説明

内外気切替装置

【課題】導入口周りのシール性を確保する。
【解決手段】導入口1bを囲うと共にダッシュパネルと直接当接するシール面Rの少なくとも一部の領域R1が高強度領域R1とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内外気切替装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内外気切替装置は、車両に搭載され、車室内の内気あるいは車外の外気を選択的に車両用空気調和装置に対して取込むためのものであり、取込む空気を内気から外気あるいは外気から内気に切替可能に構成されている。
このような内外気切替装置は、内気導入口と外気導入口とを有するケースと、内気導入口及び外気導入口を選択的に閉鎖するダンパとを備えており、ダンパにより内気導入口を閉鎖する場合に外気をケース内に取込み、ダンパにより外気導入口を閉鎖する場合に内気をケース内に取込む。そして、ケース内に取込まれた空気が車両用空気調和装置によって温調されることによって調和空気が生成される。
【0003】
ところで、内外気切替装置は、車室内に搭載され、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネル(隔壁)に固定されている。そして、特許文献1に示すように、一般的に外気導入口周りにはフランジが形成され、当該フランジがダッシュパネルに当接されて外気導入口がエンジンルームと接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−137621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フランジは、薄い板状の形状を有しているため、ケースの他の部位と比較して強度が低い。このため、内外気切替装置の組立ての際に予期せぬ力が加わり、フランジが変形する虞がある。特に外気導入口周りのフランジは、ケースをダッシュパネルに取り付ける際に支点とされることが多く、取り付け時に変形する虞が高い。このように外気導入口周りのフランジが変形すると、ケースとダッシュパネルとの間のシール性が悪化し、意図せずに外気が車室内に流れる可能性がある。
【0006】
なお、上述のようなフランジは、外気導入口周りにのみ設けられるものではなく、内気導入口等が他の部材と接続するように配置される場合には、当該内気導入口周りにも形成される。そして、このような内気導入口周りに形成されるフランジについても、外気導入口周りに形成されるフランジと同様に変形する虞を含んでいる。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、内外気切替装置において、導入口周りのシール性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、貫通する連通開口を有する隔壁が設置された車両に搭載される車両用空気調和装置に備えられると共に、上記連通開口と接続されると共に車両の外部または内部の空気を導入するための導入口を有するケースを備える内外気切替装置であって、上記ケースが、少なくとも一部の領域が他の領域と比べて高強度の高強度領域とされると共に該導入口を囲うように上記隔壁あるいは当該隔壁に取り付けられた部材と直接当接するシール面を有するという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、高強度領域が、上記ケースが上記隔壁に取り付けられる際に支点とされる領域であるという構成を採用する。
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記導入口周りに設けられる壁部の一部が他の壁部よりも肉厚に形成され、当該肉厚に形成された壁部の端面が上記高強度領域とされているという構成を採用する。
第4の発明は、上記第3の発明において、上記高強度領域を有する肉厚の壁部が肉抜きされているという構成を採用する。
第5の発明は、上記第4の発明において、上記高強度領域を有する肉厚の壁部が、上記高強度領域とされる端面側からと当該端面の反対側からとの両側から肉抜きされているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導入口を囲うシール面の少なくとも一部の領域が高強度領域とされている。このため、シール面が隔壁と当接した場合には、シール面を押し返す力を高強度領域で受けることができる。
