説明

共重合ポリエステル樹脂およびこれを用いた接着剤

【課題】 天然由来のモノマーであるイソソルビドを使用し、できるだけ多くの脂肪族成分を含有し、かつ室温付近のガラス転移温度を有する樹脂組成を見出し、接着性を向上させた共重合ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】 多価カルボン酸成分と多価アルコール成分からなる共重合ポリエステル樹脂であって、多価カルボン酸成分として脂肪族ジカルボン酸を10モル%以上含み、多価アルコール成分としてイソソルビドを5〜90モル%含み、ガラス転移温度が40℃以下であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂、およびこれを用いた接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス原料であるイソソルビドを共重合成分として用いた共重合ポリエステル樹脂およびこれを用いた接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
共重合ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度と分子量を自由にコントロールすることができ、コーティング用途や接着剤用途をはじめ様々な用途で使用されている。組成中に脂肪族成分を多く含有させることで、樹脂のガラス転移温度を低くすることができる。脂肪族成分を多く含む樹脂は、流動性にも優れ、表面張力も高くなり基材とのぬれ性が向上し、接着性が向上することが知られている。
【0003】
接着剤用途の好適なガラス転移温度としては、室温付近である。上記のように脂肪族成分を多く含有することは、基材とのぬれ性を向上させる為の有効な手段ではあるが、ガラス転移温度が室温を下回るくらい脂肪族成分を多く含む樹脂は、逆に接着性が弱くなる。よって、接着剤用途としては、できるだけ多く脂肪族成分を含有させ、かつガラス転移温度は室温付近を保持することが理想的である。
【0004】
また、近年石油資源の枯渇から、天然由来のモノマーに注目が集められており、中でもイソソルビドは、糖類やでんぷんから容易に得ることができるので、共重合ポリエステル樹脂のグリコール成分として用いられている。さらに、イソソルビドは、共重合ポリエステル樹脂の耐熱性を高めるグリコール成分としても注目されている。特許文献1〜2では、イソソルビドを共重合した成型用の結晶性樹脂の開示があり、耐熱性を生かしたポリエステル樹脂を作ることができるとしている。特許文献3では、イソソルビドを共重合したポリエステルを用いたフィルムは、透明性を有し、食品包装等で用いることができるとしている。特許文献4では、透明性と耐熱性を生かしたホットフィルボトルの開示を行っている。特許文献5では、イソソルビドを水溶液として取り扱い、ポリエステルの重合の効率を高める開示を行っている。しかしながら、これらの特許に開示されている組成では、汎用溶剤には溶解することができず、また、塗料またはコーティング剤として扱うことができなかった。
さらに、特許文献6では、汎用溶剤に溶解する組成が開示されているが、開示された組成では、接着力という観点では不十分である。また、接着力向上のために、脂肪族モノマーの有無の重要性に関する記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3413640号公報
【特許文献2】特許3399465号公報
【特許文献3】特表2007−508412号公報
【特許文献4】特表2007−504352号公報
【特許文献5】特表2006−506485号公報
【特許文献6】特開2010−95696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、天然由来のモノマーであるイソソルビドを共重合成分として含有しなおかつ接着性を有する共重合ポリエステル樹脂およびこれを用いた接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意研究した結果、モノマー成分として、特定のカルボン酸成分、ジオール成分を使用すれば前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。また、本発明者らは、特定の共重合成分を特定の共重合比率で共重合することによって、イソソルビドを共重合成分として含みなおかつ室温付近のガラス転移温度を有する共重合ポリエステル樹脂を得ることができ、前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
一般的に、ジカルボン酸成分として、脂肪族ジカルボン酸の共重合量が多くなるほど、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が低くなる。このとき、室温を下回ったガラス転移温度を室温付近まで上げる為に、グリコール成分として、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が使用される。しかし、これらの原料は1mol%含有することで、樹脂のガラス転移温度を約0.1℃程度しか上昇させることができない。一方、イソソルビドは、1mol%含有することで、樹脂のガラス転移温度を約1℃程度上昇させることが可能である。このイソソルビドの特性を利用することにより、多くの脂肪族成分を含有させ、かつガラス転移温度は室温付近に保持することが可能となることを見出した。
