説明

共沈活性物質含有粒子

本発明は、共沈物の形態で活性薬剤を含有する粒子、係る粒子の製造法、及び係る粒子を含有する医薬製剤に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共沈物の形態で活性物質を含有する粒子、この粒子の製造法、及びこれらの粒子を含有する種々の形態の医薬製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経口医薬品の製造は、ますます複雑となりつつある化学合成成分がしばしば胃腸管内における吸収に対して不都合な物理化学的性質、特に水系媒質に対する極めて低い溶解性を示すことによる制約を受けている。
【0003】
これは、これら成分の生体利用効率がきわめて低いこと、従って有効濃度に到達させるには患者に対して活性物質の投与量を高める必要があるという結果に反映されることが多い。
【0004】
このことは、高い有効濃度に到達させる場合、1回当たりの錠剤又はゼラチンカプセルの服用個数や1日当りの服用回数が多くなると一層不都合な要因となる。
【0005】
固体分散物を調製することは、薬剤活性成分の溶解性を著しく高め、その生体利用率を大幅に向上させ得る方法の一つである。
【0006】
前記固体分散物は、一般的には例えばポリマーなどの親水性物質中に活性物質が分子状態で分散して成るものである。
【0007】
特許文献1には、強い親水性の環状アミドと、好ましくは界面活性剤とを含有する有機溶媒に1種以上の活性物質を溶解し、次いで得られた有機溶液を蒸発乾固して粉砕及び篩別することを特徴とする固体分散物の調製法が開示されている。この場合の環状アミドは分子量が10,000〜50,000のポリビニルピロリドンである。
【特許文献1】国際公開第97/04749号パンフレット
【0008】
特許文献2には、活性成分と親水性ポリマーと非イオン性界面活性剤とを含む溶液をスプレーすることによって得たイトラコナゾールなどの抗糸状菌性活性成分を含む単一被覆層で核を被覆した粒子からなる医薬組成物が開示されている。この従来技術で得られる組成物は活性成分の溶解性を改善している。
【特許文献2】欧州特許出願公開第1103252号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、固体分散物は一般的に二種類の方法によって得られ、第1の方法は活性物質と不活性の担体粒子とからなる溶液を蒸発させる方法であり、第2の方法はこれらの化合物を溶融させてから凝固させる方法である。
【0010】
第1の方法における生成物は共沈物であり、第2の方法における生成物は共溶融物質である。
【0011】
第1の困難は、成分の満足できる生体利用効率を保証すべく可能な限り速い溶解速度と大きな溶解度を有する粒子を得ることが困難な点である。
【0012】
第2の困難は、狭い粒度分布で経口投与向きの形態に適応可能な粒径をもちながら高い活性物質濃度を維持できる粒子を得ることが困難な点である。
【0013】
第3の困難は、過酷な温度及び湿度条件、例えば相対湿度が30℃/60%RH或いは40℃/75%RHといった安定度試験に用いられる条件下でも長期にわたって安定な製剤を得ることが困難な点である。
【0014】
極端な場合、固体分散物の調製は、それ自体では生体利用効率を充分に改善するには不十分である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含有すると共に中性で親水性の担体粒子に被着されたコーティング層として形成された共沈物から成る粒子を調製することにより、ほとんど水に不溶の活性物質の生体利用効率を本質的に改善でき、かつ試験管内(in vitro)もしくは生体内(in vivo)での活性物質の溶解速度と溶解率を高めることが完全に可能であることを知見した。
【0016】
担体粒子に被着されたコーティング層は共沈物の形態の固体分散物であり、これは例えば胃液などの生理的媒質に容易に溶解する。
【0017】
また本発明者らは、粒子をスプレー工程の終了時のみならずスプレー工程中にも粉砕することにより、大量の被覆溶液をスプレーする際に遭遇する粒子の集塊化の問題を本質的に改善することが完全に可能であることを知見した。
【0018】
粉砕による粒径の微細化により、単一のスプレー工程では粒子が一様な成長を示す場合に比べて粒子相互間の集塊化の傾向が小さくなり、従って、一層小さな粒径の粒子にスプレーを続けることが可能になる。
【0019】
