説明

内側非常開放機構付き扉用ロックハンドル装置

【課題】構造簡易で安価に得られる内側非常開放機構を備えた引き出し回転操作型の扉用ロックハンドル装置を提供する。
【解決手段】作業員が収納ボックス内にいる間に、何らかの原因で扉が閉じられ、ロックハンドル装置1がロック状態になると、作業員は収納ボックスの内側から自力で操作ハンドル10を回転させて扉を開放しなければならない。この場合、作業員は、押し出しロッド12の後端部をばね15に抗して前方へ押し込むことによって、操作ハンドル10を収納凹部4から押し出し、回転可能位置に配置したうえで、内側操作ハンドル16を握って、これをロック板7と一体に非ロック位置へ回転させることにより、扉のロックを外し、扉を開放することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種機器類の収納ボックスなどの扉の施錠と開閉操作に使用される引き出し回転操作型の扉用ロックハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
扉の開口部に背面側を嵌め込んで固着される固定ケースの上端部背面側に前後方向の軸受筒部を突設し、この軸受筒部に主軸を回転可能かつ前後方向に移動不能に嵌め入れ、この主軸の後端部に収納ボックス側の受金部に係脱するロック板を連結し、主軸の前端部には接合ボス部を突設し、接合ボス部に、扉と平行な横断枢軸によって操作ハンドルの基端部を枢着して、操作ハンドルを固定ケースに引き起こし回転可能に収納した引き出し回転操作型の扉用ロックハンドル装置が、特許文献1に開示されている。この従来装置は、操作ハンドルを固定ケースに没入した状態、操作ハンドルを固定ケースから引き出した状態、操作ハンドルを解錠位置へ回転させた状態にそれぞれ保持するためのハンドル保持機構を備えている。
一方、ウォークイン型の大型収納ボックスの扉に使用されるロックハンドル装置であって、作業員が収納ボックス内に入って機器の点検や修理等の作業を行なっているときに、他人が誤って外部から扉を閉鎖した場合に、収納ボックスの内側から自力で解錠して収納ボックスから脱出することができる非常解錠機構を備えた扉用ロック装置が、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−186440号公報
【特許文献2】特開2003−314114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるロックハンドル装置においては、操作ハンドルを倒伏させて固定ケースに没入させた状態では、鎖錠されていない場合でも操作ハンドルを回転操作することができない。このため、作業員が収納ボックス内にいるときに、何らかの原因で、外部から扉が閉じられ、操作ハンドルが倒伏した状態になると、収納ボックスの内側から自力で操作ハンドルを回転操作して収納ボックスから脱出することができない。
一方、特許文献2に記載される非常解錠機構を備えた扉用ロック装置は比較的構造が複雑で、高価なものとなる難点がある。
したがって、この出願に係る発明は、引き出し回転操作型の扉用ロックハンドル装置に適用でき、構造簡易で安価に得られる内側非常開放機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、この出願に係る発明の内側非常開放機構付き扉用ロックハンドル装置1は、扉31に固定される固定ケース2と、固定ケース2の上端部に前後方向に支持される主軸6と、主軸6の後端部に固着されるロック板7と、主軸6の前端部に基端部が枢着される操作ハンドル10と、操作ハンドル10を所要位置に保持するハンドル保持機構と、固定ケース2の下部に前後方向に貫通するように設けられる押し出しロッド12とを具備する。固定ケース2は、前面側に、操作ハンドル10を倒伏状態で受け入れる収納凹部4を有し、上端部背面側に、前後方向の軸受筒部5が突設される。固定ケース2は、扉31の開口部に背面側を嵌め込んで扉31に固着される。主軸6は、固定ケース2の軸受筒部5に、ロック位置と非ロック位置の間で回転可能に、かつ前後方向には移動不能に嵌め込まれる。ロック板7は、主軸6の後端部に、扉31と平行に両側へ延びるように固着される。したがって、ロック板7は、主軸6と共にロック位置と非ロック位置の間で回転し、ロック位置において直接又は間接に収納ボックス側の受金部に係合し、非ロック位置において受金部から外れる。