また、イソソルビドを含有する樹脂は、他の原料を用いた樹脂よりも表面エネルギーが高くなり、結果としてPETなどのポリエステル基材とのぬれ性を高め接着力が高くなることも見出した。イソソルビド共重合ポリエステル樹脂は、接着用途として理想的な原料である。
【0009】
本発明の要旨は下記の通りである。
【0010】
[1] 多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とからなる共重合ポリエステル樹脂であって、多価カルボン酸成分として脂肪族ジカルボン酸を10モル%以上含み、多価ポリオール成分としてイソソルビドを5〜90モル%含み、ガラス転移温度が40℃以下であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
【0011】
[2] 前記多価カルボン酸成分がジカルボン酸からなり、前記多価アルコール成分がグリコールからなることを特徴とする[1]に記載の共重合ポリエステル樹脂。
【0012】
[3] 前記多価カルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸を90モル%以下含むことを特徴とする請[1]または[2]に記載の共重合ポリエステル樹脂。
【0013】
[4] 前記脂肪族ジカルボン酸成分が、炭素数6〜10の直鎖脂肪族ジカルボン酸であることを特徴とする[1]〜[3]いずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
【0014】
[5] 共重合ポリエステル樹脂の共重合成分として炭素数2〜4の直鎖脂肪族グリコールを含有し、芳香族多価カルボン酸と炭素数2〜4の直鎖脂肪族グリコールの合計が130モル%以下であることを特徴とする[1]〜[4]いずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
【0015】
[6] 前記多価ジカルボン酸成分の30〜80モル%がテレフタル酸であることを特徴とする[1]〜[5]いずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
【0016】
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を用いた接着剤
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、イソソルビドを共重合成分として有しかつ接着性が高い共重合ポリエステル樹脂およびそれを用いた接着剤を得ることができる。本発明の好ましい実施態様においてはさらに、2−ブタノン/トルエン混合溶剤等の非塩素系汎用有機溶剤に値する溶解性に優れる共重合ポリエステル樹脂およびそれを用いた接着剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明でいう共重合ポリエステル樹脂とは、主としてジカルボン酸成分(A)とグリコ
ール成分(B)の等モル量から構成され、必要に応じてヒドロキシカルボン酸成分(C)などが共重合されたものである。また、本発明でいう共重合ポリエステル樹脂とは、2価以上の多価カルボン酸化合物からなる多価カルボン酸成分と、2価以上の多価アルコール化合物からなる多価アルコール成分とが重縮合して得られる化学構造のポリエステルであってもよく、多価カルボン酸化合物および多価アルコール化合物の少なくとも一方が2種類以上の成分からなるものであってもよい。本発明の共重合ポリエステル樹脂は、主としてジカルボン酸成分(A)とグリコール成分(B)からなる共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。ここで主としてとは、本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する全酸成分と全アルコール成分に対して、ジカルボン酸成分(A)とグリコール成分(B)の合計がモル基準で50モル%以上を占めることを指す。ジカルボン酸成分(A)とグリコール成分(B)の合計は70モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが好ましく、100モル%であっても差し支えない。
【0020】
本発明の共重合ポリエステルには、ジカルボン酸成分(A)として、脂肪族ジカルボン酸を共重合する必要がある。脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の炭素数6〜10の直鎖脂肪族ジカルボン酸である。さらに好ましくは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸である。アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の炭素数6〜10の直鎖脂肪族ジカルボン酸は長鎖アルキル基を有する為、これらのジカルボン酸成分を共重合すると本発明のポリエステル樹脂のガラス転移温度を室温付近にまで低下させることが容易であり、接着剤用樹脂の原料としては好ましい樹脂を得ることができる。また、セバシン酸、アゼライン酸はバイオマス原料である為、同じくバイオマス原料であるイソソルビドと併用することでバイオマス度を高くできる点も好ましい。