即ち、本発明による共沈活性物質含有粒子の製造法は、少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含有する有機溶液を中性の親水性担体粒子にスプレーすることにより前記担体粒子に共沈物のコーティング層を被着させた粒子を製造するものであり、特に前記溶液全量のスプレーを少なくとも二回に分けたスプレー工程で実行し、これら各回のスプレー工程のそれぞれに、先行工程の完了で得られる生成物を粉砕する粉砕工程を一連に後続させることを特徴とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による粒子の調製プロセスは、有利には次の工程、即ち
a)活性物質と親水性ポリマーと界面活性剤を含む前記有機溶液を準備する工程、
b)工程a)で得た溶液の一部を中性親水性担体粒子にスプレーする第1のスプレー工程、
c)第1のスプレー工程b)で得た粒子を粉砕する第1の粉砕工程、
d)有機溶液の残量を第1の粉砕工程c)で得た粉砕粒子にスプレーする第2のスプレー工程、及び
e)第2のスプレー工程d)で得た粒子を更に粉砕する最終の粉砕工程、
を含むことが好ましい。
【0021】
第1のスプレー工程b)から最終粉砕工程d)までのシーケンスは、スプレーすべき溶液量とスプレー工程中の粒子の成長速度に応じて1回以上反復して実行することができる。
【0022】
有機溶液は、全量を一度に調製してもよいが、有機溶液の多量の蒸発を回避するには各スプレー工程の直前に必要量だけの溶液を調製するほうが好ましい。
【0023】
有機溶液のスプレーは、塗装用パン、有孔パン・コータ、又は流動床の内部で実行することができる。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態では、全てのスプレー工程は防爆装置を備えた流動床の内部で行われる。
【0025】
流動床はスプレーノズルを備え、そのスプレーのためのノズルの位置と向きは調整可能である。
【0026】
このノズル位置及びスプレー方向の調整によって粒子上のコーティング層の成長速度を制御することができ、また活性物質の性質やスプレーされるコーティング溶液の定性的ならびに定量的組成、更にはその他の種々の加工条件(例えば温度、空気圧及びスプレー処理量など)に関連する粘着現象を防止することができる。
【0027】
通常は、粒子は有機溶液のスプレー後に乾燥される。
【0028】
この乾燥は、粒子をトレイに拡げて行ってもよく、或いはスプレー工程に用いた装置内で直接行ってもよい。
【0029】
この乾燥工程は、有機溶液のスプレー工程の直後の粉砕にかける前に行うことができ、或いは粒子の粉砕工程の直後に行うこともできる。
【0030】
粉砕工程は、粉体破砕の目的に供される任意の形式のミルで行うことができる。粉砕ミルとしては、以下に例を示すようなロータリー形又は振動形の粉砕ミルや、多数のピンを備えた粉砕ミルを使用することができる。
【0031】
例えばフィッツミル(FITZMILL)形式のロータリーミルやフレビット(FREWITT)形式の振動ミルはローターを備えており、ローターによる付勢で粒子が所定の等級メッシュのスクリーンを通過することによって粉砕整粒する形式である。
【0032】
またフォープレックス(FORPLEX)形式の粉砕ミルは多数のピンを備えており、これらのピンに粒子を高速度で叩きつけて粉砕する形式である。
【0033】
第1及び第2の各スプレー工程の間に用いられる粉砕ミルは、最終の粉砕工程で用いられる粉砕ミルと異なる形式のものであってもよい。
【0034】
本発明による方法は、水溶性が極めて低い活性物質、即ち1,000倍量の水又は1,000倍量以上の水に一部しか溶解し得ないような活性物質、好ましくは10,000倍量の水又は10,000倍量以上の水に一部しか溶解し得えないような実質的に水に不溶性の活性物質に対して特に好適である。
【0035】
活性物質としては、任意の化合物類、例えば胃腸鎮静剤、制酸剤、鎮痛剤、抗炎症剤、冠動脈拡張剤、末梢血管及び大脳血管拡張剤、抗感染薬、抗生物質、抗ウィルス薬、駆虫剤、抗がん剤、抗不安薬、神経弛緩薬、中枢神経系興奮剤、抗うつ剤、抗ヒスタミン剤、下痢止め薬、緩下剤、補助栄養剤、免疫抑制剤、血中コレステロール低下剤、ホルモン類、酵素類、抗痙攣剤、抗狭心症剤、心拍数増減調節薬、高血圧治療薬、抗偏頭痛剤、血液凝固に影響を及ぼす薬剤、鎮癇癪薬、筋弛緩剤、糖尿病治療薬、甲状腺機能障害治療薬、利尿剤、食欲抑制剤、喘息治療薬、去痰剤、鎮咳剤、粘液調節因子、うっ血除去剤、催眠剤、制吐剤、造血剤、尿酸排泄剤、植物抽出物、造影剤、或いは錠剤中に組み合わせて用いられる活性物質として同一又は異なる種類のうちから選択することのできるその他の化合物類から選ぶことができる。
【0036】
