説明

内燃機関のオイル通路構造

【課題】内燃機関の再始動時におけるオイル圧作動機器の性能低下を適正に抑制することが可能でありながら、オイル貯留室の形状を高い自由度をもって設定することのできる内燃機関のオイル通路構造を提供する。
【解決手段】内燃機関10の内部に形成されたオイル供給路31を通じてテンショナ20にオイルを供給する。オイル供給路31に連通されるとともに内燃機関10およびテンショナ20によって区画形成されるオイル貯留室32を備える。内燃機関10とテンショナ20との間に中空構造の中間部材40が設けられる。中間部材40の各プレート42,43にそれぞれ貫通口42a,43aが形成され、それら貫通口42a,43aを通じてオイル貯留室32とテンショナ20とが連通される。オイル供給路31側のプレート43の貫通口43aが、テンショナ20側のプレート42の貫通口42aより鉛直方向の上方位置に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の内部に形成されたオイル供給路を通じて同内燃機関に取り付けられたオイル圧作動機器にオイルを供給する内燃機関のオイル通路構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のタイミングチェーンの張力を自動的に調整するものとして、オイルにより作動するテンショナを設けることが多用されている。このテンショナには、内燃機関(詳しくはシリンダヘッドやシリンダブロック)の内部に形成されたオイル供給路を通じて、オイルポンプから吐出されたオイルが供給される。そしてタイミングチェーンが緩むと、テンショナのシリンダ内部に設けられたプランジャがばねの付勢力によって突出して同タイミングチェーンが押圧される。また、このプランジャの動きに伴って逆止弁が開かれてシリンダ内にオイルが流入する。一方、プランジャがタイミングチェーンによって押圧されて同プランジャにシリンダ内へ没入させる方向の力が作用すると、逆止弁が閉じられて、シリンダ内からのオイルの流出が制限される。こうしたテンショナの動作によってタイミングチェーンの張力が一定に調整される。
【0003】
ところで内燃機関が始動されるときには、機関出力軸の回転変動が大きいために、タイミングチェーンの張力の変動量が大きくなりやすい。そしてタイミングチェーンの張力が小さくなると、プランジャが突出して逆止弁が開かれてオイル供給路内のオイルがシリンダ内に吸引される。
【0004】
ここでシリンダ内部のオイルは、同シリンダとプランジャの間から漏出している。そのため内燃機関の運転が停止されて、オイルポンプによる機関各部へのオイル供給が停止されると、シリンダ内部のオイル圧力が低下した状態になる。また、そうした内燃機関の運転停止時には、オイル供給路内のオイルが自重によって流れ落ちる。そのため、内燃機関の再始動に際しては、オイルポンプから吐出されたオイルがオイル供給路を通ってテンショナに到達するまでの期間、テンショナへのオイル供給量が不足するおそれがある。そして、その不足によってテンショナ内に空気が混入すると、同テンショナが本来の機能を発揮しなくなってタイミングチェーンの張力を適切に調整することができなくなり、その結果、タイミングチェーンの振動幅が大きくなって騒音が発生してしまう。
【0005】
そこで、内燃機関にあってテンショナが取り付けられる部分にオイル貯留室を設けることが提案されている。このオイル貯留室は、オイル供給路が連通された凹部を内燃機関に形成するとともに同凹部を塞ぐようにテンショナを取り付けることによって形成される。このオイル貯留室の内部には内燃機関の停止時においてもオイルが流れ落ちることなく貯留されるために、内燃機関の再始動時において、このオイル貯留室内のオイルがテンショナのシリンダ内に吸入されるようになり、テンショナの性能低下が抑制される。
【0006】
このようにオイル貯留室を設けたとしても、内燃機関の再始動に際してオイル貯留室におけるオイル液面の高さがテンショナのオイル吸入口まで低下すると、テンショナ内部に空気が吸入されてしまう。内燃機関の主要部分(シリンダブロックやシリンダヘッド)はダイカスト等の型成形によって形成されるために、同内燃機関にあっては、その成形の都合上、オイル供給路やオイル貯留室の形状を複雑な形状にすることができない。そのため、オイル貯留室におけるオイル供給路の連通口やテンショナに形成されるオイル吸入口の設定についての自由度が低い。したがって上記連通口やオイル吸入口の形成位置によらずに、内燃機関の再始動時におけるテンショナへの空気の吸入を確実に抑えるためには、オイル貯留室の容積を大きくせざるを得ない。
【0007】
こうした不都合に対しては、例えば特許文献1に記載のオイル通路構造のように、オイル貯留室の内部に隔壁を形成して、その鉛直方向の上方部分では上記連通口とオイル吸入口との間を仕切るとともに、同下方部分においては上記連通口とオイル吸入口との間を連通することが提案されている。
【0008】
この構造では、内燃機関の再始動時にオイル供給路側のオイル液面が低下した場合であっても、同オイル液面が上記隔壁の下端まで低下しない限り、同隔壁よりテンショナ側のオイル液面が低下しなくなる。そのため、比較的小さい容量のオイル貯留室によってテンショナ内部への空気の侵入、ひいては同テンショナの性能低下を抑制することが可能になる。
【特許文献1】特許第3141740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した内燃機関にあっては、その再始動時にオイル不足を招くことのないように、オイル供給路の連通口の形成位置やテンショナのオイル吸入口の形成位置を考慮して、オイル貯留室の形状や隔壁の延設形状を設定する必要がある。そのため、オイル貯留室が複雑な構造になり易く、その成形も困難なものとなり易い。しかもオイル貯留室が複雑な構造になると、その成形の都合上、同オイル貯留室の容積を小さくすることが困難になり、これがオイル貯留室の省スペース化を制限する一因となるために好ましくない。
【0010】
なお、こうした実情は、上述したテンショナに限らず、例えばラッシュアジャスタなど、内燃機関の内部に形成されたオイル供給路およびオイル貯留室を通じて供給されるオイルによって作動するオイル圧作動機器のオイル通路構造においては概ね共通している。
