説明

全身遺伝子送達のための自己構築型ミセル様ナノ粒子

【課題】核酸を含み、核酸のための体内送達剤として利用するのに適したナノ粒子が提供される。
【解決手段】このナノ粒子はポリエチレンイミンおよびホスホリピッドのごときポリカチオンの共有結合体を利用する。最終DNA含有ナノ粒子はベシクル構造を備えており、ポリプレクス核は混合リピッド/PEG−リピッド単層エンベロープによって包囲されており、作製が容易であり、可載重量が多く、体内での視認性が高い。これらナノ粒子は体内安定性が優れており、長時間の体内循環に対して耐久性があり、腫瘍のごとき生物標的に遺伝子を効果的に送達できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プラスミドDNAまたはsiRNAのごとき核酸が付加された新規なミセル様ナノ粒子(MNP)並びに遺伝子送達のためのナノ粒子の構築に対する新規な取り組みに関する。
【0002】
[関連出願の説明]
本願は2007年11月9日に出願された米国仮特許願第61/002625号「遺伝子送達のためのナノ粒子」の優先権を主張する。
【0003】
[連邦支援の研究又は開発に関する記述]
本発明に導いた研究は米国立衛生研究所の認可番号第RO1 HL55519に基づく合衆国政府の支援により実行された。よって合衆国政府は本発明における権利の一部を所有する。
【背景技術】
【0004】
体内遺伝子治療は、活性細胞部位へのオリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN)、siRNA)または遺伝子全体(プラスミドDNA)形態であるDNA(を活用した)薬剤の送達に依存する。数少ない例外は存在するが、局部投与が実行可能である場合には、遺伝子治療の幅広い臨床適用に向けた進歩には効果的な非侵襲的送達(搬送)方法の開発を必要とする。DNAベクターとしては非ウィルスシステムが望ましい。なぜなら非ウィルスベクターはウィルスベクターよりも安全で、取り扱いが容易であり、安価だからである。
【0005】
非ウィルス遺伝子送達システムの中では、ポリマー系ポリプレクス(polyplex)およびリポプレクス(lipoplex)またはDNA混入リポソーム(リポゾーム)である脂質(“リピッド”)系のシステムが開拓されたが、臨床利用に関しては活用範囲が限定されていた。この理由は、主として体内での安定性の不足によるものであり、従って遺伝子治療剤を治療レベルで標的部位にまで送達ができないためである。ポリマー系システムとリピッド(脂質)系システムとを組み合わせたターシャリ(三次)リポポリプレクス(lipopolyplex)システムも開拓されている。その中で、bioPSLまたはpSPLPのごときPEI/DNAポリプレクスを混入するリポソーム系ナノ粒子が提案され、体内で試験され、良好な結果をもたらしている。しかし、このような組み合わせシステムには複雑で、長時間を要する作製(調製)ステップが関与し、体内安定性、および長い循環時間をかけて標的部位に到達する能力があるにも拘わらず、搬送量が少ないという弱点を有している。
【0006】
カチオン性ポリマーであるポリエチレンイミン(PEI)およびその誘導体は遺伝子送達研究[非特許文献1、2、3、4、5]において幅広く研究されている。PEIは合成ポリカチオンの中で最高の正電荷(正帯電)密度であるという明確な利点を有している。この事実は、静電気的相互作用によるDNAでの効果的な濃縮(縮合)を可能にする。PEIはまた、所謂“プロトンスポンジ”メカニズム[非特許文献1、2]および細胞内核局在化[非特許文献6]によって、高トランスフェクション効率を提供する“エンドソーム逃避”を媒介する固有メカニズムも備えている。約1kDaから800kDaである幅広い分子量範囲と、直鎖形態または分枝鎖形態にて利用が可能である低分子量のPEIは、低毒性であり、認容性に優れていることが示されている[非特許文献7]。
【0007】
しかし、PEI/DNA複合体(錯体)の形態であるPEIは、循環流からの急速な排除およびRES(細網内皮システム)部位内での蓄積によって体内で十分な治療効果を発揮しなかった。この理由は、主として複合体の全体的な正電荷によるものである。この複合体の正電荷は、細胞膜の負電荷部分と相互作用し、複合体の細胞摂取を励起するが、複合体また血液成分と相互作用してオプソニン化を引き起こし、循環血液から急速に排除される。その結果、従来技術におけるPEI/DNA複合体は数分で血液から排除され、主として肝臓や脾臓のごときRES器官内で蓄積される[非特許文献8]。全身的に注入されると、これらPEI/DNA複合体は生理学的環境においてDNAの分離および凝集にも関与する[非特許文献8]。これら要素は知られているPEI/DNA複合体の体内利用を制限する。
【0008】
PEI/DNA複合体に改良体内安定性を提供するためにいくつかの取り組みが試行された[非特許文献3、5、9]。他のナノ粒子システム[非特許文献10]の場合と同様に、そのような複合体に体内安定性を与え、循環時間を延長させるためにポリ(エチレングリコール)(PEG)が使用されてきた。この目的で、PEGは予備形成PEI/DNA複合体に共有的に移植結合(接合)された[非特許文献11]。あるいは、PEG−移植結合PEIがDNAとの複合体を形成するために使用されてきた[非特許文献12]。加えて、予備形成PEI/DNA複合体がアニオン性ペプチドおよびPEGの共重合体を使用してPEGでコーティングされた[非特許文献13]。PETをリポソーム技術で組み合わせることにより、セチル化PEIのごときリピッド移植結合PEI[非特許文献14]およびコレステロールPEI[非特許文献15]が、DNA付加ポリカチオン化リポソーム(PCL)の作製に使用されてきた。予備形成PEI/DNA複合体もPEG安定化リポソーム内に封入され、所謂“予備濃縮安定プラスミドリピッド粒子”(pSPLP)[非特許文献16]が得られた。しかしながら、体内遺伝子治療の成功率を高めるために他の選択肢も必要であることは明白である。
【0009】
非ウィルス遺伝子送達システムのなかで、ポリマー系ポリプレクスと、リポプレクスまたはDNA混入リポソームであるリピッド系システムとが開発されたが、臨床での利用は限定的であった。これは主として体内での安定性の欠如、および治療レベルにおける標的部位への遺伝子治療剤の送達能力の欠如によるものである。ポリマー系システムとリピッド系システムとを組み合わせたターシャリリポポリプレクスシステムも開発された。その中で、bioPSLまたはpSPLPのごときPEI/DNAポリプレクスを封入するリポソーム系ナノ粒子が提案され、体内利用のために試験され、良好な結果をもたらした。しかし、このような組み合わせシステムには複雑で時間を要する作製ステップが関与し、体内安定性および長時間循環による標的部位への到達能力は優れているにも拘わらず、その搬送性能は低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】O. Boussif, F. Lezoualc’h, M.A. Zanta, M.S. Mergny, D. Scherman, B. Demeneix, J.P. Behr,「培養質及び生体内における細胞内への遺伝子及びオリゴヌクレオチドの多機能ベクターの導入:ポリエチレンイミン」Proc Natl Acad Sci USA 92(16)(1995)7297-7301
【非特許文献2】A. Akinc, M. Thomas, A.M. Klibanov, R. Langer,「ポリエチレンイミン仲介DNAトランスフェクション及びプロトンスポンジ仮説」J Gene Med 7(5)(2005)657-663
【非特許文献3】R. Kircheis, L. Wightman, E. Wagner,「修正ポリエチレンイミンの設計及び遺伝子送達活性」Adv Drug Deliv Rev 53(3)(2001)341-358
【非特許文献4】S.V. Vinogradov, E.V. Batrakova, A.V. Kabanov,「脳へのオリゴヌクレオチド送達ナノゲル」Bioconjug Chem 15(1)(2004)50-60
【非特許文献5】A. Kitcler,「修正ポリエチレンイミンでの遺伝子導入」J Gene Med 6 Suppl1(2004)S3-10
【非特許文献6】S. Brunner, E. Furtbauer, T. Sauer, M. Kursa, E. Wagner,「核バリアの克服:直鎖ポリエチレンイミン又は電気泳動による細胞サイクル独立非ウィルス遺伝子導入」Mol Ther 5(1)(2002)80-86
【非特許文献7】T. Merdan, J. Kopecek, T. Kissel,「ガンに対する遺伝子及びオリゴヌクレオチド治療におけるカチオン性ポリマーの展望」Adv Drug Deliv Rev 54(5)(2002)715-758
【非特許文献8】M. Neu, D. Fischer, T. Kissel,「ポリ(エチレンイミン)及びその誘導体を利用した合理的遺伝子導入ベクター設計の最新技術」J Gene Med 7(8)(2005)992-1009
【非特許文献9】D. Oupicky, M. Ogris, L.W. Seymour,「遺伝子の全身送達のための長時間循環性高分子電解質の開発」J Drug Target 10(2)(2002)93-98
【非特許文献10】S.M. Moghimi, A.C. Hunter, J.C. Murray,「長時間循環及び標的特定ナノ粒子:実用理論」Pharmacol Rev 53(2)(2001)283-318
【非特許文献11】M. Ogris, S. Brunner, S. Schuller, R. Kircheis, E. Wagner,「ペグ化DNA/トランスフェリン−PEI複合体:血液成分との減少相互作用、延長血液中循環、全身遺伝子送達の可能性」Gene Ther6(4)(1999)595-605
【非特許文献12】H. Petersen, P.M. Fechner, A.L. Martin, K. Kunath, S. Stolnik, C.J. Roberts, D. Fischer, M.C. Davies, T. Kissel,「ポリエチレンイミン−グラフト−ポリ(エチレングリコール)コポリマー:遺伝子送達システムとしてのDNA複合化及び生物活性に対するコポリマーブロック構造の影響」Bioconjug Chem 13(4)(2002)845-854
