説明

共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体の製造方法及び共役ジエン系重合体組成物

【課題】省燃費性に優れた共役ジエン系重合体、及び、該共役ジエン系重合体とシリカなどの充填剤とを配合してなる重合体組成物を提供する。
【解決手段】共役ジエンに基づく構成単位と下式(I)で表される構成単位とを有し、共役ジエンに基づく構成単位と共役ジエンに基づく構成単位との間に、下式(I)で表される構成単位を有する共役ジエン系重合体。


[X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、下式(II)で表される基、水酸基又は炭化水素基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体の製造方法及び共役ジエン系重合体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、自動車に対して省燃費化の要求が強くなっており、自動車用タイヤに用いる重合体組成物に対しても、省燃費性に優れることが求められている。自動車タイヤ用の重合体組成物としては、ポリブタジエンやブタジエン−スチレン共重合体等の共役ジエン系重合体と、カーボンブラック等の充填材とを含有する重合体組成物等が用いられており、例えば、共役ジエン系重合体として、アルキルリチウムを重合開始剤としてブタジエンとスチレンとを共重合してなる重合体の末端を、ジアルキルアミノ基を有するアクリルアミドで変性した重合体を用いた重合体組成物(例えば、特許文献1参照。)が知られている。また、共役ジエン系重合体として、アルキルリチウムを重合開始剤としてブタジエンとスチレンとを共重合してなる重合体の末端を、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシランで変性した重合体を用いた重合体組成物(例えば、特許文献2参照。)、共役ジエン系重合体として、アルキルリチウムを重合開始剤としてブタジエンを重合ないしブタジエンとスチレンとを共重合してなる重合体の末端を、ジアルキルアミノ基を有するアルコキシシランで変性した重合体を用いた重合体組成物(例えば、特許文献3、4参照。)などが、省燃費性が良好な重合体組成物として提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平1−217047号公報
【特許文献2】特開平1−217048号公報
【特許文献3】特開昭63−186748号公報
【特許文献4】特開2005−290355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の共役ジエン系重合体を用いた重合体組成物は、特に充填剤としてシリカを用いた場合、省燃費性において、必ずしも満足し得るものではなかった。
かかる状況のものと、本発明が解決しようとする課題は、充填剤としてシリカを配合した場合、省燃費性に優れた重合体組成物を得ることができる共役ジエン系重合体、該共役ジエン系重合体の製造方法、及び、該共役ジエン系重合体とシリカなどの充填剤とを配合してなる重合体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1は、共役ジエンに基づく構成単位と下式(I)で表される構成単位とを有し、共役ジエンに基づく構成単位と共役ジエンに基づく構成単位との間に、下式(I)で表され構成単位を有する共役ジエン系重合体にかかるものである。

[式中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、下式(II)で表される基、水酸基又は炭化水素基を表し、X1、X2及びX3の少なくとも1つが、下式(II)で表される基又は水酸基である。]

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、窒素原子、酸素原子又はケイ素原子を有していてもよい炭素原子数が1〜6の炭化水素基を表し、R1及びR2は結合して環構造を形成していてもよい。]
【0006】
本発明の第2は、下記工程A、B及びCを有する共役ジエン系重合体の製造方法にかかるものである。
(工程A):炭化水素溶媒中で、アルカリ金属触媒により、共役ジエンを含む単量体を重合させ、該触媒由来のアルカリ金属を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体を得る工程
(工程B):アルカリ金属触媒由来のアルカリ金属を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体の炭化水素溶液に、下式(III)で表されるケイ素化合物を添加し、該ケイ素化合物を重合体鎖末端に反応させて、式(III)で表されるケイ素化合物に基づく構成単位にアルカリ金属触媒由来のアルカリ金属が結合した構造を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体を得る工程

[式中、X4、X5及びX6は、それぞれ独立に、下式(II)で表される基又は炭化水素基を表し、X4、X5及びX6の少なくとも1つが、下式(II)で表される基である。]

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、窒素原子、酸素原子又はケイ素原子を有していてもよい炭素原子数が1〜6の炭化水素基を表し、R1及びR2は結合して環構造を形成していてもよい。]
(工程C):式(I)に基づく構成単位にアルカリ金属触媒由来のアルカリ金属が結合した構造を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体の炭化水素溶液に、共役ジエンを含む単量体を添加して、該単量体を該重合体鎖末端に重合させる工程
【0007】
本発明の第3は、上記の共役ジエン系重合体と充填剤とを配合してなる共役ジエン系重合体組成物にかかるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、充填剤としてシリカを配合した場合、省燃費性に優れた重合体組成物を得ることができる共役ジエン系重合体、該共役ジエン系重合体の製造方法、及び、該共役ジエン系重合体とシリカなどの充填剤とを配合してなる重合体組成物を提供することができる。該重合体組成物は、省燃費性に優れ、また、グリップ性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の共役ジエン系重合体は、共役ジエンに基づく構成単位と下式(I)で表される構成単位とを有し、共役ジエンに基づく構成単位と共役ジエンに基づく構成単位との間に、下式(I)で表される構成単位を有する重合体である。

[式中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、下式(II)で表される基、水酸基又は炭化水素基を表し、X1、X2及びX3の少なくとも1つが、下式(II)で表される基又は水酸基である。]

