八重咲きカリブラコアの育種方法及びそれによって作出された植物体
【課題】花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有するカリブラコア植物体を育種するための方法の提供。
【解決手段】雄親及び雌親をカリブラコア属から選抜するステップと、選抜された雄親及び雌親を交雑して第1代の植物体を作出するステップと、第1代の植物体から、花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有する植物体を選抜するステップとを含む方法。また、葯培養及び誘発突然変異技法を使用して八重咲きカリブラコア植物体を育種する方法。
【解決手段】雄親及び雌親をカリブラコア属から選抜するステップと、選抜された雄親及び雌親を交雑して第1代の植物体を作出するステップと、第1代の植物体から、花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有する植物体を選抜するステップとを含む方法。また、葯培養及び誘発突然変異技法を使用して八重咲きカリブラコア植物体を育種する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明者]
アニータ ストーヴァー、アンドレア ドーム、ウルリッヒ サンダー、ニルズ クレム
【0002】
[発明の背景]
カリブラコア(Calibrachoa)属は、1990年代初期に花壇用植物として登場した。1996年以来、ドイツシュツットガルト所在の植物育種会社Klemm&Sohn GmbH&Co.(「Klemm」)の育種家らは、カリブラコア育種計画を実施してきた。2000年に、この育種計画で開発された最初の変種が米国市場に登場し、2001年に植物特許権が初めて適用された。
【0003】
カリブラコア属は、ペチュニア(Petunia)属の極めて近い近縁属である。ペチュニアでは八重咲き形質はすでに確立されているが、カリブラコアの八重咲き型はKlemm育種計画においてこれまでのところ発見されておらず、又は任意の第三者によっても導入されていない。以下の明細書に記載の通り、本発明者らは、八重咲きを有するカリブラコア植物体を育種するための方法を開発することに成功した。
【0004】
概して、本発明は、選抜された親植物の制御された交雑を使用して八重咲きカリブラコア植物体を育種するための方法に関する。より詳細には、本発明は、種間交雑、葯培養技術、及び誘発突然変異を使用して八重咲きカリブラコア植物体を育種するための方法に関する。最後に、本発明は、記載される方法によって作出され、その独特の八重咲きを特徴とする新たなカリブラコア植物体に関する。
【0005】
[関連技術の説明]
制御された交雑を実施して新たな有性生殖した植物変種を得る科学は十分に確立されており、メンデルの法則に従った技法を使用して新たなカリブラコア種を作出する育種計画がそうである。数多くのカリブラコア種が知られており、その多くは米国植物特許の対象である。しかし、本発明者らが認識しているすべての既知のカリブラコア変種は、1花当たりの花弁数が5枚の花(本明細書で「単弁花」と称する)を示すが、本明細書に記載の方法によって作出された植物体は、「八重」花、すなわちカリブラコア種に特有の5枚という花弁数を超える花を示す。本発明者らは、八重咲きカリブラコア植物体の作出に成功した他のどんな育種方法又は育種計画にも気づいていない。
【0006】
本特許の出願は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面付きの本特許の複製は、請求及び必要な手数料の支払いに応じて米国特許商標庁によって提供される。
【0007】
[発明の詳細な説明]
本発明によれば、いくつかの独特の工程段階を採用して、八重咲き、すなわち花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有するカリブラコア遺伝子型を作出する。この追加の花弁は、第6の未発達のペタロイド(petaloid)から十分に発達した複数の追加の花弁又はペタロイドまで様々である。種間交雑技術、葯培養技術、及び誘発突然変異を含めた方法を順にそれぞれ論じる。
【0008】
(カリブラコア属内で八重咲き型を誘発する種間交雑:)
本発明の育種方法によれば、1つ又は複数の八重咲き型花を有する第1のカリブラコア植物体、又は八重咲き形質をその遺伝的背景に有する単弁型花を備えたカリブラコア植物体を、新たな八重咲きカリブラコア変種を作出する目的を有する育種計画において八重咲き型遺伝子の供給源として使用する。このカリブラコア供給源集団は、カリブラコア属内の1つ以上の種を含む、種内交雑又は種間交雑の結果であってよい。供給源集団から選抜された第1のカリブラコア植物体を第2の単弁花又は八重咲きカリブラコア植物体と交雑する。この交雑によるそれぞれの子孫を八重咲き型表現型についてスコア付けする。
【0009】
選抜された任意の八重咲き型カリブラコア品種を無性繁殖によって商業的に繁殖させることができると期待される。これまでに試験されたすべての八重咲き型品種が無性繁殖を通じて安定であることが認められた。無性繁殖用の切り枝は、任意の時期に採取することができ、特別なホルモン又は土壌混合物は使用しない。また、カリブラコア八重咲き型品種は、有性交雑による子孫として作出し、種子として販売することができると期待される。
【0010】
本発明者によって維持された育種計画では、交配される植物体は通常、多孔質のココピート及び粘土の混合物を含有する3リットルのポット中で生育させる。植物体は、昼夜16℃〜20℃の温度で生育させる。植物体に20%の窒素、5%のカリウム、10%のリン、及び2%のマグネシアを含有する水溶液を与える。
【0011】
交配は、5月から9月まで欧州のような光条件下で行うことができる。しかし、より高い温度、特に33℃を超える温度では花粉の生存率が急激に低下するので、最高の成功率は、より涼しい夏季の間に認められる。雌親として使用するための花は、カリブラコア属内では配偶体自家不和合性の系であるので除雄する必要がない。雄親として使用すべき花から採取した花粉を使用して、雌親の成熟した柱頭に受粉する。同じ交雑組合せの中で1〜3個の花を受粉する。受粉した各花に標識を付けて、受粉日並びに雄親及び雌親の身元を示す。
【0012】
さやの成熟が環境条件に応じて受粉してから6〜9週間後に起こる。気候が涼しく曇りであるとさやの成熟に必要な時間が長くなる。収集した種子を手できれいにし、果皮から分離し、耐油紙袋に貯蔵する。種子は、長期貯蔵すると種子生存率が低下するので室温で8カ月より長く貯蔵すべきでない。
【0013】
異種交配種からなるカリブラコア集団には、カリブラコア・カリシナ(Calibrachoa calycina)、C.パレンシス(C.parensis)、C.エリシフォリア(C.ericifolia)、C.オバリフォリア(C.ovalifolia)、C.ヘテロフィラ(C.heterophylla)、C.フミリス(C.humilis)、C.パルビフローラ(C.parviflora)、C.セロウィアナ(C.sellowiana)、C.スパスラタ(C.spathulata)、C.エレガンス(C.elegans)、C.カエシア(C.caesia)、C.ミクランサ(C.micrantha)、C.センドトネリアナ(C.sendtneriana)、C.リノイデス(C.linoides)、C.エクセレンス(C.excellens)、C.エグランデュラータ(C.eglandulata)、C.デュセニー(C.dusenii)、C.ルペストリス(C.rupestris)、C.ティミフォリア(C.thymifolia)、C.エグランデュラータ(C.eglandulata)、C.ミクランサ(C.micrantha)、C.オバリフォリア(C.ovalifolia)及びC.パラネンシス(C.paranensis)が含まれる。今後、他のカリブラコア種が同定され、それらの種は種間育種計画に同様に組み込むことができるであろうと期待される。
【0014】
上記の通りカリブラコア植物体の交雑を実施し、17,500体の第1代の実生を得た後、本発明者らは、1花当たり5枚を超える花弁を持つ1つ又は複数の花を有する合計14の植物体を同定した。これらの第1代の植物体のうち、13の植物体(W001、W003、W004、W005、W006、W007、W008、W009、W010、W011、W012、W013、及びW014;倍数性レベル2n=4x)は、以下の交雑の結果生じた。
「U155」 × カリブラコア・パルビフローラ
倍数性レベル:2n=4x 倍数性レベル:2n=4x
(特許権を取得していないKlemm
カリブラコア品種)
【0015】
