説明

内燃機関のデータ送信装置

【課題】ピストンに設けたセンサで検知された測定データを送信する内燃機関のデータ送信装置において、リード線にかかる応力を低減し、断線を防止できるようにする。
【解決手段】クランク軸と連結されるコンロッド21にピストンピン47を介して回転自在に接続されるピストン18と、ピストン18の所定位置に配置されるセンサ51と、コンロッド21に配置され、センサ51で検知された測定データを送信するテレメータ52と、テレメータ52とセンサ51とを接続するリード線53とを備えた内燃機関のデータ送信装置において、ピストンピン47を支持するピストンピン孔46Bの一端にピストン18に対し回転自在に、他端にピストン18に一体に支持され、それぞれリード線53を支持するコンロッド側ガイド部材82及びピストン側ガイド部材81を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のデータ送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピストンに設けたセンサで検知された測定データを送信する内燃機関のデータ送信装置において、ピストンの挙動を測定するテレメータから上記センサに繋がるリード線を、コンロッドからピストンピンに貫入させ、ピストンピン内に配置したガイドを通して配索したものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の図1では、ピストンピンとピストンピンボスとの相対回転によるリード線の断線を防止するために、ピストンとピストンピンとをボルトで連結して一体化することで、相対回転を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平2−29511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のデータ送信装置では、コンロッド側において、リード線をコンロッド小端部及びピストンピンに径方向から貫入させているため、コンロッド小端部とピストンピンとの相対回転による断線を防止する対策が必要となり、例えば、コンロッド小端部とピストンピンとの揺動による相対回転の角度範囲でリード線の移動を許容するスリットをコンロッド小端部に形成する必要があるが、このような対策を施したとしても、リード線には相対回転による応力が作用し、特にピストンピン内でのリード線の屈曲部では応力が高くなる。このため、リード線にかかる応力を低減し、断線を防止できるようにすることが課題となる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ピストンに設けたセンサで検知された測定データを送信する内燃機関のデータ送信装置において、リード線にかかる応力を低減し、断線を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、クランク軸(20)と連結されるコンロッド(21)にピストンピン(47)を介して回転自在に接続されるピストン(18)と、該ピストン(18)の所定位置に配置されるセンサ(51)と、前記コンロッド(21)に配置され、前記センサ(51)で検知された測定データを送信する送信機(52)と、該送信機(52)と前記センサ(51)とを接続するリード線(53)とを備えた内燃機関のデータ送信装置において、前記ピストンピン(47)を支持するピストンピン孔(46B)の一端に前記ピストン(18)に対し回転自在に、他端に前記ピストン(18)に一体に支持され、それぞれ前記リード線(53)を支持するガイド部材(81,82)を有することを特徴とする。
この構成によれば、ピストンピンを支持するピストンピン孔の一端にピストンに対し回転自在に、他端にピストンに一体に支持され、それぞれリード線を支持するガイド部材を有し、リード線が、ピストンに対して回転自在なガイド部材及び回転不能なガイド部材を介してピストンピンの両端部を通って支持されるため、コンロッドとピストンピンとの相対回転、及び、コンロッドとピストンとの相対回転が生じた場合でも、リード線を保持する両ガイド部材間で相対回転を吸収できる。これにより、リード線に作用する捩じれやせん断の応力を小さくでき、リード線の断線を防止することができる。
【0006】
また、上記構成において、前記ガイド部材(82)と前記コンロッド(21)とを接続して前記ガイド部材(82)と前記コンロッド(21)との相対回転を規制する回転規制部材(98)を有する構成としても良い。
この場合、ガイド部材とコンロッドとを接続してガイド部材とコンロッドとの相対回転を規制する回転規制部材を有し、コンロッドの回転にガイド部材が追従して回転するため、ガイド部材の近傍でのコンロッドに対するリード線の相対回転を規制でき、リード線に作用する応力を小さくできる。
【0007】
また、前記ガイド部材(81,82)は、前記コンロッド(21)との相対回転を規制され、かつ、前記ピストン(18)に対しては相対回転自在に前記ピストンピン孔(46B)の一端に支持され、前記リード線(53)を支持するコンロッド側ガイド部材(82)と、前記ピストンピン孔の他端に前記ピストンと一体に支持され、前記リード線を支持するピストン側ガイド部材(81)とを有する構成としても良い。
この場合、リード線が、コンロッドとの相対回転を規制されるコンロッド側ガイド部材、及び、ピストンと一体のピストン側ガイド部材を介してピストンピンの両端部を通って支持されるため、コンロッドとピストンピンとの相対回転、及び、コンロッドとピストンとの相対回転が生じた場合でも、リード線を保持する両ガイド部材間で相対回転を吸収できる。これにより、リード線に作用する捩じれやせん断の応力を小さくでき、リード線の断線を防止することができる。
