説明

共役系高分子の作製方法

【課題】十分な配向性・秩序度を有する共役系高分子が高い反応率で作製される共役系高分子の作製方法の提供。
【解決手段】本発明の共役系高分子の作製方法では、サーモトロピック液晶組成物を反応場として、モノマーの電解重合を行う。該サーモトロピック液晶組成物は、固体−液晶相転移温度が25℃以下であり、等方相転移温度が55℃以上であり、且つclogP値が6以下である。このサーモトロピック液晶組成物に、少なくとも1種のモノマー及び支持電解質を含有させ、電解重合を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役系高分子の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
共役系高分子(導電性高分子)は、エレクロニクスデバイスなどに用いられ、導電性を高めることを目的とした研究が多く行われている。一般的に、共役系高分子(導電性高分子)の配向を制御することで、導電性の大幅な増加や異方的な導電性の付与が期待されている。配向を制御する方法として、液晶などの媒体中で作製する方法が知られており、白川・赤木らによって、液晶中の化学重合にて合成されたポリアセチレンが高い導電性を示すことが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、共役系高分子(導電性高分子)は、化学重合だけではなく、電解重合によっても作製可能なことが知られており、リオトロピック液晶鋳型中でEDOT(エチレンジオキシチオフェン)の電解重合をおこなうことで高い移動度と異方的な導電性を示すことが報告されている(例えば、非特許文献2及び3参照)。
【0003】
しかしながら、上記方法では水・液晶混合系で共役系高分子を作製することから、水を嫌うエレクトロニクスデバイスには適さない。非水系で共役系高分子を作製する方法としては、サーモトロピック液晶中で反応させることが考えられる。しかしながら、電解重合に必須な支持電解質は液晶に対する溶解性が低いことや通常の溶剤と比較してサーモトロピック液晶は粘性が高いことなどの理由によって重合の反応性が著しく低下する。よって、多くの研究はなされているものの、この用途に使用されている液晶の種類はわずかであり、高い導電性や異方性が得られるような十分な配向性・秩序度を有する共役系高分子は知られていない(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:DE3533252A1
特許文献2:特開2003−306531
【非特許文献】
【0005】
非特許文献1:Polymer Journal, 19, 185 (1987)
非特許文献2:Angew.Chem.Int.Ed., 42, 778 (2003)
非特許文献3:Adv.Mater.,16,589(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、十分な配向性・秩序度を有する共役系高分子を高い反応率で作製する共役系高分子の作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねたところ、特定の条件のサーモトロピック液晶組成物中でモノマーを電解重合することによって、十分な配向性・秩序度を有する共役系高分子が、高い反応率で作製されることを見出した。
【0008】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0009】
<1> 少なくとも1種のモノマー及び支持電解質を、固体−液晶相転移温度が25℃以下であり等方相転移温度が55℃以上であり且つclogP値が6以下であるサーモトロピック液晶組成物に含有させ、電解重合を行う共役系高分子の作製方法。
【0010】
<2> 前記サーモトロピック液晶組成物中の、前記モノマー以外の非液晶性液体の含有率が5質量%以下である前記<1>に記載の共役系高分子の作製方法。
【0011】
<3> 前記サーモトロピック液晶組成物中に、少なくとも1種の、等方相転移温度が100℃以上の化合物を含有する前記<1>又は<2>に記載の共役系高分子の作製方法。
【0012】
<4> 前記サーモトロピック液晶組成物は、少なくとも1種の等方相転移温度が100℃以上の化合物と、少なくとも1種の固体−液晶相転移温度が40℃以下の化合物と、を含有する前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【0013】
<5> 前記サーモトロピック液晶組成物は、少なくとも1種のジオキサン化合物を含有する前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【0014】
<6> 前記モノマーがヘテロ環化合物を含む前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【0015】
<7> 前記電解重合では、
5分間電圧を印加した時の重合反応率が5%以上30%以下となるような第一電圧を印加した後、
5分間電圧を印加した時の重合反応率が50%以上となるような第二電圧を印加する前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【0016】
<8> 前記第一電圧が3V以下である前記<7>に記載の共役系高分子の作製方法。
【0017】
<9> 前記電解重合は、50℃以下の温度で行われる前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【0018】
<10> 前記モノマー及び前記支持電解質を含有する前記サーモトロピック液晶組成物が、対向する1対の電極基板に挟持される前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【0019】
<11> 前記電極基板が、シランカップリング剤で処理されている前記<10>に記載の共役系高分子の作製方法。
【0020】
<12> 前記電極基板が、ラビング処理されている前記<10>又は<11>に記載の共役系高分子の作製方法。
【0021】
<13> 前記サーモトロピック液晶組成物は、前記電極基板に電圧を印加したときに前記電極基板に対して水平に配向する前記<10>〜<12>のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【0022】
<14> 前記サーモトロピック液晶組成物は、前記電極基板に電圧を印加したときに前記電極基板に対して垂直に配向する前記<10>〜<12>のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【0023】
<15> 前記サーモトロピック液晶組成物が、前記電極基板に電圧を印加したときに一軸に配向する前記<10>〜<14>のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、十分な配向性・秩序度を有する共役系高分子が高い反応率で作製される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0026】
本発明の共役系高分子の作製方法では、少なくとも1種のモノマー及び支持電解質を、固体−液晶相転移温度が25℃以下であり等方相転移温度が55℃以上であり且つclogP値が6以下であるサーモトロピック液晶組成物に含有させ、電解重合を行う。本発明によれば、十分な配向性・秩序度を有する共役系高分子が、高い反応率で作製される方法が提供される。
【0027】
一般的に、等方相転移温度が高くなるほど液晶組成物の粘度が高くなるため、モノマーの反応性が低くなる。よって、モノマーの反応性を高めた状態で電解重合を行う観点からは、等方相転移温度を低くすることが望まれていた。しかしながら、このような低い等方相転移温度を有する液晶組成物を電解重合の反応場として用いると、得られる共役系高分子は秩序性が低くなることが明らかとなった。
一方、本発明の作製方法では、モノマーの反応性を低下させず、且つ得られる共役系高分子は秩序性が高くなっている。
【0028】
本発明の方法で作製した共役系高分子が高い異方性を発現する理由は明確には判明していないが、次のように推測される。