【0011】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の再始動時におけるオイル圧作動機器の性能低下を適正に抑制することが可能でありながら、オイル貯留室の形状を高い自由度をもって設定することのできる内燃機関のオイル通路構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関の内部に形成されたオイル供給路を通じて同内燃機関に取り付けられたオイル圧作動機器にオイルを供給するものであり、前記オイル供給路に連通されるとともに前記内燃機関および前記オイル圧作動機器によって区画形成されるオイル貯留室を備える内燃機関のオイル通路構造において、前記内燃機関と前記オイル圧作動機器との間に中空構造の中間部材が介設され、前記中間部材の中空部分における前記オイル圧作動機器側の壁部と前記オイル供給路側の壁部とにそれぞれ貫通口が形成されて、それら貫通口を通じて前記オイル貯留室と前記オイル圧作動機器とが連通され、前記オイル供給路側の壁部の貫通口は前記オイル圧作動機器側の壁部の貫通口より鉛直方向の上方位置に形成されることをその要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、中間部材の中空部分におけるオイル供給路側の壁部の貫通口がオイル圧作動機器側の壁部の貫通口より鉛直方向の上方位置に形成されるために、内燃機関の停止時において中空部分の内部にオイルを貯留することができる。そのため内燃機関の再始動時においては、中空部分に貯留されているオイルがオイル圧作動機器に吸入されるようになる。しかも、中間部材における各貫通口の形成位置および上記中空部分の形状の設定を通じて、内燃機関の再始動時において上記中空部分からオイル圧作動機器が吸入可能なオイル量を定めることができる。そのため、内燃機関の再始動時においてオイル不足を招くことのない形状に形成された中間部材を取り付け可能であれば、オイル貯留室の形状(容積)や同オイル貯留室におけるオイル供給路の連通口の形成位置を自由に設定することができ、それら形状や形成位置の設定についての自由度を格段に高くすることができる。したがって、内燃機関の再始動時におけるオイル圧作動機器の性能低下を適正に抑制することが可能でありながら、オイル貯留室の形状を高い自由度をもって設定することができるようになる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関のオイル通路構造において、前記中間部材は2枚のプレートを合わせた形状に形成されてなることをその要旨とする。
上記構成によれば、中空構造の中間部材を容易に形成することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関のオイル通路構造において、前記中間部材は前記中空部分の容積が前記オイル貯留室における前記中間部材を除いた部分の容積より大きく設定されてなることをその要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、オイル貯留室における中空部分以外のスペースを小さくすることができ、小容量のオイル貯留室をもって内燃機関の再始動時におけるオイル圧作動機器の性能低下を抑制することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、内燃機関の内部に形成されたオイル供給路を通じて同内燃機関に取り付けられたオイル圧作動機器にオイルを供給するものであり、前記オイル供給路に連通されるとともに前記内燃機関および前記オイル圧作動機器によって区画形成されるオイル貯留室を備える内燃機関のオイル通路構造において、前記内燃機関と前記オイル圧作動機器との間に中間部材が介設され、同中間部材には、前記オイル貯留室における前記オイル供給路の連通口より鉛直方向の下方位置に、前記オイル貯留室と前記オイル圧作動機器とを連通する貫通口が形成されることをその要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、中間部材における貫通口の形成位置の設定を通じて、オイル圧作動機器に形成されたオイル吸入口の位置によらずに、オイル貯留室から油圧作動機器にオイルが吸入されるオイル吸入口の鉛直方向位置を設定することができる。そのため、中間部材が設けられない構造と比較して、そうしたオイル吸入口の位置設定についての自由度を格段に高くすることができる。しかも、内燃機関の再始動時にオイル不足を招くことのないようにオイル貯留室の形状や同オイル貯留室におけるオイル供給路の連通口の形成位置を設定する上で、それら形状や形成位置の設定についての自由度を格段に高くすることもできる。したがって、内燃機関の再始動時におけるオイル圧作動機器の性能低下を適正に抑制することが可能でありながら、オイル貯留室の形状を高い自由度をもって設定することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関のオイル通路構造において、前記オイル圧作動機器および前記中間部材に挿通孔がそれぞれ形成されるとともに前記内燃機関にねじ穴が形成され、それら挿通孔を通して前記ねじ穴にねじが螺着されて、前記オイル圧作動機器が前記中間部材ともども前記内燃機関に取り付けられ、前記中間部材の挿通孔にバーリングが形成されることをその要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、オイル圧作動機器および中間部材の内燃機関への取り付けに際して、中間部材の位置決め、ひいては内燃機関に対するオイル圧作動機器および中間部材40の位置決めを容易に行うことができ、それらの取り付けにかかる作業性を向上させることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関のオイル通路構造において、前記中間部材は、前記内燃機関と前記オイル圧作動機器との間からのオイル漏れをシールするシーリング材としての機能を有することをその要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、内燃機関の停止時においてオイル貯留室内からオイルが漏出することを回避することができ、内燃機関の再始動時においてオイル圧作動機器に吸入されるオイルを好適に確保することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関のオイル通路構造において、前記内燃機関は巻掛伝動部材を介してクランクシャフトからカムシャフトに動力を伝達するものであり、前記オイル圧作動機器は前記巻掛伝動部材の張力を調整するテンショナであることをその要旨とする。
