布していなかった。従って、ウィルコクスン検定(Wilcoxon rank sum test)を用いた。

【0076】
本発明者らは、CART統計分析を用いて、コンピュータが生成した切点を使った強皮症の診断における赤血球C4dおよびCR1の感度および特異性を測定した。健常対照と比較した強皮症患者について、それらの指標の感度および特異性はそれぞれ83%および80%であった(表8)。陽性予測値および陰性予測値も測定した。健常対照から強皮症を有する患者を区別する場合のPPVは78%であった。健常対照から強皮症を有する患者を区別する場合のNPVは85%であった。現在、強皮症について同等の感度および特異性、PPVおよびNPVをもって用いられる検査試験は一つも存在しない。
【0077】
(表8) 赤血球CR1および赤血球C4dのCART分析

【0078】
先行の発明は、明確に理解されることを目的とした説明および例としてある程度細部に渡って記載されているが、添付された特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく一定の変更および修正がそこに加えられる可能性があることは、本発明の開示に照らし、当業者に容易に明らかとなるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】健常個体、すなわち全身性紅斑性狼瘡、強皮症またはその他の既知の疾患を有しない者の赤血球上の補体成分C4dおよび補体受容体CR1のレベルのグラフ表示である。図1aおよび図1bは、2つの異なるY軸を用いて描写した同一データを示す。健常対照をSLE患者と区別するために用いる、C4dおよびCR1切点が示されている。
【図2】全身性紅斑性狼瘡を有すると診断された患者の赤血球上の補体成分C4dおよび補体受容体CR1のレベルのグラフ表示である。図2aおよび図2bは、2つの異なるY軸を用いて描写した同一データを示す。SLE患者を健常対照と区別するために用いる、C4dおよびCR1切点が示されている。
【図3】SLEおよび強皮症以外の疾患を有する患者の赤血球上の補体成分C4dおよび補体受容体CR1のレベルのグラフ表示である。
【図4】健常個体、すなわち全身性紅斑性狼瘡、強皮症または既知のその他の疾患を有しない者の赤血球上の補体成分C4dおよび補体受容体CR1のレベルのグラフ表示である。これらは図1に表す健常対照と同一の健常対照である。この図においては、これらの健常対照を強皮症患者と区別するために用いるC4d切点が示されている。これら2群を区別するためにCR1切点は必要とされない。
【図5】強皮症を有すると診断された患者の赤血球上の補体成分C4dおよび補体受容体CR1のレベルのグラフ表示である。これらの強皮症患者を健常対照と区別するために用いるC4d切点が示されている。
【図1a】