この交雑で、雄親である四倍体カリブラコア・パルビフローラは、小さい白色の花を有し、1花当たり5枚を超える花弁を示していなかった。同様に、雌親である「U155」は、1花当たり5枚を超える花弁を示していなかった。しかし、第1代の子孫は八重咲き植物体を含んでいた。第1代の子孫の中から選抜された選抜体W001、W003、W004、W005、W006、W007、W008、W009、W010、W011、W012、W013、及びW014は、5枚の花弁の第1列、及び通常1〜3枚の花弁を有する第2列を備えた淡いピンク色の花を作出する。これらの選抜体の花のうち約20%〜60%は1花当たり5枚を超える花弁を有していた。
【0016】
他の第1代の実生W002は、以下の交雑の結果であった。
S3(「チェリー(Cherry)」) × カリブラコア・パルビフローラ
倍数性レベル:2n=2x 倍数性レベル:2n=2x
(特許権を取得していないKlemm
カリブラコア品種)
【0017】
S3(「チェリー」)は、2003年2月24日に付与された欧州共同体植物品種育成者権番号EU10704に記載されている。W002の雄親は、1花当たりの花弁数が5枚以下であるラベンダー色の花を有する二倍体カリブラコア・パルビフローラであった。W002の雌親は、二倍体の選抜体である「S3」であった。両親とも1花当たりの花弁数が5枚を超えるという特性を示していなかったが、W002は、本発明者らが求めている八重咲き形質を示した。W002によって作出された花のうち約5%〜30%が単一で未発達の第6の花弁を有していた。
【0018】
八重咲き化が増強された新たな独特の八重咲き型カリブラコア品種を選抜する目的で、W001〜W014を育種材料として使用して育種計画を継続した。この目的は、育種材料群W001〜W014から選抜されたカリブラコア品種を、広範囲の花色、様々な倍数性レベル(2n=2x、3x又は4x)、生育習性、分枝などの望ましい特性を有する選抜されたカリブラコア品種と交雑することによって達成した。この育種計画は、事前の交配の子孫から選抜された同胞種(F2)又は片親が異なる同胞種の異種交雑を含んでおり、遺伝的多様性を増大させ、望ましいカリブラコア形質を組み込み、近交弱勢を回避するための異系交雑をさらに含んでいた。さらに、他の色及び特性を八重咲き化育種計画に導入するために、これらの交雑にいくつかの単弁型の選抜体が含まれていた。第1代に関して合計で22の交雑の組合せを作製した。この22の交雑組合せのうち8つしか結実をもたらさず、全種子収量は非常に低く、種子はわずか106個であった。
【0019】
上記の制御された交雑に加えて、放任受粉も実施した。八重咲き型を隔離された場所に集め、マルハナバチによって放任受粉した。放任受粉により、制御された交雑よりも高い種子収量が得られた。放任受粉によって作出された種子を播き、得られた実生集団は、草型、習性、及び花色の改善、並びに花又は植物体当たりの八重咲き化の程度を増大させる進展を示した。
【0020】
第1代植物の上記の交雑から、1花当たりの八重咲き化が増強された第2代の子孫を選抜し、進行中の育種計画に組み込んだ。
【0021】
再度、1花当たりの花弁の量がより多い植物体の出現を増大させるために、第2代植物からの選抜体の中で交雑を行った。第2代の選抜体を、第1代の選抜体と、並びに広範囲の花色、様々な倍数性レベル、生育習性、分枝などの特性を有する様々なカリブラコア変種と交雑した。この育種計画はまた、同胞種及び片親が異なる同胞種の交雑、戻し交雑、及び遺伝的多様性を増大させ、望ましいカリブラコア形質を組み込み、近交弱勢を回避するための他のカリブラコア種との異系交雑を含んでいた。収集した種子を播いて、第3代の子孫を作出し、この子孫を、花弁数の増加について、並びに生育習性、分枝、花色などに関する望ましい特性について選別した。合計18,000体の第3代の実生の中から850体の実生が八重咲き型花の遺伝的背景を示した。選抜した子孫は再び、1花当たりより多い量の花弁、並びに植物体当たりより多い量の八重咲きの花を示した。
【0022】
八重咲き型花を示す第3代の選抜体の中で交雑を行って、1花当たりの花弁の量がより多い植物体の出現を増大させた。第3代の選抜体を、第1代及び第2代の選抜体、並びに広範囲の花色、様々な倍数性レベル、生育習性、分枝などの特性を有する様々なカリブラコア変種と交雑した。この育種計画はまた、同胞種及び片親が異なる同胞種の交雑、戻し交雑、及び遺伝的多様性を増大させ、望ましいカリブラコア形質を組み込み、近交弱勢を回避するための他のカリブラコア種との異系交雑を含んでいた。これらの交雑からの子孫は再び、1花当たりの花弁数の増大を示した。実生子孫のうちのほぼ50%が、花弁数が5枚を超える花を示した。八重咲き型のうちの80%が1花当たりおよそ8〜10枚の花弁を示した。この年、第4代は実生子孫の中で評価されている。
【0023】
図1〜図10で上記の育種方法を使用して作出された第3代の八重咲き型品種の系譜を示す。以上で詳細に記載した方法によりすべての交雑を行った。八重咲き子孫を得る格別の成功は、第1代の選抜体W002、W003、W005、及びW006を組み込む交雑で達成された。W002、W003、W005、及びW006の種子及び繁殖可能な植物材料は、ドイツシュツットガルトのKlemm&Sohn GmbH&Co.によって維持されている。表1にW002、W003、W005、及びW006の植物学的特性の説明を示す。
【表1】
【0024】
いくつかの戦略が利用でき、その戦略によりカリブラコア種内での八重咲き化の固定に成功することができ、この形質を多様な単弁型選抜体に組み込み、他の望ましいカリブラコア特性と組み合わせることができる。これらの戦略は、八重咲き型カリブラコア植物体、又は八重咲き形質をその遺伝的背景に有する単弁型カリブラコア植物体を、単弁型又は八重咲き型カリブラコア植物体と交雑すること、及び八重咲きを示す子孫を選抜することを含む。単弁型及び八重咲き型選抜体との交雑を含めたさらなる交雑を数世代にわたって実施することができる。この交雑は、異系交雑、同胞種及び片親が異なる同胞種の交雑、及び戻し交雑を含むことができる。植物体は、その八重咲き特性、並びに花色、分枝習性などの望ましい特性に基づいて交雑のために選抜することができる。すべての交雑は、様々な倍数性レベル(2x、3x、4x)で実施することができる。各交雑によって得られる子孫から、1花当たりの花弁数が5枚を超える1つ又は複数の花を有する遺伝子型を選抜することができる。本明細書に記載の育種方法は、八重咲きを有する新たな異なるカリブラコア植物体を作出するのに有効であることが示されている。
【0025】
上記の方法を使用して得られたW002、W003、W004、及びW005を含めた八重咲きカリブラコア選抜体、及びそれに本質的に由来する選抜体は、本発明の範囲内にあると考えられる。本質的に由来する選抜体は、原選抜体の遺伝子型又は遺伝子型の組合せによって生じる本質的特性の発現を維持しつつ、原選抜体に主として由来するもの、又は原選抜体に主として由来する選抜体に由来するもの;原変種と明確に区別できるもの;及び選抜体を得る行為によって生じた差異を除き、原変種の遺伝子型又は遺伝子型の組合せによって生じる本質的特性の発現において原変種に一致するものである。
【0026】
(倍数性を低減するための葯培養技法の使用:)
Klemm育種計画において使用された八重咲きカリブラコア型の大部分は四倍体レベルであった。劣性遺伝子によって遺伝するすべての形質は、四倍体集団よりも二倍体集団での方が早く確立し、目に見えるようにすることができる。カリブラコア八重咲き型の大部分が四倍体であるという事実によって、本発明者らは、二ゲノム性半数体育種材料を作出する方法を捜し求めた。八重咲きカリブラコア型の色の範囲を拡大するために、カリブラコアの倍数性レベルを4x(四倍体)から2x(二倍体)に低減する方法を確立することが必要であった。
【0027】
文献では、葯培養は、ある種における半数体又は二ゲノム性半数体植物を確立するための技法として記載されている。本発明の一実施形態では、葯培養技法を使用して新たなカリブラコア品種を作出する。Raquin(1982、1985)は、ペチュニア種における葯培養のプロトコールを記載しているが、カリブラコア内では葯培養技法はこれまで使用されていない。
【0028】
本発明によれば、カリブラコア植物の葯培養技法を確立した。いくつかの様々なペチュニア型及びカリブラコア型を分析に組み入れ、ペチュニアを対照として使用した。
【0029】
葯が収穫される母本は、温室の多孔質のココピートと粘土の混合物を含有する3リットルのポット中で培養した。植物体は、昼夜16℃〜20℃の温度で生育させた。植物体に20%の窒素、5%のカリウム、10%のリン、及び2%のマグネシアを含有する水溶液を与えた。
【0030】
有糸分裂の終わりに花芽を収穫した(花冠の最適な長さ、0.6〜1.6cm)。萼片を除去し、花を、0.1%Tween20を補充した3%次亜塩素酸カリウム溶液中に10分間浸漬することによって表面殺菌した。殺菌後、芽を滅菌蒸留水で2回洗浄した。花弁及び花糸を除去した後、葯を、開始培地(表2)を有する9cmペトリ皿に置き、PVCフィルムで密封した。
【0031】