【0024】
上記構成によれば、内燃機関の再始動時におけるテンショナの性能低下を適正に抑制することができ、タイミングチェーンやタイミングベルトといった巻掛伝動部材の振動や騒音の発生を好適に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる内燃機関のオイル通路構造を具体化した第1の実施の形態について説明する。
【0026】
ここでは先ず、図1を参照して、本実施の形態にかかるオイル通路構造が適用される内燃機関の概略構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態にかかる内燃機関10としてはV型のものが採用されている。内燃機関10の各バンクにはそれぞれ、吸気カムシャフト11と排気カムシャフト12とが設けられている。また、内燃機関10には各バンクに対応してタイミングチェーン13が設けられており、それらタイミングチェーン13はそれぞれ、吸気カムシャフト11および排気カムシャフト12とクランクシャフト14とに巻き掛けられている。内燃機関10にあっては、タイミングチェーン13を介してクランクシャフト14の動力が伝達されることによって、吸気カムシャフト11および排気カムシャフト12が回転駆動される。本実施の形態では、各タイミングチェーン13が巻掛伝動部材として機能する。
【0027】
各タイミングチェーン13の近傍にはそれぞれ、同タイミングチェーン13にかかる張力が一定になるようにこれを調整するテンショナ装置15が設けられている。このテンショナ装置15は、テンションレバー16とテンショナ20とを備えている。
【0028】
テンションレバー16は、弓形状に形成されており、クランクシャフト14と各カムシャフト11,12との間の位置にあってタイミングチェーン13の外周に沿うように設けられている。なおテンションレバー16は、その一端(支持部16a)がシリンダブロック10aに支持されており、同支持部16aを支点に、タイミングチェーン13に近接する方向や同タイミングチェーン13から離間する方向に揺動可能に配設されている。
【0029】
上記テンショナ20は、そうしたテンションレバー16に当接するように、且つ同テンションレバー16をタイミングチェーン13ともども同タイミングチェーン13の内周方向に押圧するように設けられている。なお本実施の形態では、このテンショナ20がオイル圧作動機器として機能する。
【0030】
次に、図2を参照して、テンショナ20の具体的な構造について説明する。
同図2に示すように、テンショナ20は、本体21と、同本体21の内部に形成されるシリンダ22と、同シリンダ22の内部に出没可能に設けられたプランジャ23とを備えている。
【0031】
上記シリンダ22の内部にはスプリング24が設けられており、同スプリング24の付勢力によってプランジャ23がシリンダ22から突出する方向、すなわちタイミングチェーン13を押圧する方向に常時付勢されている。
【0032】
またシリンダ22には、オイルポンプ(図示略)に連通されたオイル供給路31が逆止弁25を介して接続されている。この逆止弁25によって、オイル供給路31からシリンダ22の内部へのオイル流入が許容される一方、シリンダ22からオイル供給路31へのオイル流出が禁止される。このようにシリンダ22の内部には、上記オイル供給路31や逆止弁25を介してオイルが供給されて満たされている。
【0033】
テンショナ20は、上記オイル(詳しくは、その圧力)によって作動して、テンションレバー16をタイミングチェーン13ともども押圧することによって、同タイミングチェーン13の張力を自動的に調整する。
【0034】
次に、一方のテンショナ20(図1における向かって右側のバンクに設けられるテンショナ20)にオイルを供給するためのオイル通路構造について説明する。
図3は、上記オイル通路構造を概略的に示している。
【0035】
同図3に示すように、内燃機関10におけるテンショナ20の取り付け部分には凹部17が形成されており、この凹部17を塞ぐようにテンショナ20が取り付けられている。これにより内燃機関10とテンショナ20との間には、上記凹部17と同テンショナ20の壁面とによってオイル貯留室32が区画形成されている。また、内燃機関10のシリンダブロック10aの内部には、同内燃機関10の各部にオイルを供給するためのオイルギャラリ33と、同オイルギャラリ33およびオイル貯留室32(詳しくは上記凹部17)を連通する前記オイル供給路31とが形成されている。さらに、テンショナ20における上記オイル貯留室32の面には凹部26が形成されており、同凹部26において、シリンダ22内にオイルを吸入するためのオイル吸入口27が開口している。
【0036】
本実施の形態にかかるオイル通路構造では、オイル供給路31およびオイル貯留室32を通じて、オイルポンプとテンショナ20とが連通されるとともに同オイルポンプからテンショナ20にオイルが供給される。
【0037】
ところで、内燃機関10の運転が停止されると、オイルポンプの運転も停止されてオイル供給が停止されるために、オイル供給路31の内部のオイルが流れ落ちる。また、これに伴ってオイル貯留室32のオイルの一部も流れ落ちるために、同オイル貯留室32の内部におけるオイル液面が低下してしまう。
【0038】
図4に、前記凹部17の側面構造を示す。
同図4に示すように、オイル供給路31は、上記凹部17における鉛直方向の下方位置に連通されている。また、オイル供給路31は上記凹部17から水平方向に延びる形状に形成されて(図3参照)、内燃機関10の各部にオイルを供給するためのオイルギャラリに連通されている。そのため内燃機関10の運転が停止されると、オイル貯留室32におけるオイル液面が上記オイル供給路31の連通口31aにおける鉛直方向の下端(同図中に一点鎖線で示すレベル)まで低下するようになる。一方、同図中に破線で示すように、テンショナ20に形成されたオイル吸入口27は、上記連通口31aより鉛直方向における上方位置において開口している。
【0039】
そのため、なんら対策が打たれない状態で内燃機関10が再始動され、タイミングチェーン13(図2)の張力が弱くなってテンショナ20の逆止弁25が開かれると、シリンダ22の内部に空気が吸入されてしまう。この場合には、テンショナ20の性能が著しく低下してタイミングチェーン13の振動が大きくなり、騒音の発生を招いてしまう。
【0040】