電解酸化重合では電極表面が重合開始点となるため、モノマーが電極近傍に供給されることで反応が進行する。この際に、周囲の液晶が高秩序に配列することで、モノマーの供給方向およびポリマーの生長方向が液晶の配向に沿うようになる。その結果、得られた共役系高分子が高い異方性を発現するものと推測される。特に、等方相転移温度が55℃以上のサーモトロピック液晶性組成物を用いることで、この組成物中の液晶の配向の揺らぎが抑えられて秩序性が高まり、生成したポリマー(共役系高分子)の秩序性が一段と向上するものと推測される。
【0029】
また、サーモトロピック液晶性組成物のclogP値を低くして親水性を高めることで、サーモトロピック液晶性組成物への支持電解質の溶解性が高まることが、モノマーの反応性を高める要因の一つであると推測される。なお、支持電解質の溶解性が向上しても一概にはモノマーの反応性を高めることにはならないが、本発明にかかるサーモトロピック液晶組成物の条件下においては、モノマーの反応性が高くなるという事実が判明している。
【0030】
加えて、反応場として用いるサーモトロピック液晶性組成物において、等方相転移温度が55℃以上であることと、clogP値が6以下であることの相乗効果によって、生成したポリマー(共役系高分子)の秩序性が向上することも確認されている。
以下、本発明の作製方法に使用する材料について説明する。
【0031】
<サーモトロピック液晶組成物>
本発明に係るサーモトロピック液晶組成物は、固体−液晶相転移温度が25℃以下であり、等方相転移温度が55℃以上であり、更にclogP値が6以下である。
【0032】
ここで、固体−液晶相転移温度とは、液晶組成物が固相から液晶に変化する温度を意味し、等方相転移温度とは、液晶組成物が液晶から等方的液体相に変化する温度を意味する。
固体−液晶相転移温度及び等方相転移温度は、偏光顕微鏡観察及びTG−DTA、DSCにて液晶相を同定し、測定される。具体的には、偏光顕微鏡観察において、固体が融解して液状になり、かつ偏光顕微鏡のクロスニコル観察(偏光板が直交状態)において明視野となった点を固体−液晶相転移温度と特定し、偏光顕微鏡観察において、明視野から暗視野となった点を等方相転移温度と特定する。
【0033】
サーモトロピック液晶組成物の固体−液晶相転移温度は、電解重合を行う際の温度を鑑みて、20℃以下であることがより好ましく、15℃以下であることが更に好ましい。
サーモトロピック液晶組成物の等方相転移温度は、高くなるほど秩序性の高い共役系高分子が得られるため望ましく、55℃以上であることがより好ましく、75℃以上であることが更に好ましい。
このような固体−液晶相転移温度及び等方層転移温度を有するサーモトロピック液晶組成物は、電解重合を行う反応場では、液晶相を示す。
【0034】
また、サーモトロピック液晶組成物のclogP値は、低くなるほど支持電解質の溶解が高まるため望ましく、5以下であることがより好ましく、4.5以下であることが更に好ましい。
なお、clogP値は、「Hansch-Leoのフラグメント法」(化学構造を部分構造(フラグメント)に分割し、そのフラグメントに対して 割り当てられたlogP寄与分を合計することによりlogP値を推算)に基づいたプログラムにて計算した値である。C. Hansch & A. Leo. SUbstituent Constants For Correlation Analysis in Chemistry and Biology. John Wiley & Sons. およびA. J. Leo. Calculating logPoct from structure. Chem. Rev., 93, 1281-1306, 1993.に詳しい。
【0035】
上記固体−液晶相転移温度、等方相転移温度及びclogP値を満たすサーモトロピック液晶組成物を調製する方法の一例としては、2種類以上の液晶を混合して、これらの範囲を満たす液晶組成物を調製する方法が挙げられ、具体的には、低い固体−液晶相転移温度を有し且つ低いclogP値を有する液晶と、高い等方相転移温度を有する液晶とを混合する方法などが挙げられる。より好ましくは、低い固体−液晶相転移温度を有し且つ低いclogP値を有する液晶と、低いclogP値を有し且つ高い等方相転移温度を有する液晶を混合する方法が挙げられる。
具体的なサーモトロピック液晶組成物の成分について以下で説明する。
【0036】
(液晶)
電解重合の反応場として使用される液晶としては、固体−液晶相転移温度、等方相転移温度及びclogP値が上述する特定の範囲内にあるものであれば特に限定されず、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶のいずれの形態であってもよい。そのなかでも、ネマチック液晶であることが粘度を低く抑える観点から望ましい。
【0037】
前述の固体−液晶相転移温度、等方相転移温度及びclogP値を満たすサーモトロピック液晶組成物は、等方相転移温度が100℃以上の液晶(以下「第一の液晶」と称する場合がある)を少なくとも1種含有することが好ましい。第一の液晶を添加することで、等方相転移温度が55℃以上のサーモトロピック液晶組成物が調製されうる。
【0038】
第一の液晶の等方相転移温度は、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることが更に好ましい。
【0039】
なお、第一の液晶においてclogP値は特に限定されないが、8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6以下であることが更に好ましい。また、第一の液晶において固体−液晶相転移温度は特に限定されないが、150℃以下であることが好ましく、135℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが更に好ましい。
【0040】
更に、前記第一の液晶とともに、固体−液晶相転移温度が25℃以下の液晶(以下「第二の液晶」と称する場合がある)を含有させ、第一の液晶と第二の液晶物の配合比を調節することで、固体−液晶相転移温度が25℃以下で且つ等方相転移温度が55℃以上の、6以下のclogP値を有するサーモトロピック液晶組成物が調製されうる。
【0041】
第二の液晶の固体−液晶相転移温度は、20℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることが更に好ましい。
【0042】
第二の液晶の等方相転移温度は、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましい。
【0043】
前記第二の液晶は、6以下のclogP値を有することが望ましく、5以下のclogP値を有することがより望ましく、4以下のclogP値を有することが更に望ましく、3以下のclogP値を有することが更に望ましい。
【0044】
なお、サーモトロピック液晶組成物のclogP値が6以下となるように調整するには、第一の液晶及び第二の液晶がともに低いclogP値を有することが望ましい。
【0045】
以下では、第一の液晶と第二の液晶の具体的な化合物について説明する。
前記第一の液晶は、等方相転移温度が100℃以上であればその他は特に制限されないが、高い等方相転移温度を有する化合物とする観点からは、3つ以上の環基を有する化合物であることが望ましい。
【0046】
前記環基としては、ヘテロ環基(ジオキサン、ピリジン、ピリミジン)、アリール基(フェニル基)、脂肪族炭化水素基(シクロヘキサン)が好ましく、低いclogP値を有する観点からは、少なくとも1つのジオキサン環基を有することが望ましい。
【0047】
また、前記3つの環基は、単結合で連結されていても、二価の連結基で連結されていてもよい。また、環基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0048】
前記3つの環基の連結部分は、各々独立に、単結合、エステル基(−O−CO−、−CO−O−)、エーテル基、置換または無置換アルキレン、置換または無置換メチレンオキシ基が好ましく、単結合、エステル基(−O−CO−、−CO−O−)、エーテル基、換または無置換メチレンオキシ基がより好ましく、単結合、エステル基、置換または無置換メチレンオキシ基が更に好ましい。
【0049】
前記第一の液晶は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0050】
【化1】