これらの活性物質は、医薬として許容可能な塩類の形態又は任意の多形相(ラセミ体、鏡像異性体など)の形態で供することができる。ここで、「医薬として許容可能な塩類」という用語は、上述の化合物類の誘導体であって、その医薬活性を有する基幹化合物が塩基もしくは酸によって塩に変換されているものを意味すると解釈され、医薬活性を有する塩の例としては、特にアミン類のような塩基性残基の有機又は無機酸塩、或いはカルボン酸などのような酸性残基のアルカリ金属誘導体もしくは有機塩、などがある。
【0037】
粒子における活性物質の占める比率は1〜60重量%の範囲内で変えてもよい。
【0038】
不活性の親水性担体粒子は、結晶質もしくは非晶質の粒子状形態で存在する化学的及び薬学的に不活性な粉末成分からなるものであればよく、例えば乳糖、好ましくは超微粒子状乳糖(EFK)や蔗糖又は澱粉の加水分解物(マルトデキストリン)などの糖類誘導体、セルロース、又は蔗糖と澱粉との混合物、或いはセルロースをベースとする混合物なども不活性の球状担体粒子の調製に使用することができる。
【0039】
粒子における不活性の親水性担体粒子の占める比率は95重量%以下の範囲で変えることができる。
【0040】
不活性親水性担体粒子の単位粒径は50〜500μm、好ましくは90〜200μmとすることができる。
【0041】
親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、アクリル系ポリマー、及びポリエチレングリコールのうちから選ぶことができる。
【0042】
ポリビニルピロリドンは分子量が10,000〜50,000のポリマーから選ぶことができる。
【0043】
セルロース誘導体は、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート/サクシネートなどのヒドロキシル化誘導体から選ぶとよい。
【0044】
好適なヒドロキシプロピルメチルセルロースは、見掛け粘度2.4〜18cP、更に好ましくは2.4〜5cPのものから選ぶことができる。
【0045】
アクリル系ポリマーは、アンモニオメタクリレート共重合体、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びメタクリル酸共重合体のうちから選ぶとよい。
【0046】
ポリエチレングリコールは、分子量1,000〜20,000のポリマーから選ぶことができる。
【0047】
親水性ポリマー/活性成分の重量比は10/1〜1/2の範囲内とするとよい。
【0048】
界面活性剤は、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性又は両性のいずれかの界面活性剤の単体又は混合物のうちから選ぶことができる。
【0049】
界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン化ソルビタンのモノオレエート、モノラウレート、モノパルミテート、モノステアレート、トリオレエート、トリステアレート、或いはその他の任意のポリオキシエチレン化ソルビタンエステル、好ましくはトゥイーン(Tween:登録商標)20、同40、同60又は同80、炭素数8以上の飽和又は不飽和ポリオキシエチレン化脂肪酸グリセリド、商品名ポロクサマー188などのポロクサマー類、プルロニック(Pluronic:登録商標)F68又は同F87などのエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、レシチン、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、コレステロール、ひまし油のポリオキシエチレン化物、ブリュ(Brij:登録商標)製品やポリオキシエチレン化ステアレートなどのポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル類をはじめとする種々の化合物から選ぶことができる。
【0050】
粒子における界面活性剤の占める好適な比率は、得られる総重量に対して0.1〜20重量%の範囲内で変えてもよい。
【0051】
有機溶液の溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、及びこれら溶剤の混合物から選ぶことができる。
【0052】
溶媒の量は、有機溶液中の種々成分の溶解性を考慮して決定すればよい。
【0053】
本発明のもう一つの主題は、少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含有する共沈物のコーティング層を担体粒子に被着させてなる粒子であって、少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含有する有機溶液をそれぞれ後続の粉砕工程を備えた少なくとも二回の別々のスプレー工程でスプレーすることによって得られる共沈活性物質含有粒子である。
