説明

内圧変動吸収装置及び環境試験装置

【課題】圧力調整部の構成部材のうち変形自在な材質からなる部材を単純な形状にすることによって低コスト化を図る。
【解決手段】内圧変動吸収装置3は、圧力調整用空間ASを有する圧力調整部21と、試験空間と圧力調整用空間ASとを連通させるように試験装置本体2と圧力調整部21を接続可能なダクト20と、を備える。圧力調整部21は、変形自在な材質からなる筒状の胴部22と、ダクト20の取付け部23eが設けられ、胴部22の一端側の開口を塞ぐ下側蓋部23と、胴部22の他端側の開口を塞ぐ上側蓋部24と、下側蓋部23に対して胴部22を着脱可能に固定する第1固定手段33と、上側蓋部24に対して胴部22を着脱可能に固定する第2固定手段34と、を有する。胴部22、下側蓋部23及び上側蓋部24によって圧力調整用空間ASが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内圧変動吸収装置及び環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、閉空間内の圧力変動を吸収するための装置である内圧変動吸収装置が知られている。具体的に、この種の内圧変動吸収装置は、圧力調整用空間を有する圧力調整部である袋と、試験室等の閉空間と圧力調整用空間とを連通させるダクトと、を備えていて、変形自在な材質からなる袋が膨張・収縮することにより、試験室等の閉空間内の圧力の変動を緩和する。袋は、箱体内に配設されるとともに、箱体の下端部に固定された接続管に気密状に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−257956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示された内圧変動吸収装置では、袋の開口縁部を箱体に固定された接続管に被せるようにして袋を固定している。試験室等の閉空間の圧力変動を緩和するためにはある程度の容積が必要である一方で、接続管に取り付けるべく小さな開口が形成されるとともに開口に向かって先窄み形状に形成された袋が用いられているため、このような袋を接続管に取り付けられるようにするには袋の形状を専用に設計する必要がある。このため、前記内圧変動吸収装置では、消耗品である袋が高価なものになるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧力調整部の構成部材のうち変形自在な材質からなる部材を単純な形状にすることによって低コスト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、圧力が変動し得る閉空間を有する装置本体に取り付けられて使用される内圧変動吸収装置であって、圧力調整用空間を有する圧力調整部と、前記閉空間と前記圧力調整用空間とを連通させるように前記装置本体と前記圧力調整部を接続可能なダクトと、を備え、前記圧力調整部は、変形自在な材質からなる筒状の胴部と、前記ダクトの取付け部が設けられ、前記胴部の一端側の開口を塞ぐ第1蓋部と、前記胴部の他端側の開口を塞ぐ第2蓋部と、前記第1蓋部に対して前記胴部を着脱可能に固定する第1固定手段と、前記第2蓋部に対して前記胴部を着脱可能に固定する第2固定手段と、を有し、前記胴部、前記第1蓋部及び前記第2蓋部によって前記圧力調整用空間が形成される内圧変動吸収装置である。
【0007】
本発明では、圧力調整部によって閉空間内の圧力変動が緩和されるため、閉空間内に外気が侵入し難くすることができる。このため、外気に含まれている水分が装置本体内において結露することを抑制できる。例えば、閉空間内の温度が低下して内圧が低下したときには、圧力調整用空間内の空気が閉空間内に流入するので、内圧の低下が緩和されることにより、外気が閉空間内に吸い込まれ難くなる。一方、閉空間内の温度が上昇して内圧が上昇したときには、閉空間内の空気が圧力調整用空間内に流入するので、閉空間内の圧力上昇が緩和される。さらに、本発明では、圧力調整部において、変形自在な材質からなる胴部が筒状という単純な形状に形成されているため、胴部を安価に作成することができる。つまり、圧力調整部が、互いに分離された構成の胴部と第1蓋部と第2蓋部とを有する構成となっており、しかも、ダクトの取付け部が設けられた第1蓋部で胴部の一端側の開口を塞ぐ構成となっているため、胴部の形状が先窄み状に形成されている必要がなくなり、圧力調整用空間の容積を維持しつつ胴部を筒状という単純な形状に形成することができる。しかも、この胴部に対して第1蓋部及び第2蓋部を固定手段によって着脱可能に固定する構成となっているため、胴部が損傷したとしても容易に胴部を交換することができる。すなわち、変形自在な材質からなる胴部は消耗品であるため、この消耗品である胴部を安価に構成するとともに交換可能にすることにより、内圧変動吸収装置のランニングコストを抑えることが可能となる。