【0021】
本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する全多価カルボン酸成分の合計を100モル%とした場合、脂肪族ジカルボン酸は、10モル%以上共重合されていることが必要であり、25モル%以上共重合されていることがより好ましい。脂肪族ジカルボン酸の割合が、10モル%未満であると、得られる共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が高くなり、結果として接着性が低くなるので好ましくない。また、脂肪族ジカルボン酸の含有量が多くなりすぎると、耐加水分解性が悪化し、高温高湿等の環境によっては接着性に悪影響を及ぼすことがあるので、脂肪族ジカルボン酸の含有量は、90モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましく、65モル%以下であることが更に好ましい。
【0022】
(A)成分を構成する他のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ジカルボキシビフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸を例示できる。(A)成分を構成する他のジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸または脂環族ジカルボン酸のうちから選択されるいずれか一成分あるいは複数成分であってもよい。(A)成分を構成する他のジカルボン酸成分としては、耐加水分解性の観点から、芳香族ジカルボン酸が含有されていることが好ましく、芳香族ジカルボン酸であることがより好ましい。本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する全多価カルボン酸成分の合計を100モル%とした場合、芳香族ジカルボン酸の共重合比率は90モル%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましい。また、芳香族ジカルボン酸の共重合比率は10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、35モル%以上であることが更に好ましい。芳香族ジカルボン酸の割合が高すぎると、得られる共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が高くなり、結果として接着性が低くなるので好ましくない。また、芳香族ジカルボン酸の含有量が低くなりすぎると、耐加水分解性が悪化し、高温高湿等の環境によっては接着性に悪影響を及ぼすことがある。
【0023】
本発明の共重合ポリエステル樹脂には、さらに必要に応じて3価以上の多価カルボン酸化合物を共重合成分として用いてもよく、より具体的にはトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等のトリカルボン酸および/またはテトラカルボン酸を含んでも良い。3価以上の多価カルボン酸化合物の共重合比率は0.5モル%以上5.0モル%以下であることが好ましく、この範囲で共重合することにより樹脂の骨格に分岐が入り、末端を増加させ、反応を促進させる効果が発揮される。3価以上の多価カルボン酸化合物の共重合比率が高すぎるとゲル化し、溶剤溶解性が悪くなる。なお、「全多価カルボン酸成分」とは、本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸(A)成分、ヒドロキシカルボン酸(C)成分、3価以上のカルボン酸成分の総和を意味する。
【0024】
本発明の共重合ポリエステル樹脂には、グリコール成分(B)として、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(以降「イソソルビド」と呼び、下記に化学式を示す)を共重合する必要がある。イソソルビドは、再生可能資源、例えば糖類およびでんぷんから容易に得ることができ、例えば、D−グルコースを水添し、脱水反応をすればイソソルビドを得ることができる。イソソルビドは、ロケット社等から入手することができる。
【0025】
【化1】

【0026】
本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する全多価アルコール成分を100モル%とした場合、イソソルビドは5モル%〜90モル%共重合されていることが必要である。5モル%未満であると、ガラス転移温度を高める効果がほとんどないので好ましくない。また、90モル%よりも高いと、ガラス転移温度が高くなり、接着性を発現しない。接着性を発現させる為には、共重合ポリエステルのガラス転移温度が40℃以下である必要があり、35℃以下が好ましく、30℃以下がさらに好ましい。
【0027】