【非特許文献13】D. Finsinger, J.S. Remy, P. Erbacher, C. Koch, C. Plank,「非ウィルス遺伝子ベクターのための保護コポリマー:遺伝子送達における合成、ベクター特徴化及び利用」Gene Ther7(14)(2000)1183-1192
【非特許文献14】Y. Yamazaki, M. Nango, M. Matsuura, Y. Hasegawa, M. Hasegawa, N. Oku,「ポリカチオン性リポソーム、セチル化ポリエチレンイミンから構築される新規な非ウィルス遺伝子移送システム」Gene Ther7(13)(2000)1148-1155
【非特許文献15】D.A. Wang, A.S. Narang, M. Kotb, A.O. Gaber, D.D. Miller, S.W. Kim, R.I. Mahato,「遺伝子送達のための新規な分枝鎖ポリ(エチレンイミン)−コレステロール水溶性リポポリマー」Biomacromolecules 3(6)(2002)1197-1207
【非特許文献16】J. Hayes, L. Palmer, K. Chan, C. Giesbrecht, L. Jeffs, I. Maclachlan,「リピッド包含はポリプレクスプラスミドDNAの効果的全身送達を可能にする」Mol Ther15(4)(2007)713-720
【非特許文献17】M. Nishikawa, T. Nakano, T. Okabe,N. Hamaguchi, Y. Yamasaki, Y. Takakura, F. Yamashita,「プラスミドDNAのためのインジウム−111−放射線標識残留化及び組織分配研究への応用」Bioconjug Chem 14(5)(2003)955-961
【非特許文献18】F.J. Hutchinson, S.E. Francis, I.G. Lyle, M.N. Jones,「共有的に結合されたタンパク質でのリポソーム特徴化」Biochim Biophys Acta 978(1)(1988)17-24
【非特許文献19】C.B. Hansen, G.Y. Kao, E.H. Moase, S. Zalipsky, T.M. Allen,「立体的に安定化されたリポソームへの抗体結合:結合手法の評価、比較及び最良化」Biochimica et biophysica Acta 1239(2)(1995)133-144
【非特許文献20】M.C. Woodle, D.D. Lasic,「立体安定リポソーム」Biochim Biophys Acta 1113(2)(1992)171-199
【非特許文献21】T. Reschel, C. Konak, D. Oupicky, L.W. Seymour, K. Ulbrich,「合成ポリカチオンでのDNAの複合体に基づいた遺伝子送達ベクターの物理的特性及び体外トランスフェクション効率」J Control Release 81(1-2)(2002)201-217
【非特許文献22】D. Fischer, B. Osburg, H. Petersen, T. Kissel, U. Bickel,「マウスにおけるオリゴデオキシヌクレオチドでのポリプレクスの有機分配及び薬力学に関するポリ(エチレンイミン)分子量とペグ化の効果」Drug Metab Dispos 32(9)(2004)983-992
【非特許文献23】K. Kunath, A. von Harpe, H. Petersen, D. Fischer, K. Voigt, T. Kissel, U. Bickel,「PEG修正ポリ(エチレンイミン)の構造がマウス内でNF−カッパBデコイとの複合体の生物分配と薬力学に影響する」Pharm Res 19(6)(2002)810-817
【非特許文献24】M. Neu. O. Germershaus, M. Behe, T. Kissel,「PEIの生物可逆架橋ポリプレクス及び高分子PEGが体内で延長循環時間を示す」J Control Release 124(1-2)(2007)69-80
【非特許文献25】M. Johnsson, K. Edwards,「リポソーム、ディスク及び球状ミセル:ゲル相ホスファチジルコリン及びポリ(エチレングリコール)−ホスホリピッドの混合物内での凝集構造」Biophys J 85(6)(2003)3839-3847
【非特許文献26】G. Montesano, R. Bartucci, S. Belsito, D. Marsh, L. Sportelli,「ポリマー結合リピッドによるリピッド膜膨張及びミセル形成:スピン標識電子スピン共鳴により研究されたポリマー長での計測」Biophys J 80(3)(2001)1372-1383
【非特許文献27】K. Sou, T. Endo, S. Takeoka, E. Tsuchida,「ポリ(エチレングリコール)−リピッドのビシクルへの任意導入を利用したホスホリピッドベシクルのポリ(エチレングリコール)修正」Bioconjug Chem 11(3)(2000)372-379
【非特許文献28】C.L. Gebhart, S. Sriadibhatla, S. Vingogradov, P. Lemieux, V. Alakhov, A.V. Kabanov,「遺伝子導入のためのプルロニック−ポリエチレンイミン複合体に基づくポリプレクスの設計及び形成」Bioconjug Chem 13(5)(2002)937-944
【非特許文献29】A.V. Kabanov, E.V. Batrakova, V.Y. Alakhov,「薬剤及び遺伝子送達のための新規なポリマー治療剤としてのプルロニックブロックコポリマー」J Control Release 82(2-3)(2002)189-212
【非特許文献30】R.J. Lee, L. Huang,「腫瘍特定遺伝子導入のための葉酸標的アニオン性リポソーム混合ポリリシン濃縮DNA」Journal of Biological Chemistry 271(14)(1996)8481-8487
【非特許文献31】K. Muller, T. Nahde, A. Fahr, R. Muller, S. Brusselbach,「標的人工ウィルス様粒子による内皮細胞の高効率形質導入」Cancer Gene Therapy 8(2)(2001)107-117
【非特許文献32】P. Bandyopadhyay, X. Ma, C.L. Stieers, B.T. Kren, C.J. Steer,「RNA/DNAオリゴヌクレオチドを利用したラット肝細胞のゲノムDNAのヌクレオチド置換」Journal of Biological Chemistry 274(15)(1999)10163-10172
【非特許文献33】J.J. Wheeler, L. Palmer, M. Ossanlou, I. MacLachlan, R.W. Graham, Y.P. Zhang, M.J. Hope, P. Scherrer, P.R. Cullis,「安定化プラスミド−リピッド粒子:構築及び特徴化」Gene Ther6(2)(1999)271-281
【非特許文献34】I. MacLachlan, P. Cullis, R.W. Graham「全身遺伝子治療のための合成ウィルスへの技術進歩」Curr Opin Mol Ther1(2)(1999)252-259
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この要求を満たすため、プラスミドDNAまたはsiRNAのごとき核酸が付加された新規なミセル様ナノ粒子(MNP)並びに遺伝子送達のためのナノ粒子の構築に対する新規な取り組みが開発された。ポリエチレンイミン(PEI)のごときカチオン性ポリマーがまず、ホスホリピッドアルキルまたはアシル鎖の先端に結合(共役)され、ホスホリピッド−ポリエチレンイミン(PLPEI)結合体(共役体)が得られる。このPLPEIはプラスミドDNA、オリゴヌクレオチド(例:アンチセンスオリゴヌクレオチド)、RNAまたはリボザイムのごとき核酸と混合され、ナノメートル範囲のサイズを有し、PEI/核酸(PEI/NA)核複合体(錯体)とホスホリピッド単層エンベロープの構造を有した複合体を形成する。PLPEIのカチオン性PEIモイエティと、アニオン性核酸との間の静電相互作用は、ナノ粒子の形成に向けた活力を提供する。PLPEI接合体のホスホリピッドモイエティは疎水性相互作用によって単層に整合される。POPC、コレステロールのごとき非修正(すなわち非結合)ホスホリピッドがPLPEI/核酸複合体に追加され、PEI/核酸核の周囲にリピッド単層を補充する。PEG−PEも追加され、ナノ粒子に立体安定性を提供する。非修正リピッドおよびPEG−PEは疎水性相互作用によって単層内に組み入れられる。最終構造は、PEI/NAポリプレクス核とリピッド単層エンベロープとを有した立体的に安定したミセル様ナノ粒子となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1好適実施態様によれば、本発明のナノ粒子は、ホスホリピッドと、ポリエチレンイミン(PLPEI)、PEG−PEおよびリピッドとの間の共有結合的結合体の組み合わせに基づいている。ホスホリピッド−ポリエチレンイミン結合体は、プラスミドDNAの存在下で非修正リピッドおよびPEG−PEと共に単層−エンベロープハードコアミセル様ナノ粒子に自己構築することができる。得られたナノ粒子は体内利用に適した構造と特性を備えている。
【0013】
遺伝子送達のための新規な構造物である本発明のナノ粒子は、無害で、長時間循環性であり、治療性核酸のRES部位および他の器官の両方への体内トランスフェクションのために効果的である。本発明はポリマー系遺伝子送達システムをリピッド系遺伝子送達システムと組み合わせ、ホスホリピッドとポリマーの化学結合を利用するための新規な方法を提供する。ホスホリピッドアルキル鎖の先端におけるポリエチレンイミン(PEI)の結合は、新規な化学エンティティであるホスホリピッド−ポリエチレンイミン(PLPEI)結合体に導く。PLPEIは、それぞれPEIとPLモイエティによる(i)DNA結合および(ii)膜形成のための2つの機能領域を有する。DNAの存在下でPLPEは、ポリアニオン性DNAとのポリカチオン性PEIの静電相互作用を介してナノ粒子に自己構築される。この自己構築プロセスはリピッドモイエティ間の疎水性相互反応によっても可能である。この自己構築ナノ粒子は独特な超分子構造を有しており、ここではPEI/NAポリプレクス核およびリピッド単層エンベロープは化学結合によって連結されている。このナノ粒子は、例えばリポソーム型ナノ粒子とは異なるものである。ここではリピッドが単層ではなく2層を形成している。ナノ粒子はミセルとも異なる。これは疎水性相互作用でのみ構築され、“臨界ミセル濃縮(縮合)”の限定を受ける。