【0008】
さらに、前記回転規制部材(98)は、前記コンロッド(21)から延びて前記コンロッド側ガイド部材(82)に連結される線材(83)と、前記コンロッド側ガイド部材(82)に設けられて前記線材(83)と当接して回り止めとなる突起部(95)とを有する構成としても良い。
この場合、コンロッドから延びてコンロッド側ガイド部材に連結される線材と、コンロッド側ガイド部材に設けられて線材と当接して回り止めとなる突起部とを有する回転規制部材によって、簡単な構造でコンロッド側ガイド部材をコンロッドに連動させることができる。
さらにまた、前記突起部(95)は前記線材(83)を挟むように一対で設けられ、これら一対の間に渡されて前記線材(83)を抜け止めするピン(96)を有する構成としても良い。
この場合、突起部及びピンによる簡単な構造で、線材をコンロッド側ガイド部材に対して抜け止めできる。
【0009】
また、前記コンロッド側ガイド部材(82)の回転中心に前記線材(83)が挿入される挿入洞(93)が設けられ、この挿入洞(93)の延長上に前記リード線(53)を通しても良い。
この場合、コンロッド側ガイド部材の回転中心に線材が挿入される挿入洞が設けられ、この挿入洞の延長上にリード線を通すため、挿入洞の一部を利用してリード線を支持でき、リード線の支持構造をシンプルにできる。
また、前記コンロッド側ガイド部材(82)と前記ピストン側ガイド部材(81)との間には、これらの間を渡すリード線支持管(86)が設けられて、該リード線支持管(86)の中を前記リード線(53)が配索される構成としても良い。
この場合、コンロッド側ガイド部材とピストン側ガイド部材との間に設けられるリード線支持管にリード線が配索されるため、リード線を安定して保持でき、リード線の絡まりによる断線を防止できる。
【0010】
さらに、前記リード線支持管(86)は、一端が前記ピストン側ガイド部材(81)に嵌合支持されて、他端が前記コンロッド側ガイド部材(82)に回動可能に支持されても良い。
この場合、リード線支持管は、ピストン側ガイド部材に嵌合支持され、コンロッド側ガイド部材に回動可能に支持され、リード線支持管の移動を防止しつつコンロッド側ガイド部材のリード線支持管に対する回転を許容できるため、リード線に作用する応力を小さくでき、リード線の断線を防止することができる。また、リード線支持管の移動を防止でき、リード線の引っ張りによる断線を防止できる。
【0011】
また、前記ピストン側ガイド部材(81)は、前記ピストンピン孔(46B)に設けられる止め輪(84)を脱着する際の工具避け凹部(46C)に係合するピン(87)によって一体化される構成としても良い。
この場合、通常のピストンが有する止め輪を脱着する際の工具避け凹部を利用してピストン側ガイド部材をピストンに一体化でき、構造をシンプルにできる。
また、前記送信機(52)を前記コンロッド(21)に支持する上下一対の支持ホルダ(64,65)を有し、前記送信機(52)を駆動するバッテリー(54)を、前記送信機(52)の側方で、上下一対の前記支持ホルダ(64,65)で挟んで保持した構成としても良い。
この場合、送信機をコンロッドに支持する上下一対の支持ホルダによって、送信機の側方でバッテリーを支持するため、部品点数を削減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る内燃機関のデータ送信装置では、ピストンピンを支持するピストンピン孔の一端にピストンに対し回転自在に、他端にピストンに一体に支持され、それぞれリード線を支持するガイド部材を有し、リード線が、ピストンに対して回転自在なガイド部材及び回転不能なガイド部材を介してピストンピンの両端部を通って支持されるため、コンロッドとピストンピンとの相対回転、及び、コンロッドとピストンとの相対回転が生じた場合でも、リード線を保持する両ガイド部材間で相対回転を吸収できる。これにより、リード線に作用する捩じれやせん断の応力を小さくでき、リード線の断線を防止することができる。
【0013】
また、コンロッドの回転にガイド部材が追従して回転するため、ガイド部材の近傍でのコンロッドに対するリード線の相対回転を規制でき、リード線に作用する応力を小さくできる。
また、コンロッドとピストンピンとの相対回転、及び、コンロッドとピストンとの相対回転が生じた場合でも、リード線を保持するコンロッド側ガイド部材とピストン側ガイド部材との間で相対回転を吸収できるため、リード線に作用する捩じれやせん断の応力を小さくでき、リード線の断線を防止することができる。
さらに、コンロッドから延びてコンロッド側ガイド部材に連結される線材と、コンロッド側ガイド部材に設けられて線材の回り止めとなる突起部とを有する回転規制部材によって、簡単な構造でコンロッド側ガイド部材をコンロッドに連動させることができる。
【0014】
さらにまた、突起部及びピンによる簡単な構造で、線材をコンロッド側ガイド部材に対して抜け止めできる。
また、コンロッド側ガイド部材の回転中心に線材が挿入される挿入洞の延長上にリード線を通すため、挿入洞の一部を利用してリード線を支持でき、リード線の支持構造をシンプルにできる。
また、コンロッド側ガイド部材とピストン側ガイド部材との間に設けられるリード線支持管によってリード線を安定して保持でき、リード線の絡まりによる断線を防止できる。
また、リード線支持管は、ピストン側ガイド部材に嵌合支持され、コンロッド側ガイド部材に回動可能に支持され、リード線支持管の移動を防止しつつコンロッド側ガイド部材のリード線支持管に対する回転を許容できるため、リード線に作用する応力を小さくでき、リード線の断線を防止することができる。また、リード線支持管の移動を防止でき、リード線の引っ張りによる断線を防止できる。