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、窒素原子、酸素原子又はケイ素原子を有していてもよい炭素原子数が1〜6の炭化水素基を表し、R1及びR2は結合して環構造を形成していてもよい。]
【0010】
共役ジエンに基づく構成単位の共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどをあげることができ、これらは1種でもよく、2種以上でもよい。入手容易性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0011】
式(I)で表される構成単位の式(I)のX1、X2及びX3は、それぞれ独立に、下式(II)で表される基、水酸基又は置換されていてもよい炭化水素基を表し、X1、X2及びX3の少なくとも一つは、下式(II)で表される基又は水酸基である。

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、窒素原子、酸素原子又はケイ素原子を有していてもよい炭素原子数が1〜6の炭化水素基を表し、R1及びR2は結合して環構造を形成していてもよい。]
【0012】
1及びR2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などをあげることができる。
【0013】
1及びR2は結合していてもよく、R1及びR2が結合した基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などのアルキレン基;オキシジエチレン基、オキシジプロピレン基などのオキシアルキレン基;−CH2CH2−NH−CH2−で表される基、−CH2CH2−N=CH−で表される基などの含窒素基などをあげることができる。
【0014】
1及びR2としては、好ましくは、窒素原子、酸素原子又はケイ素原子を有していてもよい炭素原子数が1〜4の炭化水素基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、トリメチルシリル基、−CH2CH2−NH−CH2−で表される基、−CH2CH2−N=CH−で表される基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基であり、特に好ましくはエチル基である。
【0015】
式(II)で表される基としては、非環状アミノ基、環状アミノ基をあげることができる。該非環状アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基、ジ(イソプロピル)アミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基、ジ(sec−ブチル)アミノ基、ジ(tert−ブチル)アミノ基、ジ(ネオペンチル)アミノ基、エチルメチルアミノ基、ジ(メトキシメチル)アミノ基、ジ(メトキシエチル)アミノ基、ジ(エトキシメチル)アミノ基、ジ(エトキシエチル)アミノ基、ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ]基、[ジ(トリメチルシリル)アミノ基などを例示することができる。該環状アミノ基としては、1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、1−ヘキサメチレンイミノ基、1−ヘプタメチレンイミノ基、1−オクタメチレンイミノ基、1−デカメチレンイミノ基、1−ドデカメチレンイミノ基、1−テトラデカメチレンイミノ基、1−オクタデカメチレンイミノ基などの1−ポリメチレンイミノ基をあげることができる。また、環状アミノ基としては、1−イミダゾリル基、4,5−ジヒドロ−1−イミダゾリル基、1−イミダゾリジニル基、1−ピペラジニル基、モルホリノ基などもあげることができる。
【0016】
式(II)で表される基としては、経済性および入手容易性から、好ましくは非環状アミノ基であり、より好ましくはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基である。省燃費性およびグリップ性を高める観点から、更に好ましくはジエチルアミノ基である。
【0017】
式(I)のX1〜X3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、などをあげることができる。これらの炭化水素基としては、炭素原子数が1〜4の炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0018】
式(I)のX1、X2及びX3の少なくとも1つは、式(II)で表される基又は水酸基である。好ましくは、X1、X2及びX3の2つ以上が、式(II)で表される基又は水酸基であり、より好ましくは、X1、X2及びX3の2つが、式(II)で表される基又は水酸基である。
【0019】
式(I)で表され構成単位としては、後述の式(III)で表されるケイ素化合物に基づく構成単位を例示することができる。省燃費性を高める観点から、好ましくは、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシランに基づく構成単位、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランに基づく構成単位、ビス(n−プロピルアミノ)メチルビニルシランに基づく構成単位、である。中でも、省燃費性と共にグリップ性に優れ、化合物の入手性と長期保存安定性を両立するという観点からは、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランに基づく構成単位が好ましい。
【0020】
本発明の共役ジエン系重合体は、共役ジエンに基づく構成単位と共役ジエンに基づく構成単位との間に、式(I)で表される構成単位を有するものである。重合体鎖には、式(I)で表される構成単位を3つ以上有することが好ましい。また、共役ジエン系重合体には、式(I)で表される構成単位1以上からなる鎖構造(単独鎖あるいは構成単一連鎖)であって、共役ジエンに基づく構成単位の間にある鎖構造を、重合体鎖に3以上有することが好ましい。なお、該鎖構造は、重合体鎖に、通常、10以下である。
【0021】
本発明の共役ジエン系重合体は、共役ジエンに基づく構成単位(共役ジエン単位)および式(I)で表される構成単位に加え、他の単量体に基づく構成単位を有していもよい。該他の単量体としては、芳香族ビニル、ビニルニトリル、不飽和カルボン酸エステルなどがあげられる。芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンを例示することができる。また、ビニルニトリルとしては、アクリロニトリルなどを、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチルなどを例示することができる。これらの中では、入手容易性の観点から、スチレンが好ましい。
【0022】
本発明の共役ジエン系重合体は、強度を高める観点から、芳香族ビニルに基づく構成単位(芳香族ビニル単位)を有していることが好ましく、芳香族ビニル単位の含有量としては、共役ジエン単位と芳香族ビニル単位との総量を100重量%として、好ましくは10重量%以上(共役ジエン単位の含有量は90重量%以下)であり、より好ましくは15重量%以上(共役ジエン単位の含有量は85重量%以下)である。また、省燃費性を高める観点から、芳香族ビニル単位の含有量は、好ましくは50重量%以下(共役ジエン単位の含有量は50重量%以上)であり、より好ましくは45重量%以下(共役ジエン単位の含有量は55重量%以上)である。
【0023】
本発明の共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4)は、機械的強度を高める観点から、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上である。また、加工性を高める観点から、好ましくは200以下であり、より好ましくは150以下である。該ムーニー粘度(ML1+4)は、JIS K6300(1994)に従って、100℃にて測定される。
【0024】
本発明の共役ジエン系重合体のビニル結合量は、共役ジエン単位の含有量を100モル%として、省燃費性を高める観点から、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは70モル%以下である。また、タイヤのグリップ性能を高める観点から、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは15モル%以上である。該ビニル結合量は、赤外分光分析法により、ビニル基の吸収ピークである910cm-1付近の吸収強度より求められる。
【0025】
本発明の共役ジエン系重合体の分子量分布は、省燃費性を高める観点から、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜2である。分子量分布は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定し、MwをMnで除すことにより求められる。
【0026】
本発明の共役ジエン系重合体の製造方法として、次の(工程A)、(工程B)及び(工程C)を有する製造方法をあげることができる。
(工程A):炭化水素溶媒中で、アルカリ金属触媒により、共役ジエンを含む単量体を重合させ、該触媒由来のアルカリ金属を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体を得る工程
(工程B):アルカリ金属触媒由来のアルカリ金属を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体の炭化水素溶液に、下式(III)で表されるケイ素化合物を添加し、該ケイ素化合物を重合体鎖末端に反応させて、式(III)で表されるケイ素化合物に基づく構成単位にアルカリ金属触媒由来のアルカリ金属が結合した構造を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体を得る工程