【0008】
ここで、前記第1蓋部及び前記第2蓋部は、底部と、この底部の周縁部に形成された側部とをそれぞれ備えていてもよく、この場合には、前記第1固定手段は、前記胴部の一端部が前記第1蓋部の前記側部に外側から重ね合わされるように配置された状態で、前記胴部に対して前記第1蓋部を固定し、前記第2固定手段は、前記胴部の他端部が前記第2蓋部の前記側部に外側から重ね合わされるように配置された状態で、前記胴部に対して前記第2蓋部を固定するのが好ましい。
【0009】
この態様では、筒状の胴部の端部が蓋部の側部に対して外側から重ね合わされるので、胴部の開口縁部を折り曲げる等しなくてもそのまま蓋部の側部に重ね合わせることができる。したがって、気密性を維持しつつ容易な固定方法で胴部と蓋部とを互いに固定することができる。
【0010】
前記第1蓋部及び前記第2蓋部は、平面視で楕円形又は長円形の形状を有していてもよい。この態様では、第1蓋部及び第2蓋部が平面視で円形の形状を有する構成に比べて、圧力調整部を薄型に構成することができる。また、蓋部の周縁部に角になる部分が存在しないため、薄型の構成でありながら、気密性を確保しやすい構成とすることができる。
【0011】
前記ダクトを通過する空気に含まれる水分を除去する水分除去手段を備えていてもよい。この態様では、ダクトを通して前記閉空間に戻る空気の水分が除去されているため、空気に水分が含まれているとしても、その量は少なくなっている。このため、閉空間内における圧力変動に起因する結露の発生を抑制することができる。
【0012】
前記水分除去手段は、前記ダクトに対して着脱可能な吸着部材を有していてもよい。この態様では、水分除去手段による水分除去能力が低下した場合等でも吸着部材を交換することにより、水分除去能力を回復させることができる。しかも、吸着部材のみを交換すれば足りるため、交換作業が繁雑になることもない。
【0013】
本発明は、圧力が変動し得る閉空間を有する装置本体に取り付けられて使用される内圧変動吸収装置であって、圧力調整用空間を有する圧力調整部と、前記閉空間と前記圧力調整用空間とを連通させるように前記装置本体と前記圧力調整部を接続可能なダクトと、を備え、前記圧力調整部は、変形自在な材質からなり、一端が閉じられた筒状の胴部と、前記ダクトの取付け部が設けられ、前記胴部の他端における開口を塞ぐ蓋部と、前記蓋部に対して前記胴部を着脱可能に固定する固定手段と、を有し、前記胴部及び前記蓋部によって前記圧力調整用空間が形成される内圧変動吸収装置である。
【0014】
本発明では、圧力調整部において、変形自在な材質からなる胴部が、一端が閉じられた筒状という単純な形状に形成されているため、胴部を安価に作成することができる。つまり、圧力調整部が、互いに分離された構成の胴部と蓋部とを有する構成となっており、しかも、ダクトの取付け部が設けられた蓋部で胴部の開口を塞ぐ構成となっているため、胴部の形状が先窄み状に形成されている必要がなくなり、圧力調整用空間の容積を維持しつつ胴部を一端が閉じた筒状という単純な形状に形成することができる。しかも、この胴部に対して蓋部を固定手段によって着脱可能に固定する構成となっているため、胴部が損傷したとしても容易に胴部を交換することができる。すなわち、変形自在な材質からなる胴部は消耗品であるため、この消耗品である胴部を安価に構成するとともに交換可能にすることにより、内圧変動吸収装置のランニングコストを抑えることが可能となる。
【0015】
この態様において、前記蓋部は、底部と、この底部と一体的に形成された側部とを備えており、前記固定手段は、開口が形成された前記胴部の一端部が前記蓋部の前記側部に外側から重ね合わされるように配置された状態で、前記胴部に対して前記蓋部を固定してもよい。
【0016】
本発明は、所定の壁体に囲まれた閉空間である試験空間を有しており、前記試験空間内に載置された試料に熱負荷を付与可能な装置本体と、前記装置本体に取り付けられた前記内圧変動吸収装置と、を備え、前記内圧変動吸収装置の前記圧力調整用空間と前記試験空間とが前記ダクトを介して連通している環境試験装置である。
【0017】