【0051】
一般式(1)中、D,Dはそれぞれ独立に、ヘテロ環基(ジオキサン、ピリジン、ピリミジン)、アリール基(フェニル基)、脂肪族炭化水素基(シクロヘキサン)を表し、好ましくは、Dは、二価のジオキサン環基、シクロヘキサン環基を表し、Dは、フェニル基、シクロヘキサン環基を表す。より好ましくは、Dは、二価のジオキサン環基、Dは、フェニル基を表す。eが2以上またはmが2以上の場合、2個以上のDは、それぞれ独立に選ばれる。
【0052】
一般式(1)中、n、pは1以上5以下の整数を表し、好ましくは、1以上3以下であり、より好ましくは1以上2以下である。
一般式(1)中、kは1または2を表し、fは0または1を表し、eは1または2を表し、mは1または2を表す。より好ましくは、eが1のとき、mは2であり、eが2のとき、mは1を表す。
【0053】
一般式(1)中、Lは、エステル基(−O−CO−、−CO−O−)、エーテル基、置換または無置換アルキレン、置換または無置換メチレンオキシ基が好ましく、エステル基(−O−CO−、−CO−O−)、エーテル基、置換または無置換メチレンオキシ基がより好ましく、エステル基、置換または無置換メチレンオキシ基が更に好ましい。
【0054】
一般式(1)中、T及びTはそれぞれ独立に、シアノ基、ハロゲン(F、Cl)、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アルキルアミド基を表す。Tは好ましくは、アルキル基、アルコキシ基を表し、Tは、好ましくは、シアノ基、ハロゲン(F、Cl)、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基を表し、より好ましくは、シアノ基、ハロゲン(F、Cl)、アルキル基、アルコキシ基を表し、特に好ましくは、シアノ基、アルキル基を表す。
及びTはそれぞれD,Dのいずれの位置で結合していてもよいが、好ましくは分子長軸末端である4位に結合する。
【0055】
一般式(1)で表される化合物は、一般式(1−1)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0056】
【化2】

【0057】
一般式(1−1)中、Tは、アルキル基を表し、Tは、シアノ基、ハロゲン(F、Cl)、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アルキルアミド基を表し、好ましくは、シアノ基、ハロゲン(F、Cl)、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基を表し、より好ましくは、シアノ基、ハロゲン(F、Cl)、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、特に好ましくは、シアノ基又はアルキル基を表す。
【0058】
一般式(1−1)中、Lは、エステル基(−CO−O−)、置換または無置換アルキレン、置換または無置換メチレンオキシ基を表し、好ましくはエステル基(−CO−O−)を表す。Lは、エステル基(−O−CO−、−CO−O−)、エーテル基、置換または無置換アルキレン、置換または無置換メチレンオキシ基を表し、好ましくはエステル基(−O−CO−、−CO−O−)、置換または無置換アルキレン、置換または無置換メチレンオキシ基を表し、より好ましくはエステル基(−O−CO−、−CO−O−)、置換または無置換メチレンオキシ基を表し、特に好ましくはエステル基(−O−CO−、−CO−O−)を表す。
【0059】
一般式(1−1)中、fは0または1を表し、kは0または1を表す。
【0060】
前記第二の液晶は、固体−液晶相転移温度が25℃以下であればその他は特に制限されないが、より低いclogP値を有するには、ジオキサン環基を有することが望ましく、また2つの環基を有する化合物であることが望ましい。
【0061】
前記環基としては、clogP値を低くする観点から、少なくとも1つのヘテロ環基(ジオキサン、ピリジン、ピリミジン)を有することが好ましく、より好ましくは、ジオキサン環基を有する。更にアリール基(フェニル基)、脂肪族炭化水素基(シクロヘキサン)を有することが好ましい。
【0062】
前記2つの環基は、単結合で連結されていても、二価の連結基で連結されていてもよい。また、環基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0063】
前記2つの環基の連結部分は、単結合、エステル基(−O−CO−、−CO−O−)、エーテル基、置換または無置換アルキレン基、置換または無置換メチレンオキシ基が好ましく、単結合、エステル基(−O−CO−、−CO−O−)、置換または無置換アルキレン基、置換または無置換メチレンオキシ基がより好ましく、単結合、エステル基(−O−CO−、−CO−O−)が更に好ましい。
【0064】
前記第二の液晶は、下記一般式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0065】
【化3】