[式中、X4、X5及びX6は、それぞれ独立に、下式(II)で表される基又は炭化水素基を表し、X4、X5及びX6の少なくとも1つが、下式(II)で表される基である。]

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、窒素原子、酸素原子又はケイ素原子を有していてもよい炭素原子数が1〜6の炭化水素基を表し、R1及びR2は結合して環構造を形成していてもよい。]
(工程C):式(I)に基づく構成単位にアルカリ金属触媒由来のアルカリ金属が結合した構造を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体の炭化水素溶液に、共役ジエンを含む単量体を添加して、該単量体を該重合体鎖末端に重合させる工程
【0027】
(工程A)で用いられるアルカリ金属触媒としては、アルカリ金属、有機アルカリ金属化合物、アルカリ金属と極性化合物との錯体、アルカリ金属を有するオリゴマーなどをあげることができる。該アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどをあげることがでる。該有機アルカリ金属化合物としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4−シクロペンチルリチウム、ジメチルアミノプロピルリチウム、ジエチルアミノプロピルリチウム、t−ブチルジメチルシリロキシプロピルリチウム、N−モルホリノプロピルリチウム、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、1,4−ジリチオ−ブテン−2、ナトリウムナフタレン、ナトリウムビフェニル、カリウムナフタレンなどをあげることができる。また、アルカリ金属と極性化合物との錯体としては、カリウム−テトラヒドロフラン錯体、カリウム−ジエトキシエタン錯体などをあげることができ、アルカリ金属を有するオリゴマーとしては、α−メチルスチレンテトラマーのナトリウム塩をあげることができる。これらの中でも、有機リチウム化合物又は有機ナトリウム化合物が好ましく、炭素原子数が2〜20の有機リチウム化合物又は有機ナトリウム化合物がより好ましい。
【0028】
(工程A)で用いられる炭化水素溶媒は、アルカリ金属触媒を失活させない溶媒であり、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素などをあげることができる。該脂肪族炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、iso−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、プロペン、1−ブテン、iso−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセンなどをあげることができる。また、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンをあげることができ、脂環族炭化水素としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどがあげられる。これらは単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、炭素原子数が2〜12の炭化水素が好ましい。
【0029】
(工程A)では、共役ジエンを含む単量体を重合させ、上述のアルカリ金属触媒由来のアルカリ金属を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体を製造する。該共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンをあげることができ、これらは単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。中でも、入手容易性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0030】
(工程A)では、共役ジエン単独での重合を行ってもよく、共役ジエンと他の単量体とを組み合わせて重合を行ってもよい。他の単量体としては、芳香族ビニル、ビニルニトリル、不飽和カルボン酸エステルなどがあげられる。芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンを例示することができる。また、ビニルニトリルとしては、アクリロニトリルなどを、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチルなどを例示することができる。これらの中では、入手容易性の観点から、スチレンが好ましい。
【0031】
(工程A)の重合は、共役ジエン単位のビニル結合量を調整する剤、共役ジエン系重合体鎖中での共役ジエン単位と共役ジエン以外の単量体に基づく構成単位の分布を調整する剤(以下、総称して「調整剤」と記す。)などの存在下で行ってもよい。このような剤としては、エーテル化合物、第三級アミン、ホスフィン化合物などをあげることができる。該エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなど環状のエーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどの脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどの脂肪族ジエ−テル;ジフェニルエーテル、アニソールなどの芳香族エーテルなどがあげられる。該第三級アミンとして、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、キノリンなどをあげることができる。また、該ホスフィン化合物として、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどをあげることができる。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(工程A)での重合温度は、通常30〜100℃であり、好ましくは35〜65℃である。重合時間は、通常10分〜5時間である。
【0033】
(工程B)で用いられる式(III)で表されるケイ素化合物について、式(III)のX4、X5及びX6は、それぞれ独立に、式(II)で表される基又は炭化水素基を表し、X4、X5及びX6の少なくとも一つは、式(II)で表される基である。
【0034】
式(III)で表されるケイ素化合物において、式(II)のR1及びR2の例示、好ましい基、式(II)の例示、好ましい基については、上述した式(I)における式(II)のR1及びR2の例示、好ましい基、式(II)の例示、好ましい基と同じである。
【0035】
式(III)のX4〜X6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、などをあげることができる。これらの炭化水素基としては、メチル基、エチル基が好ましい。
【0036】
式(III)で表されるケイ素化合物としては、X4〜X6の一つが式(II)で表される非環状アミノ基であり、二つが炭化水素基である化合物として、
(ジメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(エチル−n−プロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(エチルイソプロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(n−ブチル−n−プロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジ−n−ブチルアミノ)ジメチルビニルシラン、
(ジメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(エチル−n−プロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(エチルイソプロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(n−ブチル−n−プロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジ−n−ブチルアミノ)ジエチルビニルシラン、
(ジメチルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(エチル−n−プロピルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(エチルイソプロピルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(n−ブチル−n−プロピルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(ジ−n−ブチルアミノ)ジプロピルビニルシラン、
(ジメチルアミノ)ジブチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジブチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジブチルビニルシラン、(エチル−n−プロピルアミノ)ジブチルビニルシラン、(エチルイソプロピルアミノ)ジブチルビニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジブチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジブチルビニルシラン、(n−ブチル−n−プロピルアミノ)ジブチルビニルシラン、(ジ−n−ブチルアミノ)ジブチルビニルシラン、
{ジ(トリメチルシリル)アミノ}ジメチルビニルシラン、ジ{(t−ブチルジメチルシリル)アミノ}ジメチルビニルシラン、{ジ(トリメチルシリル)アミノ}ジエチルビニルシラン、ジ{(t−ブチルジメチルシリル)アミノ}ジエチルビニルシラン
などをあげることができる。
【0037】
4〜X6の二つが式(II)で表される非環状アミノ基であり、一つが炭化水素基である化合物として、
ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチル−n−プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルイソプロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジイソプロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(n−ブチル−n−プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)メチルビニルシラン、
ビス(ジメチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(エチル−n−プロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(エチルイソプロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジイソプロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(n−ブチル−n−プロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)エチルビニルシラン、
ビス(ジメチルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(エチル−n−プロピルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(エチルイソプロピルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(ジイソプロピルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(n−ブチル−n−プロピルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)プロピルビニルシラン、
ビス(ジメチルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(エチル−n−プロピルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(エチルイソプロピルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(ジイソプロピルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(n−ブチル−n−プロピルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)ブチルビニルシラン、
ビス{ジ(トリメチルシリル)アミノ}メチルビニルシラン、ビス{(t−ブチルジメチルシリル)アミノ}メチルビニルシラン、ビス{ジ(トリメチルシリル)アミノ}エチルビニルシラン、ビス{(t−ブチルジメチルシリル)アミノ}エチルビニルシラン
などをあげることができる。
【0038】
4〜X6の三つが式(II)で表される非環状アミノ基である化合物として、
トリ(ジメチルアミノ)ビニルシラン、トリ(エチルメチルアミノ)ビニルシラン、トリ(ジエチルアミノ)ビニルシラン、トリ(エチルプロピルアミノ)ビニルシラン、トリ(ジプロピルアミノ)ビニルシラン、トリ(ブチルプロピルアミノ)ビニルシランなどをあげることができる。
【0039】
また、式(III)で表されるケイ素化合物としては、X1〜X3の少なくとも一つが式(II)で表される環状アミノ基である化合物として、ビス(モルホリノ)メチルビニルシラン、ビス(ピペリジノ)メチルビニルシラン、ビス(4,5−ジヒドロイミダゾリル)メチルビニルシラン、ビス(ヘキサメチレンイミノ)メチルビニルシランなどをあげることができる。
【0040】
式(III)のX4、X5及びX6の少なくとも1つは、式(II)で表される基である。好ましくは、X4、X5及びX6の2つ以上が、式(II)で表される基であり、より好ましくは、X4、X5及びX6の2つが、式(II)で表される基である。
【0041】
4、X5及びX6の2つが式(II)で表される基である式(III)で表されるケイ素化合物として、好ましくは、X4、X5及びX6の2つが非環状アミノ基であるケイ素化合物であり、省燃費性を高める観点から、より好ましくは、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス{ジ(n−プロピル)アミノ}メチルビニルシランである。中でも、省燃費性と共にグリップ性、更には、化合物の入手性と長期保存安定性を両立するという観点からは、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランが好ましい。
【0042】
(工程B)において、式(III)で表されるケイ素化合物の添加は、通常、炭化水素溶液を撹拌させた状態で、迅速に行う。
【0043】
式(III)で表されるケイ素化合物の添加量は、アルカリ金属触媒由来のアルカリ金属1モルあたり、省燃費性を高める観点から、好ましくは0.5モル以上であり、より好ましくは0.7モル以上である。また、製造の際の経済性を高める観点から、(工程B)1工程当たり好ましくは1.5モル以下であり、より好ましくは1.2モル以下である。
【0044】
式(III)で表されるケイ素化合物は、テトラヒドロフラン、ヘキサンなどのアルカリ金属触媒を失活させない溶媒に溶解させた溶液として、炭化水素溶液に添加してもよい。
【0045】
式(III)で表されるケイ素化合物を添加する前での炭化水素溶液中の共役ジエン系重合体の濃度としては、ケイ素化合物の反応を速やかに進行させるという観点から、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下である。また、生産性を高める観点から、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上である。