【0054】
本発明に係る方法によれば、第1のスプレー工程で少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含む有機溶液の被着対象となる中性親水性担体粒子がそれ自体に活性物質を全く含有していない場合、第1のスプレー工程で係る有機溶液をスプレーされ、第1の粉砕工程を経て第2のスプレー工程における同一組成の有機溶液の被着対象となる粉末担体粒子は、中性の親水性担体粒子と、少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含む共沈物との双方で構成されたものとなる。
【0055】
このようにして、少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含む有機溶液の被着対象として用いられる担体粒子の活性成分含有量は、スプレーと粉砕のサイクルを1回実行するごとに増加する。
【0056】
最終のスプレー工程が終了した後の粒子の構造は、少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含む共沈物と中性の親水性担体粒子との混合物からなるコア部分、及び少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含む同一組成の共沈物からなる外層部分で構成された球状粒子である。
【0057】
粒径は一般的には50〜1,000μmの範囲内であるが、好ましくは100〜800μm、更に好ましくは200〜500μmであり、粒径の測定は例えば等級別メッシュの篩セットを使用するか、或いはレーザ光の回折を利用して行われる。
【0058】
本発明の好適な一実施形態による粒子は以下の成分を含有している。
・15〜40重量%の不活性親水性担体粒子、好ましくは超微粒子(EFK)乳糖
・15〜30重量%の活性物質
・30〜60重量%の親水性ポリマー、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)
・1〜10重量%の界面活性剤、好ましくはポリソルベート(Polysorbate:商品名)20から同80までの群から選ばれる非イオン性界面活性剤
【0059】
本発明による粒子は、そのまま直接使用することは勿論、経口投与向けの医薬形態、例えばゼラチンカプセルや錠剤を調製する目的で医薬分野において使用され且つ1種以上の活性物質と化学的に適合する添加成分と混合して使用することも可能である。
【0060】
これらの添加成分としては、希釈剤、分解促進剤、膨潤剤、潤滑剤、帯電防止剤、結合剤及び佐薬などから選択した成分を用いることができる。
【0061】
希釈剤としては、蔗糖、乳糖、果糖、デキストロースなどの糖類、マニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトールなどの炭素数13未満のポリオール類、燐酸二カルシウム、燐酸三カルシウム、微晶セルロースなどの単体又はそれらの混合物から選択したものを用いることができる。
【0062】
希釈剤は、錠剤の重量当りの計算で20〜90重量%、好ましくは30〜60重量%の含有率で用いられる。
【0063】
希釈剤は、好ましくは錠剤に直接成形加工可能な平均粒径100〜500μmの顆粒状形態、或いは平均粒径100μm未満の粉末形態で用いられ、この粉末形態の希釈剤は単独又は或いは直接錠剤成形可能な顆粒状形態の希釈剤との混合物として使用可能である。
【0064】
分解促進剤としては、特にクロスカルメロース(Croscarmellose)の商品名で知られている架橋されたカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩や、クロスポビドン(Crospovidone)の商品名で知られている架橋されたポリビニルピロリドン、或いはそれらの混合物を使用することができる。
【0065】
分解促進剤は、錠剤の重量当りの計算で1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の含有率で用いられる。
【0066】
膨潤剤としては、微晶セルロース、澱粉、グリコール酸澱粉ナトリウム塩やカルボキシメチル澱粉などの加工澱粉、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウム、及びそれらの混合物を使用することができる。
【0067】
膨潤剤は、錠剤の重量当りの計算で1〜15重量%の含有で用いられる。
【0068】
潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、医薬適合油類、好ましくはジメチコーン(Dimethicone)又は流動パラフィン、及びそれらの混合物のうちから選択されたものを用いることができる。
【0069】
潤滑剤は、錠剤の重量当りの計算で2重量%以下、好ましくは0.02〜2重量%、更に好ましくは0.5〜1重量%の含有率で使用される。
【0070】
潤滑剤の使用形態の第1は潤滑剤の全量を予め錠剤成形用添加成分混合物中に配合しておく方式であり、第2の使用形態は錠剤成形工程において潤滑剤の一部を打錠用のダイ及びパンチの壁面に吹き付ける方式であり、従って潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウムのように粉末状のもの、或いは流動パラフィンのように液体状のものがある。
【0071】
内部相及び/又は外部相に使用される潤滑剤の量は、過剰分が錠剤成形過程における粉末層の結合に有害な影響を及ぼさないように留意して調節するとよい。
【0072】
帯電防止剤としては、微粉化タルク、非微粉化タルク、コロイダルシリカ(アエロジル[Aerosil:登録商標]200)、疎水性シリカ(アエロジル[Aerosil:登録商標]R972)、沈降シリカ(サイロイド[Syloid:登録商標]FP244)、及びこれらの混合物から成る群から選択されたものを用いることができる。
【0073】
静電防止剤は、錠剤の重量当りの計算で5重量%以下の含有率で使用される。
【0074】
結合剤は乾燥した形で使用し、例えば澱粉、砂糖、ポリビニルピロリドン、又はカルボキシメチルセルロースなどの単体又はそれらの混合物を用いることができる。
【0075】
係る結合剤は、錠剤の重量当りの計算で15重量%以下、好ましくは10重量%未満の範囲の含有率で使用される。
【0076】
また、ゼラチンカプセルへの封入や錠剤化を意図した配合に対しては種々のアジュバントを添加することもでき、これらアジュバントとしては、pH調整剤、発泡を形成可能にする添加剤、特にpH調整剤として使用されるタイプの二酸化炭素発生剤、或いは界面活性剤などから選択して用いることができる。
【0077】
本発明による粒子を含有する種々の形態の医薬製剤もまた本発明の別の主題である。
【0078】
本発明に係る粒子を含有した医薬製剤の調製法は、下記の工程、即ち、
・上述の製造プロセスに従って得られた粒子を添加成分と乾燥下に混合する工程、
・得られた混合物を打錠し、或いはゼラチンカプセル内に封入して、単位形態の製剤を得る工程、
を含むものとすればよい。
【0079】
有利な一実施形態では、予め潤滑剤の全量が打錠用のパンチ表面及び/又はダイ内面に吹き付けておき、それによって粒子と潤滑剤との混合工程が省略される。
【0080】
もう一つの有利な形態による医薬製剤の調製法では、混合物の調製を二つの工程、即ち活性物質と内部潤滑剤以外の全ての錠剤製造用添加成分との混合を行う第1混合工程と、それに続いて潤滑剤の全量又は一部を先の混合物に添加し、一部を添加した場合には残部を打錠用のパンチ表面及び/又はダイ内面に吹き付ける第2混合工程とで行う。
【0081】
混合物の打錠は、往復動方式又は回転方式の打錠プレスで行うことができる。
【0082】
錠剤の硬さは、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)で定められた方法によって測定して得られる破砕性が2%未満、好ましくは1%未満となるように調整される。
【0083】
錠剤は円形錠剤、楕円形錠剤又は長円形錠剤のいずれの形状でも良く、表面は平面、凹面、或いは凸面にすることができ、更には表面に刻印或いは面取りを施すことも随意である。
【0084】
錠剤の重量は、通常1錠当たり0.1〜2.0g、大きさは直径6〜18mmである。
【0085】
本発明の実施例を図1〜4と共に以下に説明する。
【実施例1】
【0086】
1.界面活性剤を含む粒子の調製
【0087】
GPCG1流動床を用い、底部スプレーモードで調製を実施した。
【0088】
スプレー処理する溶液は、イトラコナゾール(ウィコッフ(Wickoff)社製)を96度のアルコール41.6重量部と塩化メチレン58.4重量部から成る溶媒混合物に溶解し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910、5cP、ダウケミカル社製)及びポリソルベート20(Montanox 20(登録商標)、セピック(Seppic)社製)を加えて調製した。
【0089】