【0014】
本発明は、bioPSLおよびpSPLPのごときPEI/DNAポリプレクスを混入した他のリポソーム性ナノ粒子と較べて高い可搬容量と共に、単純で再現可能なワンステップ手法の利点を提供する。本発明のナノ粒子は、約25%(w/w)である高DNA可搬容量も提供する。これは、文献で報告されている他のシステムのほぼ10倍に相当する。ここで使用する用語「DNA可搬容量」または「核酸可搬容量」とは、本発明によるナノ粒子に組み込み可能なDNA量または他の核酸量のことである。
【0015】
本発明の他の特徴と利点は添付の図面を利用した以下の好適実施例の説明および請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、ホスホリピッド単層によって包囲されたPEI/DNA核を備えたミセル様ナノ粒子(MNP)の自己構築プロセスを表す概略図である。MNPは、ホスホリピッド−ポリエチレンイミン配合体(PLPEI)とのDNAの複合化(錯体化)を介して水性媒体において自然に形成され、リピッド層によるその複合体のコーティングが続く。PLPEIからのPEIモイエティはDNAとの高濃縮複合体を形成し、疎水性核を提供する。一方、PLPEIのホスホリピッドモイエティは非修正リピッドおよびPEG−PEと共に、PEI/DNA核を包囲するリピッド単層を形成する。リピッド単層は組み込まれたPEG−PEと共に体内安定性をも提供する。
【図2a−2b】図2aと図2bはMNP形成の分析を示す。(図2a)変動N/P比におけるPEI/DNA複合体に対するPLPEI/DNA複合体のアガロースゲル電気泳動。DNAのゲル内への導入の不在は複合体形成を示す。DNAはPLPEIによってN/P6以上で完全に複合化された。PLPEIは非修正PEIのものに比肩する複合化プロフィールを示した。(図2b)MNPのフリーズフラクチャー(凍結破壊)電子顕微鏡(ffTEM)分析。MNPは平均粒径50nmおよび狭範囲サイズ分布を有した、よく成長した球状粒子の形態を備えている。全粒子は構造体背後に陰影を示しており、ミセル様“ハードコア”および“単層”構造であることが確認される。右下隅の横線は50nmを示す。
【図3a−3b】図3aと図3bはMNPの安定性分析を示す。(図3a)塩誘導凝集に対するMNPのコロイド形態安定性。塩の添加(0.15MのNaCl)前後に流体力学径がモニターされた。塩を添加した後にPEI/DNAポリプレクスは急速に凝集したが、MNPは安定状態を保った。データは平均±s.e.m.(n=3)を表している。(図3b)MNPに載荷されたDNAの酵素分解からの保護。DNAとPEI/DNAポリプレクスが載荷されたMNPは、DNAase Iでの処理後に0.8%プレキャストアガロースゲル上で分析された。MNP内のDNAは酵素分解から完全に保護された。レーン1、DNA;レーン2、DNA、DNAase;レーン3、PEI/DNA;レーン4、PEI/DNA、DNAase;レーン5、MNP;レーン6、MNP、DNAase;レーン7、100塩基ペアラダー。
【図4】図4はNIH/3T3細胞に対するMNPの細胞毒性を示す。線維芽細胞NIH/3T3はDNA付加MNPまたはPEI/DNAポリプレクスにより異なるPEI濃度で処理された。相対的細胞生存率は媒質で処理された対照細胞の百分率として表示された。PEI/DNAポリプレクスとは異なり、4時間の処理に続くMNPは24時間の培養後に細胞毒性を示さなかった。
【図5a−5b】図5aと図5bはマウス内のDNA付加MNPとPEI/DNAポリプレクスの生体内挙動を示す:(a)血中濃度−時間曲線(対数スケール)および(b)111In標識DNAを搬送する組成物の体内投与に続くDNAの器官蓄積。注入後に血液が異なる時点で回収され、主要器官が最終サンプリング後に回収された。血液と器官サンプルの放射能がガンマカウンターで測定され、血液(ml)または組織(g)に対する注入投与量の百分率(%ID/ml又は%ID/g)で表された。MNPはPEI/DNAポリプレクスと較べて長時間である血液循環と、減少したRES摂取を示す。p値は変位度のツーウェイ分析(ANOVA)および続くボンフェローニ事後検定から決定された。
【図6a−6b】図6aと図6bは、マウス異種移植モデルにおけるpGFP付加MNPでの生体内トランスフェクションの結果を示す。LLC腫瘍を有するマウスにpGFP付加MNPが静脈内注射された。注射48時間後に、腫瘍内のGFP発現が評価された。生体内成長LLC腫瘍からの凍結腫瘍断面の蛍光顕微鏡写真が示されている。(a)未処理動物の腫瘍断面(背景パターン);(b)pGFP付加MNPが注射された動物の腫瘍断面。pGFP付加MNPの静脈内注射は遠位部腫瘍に輝蛍光を提供した。同一DNA含有量(n=3)でのプレーンポリプレキシの注射後に動物が急死したため、PEI/DNAポリプレクスが注射された動物からの腫瘍組織内でのGFP発現は評価されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者は全身利用に適した新規な遺伝子送達ベクターを開発した。このベクターは、アルキル鎖の遠位端にて、ホスホリピッドと、ポリエチレンイミン(PLPEI)のごときポリカチオンとの化学結合を利用して構築可能である。ポリカチオン性PEIモイエティのDNAとの静電相互作用は、高濃度PEI/DNAポリプレクス核の形成を促す。一方、両親媒性ホスホリピッドモイエティは、オプションで加えられる遊離非修正ホスホリピッドおよびPEG−移植ホスホリピッド(例:PEG−PE)と共に、ポリプレクス核の周囲にリピッド単層エンベロープを形成し、PEG鎖の立体的バリアおよびリピッド単層エンベロープの膜様バリアによって安定化したDNA付加ミセル様ナノ粒子(MNP)を形成する。
【0018】
立体的に安定したリポソームでの驚くべき成功[非特許文献20]とは対照的に、ポリエチレングリコール(PEG)によるポリプレクスの立体的安定は、循環時間の延長および生体内安定性の両方を成功裏には提供しなかった[非特許文献8]。本発明では、立体的安定が、ポリプレクスの表面を架橋処理することによる“横方向安定性”と組み合わされている[非特許文献9]。このことは、立体的安定性がポリプレクスの体内安定性に限定された役割を果たすだけであり、追加の安定化メカニズムが追加体内安定性をポリプレクスに付与するのに必要であること示している。
【0019】
追加の安定性はリピッドバリア内でポリプレクスを包含することにより達成できる。なぜなら、リピッドバリアは塩類に対して不浸透性であり、ポリプレクス核が塩誘導不安定性となることを防御するからである。このようなシステムの体内所作はリピッドバリアによって統制されている。一方、ポリプレクス核は循環血液内の生物学的環境から防御される。リピッドバリアの立体的安定性は、載荷されたポリプレクスに延長循環時間を提供し、ERPメカニズムを利用してそのポリプレクスをRES部位以外の標的器官に送達することを可能にする。さらに細胞摂取により、PEIは、DNA分子の細胞内薬力学を改善させるために、エンドソーム溶解活性や、細胞質ヌクレアーゼからの防御のごとき好ましい機能の発揮が期待されている。
【0020】
リピッド単層のエンベロープの存在によってミセル様ナノ粒子はさらに安定化される。リピッド単層モノマーは、遊離リピッドおよびPEG−リピッドと共にPLPEIのリピッドモイエティ間の疎水性相互作用により促される自己構築プロセスによって形成される。塩誘導凝集と酵素消化に対抗するMNPの強力な抵抗性はこのようなリピッド単層バリアの存在を確認するものである。生理学的条件における高塩含有量はPEI/DNAポリプレクスの乏しい体内安定性に関わるメカニズムの1つを提供する[非特許文献8]。これらのポリプレクスはポリカチオン性PEIとポリアニオン性DNA分子との間の強力静電相互作用によって形成され、粒子間の静電反発によってコロイド状に安定化する。しかし、生理学的条件の下では、ポリカチオンとポリアニオン性DNAとの間での引力静電相互作用のスクリーニングのため、ポリプレクス粒子の同時的分離と共に、ポリプレクス粒子間で静電反発力のスクリーニングの結果として、増加した塩濃度がポリプレクス粒子の凝集の促す[非特許文献21]。PEG鎖による立体安定化は、塩誘導凝集へのPEG移植PEIのポリプレクスの感度低下をもたらしたが、ポリプレクスの穏やかな安定性は、立体安定化のみが限定された役割を演じ、追加の安定化メカニズムがポリプレクスの凝集を妨害するのに必要であることを暗示している[非特許文献12、22、23、24]。塩非浸透性リピッドバリアの存在は高塩状態であるMNPの観察された安定性に貢献している。リポソームの場合と同様に、リピッド単層バリアは、外部環境からポリプレクス核への塩の到達を阻止し、そうでなければ不安定であるポリプレクスへの塩誘導凝集に対抗する防護を提供する。遊離リピッドが介在しない中間PLPEI/DNA複合体での適度な凝集は、PLPEI複合体のホスホリピッドモイエティが単独では、結合ホスホリピッドに非結合リピッドが補充されたときほどには完全なリピッドバリアを提供しないことを示している。
【0021】
PEG−PEのごときPEG−リピッドの量は、遊離リピッドを予備形成複合体に取り込ませ、最終構築物に立体安定性を提供するような量となるように選択される。混合物内のPEG−PE含有量が5モル%までのミセル形成の開始により増加するとき、PEG−PEとホスホリピッドとの混合物がミセル相からラメラ相に進化することを考えると[非特許文献25、26]、10モル%のPEG−PE濃度での遊離リピッド混合物の水中縣濁物はラメラ相よりもミセル相へ移行する傾向にある。予備形成PLPEI/DNA複合体での培養によって、遊離および結合リピッドを含んだ全リピッドのPEG−PE含有量は4.3モル%に減少するが、そこではラメラ相となるであろう。ミセル相のPEG−PE分子は、所謂“ミセルトランスファー”[非特許文献27]によって予備形成されたホスホリピッドベシクルの表面に自然に結合する。遊離リピッドはPLPEI/DNAポリプレクスの疎水性リピッド領域と相互作用し、モノマーへの分離に続いて、PLPEI結合体からのホスホリピッドモイエティと共に、遊離リピッドを予備形成複合体のリピッド層に自然結合させ、ポリプレクス核を包囲するリピッド単層エンベロープを形成ことが期待される。最終構築物は、PEI/DNAポリプレクス核とリピッド単層エンベロープとを備えた立体的に安定したミセル様ハードコア粒子である。
【0022】