葯用の開始培地は、Raquin(1982)による教示の通り、Murashige及びSkoog(1962)の多量栄養素の元来の濃度の半分だけを含有していた。開始培地は、FeCl3なしのHeller培地(1953)由来の微量栄養素、10−4M FeEDTA、Morel及びWetmore培地(1951)のビタミン、1g/lメソイノシトール、0.1mg/l α−ナフタレン酢酸、1mg/lベンジルアミノプリン、20g/lグルコース、20g/lショ糖、及び8g/l Bacto agar(DIFCO社)をさらに含んでいた。pHを5.8に調整した後、121℃で20分間オートクレーブした(表2)。
【表2】
【0032】
培養室を16時間の明期で昼夜24℃に調節した。葯は、最初の10日間は暗下で、続いて3週間微光条件下で(500lx)黄化した。こうして数週間後、ペトリ皿を1,500lxに移した。
【0033】
8週間後、葯をRaquin(1982)による新鮮な開始培地(表2)で継代培養し、16時間の明期で(1、500lx)培養した。12週間の培養後、カルスの最初の形成を観察することができた。このカルスを、表3に記載のカルス及びシュートの再分化培地に移した。4週間ごとに葯をこの組成の新鮮培地で継代培養した。4〜6カ月後、その遺伝子型に依存して最初のシュート再分化が確立した。
【表3】
【0034】
葯培養の実験は6月から10月までに成し遂げられた。それは1年の他の月では光強度が十分でないからである。収量の強い季節的変動を観察することができた。36℃より高い温度で実施した実験は、カルス再分化が非常に劣る結果を示した。芽を6℃で5日間冷却することにより低温前処理を施した。未処理の葯は対照の役割を果たした。
【0035】
実験1年目は、4つの独立した実験を実施した。その遺伝子型は、ペチュニアR44(「Klefalec」;欧州共同体植物品種育成者権番号EU8836)(2n=2x)及びS3(「KLEC01037」;欧州共同体植物品種育成者権番号EU12691)(2n=2x);カリブラコア選抜体W002(2n=4x)、W003(2n=4x)、W005(2n=4x)、V172(「KLEC03074」;欧州共同体植物品種育成者権番号EU14444)(2n=2x)、及びU139(2n=4x);並びにC.パルビフローラ(2n=4x)を含めたKlemm品種であった。1年目の実験で合計920個の葯を培養したが、これについては以下の表4で概要を述べ、以下の段落で詳細に検討する。再分化シュートの倍数性レベルをフローサイトメトリーによって測定し、分析には公知の基準を対照として使用した。
【表4】
【0036】
カリブラコア・パルビフローラ(2n=4x)由来の220個の葯をペトリ皿に播いた。10個の葯でカルス形成が認められた。シュートの再分化は4カ月の培養後に開始し、カルス当たり1〜7体のシュートが得られた。再分化が頻繁に続いた結果、250個のin vitroシュートを、実験の開始から7カ月後に温室に移動させるのに利用できた。フローサイトメトリー分析により、試料の95%が二ゲノム性半数体であり、四倍体カリブラコア・パルビフローラ遺伝子型に比べて倍数性の低減を表すことが示された。
【0037】
ペチュニアでは、培養した遺伝子型R44(2n=2x)の葯の7%しかカルスに発達しなかったが、培養したS3(2n=2x)の葯の27%がカルスを形成した。葯培養から再分化した75体のペチュニアS3植物体の中で、1体の植物体が元のS3遺伝子型と同じ2n=2xの倍数性レベルを有し、1体の植物体が半数体であった。それとは対照的に、再分化した植物体のうち65体が四倍体(2n=4x)であり、さらには8体の植物体が八倍体(2n=8x)であった。R44では、再分化したシュートの半分は二倍体であったが、もう半分は四倍体であった。要約すると、ペチュニアでは、葯培養技法により倍数性レベルが低減した植物体の作出にわずか1体しか成功しなかった。この半数体の植物体は枯れ、したがってさらなる育種計画に組み入れることができなかった。それとは対照的に、多く植物体が倍数性レベルの増大を示した。この結果は、これらの実験で対照としてのペチュニアに使用したRaquin(1982)によるプロトコールが、倍数性が低減したペチュニア植物体を得るための方法として元々記載されているので予想外であった。
【0038】
カリブラコア遺伝子型W002(2n=2x)由来の再分化したシュートは、葯培養の後、数多くの混数体の植物体を示した。しかし、ほとんどの場合、倍数性レベルは二倍体であり、1例で四倍体であった。カリブラコア遺伝子型W003由来の培養した葯はどんなカルス又はシュートも形成しなかった。
【0039】
カリブラコア遺伝子型W005(2n=4x)の45個の葯は7個のカルスを形成した。各カルスから約3体の再分化したシュートを得た。これらの大部分(17)は四倍体であったが、2体のシュートは、葯培養の後に想定される通り、倍数性レベルが低減した二ゲノム性半数体(2n=2x)を示した。二ゲノム性半数体W005植物体は、元の四倍体遺伝子型W005(2n=4x)と表現型の差が示されなかった。その花の96%が1花当たり5枚を超える花弁数を示した。これらの2体の二ゲノム性半数体W005植物体を本明細書にすでに記載した育種計画に組み入れた。
【0040】
葯培養によって作出された二ゲノム性半数体カリブラコア・パルビフローラ及び二ゲノム性半数体カリブラコア遺伝子型W005の品種をさらなる育種活動に使用して、八重咲き型を示す二倍体の子孫を得た。この育種計画は、実生集団において遺伝的多様性を増大させ、より広い範囲の花色を得るための異系交雑を含んでいた。
【0041】
2年目の実験に使用した遺伝子型は、ペチュニアS3(2n=2x)、及びカリブラコアW005(2n=4x)、X436(2n=4x)及びX437、並びにカリブラコア・パルビフローラ(2n=4x)を含めたKlemm品種であった。この実験に含まれていたすべての四倍体カリブラコア遺伝子型は、1花当たり5枚を超える花弁(八重咲き型)を示した。9つの独立した実験は、実験2年目に成し遂げられた。表5で2年目の実験の結果の概要を述べる。
【表5】
【0042】
葯培養の後、カリブラコアW005(2n=4x)及びカリブラコアW014(2n=4x)のすべての再分化したシュートをフローサイトメトリーによって分析し、四倍体であることが判明した。カリブラコア・パルビフローラ(2n=4x)の350個の葯のうちわずか1.7%しかカルスを形成しなかった。各カルスから約6体のシュートが再分化し、そのシュートの100%が二ゲノム性半数体であることが判明した。カリブラコア変種X436及びX437の葯は、どんなカルス又はシュートも再分化せず、ペチュニア変種S3の葯も同様であった。
【0043】
実験3年目の遺伝子型は、最新の子孫からのカリブラコア実生であった:CA 05 0605(2n=4x)、CA 05 0611(2n=4x)、CA 05 0620(2n=4x)、CA 05 0634(2n=3x)、CA 05 0636(2n=4x)、CA 05 0638(2n=4x)、CA 05 0639(2n=2x)、CA 05 0661(2n=4x)、CA 05 0662(2n=4x)、及びCA 05 0664(2n=3x/4x)。関連する遺伝子型はすべて八重咲き型を示した。CA 05 0639は、二ゲノム性半数体W005に由来する葯培養物からの実生である。遺伝子型CA 05 0639の花の大部分は、約8〜10枚の花弁を有する。この葯は培養によりカルスを形成し、最初のシュート再分化が観察された。
【0044】
図11〜14に示した八重咲きカリブラコアの系譜は、葯培養に由来する二倍体八重咲きカリブラコア遺伝子型との交雑の結果を示す。
【0045】
上記の葯培養実験に使用したカリブラコア及びペチュニアの遺伝子型には、近交系、F1雑種、戻し交雑子孫、及び高度にヘテロ接合である遺伝子型が含まれる。葯供与カリブラコア又はペチュニア植物体のある遺伝子型のみが、培養された葯から小植物体を作出した。葯培養の結果、カリブラコア種間及び変種間、並びにペチュニアの変種間の遺伝子型の差異は顕著であった。
【0046】
また、小胞子培養の技法により単一の小胞子から半数体又は二ゲノム性半数体の植物体が作製されることが期待され、倍数性レベルの低減を示す植物体を得る可能性がはるかに高いことがさらに期待される。葯培養により、細胞壁の層(器官形成細胞)は、その起源から半数体又は二ゲノム性半数体ではなく、それぞれ二倍体又は四倍体であるカルス及び植物シュートを再分化することができる。
【0047】
任意のカリブラコア品種又は種を使用して、葯培養又は小胞子培養により半数体、二ゲノム性半数体の小植物を作出することができると期待される。これまで試験された二ゲノム性半数体カリブラコア変種及びカリブラコア・パルビフローラ植物体はすべて、無性繁殖によって安定であることが認められた。
【0048】
(カリブラコア属内で八重咲き型を誘発するための突然変異育種:)