共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度を40℃以下にするためには、共重合ポリエステル樹脂を構成する共重合成分として、全多価カルボン酸成分中の脂肪族ジカルボン酸でない成分の比率X1(モル%)と全多価アルコール成分中のイソソルビド成分の比率X2(モル%)の和から炭素数6〜10の直鎖脂肪族グリコール成分の比率X3(モル%)を差し引いた値、すなわち、X1+X2−X3が、15〜110(モル%)であると良い。この数値X1+X2−X3は、25〜105であることがより好ましく、35〜102であることがさらに好ましい。前記全多価カルボン酸成分中の脂肪族ジカルボン酸でない成分とイソソルビド成分はいずれも、共重合することによって得られる共重合ポリエステルのガラス転移温度を上昇させる効果を有する。一方、炭素数6〜10の直鎖脂肪族グリコール成分は、共重合することによって得られる共重合ポリエステルのガラス転移温度を低下させる効果を有する。
【0028】
一方、イソソルビドは二級アルコールであるため、重合性が低く、共重合比率を高くすると重合時間が長くなる傾向があり、経済面で不利となる。したがって、重合性を損なわないためには、イソソルビドの残存量(ポリエステル中に共重合され取り込まれる量)は、5モル%〜80モル%にすることが好ましく、15モル%〜70モル%にすることがさらに好ましい。
【0029】
なお、「全多価アルコール成分」とは、本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成するジオール(B)成分、ヒドロキシカルボン酸(C)成分、モノアルコール成分、3価以上のアルコール成分の総和を意味する。
【0030】
(B)成分を構成する他のグリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジメチロールトリシクロデカン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAP、4,4′−ビフェノールのエチレンオキサイド付加体またはプロピレンオキサイド付加体、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、等が挙げられ、中でも、汎用性があるエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。
【0031】
本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する共重合成分のうち、芳香族多価カルボン酸の共重合比率Y1と炭素数2〜4の直鎖脂肪族グリコールの共重合比率Y2の合計Y1+Y2を130モル%以下にすると、有機溶剤に対する溶解性に優れる共重合ポリエステル樹脂を得ることができ、より好ましい。Y1+Y2を130モル%以下とすることにより、本発明の共重合ポリエステル樹脂は、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)に対して、濃度40質量%以上溶解することが可能となることを期待できる。芳香族ジカルボン酸の共重合比率と炭素数2〜4の直鎖脂肪族グリコールの共重合比率の合計Y1+Y2が高くなると、結晶性および/またはガラス転移温度が高くなり、共重合ポリエステル樹脂の有機溶剤に対する溶解性が低下する傾向にある。
【0032】
本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分の30〜80モル%がテレフタル酸であることが好ましい。この範囲であれば、種々のグリコールとの組合せにより接着用途に好適なガラス転移温度40℃以下を達成することが容易である。ジカルボン酸成分に関しては、テレフタル酸が30モル%未満の場合は、全グリコール成分をイソソルビドとしてもガラス転移温度は、0℃付近となり接着用途としては適さない。テレフタル酸が80モル%超の場合は、その他の樹脂成分に関わらずガラス転移温度を40℃以下にすることは困難である。このようにジカルボン酸成分の適正範囲が決まれば、自ずとガラス転移温度40℃以下を達成する為のイソソルビド以外のグリコール/イソソルビドのモル%が、20〜70/80〜30(モル%)に決まる。
【0033】
本発明の共重合ポリエステル樹脂には、適度な柔軟性、接着性の向上、ガラス転移温度の調整などの目的に応じて、ヒドロキシカルボン酸(C)を共重合することができる。(C)成分は、全カルボン酸成分の20モル%以下とすることが好ましい。(C)成分の割合が20モル%よりも高いと、接着性に悪影響を及ぼすことがあるので好ましくない。
【0034】
(C)成分としては、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、オキシラン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられ、これらの中でも、汎用性があるε−カプロラクトンが好ましい。
【0035】
少量であれば、3官能以上のカルボン酸成分やアルコール成分を共重合成分として添加してもよい。3官能以上のカルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられる。3官能以上のアルコール成分としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。
【0036】
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸および/またはモノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等、モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0037】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は前記のモノマーを組み合わせて、公知の重合釜で製造することができる。
