説明

内外気切替装置

【課題】取込口を介する外気の逆流を抑止しつつ、取込口を介するケース内への内気の取込量を確保する。
【解決手段】鉛直方向に対して前記ケースの外側に傾斜された傾斜壁に対して設けられると共に前記内気導入口が閉鎖された際に前記内気の一部を取込む取込口と、傾斜壁の内壁面に対向することで鉛直方向に対して傾斜して取り付けられると共にケース内部の圧力がケース外部の圧力よりも低い場合に変形することにより前記取込口を開口する可撓性フィルムドア4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内外気切替装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内外気切替装置は、車両に搭載され、車室内の内気あるいは車外の外気を選択的に車両用空気調和装置に対して取込むためのものであり、取込む空気を内気から外気あるいは外気から内気に切替可能に構成されている。
このような内外気切替装置は、内気導入口と外気導入口とを有するケースと、内気導入口及び外気導入口を選択的に閉鎖するダンパとを備えており、ダンパにより内気導入口を閉鎖する場合に外気をケース内に取込み、ダンパにより外気導入口を閉鎖する場合に内気をケース内に取込む。そして、ケース内に取込まれた空気が車両用空気調和装置によって温調されることによって調和空気が生成される。
【0003】
さて、車両用空気調和装置に取込まれる空気が内気である場合には、運転初期段階を除き、先に温調されて車室内に供給された空気を再度温調することになる。このため、取込まれる空気の温度が設定温度に近く、調和空気を生成するために車両用空気調和装置で必要とされるエネルギ量は少なくて済む。
一方、車両用空気調和装置に取込まれる空気が外気である場合には、一般的に取込まれる空気の温度が設定温度と大きく離れており、設定温度の調和空気を生成するためにエネルギ量が多く必要となる。ここで、ヒータ等の制約により当該エネルギ量を確保できない場合には、調和空気を設定温度に調節することができなくなってしまう。
そこで、例えば、特許文献1に示すように、ケースに対して上述の内気導入口よりも小さな取込口を形成し、ケース内に外気を取込む場合であっても内気の一部をケース内に取込むことで、調和空気を生成に必要となるエネルギ量を削減する内外気切替装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−137621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示すような内外気切替装置では、車両用空気調和装置が稼動しておらずブロワが停止されている場合に、ケース内のラム圧上昇によって取込口から外気が車室内に逆流しないように、補助ドアが設けられている。この補助ドアは、ヒンジで軸支されてケース内部に吊らされており、ブロワが駆動されてケース内が負圧となった場合に、ケース内外の差圧により開くように構成されている。
【0006】
しかしながら、補助ドアは、ケース外部からの圧力を受け止め、ヒンジを中心として回動することによって開閉するため、それなりに剛性の高い材料で形成する必要がある。このため、補助ドアは重量が大きく、ブロワが駆動されてから十分にケース内がケース外に対して圧力が低くなるまで動かず、動作が遅いという欠点を有している。
【0007】
また、補助ドアの重量が大きいと、ケース内外の差圧に対して補助ドアが僅かしか開かず、ケース内に十分な内気を取込むことができないという欠点も生じる。特許文献1には、ケースの傾斜壁に対して取込口を形成し、予め取込口と補助ドアとを離間させておくことで、内気の取込み量を増加させる構成が開示されているが、この場合には、ケース内のラム圧上昇によって取込口から外気が車室内に逆流しやすくなる。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、内気導入口とは別にケースに対して内気の一部を取込む取込口を有する内外気切替装置において、取込口を介する外気の逆流を抑止しつつ、取込口を介するケース内への内気の取込量を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、外気を導入する外気導入口と、内気を導入する内気導入口とを有するケースを備える車両用空気調和装置の内外気切替装置であって、鉛直方向に対して上記ケースの外側に傾斜された傾斜壁に対して設けられると共に上記内気導入口が閉鎖された際に上記内気の一部を取込む取込口と、上記傾斜壁の内壁面に対向することで鉛直方向に対して傾斜して取り付けられると共にケース内部の圧力がケース外部の圧力よりも低い場合に変形することにより上記取込口を開口する可撓性フィルムドアとを備えるという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ケースが上記外気導入口あるいは上記内気導入口のシャットリブの形成面と直交する上記可撓性フィルムドアの取付壁を有し、上記可撓性フィルムドアを取り付けるための取付孔が上記取付壁に対して当該取付壁の壁面と直交する方向に設けられているという構成を採用する。