【0015】
さらに、通常のピストンが有する止め輪を脱着する際の工具避け凹部を利用してピストン側ガイド部材をピストンに一体化でき、構造をシンプルにできる。
また、送信機をコンロッドに支持する上下一対の支持ホルダによって、送信機の側方でバッテリーを支持するため、部品点数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るデータ送信装置が取り付けられたエンジンの断面図である。
【図2】クランク軸、コンロッド及びピストンをエンジンの後方から見た一部破断断面図である。
【図3】データ送信装置が取り付けられたコンロッドの斜視図である。
【図4】データ送信装置が取り付けられたコンロッド及びピストンのエンジンの他側から見た側面図である。
【図5】データ送信装置が取り付けられたコンロッド及びピストンをエンジンの一側から見た側面図である。
【図6】テレメータ及びバッテリーをコンロッドの長手方向から見た一部破断断面図である。
【図7】図6におけるVII−VII断面図である。
【図8】図2におけるピストン周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るデータ送信装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るデータ送信装置が取り付けられたエンジンの断面図である。
図1に示すように、自動二輪車等の車両に搭載されるエンジン10(内燃機関)は、4サイクルの単気筒エンジンであり、クランクケース11と、クランクケース11の前側上部に結合されて前傾しつつ上方に立ち上がるシリンダーブロック12と、シリンダーブロック12の上端に結合されるシリンダーヘッド13と、シリンダーヘッド13の上面を塞ぐように結合されるヘッドカバー14とを備えている。
【0018】
シリンダーヘッド13の後部の吸気口15Aには、エンジン10に供給される空気量を調整する吸気装置16が接続され、シリンダーヘッド13の前部には、排気管(不図示)が接続される排気口15Bが設けられている。吸気装置16には、吸気装置16の吸気通路に燃料を噴射するインジェクター17が設けられている。
【0019】
シリンダーブロック12は、ピストン18が摺動自在に嵌合するシリンダボア19を有し、シリンダボア19の軸線であるシリンダ軸線Cを鉛直よりも前傾させるようにしてクランクケース11に結合されている。クランクケース11内には、エンジン10の幅方向に略水平に延びるクランク軸20が回転自在に支持され、ピストン18は、クランク軸20に直交する向きで連結されるコンロッド21を介してクランク軸20に連結される。
【0020】
エンジン10は、エンジン10の幅方向に並ぶ一対の吸気弁25(片側の吸気弁は不図示)及び一対の排気弁26(片側の排気弁は不図示)を備えた4バルブのダブルオーバーヘッドカムシャフト(DOHC)方式で構成されており、吸気弁25を駆動する吸気カムシャフト31、及び、排気弁26を駆動する排気カムシャフト32をシリンダーヘッド13の上部に備えている。吸気カムシャフト31は吸気カム31Aを有し、排気カムシャフト32は排気カム32Aを有し、各カムシャフト31,32は、クランク軸20に接続されたカムチェーン(不図示)を介して回転駆動される。
【0021】
シリンダーブロック12とシリンダーヘッド13との間には、ピストン18の頂部に臨む燃焼室22が形成されている。シリンダーヘッド13の中央部には、燃焼室22の中央の上部に臨むようにして点火プラグ27が取り付けられている。
シリンダーブロック12の後部には、燃焼室22と吸気口15Aとを連通させる吸気ポート23が形成され、シリンダーブロック12の前部には、燃焼室22と排気口15Bとを連通させる排気ポート24が形成されている。
吸気ポート23は車幅方向に二股に分かれた一対の分岐路23A(片側の分岐路は不図示)を有し、排気ポート24は車幅方向に二股に分かれた一対の分岐路24A(片側の分岐路は不図示)を有し、各分岐路23Aには吸気弁25が設けられ、各分岐路24Aには排気弁26が設けられている。
【0022】
吸気弁25及び排気弁26は、弁体25A,26A及び弁体25A,26Aから延びるバルブステム25B,26Bを有し、バルブステム25B,26Bの上端には吸気カム31A及び排気カム32Aに当接するバルブリフタ33がそれぞれ設けられている。吸気弁25及び排気弁26は、各バルブリフタ33とシリンダーヘッド13との間に設けられた弁ばね34によって常に閉弁方向に付勢されており、吸気カム31A及び排気カム32Aが弁ばね34に抗してバルブリフタ33を押圧することで、所定のタイミングでそれぞれ開弁される。
【0023】
クランク軸20はクランクケース11の前部のクランク室11Aに設けられ、クランクケース11の後部には、変速機室11Bが設けられている。変速機室11Bには、クランク軸20とそれぞれ平行に配置されるメイン軸36、カウンタ軸37、及び、シフトドラム38が設けられている。クランク軸20を含むこれらの軸36、37は、クランク軸20の回転をメイン軸36、カウンタ軸37の順に伝達する歯車伝達機構を構成している。メイン軸36とカウンタ軸37との間には、シフトドラム38の回転によって操作される複数段変速の変速歯車群が跨って配置され、これらによって変速機が構成されている。変速機室11Bの上方には、エンジン10を始動させるセルモーター40が設けられている。
また、クランク軸20の前方には、クランク軸20と平行なバランサ軸39が設けられている。
【0024】