【0038】
一般的に共重合ポリエステル樹脂を製造する反応は、エステル化反応工程および重縮合反応工程からなる。エステル化反応工程は、全モノマーおよび/または低重合体から、所望の組成の低重合体を作製する工程あり、重縮合反応は、低重合体からグリコール成分を留去させ、所望の分子量の重合物を得る工程である。
【0039】
本発明の共重合ポリエステル樹脂の製造においても、一般的な共重合ポリエステル樹脂を製造する方法を用いることができる。
【0040】
以下、各工程について説明する。
エステル化反応では、全モノマー成分および/またはその低重合体を不活性雰囲気下、加熱熔融して反応させることが好ましい。イソソルビドは2級アルコールであるため、1級アルコールと比べて、反応性が低い。そのため、エステル化温度は、180〜250℃が好ましく、220〜250℃がより好ましく、反応時間は2.5〜10時間が好ましく、4時間〜6時間がより好ましい。なお、反応時間は所望の反応温度になってから、つづく重縮合反応までの時間とする。
【0041】
重縮合反応では、減圧下、220〜280℃の温度で、エステル化反応で得られたエステル化物から、グリコール成分を留去させ、所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めることが好ましい。重縮合の反応温度は、220〜270℃が好ましく、220〜250℃がより好ましい。減圧度は、130Pa以下であることが好ましい。減圧度が低いと、重縮合時間が長くなる傾向があるので好ましくない。大気圧から130Pa以下に達するまでの減圧時間としては、60〜180分かけて徐々に減圧することが好ましい。
【0042】
なお、組成によっては、グリコール成分とともにイソソルビドが留去し、留去液からイソソルビドが析出する場合があるが、その場合は、留去ラインを40〜80℃に加熱することで、グリコール成分に対し析出したイソソルビドを溶解させ、留去ラインから排出することができるため好ましい。
【0043】
エステル化反応および重縮合反応の際には、必要に応じて、テトラブチルチタネートなどの有機チタン酸化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどのアルカリ金属の酢酸塩、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどのアルカリ土類金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどの有機錫化合物を用いて重合をおこなう。その際の触媒使用量は、生成する樹脂質量に対し、1.0質量%以下で用いるのが好ましい。
【0044】
また、一般的に共重合ポリエステル樹脂に所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、前記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価グリコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合を行うことができる。
【0045】
本発明の共重合ポリエステル樹脂の製造においても、一般的な共重合ポリエステル樹脂を製造する場合と同様に解重合を行い、所望の酸価や水酸基価を付与することができる。
【0046】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、25℃において、2−ブタノン/トルエン(質量比1/1)混合溶媒に、15質量%以上の濃度で溶解することが好ましい。濃度15質量%以上で溶解しない場合には、接着剤として使用する際の作業性が低下する。溶解濃度の上限は特にないが、溶液の粘性が高くなりすぎないためには50質量%以下が好ましい。
【0047】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、溶剤への溶解性に優れるため、様々な汎用溶媒に溶解させてポリエステル溶液として利用することができる。溶液濃度は15〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。また、好ましい溶媒としては、シクロヘキサノン、2−ブタノン、トルエンからなる少なくとも1種が挙げられる。中でも2−ブタノン/トルエンの混合溶媒は一般に溶解性が高いので好ましく、両者の質量比を8/2〜2/8の範囲としたものが最も好ましい。
【0048】
本発明の共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量は、4,000以上とすることが好ましく、8,000以上であることがより好ましい。数平均分子量が4,000未満では、コーティングした際に皮膜が割れてしまうので好ましくない。一方、本発明の共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量の上限は60,000であることが好ましい。数平均分子量が60,000を超えると溶液粘度が高くなり、塗布し難く安定した塗膜を得られない恐れがある。