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記傾斜壁が、上記可撓性フィルムドアの取付壁よりも上記ケースの外側に傾斜されているという構成を採用する。
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記可撓性フィルムドアが、上記取込口側に湾曲しているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鉛直方向に対してケースの外側に傾斜された傾斜壁に対して取込口が形成され、当該傾斜壁の内壁面に対向することで鉛直方向に対して傾斜された可撓性フィルムドアを備えている。
そして、この可撓性フィルムドアは、ケース内部の圧力がケース外部の圧力よりも低い場合に、ケース内外の差圧に起因して変形し、これによって取込口を開口する。ここで、可撓性フィルムドアは、鉛直方向に対して傾斜されているため、可撓性フィルムドアは、重力により常に下方に向けて付勢されている。したがって、可撓性フィルムドアは、ケース内外の差圧が小さい場合であっても、自重で引っ張られているために容易に大きく変形し、取込口を大きく開口する。
また、可撓性フィルムドアは、可撓性が発揮できる程度に薄くされたフィルム状のシートであるため、従来の補助ドアと比較して格段に重量が小さい。このため、ケース内外の差圧が小さい場合であっても、容易に変形して取込口を大きく開口する。
このため、本発明によれば、ブロワが駆動してケース内部の圧力が低下した場合に、十分量の内気をケース内部に取込むことができ、取込口を介するケース内への内気の取込量を確保することができる。
【0011】
また、本発明によれば、可撓性フィルムドアは、ケース内部の圧力がケース外部の圧力よりも低い場合に、ケース内外の差圧に起因して変形するものであるから、逆に、ケース内部の圧力がケース外部の圧力と同等あるいはそれ以上である場合には、元の形状に復元して取込口に対して近づいて取込口を閉鎖する。このため、ブロワが停止し、ケースの内部のラム圧が上昇した場合には、取込口は、可撓性フィルムドアによって閉鎖される。このため、本発明によれば、取込口を介する外気の逆流を抑止することができる。
【0012】
したがって、本発明によれば、取込口を介する外気の逆流を抑止しつつ、取込口を介するケース内への内気の取込量を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態における内外気切替装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における内外気切替装置の要部断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における内外気切替装置が備えるケースの製造方法を説明するための模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態における内外気切替装置での内気の取込量についての実験結果を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態における内外気切替装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る内外気切替装置の一実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、本発明に係る内外気切替装置の一例として、ロータリダンパ方式の内外気切替装置を挙げて説明する。しかしながら、本発明の内外気切替装置は、ロータリダンパ方式以外の内外気切替装置にも適用可能である。また、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
図1は、本実施形態の内外気切替装置S1の概略構成を示す斜視図である。
本実施形態の内外気切替装置S1は、車両に搭載され、車室内の内気あるいは車外の外気を選択的に車両用空気調和装置に対して取込むためのものであり、取込む空気を内気から外気に、あるいは、外気から内気に切替る。
そして、本実施形態の内外気切替装置S1は、図1に示すように、ケース1と、ロータリダンパ2と、回動レバー3と、可撓性フィルムドア4とを備えている。
【0016】
ケース1は、本実施形態の内外気切替装置S1の外形を形作り、内部にロータリダンパ2を回動可能に収容するものである。このケース1は、車室内の空気である内気を取込むための内気導入口1aと、車外の空気である外気を取込むための外気導入口1bと、内部に取込んだ空気を排出する空気出口1cと、取込口1dとを有している。
【0017】
内気導入口1aは、ケース1上部において上方に向けて開口されており、車室内に位置する導入口である。外気導入口1bは、ケース1の上部において内気導入口1aと同様に上方に向けて開口されており、車外と連通したエンジンルームに接続される導入口である。そして、図1に示すように、内気導入口1aと外気導入口1bとは、ケース1の上部において頂部1eを挟んで併設されている。空気出口1cは、ケース1の下部に設けられており、車両用空気調和装置が稼動される際に駆動されるブロワを収容するブロワユニットと接続されている。