図2は、クランク軸20、コンロッド21及びピストン18をエンジン10の後方から見た一部破断断面図である。
クランク軸20は、クランク室11Aの幅方向の一対の側壁(不図示)にベアリングを介してそれぞれ支持される軸部41,42と、軸部41,42におけるコンロッド21側の端から径方向に突出するクランクウェブ41A,42Aと、クランクウェブ41A,42Aの径方向の端部に圧入され、クランクウェブ41A,42Aを連結するクランクピン43とを備えている。
本実施の形態では、軸部42側がエンジン10の右側(一側)であり、軸部41側がエンジン10の左側(他側)である。
【0025】
コンロッド21は、クランクピン43に連結される大端部21A、ピストン18に連結される小端部21B、及び、クランクウェブ41A,42A間を延びて大端部21Aと小端部21Bとを連結するロッド部21Cとを有している。コンロッド21は、大端部21Aに設けられたベアリング44を介してクランクピン43に対し回転自在に連結されている。
【0026】
ピストン18は、シリンダボア19に摺接する円柱状のピストン本体部45と、コンロッド21に連結される小端部連結部46とを有している。ピストン本体部45の外周面には、ピストンリング(不図示)が嵌め込まれる溝部45Aが形成され、溝部45Aの下方には、ピストン本体部45の外周面に連続して延びるスカート部45Bが設けられている。
小端部連結部46は、ピストン18中央部で小端部21Bを避けるように窪んだ凹部46Aと、小端部連結部46を幅方向に貫通するピストンピン孔46Bとを有している。
ピストン18は、ピストンピン孔46Bに嵌合される円筒状のピストンピン47が小端部21Bに挿通されることで、コンロッド21に対して回転自在に組み付けられる。ここで、ピストンピン47は、小端部21B及びピストンピン孔46Bの両方に対して相対回転可能となるようにクリアランスを有して嵌合されている。また、ピストンピン47、クランクピン43、及び軸部41、42は互いに平行に設けられる。
【0027】
エンジン10には、エンジン10の運転に伴うピストン18の歪みや温度等の挙動を測定するデータ送信装置50が取り付けられている。
データ送信装置50は、ピストン本体部45の溝部45Aの裏側に取り付けられるセンサ51と、センサ51から出力される測定データの信号を増幅して無線信号で送信するテレメータ52(送信機)と、センサ51とテレメータ52とを接続するリード線53と、テレメータ52に電源を供給するバッテリー54と、テレメータ52が発信する無線信号を受信する受信機55(図1)とを備えて構成されている。
図1に示すように、受信機55は、受信アンテナ55A及び受信アンテナ55Aが接続される受信機本体55Bを有し、受信アンテナ55Aは、シリンダボア19の下方に取り付けられ、受信機本体55Bはクランクケース11の外側に配置される。
【0028】
図3は、データ送信装置50が取り付けられたコンロッド21の斜視図である。図4は、データ送信装置50が取り付けられたコンロッド21及びピストン18のエンジン10の他側から見た側面図である。図5は、データ送信装置50が取り付けられたコンロッド21及びピストン18をエンジン10の一側から見た側面図である。
図2〜図5に示すように、コンロッド21の軸方向の中間部には、テレメータ52及びバッテリー54が固定されている。
コンロッド21は、内側に凹んだ肉抜き部60Aを有し大端部21A及び小端部21Bの開口面と略平行に延びる一対の肉抜き面60と、肉抜き面60に略直交する一対の平坦面61とを有している。すなわち、肉抜き面60はコンロッド21の幅方向の面であり、平坦面61はコンロッド21の前後方向の面である。
【0029】
テレメータ52は、他側の肉抜き面60に取り付けられる第1テレメータ52Aと、一側の肉抜き面60に取り付けられる第2テレメータ52Bとを備え、コンロッド21を挟んで対向するように一対で設けられている。テレメータ52から受信機55へ無線信号を送信する送信アンテナ49は、大端部21Aの前側の外周面に貼り付けられ、受信アンテナ55Aの近傍に位置している。
バッテリー54は、前側の平坦面61に取り付けられる第1バッテリー54Aと、後側の平坦面61に取り付けられる第2バッテリー54Bとを備え、コンロッド21を挟んで対向するように一対で設けられている。
【0030】
図6は、図4において、テレメータ52及びバッテリー54をコンロッド21の長手方向から見た一部破断断面図である。
図3〜図6に示すように、第1テレメータ52A及び第2テレメータ52Bは、コンロッド21に沿って延びるブロック状に形成されており、テレメータ本体56A,56Bを、収容ケース57A,57Bにそれぞれ収容して構成されている。第1テレメータ52Aのテレメータ本体56Aは、センサ51からの信号を増幅するアンプ(不図示)と、このアンプで増幅した信号を無線信号で受信機55に送信する送信部(不図示)とを一体に備えており、第1テレメータ52Aは第2テレメータ52Bよりも厚みが大きくなっている。
第2テレメータ52Bのテレメータ本体56Bは、センサ51からの信号を増幅するアンプ(不図示)を有し、このアンプで増幅された信号は、テレメータ本体56A,56Bを繋ぐ配線58を介して第1テレメータ52Aに送信され、第1テレメータ52Aの上記送信部によって受信機55に送信される。このため、第2テレメータ52Bを小型かつ軽量に構成できる。
【0031】
第1テレメータ52A及び第2テレメータ52Bは、それぞれ2チャンネルの信号を処理可能なテレメータである。すなわち、テレメータ52は、計4チャンネルの信号を処理可能であり、テレメータ52には、4つのセンサ51を同時に取り付けることができる。本実施の形態では、センサ51は1個が取り付けられており、このセンサ51は熱電対であり、センサ51によってピストン18の任意の位置の温度を測定できる。