EFK乳糖(HMS社製)を流動床に装入し、上記溶液を底部スプレーモードでスプレーした。溶液のスプレーは4工程で順次行った。各スプレー工程の後に、得られた粒子を流動床内で乾燥して本実施例で使用するために篩目630μmのスクリーンを装着したフォープレックス粉砕ミルで粉砕を行った。
【0090】
第4スプレー工程の後に得られた粒子を流動床内で乾燥した。
【0091】
この被着コーティング処理の条件を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
スプレーした溶液の総重量は11kgであり、処理時間は合計4時間47分であった。
【0094】
得られた粒子をGPCG1流動床内において下記乾燥条件で乾燥した。
・熱風入口温度:48℃
・乾燥時間:30分
・製品温度が29℃になるまで放冷
【0095】
続いて、この乾燥粒子を篩目630μmのスクリーンを装着したフォープレックス型粉砕ミルで粉砕した。
【0096】
最終的に得られた乾燥粒子の総量は1.406kgであり、これは歩留まり93%に相当する。
【0097】
この供試製品の配合処方を表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
2. 結果
【0100】
2.1 粒度分布
粒度分布を図1に示した。この粒度分布から下記の結果が得られる。
・D10%: 62μm
・D50%:231μm
・D90%:419μm
【0101】
2.2 溶解速度
3種類の異なる工程段階の粒子について溶解速度を比較した。
【0102】
いずれの測定も、波長254nmの紫外線照射のもと、900mLのDタイプ1.2媒質内でイトラコナゾール被着粒子50mgについて連続的に行った(パドル撹拌速度100rpm)。
【0103】
結果を図2に示す。
【0104】
本発明の方法によって調製されたコーティングでは、イトラコナゾールの溶解性が著しく向上している。粉砕処理によって溶解が促進され、製品の50%が溶解するまでの時間は粉砕しない粒子で10分間を要したのに対し、粉砕され粒子では4分間であった。
【実施例2】
【0105】
1.界面活性剤を含有しない粒子の調製
【0106】
実施例1で述べたのと同様の手順に従って粒子を調製した。製品の配合処方を表3に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
2. 結果
【0109】
2.1 粒度分布
粒度分布を図3に示した。この粒度分布から下記の結果が得られる。
・D10%: 88μm
・D50%:239μm
・D90%:435μm
【0110】
2.2 溶解速度
実施例1と同様の条件下で溶解速度を比較した。
【0111】
粉砕に加え、界面活性剤の存在も溶解を促進する。結果を図4に示す。
【0112】
10分間の溶解で、界面活性剤を含有しない試料では26%のイトラコナゾールが溶解するだけであるのに対し、界面活性剤を含有する試料では90%のイトラコナゾール、即ち共沈したイトラコナゾールの実質的全量が溶解している。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の方法に従って調製された粒子のレーザ粒径計測法で求められた粒度分布を示す線図である。
【0114】
【図2】イトラコナゾール原料粉の場合(▲)と、本発明の方法に従って調製された粒子における最終粉砕前(◇)及び最終粉砕後(■)の溶解速度の比較結果を示す線図である。
【0115】
【図3】界面活性剤を含有しない粒子のレーザ粒径計測法で求められた粒度分布を示す線図である。
【0116】
【図4】イトラコナゾール含有粒子の粉砕前[界面活性剤を含有する場合(■)、界面活性剤を含有しない場合(◆)]、及び粉砕後[界面活性剤を含有する場合(×)、界面活性剤を含有しない場合(△)]の溶解速度の比較結果を示す線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含有する有機溶液を中性の親水性担体粒子にスプレーすることにより前記担体粒子に共沈物のコーティング層を被着させた粒子を製造するに際し、前記溶液全量のスプレーを少なくとも二回に分けたスプレー工程で実行し、これら各回のスプレー工程のそれぞれに、先行工程の完了で得られる生成物を粉砕する粉砕工程を一連に後続させることを特徴とする共沈活性物質含有粒子製造法。
【請求項2】
a)活性物質と親水性ポリマーと界面活性剤を含む前記有機溶液を準備する工程、
b)工程a)で得た溶液の一部を中性親水性担体粒子にスプレーする第1のスプレー工程、
c)第1のスプレー工程b)で得た粒子を粉砕する第1の粉砕工程、
d)有機溶液の残量を第1の粉砕工程c)で得た粉砕粒子にスプレーする第2のスプレー工程、及び