プルロニックP123移植PEI/DNAポリプレクスシステム[非特許文献28、29]の実現可能な安定化メカニズムとして類似した疎水性相互作用が提案された。ここでは、プルロニックP123移植PEIの両親媒性プルロニックP123鎖がミセル様構築物をポリプレクス核の周囲に形成し、ミセル様構築物の安定性を最良化させるために、プルロニックP123移植PEI結合物との疎水性相互作用によって非修正プルロニックP123がポリプレクスに取り込まれて充填された。
【0023】
ある意味では、ミセル様ナノ粒子は、所謂、葉酸標的アニオン性リポソーム内にポリリシン/DNAを混入した“リポソーム混入ポリカチオン性濃縮DNA粒子”(LPD II)に似ている[非特許文献30]。あるいは、予備形成アニオン性リポソーム内にPEI/DNAポリプレクスを混入することにより作製された“人工ウィルス様粒子”[非特許文献31、32、33]、または外部PEG層によって安定化されたリピッド二重層内にPEI/DNAポリプレクスを内包することで構築された“予備濃縮安定プラスミドリピッド粒子”(pSPLP)[非特許文献16]に類似する。特に、pSPLPは、ポリプレクスを安定リポソーム内に内包する利点を示す。すなわち、延長循環時間と、PEIのエンドソーム溶解活性による改善されたトランスフェクション能力のために、腫瘍へのPEI/DNAポリプレクスの効果的な全身送達を示す。しかしながらpSPLPの作製には、エタノール(有機溶媒)内でのリピッドによる有害な予備形成ポリプレクスの培養が関与するため、濃縮と透析の複数ステップが必要となる。
【0024】
ミセル様ナノ粒子はポリプレクスを(本例の場合には単層であるが)立体的に安定したリピッド膜と組み合わせる利点を提供する。PLPEI結合は、同時進行的なDNA濃縮とリピッド膜形成によってDNA付加MNPの自己構築プロセスを可能にする。リポソーム包含DNA−PEI複合体と較べて、MNPは、100%の効率であるさらに便利なワンステップDNA載荷能力を提供し、加えて、リポソーム組成物へのDNA包含のためのいかなる方法よりも多い可載容量(〜530μgDNA/μモルの全リピッド、または核酸として全粒子質量の30%)を付与する[非特許文献34]。
【0025】
本発明のミセル様ナノ粒子10はリピッド単層によって内包された核複合体を含む(図1参照)。この核複合体20は、PEI等のカチオン性ポリマー40の1以上の分子に静電的に結合した1以上の核酸分子30を含む。このカチオン性ポリマーは包含するリピッド単層内に存在するリピッド分子50に共有結合する。一方、カチオン性ポリマーは核酸を結合してパッケージ化し、ナノ粒子の核複合体を形成する。一方、このカチオン性ポリマーは、リピッド分子(好適にはホスホリピッドの疎水性部分)に共有結合部60を提供し、リピッド70の単層による核複合体の内包を仲介し、安定性を向上させ、細胞膜との溶融能力を向上させる。
【0026】
ミセル様ナノ粒子は平均粒径が一般的に約10nmから約1000nmの範囲である。好適には、それらの平均粒径は、約10nmから約500nmであり、さらに好適には約10nmから約200nmであり、さらに好適には約4nmから約100nmであり、または約50nmから約70nmである。MNPのサイズは、細胞内に侵入し、細胞の細胞質内に核酸含有物を導入させる性能に見合ったものとする。
【0027】
カチオン性ポリマーは、生理学的条件下(すなわち、身体内または細胞内のpH条件と塩条件)にて核酸を結合できるように、分子あたりに少なくとも2個の正電荷を備え、十分な電荷密度と分子サイズとを有した任意の合成または天然ポリマーでよい。例えば、適したカチオン性ポリマーには、ポリエチレンイミン、ポリオルニチン、ポリアルギニン、ポリリシン、ポリアリルアミン、およびアミノデクストランが含まれる。カチオン性ポリマーは直鎖あるいは分枝鎖のものでよく、ホモポリマーでもコポリマーでも構わず、アミノ酸を含んでいるときにはLまたはD形態を有することができ、これらの特徴の任意組み合わせを有することができる。好適には、カチオン性ポリマー分子は十分に融通性を有したものであり、1以上の核酸分子とコンパクトな複合体を形成することができる。
【0028】
カチオン性ポリマーに接合しているリピッド分子は、“第1リピッド”、“第1ホスホリピッド”、“結合リピッド”または“結合ホスホリピッド”と呼ばれる。適したリピッドには、他の両親媒性リピッドとの組み合わせでリピッド単層または二重層を安定的に形成あるいは組み入れ構成する天然または合成両親媒性リピッドが含まれる。リピッドの疎水性モイエティは単層または二重層の疎水性領域と接触しており、その極性ヘッド基モイエティは外部水性層に向いており、単層または二重層の極性表面はこの場合ナノ粒子の外側表面に向いている。両親媒性リピッドの親水性特徴は、炭化水素、燐酸塩、カルボン酸、硫酸、アミノ、スルヒドリル、ニトロ、ヒドロキシおよびそれらの類似基、等々の極性または帯電基の存在から誘導される。両親媒性リピッドの疎水性部分は、長鎖飽和および非飽和の脂肪族炭化水素基および1以上の芳香族、脂環族、あるいは複素環式基で置換されたそのような基を含む非極性基を含むことで得られる。両親媒性リピッドの例には、天然または合成ホスホリピッド、グリコリピッド、アミノリピッド、スフィンゴリピッド、長鎖脂肪酸およびステロール、等々が含まれる。ホスホリピッドの代表例には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リソホスファチジルコリン、リソホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、およびジリノレオイルホスファチジルコリン、等々が含まれる。スフィンゴリピッド、グリコスフィンゴリピッド、ジアシルグリセロルおよびβアシルオキシ酸のごとき燐を含まない他の化合物も両親媒性リピッドとして使用できる。
【0029】
実施態様によっては、本発明のナノ粒子はカチオン性ポリマーと結合していない追加リピッド(“非結合リピッド”または“非結合ホスホリピッド”)を含む。これら追加の非結合リピッドは内包リピッド単層を安定させて完成させるよう作用し、さらにモイエティ(例:PEG)すなわち標的モイエティを安定させるための結合部位としても作用する。非結合リピッドはホスホリピッドのごとき任意の上記両親媒性リピッドで構わず、トリグリセリドおよびステロール(例:コレステロール)のごとき他のリピッドであっても構わない。ナノ粒子内の結合および非結合リピッドの少なくとも1つは、例えば、ホスホリピッドのごときリピッド形成二重層であるべきである。1好適実施形態では、ナノ粒子のリピッド単層は、第1部分である結合リピッド、第2部分である非結合リピッド、および第3部分であるコレステロールを含む。各部分の相対量は変動してもよいが、好適には、それぞれの結合および非結合リピッドに対して単層リピッドの約10%から70%のモル分率範囲であり、コレステロールの単層リピッドの約1%から30%、あるいは約5%から20%のモル分率範囲である。例えば、1実施態様では、リピッド単層は結合リピッド、非結合リピッドおよびコレステロールを4:3:3の割合で含む。
【0030】
MNPのリピッド単層は、その目的が、例えば、粒子を安定化させるか、標識化するか、標的機能を付与する等である様々な追加分子構成要素を含むことができる。このような構成要素には、ペプチド、プロテイン、界面活性剤、リピッド誘導体および、特に、ジアルキルオキシプロピル、ジアシルグリセロル、ホスファチジルエタノールアミンおよびセラミドに結合されたPEGのごときPEG−リピッド誘導体が含まれる(例:米国特許5885613参照)。実施態様によっては、ナノ粒子は本質的に界面活性剤を含まない。PEGリピッドが単層に加えられる場合には、好適には、単層リピッドの重量の約0.5%から20%に対応する量、さらに好適には約1%から10%に対応する量、さらに好適には約2%から5%に対応する量で存在する。1好適実施態様では、ナノ粒子のリピッド単層は、4:3:3:0.3の割合で結合リピッド、非結合リピッド、コレステロール、およびPEG−PEを含んでいる。
【0031】
ナノ粒子にペプチドまたはタンパク質を結合するのに利用できるリピッド誘導体はp−ニトロフェニルカルボニルPEG−PE(pNP−PEG−PE)である。例えば、抗体または他のタンパク質分子上の遊離アミノ基は、pNP基と反応して、共有的に標的モイエティをナノ粒子に結合させることができる。例えば、「リポソーム:実用方法」(V.P.トリチェリンとV.ワイジグ、オクスフォード大学プレス2003)参照。
【0032】
ナノ粒子の中心核複合体は、カチオン性ポリマーに加えて、1以上の核酸分子を含む。これら核酸は、一般的に、生物学的作用を及ぼすことが期待される生細胞または組織に送達される。“核酸”とは、単ストランドまたは双ストランド形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマー(DNAまたはRNA)のことである。この用語は、知られたヌクレオチド類似体または、合成あるいは天然発生的な修正バックボーン残基または連結体を含んだ核酸を包含する。このような類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスイホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、およびペプチド核酸(PNA)、等々が含まれる。DNAは、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの部分、予備濃縮DNA、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)生成物、ベクター(Pl、PAC、BAC、YAC、人工クロモソーム)、発現カセット、キメラ配列、クロモソームDNA、またはこれらの誘導体が含まれる。核酸は、遺伝子、cDNA、遺伝子コード化mRNA、および干渉RNA分子と交換可能に使用されている。“遺伝子”とは、ポリペプチド、またはポリペプチド前駆物質を生成するのに必要な部分的または完全コード化配列を含んだ核酸(例:DNAまたはRNA)配列のことである。
【0033】