八重咲き形質は単一遺伝子によって遺伝し得るという事実から、八重咲き植物体はそれぞれの遺伝子の突然変異の結果として出現すると期待される。突然変異は、自然に生じることができ、又は植物体材料をγ照射などの突然変異誘発要因で処理することによって誘発することができる。得られた変異形質は、優性遺伝又は劣性遺伝する可能性がある。優性遺伝した形質は、第1代内で目に見えるが、劣性遺伝した形質は、1遺伝子座当たりのすべての対立遺伝子が同じ突然変異を有するまで目に見えるようにならず、これは、元の変異体の自家受粉によって実現することができる。
【0049】
変異処理のために供与植物体は、昼夜16℃〜20℃の温度で生育させる。植物体には、20%の窒素、5%のカリウム、10%のリン、及び2%のマグネシアを含有する水溶液を与える。これらの植物体から、少なくとも2対の成葉を示す切り枝を採取し、ペーパーポットに植え付ける(直径2.5cm、pH4.3)。約3週間後、植えた切り枝を30Gyのγ線照射によって処理する。そのように処理された切り枝を標準的なポットに移植し、供与植物体に関する記載の通り生育及び栽培する。温室で生育した植物体の切り枝の代わりに、成長調節物質なしのMS培地で3週間培養したin vitroシュートを照射処理に使用することができる。
【0050】
照射された植物体が開花し始めると交雑を実施する。欧州のような光条件下で5月から9月まで交雑を行うことができる。変異遺伝子を蓄積するために、花は自家受粉しなければならない。しかし、カリブラコアは自家不和合性の系を有するので、自家受粉を達成するためにはこの障害を克服しなければならない。この目的のために、雌親として使用すべき若い花芽が呈色するとこの花芽を除雄する。除雄した後、除雄後2日間、除雄された花の柱頭に受粉する。同じ対立遺伝子について変異した遺伝子を組み合わせる頻度を高めるために、雄親として使用すべき花は、雌花と同じ枝のものであるべきである。交雑は、自家受粉に利用できるすべての花を使用して3カ月にわたって実施する。さらなる処置については、種間交雑に関してすでに本明細書に記載した通りである。得られた子孫を、花弁数が5枚を超える花を示す植物体についてスコア付けする。
【0051】
八重咲き型花特性は、すでに本明細書に記載した方法を使用して、多様な単弁型又は八重咲き型のカリブラコア遺伝的背景に組み込むことができると予想される。作出されたほぼすべての花が八重咲き型である八重咲きカリブラコア品種を選抜することができると予想される。1花又は植物体当たりの八重咲き化の程度は、循環選抜によって増大させることができると予想される。八重咲き型特性を他の望ましいカリブラコア特性と組み合わせて、無性繁殖によって安定に繁殖することができる商業的に許容可能な品種を作出することができると予想される。育種に利用できるカリブラコア品種のプールを、葯培養技法の使用を通じて望ましい形質を有する品種の倍数性を低減させることにより、増加させることができる。八重咲き植物体は、カリブラコアの八重咲き遺伝子の突然変異の結果として出現することも予想される。この突然変異は、自然に生じることができ、又は植物体材料を突然変異誘発要因で処理することによって誘発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、八重咲き型品種CA 05 0078(2n=4x)の系譜を示す。
【図2】図2は、八重咲き型品種CA 05 0087(2n=4x)の系譜を示す。
【図3】図3は、八重咲き型品種CA 05 0118(2n=4x)の系譜を示す。
【図4】図4は、八重咲き型品種CA 05 0151(2n=4x)の系譜を示す。
【図5】図5は、八重咲き型品種CA 05 0338(2n=4x)の系譜を示す。
【図6】図6は、八重咲き型品種CA 05 0434(2n=4x)の系譜を示す。
【図7】図7は、八重咲き型品種CA 05 0499(2n=4x)の系譜を示す。
【図8】図8は、八重咲き型品種CA 05 0555(2n=2,6x)の系譜を示す。
【図9】図9は、八重咲き型品種CA 05 0558(2n=4x)の系譜を示す。
【図10】図10は、八重咲き型品種CA 05 0559(2n=4x)の系譜を示す。
【図11】図11は、葯培養由来の二倍体W005と二倍体Klemm品種T105の交雑組合せから得られた八重咲き型品種CA 05 0089(2n=1,4x)の系譜を示す。
【図12】図12は、葯培養由来の二倍体W005と二倍体Klemm品種W403の交雑組合せから得られた八重咲き型品種CA 05 0329(2n=2x)の系譜を示す。
【図13】図13は、放任受粉した葯培養由来の二倍体W005から得られた八重咲き型品種CA 05 0410(2n=2x)の系譜を示す。
【図14】図14は、葯培養由来の二倍体C.パルビフローラ及び二倍体Klemm品種W378の交雑組合せから得られた八重咲き型品種CA 05 0568(2n=2x)の系譜を示す。
【図15】図15は、本発明の方法によって作出された八重咲きカリブラコア植物体のカラー写真である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明者]
アニータ ストーヴァー、アンドレア ドーム、ウルリッヒ サンダー、ニルズ クレム
【0002】
[発明の背景]
カリブラコア(Calibrachoa)属は、1990年代初期に花壇用植物として登場した。1996年以来、ドイツシュツットガルト所在の植物育種会社Klemm&Sohn GmbH&Co.(「Klemm」)の育種家らは、カリブラコア育種計画を実施してきた。2000年に、この育種計画で開発された最初の変種が米国市場に登場し、2001年に植物特許権が初めて適用された。
【0003】
カリブラコア属は、ペチュニア(Petunia)属の極めて近い近縁属である。ペチュニアでは八重咲き形質はすでに確立されているが、カリブラコアの八重咲き型はKlemm育種計画においてこれまでのところ発見されておらず、又は任意の第三者によっても導入されていない。以下の明細書に記載の通り、本発明者らは、八重咲きを有するカリブラコア植物体を育種するための方法を開発することに成功した。
【0004】
概して、本発明は、選抜された親植物の制御された交雑を使用して八重咲きカリブラコア植物体を育種するための方法に関する。より詳細には、本発明は、種間交雑、葯培養技術、及び誘発突然変異を使用して八重咲きカリブラコア植物体を育種するための方法に関する。最後に、本発明は、記載される方法によって作出され、その独特の八重咲きを特徴とする新たなカリブラコア植物体に関する。
【0005】
[関連技術の説明]
制御された交雑を実施して新たな有性生殖した植物変種を得る科学は十分に確立されており、メンデルの法則に従った技法を使用して新たなカリブラコア種を作出する育種計画がそうである。数多くのカリブラコア種が知られており、その多くは米国植物特許の対象である。しかし、本発明者らが認識しているすべての既知のカリブラコア変種は、1花当たりの花弁数が5枚の花(本明細書で「単弁花」と称する)を示すが、本明細書に記載の方法によって作出された植物体は、「八重」花、すなわちカリブラコア種に特有の5枚という花弁数を超える花を示す。本発明者らは、八重咲きカリブラコア植物体の作出に成功した他のどんな育種方法又は育種計画にも気づいていない。
【0006】
本特許の出願は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面付きの本特許の複製は、請求及び必要な手数料の支払いに応じて米国特許商標庁によって提供される。
【0007】
[発明の詳細な説明]
本発明によれば、いくつかの独特の工程段階を採用して、八重咲き、すなわち花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有するカリブラコア遺伝子型を作出する。この追加の花弁は、第6の未発達のペタロイド(petaloid)から十分に発達した複数の追加の花弁又はペタロイドまで様々である。種間交雑技術、葯培養技術、及び誘発突然変異を含めた方法を順にそれぞれ論じる。
【0008】
(カリブラコア属内で八重咲き型を誘発する種間交雑:)
本発明の育種方法によれば、1つ又は複数の八重咲き型花を有する第1のカリブラコア植物体、又は八重咲き形質をその遺伝的背景に有する単弁型花を備えたカリブラコア植物体を、新たな八重咲きカリブラコア変種を作出する目的を有する育種計画において八重咲き型遺伝子の供給源として使用する。このカリブラコア供給源集団は、カリブラコア属内の1つ以上の種を含む、種内交雑又は種間交雑の結果であってよい。供給源集団から選抜された第1のカリブラコア植物体を第2の単弁花又は八重咲きカリブラコア植物体と交雑する。この交雑によるそれぞれの子孫を八重咲き型表現型についてスコア付けする。
【0009】