【0046】
式(III)で表されるケイ素化合物を添加する際の炭化水素溶液の攪拌速度としては、省燃費性を高める観点、ケイ素化合物の反応を速やかに進行させるという観点から、好ましくは30rpm以上であり、より好ましくは50rpm以上であり、さらに好ましくは70rpm以上である。また、経済性を高める観点から、好ましくは400rpm以下であり、より好ましくは200rpm、さらに好ましくは200rpm以下である。また、ケイ素化合物を添加する際の炭化水素溶液の温度としては、通常35〜65℃である。
【0047】
式(III)で表されるケイ素化合物を添加後、炭化水素溶液を、攪拌しておくことが好ましい。攪拌速度としては、通常100rpm以上であり、温度としては、通常35℃以上であり、時間としては、通常1秒〜30分である。
【0048】
(工程C)では、(工程B)で製造した式(I)に基づく構成単位にアルカリ金属触媒由来のアルカリ金属が結合した構造を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体の炭化水素溶液に、共役ジエンを含む単量体を添加して、該単量体を該重合体鎖末端に重合させる。該共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンをあげることができ、これらは単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。中でも、入手容易性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0049】
(工程C)では、共役ジエン単独での重合を行ってもよく、共役ジエンと他の単量体とを組み合わせて重合を行ってもよい。他の単量体としては、芳香族ビニル、ビニルニトリル、不飽和カルボン酸エステルなどがあげられる。芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンを例示することができる。また、ビニルニトリルとしては、アクリロニトリルなどを、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチルなどを例示することができる。これらの中では、入手容易性の観点から、スチレンが好ましい。
【0050】
(工程C)での重合温度は、通常30〜100℃であり、好ましくは35〜65℃である。重合時間は、通常10分〜5時間である。
【0051】
共役ジエン系重合体の製造においては、(工程B)及び(工程C)を複数設けてもよい。
【0052】
本発明の製造方法においては、アルカリ金属触媒による単量体の重合開始から重合停止において、共役ジエン系重合体の炭化水素溶液に、下式で示されるカップリング剤を添加してもよい。
7aML4-a (IV)
(式中、R7はアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族炭化水素基を表し、Mはケイ素原子またはスズ原子を表し、Lはハロゲン原子を表し、aは0〜2の整数を表す。)
【0053】
式(IV)で表されるカップリング剤としては、四塩化珪素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、四塩化スズ、メチルトリクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、トリメチルクロロスズ、などをあげることができる。
【0054】
カップリング剤の添加量は、アルカリ金属触媒由来のアルカリ金属1モル当たり、共役ジエン系重合体の混練加工性を高める観点から、好ましくは0.03モル以上であり、より好ましくは0.05モル以上である。また、省燃費性を高める観点から、好ましくは0.4モル以下であり、より好ましくは0.3モル以下である。
【0055】
共役ジエン系重合体は、公知の回収方法、例えば、(1)共役ジエン系重合体の炭化水素溶液に凝固剤を添加する方法、(2)共役ジエン系重合体の炭化水素溶液にスチームを添加する方法によって、共役ジエン系重合体の炭化水素溶液から回収することができる。回収した共役ジエン系重合体は、バンドドライヤーや押出型ドライヤーなどの公知の乾燥機で乾燥してもよい。
【0056】
また、本発明の共役ジエン系重合体の製造方法においては、加水分解などにより、重合体の式(II)で表される基を水酸基に置換させる処理を行ってもよい。該処理は、重合体単独の状態で行ってもよく、後述のような組成物の状態で行ってもよい。
【0057】
本発明の共役ジエン系重合体は、他の重合体成分や添加剤などを配合して、共役ジエン系重合体組成物にして用いることができる。
【0058】
他の重合体成分としては、従来のスチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、ブチルゴムなどをあげることができる。また、天然ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などもあげることができる。これらの重合体成分は、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0059】
本発明の共役ジエン系重合体に他の重合体成分を配合する場合、本発明の共役ジエン系重合体の配合量は、省燃費性を高める観点から、重合体成分の総配合量(共役ジエン系重合体の配合量含む)を100重量部として、好ましくは10重量部以上であり、より好ましくは20重量部以上である。
【0060】
添加剤としては、公知のものを用いることができ、硫黄などの加硫剤;チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤などの加硫促進剤;ステアリン酸、酸化亜鉛などの加硫活性化剤;有機過酸化物;シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;シランカップリング剤;伸展油;加工助剤;老化防止剤;滑剤を例示することができる。
【0061】
本発明の共役ジエン系重合体に充填剤を配合した共役ジエン系重合体組成物とする場合、充填剤の配合量は、本発明の共役ジエン系重合体の配合量を100重量部あたり、通常10〜150重量部である。また、該配合量は、省燃費性を高める観点から、好ましくは20重量部以上であり、より好ましくは30重量部以上である。また、補強性を高める観点から、好ましくは120重量部以下であり、より好ましくは100重量部以下である。
【0062】
本発明の共役ジエン系重合体に充填剤を配合した共役ジエン系重合体組成物を用いる場合、省燃費性を高める観点から、充填剤として、シリカを用いることが好ましい。シリカの配合量としては、充填剤の総配合量を100重量部として、好ましくは50重量部以上であり、より好ましくは70重量部以上である。
【0063】
本発明の共役ジエン系重合体に、他の重合体成分や添加剤などを配合して共役ジエン系重合体組成物を製造する方法としては、公知の方法、例えば、各成分をロールやバンバリーのような公知の混合機で混練する方法を用いることができる。
【0064】
混練条件としては、加硫剤および加硫促進剤以外の添加剤を配合する場合、混練温度は、通常50〜200℃であり、好ましくは80〜190℃であり、混練時間は、通常30秒〜30分であり、好ましくは1分〜30分である。加硫剤、加硫促進剤を配合する場合、混練温度は、通常100℃以下であり、好ましくは室温〜80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を配合した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理を行って用いられる。加硫温度としては、通常120〜200℃、好ましくは140〜180℃である。
【0065】
本発明の共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体組成物は、省燃費性に優れ、グリップ性も良好である。また、耐磨耗性、強度なども良好である。