また、ケース1は、ロータリダンパ2に設置される後述のシール部材6と当接して内気導入口1aあるいは外気導入口1bと空気出口1cとを隔離するためのシャットリブ1fを有している。
【0018】
図2は、取込口1dを含む本実施形態の内外気切替装置S1の要部断面図である。この図及び図1に示すように、取込口1dは、ケース1の一部であって鉛直方向に対してケースの外側に傾斜された傾斜壁1gに対して設けられており、内気導入口1aがロータリダンパ2によって閉鎖された場合にケース1の外部から内気の一部をケース1の内部に取込むためのものである。
【0019】
また、ケース1は、傾斜壁1gの上方に、可撓性フィルムドア4を取り付けるための取付壁1hを有している。この取付壁1hは、内気導入口1aの開口端面1a1と平行とされており、さらに内気導入口1aのシャットリブ1fの形成面と直交とされ、可撓性フィルムドア4をタッピングにより取り付けるためのタッピング取付孔7(取付孔)が複数形成されている。なお、傾斜壁1gは、取付壁1hよりもケース1の外側に傾斜されている。
【0020】
タッピング取付孔7は、図2に示すように、取付壁1hに対して当該取付壁1hの壁面と直交する方向に延在して設けられている。
なお、図1及び図2に示すように、タッピング取付孔7周りには、タッピング取付孔7に螺合されるネジ8の先端を保護するための突出部9が設けられている。これらの突出部9は、取付壁1hに対して垂直に形成されている。なお、突出部9の内部に対してもタッピング取付孔7が貫通して設けられている。
【0021】
ロータリダンパ2は、内気導入口1aと外気導入口1bとを選択的に閉鎖(すなわち選択的に開放)するものであり、上面2aが閉じられて内部が中空とされた扇形形状を有している。また、ロータリダンパ2は、内気導入口1a側及び外気導入口1b側が周縁部を残して開放されており、内気導入口1a側及び外気導入口1b側から内部を空気が通過可能に構成されている。
【0022】
このロータリダンパ2は、図1に示すように回動レバー3と回転軸5を介して接続されており、回動レバー3の回動に合わせて回転軸5を中心として回動する。より詳細には、ロータリダンパ2は、上面2aが内気導入口1aを塞ぐ姿勢(以下、内気導入口閉鎖姿勢と称する)と上面2aが外気導入口1bを塞ぐ姿勢(図1に示す姿勢であり、以下、外気導入口閉鎖姿勢と称する)との間で、ケース1の内部において回動可能とされている。
【0023】
また、ロータリダンパ2の各周縁部には、上面2a側とその裏側にシール部材6が貼付されている。このシール部材6は、ケース1の頂部1eあるいはシャットリブ1fと当接してケース1とロータリダンパ2との間をシールするものである。
【0024】
回動レバー3は、ロータリダンパ2を内気導入口閉鎖姿勢と外気導入口閉鎖姿勢との間で回動させるためのものである。そして、回動レバー3は、図1に示すようにケース1の外側に設置されており、上述のようにロータリダンパ2に接続された回転軸5と接続されている。なお、回動レバー3は、車室内に設けられた操作レバーあるいは駆動モータと接続されており、操作レバーあるいは駆動モータから動力を伝達されることによって回動する。
【0025】
可撓性フィルムドア4は、可撓性が発揮できる程度に薄くされたフィルム状のシートであり、例えばポリウレタンによって形成されている。この可撓性フィルムドア4は、取込口1dを塞げる大きさの矩形に形状設定されている。そして、本実施形態の内外気切替装置S1において可撓性フィルムドア4は、傾斜壁1gの内壁面に対向することで鉛直方向に対して傾斜して取り付けられており、ケース1内部の圧力がケース1外部の圧力よりも低い場合に、ケース1内外の差圧によって変形することによって取込口1dを開口する。なお、可撓性フィルムドア4は、図2に示すように、上端部が押えプレート10によって取付壁1hの内壁面に対して押えられ、ネジ8によって螺合されることによってケース1に取り付けられている。
【0026】
このように構成された本実施形態の内外気切替装置S1では、車両用空気調和装置が稼動されてブロワが駆動されている場合において、回動レバー3が回動されてロータリダンパ2が外気導入口閉鎖姿勢とされることにより、内気導入口1aを介してケース1内部に内気が取込まれる。そして、ケース1内部に取込まれた内気は、空気出口1cを介して本実施形態の内外気切替装置S1の外部に排出される。
【0027】
また、車両用空気調和装置が稼動されてブロワが駆動されている場合において、回動レバー3が回動されてロータリダンパ2が内気導入口閉鎖姿勢とされることにより、外気導入口1bを介してケース1内部に外気が取込まれる。
この際、ブロワの駆動によってケース1内部が負圧状態となっているため、図2に示すように、可撓性フィルムドア4がケース1内側に撓んで変形することで取込口1dが開口する。このため、取込口1dを介して車室内の内気の一部がケース1内部に供給される。そして、多量の外気と少量の内気を含んだ空気が空気出口1cを介して本実施系形態の内外気切替装置S1の外部に排出される。
【0028】