この点をふまえ、本実施の形態では、内燃機関10の運転停止時においてオイル貯留室32の内部に十分な量のオイルを貯留しておくために、同内燃機関10に中間部材40を設けている。
【0041】
図5に、テンショナ20の取り付け部分における内燃機関10の断面構造を示す。
同図5に示すように、内燃機関10とテンショナ20との間には中間部材40が設けられている。この中間部材40としては中空構造のものが採用されており、同中間部材40の中空部分41の容積は、オイル貯留室32における中間部材40を除いた部分の容積より大きく設定されている。
【0042】
図5のA−A線に沿った中間部材40の側面構造を図6に示し、図6の矢印B方向から見た中間部材40の側面構造を図7に示す。
図6および図7に示すように、中間部材40は、平板形状のプレート42と中央部分が突出した形状のプレート43とを合わせた形状に形成されている。このように2枚のプレートを合わせた形状に中間部材40を形成することにより、中空構造の中間部材40を比較的容易に形成することが可能である。プレート42,43の上記中空部分の壁部にあたる部分にはそれぞれ、同中空部分41と外部とを連通する貫通口42a,43aが形成されている。また、中間部材40にあって各プレート42,43が合わせられた部分には2つの挿通孔44が形成されている。それら挿通孔44には、バーリング加工を通じて、その周縁をプレート42側から円筒状に突出させた形状のバーリング45が形成されている。
【0043】
図8に、テンショナ20の取り付け部分における内燃機関10の断面構造の一部を拡大して示す。
同図8に示すように、内燃機関10にあって上記中間部材40の各挿通孔44に対応する位置にはねじ穴18が形成されている。また、テンショナ20の上記各挿通孔44に対応する位置には挿通孔28が形成されている。このねじ穴18には、テンショナ20の挿通孔28および中間部材40の挿通孔44を通してねじ19が螺着される。このようにねじ穴18にねじ19を螺着することにより、テンショナ20が中間部材40ともども内燃機関10に取り付けられる。
【0044】
この取り付けに際しては、中間部材40の挿通孔44に形成されたバーリング45がテンショナ20の挿通孔28に係合される。そのため、バーリング45が形成されない場合と比較して、テンショナ20および中間部材40を内燃機関10に取り付ける際に、テンショナ20に対する中間部材40の位置決め、ひいては内燃機関10に対するテンショナ20および中間部材40の位置決めを容易に行うことができる。
【0045】
図9に、中間部材40の断面構造の一部を拡大して示す。
同図9に示すように、プレート42としては、鋼板等によって形成したベース材L1の表面に弾性材料(例えばニトリルゴム)によって被覆層L2を形成したものが採用されている。この被覆層L2は、中間部材40が内燃機関10に取り付けられた際に、シーリング材として機能する。具体的には、この被覆層L2により、各プレート42,43の間から中空部分41(図5)の外部へのオイル漏れや中間部材40とテンショナ20との間から外部へのオイル漏れが防止される。
【0046】
こうした中間部材40を設けることにより、内燃機関10の運転時においては、オイルポンプから吐出されたオイルが「オイル供給路31→プレート43の貫通口43a→中空部分41→プレート42の貫通口42a→テンショナ20の凹部26→テンショナ20のオイル吸入口27」といった順に流れてテンショナ20に吸入される。
【0047】
図10に、中間部材40をプレート42側から見た図を示す。
なお図10には、内燃機関10に中間部材40が取り付けられた状態における鉛直方向を併せて示している。
【0048】
同図10に示すように、プレート42の貫通口42aは中空部分41における鉛直方向の下端に近い位置に形成されている。一方、プレート43の貫通口43aは、中空部分41における鉛直方向の上端に近い位置に形成されている。このように本実施の形態では、中間部材40のプレート42の貫通口42aがプレート43の貫通口43aより鉛直方向の下方位置に形成される。
【0049】
ここで、プレート42の貫通口42aはテンショナ20の凹部26およびオイル吸入口27を介して同テンショナ20のシリンダ22に連通されている。内燃機関10の運転停止時においては、シリンダ22とプランジャ23との間からオイルが漏出して同シリンダ22の内部のオイル圧力が低下した状態になるとはいえ、同シリンダ22の内部はオイルが満たされた状態になっている。そのため、中間部材40の中空部分41のオイルがプレート42の貫通口42aからテンショナ20側に流出することはない。
【0050】
一方、プレート43の貫通口43aはオイル供給路31に連通されている。内燃機関10の運転停止時においてオイル供給路31のオイルが流れ落ちると、これに伴ってオイル貯留室32のオイルも流れ落ちてしまう。このとき中間部材40の中空部分41内のオイルがプレート43の貫通口43aからオイル供給路31側に流出するようになる。
【0051】
ただし本実施の形態では、中間部材40のプレート43の貫通口43aがオイル貯留室32におけるオイル供給路31の連通口31aより鉛直方向の上方位置に形成されている。そのため、内燃機関10の運転が停止されたときに、オイル貯留室32内のオイルが外部に流れ落ちるとはいえ、中間部材40の内部(中空部分41)にオイルが貯留されるようになる。また本実施の形態では、中間部材40のプレート42の貫通口42aがプレート43の貫通口43aより鉛直方向の下方位置に形成されている。そのため、内燃機関10が再始動されると、中間部材40の中空部分41に貯留されているオイルがプレート42の貫通口42aを介してテンショナ20に吸入されるようになる。これにより、内燃機関10の再始動時においてテンショナ20のシリンダ22に空気が吸入されることが抑制されて、同テンショナ20の性能低下が抑制される。
【0052】
本実施の形態にかかるオイル通路構造にあっては、内燃機関10の運転停止時に、中間部材40の中空部分41のオイル液面が上記プレート43の貫通口43aの下端(図中に一点鎖線で示すレベル)まで低下する。また、中空部分41のオイル液面がプレート42の貫通口42aの上端(図中に二点差線で示すレベル)より低くなると、内燃機関10の再始動時においてテンショナ20に空気が吸入されるようになる。したがって本実施の形態では、中間部材40における各貫通口42a,43aの形成位置および上記中空部分41の形状の設定を通じて、内燃機関10の再始動時に上記テンショナ20に空気を吸入させることなく同テンショナ20に吸入させることのできるオイル量の上限値を設定することが可能である。