操作ハンドル10は、主軸6の前端部に、扉31と平行な横断枢軸9によって基端部が枢着され、固定ケース2に対して起立倒伏自在で、倒伏状態において固定ケース2の収納凹部4に回転操作不可能に受け入れられる。ハンドル保持機構は、操作ハンドル10を固定ケース2の収納凹部4に倒伏させた状態、操作ハンドル10を固定ケース2から引き起こした状態、操作ハンドル10を非ロック位置へ回転させた状態にそれぞれ保持する。押し出しロッド12は、固定ケース2の下部を前後方向に貫通し、先端部13が収納凹部4内に位置し、後部14が固定ケース2の背面側へ突出する。押し出しロッド12は、先端部13が操作ハンドル10を収納凹部4から押し出して回転可能位置に配置する起動位置と、操作ハンドル10が収納凹部4内に倒伏するのを許容する非起動位置との間で軸線方向に移動自在で、常時は非起動位置にあるように付設ばね15で付勢される。
ロック板7は、これを内側から回転操作するための内側操作ハンドル16を具備するものとすることができる。内側操作ハンドル16は、ロック板7の延長方向中央の両縁から背面側へ起立する一対の起立部17を介して扉31と平行に、ロック板7の延長方向に対して直交方向に延出する一対の操作片18を有する。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明によれば、引き出し回転操作型の扉用ロックハンドル装置に適用できる、構造簡易で安価な内側非常開放機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】内側非常開放機構付き扉用ロックハンドル装置の正面図である。
【図2】内側非常開放機構付き扉用ロックハンドル装置のロック状態の断面図である。
【図3】内側非常開放機構付き扉用ロックハンドル装置の押し出しロッド起動状態の断面図である。
【図4】内側非常開放機構付き扉用ロックハンドル装置の背面図である。
【図5】内側非常開放機構付き扉用ロックハンドル装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
引き出し回転操作型扉用ロックハンドル装置1は、収納ボックスの扉31(図2,3)に固着される固定ケース2を具備する。固定ケース2は、扉31の前面に当接するフランジ部3を周囲に有し、また前面側に開放するハンドル収納凹部4を有すると共に、上端部背面側に、前後方向に延びて背面側へ突出する軸受筒部5を具備する。
【0009】
軸受筒部5には、主軸6が回転可能かつ前後方向に移動不能に挿入される。主軸4の後端部には、収納ボックスの図示しない受金部に直接又はロック棒19(図1,4)を介して間接に係脱するロック板7が固着される。主軸4の前端部に突設される接合ボス部8には、扉31と平行な横断枢軸9によって、操作ハンドル10の基端部が枢着される。
【0010】
操作ハンドル10は、固定ケース1の収納凹部4内に受け入れられた図2に示す倒伏位置と、収納凹部4からほぼ45°引き起こされた図3に仮想線で示す起立位置との間で、起立転倒自在である。ハンドル10は、収納凹部4内に倒伏した位置(図2)においては回転操作することができない。ハンドル10は、板ばね11を含むハンドル保持機構により、倒伏位置と起立位置の各位置で保持される。
【0011】
押し出しロッド12は、固定ケース2の下部を前後方向に貫通し、起動位置と非起動位置との間で軸線方向移動自在に、かつ抜け止めされて設けられる。押し出しロッド12の先端部13は、図2に示す非起動位置において、収納凹部4内にあり、そこから突出しない位置に配置され、図3に示す起動位置において、収納凹部4から前方へ突出する位置に配置される。押し出しロッド12の後部14は、固定ケースの背面側へ突出しており、ばね15により、常時非起動位置に付勢される。押し出しロッド12は、非起動位置において操作ハンドル10が収納凹部4内に倒伏するのを許容し、起動位置において操作ハンドル10を収納凹部4から押し出して図3に示す回転可能位置に配置する。
【0012】
ロック板7は、これを内側から回転操作するための内側操作ハンドル16を具備する。内側操作ハンドル16は、ロック板7の延長方向中央の両縁から背面側へ起立する一対の起立部17を介して扉31と平行にロック板7の延長方向に対して直交方向に延出する一対の操作片18を有する。