【0066】
一般式(2)中、D,D,L,T,T、n及びpは、一般式(1)におけるD,D,L,T,T、n及びpとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も一般式(1)と同様である。
【0067】
一般式(2)中、hは1または2を表し、jは0または1を表し、gは1または2を表し、iは1または2を表す。好ましくは、h、gおよびiは1である。
【0068】
前述の第一の液晶や後述の支持電解質の溶解性を高める観点からは、第二の液晶は、上記一般式(2)で表される化合物の混合物とすることが好ましい。
【0069】
ここで、Tとして炭素数の異なるアルキル基を有する一般式(2)で表される化合物を2種以上混合し、好ましくは3種以上混合する。炭素数の異なるアルキル基としては、偶数鎖長と奇数鎖長のものから少なくとも1種以上選ばれることが好ましく、炭素数としては、1から12であり、好ましくは2から8であり、より好ましくは、3から7である。
【0070】
前記第一の液晶と第二の液晶の配合比は、固体−液晶相転移温度、等方相転移温度及びclogP値を考慮して適宜調整することが望ましく、一般的には、第一の液晶:第二の液晶(質量比)は、1:99〜45:55であることが好ましく、5:95〜40:60であることがより好ましく、10:90〜35:65であることが更に好ましい。
【0071】
<モノマー>
本発明の共役系高分子の作製方法では、電解重合で作製できるものであれば、共役系高分子の種類は特に制限されず、種々のモノマーを用いることができる。本発明では、以下で説明する各共役系高分子に対応するモノマーを適用することが好適である。
【0072】
共役系高分子の例としては、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリフルオレン、ポリアズレン、ポリ(パラフェニレンサルファイド)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、複鎖型共役系高分子(ポリペリナフタレンなど)、金属フタロシアニン系高分子、その他共役系高分子(ポリ(パラキシリレン)、ポリ[α−(5,5’−ビチオフェンジイル)ベンジリデン]など)が挙げられる。
好ましくは、ポリ(パラフェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレンが挙げられ、更に好ましくは、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン、ポリ(パラフェニレンビニレン)などが挙げられる。さらに好ましくは高い導電性を有するという観点から、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、又はこれらの誘導体が好ましく、さらに好ましくは高い導電性と透明性を有するという観点から、ポリチオフェンが好ましい。
【0073】
電解重合により作製する共役系高分子は置換基を有していてもよく、該置換基としては後述の一般式(I)においてR11として説明する置換基を挙げることができる。
【0074】
本発明では特に、下記一般式(I)で表される部分構造を有する共役系高分子(即ちポリチオフェン及びその誘導体)であることが、高い透明性と導電性を両立するという観点から好ましい。なお、ここでいう「透明性」とは、可視光である波長550nmの光に対する透過率が50%以上であることを意味する。透明性導電性ポリマー材料として好ましくは該透過率が60%以上であり、より好ましくは該透過率が70%以上である。
【0075】
【化4】

【0076】
一般式(I)中、R11は置換基を表し、m11は0〜2の整数を表す。m11が2を表すとき、複数のR11は互いに同一であっても異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。n11は1以上の整数を表す。
【0077】
11で表される置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、2−オクテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノなどが挙げられる。)、
【0078】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、
【0079】
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0080】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、
【0081】
ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12で、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。具体的には、例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。
【0082】
上記R11で表される置換基は、さらに置換されていてもよい。また、置換基を複数有する場合、それらの置換基は互いに同じでも異なっていてもよく、また可能な場合は連結して環を形成してもよい。形成される環としては例えば、シクロアルキル環、ベンゼン環、チオフェン環、ジオキサン環、ジチアン環等が挙げられる。
【0083】
11で表される置換基として、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基である。特に好ましくは、m11が2のとき、2つのR11が連結して環を形成したアルコキシ基、アルキルチオ基であり、ジオキサン環、ジチアン環を形成することが好適である。
【0084】
一般式(I)においてm11が1のとき、R11はアルキル基であることが好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がより好ましい。
また、R11が、アルキル基であるポリ(3−アルキルチオフェン)であるとき、隣り合ったチオフェン環との連結様式はすべて2−5’で連結した立体規則的なものと、2−2’、5−5’連結が含まれる立体不規則的なものがあるが、立体的不規則なものが好ましい。
【0085】
本発明では、導電性ポリマーとしては、高い透明性と導電性を両立するという観点から、3,4−エチレンジオキシ−ポリチオフェン(下記具体例化合物(6))であることが特に好ましい。
【0086】
モノマーは、重合によって得られる導電性ポリマー膜の所望する膜厚および前記サーモトロピック液晶組成物の液晶性を損なわない観点から、前記サーモトロピック液晶組成物(100質量%)に対して、0.1質量%以上30質量%以下で含有させることが好ましく、1質量%以上20質量%以下で含有させることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下で含有させることが更に好ましい。
【0087】
以下に、共役系高分子の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの他にも、WO98/01909記載の化合物等が挙げられる。
【0088】
【化5】