“RNAi”とは、干渉RNAが標的遺伝子と同一細胞内に存在するとき、干渉RNAの配列と相補的であるmRNAの分解を仲介することで標的遺伝子の発現を低下または阻害することができる双ストランドRNAのことである。よってRNAiは、2つの相補ストランドまたは1つの自己補完ストランドによって形成された双ストランドRNAである。RNAiは典型的には、標的遺伝子と実質的に、または完全に同一性を有する。干渉RNAの配列は、完全長標的遺伝子またはそのサブ配列に対応する。RNAiは小型干渉RNAまたは“siRNA”を含む。siRNAは、長さで約15〜60、15〜50、15〜50または15〜40の塩基対を含む。さらに特徴的には、長さで約15〜30、15〜25または19〜25の塩基対を含み、好適には、約20〜24または約21〜22あるいは21〜23の塩基対を含む。siRNA二重鎖は、約1〜4のヌクレオチド、好適には約2〜3のヌクレオチドの3’オーバハングを含み、さらに5’燐酸末端を含むことができる。siRNAは化学的に合成でき、またはプラスミドによってコード化できる。siRNAは長いdsRNAの切断によって発生させることもできる。好適には、dsRNAは長さが少なくとも約100、200、300、400、または500ヌクレオチドである。dsRNAは1000、1500、2000、5000ヌクレオチドの長さでも、さらに長くてもよい。dsRNAは遺伝子転写全体または遺伝子転写の一部のためにコード化することができる。
【0034】
本発明のナノ粒子内にパッケージするためのカチオン性ポリマーと核酸分子との比は、全ての核酸を複合化させるように調整される。この目的を達成するゲル電気泳動法は以下の例において解説されている。一般的に、アミンと燐酸の比(N/P)は約1から20の範囲が適している。約10の比が好適である。個別のMNP内に載荷できる核酸の量は幅広く変動させることができる。完成MNPの核酸含有量は40重量%まで可能であるが、この量は従来の核酸含有ナノ粒子の場合よりもずっと多い。技術の種類によっては、非常に少ない量の核酸で間に合うか、または全く核酸(例:対照粒子)が不要であるが、このような場合には、安定核を形成するためにカチオン性ポリマーの一部がアニオン性ポリマー(例:カルボキシメチルセルロース)と複合化できる。カチオン性ポリマー内の帯電基と核酸の割合は、そこでそれらが組み合わされる溶液のpHによって変動させることができる。このポリマーは、望む割合の可イオン化基が核酸との組み合わせのために帯電できるように設計できる。実施態様によっては、例えば、少なくとも約10%の基が帯電される(例:正帯電)。好適実施態様では、ポリマーの約50%から100%の基が形成時および完成核複合体内で帯電されている。
【0035】
一般的に、本発明のMNPを、対象の遺伝子生成物の発現を抑制または制止させるように送達することが望まれる。あるいは、治療遺伝子は、欠陥遺伝子と置換するため、遺伝子生成物の発現を増強するため、あるいは他の遺伝子の発現を抑制するために細胞に送達される。本発明のMNPの標的として適している多くの遺伝子生成物は専門家には知られている。これらには、ウィルス感染および生存に関わる遺伝子、代謝性病気と疾患に関わる遺伝子、ガン発現および細胞形質転換に関わる遺伝子、血管原性遺伝子、炎症および自己免疫反応に関わる免疫調整遺伝子、リガンド受容遺伝子、および神経変性疾患に関わる遺伝子、その他が含まれる。適したRNAiまたは治療遺伝子配列を決まった手順で選択することができるユーザによって、任意の適した標的が選択できる。
【0036】
本発明はさらに、前述のナノ粒子を含んだ非ウィルスベクターを提供する。核酸−カチオン性ポリマー複合体を有した核複合体と、その遠位端(疎水性)でカチオン性ポリマーに結合している第1ホスホリピッドを含んだ内包リピッド単層を含むことに加えて、ベクターは核複合体からの核酸を細胞に導入するのに適している。これは、例えば、ベクターのリピッド単層の膜融合促進リピッドあるいはタンパク質を含ませること、あるいは、リガンドまたは抗体のごとき、標的細胞の表面に存在する受容体に結合する1以上の標的化剤を含ませるごとき様々なメカニズムのいずれかで達成が可能である。さらにこのベクターは、ベクターの別な核酸配列の発現または遺伝子同化を促進または抑制するように設計された核酸配列を含むことができる。
【0037】
本発明に従って、その核酸内容物を導入させるためにナノ粒子および非ウィルスベクターを適した細胞に送達する目的で、形成時に標的化剤または標的化モイエティをナノ粒子の表面に加えることができる。標的化モイエティのリピッド誘導体を使用して簡単に達成可能である非結合リピッドの中に標的化剤を含ませることによってこれは容易に達成できる。例えば、多くの標的化剤はペプチドまたはタンパク質であり、利用できる化学側鎖(例:pNP−PEG−PEと反応した標的化剤上のアミノ基)を介してリピッドに結合できる。適した標的化剤は、自然発生または人工抗体、あるいはそのアンチゲン結合断片、ドメインまたは単鎖抗体、細胞表面受容体のリガンド、ビオチン、等々である。
【0038】
本発明の別の実施態様は、リピッド単層によって内包された核複合体を含むミセル様ナノ粒子の作製方法である。ナノ粒子の核を形成するであろう複合体を形成するのに適した条件下で、前述のカチオン性ポリマー−リピッド結合体に、1以上の核酸分子が接触される。負帯電核酸は静電気的に結合体のカチオン性ポリマー部分に結合し、適した核複合体を形成する。この核複合体には1以上の非結合リピッドが補充され、その核複合体を内包するリピッド単層が形成される。
【0039】
本発明のさらに別な実施態様は、ミセル様ナノ粒子で細胞をトランスフェクトする方法である。細胞は、前述した非ウィルスベクターと、ベクターの核酸分子をその細胞内に導入するのに適した条件下で接触される。
【0040】
本発明のナノ粒子および非ウィルスベクターは、単独で、または、投与ルートおよび標準薬剤利用法に従って選択された生理食塩水またはリン酸バッファのごとき薬剤担体と共にナノ粒子を含んだ薬剤組成物として投与できる。この薬剤担体は一般的に粒子形成後に加えられる。薬剤調合物における粒子の密度は非常に多様である。すなわち、約0.05重量%以内または約2.5重量%以内から10重量%や30重量%まで幅広く調整できる。
【0041】
本発明の薬剤組成物は、従来の良く知られている殺菌技術を利用して殺菌できる。水溶液は、使用のためにパッケージに入れられるか、無菌条件および親液条件下で濾過される。この親液化された製剤は投与に先立って無菌水溶液と組み合わされる。この薬剤組成物は、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウムであるpH調整剤およびバッファ剤、強壮調整剤等のごとき、生理学的条件に近似させるため、必要に応じて薬学的に利用できる補助物質を含むことができる。さらに、粒子縣濁液は、保管時に遊離基やリピッド−過酸化毀損からリピッドを防御するリピッド保護剤を含むことができる。例えば、アルファ−トコフェロールのごとき親油性遊離基クエンチャも利用できる。
【0042】
本発明のナノ粒子と非ウィルスベクターは、例えば標的遺伝子の発現に関わる病気や疾患を治療または防止する目的で細胞内に核酸を導入するのに利用できる。従って、本発明は、核酸(例:RNAiまたは治療遺伝子)を細胞内に導入する方法も提供する。病気または治療を必要とする症状を有した患者を治療および病気を予防する方法においては、本発明の非ウィルスベクターは、体内または体外で1以上の細胞と接触される。その細胞は患者の細胞またはドナーの細胞である。細胞をベクターと接触させた結果、ベクターの1以上の核酸分子が患者の細胞内に導入され、病気が治療または予防される。実施態様によっては、細胞は体外でベクターと接触される。その後に細胞は治療または予防の一環として患者に投与される。適したミセル様ナノ粒子は前述のように形成される。その後に粒子は適した標的細胞と、核の送達の完了に十分な時間だけ接触される。本発明のナノ粒子は、一緒に混合され、あるいは接触される、実質的にいかなる細胞にも吸収が可能である。吸収されると、粒子は取り込み現象によって内在化されるか、細胞表面膜でリピッドと置換されるか、標的細胞と融合する。それによって粒子の核酸の細胞への導入または取り込みが実行される。核酸の細胞内送達のために最も頻用される標的細胞は新生物細胞(腫瘍細胞)である。標的になり得る他の細胞には、造血前駆細胞または幹細胞、線維芽細胞、ケラチン細胞、肝細胞、内皮細胞、骨格および平滑筋細胞、骨芽細胞、神経細胞、休止リンパ球、最終分化細胞、リンパ球細胞、上皮細胞、骨細胞、等々がある。
【0043】
体外での利用の場合には、本発明に従ったナノ粒子による核酸の送達は、植物由来であろうが、あるいは脊椎動物あるいは無脊椎動物の動物由来であろうが、どのような組織由来のものであろうが、培養基で成長したどのような細胞にも適用できる。体外で実行されるときには、細胞とナノ粒子との接触は生物学的に融和性である媒質内で行われる。粒子の密度は特定の利用形態に応じて変更することができる。ナノ粒子による体外での細胞の治療は一般的に、生理学的温度(約37°)で、約1時間から48時間、好適には約2時間から4時間実施される。
【0044】
細胞内での遺伝子発現を抑制する方法が提供される。この方法は、細胞を、その核複合体がsiRNAまたはRNAiを含むミセル様ナノ粒子、あるいは、RNAiまたはsiRNAを標的細胞内に発生させる核酸と接触させることを含む。このsiRNAまたはRNAiは細胞内に導入され、対象遺伝子の発現を抑制する。このため、siRNAまたはRNAi配列は知られた方法で特別に設計されたものである。
【0045】
実施態様によっては、ナノ粒子は、siRNAのごとき核酸、または治療遺伝子を、イヌ類、ネコ類、ウマ類、ウシ類、ヒツジ類、ヤギ類、げっ歯類、あるいはヒトを含んだ霊長類等の動物に体内送達する目的で利用できる。体内送達は対象部位に直接的に送達する局所的なものであって、全身的なものであってもよい。体内遺伝子治療のための全身的送達、すなわち、循環等の身体システムを利用した治療用核酸の遠位標的細胞への送達は、PCT特許願WO96/40964、US特許5705385、5976567、59815021、および6410328において開示されてもののごとき核酸−リピッド粒子を利用して達成されている。
【0046】
本発明はミセル様ナノ粒子をキット形態でも提供する。キットは典型的には容器と、1以上の本発明組成物とを含み、使用上の注意と投与法が記載されている。実施態様によっては、ナノ粒子はその表面に標的モイエティが既に取り付けられている。別の実施態様では、キットはユーザが選択した標的モイエティと反応することができるナノ粒子を含むであろう。標的モイエティ(例:抗体、タンパク質)を内包単層内のリピッドに取り付ける方法は当技術分野の専門家には知られており、キットはこのような方法を実施するための説明書を供給できる。
【0047】