したがって、本発明によれば、導入口周りの変形を防止し、シール性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態における内外気切替装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における内外気切替装置が備えるケースを模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態における内外気切替装置が備えるケースの製造方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る内外気切替装置の一実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、本発明に係る内外気切替装置の一例として、ロータリダンパ方式の内外気切替装置を挙げて説明する。しかしながら、本発明の内外気切替装置は、ロータリダンパ方式以外の内外気切替装置にも適用可能である。また、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
図1は、本実施形態の内外気切替装置S1の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、本実施形態の内外気切替装置S1の概略構成を模式的に示す断面図である。
本実施形態の内外気切替装置S1は、図2に示すように貫通する連通開口100を有するダッシュパネル200(隔壁)が設置された車両に搭載される車両用空気調和装置に備えられるものであり、取込む空気を内気から外気に、あるいは、外気から内気に切替る。
そして、本実施形態の内外気切替装置S1は、図1に示すように、ケース1と、ロータリダンパ2と、回動レバー3とを備えている。
【0013】
ケース1は、本実施形態の内外気切替装置S1の外形を形作り、内部にロータリダンパ2を回動可能に収容するものである。このケース1は、車室内の空気である内気を取込むための内気導入口1aと、車外の空気である外気を取込むための外気導入口1bと、内部に取込んだ空気を排出する空気出口1cとを有している。
【0014】
内気導入口1aは、ケース1上部において上方に向けて開口されており、車室内に位置する導入口である。外気導入口1bは、ケース1の上部において内気導入口1aと同様に上方に向けて開口されており、車外と連通したエンジンルームに接続される導入口である。そして、図1に示すように、内気導入口1aと外気導入口1bとは、ケース1の上部において頂部1dを挟んで併設されている。空気出口1cは、ケース1の下部に設けられており、車両用空気調和装置が稼動される際に駆動されるブロワを収容するブロワユニットと接続されている。
また、ケース1は、ロータリダンパ2に設置されるシール部材と当接して内気導入口1aあるいは外気導入口1bと空気出口1cとを隔離するためのシャットリブを有している。
【0015】
また、ケース1は、外気導入口1bを囲うシール面Rを備えている。このシール面Rは、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネル200(隔壁)と直接当接する面であり、当該シール面Rがダッシュパネル200に設けられた連通開口100を囲んで当接して固定されることにより、外気導入口1bが連通開口100と接続されてエンジンルームの内部と接続される。そして、本実施形態の内外気切替装置S1において当該シール面Rは、図1に示すように矩形状とされており、図1に示す一部領域R1がケース1の壁部1e(他の壁部よりも肉厚の壁部)の上面(端面)からなり、他の領域がケース1のフランジ1fの上面からなっている。
そして、一部領域R1は、ケース1がダッシュパネル200に取り付けられる際に支点となる領域とされており、壁部1eの上面からなる。このように壁部1eの上面をシール面Rの一部領域R1とすることによって、一部領域R1は、ケース1の外壁面1gから外側に飛び出すことがなく、外壁面1gと直接繋がることとなる。このため、一部領域R1で受けた力を壁部1e全体で受けることができ、一部領域R1の強度が高くなる。つまり、一部領域R1は、フランジ1fの上面からなる領域よりも強度が高い領域とされている。なお、以下の説明においては、上記一部領域R1を高強度領域R1と称する。
【0016】
また、図1に示すように、高強度領域R1を有する壁部1eは、その上面(すなわち高強度領域R1)を開口端とする複数の窪み10が形成されることによって肉抜きされている。これらの窪み10は、高強度領域R1の延在方向に配列されている。
図2に示すように、壁部1eは、高強度領域R1と反対側(下方)を開口端とする複数の窪み11が各窪み10の下方に形成されている。つまり、本実施形態の内外気切替装置S1において、高強度領域R1を有する壁部1eは、高強度領域R1側からと、高強度領域R1と反対側との両側から肉抜きされている。
そして、本実施形態の内外気切替装置S1において、高強度領域R1側から形成された窪み10と、高強度領域R1の反対側から形成された窪み11とは同じ深さに設定される。つまり、壁部1eにおいて、両側の肉抜き領域の深さが等しく設定されている。
【0017】