収容ケース57A,57Bにおける前後方向の各側面59,59には、コンロッド21の長手方向に沿うように並んで複数の雌ねじ部59Aが形成されている。また、収容ケース57A,57Bの前後方向の幅は、コンロッド21の前後方向の幅、すなわち、平坦面61,61間の距離と略同等に形成されている。
【0032】
図7は、図6におけるVII−VII断面図である。
図3〜図7に示すように、第1バッテリー54A及び第2バッテリー54Bは、コンロッド21に沿って延びるブロック状に形成されており、円柱状のバッテリー本体63A,63Bを、テレメータ52を支持する支持ホルダ64,65にそれぞれ収容して構成されている。
支持ホルダ64,65は、収容ケース57A,57Bの側面59,59に当接する板部66と、バッテリー本体63A,63Bの外形状に沿うように板部66から膨出する膨出部67とを有している。
【0033】
板部66において膨出部67の両側方の部分には、板部66を貫通するねじ孔66Aが複数形成されており、支持ホルダ64,65は、ねじ孔66Aに挿通され雌ねじ部59Aに締結されるねじ68によって収容ケース57A,57Bにそれぞれ連結される。
すなわち、テレメータ52及びバッテリー54は、断面略矩形のロッド部21Cの周囲を囲むように一体に配置され、支持ホルダ64,65を収容ケース57A,57Bに締結するねじ68の締結力によってコンロッド21を前後から挟み込むことでコンロッド21に固定されている。
【0034】
また、支持ホルダ64,65は、それぞれバッテリー本体63A,63Bの長手方向に上下2分割して上下一対で形成されており、上ケース64A,65Aと、下ケース64B,65Bとを有している。これにより、片方のケースを外すことで、バッテリー本体63A,63Bを容易に取り出して交換等できるため、作業性が良い。
また、支持ホルダ64,65の側面には、ねじ68を挿通する際の逃げ部を兼ねる肉抜き孔69が複数形成されており、支持ホルダ64,65を軽量化できる。
【0035】
図6及び図7に示すように、支持ホルダ64,65の板部66には、コンロッド21側に突出する段部66Bが形成されており、段部66Bは、コンロッド21の平坦面61に形成された溝部61Aに嵌る。このように、段部66Bが溝部61Aに嵌ることで、支持ホルダ64,65はコンロッド21の長手方向に位置決めされている。このため、バッテリー54及びテレメータ52をコンロッド21へ強固に固定できる。
さらに、板部66には、コンロッド21側に突出する複数の位置決めピン70(図7)が設けられており、位置決めピン70は、平坦面61に形成された各穴61Bに嵌る。このように、位置決めピン70が穴61Bに嵌ることで、支持ホルダ64,65はコンロッド21に位置決めされている。このため、バッテリー54及びテレメータ52をコンロッド21へ強固に固定できる。
【0036】
図8は、図2におけるピストン18周辺の拡大図である。
図8に示すように、リード線53は、テレメータ52側からピストン18側に延び、ピストンピン47の内部を通るように配索されており、ピストン18周辺には、リード線53を保持するリード線保持構造80が形成されている。
リード線保持構造80は、ピストンピン孔46B内の一端に設けられるコンロッド側ガイド部材82(ガイド部材)と、ピストンピン孔46B内の他端に固定されるピストン側ガイド部材81(ガイド部材)と、コンロッド側ガイド部材82とコンロッド21とを接続する針金状のガイドワイヤ83(回転規制部材,線材)とを備えて構成されている。
【0037】
ピストンピン孔46Bには、ピストンピン孔46Bの長さよりも短く形成されたピストンピン47が嵌合されており、ピストンピン孔46Bの両端の内周面には、環状のクリップ係合溝75が形成されている。各クリップ係合溝75には、ピストンピン47をピストンピン孔46Bの軸方向に係止するC型リング状のサークリップ84(止め輪)が係合される。また、図4に示すように、小端部連結部46においてピストンピン孔46Bの端の周縁部には、サークリップ84を着脱する際に使用する工具が挿入される一対の工具避け凹部46Cが形成されている。
【0038】
ピストンピン47は、ピストン18用に製造されたピストンピンをその軸方向に短く加工して形成されたものであり、サークリップ84とピストンピン47の各端との間にはスペースが確保され、このスペースにピストン側ガイド部材81及びコンロッド側ガイド部材82が配置される。このため、ピストンピン47を短く加工するだけで容易にピストン側ガイド部材81及びコンロッド側ガイド部材82を配置することができる。
【0039】
図4及び図8に示すように、ピストン側ガイド部材81は、ピストンピン孔46Bの他端側を塞ぐように設けられる円板状ガイド85と、円板状ガイド85の中心からコンロッド側ガイド部材82側に延びるリード線支持管86とを有している。詳細には、リード線支持管86は、円板状ガイド85に形成される突出部85Aに圧入されて回転不能に固定され、リード線支持管86の内部は、円板状ガイド85の中央に形成された導出孔85Bを介してピストンピン孔46Bの他端側の外側に連通している。
【0040】
円板状ガイド85は、放射状に径方向に延びる一対の穴部85Cを有し、穴部85Cには、円板状ガイド85の外周側に突出するようにばね(不図示)によって付勢されるプランジャピン87(ピン)が挿入されている。そして、円板状ガイド85は、ピストンピン47の端とサークリップ84との間に挟まれることで軸方向に固定されるとともに、プランジャピン87が工具避け凹部46Cに係合することで、ピストンピン孔46B内で回転不能に固定されている。このように、元々設けられている工具避け凹部46Cを利用することで、ピストン側ガイド部材81の回転を簡単な構造で規制できる。