【0089】
【化6】

【0090】
<支持電解質>
本発明の共役系高分子の作製方法では、電解重合の反応場であるサーモトロピック液晶組成物中に、導電性を付与するための支持電解質を添加する。支持電解質は、電解重合反応を阻害せず、サーモトロピック液晶組成物に十分な導電性を与えるものであればよく、一般的に電気化学反応に用いられる種々のイオン性の塩等から印加電圧・液晶に対する溶解性等に応じて適宜選択できる。具体的には、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、リチウムパークロレート、nBuNBF、nBuNPF、(nC1225NBPhが挙げられ、上記サーモトロピック液晶組成物への溶解性の観点からは、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、(nC1225NBPhが好適であり、過塩素酸テトラブチルアンモニウムがより好適である。
【0091】
支持電解質は、前記サーモトロピック液晶組成物(100質量%)に対して、0.01質量%以上10質量%以下で含有させることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下で含有させることがより好ましく、0.2質量%以上3質量%以下で含有させることが更に好ましい。
【0092】
<その他の添加剤>
前記サーモトロピック液晶組成物には、重合反応性を高める観点で溶媒などの非液晶性液体を含有させることも可能である。しかしながら、溶媒などの非液晶性液体をサーモトロピック液晶組成物に含有させると、サーモトロピック液晶組成物の等方相転移温度は著しく低下する。そのため、溶媒などの非液晶性液体の添加量によっては、サーモトロピック液晶組成物の異方性が低下した状態で電解重合を行うことになり、生成するポリマーの秩序性が低下する傾向にあるため、望ましくない。
溶媒などの非液晶性液体の含有率は5質量%以下とすることが望ましく、3質量%以下とすることがより望ましく、更に望ましくは、実質的に溶媒などの非液晶性液体を含有しない場合である。ここで「実質的に含有しない」とは、不純物として含有される量以下であることを意味する。
【0093】
一方、本発明によれば、高い反応性でモノマーが電解重合するため、溶媒などの非液晶性液体を添加せずとも、高い反応率で共役系高分子を作製することが可能である。
【0094】
<電解重合>
共役系高分子の電解重合において、印加される電圧は、重合されるモノマー(すなわち、目的の共役系高分子)の種類や使用される液晶反応場、電極材料等に合わせて適宜選択する。例えば、後述の実施例に示されるように、チオフェンの電解重合は2V〜4V程度の電圧下で行うことができる。しかしながら、印加電圧はこのような例に限定されない。
【0095】
生成する共役系高分子の秩序性を高める観点からは、印加電圧をより低くすることが好ましく、例えばチオフェンの電解重合では、4V程度の印加電圧よりも2V程度の印加電圧で行うと、生成する共役系高分子の秩序性の指標の一つであるオーダーパラメーター値が高くなる傾向にある。
【0096】
また、生成する共役系高分子の秩序性を高めつつ、且つ十分な反応速度が得られるという観点からは、以下のように二段階以上の段階的な電圧の印加を行うことが好適である。具体的には、5分間電圧を印加した時の重合反応率が5%以上30%以下となるような第一電圧を印加した後、5分間電圧を印加した時の重合反応率が50%以上となるような第二電圧を印加する。
【0097】
より好適には、第一電圧は、5分間電圧を印加した時の重合反応率が5%以上25%以下となるような電圧であり、更に好適には、5分間電圧を印加した時の重合反応率が8%以上20%以下となるような電圧である。
また、第二電圧は、5分間電圧を印加した時の重合反応率が60%以上となるような電圧であり、更に好適には、5分間電圧を印加した時の重合反応率が65%以上となるような電圧である。
【0098】
第一電圧及び第二電圧は、使用するモノマー種、サーモトロピック液晶種、支持電解質などによって適宜調節することが望ましい。後述の実施例で示すようにターチオフェンの電解重合の場合には、第一電圧としては、3V未満であることが好ましく、1V以上2V以下であることがより好ましく、第二電圧としては、2V以上5V以下であることが好ましく、2V以上4V以下であることがより好ましい。
【0099】
第一電圧の印加時間は、重合反応率が5%以上30%以下となるように決定されることが望ましい。ターチオフェンの電解重合の場合には、第一電圧は、1分以上10分以下で印加することが好ましく、1分以上3分以下で印加することがより好ましい。全体の印加時間における第一電圧の印加時間の割合は、1%以上60%以下であることが好ましく、10%以上50%以下であることがより好ましい。
【0100】
電解重合は、高秩序度の共役系高分子を得る為、サーモトロピック液晶の秩序度を低下させない観点から50℃以下の温度で行うことが好ましく、15℃以上40℃以下の温度であることがより好ましく、20℃以上30℃以下の温度であることが更に好ましい。
【0101】
電解重合で使用する電極はどのようなものであってもよく、特に限定されない。例えば、金、銀、白金等の金属電極、カーボン電極、又は酸化インジウム・錫(ITO)等の透明性ガラス電極などが例示される。これらは、モノマー(すなわち、目的の共役系高分子)の種類や液晶の種類等、あるいは目的とする高分子の量に応じて適宜選択される。
より好適には、ITO基板電極を使用することが有機EL素子、太陽電池等の光を透過させる必要のある素子に利用する観点から好適である。
【0102】
また、対向する1対の電極基板を用いて、この1対の電極間に前記モノマー及び前記支持電解質を含有する前記サーモトロピック液晶組成物を挟持することが、高秩序にサーモトロピック液晶を配向させる観点および大面積の薄膜を得る観点から好適である。1対の電極に電圧を印加すると、サーモトロピック液晶組成物中のモノマーが電極を起点に重合し始め、ポリマーが成長する。
【0103】
対向する一対の電極基板間の距離(ギャップ)は、高秩序にサーモトロピック液晶を配向させる観点および重合時の配向乱れを抑制する観点から100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上70μm以下であることがより好ましく、1μm以上50μm以下であることが更に好ましい。
【0104】
前記電極基板は、シランカップリング剤で処理されていることが好ましい。一般的に配向膜として用いられるポリイミドは絶縁性であるため電解重合に適さないが、シランカップリング剤の場合には単分子膜で通電性をほとんど低下させないため電解重合を阻害しない。また、シランカップリング剤で処理された電極基板上には、まずモノマーの単分子膜が生成し、その後ポリマーが成長するものと推測される。このため、シランカップリング剤で処理された電極基板を用いて電解重合を行うと、得られるポリマーの秩序性が高まり好適である。
【0105】
更に、電極基板がラビング処理されたものであると、生成する共役系高分子の秩序性が更に高まり更に好適である。
【0106】
なお、前記シランカップリング剤の親水性が高い場合、サーモトロピック液晶組成物が前記電極基板に対して水平に配向し、電解重合により生成する共役系高分子は、サーモトロピック液晶組成物の配向に沿って、電極基板に対して水平に配向して成長する。このような電極基板に対して水平に配向した共役系高分子は、透明電極、タッチパネル、有機EL、太陽電池などの用途で好適に利用される。
【0107】
一方、前記シランカップリング剤の疎水性が高い場合、サーモトロピック液晶組成物が、前記電極基板に対して垂直に配向し、電解重合により生成する共役系高分子は、サーモトロピック液晶組成物の配向に沿って、電極基板に対して垂直に配向して成長する。このような電極基板に対して垂直に配向した共役系高分子は、コンデンサなどの用途で好適に利用される。
【0108】
更に、前記シランカップリング剤をラビング処理することで、サーモトロピック液晶組成物が、水平かつ一軸に配向するものである場合、電解重合により生成する共役系高分子は、サーモトロピック液晶組成物の配向に沿って、水平かつ一軸配向の共役系高分子となる。このような一軸配向の共役系高分子は、高い導電性を示し、透明電極、タッチパネル、有機EL、太陽電池などの用途で好適に利用される。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明は実施例に限定されるものでない。
【0110】
[合成例1]
<高等方相転移温度(高Tiso)液晶化合物の合成>
以下のスキームに従って、ネマチック液晶化合物(1)を合成した。
【0111】
【化7】

