説明

内照式掲示器

【課題】輝度ムラを生じさせることなく、均一な照明光で表示面を照明することができ、構造がコンパクトな内照式掲示器を構成する。
【解決手段】 正面部と背面部に開口部(21、21)が設けられた箱形筐体(2)の両開口部(21,21)に透光表示板(3、3)を設置するとともに筐体(2)の天井部に複数のLED(42)を列設してなる線状光源(4)を設置し、線状光源(4)の下側に帯状に成形された光拡散レンズ(5)を設置して掲示器を構成し、線状光源(4)から下向きに照射される光を光拡散レンズ(5)で両透光表示板(3、3)のそれぞれの表示面全体に均等に集光させて照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に文字や絵などが付された光透過性のパネルをその背面側から光を当てて宣伝広告や位置表示マーク、特定の標識などの各種の情報を掲示する内照式掲示器(以下、掲示器という)に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の駅構内や地下通路、或いは建物の外壁面などに、歩行者への周辺地理の案内や誘導のための情報、宣伝広告に関する情報などを発光表示する掲示器が設置されている。
【0003】
このような掲示器として、例えば図7(A)に示されるように、箱状の筐体100内に蛍光灯101を複数配し、筐体100の両側には表面に情報が印字されたフィルムが貼られた透光表示板102、102を取り付け、蛍光灯101の光で透光表示板102、102を筐体100の内側から透過照明する構成のものや、同図(B)に示されるように、枠体103内に導光板104を嵌め入れ、導光板104の側端面に蛍光灯や冷陰極管などの管状ランプ105を設置するとともに導光板104の表面部に重ねて透光表示板102を枠体103に取り付け、導光板104の側端面から板内に入射された光源光を導光板104の表面部から出射して透光表示板102を透過照明する構成のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、透光表示板を高輝度且つ均一な光で照明するため、同図(C)に示されるように、筐体100内に乳白色の光散乱板106を設置し、この光散乱板106上に管状ランプ105を所定の間隔を空けて複数並設した構成のもの、或いは光散乱板106を格子状に形成するとともに各格子の凹部内にLEDを収納して線状光源を構成し、これを筐体100内に設置して掲示器を構成したものが知られている(例えば特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−150824号公報
【特許文献2】特開平11−249603号公報
【特許文献3】特開2008−270144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7(A)に示された掲示器は、構造がシンプルであるものの、蛍光灯両端の口金部や蛍光灯101、101の間の部分が無点灯部となり、透過照明に光源の影が表れて照明ムラができてしまう。同図(B)に示されたものは、明瞭な照明ムラはできないものの、透光表示板102の表示面を大型化した場合に、これに伴い導光板104も大型に成形する必要があるため製作コストが嵩み、また、導光板104を収納した掲示器は大重量となり、高所に設置ができないなど掲示器の設置位置が制限されてしまう。
【0007】
また、同図(C)に示されたものは、透光表示板102を照射する光の輝度は増すものの、表示面に管状ランプ105の配置位置に沿って縞状に光の濃淡が表出してしまい、また、正背又は左右両面を表示面とした掲示器を構成する場合に掲示器の幅が厚くなって大型化することは避けられない。
【0008】
さらに、前記図7(A)に示した蛍光灯101に代えて、前記格子状に組んだ光散乱板の中にLEDを収納して構成した光源を前記筐体100の天井部に設置し、両側の透光表示板102、102を透過照明する掲示器では、透光表示板102、102の表示面全体の輝度は上がるものの、光源に近い表示面の上部が明るく、下部が暗くなる輝度ムラを生じさせてしまう。この場合、透光表示板102の表示面全体を均一な輝度にするには、輝度ムラを補正するため、出光調整が施されたグラデーション付きの透過式反射拡散シートを透光表示板102、102の内面に接着しなければならない。
【0009】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、輝度ムラを生じさせることなく、均一な照明光で表示面を照明することができ、構造がコンパクトな内照式掲示器を構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明は、 対向二面に開口部が設けられた箱形筐体の前記両開口部に透光表示板を設置するとともに筐体の天井部に線状光源を設置し、両透光表示板を線状光源で内側から照明する内照式掲示器において、前記線状光源は天井部内面に沿って複数のLEDを列状に配置してなり、この線状光源の下側に帯状に成形された光拡散レンズを設置し、線状光源から照射される光を光拡散レンズで両透光表示板のそれぞれの表示面全体に均等に集光させて照射するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