【0041】
図5及び図8に示すように、コンロッド側ガイド部材82は、ピストンピン孔46Bの一端側の内周面に固定されるリング状のベアリング支持部材88と、ベアリング支持部材88に支持されるボールベアリング89と、ボールベアリング89に支持されるガイド筒90とを備えて構成される。
ベアリング支持部材88は、その外周面がピストンピン孔46Bに圧入されることで固定され、その中央部には、ボールベアリング89のアウターレース89Aが圧入されるベアリング支持孔88Aを有している。ベアリング支持部材88は、ピストンピン47の端とサークリップ84との間に挟まれることで軸方向に固定されている。
【0042】
ガイド筒90は、断面円形のパイプ状に形成されており、ボールベアリング89のボール89Bを介してボールベアリング89のインナーレース89Cに支持される回転部91と、回転部91に連続してピストン側ガイド部材81側に延びるパイプ連結部92と、軸方向に貫通する挿入洞93とを有している。
回転部91の外周面には、回転部91の外端部よりも小径に形成された段部91Aが形成されており、インナーレース89Cの内周面は段部91Aに嵌合している。また、ガイド筒90の外周面においてボールベアリング89よりも内側には、回転部91の軸方向の移動を規制するクリップ94が固定されている。
ガイド筒90は、回転部91がボールベアリング89によって支持されているため、ピストンピン孔46B内でピストン18に対して回転自在である。
【0043】
パイプ連結部92の挿入洞93には、リード線支持管86の端部が挿入され、パイプ連結部92と挿入洞93とは、互いに相対回転可能なクリアランスを有して嵌合されている。すなわち、ガイド筒90は、ピストン18に固定されたリード線支持管86に対し、相対回転する。パイプ連結部92は、回転部91よりも小径に形成される。
挿入洞93は、ピストンピン孔46Bの軸線に一致するようにガイド筒90の回転中心に設けられる。また、回転部91において挿入洞93よりも径方向外側の位置には、回転部91を軸方向に貫通する一対の導入孔91Bが形成されている。パイプ連結部92において導入孔91Bの近傍には、パイプ連結部92を径方向に貫通する孔92Aが形成されている。
【0044】
図3〜図8に示すように、ガイドワイヤ83は、コンロッド21の後面側の第2バッテリー54Bの上ケース65Aの上縁からピストン18側へ延び、ガイド筒90に接続されている。
第2バッテリー54Bの上ケース65Aの上縁には、小端部21B側に突出するガイド片76が設けられており、ガイドワイヤ83の一端83Aは、ガイド片76の下部と上ケース65Aの上縁との間に係合されて固定されている。ガイドワイヤ83は、ガイド片76に沿って小端部21Bの近傍まで延びた後、略直角に屈曲してピストンピン47と略平行にガイド筒90側へ延び、ガイド筒90の下方でガイド筒90の中心の挿入洞93に向けて屈曲して小端部連結部46の側方を延び、その後、ピストンピン47と略平行に屈曲し、ガイドワイヤ83の他端83Bは挿入洞93に挿入される。
【0045】
ガイドワイヤ83の他端83Bは、挿入洞93内に挿入されており、ガイド筒90に一体化されている。さらに、ガイドワイヤ83の他端83Bは、ガイド筒90の外端面においてガイドワイヤ83の外周面を挟むように一対で設けられる突起部95,95によってもガイド筒90に固定されている。突起部95,95の間には、ピン96(抜け止めするピン)が渡されており、ガイドワイヤ83はピン96によって突起部95,95からの抜けを防止される。
すなわち、コンロッド21とガイド筒90とは、ガイドワイヤ83によって接続されており、コンロッド21がピストンピン47を回転軸として回転する場合には、ガイド筒90はコンロッド21と一体に回転する。つまり、ガイドワイヤ83及び突起部95,95は、ガイド筒90とコンロッド21との相対回転を規制する回転規制部材98を構成している。
【0046】
図5に示すように、リード線53は第2テレメータ52Bの上部から引き出され、ガイドワイヤ83に適宜固定されてガイドワイヤ83を伝ってガイド筒90へ延び、導入孔91Bの一方に挿通されてピストンピン47の一端の内部に挿入される。そして、ピストンピン47に挿入されたリード線53は、ガイド筒90の孔92Aから挿入洞93に挿入され、その後、ピストン側ガイド部材81のリード線支持管86及び導出孔85Bを通ってピストンピン孔46Bの他端側の外側に導出され、センサ51に接続される。リード線53は、ばたつきを抑えるために、固定具、固定紐あるいは接着剤、固定チューブ等の任意の固定手段によりガイドワイヤ83又はピストン18に固定される。
【0047】
ここで、エンジン10が運転された場合におけるリード線保持構造80の作用について図1、図5及び図8を参照して説明する。
ピストン18の往復運動に伴ってクランク軸20が回転されると、コンロッド21の大端部21Aは軸部41,42を中心にして円運動をすることになり、この円運動に伴って、コンロッド21は、矢印X(図1)で示すように、小端部21Bを中心にして前後に揺動する振り子のように回転する。
【0048】
コンロッド21が回転すると、ガイドワイヤ83で接続されているガイド筒90はコンロッド21と共に回転し、往復運動するピストン18のピストンピン孔46B内でピストン18に対して相対回転する。このとき、リード線53には、ガイド筒90の回転に伴って捩じれがその全長に亘って生じることになるが、この捩じれは、主として、センサ51とガイド筒90との間の区間で生じ、捩じれ量は、ガイド筒90の回転角に対応した小さい量になる。