【0112】
(化合物1aの合成)
ナトリウムエトキシド(8.5g)のエタノール溶液(150ml)に、マロン酸ジエチル(20g)を加え、30分攪拌した後、ノルマルブチルブロミド(17.1g)を滴下した。70℃で4時間攪拌後、減圧にて濃縮し、濃縮残渣を1NHClで中和後、酢酸エチル/水に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/10)することにより、化合物1a(21.9g)を得た。
【0113】
(化合物1bの合成)
窒素置換した500mlの三つ口フラスコに、1.0mol/Lのリチウムアルミニウムハイドライド(100ml、アルドリッチ製)を入れ、氷浴で内温5℃以下に調整した。ノルマルブチルマロン酸ジエチル(8.0g)を100mlの脱水THFに溶解させ、滴下ロートで30分かけて滴下した。滴下終了後、湯浴で内温65℃に加熱し、反応溶媒を還流させた。4時間後、薄層クロマトグラフィーによって原料の消失を確認し、反応溶液を30℃以下に降温した。反応溶液に水10mlを入れて未反応のリチウムアルミニウムハイドライドを分解した。pH2以上になるまで1規定塩酸水溶液を加え、反応溶液を50mlの酢酸エチルで3回抽出した。得られた酢酸エチル溶液を飽和食塩水および重曹水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別し、得られた溶液を濃縮することで、粗生成物が5.0g得られた。この組成生物をフラッシュカラムクロマト精製(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)することにより、化合物1b(4.4g)を得た。
【0114】
(化合物1cの合成)
p−ブロモベンズアルデヒド(5.6g、東京化成製)、化合物1b(4.0g)、AMBERLIST(300mg、ICN Biomedicals製)、トルエン30mlを入れ、ディーンスターク還流管を取り付け、オイルバスで4時間加熱還流した。反応溶液を水冷し、濾過後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/8)することにより、化合物1c(2.8g)を得た。
【0115】
(ネマチック液晶化合物1の合成)
化合物1c(1.5g)、p−シアノフェニルホウ酸(1.44g)、炭酸カリウム(5.4g)、1,2−ジメトキシエタン(45ml)および水(45ml)溶液に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.76g)を加え、窒素雰囲気下、80℃にて6時間加熱攪拌をおこなった。反応液を酢酸エチル/1N塩酸水に注加し、有機層を1N塩酸水続いて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/8〜1/6)し、得られた粗結晶をメタノールで洗浄することによりネマチック液晶化合物1(1.1g)を得た。
【0116】
なお、ネマチック液晶化合物1の同定を、元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。ネマチック液晶化合物1の外観は白色固体であった。
偏光顕微鏡観察、TG−DTA及びDSCにて、ネマチック液晶化合物1の液晶相の同定を行った。相転移温度は、Cr1 128℃ Cr2 136℃ X 153℃ N 237℃ Isoであった。ここで、Cr1とは、結晶状態を意味し、Cr2とはCr1の結晶状態からXの状態の間に現れるCr1とは異なった結晶状態(偏光顕微鏡観察で異なるテクスチャを与える)を意味し、Xとは同定できない高次液晶相を意味し、Nとはネマチック相を意味し、Isoとは等方相を意味する。
clogPをChemDrawUltra8.0にて算出したところ、4.66であった。
【0117】
【化8】

【0118】
(ネマチック液晶化合物2〜4の合成)
ネマチック液晶化合物1と同様の方法にて、ネマチック液晶化合物2〜4の合成し、相転移温度及びclogPを測定した。ネマチック液晶化合物2〜4の相転移温度及びclogPを以下に示す。
【0119】
ネマチック液晶化合物2;
相転移温度:Cr1 149℃ X 170℃ N 231℃ Iso、clogP=4.13
ネマチック液晶化合物3;
相転移温度:Cr1 133℃ X 154℃ N 236℃ Iso、clogP=5.19
ネマチック液晶化合物4;
相転移温度:Cr1 116℃ X 148℃ N 214℃ Iso、clogP=6.78
【0120】
【化9】

【0121】
[調製例1]
<低clogP液晶組成物Aの調製>
トランス−4−(5−プロピル−1,3−ジオキサン−2−イル)ベンゾニトリル(1g)、トランス−4−(5−ブチル−1,3−ジオキサン−2−イル)ベンゾニトリル(1g)、トランス−4−(5−ペンチル−1,3−ジオキサン−2−イル)ベンゾニトリル(1g)を混合し、ホットプレートで加熱溶解させることで、低clogPの液晶組成物Aを調製した。
液晶組成物Aの相転移温度及びclogPを合成例1と同様の方法で求めた。得られた液晶組成物Aは、相転移温度は、N 41℃ Iso(固体−液晶相転移温度は15℃以下)であった。clogPが2.77であった。
【0122】
<液晶組成物1〜11の調製>
調製例1で調製した液晶組成物Aに対し、合成例1で調製したネマチック液晶1〜4のいずれか又は市販の下記液晶化合物を下記表に示す割合で混合し、ホットプレートで加熱溶解して、液晶組成物を調製した。
なお、市販の液晶化合物の相転移温度Tiso及びclogPを、実施例1と同様の方法で求めた。
【0123】
NKV−3−141−1(関東化学社製);
相転移温度:Cr1 91℃ N 176℃ Iso、clogP=7.735
NKV−3−151−1(関東化学社製);
相転移温度:Cr154℃ Sm129℃ N 195℃ Iso、clogP=7.567
【0124】
【化10】

【0125】
比較として、DE3533252A1(比較例2)、及び特開2003−306531号(比較例1)に記載の液晶組成物を調製した。
【0126】
【化11】