選抜された任意の八重咲き型カリブラコア品種を無性繁殖によって商業的に繁殖させることができると期待される。これまでに試験されたすべての八重咲き型品種が無性繁殖を通じて安定であることが認められた。無性繁殖用の切り枝は、任意の時期に採取することができ、特別なホルモン又は土壌混合物は使用しない。また、カリブラコア八重咲き型品種は、有性交雑による子孫として作出し、種子として販売することができると期待される。
【0010】
本発明者によって維持された育種計画では、交配される植物体は通常、多孔質のココピート及び粘土の混合物を含有する3リットルのポット中で生育させる。植物体は、昼夜16℃〜20℃の温度で生育させる。植物体に20%の窒素、5%のカリウム、10%のリン、及び2%のマグネシアを含有する水溶液を与える。
【0011】
交配は、5月から9月まで欧州のような光条件下で行うことができる。しかし、より高い温度、特に33℃を超える温度では花粉の生存率が急激に低下するので、最高の成功率は、より涼しい夏季の間に認められる。雌親として使用するための花は、カリブラコア属内では配偶体自家不和合性の系であるので除雄する必要がない。雄親として使用すべき花から採取した花粉を使用して、雌親の成熟した柱頭に受粉する。同じ交雑組合せの中で1〜3個の花を受粉する。受粉した各花に標識を付けて、受粉日並びに雄親及び雌親の身元を示す。
【0012】
さやの成熟が環境条件に応じて受粉してから6〜9週間後に起こる。気候が涼しく曇りであるとさやの成熟に必要な時間が長くなる。収集した種子を手できれいにし、果皮から分離し、耐油紙袋に貯蔵する。種子は、長期貯蔵すると種子生存率が低下するので室温で8カ月より長く貯蔵すべきでない。
【0013】
異種交配種からなるカリブラコア集団には、カリブラコア・カリシナ(Calibrachoa calycina)、C.パレンシス(C.parensis)、C.エリシフォリア(C.ericifolia)、C.オバリフォリア(C.ovalifolia)、C.ヘテロフィラ(C.heterophylla)、C.フミリス(C.humilis)、C.パルビフローラ(C.parviflora)、C.セロウィアナ(C.sellowiana)、C.スパスラタ(C.spathulata)、C.エレガンス(C.elegans)、C.カエシア(C.caesia)、C.ミクランサ(C.micrantha)、C.センドトネリアナ(C.sendtneriana)、C.リノイデス(C.linoides)、C.エクセレンス(C.excellens)、C.エグランデュラータ(C.eglandulata)、C.デュセニー(C.dusenii)、C.ルペストリス(C.rupestris)、C.ティミフォリア(C.thymifolia)、C.エグランデュラータ(C.eglandulata)、C.ミクランサ(C.micrantha)、C.オバリフォリア(C.ovalifolia)及びC.パラネンシス(C.paranensis)が含まれる。今後、他のカリブラコア種が同定され、それらの種は種間育種計画に同様に組み込むことができるであろうと期待される。
【0014】
上記の通りカリブラコア植物体の交雑を実施し、17,500体の第1代の実生を得た後、本発明者らは、1花当たり5枚を超える花弁を持つ1つ又は複数の花を有する合計14の植物体を同定した。これらの第1代の植物体のうち、13の植物体(W001、W003、W004、W005、W006、W007、W008、W009、W010、W011、W012、W013、及びW014;倍数性レベル2n=4x)は、以下の交雑の結果生じた。
「U155」 × カリブラコア・パルビフローラ
倍数性レベル:2n=4x 倍数性レベル:2n=4x
(特許権を取得していないKlemm
カリブラコア品種)
【0015】
この交雑で、雄親である四倍体カリブラコア・パルビフローラは、小さい白色の花を有し、1花当たり5枚を超える花弁を示していなかった。同様に、雌親である「U155」は、1花当たり5枚を超える花弁を示していなかった。しかし、第1代の子孫は八重咲き植物体を含んでいた。第1代の子孫の中から選抜された選抜体W001、W003、W004、W005、W006、W007、W008、W009、W010、W011、W012、W013、及びW014は、5枚の花弁の第1列、及び通常1〜3枚の花弁を有する第2列を備えた淡いピンク色の花を作出する。これらの選抜体の花のうち約20%〜60%は1花当たり5枚を超える花弁を有していた。
【0016】
他の第1代の実生W002は、以下の交雑の結果であった。
S3(「チェリー(Cherry)」) × カリブラコア・パルビフローラ
倍数性レベル:2n=2x 倍数性レベル:2n=2x
(特許権を取得していないKlemm
カリブラコア品種)
【0017】
S3(「チェリー」)は、2003年2月24日に付与された欧州共同体植物品種育成者権番号EU10704に記載されている。W002の雄親は、1花当たりの花弁数が5枚以下であるラベンダー色の花を有する二倍体カリブラコア・パルビフローラであった。W002の雌親は、二倍体の選抜体である「S3」であった。両親とも1花当たりの花弁数が5枚を超えるという特性を示していなかったが、W002は、本発明者らが求めている八重咲き形質を示した。W002によって作出された花のうち約5%〜30%が単一で未発達の第6の花弁を有していた。
【0018】
八重咲き化が増強された新たな独特の八重咲き型カリブラコア品種を選抜する目的で、W001〜W014を育種材料として使用して育種計画を継続した。この目的は、育種材料群W001〜W014から選抜されたカリブラコア品種を、広範囲の花色、様々な倍数性レベル(2n=2x、3x又は4x)、生育習性、分枝などの望ましい特性を有する選抜されたカリブラコア品種と交雑することによって達成した。この育種計画は、事前の交配の子孫から選抜された同胞種(F2)又は片親が異なる同胞種の異種交雑を含んでおり、遺伝的多様性を増大させ、望ましいカリブラコア形質を組み込み、近交弱勢を回避するための異系交雑をさらに含んでいた。さらに、他の色及び特性を八重咲き化育種計画に導入するために、これらの交雑にいくつかの単弁型の選抜体が含まれていた。第1代に関して合計で22の交雑の組合せを作製した。この22の交雑組合せのうち8つしか結実をもたらさず、全種子収量は非常に低く、種子はわずか106個であった。
【0019】
上記の制御された交雑に加えて、放任受粉も実施した。八重咲き型を隔離された場所に集め、マルハナバチによって放任受粉した。放任受粉により、制御された交雑よりも高い種子収量が得られた。放任受粉によって作出された種子を播き、得られた実生集団は、草型、習性、及び花色の改善、並びに花又は植物体当たりの八重咲き化の程度を増大させる進展を示した。
【0020】
第1代植物の上記の交雑から、1花当たりの八重咲き化が増強された第2代の子孫を選抜し、進行中の育種計画に組み込んだ。
【0021】
再度、1花当たりの花弁の量がより多い植物体の出現を増大させるために、第2代植物からの選抜体の中で交雑を行った。第2代の選抜体を、第1代の選抜体と、並びに広範囲の花色、様々な倍数性レベル、生育習性、分枝などの特性を有する様々なカリブラコア変種と交雑した。この育種計画はまた、同胞種及び片親が異なる同胞種の交雑、戻し交雑、及び遺伝的多様性を増大させ、望ましいカリブラコア形質を組み込み、近交弱勢を回避するための他のカリブラコア種との異系交雑を含んでいた。収集した種子を播いて、第3代の子孫を作出し、この子孫を、花弁数の増加について、並びに生育習性、分枝、花色などに関する望ましい特性について選別した。合計18,000体の第3代の実生の中から850体の実生が八重咲き型花の遺伝的背景を示した。選抜した子孫は再び、1花当たりより多い量の花弁、並びに植物体当たりより多い量の八重咲きの花を示した。
【0022】
八重咲き型花を示す第3代の選抜体の中で交雑を行って、1花当たりの花弁の量がより多い植物体の出現を増大させた。第3代の選抜体を、第1代及び第2代の選抜体、並びに広範囲の花色、様々な倍数性レベル、生育習性、分枝などの特性を有する様々なカリブラコア変種と交雑した。この育種計画はまた、同胞種及び片親が異なる同胞種の交雑、戻し交雑、及び遺伝的多様性を増大させ、望ましいカリブラコア形質を組み込み、近交弱勢を回避するための他のカリブラコア種との異系交雑を含んでいた。これらの交雑からの子孫は再び、1花当たりの花弁数の増大を示した。実生子孫のうちのほぼ50%が、花弁数が5枚を超える花を示した。八重咲き型のうちの80%が1花当たりおよそ8〜10枚の花弁を示した。この年、第4代は実生子孫の中で評価されている。
【0023】
図1〜図10で上記の育種方法を使用して作出された第3代の八重咲き型品種の系譜を示す。以上で詳細に記載した方法によりすべての交雑を行った。八重咲き子孫を得る格別の成功は、第1代の選抜体W002、W003、W005、及びW006を組み込む交雑で達成された。W002、W003、W005、及びW006の種子及び繁殖可能な植物材料は、ドイツシュツットガルトのKlemm&Sohn GmbH&Co.によって維持されている。表1にW002、W003、W005、及びW006の植物学的特性の説明を示す。