本発明の別な実施態様は、リピッドアシルまたはアルキル鎖の遠位端に共有的に結合されたカチオン性ポリマーを含む化学結合体(共役体)である。このような化学結合体はMNPの作製に使用され、薬剤、化粧品、食品、診断ツール、医療器具、およびそれらのコーティング剤、並びにバイオセンサーのごとき商業製品に使用するためのミセル−、単層−または二重層−含有構築物の作製において利用される。この化学結合体は、両親媒性リピッド分子の遠位疎水性部分に化学的に結合されているポリエチレンイミンのごとき、1以上の前述したポリマー性カチオンを含む。この化学結合体は共有結合によるものであり、実施態様によっては、この結合は、酸性pHまたは酵素の作用等の条件によっては切断が可能である。例えば、この結合体は1−パルミトイル−2−アゼラオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンをポリエチレンイミンと反応させて形成できる。この化学結合体は核酸−ポリカチオン−リピッド複合体を形成するために1以上の核酸分子に結合することができる。
【0048】
以下の実施例は本発明の利点を説明し、当技術分野の専門家に本発明を実施させるために提供されている。これらの実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0049】
材料および方法
材料
特に説明がない限り、全ての材料はシグマ−アルドリッチ社から購入された。緑色蛍光タンパク質(GFP)をコード化しているプラスミドDNA(pDNA)は、エリム・バイオファーマスーチカルズ社(カルフォルニア州ヘイワード)から1μg/μlの最終濃度にて購入された。ローダミン標識されたpGFP(pGeneGripローダミン/GFP)はジェンランティス社(カルフォルニア州サンディエゴ)から購入された。必要に応じ、前述の方法[17]に従って、0.1μCi/μgのDNAを得るために、DNAは111In(マサチューセッツ州のパーキンエルマー・ライフ&アナリティカル・サイエンシズ社)で放射能標識化された。この濃度と純度は0.8%のアガロースゲル電気泳動によって測定された。1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1,2−ジスレアロイルーsn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](PEG−PE)、コレステロールおよび酸化ホソホリピッド、1−パルミトイル−2−アゼラオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(AzPCエステル)がアバンチ・ポーラー・リピッド社(アラバマ州アラバスタ)から購入された。NM1.8kDaを有した分枝鎖PEI(bPEI)はポリサイエンシズ社(ペンシルベニア州ワォーリントン)から購入され、水中で溶解されて最終濃度1.0μg/μlにされた。
【0050】
ホスホリピッド−ポリエチレンイミン接合体(PLPEI)の合成
12mgの分枝鎖PEI(7μモル)が0.5mlのクロロホルムに溶解され、1mlのクロロホルムに溶解された5mgの酸化PC(AzPCエステル、7μモル)と混合された。bPEIは1:2:1モル比である第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンを有しているとするなら、この反応混合物は1:10の酸と第一級アミンのモル比に対応する。すなわち、余剰の反応性アミンを含む。イミダゾリド誘導体を形成することで酸を活性化させるために、0.5mgのカルボニルジイミダゾール(CDI、3μモル)が上記溶液に加えられた。この反応混合物は10μlのTEA(トリエチルアミン)で室温にて48時間撹拌しながら培養された。続いて窒素ガス流によってクロロホルムが除去され、残留物は2mlのdHOで縣濁された。生成物はdHO(MWCO、2,000Da)に対して透析され、凍結乾燥され、構築物はH−NMR(CDCl内、300MHz)で確認された。接合程度は、NMRスペクトルにて、ホスホリピッドヘッド(3.4pp)のPEI主鎖のエチレン(−CHCH−)信号(2.4〜2.8ppm)とメチル(−CH)信号との比からPEIとリピッドが1:1モル比であると決定された(σ 0.9:2.7 H、σ 1.3:17・6 H、σ 1.6:5.4 H、σ 2.4−2.8:96.0 H、σ 3.3:12.8 H、σ 3.6:1.58 H、σ 4.0−4.6:5.43 H)。PLPEI結合体は水に溶解され、1.5μg/μl(PEIでは1.0μg/μl)の濃度にされた。
【0051】
PLPEIとのプラスミドDNA複合化
一定量のプラスミドDNA(100μg)と変動量のPLPEIがHBG(10mM HEPES、5%d−グルコース、pH7.4)で別々に希釈され、最終量250μlにされた。その後、PLPEI溶液は、急速添加によってDNA溶液に移され、渦流撹拌された。得られたポリプレクスは、Eゲル電気泳動システム(インビトロゲン・ライフ・テクノロジー社)を使用してアガロースゲル電気泳動により分析された。プレキャスト0.8%のEゲルカートリッジが2分間60Vおよび500mAで予備作動され、1μgのpDNAの載荷が続いた。望ましいアミン/リン酸比(N/P)は、43.1g/モルが1アミンを含むPEIのそれぞれの反復単位に対応し、330g/モルが1リン酸を含むDNAのそれぞれの反復単位に対応するという想定のもとで計算された。
【0052】
プラスミドDNAを内包するミセル様ナノ粒子(MNP)の作製
MNPは、PLPEI:POPC:コレステロール:PEG−PE(4:3:3:0.3、モル/モル)とpDNAとで構築された。まず、N/P比が10であるPLPEI(PEIとして130μg)とプラスミドDNA(100μg)とがHBGで別々に希釈され、最終量250μlにされた。PLPEI溶液は急速添加DNA溶液に移され、渦流撹拌された。POPC、コレステロールおよびPEG−PE(42μg、21μg、15μg、3:3:0.3モル/モル)の混合物から乾燥リピッド膜が別個に作製され、500μlのHBGで水和された。このリピッド縣濁液は予備形成PLPEI/DNA複合体で24時間、室温にて培養された。あるいは、このPLPEI/DNA複合体はリピッド膜に直接的に加えられた。得られたMNPの縣濁液は使用時まで4℃で保管された。
【0053】
サイズ及びゼータ電位
このMNPはHBGで希釈され、最良の拡散密度が得られた。流体力学径とゼータ電位とが、ゼータプラス粒子分析器(カルフォルニア州サンタバーバラのブルックヘィブン・インストルメンツ社)を使用して準弾性光散乱(QELS)によって測定された。散乱光は90°の角度で23℃において検出された。データ分析のために粘度0.933mPaと屈折率1.333が使用された。機器は、ラテックス微小球縣濁液(0.09μm、0.26μm;カルフォルニア州パロ・アルトのデューク・サイエンティフィック社)を使用して定期的にキャリブレーションされた。
【0054】
フリーズフラクチャー電子顕微鏡
MNPはサンドイッチ技術と液体窒素冷却プロパンを使用して急冷された。氷結晶形成を回避し、低温固定プロセスにより他の人工現象を回避するため10000K/秒の冷却速度が採用された。フラクチャープロセスがJEOL JED−9000フリーズエッチング装置で実行され、露出したフラクチャー平面はプラチナによって25°から35°の角度で30秒間、および炭素によって35秒間覆われた[2kV、60mAから70mA、1x10−5トール(1トール=133Pa)]。複製物は燻蒸HNOによって24時間から36時間洗浄され、少なくとも5回、新鮮なクロロホルム/メタノール[1:1(vol/vol)]による反復撹拌処理が続き、JEOL100CX電子顕微鏡によって検査された。
【0055】
塩誘導凝集に対抗する安定性
塩誘導凝集に対するMNP粒子のコロイド安定性がMNPサイズ(流体力学径)のモニターによって確認された。前述のサイズを測定しながら、NaCl(5M)が最終的に0.15MとなるようにHBG内のMNPに加えられた。
【0056】
ヌクレアーゼ耐性度
サンプルを50単位のDNaseI(ウィスコンシン州マジソンのプロメガ社)により30分間、37℃で処理することで、MNP粒子内のDNA分子のヌクレアーゼ耐性度が決定された。最終濃度5mMにて反応はEGTAおよびEDTAを使用して決定された。DNA分子はヘパリン(DNAの50単位/μg)を37℃で30分使用して解離され、生成物は0.8%のプレキャストアガロースゲル上で分析された。
【0057】
細胞毒性アッセイ
線維芽細胞であるNIH/3T3細胞が、96ウェルのプレートに10%ウシ胎児血清(FBS)が補充されたDMEM内で育成された。細胞は、100μg/mlのPEIまでそれぞれの処方物の連続的希釈物を含んだ無血清媒質(100μl)と媒質を交換することで処理された。4時間の培養後、細胞はPBSで2度洗浄され、完全媒質(100μl)に戻された。24時間の培養後、20μlのセルチター96アクエアスワン溶液(ウィスコンシン州マジソンのプロメガ社)が各ウエルに加えられ、プレートは2時間、再培養された。490nmでの吸収が、96ウエルのプレートリーダ(フィッシャー・サイエンティフィック社のマルチスキャンMCC/340)を使用して各ウエルに対して測定された。対照として媒質のみで処理された細胞を使用して相対的細胞生存率が計算された。
【0058】
薬物動態学(薬力学)及び生物内分布
雄のbalb/cマウス(20g〜30g)がケタミン/キシラジン(1mg/0.2mg/動物)で麻酔状態にされ、ノースイースタン大学の動物管理使用委員会により承認されたプロトコルに従って、右側頚動脈を介して逆行方向にPE−10でカテーテルが挿入された。111In−DNA(〜2μCi 111In、20μg DNA)が載荷されたMNPが尻尾の静脈に注射された。静脈ボーラス注射の1分後、2分後、5分後、10分後、30分後および60分後に血液サンプル(30μl)が頚動脈のカテーテルを介して採取された。サンプルボリュームはヘパリンを含んだPBS(10U/ml)と交換された。60分後の最後の血液採取後に動物は頚椎脱臼により処分され、器官サンプル(肺臓、肝臓、脾臓、腎臓、筋肉、および皮膚)が採取された。血液と器官サンプルの放射能がγカウンターで測定された。放射能は注射投与量の百分率で表された(器官の場合%ID/g、血液の場合%ID/ml)。器官配分値は対応する器官の血液量に関して補正された。血液の“濃度vs時間”データを2指数等式(C(t)=A−αt+B−βt)に当てはめることで薬力学パラメータが決定された。
【0059】
体内遺伝子発現