【0066】
本発明の共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体組成物は、タイヤ、靴底、床材、防振材などに用いられ、特に、タイヤに好適に用いられる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例によって本発明を説明する。
物性測定は次の方法で行った。
【0068】
1.ムーニー粘度(ML1+4
JIS K6300(1994)に従って、100℃にて測定した。
【0069】
2.ビニル含量(単位:モル%)
赤外分光分析法により、ビニル基の吸収ピークである910cm-1付近の吸収強度より求めた。
【0070】
3.スチレン単位の含量(単位:重量%)
JIS K6383(1995)に従って、屈折率から求めた。
【0071】
4.分子量分布(Mw/Mn)
下記の条件(1)〜(8)でゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、Mw/Mnを求めた。
(1)装置:東ソー製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)注入量:5μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準:標準ポリスチレン
【0072】
5.省燃費性
粘弾性測定装置(上島製作所製)を使用し、歪み1%及び周波数10Hzの条件下で、温度50℃、70℃の損失正接(tanδ(50℃),tanδ(70℃))を測定した。この値が小さいほど、省燃費性に優れる。
【0073】
6.グリップ性
粘弾性測定装置(上島製作所製)を使用し、歪み1%及び周波数10Hzの条件下で、温度0℃の損失正接(tanδ(0℃))を測定した。この値が大きいほど、グリップ性に優れる。
【0074】
実施例1
内容積20リットルのステンレス製重合反応器を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後、ヘキサン(比重0.68g/cm3)10.2kg、1,3−ブタジエン547g、スチレン173g、テトラヒドロフラン6.1ml、エチレングリコールジエチルエーテル5.0mlを重合反応器内に投入した。次に、n−ブチルリチウム14.5mmolをn−ヘキサン溶液として投入して重合を開始し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を1時間行った。重合中、撹拌速度を130rpmとし、重合反応器内温度を65℃に調整し、単量体を連続的に供給した。
【0075】
1時間の重合後、モレキュラーシーブス(3A)により乾燥したビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン11.0mmolをシクロヘキサン10mlに溶解させた溶液(以下、AS溶液と記す。)を、撹拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件で、重合反応器内に迅速に投入した。
【0076】
AS溶液投入後、重合反応器に単量体を供給し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を0.5時間行った。重合中、撹拌速度を130rpm、重合温度を65℃とした。
【0077】
0.5時間の重合後(重合開始から1.5時間後)、AS溶液を撹拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件で、重合反応器内に迅速に投入した。
【0078】
AS溶液投入後、重合反応器に単量体を供給し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を0.5時間行った。重合中、撹拌速度を130rpm、重合温度を65℃とした。
【0079】
0.5時間の重合後(重合開始から2時間後)、AS溶液を撹拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件で、重合反応器内に迅速に投入した。
【0080】
AS溶液投入後、重合反応器に単量体を供給し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を1時間行った。重合中、撹拌速度を130rpm、重合温度を65℃とした。
【0081】
1時間の重合後(重合開始から3時間後)、メタノール0.5mlを含むヘキサン20mlを投入し、更に重合体溶液を5分間撹拌した。なお、総計3時間の重合での1,3−ブタジエンの供給量は821g、スチレンの供給量は259gであった。
【0082】
重合体溶液に2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学製、商品名:スミライザーGM)7.2g、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルプロピオネート)(住友化学製、商品名:スミライザーTP−D)3.6gを加え、次に、重合体溶液を、常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、重合体を得た。重合体のムーニー粘度、ビニル含量およびスチレン単位の含量を測定した結果を表1に示す。
【0083】
得られた重合体100重量部、シリカ(デグッサ社製、商品名:ウルトラシルVN3−G)78.4重量部、シランカップリング剤(デグッサ社製、商品名:Si69)6.4重量部、カーボン6.4重量部、伸展油(共同石油社製、商品名:X−140)47.6重量部、老化防止剤(住友化学社製、商品名:アンチゲン3C)1.5重量部、ステアリン酸2重量部、亜鉛華2重量部、加硫促進剤(住友化学社製、商品名:ソクシノールCZ)1重量部、加硫促進剤(住友化学社製、商品名:ソクシノールD)1重量部、ワックス(大内新興化学工業社製、商品名:サンノックN)1.5重量部、硫黄1.4重量部を、ラボプラストミルにて混練し、得られた混練物を6インチロールで、シートに成形した。該シートを160℃で45分加熱して加硫させ、加硫されたシートの省燃費性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0084】
実施例2
内容積20リットルのステンレス製重合反応器を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後、ヘキサン(比重0.68g/cm3)10.2kg、1,3−ブタジエン547g、スチレン173g、テトラヒドロフラン6.1ml、エチレングリコールジエチルエーテル5.0mlを重合反応器内に投入した。次に、n−ブチルリチウム13.8mmolをn−ヘキサン溶液として投入して重合を開始し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を0.5時間行った。重合中、撹拌速度を130rpmとし、重合反応器内温度を65℃に調整し、単量体を連続的に供給した。
【0085】
0.5時間の重合後、AS溶液を撹拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件で、重合反応器内に迅速に投入した。
【0086】
AS溶液投入後、重合反応器に単量体を供給し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を0.5時間行った。重合中、撹拌速度を130rpm、重合温度を65℃とした。
【0087】
0.5時間の重合後(重合開始から1時間後)、AS溶液を撹拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件で、重合反応器内に迅速に投入した。
【0088】
AS溶液投入後、重合反応器に単量体を供給し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を0.5時間行った。重合中、撹拌速度を130rpm、重合温度を65℃とした