【表1】
【0024】
いくつかの戦略が利用でき、その戦略によりカリブラコア種内での八重咲き化の固定に成功することができ、この形質を多様な単弁型選抜体に組み込み、他の望ましいカリブラコア特性と組み合わせることができる。これらの戦略は、八重咲き型カリブラコア植物体、又は八重咲き形質をその遺伝的背景に有する単弁型カリブラコア植物体を、単弁型又は八重咲き型カリブラコア植物体と交雑すること、及び八重咲きを示す子孫を選抜することを含む。単弁型及び八重咲き型選抜体との交雑を含めたさらなる交雑を数世代にわたって実施することができる。この交雑は、異系交雑、同胞種及び片親が異なる同胞種の交雑、及び戻し交雑を含むことができる。植物体は、その八重咲き特性、並びに花色、分枝習性などの望ましい特性に基づいて交雑のために選抜することができる。すべての交雑は、様々な倍数性レベル(2x、3x、4x)で実施することができる。各交雑によって得られる子孫から、1花当たりの花弁数が5枚を超える1つ又は複数の花を有する遺伝子型を選抜することができる。本明細書に記載の育種方法は、八重咲きを有する新たな異なるカリブラコア植物体を作出するのに有効であることが示されている。
【0025】
上記の方法を使用して得られたW002、W003、W004、及びW005を含めた八重咲きカリブラコア選抜体、及びそれに本質的に由来する選抜体は、本発明の範囲内にあると考えられる。本質的に由来する選抜体は、原選抜体の遺伝子型又は遺伝子型の組合せによって生じる本質的特性の発現を維持しつつ、原選抜体に主として由来するもの、又は原選抜体に主として由来する選抜体に由来するもの;原変種と明確に区別できるもの;及び選抜体を得る行為によって生じた差異を除き、原変種の遺伝子型又は遺伝子型の組合せによって生じる本質的特性の発現において原変種に一致するものである。
【0026】
(倍数性を低減するための葯培養技法の使用:)
Klemm育種計画において使用された八重咲きカリブラコア型の大部分は四倍体レベルであった。劣性遺伝子によって遺伝するすべての形質は、四倍体集団よりも二倍体集団での方が早く確立し、目に見えるようにすることができる。カリブラコア八重咲き型の大部分が四倍体であるという事実によって、本発明者らは、二ゲノム性半数体育種材料を作出する方法を捜し求めた。八重咲きカリブラコア型の色の範囲を拡大するために、カリブラコアの倍数性レベルを4x(四倍体)から2x(二倍体)に低減する方法を確立することが必要であった。
【0027】
文献では、葯培養は、ある種における半数体又は二ゲノム性半数体植物を確立するための技法として記載されている。本発明の一実施形態では、葯培養技法を使用して新たなカリブラコア品種を作出する。Raquin(1982、1985)は、ペチュニア種における葯培養のプロトコールを記載しているが、カリブラコア内では葯培養技法はこれまで使用されていない。
【0028】
本発明によれば、カリブラコア植物の葯培養技法を確立した。いくつかの様々なペチュニア型及びカリブラコア型を分析に組み入れ、ペチュニアを対照として使用した。
【0029】
葯が収穫される母本は、温室の多孔質のココピートと粘土の混合物を含有する3リットルのポット中で培養した。植物体は、昼夜16℃〜20℃の温度で生育させた。植物体に20%の窒素、5%のカリウム、10%のリン、及び2%のマグネシアを含有する水溶液を与えた。
【0030】
有糸分裂の終わりに花芽を収穫した(花冠の最適な長さ、0.6〜1.6cm)。萼片を除去し、花を、0.1%Tween20を補充した3%次亜塩素酸カリウム溶液中に10分間浸漬することによって表面殺菌した。殺菌後、芽を滅菌蒸留水で2回洗浄した。花弁及び花糸を除去した後、葯を、開始培地(表2)を有する9cmペトリ皿に置き、PVCフィルムで密封した。
【0031】
葯用の開始培地は、Raquin(1982)による教示の通り、Murashige及びSkoog(1962)の多量栄養素の元来の濃度の半分だけを含有していた。開始培地は、FeCl3なしのHeller培地(1953)由来の微量栄養素、10−4M FeEDTA、Morel及びWetmore培地(1951)のビタミン、1g/lメソイノシトール、0.1mg/l α−ナフタレン酢酸、1mg/lベンジルアミノプリン、20g/lグルコース、20g/lショ糖、及び8g/l Bacto agar(DIFCO社)をさらに含んでいた。pHを5.8に調整した後、121℃で20分間オートクレーブした(表2)。
【表2】
【0032】
培養室を16時間の明期で昼夜24℃に調節した。葯は、最初の10日間は暗下で、続いて3週間微光条件下で(500lx)黄化した。こうして数週間後、ペトリ皿を1,500lxに移した。
【0033】
8週間後、葯をRaquin(1982)による新鮮な開始培地(表2)で継代培養し、16時間の明期で(1、500lx)培養した。12週間の培養後、カルスの最初の形成を観察することができた。このカルスを、表3に記載のカルス及びシュートの再分化培地に移した。4週間ごとに葯をこの組成の新鮮培地で継代培養した。4〜6カ月後、その遺伝子型に依存して最初のシュート再分化が確立した。
【表3】
【0034】
葯培養の実験は6月から10月までに成し遂げられた。それは1年の他の月では光強度が十分でないからである。収量の強い季節的変動を観察することができた。36℃より高い温度で実施した実験は、カルス再分化が非常に劣る結果を示した。芽を6℃で5日間冷却することにより低温前処理を施した。未処理の葯は対照の役割を果たした。
【0035】
実験1年目は、4つの独立した実験を実施した。その遺伝子型は、ペチュニアR44(「Klefalec」;欧州共同体植物品種育成者権番号EU8836)(2n=2x)及びS3(「KLEC01037」;欧州共同体植物品種育成者権番号EU12691)(2n=2x);カリブラコア選抜体W002(2n=4x)、W003(2n=4x)、W005(2n=4x)、V172(「KLEC03074」;欧州共同体植物品種育成者権番号EU14444)(2n=2x)、及びU139(2n=4x);並びにC.パルビフローラ(2n=4x)を含めたKlemm品種であった。1年目の実験で合計920個の葯を培養したが、これについては以下の表4で概要を述べ、以下の段落で詳細に検討する。再分化シュートの倍数性レベルをフローサイトメトリーによって測定し、分析には公知の基準を対照として使用した。
【表4】
【0036】
カリブラコア・パルビフローラ(2n=4x)由来の220個の葯をペトリ皿に播いた。10個の葯でカルス形成が認められた。シュートの再分化は4カ月の培養後に開始し、カルス当たり1〜7体のシュートが得られた。再分化が頻繁に続いた結果、250個のin vitroシュートを、実験の開始から7カ月後に温室に移動させるのに利用できた。フローサイトメトリー分析により、試料の95%が二ゲノム性半数体であり、四倍体カリブラコア・パルビフローラ遺伝子型に比べて倍数性の低減を表すことが示された。
【0037】
ペチュニアでは、培養した遺伝子型R44(2n=2x)の葯の7%しかカルスに発達しなかったが、培養したS3(2n=2x)の葯の27%がカルスを形成した。葯培養から再分化した75体のペチュニアS3植物体の中で、1体の植物体が元のS3遺伝子型と同じ2n=2xの倍数性レベルを有し、1体の植物体が半数体であった。それとは対照的に、再分化した植物体のうち65体が四倍体(2n=4x)であり、さらには8体の植物体が八倍体(2n=8x)であった。R44では、再分化したシュートの半分は二倍体であったが、もう半分は四倍体であった。要約すると、ペチュニアでは、葯培養技法により倍数性レベルが低減した植物体の作出にわずか1体しか成功しなかった。この半数体の植物体は枯れ、したがってさらなる育種計画に組み入れることができなかった。それとは対照的に、多く植物体が倍数性レベルの増大を示した。この結果は、これらの実験で対照としてのペチュニアに使用したRaquin(1982)によるプロトコールが、倍数性が低減したペチュニア植物体を得るための方法として元々記載されているので予想外であった。
【0038】
カリブラコア遺伝子型W002(2n=2x)由来の再分化したシュートは、葯培養の後、数多くの混数体の植物体を示した。しかし、ほとんどの場合、倍数性レベルは二倍体であり、1例で四倍体であった。カリブラコア遺伝子型W003由来の培養した葯はどんなカルス又はシュートも形成しなかった。
【0039】
カリブラコア遺伝子型W005(2n=4x)の45個の葯は7個のカルスを形成した。各カルスから約3体の再分化したシュートを得た。これらの大部分(17)は四倍体であったが、2体のシュートは、葯培養の後に想定される通り、倍数性レベルが低減した二ゲノム性半数体(2n=2x)を示した。二ゲノム性半数体W005植物体は、元の四倍体遺伝子型W005(2n=4x)と表現型の差が示されなかった。その花の96%が1花当たり5枚を超える花弁数を示した。これらの2体の二ゲノム性半数体W005植物体を本明細書にすでに記載した育種計画に組み入れた。