雄のC57BL/6マウス(チャールスリバー研究所)が、ノースイースタン大学の動物管理使用委員会により承認されたプロトコルに従って、処理の14日前に1x10LLC腫瘍細胞を有した左側腹に皮下的に接種された。200μlの注射量に40μgのpGFPを含んだMNPが尻尾の静脈注射により投与された。同じようなサイズの腫瘍を有した非注射マウスが陰性対照として使用された。麻酔マウスは頚椎脱臼によって48時間後に処分され、切除された腫瘍は固定されることなくティシューテックOCT4583コンパウンド(カルフォルニア州サクラ・ファインテック社)内で直ちに冷凍され、8μm厚の断片がクライオスタットで準備された。蛍光顕微鏡(オリンパスBX51)によりGFP蛍光が可視化された。
【実施例1】
【0060】
ミセル様ナノ粒子(MNP)の作製
ミセル様ナノ粒子(MNP)はプラスミドDNAをPLPEIと複合させ、続いてこの予備形成複合体を、PEG−ホスファチジルエタノールアミン結合体(PEG−PE)を含んだリピッド層を内包させて作製された(図1)。複合化に関して、アガロースゲル上へのDNAの移動を完全に阻止するのに必要なアミンの量に基づいて、PLPEIとDNAの最良比が決定された。なぜなら、複合体の形成はDNAの移動を阻止し、DNAをウエル内に維持するからである。定量のプラスミドDNAがPLPEIと変動するアミン/リン酸比(N/P)で混合され、アガロースゲル電気泳動により分析された。N/P比が増加するに従ってDNAの結合分画は増加し、ほとんどのDNAは6を超える高いN/P比で結合された。PLPEIの複合特性は非修正PEIの複合特性に比肩し、DNA複合化のためのPEI容量がリピッド結合によっては消滅しないことを示した(図2a)。全DNAが複合体に結合している場合にはN/P比10が選択され、以下のステップで使用された。
【0061】
PLPEI/DNA複合体を内包するため、POPC、コレステロール、PEG−PE(3:3:0.3 モル/モル)を含む遊離リピッドの混合物が水性縣濁物として別個に準備された。このリピッド縣濁物は予備形成PLPEI/DNA複合体で培養され、PLPEIのリピッドモイエティと遊離リピッドとの間の疎水性相互作用によって促された(大抵は単層であるが)随意のエンベロープ形成に導いた(挿入後技術)。遊離リピッドの最良量は、予備形成PLPEI/DNA複合体に完成単層エンベロープを提供するであろうリピッド分子数から近似的に予測された。50nm径の二重層リポソームが約25000リピッド分子を含むと想定し[18][19]、PLPEI/DNA核が質量/体積比1g/mlを有していると想定すると、粒径50nmで、全質量が230μgの粒子核の全表面を覆うのに約0.2μモルの全リピッドが必要であると計算された。すなわち、全質量の1mgの粒子核表面を完全に覆うには1μモルの全リピッドが必要である。よって、特に記載がないかぎり、100μgのDNAが131μg(0.08μモル)のPEIと49μg(0.08μモル)のPLに対応する180μgのPLPEIと複合化され、続いて42μg(0.005μモル)のPOPC、21μg(0.055μモル)のコレステロールおよび15μg(0.005μモル)のPEG−PEで培養された。
【0062】
遊離リピッドのPLPEI/DNA複合体との相互反応および組み込みは、蛍光標識DNA(Rh−DNA)と蛍光標識遊離リピッド(CF−PEG−PE)とを同時局在させることで、蛍光顕微鏡(図示せず)により確認された。単層エンベロープを有した特徴的ハードコア構築物はフリーズフラクチャー伝達電子顕微鏡(ffTEM)で明確に確認された。ffTEMは平均粒径50nmの良く成長した球状ナノ粒子を明示した(図2b)。全粒子は構築物の背後に陰影を表示した。これは、ミセルを含む“ハードコア”粒子にとって典型的なことである。この現象は、凹状および凸状フラクチャー平面を表示する(それぞれ構造物の前方及び後方)リポソームのごとき二重層構築物のフラクチャー現象とは異なるものである。
【実施例2】
【0063】
MNPの物理化学的特性
伝統的なPEI/DNAポリプレクスは高生理食塩水条件下で急速に凝集する[8]。塩誘導凝集化に対抗するリピッドエンベロープの安定化効果を示すため、NaClが最終濃度0.15Mとなるように、流体力学径をモニターしながら複合処方物に加えられた。予想通り、PEI/DNAポリプレクスはNaClを加えた直後に凝集を開始し、24時間でほぼ20倍にまで流体力学径を継続的に増加した。遊離リピッドとPEG−PEを有さない中間PLPEI/DNA複合体はNaClの添加直後に2倍の増加を示したが、24時間にわたって比較的に一定であった。一方、MNPは安定状態を保ち、塩の追加による目立った凝集は24時間発生しなかった(図3a)。
【0064】
ゼータ電位測定によって、MNPが−2.1±0.86mV(平均±s.e.m.、n=5)である好適な中性表面電荷を有することが分った。一方、PEI/DNAポリプレクスはさらに有害な高表面正電荷である20.2±1.38mV(平均±s.e.m.、n=5)を有する。MNPの中性表面電荷はまた、さもなければ正電荷であるPEI/DNA核の電荷シールドを提供するリピッド層の存在を暗示した。
【0065】
リピッド層の存在は、載荷されたDNAを酵素分解から完全防御したことによってさらに示された。酵素処理によって遊離DNAは完全に分解したが、PEI/DNAまたはMNPのDNAには変化は見られなかった。酵素処理後に完全DNAの取り込みは少々阻害された。恐らくは酵素の干渉が原因であろう。完全DNA(ImageJ、NIH)の定量化は、70%だけがPEI/DNAから回収されることに較べて、93%もの付加DNAがMNPから回収されたことを示した。このことはリピッド膜内のDNAの完全内包化の概念を支持した(図3b)。
【0066】
NIH/3T3細胞に対するMNPの細胞毒性も評価された。MNPは、4時間の処理に続いた24時間の培養後に100μg/mlのPEI濃度では細胞毒性を一切示さなかった。このことはPEI/DNA複合体の場合とは驚くべき対比であった。PEI/DNA複合体は15μg/mlのPEI濃度では非常に有毒性であった(図4)。この結果は、PEI/DNA複合体の表面の強力な正電荷に対してMNP上が中立表面電荷を示しているデータに鑑みて非常に明確であるように思われる。
【実施例3】
【0067】
体内生物分布および遺伝子発現
血液中のMNPの延長された循環時間、すなわち腫瘍のごとき標的組織へのそれらの増強された送達の実現可能性を証明するため、薬力学および体内分布研究が、マウスに111In−DNAが載荷されたMNPを使用して実行された。111In−DNAが載荷されたMNPの体内ボーラス投与後の放射能が測定され、対照PEI/111In−DNA複合体のものと比較された。10分後に、PEI/DNAポリプレクスに対する約10%のID/mlと較べて、MNPの30%ものID/mlが血液内に残った。注射の1時間後にも、MNPの約20%のID/mlが血液内に残り、たったPEI/DNAポリプレクスの5%のID/mlが循環時に検出されただけであった(図5a)。
【0068】
PEI/DNAと較べて遅速であるMNP内のDNAの除去、すなわち一層延長された循環時間も薬力学パラメータにより確認された。収集された血液濃度データを2隔室モデルに対する60分に適応させることで半減期(t1/2ベータ)が予測され、PEI/DNAポリプレクスに対しては33分であるのに対して約239分であることが分った。“濃度vs時間”曲線で得られた曲線(AUC)の下側面積も、PEIのポリプレクスと比較してMNP内のプラスミドDNAの全身利用性の相当な増加を示した(1404%ID・分/mlvs530%ID・分/ml)。延長循環時間はRES取り込みによる低減した除去によるものであった。対照ポリプレクスのDNAが主としてRES器官で蓄積したが(40%ID/g肝臓および30%ID/g脾臓)、MNPのDNAはRES器官を非常に減少した蓄積(肝臓と脾臓の場合には5%ID/g)のみで通過した(図5b)。これらを考慮すると、RES部位での低蓄積と共に長い循環時間はMNPを体内利用に適したものとしている。
【0069】
長時間循環する薬剤ナノ担体の増強された透過性と保持性(EPR)効果−仲介受動蓄積に適した、腫瘍のごとき標的の増強された遺伝子送達性および体内トランスフェクションの実現可能性が、LLC腫瘍を有したマウスにおいて証明された。腫瘍組織での遺伝子発現が、緑色蛍光タンパク質(GFP)のためのプラスミドDNAコード化が付加されているMNPの体内投与に続いて評価された。注射の48時間後、MNPで処理された動物の腫瘍で発光するGFP蛍光が観測されたが、対照マウスの腫瘍には蛍光は見られなかった(図6)。動物の生存が短かったため、PEI/DNAポリプレキシを注射された動物の腫瘍組織のGFP発現が評価されなかった。対応する投与量でのPEI/DNAポリプレキシの静脈投与は、呼吸不全による30分以内の動物の死をもたらした。これは大きく減少したMNPの有毒性の追加的な確認である。
【0070】
これらを考察すると、RES部位での低蓄積と共に血液中の長循環時間は腫瘍部位でのMNPの多量の蓄積を可能にし、強力なレポータ遺伝子発現に導いた。MNPのこれら性質は、MNPを体内遺伝子治療に適したものとしている。
【実施例4】
【0071】
siRNA−付加MNPの作製
siRNA付加MNPの作製には、DNAの場合と同様に、siRNAはまず、DNA含有MNPの作製と同じくN/P比10でPLPEIと複合化される。選択量のsiRNAが、N/P比10を提供するのに必要な量で使用されるPLPEIと混合された。アンチセンス付加MNPを作製するために等量のアンチセンスオリゴヌクレオチドがsiRNAと置換できる。そのように形成されたsiRNA/PLPEI複合体は以下のステップで利用される。
【0072】
別に、POPC、コレステロール、PEG2000−DSPE(3:3:0.3モル/モル)を含んだ遊離リピッドの混合物が、水性縣濁物として調製される。この遊離リピッド縣濁物は予備形成PLPEI/DNA複合体で培養される。siRNA核が1g/mlの質量/体積比を有するなら、約0.2μモルの全リピッドが、50nm径で全質量230μgの粒子核の全表面を覆うのに必要である。すなわち、1mgの全質量の粒子核の全表面を覆うには1μモルの全リピッドが必要である。
【0073】
PEG−PEの量、すなわち、10モル%が遊離であり、4.3モル%である全ホスホリピッドが、遊離リピッドを予備形成複合内に取り入れ、立体的安定性を最終構築物に提供するために選択される。予備形成PLPEI/DNA複合体での培養で、遊離および結合したリピッドを含む全リピッドのPEG−PE含有量は4.3モル%に減少する。ここではラメラ相が一般的である。最終構築物は、siRNA/PEIポリプレクス核とリピッド単層エンベロープとを備えた立体安定したミセル様ハードコア粒子である。
【0074】