【0049】
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、5℃以上であることが好ましく、10℃以上がより好ましい。ガラス転移温度が5℃よりも低いと取り扱いが困難になる。
【0050】
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂には、必要に応じて硬化剤、各種添加剤、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料、染料、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、セルロース誘導体等を配合することができる。
【0051】
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂には、必要に応じて、顔料分散剤、紫外線吸収剤、離型剤、顔料分散剤、滑剤等の添加剤を配合することができる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中における各値は下記の方法で求めた。
【0053】
(1)還元粘度(ηsp/c)
フェノール/1、1、2、2−テトラクロロエタン=6/4(重量比)混合溶媒中、25℃での溶液粘度から求めた。
【0054】
(2)ガラス転移温度(Tg)
室温で真空乾燥した共重合ポリエステル樹脂をDSC用のアルミパンに入れ、160℃で20分間加熱し、その後、液体窒素で冷却した。そのように前処理した共重合ポリエステル樹脂をTAインスツルメンツ社製DSC2920を用いて測定した。試料7.5mg、窒素雰囲気下中、−50〜250℃の範囲を20℃/分で昇温して、その途中において観察される、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度(Tg)とした。
【0055】
(3)共重合ポリエステル樹脂の組成
ポリマーのイソソルビド含有量をはじめとする共重合ポリエステル樹脂の組成は、トリフルオロ酢酸を添加した重クロロホルム溶媒に該ポリマーを溶解し、共鳴周波数400MHzのH−NMRを測定してピークの積分値から定量し、全グリコール成分に対する割合(モル%)で表した。
【0056】
(4)ワニス調製
200mLの四つ口フラスコに、樹脂40g、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)60gを入れ(濃度40質量%)、フラスコに設置したメカニカルスターラーを用い、攪拌速度100rpm、温度65℃で溶解した。溶解し、空気下27℃で1日放置後も固化しなかったものを「○」、溶解するものの、27℃で1日放置後に固化したものを「△」、溶解しなかったものを「×」と、溶解性の評価とした。2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)に不溶のポリエステル樹脂に関しては、塩化メチレン、若しくはシクロヘキサノンに溶解した。いずれの溶媒も樹脂濃度は40重量%であり、溶解温度は塩化メチレンの場合は30℃、シクロヘキサノンの場合は115℃とした。
【0057】
(5)接着性評価
A.サンプルの調製
上記(4)で調製したワニスを用いて接着性評価を実施した。ワニスを50μmの二軸延伸PETフィルム(東洋紡エステル、品名;E5100)のコロナ面に100μmの厚さになるように塗布した。ワニスを塗布したフィルムをヤマト科学製DH−41を用いて乾燥した。乾燥後の樹脂の膜厚は、40μmであった。尚、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)を用いたワニスの乾燥条件は120℃、5分間、塩化メチレンを用いたワニスの乾燥条件は60℃、5分間乾燥後、80℃、5分間の乾燥をおこなった。また、シクロヘキサノンを用いたワニスの乾燥条件は120℃、120分間とした。このように塗布したPET面に50μmの二軸延伸PETフィルム(東洋紡エステル、品名;E5100)のコロナ面を合わせ、テスター産業社製ロールラミネーターを用いて接着した。なお、ラミネートは温度130℃、圧力3MPa、速度2m/minで行った。
B.接着力測定
上記で調製したラミネート後のサンプルを島津製作所(SHIMADZU)製精密万能試験機オートグラフ(形式;AG―1kNIS)を用いて、27℃空気下で引っ張り試験をおこなった。引っ張り速度を50mm/minとし、180°剥離接着力を測定した。
【0058】
(6)樹脂の表面エネルギー測定
A.サンプルの調製
上記(4)で調製したワニスを用いて接触角測定を実施した。ワニスを50μmの二軸延伸PETフィルム(東洋紡エステル、品名;E5100)のコロナ面に100μmの厚さになるように塗布した。ワニスを塗布したフィルムをヤマト科学製DH−41を用いて乾燥した。乾燥後の樹脂の膜厚は、40μmであった。尚、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)を用いたワニスの乾燥条件は120℃、5分間、塩化メチレンを用いたワニスの乾燥条件は60℃、5分間乾燥後、80℃、5分間の乾燥をおこなった。また、シクロヘキサノンを用いたワニスの乾燥条件は120℃、120分間とした。
B.接触角測定