【0040】
葯培養によって作出された二ゲノム性半数体カリブラコア・パルビフローラ及び二ゲノム性半数体カリブラコア遺伝子型W005の品種をさらなる育種活動に使用して、八重咲き型を示す二倍体の子孫を得た。この育種計画は、実生集団において遺伝的多様性を増大させ、より広い範囲の花色を得るための異系交雑を含んでいた。
【0041】
2年目の実験に使用した遺伝子型は、ペチュニアS3(2n=2x)、及びカリブラコアW005(2n=4x)、X436(2n=4x)及びX437、並びにカリブラコア・パルビフローラ(2n=4x)を含めたKlemm品種であった。この実験に含まれていたすべての四倍体カリブラコア遺伝子型は、1花当たり5枚を超える花弁(八重咲き型)を示した。9つの独立した実験は、実験2年目に成し遂げられた。表5で2年目の実験の結果の概要を述べる。
【表5】
【0042】
葯培養の後、カリブラコアW005(2n=4x)及びカリブラコアW014(2n=4x)のすべての再分化したシュートをフローサイトメトリーによって分析し、四倍体であることが判明した。カリブラコア・パルビフローラ(2n=4x)の350個の葯のうちわずか1.7%しかカルスを形成しなかった。各カルスから約6体のシュートが再分化し、そのシュートの100%が二ゲノム性半数体であることが判明した。カリブラコア変種X436及びX437の葯は、どんなカルス又はシュートも再分化せず、ペチュニア変種S3の葯も同様であった。
【0043】
実験3年目の遺伝子型は、最新の子孫からのカリブラコア実生であった:CA 05 0605(2n=4x)、CA 05 0611(2n=4x)、CA 05 0620(2n=4x)、CA 05 0634(2n=3x)、CA 05 0636(2n=4x)、CA 05 0638(2n=4x)、CA 05 0639(2n=2x)、CA 05 0661(2n=4x)、CA 05 0662(2n=4x)、及びCA 05 0664(2n=3x/4x)。関連する遺伝子型はすべて八重咲き型を示した。CA 05 0639は、二ゲノム性半数体W005に由来する葯培養物からの実生である。遺伝子型CA 05 0639の花の大部分は、約8〜10枚の花弁を有する。この葯は培養によりカルスを形成し、最初のシュート再分化が観察された。
【0044】
図11〜14に示した八重咲きカリブラコアの系譜は、葯培養に由来する二倍体八重咲きカリブラコア遺伝子型との交雑の結果を示す。
【0045】
上記の葯培養実験に使用したカリブラコア及びペチュニアの遺伝子型には、近交系、F1雑種、戻し交雑子孫、及び高度にヘテロ接合である遺伝子型が含まれる。葯供与カリブラコア又はペチュニア植物体のある遺伝子型のみが、培養された葯から小植物体を作出した。葯培養の結果、カリブラコア種間及び変種間、並びにペチュニアの変種間の遺伝子型の差異は顕著であった。
【0046】
また、小胞子培養の技法により単一の小胞子から半数体又は二ゲノム性半数体の植物体が作製されることが期待され、倍数性レベルの低減を示す植物体を得る可能性がはるかに高いことがさらに期待される。葯培養により、細胞壁の層(器官形成細胞)は、その起源から半数体又は二ゲノム性半数体ではなく、それぞれ二倍体又は四倍体であるカルス及び植物シュートを再分化することができる。
【0047】
任意のカリブラコア品種又は種を使用して、葯培養又は小胞子培養により半数体、二ゲノム性半数体の小植物を作出することができると期待される。これまで試験された二ゲノム性半数体カリブラコア変種及びカリブラコア・パルビフローラ植物体はすべて、無性繁殖によって安定であることが認められた。
【0048】
(カリブラコア属内で八重咲き型を誘発するための突然変異育種:)
八重咲き形質は単一遺伝子によって遺伝し得るという事実から、八重咲き植物体はそれぞれの遺伝子の突然変異の結果として出現すると期待される。突然変異は、自然に生じることができ、又は植物体材料をγ照射などの突然変異誘発要因で処理することによって誘発することができる。得られた変異形質は、優性遺伝又は劣性遺伝する可能性がある。優性遺伝した形質は、第1代内で目に見えるが、劣性遺伝した形質は、1遺伝子座当たりのすべての対立遺伝子が同じ突然変異を有するまで目に見えるようにならず、これは、元の変異体の自家受粉によって実現することができる。
【0049】
変異処理のために供与植物体は、昼夜16℃〜20℃の温度で生育させる。植物体には、20%の窒素、5%のカリウム、10%のリン、及び2%のマグネシアを含有する水溶液を与える。これらの植物体から、少なくとも2対の成葉を示す切り枝を採取し、ペーパーポットに植え付ける(直径2.5cm、pH4.3)。約3週間後、植えた切り枝を30Gyのγ線照射によって処理する。そのように処理された切り枝を標準的なポットに移植し、供与植物体に関する記載の通り生育及び栽培する。温室で生育した植物体の切り枝の代わりに、成長調節物質なしのMS培地で3週間培養したin vitroシュートを照射処理に使用することができる。
【0050】
照射された植物体が開花し始めると交雑を実施する。欧州のような光条件下で5月から9月まで交雑を行うことができる。変異遺伝子を蓄積するために、花は自家受粉しなければならない。しかし、カリブラコアは自家不和合性の系を有するので、自家受粉を達成するためにはこの障害を克服しなければならない。この目的のために、雌親として使用すべき若い花芽が呈色するとこの花芽を除雄する。除雄した後、除雄後2日間、除雄された花の柱頭に受粉する。同じ対立遺伝子について変異した遺伝子を組み合わせる頻度を高めるために、雄親として使用すべき花は、雌花と同じ枝のものであるべきである。交雑は、自家受粉に利用できるすべての花を使用して3カ月にわたって実施する。さらなる処置については、種間交雑に関してすでに本明細書に記載した通りである。得られた子孫を、花弁数が5枚を超える花を示す植物体についてスコア付けする。
【0051】
八重咲き型花特性は、すでに本明細書に記載した方法を使用して、多様な単弁型又は八重咲き型のカリブラコア遺伝的背景に組み込むことができると予想される。作出されたほぼすべての花が八重咲き型である八重咲きカリブラコア品種を選抜することができると予想される。1花又は植物体当たりの八重咲き化の程度は、循環選抜によって増大させることができると予想される。八重咲き型特性を他の望ましいカリブラコア特性と組み合わせて、無性繁殖によって安定に繁殖することができる商業的に許容可能な品種を作出することができると予想される。育種に利用できるカリブラコア品種のプールを、葯培養技法の使用を通じて望ましい形質を有する品種の倍数性を低減させることにより、増加させることができる。八重咲き植物体は、カリブラコアの八重咲き遺伝子の突然変異の結果として出現することも予想される。この突然変異は、自然に生じることができ、又は植物体材料を突然変異誘発要因で処理することによって誘発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、八重咲き型品種CA 05 0078(2n=4x)の系譜を示す。
【図2】図2は、八重咲き型品種CA 05 0087(2n=4x)の系譜を示す。
【図3】図3は、八重咲き型品種CA 05 0118(2n=4x)の系譜を示す。
【図4】図4は、八重咲き型品種CA 05 0151(2n=4x)の系譜を示す。
【図5】図5は、八重咲き型品種CA 05 0338(2n=4x)の系譜を示す。
【図6】図6は、八重咲き型品種CA 05 0434(2n=4x)の系譜を示す。
【図7】図7は、八重咲き型品種CA 05 0499(2n=4x)の系譜を示す。
【図8】図8は、八重咲き型品種CA 05 0555(2n=2,6x)の系譜を示す。
【図9】図9は、八重咲き型品種CA 05 0558(2n=4x)の系譜を示す。
【図10】図10は、八重咲き型品種CA 05 0559(2n=4x)の系譜を示す。
【図11】図11は、葯培養由来の二倍体W005と二倍体Klemm品種T105の交雑組合せから得られた八重咲き型品種CA 05 0089(2n=1,4x)の系譜を示す。
【図12】図12は、葯培養由来の二倍体W005と二倍体Klemm品種W403の交雑組合せから得られた八重咲き型品種CA 05 0329(2n=2x)の系譜を示す。
【図13】図13は、放任受粉した葯培養由来の二倍体W005から得られた八重咲き型品種CA 05 0410(2n=2x)の系譜を示す。
【図14】図14は、葯培養由来の二倍体C.パルビフローラ及び二倍体Klemm品種W378の交雑組合せから得られた八重咲き型品種CA 05 0568(2n=2x)の系譜を示す。
【図15】図15は、本発明の方法によって作出された八重咲きカリブラコア植物体のカラー写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有するカリブラコア植物体。