ロータリダンパ2は、内気導入口1aと外気導入口1bとを選択的に閉鎖(すなわち選択的に開放)するものであり、上面が閉じられて内部が中空とされた扇形形状を有している。また、ロータリダンパ2は、側部が周縁部を残して開放されており、側部から内部を空気が通過可能に構成されている。
【0018】
このロータリダンパ2は、図1に示すように回動レバー3と回転軸4を介して接続されており、回動レバー3の回動に合わせて回転軸4を中心として回動する。より詳細には、ロータリダンパ2は、上面が内気導入口1aを塞ぐ姿勢(以下、内気導入口閉鎖姿勢と称する)と上面が外気導入口1bを塞ぐ姿勢(図1に示す姿勢であり、以下、外気導入口閉鎖姿勢と称する)との間で、ケース1の内部において回動可能とされている。
【0019】
また、ロータリダンパ2の側部に残された各周縁部は、上面よりも上方に突出している。そして、周縁部の突出した領域の上面側とその裏側に不図示のシール部材が貼付されている。このシール部材は、ケース1の頂部1dあるいはシャットリブと当接してケース1とロータリダンパ2との間をシールするものである。
【0020】
回動レバー3は、ロータリダンパ2を内気導入口閉鎖姿勢と外気導入口閉鎖姿勢との間で回動させるためのものである。そして、回動レバー3は、図1に示すようにケース1の外側に設置されており、上述のようにロータリダンパ2に接続された回転軸4と接続されている。なお、回動レバー3は、車室内に設けられた操作レバーあるいは駆動モータと接続されており、操作レバーあるいは駆動モータから動力を伝達されることによって回動する。
【0021】
このように構成された本実施形態の内外気切替装置S1では、車両用空気調和装置が稼動されてブロワが駆動されている場合において、回動レバー3が回動されてロータリダンパ2が外気導入口閉鎖姿勢とされることにより、内気導入口1aを介してケース1内部に内気が取込まれる。そして、ケース1内部に取込まれた内気は、空気出口1cを介して本実施形態の内外気切替装置S1の外部に排出される。
【0022】
また、車両用空気調和装置が稼動されてブロワが駆動されている場合において、回動レバー3が回動されてロータリダンパ2が内気導入口閉鎖姿勢とされることにより、外気導入口1bを介してケース1内部に外気が取込まれる。そして、ケース1内部に取込まれた外気は、空気出口1cを介して本実施形態の内外気切替装置S1の外部に排出される。
【0023】
ここで、本実施形態の内外気切替装置S1においては、外気導入口1bを囲うと共にダッシュパネル200と直接当接するシール面Rの一部領域R1がケース1の壁部1eの壁面からなり、高強度領域R1とされている。そして、高強度領域R1がダッシュパネル200に当接した場合には、ダッシュパネル200が高強度領域R1を押し返す力を壁部1e全体で受けることができる。このため、高強度領域R1は、フランジの上面がシール面とされる場合と比較して強度が高くなる。つまり、本実施形態の内外気切替装置S1では、シール面Rがダッシュパネル200と当接した場合には、シール面Rを押し返す力を高強度領域R1で受けることができる。
したがって、本実施形態の内外気切替装置S1によれば、外気導入口1b周りの変形を防止し、シール性を確保することが可能となる。
【0024】
また、本実施形態の内外気切替装置S1においては、シール面Rのうち、ケース1がダッシュパネル200に取り付けられる際に支点となる領域が高強度領域R1とされている。つまり、組立て時において最も負荷がかかる領域が高強度領域R1とされている。このため、組立て時における外気導入口1b周りの変形をより確実に防止することが可能となる。
【0025】
また、本実施形態の内外気切替装置S1においては、高強度領域R1を有する壁部1eが肉抜きされている。このため、ケース1の製造時に、壁部1eにおいてヒケが発生することを抑止し、さらに外気導入口1b周りの変形を防止することが可能となる。
【0026】
なお、図3に示すように、ケース1を製造する際には、上方に抜かれると共に外気導入口1bを形成するスライド金型K1と、下方に抜かれると共に空気出口1cを形成するスライド金型K2とを用いる。そして、壁部1eに形成される窪み10は、スライド金型K1に設けられた下方に突出する突出部K1aによって形成される。また、壁部1eに形成される窪み11は、スライド金型K2に設けられた上方に突出する突出部K2aによって形成される。
ここで、本実施形態の内外気切替装置S1においては、壁部1eに対して高強度領域R1側からと当該高強度領域R1と反対側からとの両側から肉抜きが施されているため、片側からのみ肉抜きするのに対して肉抜き部の中間に中間壁12が設けられる。このため肉抜き部の強度をより強くすることができる。
また、両側の肉抜き領域(窪み10と窪み11と)の深さを等しく設定すれば、より窪み10と窪み11の深さの偏りが無くなるため、強度を高める観点から最適である。さらに、スライド金型K1の突出部K1aの高さと、スライド金型K2の突出部K2aの高さを等しくすることができ、いずれか一方の突出部K1a,K2aが偏って高くなることが防止されている。