【0127】
【表1】

【0128】
この結果に示されるように、本発明に係る液晶組成物1〜7は、25℃以下の固体−液晶相転移温度と、55℃以上の等方相転移温度(Tiso)と、6以下のclogPと、を両立している。
【0129】
[実施例1]
〜反応性とTiso及びclogPとの関係〜
調製例1で調製した液晶組成物1又は4(94.5mg)、2,2’:5’,2’’−テルチオフェン(和光純薬製)(5mg)、及び過塩素酸テトラブチルアンモニウム(0.5mg)を120℃で加熱溶解させ、EHC社製液晶評価セル(配向膜無し、ITO抵抗値10Ω/□、ギャップ50μm)に注入した。
作製した素子にポテンシオスタット(BAS社製)にて25℃で電圧4Vを10秒間印加した。600nmの透過率変化をマルチチャンネル分光器USB4000(オーシャンオプティクス社製)にて測定した。
ここで、100%電解酸化重合が進行した場合、透過率変化はほぼ100%になるものとし、透過率変化割合(%)は、電圧印加前の透過率に対する電圧印加後の透過率の変化と定義する。透過率変化割合が大きいほど、重合が進行し、反応性が高いことを意味する。
【0130】
比較として、液晶組成物1を液晶組成物8,10,11又はAに代えた以外は同様にして、電圧を印加し、透過率変化割合を測定した。
【0131】
【表2】

【0132】
一般的に等方相転移温度(Tiso)が高くなると液晶粘度も高くなる傾向があるため、重合反応性が大幅に低下するが(比較例6)、上記結果からわかるように、6以下のclogPを有する本発明に係る液晶組成物では、Tisoが高くなっても電解酸化重合の反応性がほとんど低下しないことがわかる。
なお、clogPが6以下であっても、固体−液晶相転移温度が25℃以上のものでは、著しく反応性が低下することがわかる(比較例8)。
【0133】
また、clogPが低い値の液晶組成物A(比較例7)では、透過率変化割合が高く、電解酸化重合の反応性が高いことが示されているが、後述の実施例3で示されるように、液晶組成物Aでは得られる共役系高分子のオーダーパラメーターが低く、秩序性の高い共役系高分子が得られない。
【0134】
[実施例2]〜印加電圧と得られる共役系高分子のオーダーパラメーターとの関係〜
<ITO電極付き基板のシランカップリング処理1>
2.5cm角ITO付き白板ガラス(アイジーシー社製)を中性洗剤で洗浄後、UVオゾン処理(6分)した。これをシランカップリング剤(シアノエチルトリエトキシシラン)1質量%のトルエン溶液に漬け、室温で1日放置した。トルエン溶液から取り出したガラス基板をイソプロピルアルコールで洗浄し、更にイソプロピルアルコールに漬けて、20分間超音波洗浄をおこなった。これをアセトンで洗浄し、更に中性洗剤に漬けて、20分間超音波洗浄をおこなった後、蒸留水で洗浄し、シランカップリングで処理したITO基板1を得た。
得られたITO基板1の表面自由エネルギーを測定したところ、71mN/mであった。
【0135】
<電解酸化重合>
上記調製した液晶組成物1(94.5mg)、2,2’:5’,2’’−テルチオフェン(和光純薬製)(5mg)、及び過塩素酸テトラブチルアンモニウム(0.5mg)を120℃で加熱溶解させた。
上記作製したシランカップリング剤で処理済みのITO基板1をラビング装置(EHC社製)にてラビング処理し、窒素ガスによって表面洗浄した後、スペーサーとしてカプトンテープ(厚さ35μm)を基板枠に貼り付けた。
先に調製した液晶組成物を滴下し、もう一枚のラビング処理されたシランカップリング処理済みITO基板1を貼り合わせ、固定した。
得られた素子を偏光顕微鏡にて観察したところ、液晶組成物は水平一軸配向していた。ポテンシオスタット(BAS社製)にて25℃で電圧2Vを10分間印加したところ、青黒色に呈色した。
【0136】
電解酸化重合後の基板をメタノール、アセトン、メタノールの順にそれぞれ1分間漬け置きして、液晶組成物、残存モノマーおよび支持電解質を洗浄した。洗浄後の基板を乾燥させた後、分光光度計(V−670、日本分光社製)にて偏光吸収スペクトル測定を行った。
得られた偏光吸収スペクトルから、作製した共役系高分子のオーダーパラメーターを算出した。また、印加電圧を3V,4Vに変えた以外は同様にして、電解酸化重合を行った。
【0137】
【表3】

【0138】
上記表3の結果に示されるように、電圧が高くなるにつれて、得られた共役系高分子のオーダーパラメーターが低下することがわかる。
【0139】
[実施例3]
〜液晶組成物の相転移温度と得られる共役系高分子の秩序性との関係〜
液晶組成物1を下記表の液晶組成物とする以外は実施例2と同様にして、電解重合用の素子を作製した。この素子にポテンシオスタット(BAS社製)にて25℃で電圧2Vを10分間印加した後、電圧を3Vに変えて更に10分間印加したところ、青黒色に呈色した。
電解酸化重合後の基板をメタノール、アセトン、メタノールの順にそれぞれ1分間漬け置きして、液晶組成物、残存モノマーおよび支持電解質を洗浄した。洗浄後の基板を乾燥させた後、分光光度計(V−670、日本分光社製)にて偏光吸収スペクトル測定をおこなった。得られた偏光吸収スペクトルから、オーダーパラメーターを算出した。
【0140】
また、比較として、液晶組成物1を液晶組成物8〜10、調製例1で調製した液晶組成物Aとする以外は、上記方法と同様にして電解酸化重合を行った。
【0141】
【表4】