e)第2のスプレー工程d)で得た粒子を更に粉砕する最終の粉砕工程、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の粒子製造法。
【請求項3】
第1のスプレー工程b)から最終の粉砕工程d)までのシーケンスを1回以上反復して実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子製造法。
【請求項4】
各スプレー工程の後、各粉砕工程の前又は各粉砕工程の直後のいずれかに、付加的な乾燥工程を更に備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子製造法。
【請求項5】
中性親水性担体粒子として、結晶質もしくは非晶質の粒子状形態で存在する化学的及び薬学的に不活性な粉末成分、特に糖類誘導体、セルロース、及びそれらの混合物から成る群から選ばれたものを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子製造法。
【請求項6】
親水性ポリマーとして、ポリビニルピロリドン、特に分子量が10,000〜50,000のポリマーと、セルロース誘導体、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート/サクシネートと、アクリル系ポリマーと、ポリエチレングリコールとから成る群から選ばれたものを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子製造法。
【請求項7】
界面活性剤として、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、及び両性のいずれかの界面活性剤の単体及び混合物から成る群から選ばれたものを用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒子製造法。
【請求項8】
有機溶液の溶媒として、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、及びこれらの混合物から成る群から選ばれたものを用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の粒子製造法。
【請求項9】
各スプレー工程を、塗装用パン、有孔パン・コータ、又は流動床の内部で実行することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の粒子製造法。
【請求項10】
少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含有する共沈物のコーティング層を担体粒子に被着させてなる粒子であって、少なくとも1種の活性物質と界面活性剤と親水性ポリマーとを含有する有機溶液をそれぞれ後続の粉砕工程を備えた少なくとも二回の別々のスプレー工程でスプレーすることによって得られる共沈活性物質含有粒子。
【請求項11】
活性物質が1〜60重量%の範囲内の比率を占めることを特徴とする請求項10に記載の粒子。
【請求項12】
不活性の親水性担体粒子が94重量%以下の比率を占めることを特徴とする請求項10又は11に記載の粒子。
【請求項13】
親水性ポリマーと活性成分との重量比が10/1〜1/2であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項14】
界面活性剤が0.1〜20重量%の比率を占めることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項15】
不活性の親水性担体粒子の単位粒径が50〜500μm又は90〜200μmであることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか1項に記載されている粒子又は該粒子と薬学的に許容される添加成分との配合物を含有することを特徴とする医薬製剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−528865(P2007−528865A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519969(P2006−519969)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001878
【国際公開番号】WO2005/009411
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(504347212)
【氏名又は名称原語表記】ETHYPHARM
【Fターム(参考)】