また、リード線53を、ピストンピン47の径方向に貫通させずに、ピストンピン47の端部から挿入してピストンピン47内部を通すため、ピストンピン47の回転によるせん断力がリード線53に作用することがなく、リード線53の負荷を低減できる。
【0049】
また、リード線53をピストンピン孔46Bに通す部分において、リード線53をガイド筒90で支持するとともに、ガイド筒90をコンロッド21と一体に回転するように構成したため、リード線53をピストンピン孔46Bに通す部分でリード線53がピストンピン孔46Bに接触して摩擦が発生することがなく、リード線53に対する負荷を低減できる。
【0050】
さらに、リード線53が挿入洞93及びリード線支持管86に挿通されてピストンピン孔46Bの中心を通るため、リード線53の捩じれを小さくするとともに振れを小さくすることができる。
また、リード線53をピストンピン47の端部から挿入してピストンピン47内部を通してセンサ51に接続するため、ピストン18に対してピストンピン47を固定したり、小端部21Bに対してピストンピン47を固定したりする必要がなく、ピストン18の動作に影響することなくリード線保持構造80を設けることができる。このため、ピストン18の挙動をデータ送信装置50でより正確に測定できる。
【0051】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、ピストンピン47を支持するピストンピン孔46Bの一端にピストン18に対し回転自在に、他端にピストン18に一体に支持され、それぞれリード線53を支持するコンロッド側ガイド部材82及びピストン側ガイド部材81を有し、リード線53が、ピストン18に対して回転自在なコンロッド側ガイド部材82及び回転不能なピストン側ガイド部材81を介してピストンピン47の両端部を通って支持されるため、コンロッド21とピストンピン47との相対回転、及び、コンロッド21とピストン18との相対回転が生じた場合でも、リード線53を保持するコンロッド側ガイド部材82とピストン側ガイド部材81との間で相対回転を吸収できる。これにより、リード線53に作用する捩じれやせん断の応力を小さくでき、リード線53の断線を防止することができる。
【0052】
また、コンロッド側ガイド部材82とコンロッド21とを接続してコンロッド側ガイド部材82とコンロッド21との相対回転を規制する回転規制部材98を有し、コンロッド21の回転にコンロッド側ガイド部材82が追従して回転するため、コンロッド側ガイド部材82の近傍でのコンロッド21に対するリード線53の相対回転を規制でき、リード線53に作用する応力を小さくできる。
また、リード線53が、コンロッド21との相対回転を規制されるコンロッド側ガイド部材82、及び、ピストン18と一体のピストン側ガイド部材81を介してピストンピン47の両端部を通って支持されるため、コンロッド21とピストンピン47との相対回転、及び、コンロッド21とピストン18との相対回転が生じた場合でも、リード線53を保持するコンロッド側ガイド部材82とピストン側ガイド部材81との間で相対回転を吸収できる。これにより、リード線53に作用する捩じれやせん断の応力を小さくでき、リード線53の断線を防止することができる。
【0053】
さらに、コンロッド21から延びてコンロッド側ガイド部材82に連結されるガイドワイヤ83と、コンロッド側ガイド部材82に設けられてガイドワイヤ83と当接して回り止めとなる突起部95,95とを有する回転規制部材98によって、簡単な構造でコンロッド側ガイド部材82をコンロッド21に連動させることができる。
さらにまた、突起部95,95及びピン96による簡単な構造で、ガイドワイヤ83をコンロッド側ガイド部材82に対して抜け止めできる。
また、コンロッド側ガイド部材82のガイド筒90の回転中心にガイドワイヤ83が挿入される挿入洞93が設けられ、この挿入洞93の延長上にリード線53を通すため、挿入洞93の一部を利用してリード線53を支持でき、リード線53の支持構造をシンプルにできる。
【0054】
また、コンロッド側ガイド部材82とピストン側ガイド部材81との間に設けられるリード線支持管86にリード線53が配索されるため、リード線53を安定して保持でき、リード線53の絡まりによる断線を防止できる。
また、リード線支持管86は、ピストン側ガイド部材81に嵌合支持され、コンロッド側ガイド部材82に回動可能に支持され、リード線支持管86の移動を防止しつつコンロッド側ガイド部材82のリード線支持管86に対する回転を許容できるため、リード線53に作用する応力を小さくでき、リード線53の断線を防止することができる。また、リード線支持管86の移動を防止でき、リード線53の引っ張りによる断線を防止できる。
【0055】
また、ピストン18が有するサークリップ84を脱着する際の工具避け凹部46Cを利用してピストン側ガイド部材81をピストン18に一体化でき、構造をシンプルにできる。
さらに、テレメータ52をコンロッド21に支持するそれぞれ上下一対の支持ホルダ64,65によってテレメータ52の側方でバッテリー54を支持するため、部品点数を削減できる。
【0056】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、センサ51は熱電対であるものとして説明したが、これに限らず、センサは歪ゲージや振動センサ等であっても良い。