遊離リピッドのsiRNA/PLPEI複合体との相互作用および組み入れは、蛍光顕微鏡を使用して、蛍光標識化されたsiRNA(Cy5−siRNA)と、蛍光標識化遊離リピッド(CF−PEGH2000−DSPE)との共局在によって確認される。単層エンベロープを備えた特徴的なハードコア構築物はフリーズフラクチャトランスミッション電子顕微鏡(ffTEM)によって確認される。
【0075】
本発明を1好適実施態様により解説してきたが、専門家であれば、ここで解説されている組成物並びに方法の様々な変更、均等物による置換、および代替形態を着想するであろう。よって、本発明の範囲は「請求の範囲」およびその均等物によってのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リピッド単層によって内包された核複合体を含んだナノ粒子であって、該核複合体は、カチオン性ポリマーの1以上の分子に静電気的に結合された1以上の核酸分子を含んでおり、該カチオン性ポリマーは前記リピッド単層に内在する第1リピッドに共有結合していることを特徴とするナノ粒子。
【請求項2】
カチオン性ポリマーは、直鎖状または分枝鎖状のポリエチレンイミン、ポリオルニチン、ポリアルギニン、ポリリシン、ポリアリルアミン、アミノデクストラン、あるいはそれらの任意の組み合わせを含んでいることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項3】
第1リピッドは、天然または合成のホスホリピッド、グリコリピッド、アミノリピッド、スフィンゴリピッド、長鎖脂肪酸およびステロールで成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項4】
リピッド単層は1以上の非結合リピッドをさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項5】
1以上の非結合ホスホリピッド分子は、天然または合成のホスホリピッド、グリコリピッド、アミノリピッド、スフィンゴリピッド、長鎖脂肪酸およびステロールで成る群から選択されることを特徴とする請求項4記載のナノ粒子。
【請求項6】
非結合ホスホリピッド分子の一部はペグ化(PEGy化)されていることを特徴とする請求項4記載のナノ粒子。
【請求項7】
リピッド単層はPEG−ホスファチジルエタノールアミンまたはpNP−PEG−PEを含んでいることを特徴とする請求項6記載のナノ粒子。
【請求項8】
リピッド単層はコレステロールをさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項9】
リピッド単層は、結合第1リピッド、非結合リピッドおよびコレステロールを4:3:3のモル比で含んでいることを特徴とする請求項8記載のナノ粒子。
【請求項10】
PEG−ホスファチジルエタノールアミンをさらに含んでおり、リピッド単層は、結合第1リピッド、非結合リピッド、コレステロールおよびPEG−ホスファチジルエタノールアミンを4:3:3:0.3のモル比で含んでいることを特徴とする請求項8記載のナノ粒子。
【請求項11】
1以上の核酸分子は、オリゴヌクレオチド、DNA分子、RNA分子あるいはそれらの任意の組み合わせを含んでいることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項12】
1以上の核酸分子は、プラスミドDNA、RNAi、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを含んでいることを特徴とする請求項11記載のナノ粒子。
【請求項13】
1以上の核酸分子は治療遺伝子を含んでいることを特徴とする請求項11記載のナノ粒子。
【請求項14】
治療遺伝子は細胞毒性または自殺遺伝子であることを特徴とする請求項13記載のナノ粒子。
【請求項15】
1以上の核酸分子は該粒子の40重量%までを含むことを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項16】
1以上の核酸分子は該粒子の略25重量%を含むことを特徴とする請求項15記載のナノ粒子。
【請求項17】
カチオン性ポリマーは第1リピッドのアルキル鎖またはアシル鎖の遠位端に共有結合していることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項18】
粒子の粒径は略50nmであることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項19】
請求項1記載のナノ粒子を含んでいることを特徴とする非ウィルスベクター。
【請求項20】
標的化剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項19記載のベクター。
【請求項21】
標的化剤は、抗体、その抗原結合断片、単鎖抗体、ドメイン抗体、細胞面受容体のリガンド、およびビオチンで成る群から選択されることを特徴とする請求項20記載のベクター。
【請求項22】
標的化剤は切断可能な結合によってベクターに結合されていることを特徴とする請求項21記載のベクター。
【請求項23】
切断可能結合は低pHで切断されることを特徴とする請求項22記載のベクター。
【請求項24】
切断可能結合は、ヒドラジン結合であることを特徴とする請求項23記載のベクター。
【請求項25】
切断可能結合は、カチオン性ポリマーを第1リピッド分子に結合する結合であることを特徴とする請求項22記載のベクター。
【請求項26】
リピッド単層によって内包された核複合体を含んだ請求項1記載のナノ粒子の作製方法であって、
(a)核酸、カチオン性ポリマー−リピッド共有結合体および1以上の非結合リピッドを準備するステップと、
(b)核複合体を形成するのに適した条件で前記核酸と前記カチオン性ポリマー−リピッド結合体とを接触させ、該核酸を該結合体のカチオン性ポリマー部分と静電気的に結合させるステップと、
(c)前記核複合体と前記非結合リピッドとを接触させ、リピッド単層を形成するステップと、
を含んで成ることを特徴とする方法。
【請求項27】
核酸とカチオン性ポリマー−リピッド結合体はステップ(b)において溶液内で接触され、核複合体を形成することを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
非結合リピッドは乾燥膜の形態で提供され、該乾燥膜はステップ(c)の実行に先立って水和化されることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項29】
非結合リピッドは乾燥膜の形態で提供され、ステップ(b)からの核複合体の水性縣濁液はステップ(c)の最中に該乾燥膜の水和化に使用されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項30】
ステップ(c)に先立って、非結合リピッドに対して、中性リピッド、グリコリピッド、ペグ化リピッド、ビオチン化リピッド、アシル化タンパク質またはグリコタンパク質、リピッドに結合されたタンパク質またがグリコタンパク質、抗体またはその抗原結合断片、単鎖抗体、ドメイン抗体、および細胞面受容体のリガンドで成る群から選択される成分を加えるステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項31】
中性リピッドが加えられ、該中性リピッドはコレステロールであることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
ペグ化リピッドが加えられ、該ペグ化リピッドはPEG−ホスファチジルエタノールアミンまたはpNP−PEG−PEであることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項33】
中性リピッドが加えられ、該中性リピッドはコレステロールであり、ポリマー−リピッド結合体、非結合リピッド、コレステロールおよびPEG−ホスファチジルエタノールアミンのモル比は4:3:3:0.3であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
方法は細胞を請求項19記載の非ウィルスベクターと接触させるステップを含んでおり、該ベクターの核酸分子が細胞内に導入されることを特徴とする方法。
【請求項35】
細胞内での遺伝子の発現を抑制する方法であって、細胞を請求項1記載のナノ粒子と接触させるステップを含んでおり、該ナノ粒子はsiRNAまたはRNAiを含んでおり、該siRNAまたは該RNAiは細胞内に導入され、遺伝子の発現を抑制することを特徴とする方法。
【請求項36】
患者の治療方法であって、疾患に罹患した患者に対して請求項19記載の非ウィルスベクターを投与するステップを含んでおり、該ベクターの核酸分子は患者の細胞内に導入され、疾患を治療することを特徴とする方法。
【請求項27】
疾患は癌であることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
ベクターは腫瘍を標的としたものであることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
リピッドアシル鎖またはアルキル鎖の遠位端に共有結合したカチオン性ポリマーを含んでいることを特徴とする化学結合体。
【請求項40】
ポリエチレンイミンを含んでいることを特徴とする請求項39記載の結合体。
【請求項41】
1−パルミトイル−2−アゼラオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを分枝鎖ポリエチレンイミンと反応させることで形成されることを特徴とする請求項40記載の結合体。
【請求項42】
請求項39記載の結合体と核酸との複合体。
【請求項43】
請求項39記載の結合体を含んだミセル、リピッド単層またはリピッド二重層構築物。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate


【公表番号】特表2011−503070(P2011−503070A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533120(P2010−533120)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/012660
【国際公開番号】WO2009/061515
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(591127113)ノースイースタン・ユニバーシティ (4)
【Fターム(参考)】