【0053】
この点をふまえて本実施の形態では、そうしたオイル量として十分な量が確保することができるように、各貫通口42a,43aの形成位置および上記中空部分41の形状が設定されている。そのため、内燃機関10の再始動時におけるテンショナ20のシリンダ22への空気吸入、ひいては同テンショナ20の性能低下が適正に抑制される。
【0054】
また本実施の形態では、前述したように中間部材40の中空部分41の容積がオイル貯留室32における中間部材40を除いた部分の容積より大きく設定されているために、オイル貯留室32における中空部分41以外のスペースを小さくすることができる。これにより、小容量のオイル貯留室32をもって内燃機関10の再始動時におけるテンショナ20の性能低下を抑制することができる。
【0055】
さらに本実施の形態では、内燃機関10の再始動時においてオイル不足を招くことのない形状に形成された中間部材40を取り付け可能であれば、オイル貯留室32の形状や、同オイル貯留室32におけるオイル供給路31の連通口31aの形成位置、ならびにテンショナ20におけるオイル吸入口27の形成位置を自由に設定することができる。したがって、それら形状や形成位置の設定についての自由度を格段に高くすることができる。
【0056】
したがって、内燃機関10の再始動時におけるテンショナ20の性能低下を適正に抑制することが可能でありながら、オイル貯留室32の形状を高い自由度をもって設定することができるようになる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)内燃機関10とテンショナ20との間に中空構造の中間部材40を介設するようにした。また、中間部材40の中空部分41におけるテンショナ20側のプレート42とオイル供給路31側のプレート43とにそれぞれ貫通口42a,43aを形成し、プレート43の貫通口43aの形成位置をプレート42の貫通口42aの形成位置より鉛直方向の上方に設定した。そのため、内燃機関10の再始動時におけるテンショナ20の性能低下を適正に抑制することが可能でありながら、オイル貯留室32の形状を高い自由度をもって設定することができるようになる。
【0058】
(2)中間部材40を2枚のプレートを合わせた形状に形成したために、中空構造の中間部材40を容易に形成することができる。
(3)中間部材40の中空部分41の容積をオイル貯留室32における中間部材40を除いた部分の容積より大きくしたために、小容量のオイル貯留室32をもって内燃機関10の再始動時におけるテンショナ20の性能低下を抑制することができる。
【0059】
(4)中間部材40の挿通孔44にバーリング45を形成するようにした。そのため、テンショナ20および中間部材40を内燃機関10に取り付ける際に、内燃機関10に対するテンショナ20および中間部材40の位置決めを容易に行うことができ、それらの取り付けにかかる作業性を向上させることができる。
【0060】
(5)シーリング材の機能を有する中間部材40を設けるようにしたために、各プレート42,43の間から中空部分41の外部へのオイル漏れや中間部材40とテンショナ20との間から外部へのオイル漏れを防止することができ、内燃機関10の再始動時においてテンショナ20に吸入されるオイルを好適に確保することができる。
【0061】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・バーリング45に加えて、あるいは代えて、挿通孔44の周縁をプレート43側から円筒状に突出させた形状のバーリングを形成するようにしてもよい。同構成によれば、内燃機関10への中間部材の取り付けに際して、新たに形成したバーリングを内燃機関10のねじ穴18に係合させることによって、中間部材の内燃機関10に対する位置決めを容易に行うことができる。
【0062】
・中間部材のバーリングを省略してもよい。
・上記実施の形態では、被覆層L2を有するプレート42を用いることによって中間部材にシーリング材としての機能を持たせるようにした。これに代えて、図11および図12に示すように、中間部材50の各プレート52,53間とプレート52のテンショナ20(図12)側の面とにそれぞれ弾性材料(例えばニトリルゴム)によって形成されたシール部材56,57を設けることによって、中間部材50にシーリング材としての機能を持たせるようにしてもよい。なお図11は中間部材50の側面構造を示しており、図12は図11のC−C線に沿った中間部材50の断面構造を示している。
【0063】
・中間部材の形状は、中空形状であれば、2枚のプレートを合わせた形状に限らず、任意に変更可能である。例えば、プレートと凹部を有するブロックとを合わせた形状や、少なくとも一方に凹部が形成された2つのブロックを合わせた形状等を採用することができる。
【0064】
・中間部材の中空部分の容積を、オイル貯留室32における中間部材を除いた部分の容積より小さく設定してもよい。
・中間部材に代えて、図13に示すように、オイル貯留室32の内部に延びるパイプ60,61を、テンショナ20のオイル吸入口27およびオイル供給路31の連通口31aに取り付けるようにしてもよい。こうしたパイプ60,61を設けることにより、内燃機関10の運転時においては、オイルポンプから吐出されたオイルが「オイル供給路31→パイプ60→オイル貯留室32→パイプ61→テンショナ20のオイル吸入口27」といった順に流れてテンショナ20に吸入されるようになる。
【0065】
図14に、内燃機関10の凹部17をテンショナ20側から見た図を示す。なお図14には、鉛直方向を併せて示している。
同図14に示すように、オイル吸入口27に連通されたパイプ61の開口位置が上記オイル供給路31に連通されたパイプ60の開口位置より鉛直方向の下方になるように、各パイプ60,61が設けられている。具体的には、上記パイプ60はオイル貯留室32において鉛直方向の上方に向けて延びるようにオイル供給路31に取り付けられている。また上記パイプ61はオイル貯留室32において鉛直方向の下方に向けて延びるようにオイル吸入口27に取り付けられている。
【0066】
こうしたパイプ60,61を設けることにより、内燃機関10の運転が停止されたときにおいてオイル貯留室32内のオイルの一部がパイプ60およびオイル供給路31を通じて流れ落ちるとはいえ、オイル貯留室32にオイルが残留して貯留される。そして、内燃機関10が再始動されると、オイル貯留室32に貯留されているオイルがパイプ61を介してテンショナ20(図13)に吸入されるようになる。これにより、内燃機関10の再始動時においてテンショナ20のシリンダ22に空気が吸入されることが抑制されて、同テンショナ20の性能低下が抑制される。