この環境試験装置では、装置本体において試験空間内の圧力が変動すると、それに応じて試験空間と圧力調整用空間との間で空気が行き来する。このことによって試験空間内での圧力変動を緩和することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、圧力調整部の構成部材のうち変形自在な材質からなる部材が単純な形状に形成されるため、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る環境試験装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】前記環境試験装置に設けられた圧力調整部の構成を説明するための図である。
【図3】前記環境試験装置に設けられた圧力調整部の上側蓋部の形状を説明するための図である。
【図4】その他の実施形態に係る環境試験装置に設けられた圧力調整部の上側蓋部の形状を説明するための図である。
【図5】その他の実施形態に係る環境試験装置に設けられた圧力調整部の上側蓋部の形状を説明するための図である。
【図6】その他の実施形態に係る環境試験装置に設けられた圧力調整部の上側蓋部の形状を説明するための図である。
【図7】その他の実施形態に係る環境試験装置に設けられた圧力調整部の上側蓋部の構成を説明するための図である。
【図8】その他の実施形態に係る環境試験装置に設けられた圧力調整部の上側蓋部及び固定手段の構成を説明するための図である。
【図9】その他の実施形態に係る環境試験装置に設けられた内圧変動吸収装置の構成を説明するための図である。
【図10】その他の実施形態に係る環境試験装置に設けられた内圧変動吸収装置の構成を説明するための図である。
【図11】その他の実施形態に係る環境試験装置に設けられた圧力調整部の構成を説明するための図である。
【図12】図11に示された圧力調整部の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る内圧変動吸収装置を備えた環境試験装置1の構成を概略的に示している。環境試験装置1は、試料Wに熱負荷を付与可能な試験装置本体(装置本体)2と、試験装置本体2に取り付けられる内圧変動吸収装置3とを備えている。本実施形態に係る環境試験装置1は、試料Wを低温と高温に交互に曝して試料Wに熱負荷を与えて試料Wの熱的強度を試験する熱衝撃試験装置として構成されている。試料Wとしては、例えば半導体チップが実装されたプリント基板等が挙げられる。
【0022】
なお、環境試験装置1は、熱衝撃試験装置に限られるものではなく、試料Wを所定条件の雰囲気に曝し続けて試料に熱負荷を与える恒温槽や恒温恒湿槽、その他の環境試験装置として構成されていてもよい。この場合には、後述するように三槽式の試験装置に限られるものではなく、試験室と空調室とを備えた一槽式の試験装置であってもよい。
【0023】
試験装置本体2は、三槽式の試験槽であり、試験される対象である試料Wが載置される試験室5と、図略の加熱手段により空気を加熱して熱風を試験室5に送出する高温室7と、図略の冷凍機により空気を冷却して冷風を試験室5に送出する低温室9とを含む。試験室5には、試料Wを出し入れするための試験室扉6が設けられている。高温室7及び低温室9は、試験室5内の空気温度及び湿度を調整する空調室であり、高温室7には、加熱手段(ヒータ)、加湿器、送風機等が配設され、低温室9には、冷凍機、送風機等が配設されている。
【0024】
試験室5、高温室7および低温室9のそれぞれは、断熱材(断熱層)を内部に有する断熱パネル壁11によって囲まれた閉空間であり、互いに熱的に遮断されている。
【0025】
高温室7と試験室5とを区画する断熱パネル壁11には、高温室7内(空調空間)から試験室5内(試験空間TS)に熱風を供給するための熱風供給口13と、試験室5内の高温空気を高温室7内に戻すための熱風排出口14とが形成されている。熱風供給口13および熱風排出口14には、熱風切換ダンパ17が配置されている。この切換ダンパ17によって熱風供給口13および熱風排出口14が開放されると、熱風は、熱風供給口13を通して高温室7内から試験室5内に流入し、試験室5内を通過した後、熱風排出口14を通って高温室7に戻る。すなわち、高温室7と試験室5との間で空気が循環する。これにより、試験室5内は高温雰囲気となる。試験室5内が高温雰囲気に設定される場合、試験室5内の温度は例えば150℃に設定される。
【0026】
低温室9と試験室5とを区画する断熱パネル壁11には、低温室9内(空調空間)から試験室5内(試験空間TS)に冷風を供給するための冷風供給口15と、試験室5内の低温空気を低温室9内に戻すための冷風排出口16とが形成されている。冷風供給口15および冷風排出口16には、冷風切換ダンパ19が配置されている。この切換ダンパ19によって冷風供給口15および冷風排出口16が開放されると、冷風は、冷風供給口15を通して低温室9内から試験室5内に流入し、試験室5内を通過した後、冷風排出口16を通って低温室9に戻る。すなわち、低温室9と試験室5との間で空気が循環する。これにより、試験室5内は低温雰囲気となる。試験室5内が低温雰囲気に設定される場合、試験室5内の温度は例えば−60℃に設定される。なお、図1は、熱風切換ダンパ17が開状態で、冷風切換ダンパ19が閉状態のときを示している。