【請求項2】
花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有するカリブラコア植物体を育種するための方法であって、
雄親及び雌親をカリブラコア属から選抜するステップと、
選抜された雄親及び雌親を交雑して第1代の植物体を作出するステップと、
第1代の植物体から、花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有する植物体を選抜するステップとを含む方法。
【請求項3】
選抜された親のうちの一方が四倍体カリブラコア・パルビフローラである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
選抜された親のうちの一方が二倍体カリブラコア・パルビフローラである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
選抜された第1代の植物体をカリブラコア植物体と交雑して第2代の植物体を作出するステップと、
第2代の植物体から、花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有する植物体を選抜するステップとをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
カリブラコア植物体が葯培養によって得られた二倍体カリブラコア植物体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法によって得られたカリブラコア植物体。
【請求項8】
請求項7に記載の植物体の無性生殖によって繁殖された子孫。
【請求項9】
請求項7に記載の植物体に本質的に由来する植物体。
【請求項10】
W002と名付けられたカリブラコア植物体。
【請求項11】
請求項10に記載の植物体から作出された花粉。
【請求項12】
請求項10に記載の植物体から作出された種子。
【請求項13】
請求項10に記載の植物体に本質的に由来するカリブラコア植物体。
【請求項14】
W003と名付けられたカリブラコア植物体。
【請求項15】
請求項14に記載の植物体から作出された花粉。
【請求項16】
請求項14に記載の植物体から作出された種子。
【請求項17】
請求項14に記載の植物体に本質的に由来するカリブラコア植物体。
【請求項18】
W005と名付けられたカリブラコア植物体。
【請求項19】
請求項18に記載の植物体から作出された花粉。
【請求項20】
請求項18に記載の植物体から作出された種子。
【請求項21】
請求項18に記載の植物体に本質的に由来するカリブラコア植物体。
【請求項22】
W006と名付けられたカリブラコア植物体。
【請求項23】
請求項22に記載の植物体から作出された花粉。
【請求項24】
請求項22に記載の植物体から作出された種子。
【請求項25】
請求項22に記載の植物体に本質的に由来するカリブラコア植物体。
【請求項26】
花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有するカリブラコア植物体を育種するための方法であって、
カリブラコアの実生を選抜するステップと、
実生から切り枝を切り取るステップと、
切り枝を植え付けるステップと、
切り枝に放射線を照射するステップと、
花が作出されるまで切り枝を生長させるステップと、
花を自家受粉させるステップと、
花によって作出された種子を収穫し、植えるステップと、
収穫された種子によって作出された実生から、植物体当たりの花弁数が5枚を超える実生を選抜するステップとを含む方法。
【請求項27】
カリブラコア植物体における、花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花で表現型として現れた八重咲き遺伝子。
【請求項1】
花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有するカリブラコア植物体。
【請求項2】
花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有するカリブラコア植物体を育種するための方法であって、
雄親及び雌親をカリブラコア属から選抜するステップと、
選抜された雄親及び雌親を交雑して第1代の植物体を作出するステップと、
第1代の植物体から、花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有する植物体を選抜するステップとを含む方法。
【請求項3】
選抜された親のうちの一方が四倍体カリブラコア・パルビフローラである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
選抜された親のうちの一方が二倍体カリブラコア・パルビフローラである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
選抜された第1代の植物体をカリブラコア植物体と交雑して第2代の植物体を作出するステップと、
第2代の植物体から、花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有する植物体を選抜するステップとをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
カリブラコア植物体が葯培養によって得られた二倍体カリブラコア植物体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法によって得られたカリブラコア植物体。
【請求項8】
請求項7に記載の植物体の無性生殖によって繁殖された子孫。
【請求項9】
請求項7に記載の植物体に本質的に由来する植物体。
【請求項10】
W002と名付けられたカリブラコア植物体。
【請求項11】
請求項10に記載の植物体から作出された花粉。
【請求項12】
請求項10に記載の植物体から作出された種子。
【請求項13】
請求項10に記載の植物体に本質的に由来するカリブラコア植物体。
【請求項14】
W003と名付けられたカリブラコア植物体。
【請求項15】
請求項14に記載の植物体から作出された花粉。
【請求項16】
請求項14に記載の植物体から作出された種子。
【請求項17】
請求項14に記載の植物体に本質的に由来するカリブラコア植物体。
【請求項18】
W005と名付けられたカリブラコア植物体。
【請求項19】
請求項18に記載の植物体から作出された花粉。
【請求項20】
請求項18に記載の植物体から作出された種子。
【請求項21】
請求項18に記載の植物体に本質的に由来するカリブラコア植物体。
【請求項22】
W006と名付けられたカリブラコア植物体。
【請求項23】
請求項22に記載の植物体から作出された花粉。
【請求項24】
請求項22に記載の植物体から作出された種子。
【請求項25】
請求項22に記載の植物体に本質的に由来するカリブラコア植物体。
【請求項26】
花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花を有するカリブラコア植物体を育種するための方法であって、
カリブラコアの実生を選抜するステップと、
実生から切り枝を切り取るステップと、
切り枝を植え付けるステップと、
切り枝に放射線を照射するステップと、
花が作出されるまで切り枝を生長させるステップと、
花を自家受粉させるステップと、
花によって作出された種子を収穫し、植えるステップと、
収穫された種子によって作出された実生から、植物体当たりの花弁数が5枚を超える実生を選抜するステップとを含む方法。
【請求項27】
カリブラコア植物体における、花弁数が5枚を超える少なくとも1つの花で表現型として現れた八重咲き遺伝子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−67705(P2008−67705A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−237203(P2007−237203)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(507306344)
【出願人】(507306355)
【出願人】(507306366)
【出願人】(507306377)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237203(P2007−237203)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(507306344)
【出願人】(507306355)
【出願人】(507306366)
【出願人】(507306377)
【Fターム(参考)】
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