いずれか一方の突出部K1a,K2aが偏って高くなる場合には、背丈の高い突出部K1a,K2aは細長くなって強度が弱くなる。このため、本実施形態の内外気切替装置S1においては、スライド金型K1,K2の強度が低下することを抑止し、スライド金型K1,K2の寿命を長くすることが可能となる。
【0027】
さらに、本実施形態の内外気切替装置S1においては、高強度領域R1と壁部1eの外壁面1gとが繋がっているため、壁部1eの外壁面1gを、上方に抜くスライド金型K1によって形成することができる。したがって、壁部1eの外壁面1gを別途用いる必要がなく、ケース1を製造する際に必要となるスライド金型の数を抑えることが可能となる。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態においては、車室内とエンジンルームとを仕切るダッシュパネル200に、外気導入口1b周りに形成されたシール面Rを直接当接する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ダッシュパネル200に取り付けられたインテークダクトなどの部材にシール面Rを直接当接することも可能である。また、車室内とエンジンルームとを仕切るダッシュパネル200以外の隔壁にシール面Rを当接するようにしても良い。
また、上記実施形態においては、車両用空気調和装置が車室内に搭載されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、エンジンルームなどの別空間に車両用空気調和装置を搭載しても良い。
【0030】
また、上記実施形態においては、外気導入口1b周りにシール面Rが形成され、その一部が、肉厚に形成された壁部1eの端面(上面)からなる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、内気導入口周りにシール面が形成される場合には、このシール面の一部がケースの壁部の壁面からなるように構成しても良い。
また、肉厚に形成された壁部1eの端面とすることで高強度領域R1とするのではなく、フランジを厚くしたり、形成材料を換えたりすることによって高強度領域を作り出しても良い。
【0031】
また、上記実施形態においては、外気導入口1b周りのシール面Rの一部が高強度領域R1である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、シール面R全体をケースの壁部の壁面からなるように構成し、シール面R全体を高強度領域R1とする構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
S1……内外気切替装置、1……ケース、1a……内気導入口(導入口)、1b……外気導入口(導入口)、1e……壁部、1f……フランジ、1g……外壁面、2……ロータリダンパ、10,11……窪み、100……連通開口、200……ダッシュパネル(隔壁)、R……シール面、R1……高強度領域(端面、シール面の一部の領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通する連通開口を有する隔壁が設置された車両に搭載される車両用空気調和装置に備えられると共に、前記連通開口と接続されると共に車両の外部または内部の空気を導入するための導入口を有するケースを備える内外気切替装置であって、
前記ケースは、少なくとも一部の領域が他の領域と比べて高強度の高強度領域とされると共に該導入口を囲うように前記隔壁あるいは当該隔壁に取り付けられた部材と直接当接するシール面を有することを特徴とする内外気切替装置。
【請求項2】
高強度領域は、前記ケースが前記隔壁に取り付けられる際に支点とされる領域であることを特徴とする請求項1記載の内外気切替装置。
【請求項3】
前記導入口周りに設けられる壁部の一部が他の壁部よりも肉厚に形成され、当該肉厚に形成された壁部の端面が前記高強度領域とされていることを特徴とする請求項1または2記載の内外気切替装置。
【請求項4】
前記高強度領域を有する肉厚の壁部が肉抜きされていることを特徴とする請求項3記載の内外気切替装置。
【請求項5】
前記高強度領域を有する肉厚の壁部は、前記高強度領域とされる端面側からと当該端面の反対側からとの両側から肉抜きされていることを特徴とする請求項4記載の内外気切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1178(P2012−1178A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140517(P2010−140517)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】