【0089】
0.5時間の重合後(重合開始から1.5時間後)、AS溶液を撹拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件で、重合反応器内に迅速に投入した。
【0090】
AS溶液投入後、重合反応器に単量体を供給し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を0.5時間行った。重合中、撹拌速度を130rpm、重合温度を65℃とした
【0091】
0.5時間の重合後(重合開始から2時間後)、AS溶液を撹拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件で、重合反応器内に迅速に投入した。
【0092】
AS溶液投入後、重合反応器に単量体を供給し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を0.25時間行った。重合中、撹拌速度を130rpm、重合温度を65℃とした
【0093】
0.25時間の重合後(重合開始から2.25時間後)、AS溶液を撹拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件で、重合反応器内に迅速に投入した。
【0094】
AS溶液投入後、重合反応器に単量体を供給し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を0.75時間行った。重合中、撹拌速度を130rpm、重合温度を65℃とした
【0095】
0.75時間の重合後(重合開始から3時間後)、メタノール0.5mlを含むヘキサン20mlを投入し、更に重合体溶液を5分間撹拌した。なお、総計3時間の重合での1,3−ブタジエンの供給量は821g、スチレンの供給量は259gであった。
【0096】
実施例1に記載と同方法で重合体溶液から重合体を取り出し、加硫されたシートを作成した。重合体のムーニー粘度、ビニル含量およびスチレン単位の含量を測定した結果、加硫されたシートの省燃費性を評価した結果を表1に示す。
【0097】
実施例3
内容積20リットルのステンレス製重合反応器を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後、ヘキサン(比重0.68g/cm3)10.2kg、1,3−ブタジエン547g、スチレン173g、テトラヒドロフラン6.1ml、エチレングリコールジエチルエーテル5.0mlを重合反応器内に投入した。次に、n−ブチルリチウム13.6mmolをn−ヘキサン溶液として投入して重合を開始し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を1時間行った。重合中、撹拌速度を130rpmとし、重合反応器内温度を65℃に調整し、単量体を連続的に供給した。
【0098】
1時間の重合後、モレキュラーシーブス(3A)により乾燥したビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン11.0mmolをシクロヘキサン13.3mlに溶解させた溶液(以下、AS2溶液と記す。)を、撹拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件で、重合反応器内に迅速に投入した。
【0099】
AS2溶液投入後、重合反応器に単量体を供給し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を0.5時間行った。重合中、撹拌速度を130rpm、重合温度を65℃とした。
【0100】
0.5時間の重合後(重合開始から1.5時間後)、AS2溶液を撹拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件で、重合反応器内に迅速に投入した。
【0101】
AS2溶液投入後、重合反応器に単量体を供給し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を0.5時間行った。重合中、撹拌速度を130rpm、重合温度を65℃とした。
【0102】
0.5時間の重合後(重合開始から2時間後)、AS2溶液を撹拌速度130rpm、重合反応器内温度65℃の条件で、重合反応器内に迅速に投入した。
【0103】
AS2溶液投入後、重合反応器に単量体を供給し、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合を1時間行った。重合中、撹拌速度を130rpm、重合温度を65℃とした。
【0104】
1時間の重合後(重合開始から3時間後)、メタノール0.5mlを含むヘキサン20mlを投入し、更に重合体溶液を5分間撹拌した。なお、総計3時間の重合での1,3−ブタジエンの供給量は821g、スチレンの供給量は259gであった。
【0105】
重合体溶液に2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学製、商品名:スミライザーGM)7.2g、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルプロピオネート)(住友化学製、商品名:スミライザーTP−D)3.6gを加え、次に、重合体溶液を、常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、重合体を得た。重合体のムーニー粘度、ビニル含量およびスチレン単位の含量を測定した結果を表1に示す。
【0106】
得られた重合体100重量部、シリカ(デグッサ社製、商品名:ウルトラシルVN3−G)78.4重量部、シランカップリング剤(デグッサ社製、商品名:Si69)6.4重量部、カーボン6.4重量部、伸展油(共同石油社製、商品名:X−140)47.6重量部、老化防止剤(住友化学社製、商品名:アンチゲン3C)1.5重量部、ステアリン酸2重量部、亜鉛華2重量部、加硫促進剤(住友化学社製、商品名:ソクシノールCZ)1重量部、加硫促進剤(住友化学社製、商品名:ソクシノールD)1重量部、ワックス(大内新興化学工業社製、商品名:サンノックN)1.5重量部、硫黄1.4重量部を、ラボプラストミルにて混練し、得られた混練物を6インチロールで、シートに成形した。該シートを160℃で45分加熱して加硫させ、加硫されたシートの省燃費性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0107】
比較例1
内容積20リットルのステンレス製重合反応器を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後、ヘキサン(比重0.68g/cm3)10.2kg、1,3−ブタジエン547g、スチレン173g、テトラヒドロフラン6.1ml、エチレングリコールジエチルエーテル5.0mlを投入した。次に、n−ブチルリチウム13.1mmolをn−ヘキサン溶液として投入し、重合反応器内の温度を65℃に調整し、1,3−ブタジエンとスチレンとを重合反応器に供給して、130rpmでの攪拌下で3時間重合を行い、重合体溶液を得た。3時間の重合での1,3−ブタジエンの供給量は821g、スチレンの供給量は259gであった。
【0108】
得られた重合体溶液に、モレキュラーシーブス(3A)により乾燥したビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン11.0mmolをシクロヘキサン10mlに溶解させた溶液を投入し60分撹拌した。次に、メタノール10mlを投入し、更に重合体溶液を5分間撹拌した。
【0109】
実施例1に記載と同方法で重合体溶液から重合体を取り出し、加硫されたシートを作成した。重合体および加硫されたシートの評価結果を表1に示す。
【0110】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエンに基づく構成単位と下式(I)で表される構成単位とを有し、共役ジエンに基づく構成単位と共役ジエンに基づく構成単位との間に、下式(I)で表される構成単位を有することを特徴とする共役ジエン系重合体。