【0013】
図3に仮想線で示す起立位置まで引き起こされたロック位置にある操作ハンドル10を握り、軸受筒部5に支持されている主軸6を中心に図1に仮想線で示す非ロック位置へほぼ90°回転させると、ロック板7あるいはこれに連結されたロック棒19が収納ボックスの図示しない受金部から離脱し、固定枠体4に対する扉31のロックが解除され、扉31は操作ハンドル10を手前に引くことによって開放される。操作ハンドル10がロック位置から非ロック位置へ回転するとき、操作ハンドル10の基端部は板ばね11の前面に摺接しており、板ばね11の弾性反発力による回転モーメントは、操作ハンドル10を起立状態に保持する方向に作用する。
【0014】
通常、作業員が収納ボックス内に入って作業をする間、扉は開放され、ロックハンドル装置1は操作ハンドル10を起立させて非ロック位置におかれる。作業員が収納ボックス内にいる間に、何らかの原因で扉が閉じられ、ロックハンドル装置1がロック状態になると、作業員は収納ボックスの内側から自力で操作ハンドル10を回転させて扉を開放しなければならない。この場合、作業員は、押し出しロッド12の後端部をばね15に抗して前方へ押し込むことによって、操作ハンドル10を収納凹部4から押し出し、図3に示す回転可能位置に配置したうえで、内側操作ハンドル16を握って、これをロック板7と一体に非ロック位置へ回転させることにより、扉のロックを外し、扉を開放することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 ロックハンドル装置
2 固定ケース
3 フランジ部
4 収納凹部
5 軸受筒部
6 主軸
7 ロック板
8 接合ボス部
9 横断枢軸
10 操作ハンドル
11 板ばね
12 押し出しロッド
13 先端部
14 後部
15 ばね
16 内側操作ハンドル
17 起立部
18 操作片
19 ロック棒
31 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側に後記操作ハンドルを倒伏状態で受け入れる収納凹部を有し、上端部背面側に前後方向の軸受筒部が突設され、扉の開口部に背面側を嵌め込んで扉に固着される固定ケースと、
この固定ケースの軸受筒部に、ロック位置と非ロック位置の間で回転可能に、かつ前後方向に移動不能に嵌め込まれる主軸と、
この主軸の後端部に扉と平行に両側へ延びるように固着され、主軸と共にロック位置と非ロック位置の間で回転し、ロック位置において直接又は間接に収納ボックス側の受金部に係合し、非ロック位置において受金部から外れるロック板と、
前記主軸の前端部に、扉と平行な横断枢軸によって基端部が枢着され、前記固定ケースに対して起立倒伏自在で、倒伏状態において固定ケースの収納凹部内に回転操作不可能に受け入れられる操作ハンドルと、
この操作ハンドルを前記固定ケースの収納凹部に倒伏させた状態、操作ハンドルを固定ケースから引き起こした状態、操作ハンドルを非ロック位置へ回転させた状態にそれぞれ保持するためのハンドル保持機構と、
前記固定ケースの下部を前後方向に貫通し、前記収納凹部内に位置する先端部と、固定ケースの背面側へ突出する後端部とを有し、先端部が前記操作ハンドルを収納凹部から押し出して回転可能位置に配置する起動位置と操作ハンドルが収納凹部内に倒伏するのを許容する非起動位置との間で軸線方向に移動自在で、常時は非起動位置にあるように付設ばねで付勢される押し出しロッドとを具備することを特徴とする内側非常開放機構付き扉用ロックハンドル装置。
【請求項2】
前記ロック板は、その延長方向中央の両縁から背面側へ起立する一対の起立部を介して扉と平行にロック板の延長方向に対して直交方向に延出する一対の操作片を有する内側操作ハンドルをさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の内側非常開放機構付き扉用ロックハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−47108(P2011−47108A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193840(P2009−193840)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)