樹脂の表面エネルギーは、接触角から算出した。接触角の測定は、協和界面化学株式会社製接触角計CA−X型を用いてJISR3257の静滴法に準じ測定した。具体的には23℃、湿度50%RHの環境下で、上記で調製したサンプルの樹脂面を上にして水平に置き、水およびヨウ化メチレンで各7回測定し、上限値下限値を除き、n=5で測定した接触角の平均値を各溶媒の接触角とした。尚、水の接触角を求める際、滴下量を1.8μlとし、1分間静置後の接触角を読み取った。また、ヨウ化メチレンの接触角を求める際は滴下量を0.9μlとし、30秒間静値後の接触角を読み取った。
接触角θと表面エネルギーの関係は、Youngの式より、
γs=γsl+γlcosθ ・・・(式1)
が成り立つ。ここでγsは固体の表面エネルギー、γlは液体の表面エネルギー、γslは固体と液体の界面エネルギーを表す。また、拡張Fowkes式より、
γsl=γs+γl−2(γsd×γld)1/2−2(γsh×γlh)1/2
・・・(式2)
ここでγsd、γshは固体の表面エネルギーの分散成分、極性成分、γld、γlhは、液体の表面エネルギーの分散成分、極性成分を表す。
(式1)、(式2)より、(式3)が導き出される。
1+cosθ=2[(γsd×γld)1/2/γl+(γsh+γlh)1/2/γl]
・・・(式3)
また、
γs=γsd+γsh・・・(式4)
と近似できる。
接触角測定に水を用いた場合、(式3)に表面張力γl=72.8、分散成分γld=21.8、極性成分γlh=51.0、サンプルに水を滴下した際の接触角(θ(H2O))を代入し、(式5)を得た。
1+cosθ(H2O)=2[(γsd×21.8)1/2/72.8+(γsh+51.0)1/2/72.8] ・・・(式5)
接触角測定にヨウ化メチレンを用いた場合、(式3)に表面張力γl=50.8、分散成分γld=48.5、極性成分γlh=2.3、サンプルにヨウ化メチレンを滴下した際の接触角(θ(CH2I2))を代入し、(式6)を得た。
1+cosθ(CH2I2)=2[(γsd×48.5)1/2/50.8+(γsh+2.3)1/2/50.8] ・・・(式6)
(式4)、(式5)、(式6)から樹脂の表面エネルギーγsを算出した。この方法で樹脂を塗布していない50μmの二軸延伸PETフィルム(東洋紡エステル、品名;E5100)のコロナ面の表面エネルギーは、57.3(mN/m)であった。
【0059】
実施例1
攪拌機付き容量2リッターのステンレス製オートクレーブに高純度テレフタル酸156.0g(0.94モル)、セバシン酸216.2g(0.94モル)、イソソルビド192.1g(1.31モル)、エチレングリコール81.5g(1.31モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.72gを仕込み、250℃まで昇温しつつ、0.25MPaの加圧下で150分間エステル化反応を行い、オリゴマー混合物を得た。その後、60分間かけて270℃まで昇温しつつ、反応系の圧力を徐々に下げて、13.3Pa(0.1Torr)として、さらに270℃、13.3Pa下でポリエステル重縮合反応を45分間行った。放圧に続き、微加圧下のレジンを冷水にストランド状に吐出して急冷し、その後20秒間冷水中で保持した後、カッティングして長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。このポリエステルペレットの特性、上記の方法に従い実施した溶解性、表面張力測定、および接着性評価の結果を表1に示す。この樹脂はガラス転移温度が40℃以下、かつイソソルビドを含有することで樹脂の表面エネルギーが高くなった為、高い接着性を発現した。
【0060】
実施例2
仕込み量を高純度テレフタル酸160.0g(0.96モル)、セバシン酸221.8g(0.96モル)、イソソルビド394.1g(2.70モル)、エチレングリコール95.6g(1.54モル)とした以外は、実施例1と同様に重合を実施した。このポリエステルペレットの特性、上記の方法に従い実施した溶解性、表面張力測定、および接着性評価の結果を表1に示す。この樹脂はガラス転移温度が40℃以下、かつイソソルビドを含有することで樹脂の表面エネルギーが高くなった為、高い接着性を発現した。
【0061】
実施例3
仕込み量を高純度テレフタル酸267.3g(1.61モル)、セバシン酸158.8g(0.69モル)、イソソルビド50.4g(0.35モル)、エチレングリコール292.3g(4.71モル)とした以外は、実施例1と同様に重合を実施した。このポリエステルペレットの特性、上記の方法に従い実施した溶解性、表面張力測定、および接着性評価の結果を表1に示す。この樹脂はガラス転移温度が40℃以下、かつイソソルビドを含有することで樹脂の表面エネルギーが高くなった為、高い接着性を発現した。ただし、エチレングリコール含有量が多く、樹脂が結晶性を示した為、2−ブタノン/トルエン混合溶媒には溶解しなかった。
【0062】
実施例4
仕込み量を高純度テレフタル酸259.3g(1.56モル)、セバシン酸154.1g(0.67モル)、イソソルビド123.8g(0.85モル)、エチレングリコール251.8g(4.01モル)とした以外は、実施例1と同様に重合を実施した。このポリエステルペレットの特性、上記の方法に従い実施した溶解性、表面張力測定、および接着性評価の結果を表1に示す。この樹脂はガラス転移温度が40℃以下、かつイソソルビドを含有することで樹脂の表面エネルギーが高くなった為、高い接着性を発現した。ただし、エチレングリコール含有量が多く、樹脂が結晶性を示した為、2−ブタノン/トルエン混合溶媒には溶解しなかった。