[式中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立に、下式(II)で表される基、水酸基又は炭化水素基を表し、X1、X2及びX3の少なくとも1つが、下式(II)で表される基又は水酸基である。]

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、窒素原子、酸素原子又はケイ素原子を有していてもよい炭素原子数が1〜6の炭化水素基を表し、R1及びR2は結合して環構造を形成していてもよい。]
【請求項2】
式(II)のR1及びR2が、それぞれ独立にメチル基、エチル基またはn−プロピル基であることを特徴とする請求項1に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項3】
式(I)のX1、X2及びX3の2つが式(II)で表される基又は水酸基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項4】
式(I)で表される構成単位を重合体鎖に3つ以上有することを特徴とする請求項1に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項5】
下記工程A、B及びCを有することを特徴とする共役ジエン系重合体の製造方法。
(工程A):炭化水素溶媒中で、アルカリ金属触媒により、共役ジエンを含む単量体を重合させ、該触媒由来のアルカリ金属を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体を得る工程
(工程B):アルカリ金属触媒由来のアルカリ金属を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体の炭化水素溶液に、下式(III)で表されるケイ素化合物を添加し、該ケイ素化合物を重合体鎖末端に反応させて、式(III)で表されるケイ素化合物に基づく構成単位にアルカリ金属触媒由来のアルカリ金属が結合した構造を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体を得る工程

[式中、X4、X5及びX6は、それぞれ独立に、下式(II)で表される基又は炭化水素基を表し、X4、X5及びX6の少なくとも1つが、下式(II)で表される基又は水酸基である。]

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、窒素原子、酸素原子又はケイ素原子を有していてもよい炭素原子数が1〜6の炭化水素基を表し、R1及びR2は結合して環構造を形成していてもよい。]
(工程C):式(III)で表されるケイ素化合物に基づく構成単位にアルカリ金属触媒由来のアルカリ金属が結合した構造を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体の炭化水素溶液に、共役ジエンを含む単量体を添加して、該単量体を該重合体鎖末端に重合させる工程
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の共役ジエン系重合体と充填剤とを配合してなることを特徴とする共役ジエン系重合体組成物。
【請求項7】
共役ジエン系重合体の配合量100重量部あたり、充填剤の配合量が10〜150重量部であることを特徴とする請求項6に記載の共役ジエン系重合体組成物。

【公開番号】特開2008−239966(P2008−239966A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43945(P2008−43945)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】