一方、車両用空気調和装置が稼動されずにブロワが停止している場合であって、ロータリダンパ2が内気導入口閉鎖姿勢とされている場合には、外気導入口1bが開放されているため、車両の走行や車外の風によってケース1内に外気が流れ込み、この結果、ケース1内のラム圧が高くなる。この際、可撓性フィルムドア4は、元の板形状に復元し、取込口1dを塞ぐ。
【0029】
そして、本実施形態の内外気切替装置S1によれば、鉛直方向に対してケース1の外側に傾斜された傾斜壁1gに対して取込口1dが形成され、当該傾斜壁1gの内壁面に対向することで鉛直方向に対して傾斜された可撓性フィルムドア4を備えている。
そして、この可撓性フィルムドア4は、ケース1内部の圧力がケース1外部の圧力よりも低い場合に、ケース1内外の差圧に起因して変形し、これによって取込口1dを開口する。ここで、可撓性フィルムドア4は、鉛直方向に対して傾斜されているため、可撓性フィルムドア4は、重力により常に取込口1dを開放する方向である下方に向けて付勢されている。したがって、可撓性フィルムドア4は、ケース内外の差圧が小さい場合であっても、自重で引っ張られているために容易に大きく変形し、取込口1dを大きく開口する。
また、可撓性フィルムドア4は、可撓性が発揮できる程度に薄くされたフィルム状のシートであるため、従来の補助ドアと比較して格段に重量が小さい。このため、ケース1内外の差圧が小さい場合であっても、容易に変形して取込口1dを大きく開口する。
このため、本実施形態の内外気切替装置S1によれば、ブロワが駆動してケース1内部の圧力が低下した場合に、十分量の内気をケース1内部に取込むことができ、取込口1dを介するケース1内への内気の取込量を確保することができる。
【0030】
また、本実施形態の内外気切替装置S1によれば、可撓性フィルムドア4は、ケース1内部の圧力がケース1外部の圧力よりも低い場合に、ケース1内外の差圧に起因して変形するものであるから、逆に、ケース1内部の圧力がケース1外部の圧力と同等あるいはそれ以上である場合には、元の形状に復元して取込口1dに対して近づいて取込口1dを閉鎖する。このため、ブロワが停止し、ケース1の内部のラム圧が上昇した場合には、取込口1dは、可撓性フィルムドア4によって閉鎖される。このため、本実施形態の内外気切替装置S1によれば、取込口1dを介する外気の逆流を抑止することができる。
【0031】
したがって、本実施形態の内外気切替装置S1によれば、取込口1dを介する外気の逆流を抑止しつつ、取込口1dを介するケース1内への内気の取込量を確保することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態の内外気切替装置S1によれば、ケース1が内気導入口1aのシャットリブ1fの形成面と直交する可撓性フィルムドア4の取付壁1hを有し、可撓性フィルムドア4をタッピングにより取り付けるためのタッピング取付孔7が取付壁1hに対して当該取付壁1hの壁面と直交する方向に設けられている。
このため、ケース1を射出成形により成形する際に、図3に示すように、タッピング取付孔7を形成するための突出部Kaと、内気導入口1aを形成するための突出部Kbとを有するスライド金型Kを用い、当該スライド金型Kを図3のa方向にスライドさせることによって、タッピング取付孔7及び内気導入口1aとを1つのスライド金型Kで形成することができる。
さらに、本実施形態の内外気切替装置S1においては、傾斜壁1gが取付壁1hよりもケース1の外側に傾斜されて形成されている。このように、傾斜壁1gが取付壁1hよりもケース1の外側に傾斜されて形成される場合、あるいは、傾斜壁1gが取付壁1hと同一角度に傾斜されている場合には、図3に示すように、スライド金型Kに取込口1dを形成するための突出部Kcを持たせることによって、取込口1dをタッピング取付孔7及び内気導入口1aと同じスライド金型で形成することができる。
仮に、タッピング取付孔7が形成される取付壁1hや取込口1dが形成される傾斜壁1gが垂直に立設している場合には、少なくとも、内気導入口1aを形成するためのスライド金型と、タッピング取付孔を形成するスライド金型とを分ける必要があり、本実施形態の内外気切替装置S1に比べてスライド金型の数が増えることとなり、製造コストが大幅に増大することとなる。つまり、本実施形態の内外気切替装置S1では、製造時のスライド金型の数を削減することができるため、製造コストを大幅に削減することが可能となる。
【0033】
また、上記実施形態の内外気切替装置S1においては、傾斜壁1gが、可撓性フィルムドア4の取付壁1hよりもケース1の外側に傾斜されている。このように傾斜壁1gを取付壁1hよりもケース1の外側に傾斜することによって、可撓性フィルムドア4が変形した場合に取込口1dが大きく開くこととなり、ケース1内への内気の取込量をさらに増大させることができる。
【0034】
なお、取込口1dの開口面積を変化させなくとも、取付壁1hに対する傾斜壁1gの上記傾斜角度を変化させることにより、取込口1dからの内気の取込量を変化させることができる。
図4は、取付壁1hに対する傾斜壁1gの傾斜角度を変化させた場合における取込口1dからの内気の取込量の変化の様子を示すグラフである。このグラフから分かるように、取付壁1hに対する傾斜壁1gの傾斜角度が0°〜4°までは傾斜角度が大きくなるに連れて取込量が大きく増大し、4°〜8°までは傾斜角度が大きくなるに連れて取込量が徐々に減少する。つまり、取付壁1hに対する傾斜壁1gの傾斜角度を変化させることにより、取込口1dからの内気の取込量を調節可能であることが分かった。
【0035】
(第2実施形態)
図5は、本第2実施形態の内外気切替装置の要部断面図であり、上記第1実施形態において用いた図2と同一箇所の断面図である。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
図5に示すように、本実施形態の内外気切替装置は、上記第1実施形態の可撓性フィルムドア4に換えて、下端が取込口1d側に湾曲した可撓性フィルムドア11を備えている。
このような本実施形態の内外気切替装置によれば、ケース1内の負圧状態が解消され、可撓性フィルムドア11が復元した際に、可撓性フィルムドア11の一部が上記第1実施形態の可撓性フィルムドアよりも取込口1dに近づく。よって、可撓性フィルムドア11が復元した際に、より確実に取込口1dを閉鎖することができる。
したがって、本実施形態の内外気切替装置によれば、より確実に取込口1dを介する外気の逆流を抑止することができる。
【0037】
なお、本実施形態における可撓性フィルムドア11の湾曲の仕方は一例である。可撓性フィルムドアの少なくとも一部が取込口1d側に湾曲することによって、同様の効果を得ることができる。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態においては、取付壁1hが内気導入口1aの開口端面1a1と平行である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、取付壁1hを外気導入口1bの開口端面と平行とする構成を採用しても良い。このような場合であっても、タッピング取付孔を外気導入口と同一のスライド金型で形成でき、製造コストを削減することが可能となる。ただし、このような構成を採用する場合には、外気導入口の開口端面の角度等を、上記実施形態の内外気切替機構に対して変更を要する場合も生じうる。
【0040】
また、上記実施形態においては、可撓性フィルムドア11をタッピングにより取り付ける構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ピン止めすることによって可撓性フィルムドア11を取り付ける構成を採用しても良い。この場合には、タッピング取付孔7に換えて、ピン用の取付孔が設けられることとなる。また、リベットによって可撓性フィルムドア11を取り付ける構成を採用することもでき、この場合にはリベット用の取付孔が設けられることとなる。なお、上記実施形態のタッピング取付孔7にピンやリベットを差し込むことによって可撓性フィルムドア11を固定することもできる。
【符号の説明】
【0041】
S1……内外気切替装置、1……ケース、1a……内気導入口、1a1……開口端面、1b……外気導入口、1d……取込口、1g……傾斜壁、1h……取付壁、2……ロータリダンパ、4,11……可撓性フィルムドア、7……タッピング取付孔(取付孔)、8……ネジ、9……突出部、10……押えプレート、K……金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を導入する外気導入口と、内気を導入する内気導入口とを有するケースを備える車両用空気調和装置の内外気切替装置であって、
鉛直方向に対して前記ケースの外側に傾斜された傾斜壁に対して設けられると共に前記内気導入口が閉鎖された際に前記内気の一部を取込む取込口と、
前記傾斜壁の内壁面に対向することで鉛直方向に対して傾斜して取り付けられると共にケース内部の圧力がケース外部の圧力よりも低い場合に変形することにより前記取込口を開口する可撓性フィルムドアと
を備えることを特徴とする内外気切替装置。
【請求項2】
前記ケースが前記外気導入口あるいは前記内気導入口のシャットリブの形成面と直交する前記可撓性フィルムドアの取付壁を有し、前記可撓性フィルムドアを取り付けるための取付孔が前記取付壁に対して当該取付壁の壁面と直交する方向に設けられていることを特徴とする請求項1記載の内外気切替装置。
【請求項3】
前記傾斜壁は、前記可撓性フィルムドアの取付壁よりも前記ケースの外側に傾斜されていることを特徴とする請求項1または2記載の内外気切替装置。
【請求項4】
前記可撓性フィルムドアは、前記取込口側に湾曲していることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の内外気切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−1177(P2012−1177A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140516(P2010−140516)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】