【0063】
比較例1
仕込み量を高純度テレフタル酸301.6g(1.82モル)、セバシン酸179.2g(0.78モル)、イソソルビド265.3g(1.82モル)、エチレングリコール112.6g(1.82モル)とした以外は、実施例1と同様に重合を実施した。このポリエステルペレットの特性、上記の方法に従い実施した溶解性、表面張力測定、および接着性評価の結果を表1に示す。この樹脂は、イソソルビドを多く含有する為、樹脂の表面エネルギーは高くなったが、ガラス転移温度が高い為、接着性は発現しなかった。
【0064】
比較例2
仕込み量を高純度テレフタル酸177.3g(1.07モル)、イソフタル酸177.3g(1.07モル)、イソソルビド390.0g(2.67モル)、エチレングリコール125.8g(2.03モル)とした以外は、実施例1と同様に重合を実施した。このポリエステルペレットの特性、上記の方法に従い実施した溶解性、表面張力測定、および接着性評価の結果を表1に示す。この樹脂は、イソソルビドを含有する為、樹脂の表面エネルギーは高くなったが、ガラス転移温度が高い為、接着性は発現しなかった。
【0065】
比較例3
仕込み量を高純度テレフタル酸203.6g(1.23モル)、イソフタル酸203.6g(1.23モル)、イソソルビド107.5g(0.74モル)、エチレングリコール289.0g(4.66モル)とした以外は、実施例1と同様に重合を実施した。このポリエステルペレットの特性、上記の方法に従い実施した溶解性、表面張力測定、および接着性評価の結果を表1に示す。この樹脂は、イソソルビドを含有する為、樹脂の表面エネルギーは高くなったが、ガラス転移温度が高い為、接着性は発現しなかった。
【0066】
比較例4
仕込み量を高純度テレフタル酸233.1g(1.40モル)、セバシン酸138.5g(0.60モル)、ネオペンチルグリコール137.8g(1.32モル)、エチレングリコール191.5g(3.09モル)とした以外は、実施例1と同様に重合を実施した。このポリエステルペレットの特性、上記の方法に従い実施した溶解性、表面張力測定、および接着性評価の結果を表1に示す。この樹脂のガラス転移温度は、40℃以下である為、接着性は発現した。しかし、イソソルビドを含有しないので、樹脂の表面エネルギーが低い。その結果、イソソルビドを含有するガラス転移温度が同等の樹脂に比べて、接着性が劣っていた。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例5〜10、比較例5
実施例1と同様にして、但し多価カルボン酸成分と多価アルコール成分の種類と仕込量を変更して、表2に記載の共重合ポリエステル樹脂を重合した。評価結果と併せて表2に記載した。
【0069】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明により、バイオマス原料であるイソソルビドを用いた、室温付近のガラス転移温度を有する、接着性が高い共重合ポリエステル樹脂、およびそれを用いた接着剤が提供され、産業上の利用価値は極めて高い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価カルボン酸成分と多価ポリオール成分とからなる共重合ポリエステル樹脂であって、多価カルボン酸成分として脂肪族ジカルボン酸を10モル%以上含み、多価ポリオール成分としてイソソルビドを5〜90モル%含み、ガラス転移温度が40℃以下であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記多価カルボン酸成分がジカルボン酸からなり、前記多価ポリオール成分がグリコールからなることを特徴とする請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記多価カルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸を90モル%以下含むことを特徴とする請求項1または2に記載の共重合ポリエステル樹脂。
【請求項4】
前記脂肪族ジカルボン酸成分が、炭素数6〜10の直鎖脂肪族ジカルボン酸であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
【請求項5】
共重合ポリエステル樹脂の共重合成分として炭素数2〜4の直鎖脂肪族グリコールを含有し、芳香族多価カルボン酸と炭素数2〜4の直鎖脂肪族グリコールの合計が130モル%以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記多価ジカルボン酸成分の30〜80モル%がテレフタル酸であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を用いた接着剤。

【公開番号】特開2012−67289(P2012−67289A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181212(P2011−181212)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】