【図1b】

【図2a】

【図2b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体において全身性紅斑性狼瘡を診断するための方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dおよび補体受容体CR1を測定する段階、ならびに(b)該測定を、全身性紅斑性狼瘡を有しない個体の赤血球の表面上に沈着した成分C4dおよび受容体CR1の量とそれぞれ比較する段階を含む方法。
【請求項2】
段階(b)が、試料中の赤血球の表面上に沈着したC4d:CR1の比と全身性紅斑性狼瘡を有しない個体の赤血球の表面上に沈着したC4d:CR1の比とを比較する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
試料中の赤血球の表面上に沈着したC4dおよびCR1の量を測定する段階、ならびに測定した量を、全身性紅斑性狼瘡を有しない個体の赤血球の表面上に沈着したC4dおよびCR1の量と比較する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
C4dおよびCR1の測定が、成分C4dに特異的なモノクローナル抗体と第1の標識部分との結合体へC4dを結合させる段階と、CR1に特異的なモノクローナル抗体と第2の標識部分との結合体へCR1を結合させる段階と、第1および第2の標識部分を測定する段階とを含む方法によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
標識部分が蛍光部分である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
蛍光部分を、フローサイトメトリー分析を用い、平均蛍光チャンネルを測定することによって測定する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
個体において全身性紅斑性狼瘡の疾患活動性をモニタリングする方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dおよび補体受容体CR1を測定する段階、ならびに(b)該測定を、その個体からこれまでに得た赤血球の表面上に沈着した成分C4dおよび受容体CR1の量とそれぞれ比較する段階を含む方法。
【請求項8】
段階(b)が、試料中の赤血球の表面上に沈着したC4d:CR1の比と個体からこれまでに得た赤血球の表面上に沈着したC4d:CR1の比とを比較する段階を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
試料中の赤血球の表面上に沈着したC4dおよびCR1の量を測定する段階、ならびに測定した量を、個体からこれまでに得た赤血球の表面上に沈着したC4dおよびCR1の量と比較する段階を含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
C4dおよびCR1の測定が、C4dに特異的なモノクローナル抗体と第1の標識部分との結合体へC4dを結合させる段階と、CR1に特異的なモノクローナル抗体と第2の標識部分との結合体へCR1を結合させる段階と、第1および第2の標識部分を測定する段階とを含む方法によって行われる、請求項7記載の方法。
【請求項11】
標識部分が蛍光部分である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
蛍光部分を、フローサイトメトリー分析を用い、平均蛍光チャンネルを測定することによって測定する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
個体において全身性紅斑性狼瘡を診断する方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを測定する段階、ならびに(b)該測定を、全身性紅斑性狼瘡を有しない個体の赤血球の表面上に沈着した成分C4dの量と比較する段階を含む方法。
【請求項14】
C4dの測定が、C4dに特異的なモノクローナル抗体と標識部分との結合体へC4dを結合させる段階と、その標識部分を測定する段階とを含む方法によって行われる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
標識部分が蛍光部分である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
蛍光部分を、フローサイトメトリー分析を用い、平均蛍光チャンネルを測定することによって測定する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
個体において全身性紅斑性狼瘡の疾患活動性をモニタリングする方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを測定する段階、および(b)該測定を、その個体からこれまでに得た赤血球の表面上に沈着した成分C4dの量と比較する段階を含む方法。
【請求項18】
C4dの測定が、C4dに特異的なモノクローナル抗体と標識部分との結合体へC4dを結合させる段階と、第1の標識部分を測定する段階とを含む方法によって行われる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
標識部分が蛍光部分である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
蛍光部分を、フローサイトメトリー分析を用い、平均蛍光チャンネルを測定することによって測定する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
個体において強皮症を診断する方法であって、(a)個体からの赤血球を含む血液試料において、赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを測定する段階、および(b)該成分の測定を、強皮症を有しない個体の赤血球の表面上に存在することが知られる該成分の量と比較する段階を含む方法。
【請求項22】
赤血球の表面上に沈着した補体受容体CR1を血液試料中において測定する段階をさらに含み、かつ段階(b)が、試料中の赤血球の表面上に沈着したC4d:CR1の比と強皮症を有しない個体の赤血球の表面上に沈着したC4d:CR1の比とを比較する段階を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
C4dの測定が、C4dに特異的なモノクローナル抗体と標識部分との結合体へC4dを結合させる段階と、その標識部分を測定する段階とを含む方法によって行われる、請求項21記載の方法。
【請求項24】
標識部分が蛍光部分である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
フローサイトメトリー分析を用い、平均蛍光チャンネルを測定する段階を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
個体において強皮症をモニタリングする方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを測定する段階、および(b)該測定を、その個体からこれまでに得た赤血球の表面上に沈着した成分C4dの量と比較する段階を含む方法。
【請求項27】
C4dの測定が、C4dに特異的なモノクローナル抗体と標識部分との結合体へC4dを結合させる段階と、第1の標識部分を測定する段階とを含む方法によって行われる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
標識部分が蛍光部分である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
蛍光部分を、フローサイトメトリー分析を用い、平均蛍光チャンネルを測定することによって測定する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
個体において全身性紅斑性狼瘡を診断またはモニタリングするための方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dおよび補体受容体CR1を自動的に測定する段階、ならびに(b)該測定を、赤血球の表面上の成分C4dおよび受容体CR1の参照値とそれぞれ自動的に比較する段階を含む方法。
【請求項31】
参照値がC4d:CR1の比を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
個体において強皮症を診断またはモニタリングするための方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dおよび補体受容体CR1を自動的に測定する段階、ならびに(b)該測定を、赤血球の表面上の成分C4dおよび受容体CR1の参照値とそれぞれ自動的に比較する段階を含む方法。
【請求項33】
参照値がC4d:CR1の比を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
個体において全身性紅斑性狼瘡を診断またはモニタリングするための方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを自動的に測定すること、および(b)該測定を、赤血球の表面上に沈着した成分C4dの参照値と自動的に比較することを含む方法。
【請求項35】
個体において強皮症を診断またはモニタリングするための方法であって、(a)赤血球を含む個体からの血液試料において、試料中の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dを自動的に測定する段階、および(b)該測定を、赤血球の表面上に沈着した成分C4dの参照値と自動的に比較する段階を含む方法。
【請求項36】
個体において全身性紅斑性狼瘡または強皮症を診断またはモニタリングするためのキットであって、補体成分C4dに特異的なモノクローナル抗体と蛍光部分との結合体を含むキット。
【請求項37】
個体において全身性紅斑性狼瘡または強皮症を診断またはモニタリングするためのキットであって、補体受容体CR1に特異的なモノクローナル抗体と蛍光部分との結合体をさらに含む、請求項36記載のキット。
【請求項38】
コンピュータで読み取り可能な媒体であって、
(a) 赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dの測定に対応するデータを受信するためのコード;
(b) 個体の赤血球の表面上に沈着した補体成分C4dの参照値を取り出すためのコード;および
(c) (a)のデータを(b)の参照値と比較するためのコード
を含む媒体。
【請求項39】
コンピュータで読み取り可能な媒体であって、参照値がC4dとCR1の比である、請求項38記載の媒体。
【請求項40】
コンピュータで読み取り可能な媒体であって、
(d) 赤血球の表面上に沈着した補体受容体CR1の測定に対応するデータを受信するためのコード;
(e) 個体の赤血球の表面上に沈着した補体受容体CR1の参照値の値域を取り出すためのコード;および
(f) (d)のデータを(e)の参照値と比較するためのコード
をさらに含む、請求項38記載の媒体。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−14720(P2010−14720A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197692(P2009−197692)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【分割の表示】特願2003−526353(P2003−526353)の分割
【原出願日】平成14年9月9日(2002.9.9)
【出願人】(301036537)ユニヴァーシティ オブ ピッツバーグ (1)
【Fターム(参考)】