【0067】
ここで上記構成にあっては、内燃機関10の運転停止時に、オイル貯留室32のオイル液面が上記パイプ60の開口部の下端(図中に一点鎖線で示すレベル)まで低下する。また、オイル貯留室32のオイル液面がパイプ61の開口部の上端(図中に二点差線で示すレベル)より低くなると、内燃機関10の再始動時においてテンショナ20に空気が吸入されるようになる。そのため上記構成では、パイプ60,61の形状およびオイル貯留室32の形状の設定を通じて、内燃機関10の再始動時において上記テンショナ20に空気を吸入させることなく同テンショナ20に吸入させることのできるオイル量の上限値を設定することが可能である。
【0068】
したがって上記構成にあっては、そうしたオイル量として十分な量を確保することができるように、パイプ60,61の形状およびオイル貯留室32の形状を設定すればよい。これにより、内燃機関10の再始動時におけるテンショナ20のシリンダ22への空気吸入、ひいては同テンショナ20の性能低下を適正に抑制することができる。
【0069】
また上記構成によれば、パイプ60,61が設けられない構成と比較して、オイル貯留室32の形状や、同オイル貯留室32における連通口31aの形成位置、並びにテンショナ20におけるオイル吸入口27の形成位置を内燃機関10の再始動時におけるオイル不足を回避するべく設定する際における設定自由度を格段に高くすることができる。
【0070】
したがって上記構成によっても、内燃機関10の再始動時におけるテンショナ20の性能低下を適正に抑制することが可能でありながら、オイル貯留室32の形状を高い自由度をもって設定することができる。
【0071】
・上記実施の形態にかかるオイル通路構造は、内燃機関に取り付けられたオイル圧作動機器に対して同内燃機関の内部に形成されたオイル供給路およびオイル貯留室を通じてオイルを供給するためのオイル通路構造であれば、その構成を適宜変更した上で適用することができる。そうしたオイル圧作動機器としては、タイミングチェーンの張力を調整するテンショナの他、タイミングベルトの張力を調整するテンショナや、バルブクリアランスを調整するラッシュアジャスタ等が挙げられる。
【0072】
(第2の実施の形態)
以下、本発明にかかる内燃機関のオイル通路構造を具体化した第2の実施の形態について、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
本実施の形態と第1の実施の形態とは、オイル貯留室におけるオイル供給路の開口位置と中間部材の形状とが異なる。
ここでは先ず、オイル貯留室におけるオイル供給路の開口位置について説明する。
【0074】
図15に、内燃機関におけるテンショナの取り付け部分に形成される凹部の側面構造を示す。なお図15には鉛直方向を併せて示している。
図15に示すように、内燃機関70のシリンダブロック70aの内部にはオイル供給路71が形成されている。このオイル供給路71は、オイルギャラリを介してオイルポンプ(共に図示略)に連通されるとともに、内燃機関70に形成された凹部17において開口している。なお、オイル供給路71は、上記凹部17における鉛直方向の上方位置において開口している。また、オイル供給路71は上記凹部17から水平方向に延びる形状に形成されている。
【0075】
ここで、内燃機関70の運転が停止されると、前記オイル貯留室32におけるオイル液面が上記オイル供給路71の連通口71aにおける鉛直方向の下端(同図中に一点鎖線で示すレベル)まで低下するようになる。一方、同図中に破線で示すように、テンショナ20のオイル吸入口27は上記連通口71aより若干上方の位置において開口している。そのため、なんら対策が打たれない状態で内燃機関70が再始動されると、テンショナ20の内部に空気が吸入されて、同テンショナ20の性能が著しく低下してしまう。
【0076】
この点をふまえて本実施の形態では、内燃機関70の運転停止時においてオイル貯留室32の内部に十分な量のオイルを貯留しておくために、同内燃機関70に中間部材が設けられている。
【0077】
図16に、テンショナ20の取り付け部分における内燃機関70の断面構造を示す。
同図16に示すように、本実施の形態では、内燃機関70の凹部17を塞ぐようにテンショナ20が取り付けられる。これにより内燃機関70とテンショナ20との間にオイル貯留室32が区画形成される。そして、内燃機関70とテンショナ20との間には中間部材80が設けられている。
【0078】
次に、上記中間部材80の形状について説明する。
図17に上記中間部材80の側面構造を示し、図18に図17の矢印D方向から見た中間部材80の側面構造を示す。
【0079】
図17および図18に示すように、中間部材80は平板形状に形成されている。また中間部材80には貫通口81が形成されている。さらに、中間部材80の縁部には2つの挿通孔82が形成されており、それら挿通孔82には、バーリング加工を通じて、その周縁を円筒状に突出させた形状のバーリング83が形成されている。
【0080】
図19に、テンショナ20の取り付け部分における内燃機関70の断面構造の一部を拡大して示す。
同図19に示すように、内燃機関70にあって上記中間部材80の各挿通孔82に対応する位置にはねじ穴18が形成されている。また、テンショナ20の上記各挿通孔82に対応する位置には挿通孔28が形成されている。そして、上記ねじ穴18には、テンショナ20の挿通孔28および中間部材80の挿通孔82を通してねじ19が螺着される。このようにねじ穴18にねじ19を螺着することにより、テンショナ20が中間部材80ともども内燃機関70に取り付けられる。
【0081】
この取り付けに際しては、中間部材80の挿通孔82に形成されたバーリング83がテンショナ20の挿通孔28に係合される。そのため、バーリング83が形成されない場合と比較して、テンショナ20および中間部材80を内燃機関70に取り付ける際に、テンショナ20に対する中間部材80の位置決め、ひいては内燃機関70に対するテンショナ20および中間部材80の位置決めを容易に行うことができる。
【0082】