【0142】
上記表4に示されるように、本発明に係る液晶組成物1〜7は、比較例の液晶組成物8〜10及びAと比較して、高いオーダーパラメーターの共役系高分子が得られることがわかる。
特に、本発明に係る液晶組成物1と比較例の液晶組成物10とを比較すると、いずれも等方相転移温度(Tiso)は55℃以上と高いものの、clogPが6を超える比較例の液晶組成物10では、オーダーパラメーターの高い(秩序性が高い)共役系高分子が得られなかった。したがって、秩序性が高い共役系高分子を得るには、等方相転移温度(Tiso)を55℃以上とするだけでなく、clogPを6以下とすることも必要であることがわかる。
【0143】
[実施例4]
〜段階的電圧印加法〜
実施例2に記載の液晶素子を、ポテンシオスタット(BAS社製)にて下記表の電圧(25℃)および時間で印加した。なお、2V5分印加した場合、反応率は8%、3V5分印加時の反応率は66%であった。
電解酸化重合後の基板をメタノール、アセトン、メタノールの順にそれぞれ1分間漬け置きして、液晶組成物、残存モノマーおよび支持電解質を洗浄した。洗浄後の基板を乾燥させた後、分光光度計(V−670、日本分光社製)にて偏光吸収スペクトル測定をおこない、得られた偏光吸収スペクトルからオーダーパラメーターを算出した。また、触針式膜厚計で膜厚を測定し、電解酸化重合反応性の指標とした。
【0144】
【表5】

【0145】
上記表5に示されるように、電解重合がわずかに進む低い第一電圧を印加した後、十分な反応速度が得られる高い第二電圧を印加する段階的電圧印加を行うことで、高い秩序度を維持したまま、十分な重合反応が進行することがわかる。
【0146】
[実施例5]
<ITO電極付き基板のシランカップリング処理2>
シランカップリング剤をオクタデシルトリメトキシシランに変更する以外は、実施例2の上記基板1の処理方法と同様にして、シランカップリングで処理した基板2を得た。
【0147】
<電解酸化重合5(垂直配向)>
上記調製した液晶組成物4(94.5mg)、2,2’:5’,2’’−テルチオフェン(和光純薬製)(5mg)および過塩素酸テトラブチルアンモニウム(0.5mg)を120℃で加熱溶解させた。上記作製したシランカップリング剤処理済みITO基板2をラビング装置(EHC社製)にてラビング処理し、窒素ガスによって表面洗浄した後、スペーサーとしてカプトンテープ(厚さ35μm)を基板枠に貼り付けた。
【0148】
先に調製した液晶組成物を滴下し、もう一枚のラビング処理されたシランカップリング処理済みITO基板2を貼り合わせ、固定した。得られた素子を偏光顕微鏡にて観察したところ、暗視野であり、液晶組成物は垂直配向していた。
ポテンシオスタット(BAS社製)にて25℃で電圧2Vを10分間印加した後、電圧を3Vに変えて更に10分間印加したところ、青黒色に呈色した。
【0149】
電解酸化重合後の基板をメタノール、アセトン、メタノールの順にそれぞれ1分間漬け置きして、液晶組成物、残存モノマーおよび支持電解質を洗浄し、洗浄後の基板を乾燥させた。
洗浄後の基板について、分光光度計(V−670、日本分光社製)にて偏光吸収スペクトル測定を行い、触針式膜厚計にて膜厚測定を行った。
【0150】
同様に、シランカップリング剤処理済みITO基板2(オクタデシル)を、実施例2で作製したシランカップリング剤処理済みITO基板1(シアノエチル)とする以外は、上記同様にして電解酸化重合を行った。電解重合前の素子を偏光顕微鏡で観察したところ、明視野かつ異方性が見られ、水平一軸配向していることが確認された。
得られた結果を以下に示す。
【0151】
【表6】

【0152】
一般的に、電解酸化重合にて得られるポリチオフェンがITO基板に水平に配向している場合(ケース(1))は、遷移モーメントは基板に水平となり、垂直に配向している場合(ケース(2))は、遷移モーメントは垂直となる。ポリチオフェンが一方向(一軸)に配向している場合に、分子長軸方向の偏光吸収をA//、短軸方向の偏光吸収をA⊥と定義すると、ケース(1)の水平配向では、吸光度は(A//+A⊥)/2となり、ケース(2)の垂直配向では、吸光度はA⊥となることが理論的に知られている。
【0153】
ここで、水平一軸配向時(シアノエチルシランカップリング処理基板)の偏光吸収スペクトルから、A//、A⊥を求めると、オクタデシルシランカップリング処理基板において得られるポリチオフェンの吸光度と一致することから、ITO基板2及び本発明に係る液晶組成物4を用いて作製されるポリチオフェンは、高い秩序度で垂直配向していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のモノマー及び支持電解質を、固体−液晶相転移温度が25℃以下であり等方相転移温度が55℃以上であり且つclogP値が6以下であるサーモトロピック液晶組成物に含有させ、電解重合を行う共役系高分子の作製方法。
【請求項2】
前記サーモトロピック液晶組成物中の、前記モノマー以外の非液晶性液体の含有率が5質量%以下である請求項1に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項3】
前記サーモトロピック液晶組成物中に、少なくとも1種の、等方相転移温度が100℃以上の化合物を含有する請求項1又は請求項2に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項4】
前記サーモトロピック液晶組成物は、少なくとも1種の等方相転移温度が100℃以上の化合物と、少なくとも1種の固体−液晶相転移温度が40℃以下の化合物と、を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項5】
前記サーモトロピック液晶組成物は、少なくとも1種のジオキサン化合物を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項6】
前記モノマーがヘテロ環化合物を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項7】
前記電解重合では、
5分間電圧を印加した時の重合反応率が5%以上30%以下となるような第一電圧を印加した後、
5分間電圧を印加した時の重合反応率が50%以上となるような第二電圧を印加する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項8】
前記第一電圧が3V以下である請求項7に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項9】
前記電解重合は、50℃以下の温度で行われる請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項10】
前記モノマー及び前記支持電解質を含有する前記サーモトロピック液晶組成物が、対向する1対の電極基板に挟持される請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項11】
前記電極基板が、シランカップリング剤で処理されている請求項10に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項12】
前記電極基板が、ラビング処理されている請求項10又は請求項11に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項13】
前記サーモトロピック液晶組成物が、前記電極基板に電圧を印加したときに前記電極基板に対して水平に配向する請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項14】
前記サーモトロピック液晶組成物が、前記電極基板に電圧を印加したときに前記電極基板に対して垂直に配向する請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。
【請求項15】
前記サーモトロピック液晶組成物が、前記電極基板に電圧を印加したときに一軸に配向する請求項10〜請求項14のいずれか1項に記載の共役系高分子の作製方法。

【公開番号】特開2011−122098(P2011−122098A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282010(P2009−282010)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】