前記構成において、光拡散レンズとしてリニアフレネルレンズを用いることができる。
また、リニアフレネルレンズで線状光源から下向きに照射される光を集光するとともに、集光軸を2分割して筐体の両側の透光表示板に向けて照射させるように構成することができる。
【0012】
線状光源と光拡散レンズの筐体への取り付けは、支持溝を有する枠体を筐体の天井部に設置し、LEDを実装した線状光源の基板と光拡散レンズとを前記支持溝に差し込んで行うことができる。
【0013】
これによれば、線状光源から下向きに放射される光を光拡散レンズで集光し、減衰させることなく筐体両側の透光表示板に向けて配光せしめ、透光表示板の表示面の全体を均一な光で照射することができる。光拡散レンズで照明光を集光するとともに、光軸を左右の透過表示板に向け及び分割し、適切な配光特性の光に配分することで、透光表示板の表示面の輝度ムラの表出を防止することができるので、出光調整用の反射拡散シートは不要である。また、輝度ムラがないため、透光表示板に掲載される情報の視認性が向上する。
本発明の内照式掲示器は、構造がシンプルな上、従来使用されていた部品の一部が不要となって製作コスト及び運用コストが低廉に抑えられる。すなわち、この種の内照式掲示器の光源として従来使用されていた蛍光灯に比べてLEDは耐久性に優れ、また、消費電力が少ない一方輝度が大きく、掲示器全体で電力効率を向上させることができる。また、導光板を使用していないため軽量で設置場所を選ばず、薄型化や軽量化が可能であるため構成部材の材料費を削減でき、また、薄型化や長尺化にも容易且つフレキシブルに対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の掲示器の構成部材を展開した状態の概略外観図である。
【図2】図1の掲示器の筐体内部に設置した線状光源と光拡散レンズの要部拡大断面図である。
【図3】図1の掲示器内部の部品配置を示した要部断面図である。
【図4】本発明の掲示器のLEDと光拡散レンズの配置(A)、掲示器内における配光特性の概要(B)及びLEDと光拡散レンズの配光特性(C)をそれぞれ示した図である。
【図5】LED光の集光軸を光拡散レンズで2分割して透光表示板に配光する特性を示した図である。
【図6】本発明の他の実施形態の掲示器内部の部品配置を示した要部断面図である。
【図7】(A)は従来の掲示器の一例の構成を示した図、(B)は導光板を用いた従来の掲示器の構成を示した図、(C)は光散乱板を用いた従来の掲示器の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の掲示器の構成部材を展開した状態の概略外観を示しており、この掲示器1は正背両面に透光表示板3、3を設置して密閉される筐体2の内部に、線状光源4と光拡散レンズ5を設置し、線状光源4から放射される光源光を光拡散レンズ5で透光表示板3、3の表示面に集光し、透光表示板3、3から出射される照明光が表示面全体で均一な輝度となるように構成されている。
【0016】
詳しくは、筐体2は、天面部、底面部及び左右両側面部を鋼材で囲い、正面部と背面部に横長矩形状に開口した開口部21、21を設けて中空な箱形に形成してある。
図3に示されるように、開口部21、21の周縁には溝部21aが周設されてなり、この溝部21aに透光表示板3の周縁を差し込んで、透光表示板3、3が開口部21、21に取り付けられるようになっている。また、筐体2の天面部の下側である天井部には、線状光源4を支持する支持溝22a、22aと光拡散レンズ5を支持する支持溝22b、22bとが当該天井部の長手方向に沿って上下平行に延設されてなる枠体22を一体に取り付けてある。
【0017】
透光表示板3は、前記開口部21に嵌る大きさを有する乳半アクリル板であり、その表面には掲示すべき種々の情報が印字された透光性フィルム(図示せず)が貼り付けてある。透光表示板3、3は、筐体2の両開口部21,21の溝部21aに周縁を差し込んで、筐体2の正面部と背面部に沿って平行に設置してある。
【0018】
線状光源4は、筐体2の左右側面部間よりも若干短い長さを有する帯状の基板41の表面に、複数のLED42を列状に実装して形成してある。図2に示されるように、各LED42は基板41の中央部に沿って一列に且つ互いに等間隔を空けて実装してある。線状光源4は、LED42の実装面を下向きにした基板41を、その両側部を前記枠体22の支持溝22a、22aに差し込んで筐体2の天井部中央に取り付けられ、各LED42から光源光を筐体2の底面部に向けて鉛直下向きに放射するように設置してある。なお、LED42は、その中心軸廻りに120°の指向特性で光を放射する特性のものが好適である。
【0019】
光拡散レンズ5は、前記線状光源4と略同じ長さで帯状に形成されたリニアフレネルレンズであり、その両側部を前記枠体22の支持溝22b、22bに差し込んで、図2及び図3に示されるように、線状光源4と所定の間隔を空けて各LED42の真下で線状光源4と平行に設置されている。
【0020】
光拡散レンズ5として用いるリニアフレネルレンズは、受光面に入射した光を集光するとともに、集光軸を当該レンズの長手方向と直交する下方両側に向けて2分割する配光特性を備えたものが用いられる。
具体的には、図4(A)に示されるように、LED42が列設された線状光源4の下側に、LED42からの放射光を集光し、その集光軸を、同図(B)に示されるように、所定の角度αで左右に2分割する配光特性を備えたリニアフレネルレンズ5を設置する。
そして、同図(C)に示されるように、中心廻りに120°の指向特性で光を放射するLED42の配光特性Aと、リニアフレネルレンズ5の配光特性Bとの組み合わせにより、リニアフレネルレンズ5で集光した光を筐体2の両側へ配分する配光特性Cを構成し、透光表示板3、3の表示面全体に効率良く均等に光源光が照射されるようにしている。
一例として、図5に示されるように、中心軸廻り120°の指向特性のLED42の放射光をリニアフレネルレンズ5で当該レンズからの射出光が102°の範囲となるように集光するとともに、集光軸を左右に2分割してそれぞれが47°の範囲となるように設定し(この場合、前記角度α=8°)、左右に分割された配光で透過表示板3、3の表示面全体を均等に照明することが可能である。
【0021】
このように構成された本形態の掲示器1によれば、各LED42から下向きに放射された線状光源4の光を、光拡散レンズ5であるリニアフレネルレンズで集光し、集光した光束を減衰させることなく筐体2の正背両側に設置された透光表示板3、3に向けてそれぞれ配分し、両透光表示板3、3の表示面の全体を均一な光で照射することができる。表示面を均一な光で照射し、輝度ムラが表出しないので透光表示板3、3に掲示される情報の視認性が向上し、表示面に出光調整用の反射拡散シートを貼り付ける必要もなく、また、構造がシンプルで薄型化や長尺化にフレキシブルに対応が可能である。
【0022】
図6は本発明の他の実施形態の掲示器の構成を示しており、これは筐体2の底部にリニアフレネルレンズからなる光拡散レンズ5と鏡面反射板6を重ねて設置し、LED42で下向きに放射されて前記底部に達した光を鏡面反射板6で上方へ反射し、その上方に設けたリニアフレネルレンズで集光し、両透光表示板3、3の表示面へ配分して照射することで、表示面の輝度の増加を図ったものである。
なお、各図に示した掲示器1の形態は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0023】
1 掲示器、2 筐体、21 開口部、21a 溝部、22 枠体、22a,22b 支持溝、3 透光表示板、4 線状光源、41 基板、42 LED、5 光拡散レンズ(リニアフレネルレンズ)、6 鏡面反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向二面に開口部が設けられた箱形筐体の前記両開口部に透光表示板を設置するとともに筐体の天井部に線状光源を設置し、両透光表示板を線状光源で内側から照明する内照式掲示器において、
前記線状光源は天井部内面に沿って複数のLEDを列状に配置してなり、この線状光源の下側に帯状に成形された光拡散レンズを設置し、線状光源から下向きに照射される光を光拡散レンズで両透光表示板のそれぞれの表示面全体に均等に集光させて照射するように構成されていることを特徴とする内照式掲示器。
【請求項2】
光拡散レンズとしてリニアフレネルレンズを用いてなる請求項1に記載の内照式掲示器。
【請求項3】
線状光源から下向きに照射される光をリニアフレネルレンズで集光するとともに、集光軸を2分割して筐体の両側の透光表示板に向けて照射させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の内照式掲示器。
【請求項4】
支持溝を有する枠体が筐体の天井部に設置され、LEDが実装された基板と光拡散レンズがそれぞれ前記支持溝に差し込んで取り付けられることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の内照式掲示器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−180278(P2011−180278A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42861(P2010−42861)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(390025737)株式会社新陽社 (11)
【Fターム(参考)】