なお、中間部材80としては、鋼板等によって形成したベース材の表面に弾性材料(例えばニトリルゴム)によって被覆層を形成したものが採用されている。この被覆層は、中間部材80が内燃機関70に取り付けられた際に、シーリング材として機能する。具体的には、この被覆層によって、内燃機関70と中間部材80との間やテンショナ20と中間部材80との間からのオイル漏れが防止される。
【0083】
こうした中間部材80を設けることにより、内燃機関70の運転時においては、オイルポンプから吐出されたオイルが「オイル供給路71(図16)→中間部材80の貫通口81→テンショナ20の凹部26→テンショナ20のオイル吸入口27」といった順に流れてテンショナ20に吸入される。
【0084】
図20に、内燃機関70の凹部17の側面構造を示す。なお図20には、鉛直方向を併せて示している。
同図20に示すように、中間部材80の貫通口81(図中に破線で示す)は、上記凹部17における鉛直方向の下端に近い位置に形成されている。
【0085】
ここで、中間部材80の貫通口81はテンショナ20の凹部26およびオイル吸入口27を介して同テンショナ20のシリンダ22に連通されている(図16参照)。そのため、オイル貯留室32のオイルが中間部材80の貫通口81からテンショナ20側に流出することはない。一方、本実施の形態では、中間部材80の貫通口81がオイル貯留室32におけるオイル供給路71の連通口71aより鉛直方向の下方位置に形成されている。そのため、内燃機関70の運転が停止されたときに、オイル貯留室32内のオイルの一部がオイル供給路71を通じて外部に流れ落ちるとはいえ、同オイル貯留室32の内部にオイルが残留してこれが貯留されるようになる。
【0086】
そして、内燃機関70が再始動されると、オイル貯留室32に貯留されているオイルが中間部材80の貫通口81を介してテンショナ20に吸入されるようになる。これにより、内燃機関70の再始動時においてテンショナ20に空気が吸入されることが抑制されて、同テンショナ20の性能低下が抑制される。
【0087】
本実施の形態にかかるオイル通路構造にあっては、内燃機関70の運転停止時に、オイル貯留室32のオイル液面が上記オイル供給路71の連通口71aの下端(図20中に一点鎖線で示すレベル)まで低下する。また、オイル貯留室32のオイル液面が中間部材80の貫通口81の上端(同図中に二点差線で示すレベル)より低くなると、内燃機関70の再始動時においてテンショナ20に空気が吸入されるようになる。したがって本実施の形態では、中間部材80における貫通口81の形成位置、オイル貯留室32の形状、および同オイル貯留室32における連通口71aの形成位置の設定を通じて、内燃機関70の再始動時に上記テンショナ20に空気を吸入させることなく同テンショナ20に吸入させることのできるオイル量の上限値を設定することが可能である。
【0088】
この点をふまえて本実施の形態では、そうしたオイル量として十分な量が確保することができるように、上記貫通口81の形成位置や、オイル貯留室32の形状、ならびに連通口71aの形成位置が設定されている。そのため、内燃機関70の再始動時におけるテンショナ20への空気吸入、ひいては同テンショナ20の性能低下が適正に抑制される。
【0089】
また、本実施の形態によれば、中間部材80における貫通口81の形成位置の設定を通じて、テンショナ20に形成されたオイル吸入口27の位置によらずに、オイル貯留室32からテンショナ20にオイルが吸入されるオイル吸入口の鉛直方向位置を設定することができる。そのため、中間部材80が設けられない構造と比較して、そうしたオイル吸入口の位置設定についての自由度を格段に高くすることができる。さらには、これによって内燃機関70の再始動時にオイル不足を招くことのないようにオイル貯留室32の形状や同オイル貯留室32における連通口71aの形成位置を設定する上で、それら形状や形成位置の設定についての自由度を格段に高くすることができる。
【0090】
したがって、内燃機関70の再始動時におけるテンショナ20の性能低下を適正に抑制することが可能でありながら、オイル貯留室32の形状を高い自由度をもって設定することができるようになる。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)内燃機関70とテンショナ20との間に中間部材80を介設し、同中間部材80における連通口71aより鉛直方向の下方位置に、オイル貯留室32とテンショナ20とを連通する貫通口81を形成するようにした。そのため、内燃機関70の再始動時におけるテンショナ20の性能低下を適正に抑制することが可能でありながら、オイル貯留室32の形状を高い自由度をもって設定することができる。
【0092】
(2)中間部材80の挿通孔82にバーリング83を形成するようにした。そのため、テンショナ20および中間部材80を内燃機関10に取り付ける際に、内燃機関10に対するテンショナ20および中間部材80の位置決めを容易に行うことができ、それらの取り付けにかかる作業性を向上させることができる。
【0093】
(3)シーリング材の機能を有する中間部材80を設けるようにしたために、内燃機関70と中間部材80との間やテンショナ20と中間部材80との間からのオイル漏れを防止することができ、内燃機関70の再始動時においてテンショナ20に吸入されるオイルを好適に確保することができる。
【0094】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・各バーリング83の少なくとも一方を、挿通孔82の周縁を内燃機関70側に円筒状に突出させた形状のバーリングに変更するようにしてもよい。同構成によれば、内燃機関70への中間部材の取り付けに際して、突出方向を変更したバーリングを内燃機関70のねじ穴18に係合させることによって、中間部材の内燃機関70に対する位置決めを容易に行うことができる。
【0095】
・中間部材のバーリングを省略してもよい。
・上記実施の形態では、被覆層を有する中間部材を用いることによって同中間部材にシーリング材としての機能を持たせるようにした。これに代えて、図21および図22に示すように、中間部材90の両面にそれぞれ弾性材料(例えばニトリルゴム)によって形成されたシール部材96,97を設けることによって、中間部材90にシーリング材としての機能を持たせるようにしてもよい。なお図21は中間部材90の側面構造を示しており、図22は図21のE−E線にそった中間部材90の断面構造を示している。
【0096】