また、上記実施の形態では、1本のリード線53が設けられる構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数のリード線をガイド筒90に通しても良い。2本のリード線をガイド筒90に通す場合、一対の導入孔91Bのそれぞれにリード線を通すことができる。3本以上のリード線を用いる場合、リード線の本数に応じた数の導入孔をガイド筒90に設けることができ、或いは、複数のリード線を1つの導入孔91Bに通しても良い。
また、上記実施の形態では、データ送信装置50は車両のエンジン10に設けられるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、データ送信装置50はピストンを備えたエンジンに設けることができ、例えば汎用機器や船舶のエンジンに設けても良い。
【符号の説明】
【0057】
10 エンジン(内燃機関)
18 ピストン
20 クランク軸
21 コンロッド
46B ピストンピン孔
46C 工具避け凹部
47 ピストンピン
50 データ送信装置
51 センサ
52 テレメータ(送信機)
53 リード線
54 バッテリー
64,65 支持ホルダ
81 ピストン側ガイド部材(ガイド部材)
82 コンロッド側ガイド部材(ガイド部材)
83 ガイドワイヤ(回転規制部材,線材)
84 サークリップ(止め輪)
86 リード線支持管
87 プランジャピン(ピン)
93 挿入洞
95,95 突起部(回転規制部材)
96 ピン(抜け止めするピン)
98 回転規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸(20)と連結されるコンロッド(21)にピストンピン(47)を介して回転自在に接続されるピストン(18)と、該ピストン(18)の所定位置に配置されるセンサ(51)と、前記コンロッド(21)に配置され、前記センサ(51)で検知された測定データを送信する送信機(52)と、該送信機(52)と前記センサ(51)とを接続するリード線(53)とを備えた内燃機関のデータ送信装置において、
前記ピストンピン(47)を支持するピストンピン孔(46B)の一端に前記ピストン(18)に対し回転自在に、他端に前記ピストン(18)に一体に支持され、それぞれ前記リード線(53)を支持するガイド部材(81,82)を有することを特徴とする内燃機関のデータ送信装置。
【請求項2】
前記ガイド部材(82)と前記コンロッド(21)とを接続して前記ガイド部材(82)と前記コンロッド(21)との相対回転を規制する回転規制部材(98)を有することを特徴とする請求項1記載の内燃機関のデータ送信装置。
【請求項3】
前記ガイド部材(81,82)は、前記コンロッド(21)との相対回転を規制され、かつ、前記ピストン(18)に対しては相対回転自在に前記ピストンピン孔(46B)の一端に支持され、前記リード線(53)を支持するコンロッド側ガイド部材(82)と、前記ピストンピン孔の他端に前記ピストンと一体に支持され、前記リード線を支持するピストン側ガイド部材(81)とを有することを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関のデータ送信装置。
【請求項4】
前記回転規制部材(98)は、前記コンロッド(21)から延びて前記コンロッド側ガイド部材(82)に連結される線材(83)と、前記コンロッド側ガイド部材(82)に設けられて前記線材(83)と当接して回り止めとなる突起部(95)とを有することを特徴とする請求項3記載の内燃機関のデータ送信装置。
【請求項5】
前記突起部(95)は前記線材(83)を挟むように一対で設けられ、これら一対の間に渡されて前記線材(83)を抜け止めするピン(96)を有することを特徴とする請求項4記載の内燃機関のデータ送信装置。
【請求項6】
前記コンロッド側ガイド部材(82)の回転中心に前記線材(83)が挿入される挿入洞(93)が設けられ、この挿入洞(93)の延長上に前記リード線(53)を通したことを特徴とする請求項5記載の内燃機関のデータ送信装置。
【請求項7】
前記コンロッド側ガイド部材(82)と前記ピストン側ガイド部材(81)との間には、これらの間を渡すリード線支持管(86)が設けられて、該リード線支持管(86)の中を前記リード線(53)が配索されることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の内燃機関のデータ送信装置。
【請求項8】
前記リード線支持管(86)は、一端が前記ピストン側ガイド部材(81)に嵌合支持されて、他端が前記コンロッド側ガイド部材(82)に回動可能に支持されることを特徴とする請求項7記載の内燃機関のデータ送信装置。
【請求項9】
前記ピストン側ガイド部材(81)は、前記ピストンピン孔(46B)に設けられる止め輪(84)を脱着する際の工具避け凹部(46C)に係合するピン(87)によって一体化されることを特徴とする請求項3から8のいずれかに記載の内燃機関のデータ送信装置。
【請求項10】
前記送信機(52)を前記コンロッド(21)に支持する上下一対の支持ホルダ(64,65)を有し、前記送信機(52)を駆動するバッテリー(54)を、前記送信機(52)の側方で、上下一対の前記支持ホルダ(64,65)で挟んで保持したことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の内燃機関のデータ送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−207642(P2012−207642A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75896(P2011−75896)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】