【0027】
試験装置1の稼働中、試験室内の試料Wは、高温雰囲気および低温雰囲気に交互に曝されて熱負荷が与えられる。これにより、試料Wの熱強度、熱ストレス特性、耐久性等が試験される。高温雰囲気および低温雰囲気のサイクル数は、試料Wに応じて任意である。
【0028】
内圧変動吸収装置3は、圧力調整用空間ASを有する圧力調整部21と、試験空間TSと圧力調整用空間ASと連通させるダクト20とを含む。圧力調整部21は、筒状の胴部22と、胴部22の一端側の開口を塞ぐ第1蓋部としての下側蓋部23と、胴部22の他端側の開口を塞ぐ第2蓋部としての上側蓋部24とを有する。胴部22の両端開口がそれぞれ蓋部23,24によって塞がれることにより、閉空間である圧力調整用空間ASが形成されている。胴部22、下側蓋部23および上側蓋部24は、それぞれ別個に作成されるとともに、その後に組み付けられる。
【0029】
下側蓋部23は、蓋部本体23aと、この蓋部本体23aに設けられたダクト20の取付け部23eとを備えている。取付け部23eは、例えば金属管等の接続管によって構成されており、蓋部本体23aをその厚み方向に貫通するように設けられている。すなわち取付け部23eは、圧力調整用空間ASと外部とを連通するように下側蓋部23の底部23bに設けられている。取付け部23eにおいて蓋部本体23aから外側に突出した部位にダクト20の一端部が取り付けられることにより、圧力調整用空間ASとダクト20内とが連通する。接続管(取付け部23e)へのダクト20の固定は、図示省略するが、ホースバンド等の締付け部材によって気密状になされている。
【0030】
ダクト20の他端部は、試験室5の側壁に設けられた接続管29に接続されている。この接続管29は、試験室5の一側壁を構成する断熱パネル壁11を貫通する開口に嵌め込まれており、試験室5内(試験空間TS)と外部とを連通させる。接続管29にダクト20が取り付けられることにより、試験室5内(試験空間TS)とダクト20内とが連通する。
【0031】
接続管29の内端部には、フランジ部30が設けられており、このフランジ部30は断熱パネル壁11の内面に固定されている。接続管29へのダクト20の固定は、図示省略するが、ホースバンド等の締付け部材によって気密状になされている。
【0032】
下側蓋部23の蓋部本体23aは、図2に示すように、所定の大きさを有する底部23bと、この底部23bの周縁部に形成された側部23cとを備えている。側部23cは底部23bと一体的に形成されている。底部23bは、平面視で例えば楕円形に形成されており、その中央部に取付け部23eが配置されている。側部23cは、底部23bから折り曲げられるように設けられており、底部23bに対して交差する方向に張り出している。側部23c内の面積は、ダクト20の取付け部23eの断面積よりも大きい。このため、胴部22の開口を小さくする必要がなく、胴部22を先窄み形状にする必要がない。
【0033】
下側蓋部23の蓋部本体23aは、金属製、ABS樹脂製、ガラスエポキシ樹脂製等、後述の締付け部材によって変形することがあるとしてもわずかである、変形し難い硬質のものである。蓋部本体23aが例えば板金製の場合には、絞り加工等によって底部23bの周縁部に側部23cを一体的に形成することができる。その他、蓋部本体23aを樹脂成形することにより、側部23cを一体的に形成することも可能である。
【0034】
上側蓋部24は、取付け部23eが設けられていない点を除いて下側蓋部23と同様の構成である。すなわち、図2、図3に示すように、上側蓋部24は、所定の大きさを有する底部24bと、この底部24bの周縁部に形成された側部24cとを備えている。そして、上側蓋部24は、下側蓋部23とは逆向きに配設される。すなわち、下側蓋部23が、側部23cが底部23bから上側に向かって突出する向きに配置される一方で、上側蓋部24は、側部24cが底部24bから下側に向かって突出する向きに配置されている。
【0035】
胴部22は、変形自在な材質のものであり、例えばポリエチレン、ビニル樹脂、シリコン等の材質で厚みの薄いものによって構成することができる。胴部22は、筒状に形成されており、その両端の開口の周長が上側蓋部24及び下側蓋部23の外周長さに対応した大きさとなっている。そして、胴部22の両端開口を楕円形状に変形させることもできる。このため、下側の開口縁部を、下側蓋部23の蓋部本体23aにおける側部23cに外側から重ね合わせることができ、また上側の開口縁部を、上側蓋部24の側部24cに外側から重ね合わせることができる。なお、胴部22は、1枚のシートを丸めて縁部を互いに止着することによって筒状に成形してもよく、あるいは筒状の形状で成形するようにしてもよい。
【0036】
上側蓋部24は、図略の支持体によって支持され、下側蓋部23は図略の支持台に固定されている。すなわち、胴部22自身では上側蓋部24を支持することができないため、上側蓋部24は図外の支持体に吊り下げられる等、外部の支持体によって支持されている。なお、箱状の支持体を設けておいて、その内部に圧力調整部21を配設してもよい。
【0037】
圧力調整部21は、胴部22を下側蓋部23に対して固定するための第1固定手段33と、胴部22を上側蓋部24に対して固定するための第2固定手段34とを有する。
【0038】
第1固定手段33は、平型スチールバンド等のバンド状の締付け部材によって構成されており、胴部22の下端部(一端部、下側の開口縁部)が重ね合わされた下側蓋部23の側部23cに外側から装着される。この締め付け部材は、周長を調整するためのねじ部33aを有しており、このねじ部33aを回すことにより締め付け部材による締め付けを強めることができる。
【0039】
下側蓋部23の側部23cは底部23bの外周部に設けられるとともに所定幅を有しており、その外面には胴部22が面接触することが可能である。そして、下側蓋部23の側部23cは、変形し難い硬質のものであり、一方、胴部22は容易に変形する材質である。このため、締め付け部材の長さを調節することにより、胴部22が下側蓋部23の側部23cに沿うように外から締め付けることができる。これにより、胴部22を下側蓋部23に対して接着しない構成であっても胴部22と下側蓋部23との間の気密性が確保される。
【0040】
第2固定手段34は、第1固定手段33と同様のバンド状の締付け部材によって構成されている。すなわち、第2固定手段34は、ねじ部34aを有する平型スチールバンド等のバンド状の締付け部材によって構成されている。そして、第2固定手段34は、胴部22の上端部(他端部、上側の開口縁部)が重ね合わされた上側蓋部24の側部24cに外側から装着される。上側蓋部24の側部24cは、変形し難い硬質のものであり、一方、胴部22は容易に変形する材質であるため、締め付け部材の長さを調節することにより、胴部22が上側蓋部24の側部24cに沿うように外から締め付けることができる。これにより、胴部22を上側蓋部24に対して接着しない構成であっても胴部22と上側蓋部24との間の気密性が確保される。
【0041】
第1固定手段33及び第2固定手段34による締め付けを緩めることにより、胴部22を下側蓋部23及び上側蓋部24から容易に分離させることができる。すなわち、第1固定手段33及び第2固定手段34は、それぞれ、胴部22を下側蓋部23又は上側蓋部24に対して着脱可能に固定することができる。
【0042】
下側蓋部23及び上側蓋部24は、前述したように底部23b,24bが楕円形に形成された形状であるが、これに限られるものではない。下側蓋部23及び上側蓋部24は、底部23b,24bが例えば円形に形成された形状であってもよい。また、図4〜図6に示すように、上側蓋部24(下側蓋部23)は、底部24b(23b)が長円形に形成された形状であってもよい。図4に示す蓋部24(23)は、一対の円弧部37,37と、これら円弧部37,37を緩やかな曲線でつなぐ一対の連結部38、38とからなる外周部を有する底部24b(23b)を備えた構成である。図5に示す蓋部24(23)は、一対の円弧部37,37と、これら円弧部37,37を直線でつなぐ一対の連結部38、38とからなる外周部を有する底部24b(23b)を備えた構成である。図6に示す蓋部24(23)は、一対の円弧部37,37と、これら円弧部37,37を中央で折れ曲がった直線でつなぐ一対の連結部38、38とからなる外周部を有する底部24b(23b)を備えた構成である。
【0043】
次に、試験装置本体2に取り付けられた内圧変動吸収装置3の作用について説明する。
【0044】
試験室5内に載置された試料Wに熱的負荷を与える試験を行う場合において、高温曝しを行うときには、熱風切換ダンパ17を開状態にし、冷風切換ダンパ19を閉状態にする。これにより、高温室7からの熱風が試験室5内に導入され、試験室5と高温室7との間で高温空気が循環することにより、試験室5内(試験空間TS)が高温雰囲気となる。このとき、試験室5内の温度が高温になるにしたがって、試験室5内の圧力が上昇するため、それに伴い、試験室5内の高温空気がダクト20を通って圧力調整部21の圧力調整用空間ASに流れ込む。これにより、圧力調整部21の胴部22が変形して圧力調整用空間ASが膨張し、試験室5の内部圧力が上昇するのを緩和する。
【0045】
一方、低温曝しを行うときには、熱風切換ダンパ17を閉じるとともに、冷風切換ダンパ19を開ける。これにより、低温室9からの冷風が試験室5内に導入され、試験室5と低温室9との間で低温空気が循環することにより、試験室5内(試験空間TS)が低温雰囲気となる。このとき、試験室5内の温度が低温になるにしたがって、試験室5内の圧力が低下するため、それに伴い、外気がすき間を通して試験室5内に吸い込まれて侵入しようとする。しかしながら、このとき、試験室5内の圧力低下に伴って圧力調整部21内の空気がダクト20を通って試験室5内に流れ込むため、試験室5内の圧力低下が抑制されて、外気の侵入が抑制される。
【0046】
このようにして、試験装置本体2において試験室5内(試験空間TS)の圧力が変動すると、それに応じて試験空間TSと圧力調整用空間ASとの間で空気が行き来する。圧力調整部21によって試験室5内の圧力変動が緩和されるため、試験室5内に外気が侵入し難い。このため、外気に含まれている水分が結露することを抑制できる。すなわち、試験室5内の温度が低下して内圧が低下したときには、圧力調整部21内の空気が試験室5内に流入するので、内圧の低下が緩和されることにより、外気が試験室5内に吸い込まれ難くなる。一方、試験室5内の温度が上昇して内圧が上昇したときには、試験室5内の空気が圧力調整部21内に流入するので、試験室5内の圧力上昇が緩和される。
【0047】
また本実施形態では、圧力調整部21において、変形自在な材質からなる胴部22が筒状という単純な形状に形成されているため、胴部22を安価に作成することができる。つまり、圧力調整部21が、互いに分離された胴部22と下側蓋部23と上側蓋部24とを有する構成となっており、しかも、ダクト20の取付け部23eよりも大きな底面積を有する下側蓋部23で胴部22の一端側の開口を塞ぐ構成となっているため、圧力調整用空間ASの容積を維持しつつ胴部22を筒状という単純な形状に形成することができる。しかも、この胴部22に対して下側蓋部23及び上側蓋部24を固定手段33,34によって着脱可能に固定する構成となっているため、胴部22が損傷したとしても容易に胴部22を交換することができる。すなわち、変形自在な材質からなる胴部22は消耗品であるため、この消耗品である胴部22を安価に構成するとともに交換可能にすることにより、内圧変動吸収装置3のランニングコストを抑えることが可能となる。
【0048】
また本実施形態では、筒状の胴部22の端部が蓋部23,24の側部23c,24cに対して外側から重ね合わされるので、胴部22の開口縁部を折り曲げる等しなくてもそのまま蓋部23,24の側部23c,24cに重ね合わせることができる。したがって、気密性を維持しつつ容易な固定方法で胴部22と蓋部23,24とを互いに固定することができる。
【0049】
また本実施形態では、下側蓋部23及び上側蓋部24が平面視で楕円形の形状を有しているので、平面視で円形の形状を有する構成に比べて、圧力調整部21を薄型に構成することができる。また、蓋部23,24の周縁部に角になる部分が存在しないため、薄型の構成でありながら、気密性を確保しやすい構成とすることができる。
【0050】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、第1蓋部が下側となり、第2蓋部が上側になるように圧力調整部21が構成されているが、これに限られるものではない。例えば、これと逆向き、すなわち、第1蓋部が上側となり、第2蓋部が下側になるように圧力調整部21が構成されていてもよい。あるいは、圧力調整部21は、第1蓋部と第2蓋部が互いに左右方向に対向する構成であってもよい。この場合の胴部22は、横に長い形状となって、両端開口が横向きとなる。
【0051】
また、図7に示すように、圧力調整部21において、胴部22と上側蓋部24との間、及び胴部22と下側蓋部23との間にそれぞれパッキンシート40が介装されていてもよい。このパッキンシート40は、胴部22と上側蓋部24の側部24cとの間のすき間、及び胴部22と下側蓋部23の側部23cとの間のすき間を埋めて気密性をより向上させるためのものである。パッキンシート40は、平面視でC字状に形成されており、蓋部23,24の側部23c,24cの外面に貼り付けられる。パッキンシート40は、変形が容易なため、蓋部23,24の形状及び大きさに合わせて変形させることができ、また必要に応じて端部同士が重なり合うように側部23c,24cに沿わせることもできる。この場合には、側部23c,24cの全周に亘ってパッキンシート40が配設される。なお、パッキンシート40は蓋部23,24に接着される一方で、胴部22には接着されない。
【0052】
前記実施形態では、第1固定手段33(第2固定手段34)が下側蓋部23(上側蓋部24)と別個に設けられる構成について説明したが、これに限られるものではない。例えば、図8に示すように、第2固定手段34(第1固定手段33)が上側蓋部24(下側蓋部23)に一体的に設けられる構成としてもよい。つまり、第2固定手段34(第1固定手段33)が上側蓋部24(下側蓋部23)と一体的に成形される構成や、第2固定手段34(第1固定手段33)が上側蓋部24(下側蓋部23)に接着されて固定される構成であってもよい。この場合には、固定手段33,34が蓋部23,24と一体的に形成されているため、内圧変動吸収装置の構成部品点数を減らすことができる。
【0053】
図8に示す第2固定手段34は、上側蓋部24の側部24cから外向きに突出した環状の複数の突部42によって構成されている。この突部42は上側蓋部24を成形する際に一体的に成形されたものである。この環状突部42が設けられた上側蓋部24に胴部22が被せられると、突部42によって胴部22が引き延ばされて突部42に密着する。したがって、別個に固定手段を設けなくても、胴部22を上側蓋部24(下側蓋部23)に固定することができる。この場合には、胴部22の開口縁部を他の部位に比べて肉厚に構成するのが好ましい。
【0054】
なお、環状の突部42が形成された上側蓋部24(下側蓋部23)にさらにバンド状の締め付け部材を用いて胴部22を固定することも可能である。すなわち、環状の突部42が形成された上側蓋部24(下側蓋部23)の側部24c(23c)に胴部22が被せられ、さらにその外側からバンド状の締め付け部材で胴部22を固定することも可能である。この場合、環状の突部42及びバンド状の締め付け部材が協同して、固定手段34(33)を構成することになる。
【0055】
内圧変動吸収装置3は、図9に示すように、ダクト20を通過する空気に含まれる水分を除去する水分除去手段45を備えていてもよい。水分除去手段45は、ダクト20に配設されていて、水分を吸着する吸着部材(図示省略)を内蔵している。この構成であれば、ダクト20を通して試験空間に戻る空気の水分が除去されるため、ダクト20に流入する空気に水分が含まれているとしても、その量を少なくすることができる。
【0056】
この吸着部材は、図10に示すように、着脱可能であってもよい。具体的には、水分除去手段45は、ダクト20に固定されたケーシング45aと、このケーシング45aに着脱可能な装着部45bとを有し、この装着部45bに吸着部材が配設されている。装着部の側面(左右両側)には開口が形成されていて、この開口を通してダクト20内の空気が装着部45b内に流入する。ケーシング45a内には、装着部45bを挿入するための挿入孔が形成されていて、この挿入孔はダクト20内に連通している。そして、挿入孔に装着部45bを挿入すると、装着部45b内の吸着部材が、ダクト20内を流れる空気と接触可能となる。この態様では、水分除去手段45による水分除去能力が低下した場合等でも吸着部材を交換することにより、水分除去能力を回復させることができる。しかも、吸着部材のみを交換すれば足りるため、交換作業が繁雑になることもない。
【0057】
前記実施形態では、胴部22が、両端が開口する筒状に形成された例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、図11に示すように、胴部22は、一端が閉じられた筒状に形成されていてもよい。この胴部22は、両端が開口した筒状の部材の一端の開口を融着、接着等によって閉じたものである。
【0058】
この圧力調整部21に用いられる蓋部23は、前記実施形態の圧力調整部21に用いられた下側蓋部23と同じ構造のものでもよいが、図11には、蓋部23として、蓋部本体23aの底部23bが中空状の箱形に形成された例を示している。そして、底部23bの上面(一面)に側部23cが形成される一方、底部23bの側面にダクト20の取付け部23eが設けられている。側部23cの形状は前記実施形態で説明した形状と同様の形状である。底部23bの上面における側部23cの内側には開口が形成されており、底部23b内の空間はこの開口を通して、側部23cに取付けられた胴部22の内側空間(圧力調整用空間AS)と連通する。この中空構造の蓋部本体23aは、図2に示す両端が開口した筒状の胴部22の一端側の開口を塞ぐのに用いられてもよい。
【0059】
また、図11に示す底部23bは対向する一対の面(上面及び下面)が箱形に形成されているが、これに代え、一対の面(上面及び下面)が円形、楕円形、長円形等に形成されていてもよい。
【0060】
ダクト20の取付け部23eは、底部23bの側面に形成される構成に限られるものではなく、例えば図12に示すように、側部23cが設けられた面に形成されていてもよい。あるいは、取付け部23eは、側部23cが設けられた面(例えば上面)に対向する面(例えば下面)に設けられていてもよい。
【0061】
また、図11又は図12に示した蓋部23、その他変形例として説明した蓋部23を、前記実施形態の下側蓋部23(第1蓋部)として用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 環境試験装置
2 試験装置本体
3 内圧変動吸収装置
5 試験室
20 ダクト
21 圧力調整部
22 胴部
23 下側蓋部
23a 蓋部本体
23b 底部
23c 側部
23e 取付け部
24 上側蓋部
24b 底部
24c 側部
33 第1固定手段
34 第2固定手段
40 パッキンシート
42 突部
45 水分除去手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力が変動し得る閉空間を有する装置本体に取り付けられて使用される内圧変動吸収装置であって、
圧力調整用空間を有する圧力調整部と、
前記閉空間と前記圧力調整用空間とを連通させるように前記装置本体と前記圧力調整部を接続可能なダクトと、を備え、
前記圧力調整部は、
変形自在な材質からなる筒状の胴部と、
前記ダクトの取付け部が設けられ、前記胴部の一端側の開口を塞ぐ第1蓋部と、
前記胴部の他端側の開口を塞ぐ第2蓋部と、
前記第1蓋部に対して前記胴部を着脱可能に固定する第1固定手段と、
前記第2蓋部に対して前記胴部を着脱可能に固定する第2固定手段と、を有し、前記胴部、前記第1蓋部及び前記第2蓋部によって前記圧力調整用空間が形成される内圧変動吸収装置。
【請求項2】
前記第1蓋部及び前記第2蓋部は、底部と、この底部と一体的に形成された側部とをそれぞれ備えており、
前記第1固定手段は、前記胴部の一端部が前記第1蓋部の前記側部に外側から重ね合わされるように配置された状態で、前記胴部に対して前記第1蓋部を固定し、
前記第2固定手段は、前記胴部の他端部が前記第2蓋部の前記側部に外側から重ね合わされるように配置された状態で、前記胴部に対して前記第2蓋部を固定する請求項1に記載の内圧変動吸収装置。
【請求項3】
前記第1蓋部及び前記第2蓋部は、平面視で楕円形又は長円形の形状を有する請求項1又は2に記載の内圧変動吸収装置。
【請求項4】
前記ダクトを通過する空気に含まれる水分を除去する水分除去手段を備えている請求項1から3の何れか1項に記載の内圧変動吸収装置。
【請求項5】
前記水分除去手段は、前記ダクトに対して着脱可能な吸着部材を有している請求項4に記載の内圧変動吸収装置。
【請求項6】
圧力が変動し得る閉空間を有する装置本体に取り付けられて使用される内圧変動吸収装置であって、
圧力調整用空間を有する圧力調整部と、
前記閉空間と前記圧力調整用空間とを連通させるように前記装置本体と前記圧力調整部を接続可能なダクトと、を備え、
前記圧力調整部は、
変形自在な材質からなり、一端が閉じられた筒状の胴部と、
前記ダクトの取付け部が設けられ、前記胴部の他端における開口を塞ぐ蓋部と、
前記蓋部に対して前記胴部を着脱可能に固定する固定手段と、を有し、前記胴部及び前記蓋部によって前記圧力調整用空間が形成される内圧変動吸収装置。
【請求項7】
前記蓋部は、底部と、この底部と一体的に形成された側部とを備えており、
前記固定手段は、前記胴部の一端部が前記蓋部の前記側部に外側から重ね合わされるように配置された状態で、前記胴部に対して前記蓋部を固定する請求項6に記載の内圧変動吸収装置。
【請求項8】
所定の壁体に囲まれた閉空間である試験空間を有しており、前記試験空間内に載置された試料に熱負荷を付与可能な装置本体と、
前記装置本体に取り付けられた請求項1から7の何れか1項に記載の内圧変動吸収装置と、を備え、
前記内圧変動吸収装置の前記圧力調整用空間と前記試験空間とが前記ダクトを介して連通している環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−220331(P2012−220331A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86065(P2011−86065)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】