・上記実施の形態にかかるオイル通路構造は、内燃機関に取り付けられたオイル圧作動機器に対して同内燃機関の内部に形成されたオイル供給路およびオイル貯留室を通じてオイルを供給するためのオイル通路構造であれば、その構成を適宜変更した上で適用することができる。そうしたオイル圧作動機器としては、タイミングチェーンの張力を調整するテンショナの他、タイミングベルトの張力を調整するテンショナや、バルブクリアランスを調整するラッシュアジャスタ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態にかかるオイル通路構造が適用される内燃機関についてその概略構成を示す略図。
【図2】テンショナの断面構造を示す断面図。
【図3】第1の実施の形態にかかるオイル通路構造の概略構成を示す略図。
【図4】凹部の側面構造を示す側面図。
【図5】テンショナの取り付け部分における内燃機関の断面構造を示す断面図。
【図6】図5のA−A線に沿った中間部材の側面構造を示す側面図。
【図7】図6の矢印B方向から見た中間部材の側面構造を示す側面図。
【図8】テンショナの取り付け部分における内燃機関の断面構造の一部を拡大して示す拡大断面図。
【図9】中間部材の断面構造の一部を拡大して示す拡大断面図。
【図10】中間部材の側面構造を示す側面図。
【図11】第1の実施の形態の変形例にかかる中間部材の側面構造を示す側面図。
【図12】図11のC−C線に沿った中間部材の断面構造を示す断面図。
【図13】第1の実施の形態の他の変形例にかかるオイル通路構造の断面構造を示す断面図。
【図14】同変形例における内燃機関の凹部の側面構造を示す側面図。
【図15】本発明を具体化した第2の実施の形態が適用される内燃機関の凹部の側面構造を示す側面図。
【図16】テンショナの取り付け部分における内燃機関の断面構造を示す断面図。
【図17】中間部材の側面構造を示す側面図。
【図18】図17の矢印D方向から見た中間部材の側面構造を示す側面図。
【図19】テンショナの取り付け部分における内燃機関の断面構造の一部を拡大して示す拡大断面図。
【図20】内燃機関の凹部の側面構造を示す側面図。
【図21】第2の実施の形態の変形例にかかる中間部材の側面構造を示す側面図。
【図22】図21のE−E線に沿った中間部材の断面構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0098】
10,70…内燃機関、10a,70a…シリンダブロック、11…吸気カムシャフト、12…排気カムシャフト、13…タイミングチェーン、14…クランクシャフト、15…テンショナ装置、16…テンションレバー、17…凹部、18…ねじ穴、19…ねじ、20…テンショナ、21…本体、22…シリンダ、23…プランジャ、24…スプリング、25…逆止弁、26…凹部、27…オイル吸入口、28…挿通孔、31,71…オイル供給路、31a,71a…連通口、32…オイル貯留室、33…オイルギャラリ、40,50,80,90…中間部材、41…中空部分、42,43,52,53…プレート、42a,43a,81…貫通口、44,82…挿通孔、45,83…バーリング、50…中間部材、56,57,96,97…シール部材、60,61…パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の内部に形成されたオイル供給路を通じて同内燃機関に取り付けられたオイル圧作動機器にオイルを供給するものであり、前記オイル供給路に連通されるとともに前記内燃機関および前記オイル圧作動機器によって区画形成されるオイル貯留室を備える内燃機関のオイル通路構造において、
前記内燃機関と前記オイル圧作動機器との間に中空構造の中間部材が介設され、
前記中間部材の中空部分における前記オイル圧作動機器側の壁部と前記オイル供給路側の壁部とにそれぞれ貫通口が形成されて、それら貫通口を通じて前記オイル貯留室と前記オイル圧作動機器とが連通され、
前記オイル供給路側の壁部の貫通口は前記オイル圧作動機器側の壁部の貫通口より鉛直方向の上方位置に形成される
ことを特徴とする内燃機関のオイル通路構造。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関のオイル通路構造において、
前記中間部材は2枚のプレートを合わせた形状に形成されてなる
ことを特徴とする内燃機関のオイル通路構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の内燃機関のオイル通路構造において、
前記中間部材は前記中空部分の容積が前記オイル貯留室における前記中間部材を除いた部分の容積より大きく設定されてなる
ことを特徴とする内燃機関のオイル通路構造。
【請求項4】
内燃機関の内部に形成されたオイル供給路を通じて同内燃機関に取り付けられたオイル圧作動機器にオイルを供給するものであり、前記オイル供給路に連通されるとともに前記内燃機関および前記オイル圧作動機器によって区画形成されるオイル貯留室を備える内燃機関のオイル通路構造において、
前記内燃機関と前記オイル圧作動機器との間に中間部材が介設され、
同中間部材には、前記オイル貯留室における前記オイル供給路の連通口より鉛直方向の下方位置に、前記オイル貯留室と前記オイル圧作動機器とを連通する貫通口が形成される
ことを特徴とする内燃機関のオイル通路構造。
【請求項5】
前記オイル圧作動機器および前記中間部材に挿通孔がそれぞれ形成されるとともに前記内燃機関にねじ穴が形成され、それら挿通孔を通して前記ねじ穴にねじが螺着されて、前記オイル圧作動機器が前記中間部材ともども前記内燃機関に取り付けられ、
前記中間部材の挿通孔にバーリングが形成される
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関のオイル通路構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関のオイル通路構造において、
前記中間部材は、前記内燃機関と前記オイル圧作動機器との間からのオイル漏れをシールするシーリング材としての機能を有する
ことを特徴とする内燃機関のオイル通路構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関のオイル通路構造において、
前記内燃機関は巻掛伝動部材を介してクランクシャフトからカムシャフトに動力を伝達するものであり、
前記オイル圧作動機器は前記巻掛伝動部材の張力を調整するテンショナである
ことを特徴とする内燃機関のオイル通路構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate