説明

内圧試験装置および内圧試験方法

【課題】供試体の内圧試験を容易に行う。
【解決手段】開口部11を介して供試体内に粒状の充填物10を投入し、供試体内の容積を実質的に減少させる。開口部11に配管12を接続し、サーボ弁5を介して供試体内に圧縮空気を供給する。この圧縮空気は充填物10の隙間を介して供試体TPの内壁面に作用し、これにより供試体TPに試験圧力が負荷される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体の内部に試験圧力を負荷する内圧試験装置および内圧試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
供試体の内部に所定圧力の気体を充填し、内圧試験を行うようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、供試体の内部に中子を挿入することで、供試体の内部に充填する気体の容積を減少させ、供試体内の圧力を一定に保ちやすくしている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−286586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、供試体の形状が異なる度にその形状に合わせて中子を製作する必要があるため、コストの増大を招く。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による内圧試験装置は、容器形状の供試体内に粒状または液状の流動性を有する充填物が投入された状態で、供試体の内壁面に試験圧力を負荷する圧力負荷手段を有することを特徴とする。
供試体内に袋部材を挿入して支持する支持手段を有し、この袋部材に充填物を収容するようにしてもよい。
この場合、袋部材の底部と供試体の内壁面との間に空隙が設けられるように供試体の上部に設けられた開口部から袋部材を吊持することが好ましい。
圧力負荷手段として、供試体の内壁面に試験圧力を繰り返し負荷するようにしてもよい。
本発明による内圧試験方法は、容器形状の供試体内に粒状または液状の流動性を有する充填物を投入する工程と、充填物を投入した後、供試体の内壁面に試験圧力を負荷する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、供試体内に粒状または液状の流動性を有する充填物が投入された状態で試験圧力を負荷するようにしたので、試験圧力の負荷容積が小さくなり、中子を用いることなく内圧試験を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜図3を参照して本発明による内圧試験装置の第1の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る内圧試験装置の全体構成を概略的に示す図である。本実施の形態では、供試体の内部に空気圧力を繰り返し作用させて内圧疲労試験を行う。
【0008】
図1に示すように、ポンプ等により構成されるエア源1からの空気は、ドライヤ2を通過してタンク3に貯められる。タンク3内の空気は減圧弁4で所定の圧力に調整され、サーボ弁5に導かれる。このときの減圧弁4による空気の設定圧は圧力計6により監視される。サーボ弁5は図示しないコントローラからの信号により駆動され、管路12を介した供試体TP内への圧縮空気の流れ(空気の供給および排出)を制御する。
【0009】
供試体TP内の圧力(試験圧力)は圧力センサ7により検出される。コントローラは、この圧力センサ7の検出値に基づきサーボ弁5をフィードバック制御し、所定波形(サイン波形)の試験圧力を供試体TPの内壁面に負荷する。これにより試験圧力が供試体TPに繰り返し負荷され、内圧疲労試験が行われる。なお、供試体TPの外側の管路12に圧力センサ8を設け、圧力センサ8により供試体TPに負荷される圧力を検出するようにしてもよい。この場合、圧力センサ7の検出値と圧力センサ8の検出値の相関関係を予め把握しておけば、圧力センサ8の検出値に基づきサーボ弁5を制御することができる。
【0010】
本実施の形態では圧力媒体として空気を用いるため、供試体TPの着脱時において、管路12内に残存した圧力媒体が周囲に漏れても問題とはならず、取り扱いが容易である。これに対し、圧力媒体として水や油等の液体を用いると、圧力媒体の漏れを防止する必要があるため、取り扱いが煩雑になる。
【0011】
一方、圧力媒体としての空気は圧縮性があるため、供試体TPの容積が大きくなり、供試体TPに供給する必要流量が増加すると、試験圧力が目標値になるのに時間がかかる。このため、速い周期で繰り返し試験圧力を負荷して内圧疲労試験を行うことが困難である。そこで、本実施の形態は以下のように構成する。
【0012】
図2は、供試体TPの内部構成を示す図であり、とくに第1の実施の形態の試験方法を示している。供試体TPは、容器形状をなしており、図2(a)に示すように開口部11を上にして支持される。この状態で、開口部11から粒状の充填物10を投入し、図2(b)に示すように供試体TP内に充填物10を充填する。充填物10としては、試験圧力によって収縮しないような材質で、かつ、大きさが数ミリ〜数センチ程度のものが好ましく、例えばガラス製のビー玉や金属製のパチンコ玉等を用いることができる。樹脂ビーズを用いることもできる。充填物10が充填し終わると、図2(c)に示すように開口部11に配管12を接続する。
【0013】
このように装置を構成した後、サーボ弁5を介して供試体内に圧縮空気を供給する。これにより充填物10の隙間を介して供試体TPの内壁面全体に試験圧力が負荷される。この場合、充填物10の充填により供試体TP内の容積(試験圧力の負荷容積)が減少しているので、その分だけ試験時の空気の必要流量を低減できる。その結果、試験圧力の応答性が高まり、速い周期で内圧疲労試験を行うことができる。試験終了後には、開口部11を介して充填物10が取り出され、別の供試体TPに再び充填される。すなわち、充填物10は再利用される。
【0014】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)供試体内に粒状の充填物10が投入された状態で、サーボ弁5の駆動により供試体TPの内壁面に試験圧力を負荷するようにしたので、供試体内の容積が実質的に減少し、空気を圧力媒体とした内圧疲労試験を中子を用いることなく容易に行うことができる。
(2)市販のビー玉やパチンコ玉を充填物10として用いることができ、これら充填物10は供試体TPの形状に拘わらず利用できるので、安価に構成できる。
(3)充填物10が投入された状態で試験圧力を繰り返し負荷するので、速い周期で内圧疲労試験を行うことができる。
(4)圧力センサ7,8の検出値に応じてサーボ弁5をフィードバック制御するので、供試体TPに試験圧力を精度良く負荷できる。
【0015】
なお、上記実施の形態では、供試体内に粒状の充填物10を充填するようにしたが、図3に示すように供試体内に液状の充填物10、つまり水や油などの液体を充填するようにしてもよい。この場合、圧縮空気によって弾性変形可能な蓋部材13を開口部11に装着し、供試体内に液体を密封すればよい。これによりサーボ弁5からの圧縮空気が蓋部材13を介して供試体内の液体に作用し、供試体TPの内壁に試験圧力を負荷できる。蓋部材13を開口部11に摺動可能に設け、蓋部材13をピストンとして構成してもよい。
【0016】
−第2の実施の形態−
図4,5を参照して本発明による内圧試験装置の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なるのは、充填物10の収容形態である。すなわち、第1の実施の形態では供試体内に直に充填物10を収容したが、第2の実施の形態では袋部材を介して充填物10を収容する。なお、以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0017】
図4は、供試体TPの内部構成を示す図であり、とくに第2の実施の形態の試験方法を示している。図4(a)に示すように供試体TPの上部の開口端部にはキャップ15が装着されている。キャップ15には、網状の袋部材16が取り付けられ、袋部材16が供試体内に挿入されている。キャップ15の中央には開口部15aが設けられ、開口部15aに連通して袋部材16が取り付けられている。
【0018】
図4(b)に示すように袋部材内には開口部15aを介して充填物10が投入され、これにより供試体内に袋部材16を介して充填物10が充填される。この場合、充填物10は袋部材16内に保持されるため、充填物10と供試体TPの内壁面との間には空隙17が設けられる。充填物10が充填し終わると、図4(c)に示すようにキャップ15に配管12を接続する。
【0019】
このように装置を構成した後、サーボ弁5(図1)を介して供試体内に圧縮空気を供給する。これにより圧縮空気が、支持キャップ15の開口部15aおよび袋部材16の網目の部分を通過して空隙17に導かれ、供試体TPの内部に試験圧力を負荷することができる。第2の実施の形態においても、充填物10により供試体内の容積が減少しているため、速い周期で内圧疲労試験を行うことができる。
【0020】
このように第2の実施の形態では、供試体内に網状の袋部材16を挿入し、この袋部材内に開口部15aを介して充填物10を投入するようにしたので、中子を用いることなく空気を圧力媒体とした内圧疲労試験を容易に行うことができる。また、袋部材16をキャップ15から吊持して充填物10を保持するようにしたので、充填物10を供試体TPの内壁面から離間させることができ、供試体TPの表面を圧力媒体である空気に直接曝すことができる。
【0021】
なお、図5に示すように袋部材16を例えばビニール袋等により構成し、袋部材16の内部に充填物10として液体を封入するようにしてもよい。この場合、袋部材16に液体を封入した後、その封入口に栓18をして密封するとともに、支持キャップ15の開口部15aを介して袋部材16と供試体TPの内壁面との間の空隙17に圧縮空気を供給し、試験圧力を負荷すればよい。袋部材内に充填物10として液体を封入する場合には、充填物同士の間に隙間がないため、充填物10の容積を容易に大きくすることができる。袋部材16として、膨張および収縮可能な風船等を用いることもできる。
【0022】
上記実施の形態では、袋部材16をキャップ15を介して開口部11から吊持するようにしたが、キャップ15を用いずに袋部材16を支持してもよく、支持手段は上述したものに限らない。開口部11を介して袋部材16の内部に充填物10を投入するとともに、開口部11を介して供試体内に圧縮空気を供給するようにしたが、空気供給用の開口部と充填物投入用の開口部を別々に設けるようにしてもよい。
【0023】
サーボ弁5の駆動により供試体TPの内壁面に試験圧力を繰り返し負荷するようにしたが、圧力負荷手段はこれに限らない。例えば供試体TPの内壁面に静圧を負荷するようにしてもよく、疲労試験以外を行うようにしてもよい。圧力媒体として空気を用いたが、空気以外を用いてもよい。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の内圧試験装置に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る内圧試験装置の全体構成を概略的に示す図。
【図2】図1の供試体の内部構成を示す図。
【図3】図2の変形例を示す図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る内圧試験装置の要部構成を示す図。
【図5】図4の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0025】
5 サーボ弁
10 充填物
11 開口部
16 袋部材
17 空隙
TP 供試体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器形状の供試体内に粒状または液状の流動性を有する充填物が投入された状態で、前記供試体の内壁面に試験圧力を負荷する圧力負荷手段を有することを特徴とする内圧試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内圧試験装置において、
前記供試体内に袋部材を挿入して支持する支持手段を有し、
前記充填物は、前記袋部材に収容されていることを特徴とする内圧試験装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内圧試験装置において、
前記支持手段は、前記袋部材の底部と前記供試体の内壁面との間に空隙が設けられるように前記供試体の上部に設けられた開口部から前記袋部材を吊持することを特徴とする内圧試験装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の内圧試験装置において、
前記圧力負荷手段は、前記供試体の内壁面に試験圧力を繰り返し負荷することを特徴とする内圧試験装置。
【請求項5】
容器形状の供試体内に粒状または液状の流動性を有する充填物を投入する工程と、
前記充填物を投入した後、前記供試体の内壁面に試験圧力を負荷する工程とを含むことを特徴とする内圧試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−287944(P2009−287944A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137867(P2008−137867)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】