説明

内燃機関のポート構造

【課題】内燃機関のポート構造において、構造の複雑化を招くことなくスムースな排気の排出を可能とする。
【解決手段】排気ポート41の上流部を平行な2面を有する略四角断面形状とする一方、燃焼室12から続くスロート部41aを円形断面形状とし、排気ポート41の上流部とスロート部41aとを滑らかな面により連続させていることで、排気流の剥離を抑制して吸気流量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気バルブの開放時に燃焼ガスを燃焼室から排出する排気ポートに適用される内燃機関のポート構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、一般的な内燃機関の吸気ポート構造を表す概略図、図10−1から図11−2は、内燃機関の吸気ポート構造の設計思想を表す概略図、図12は、従来の内燃機関の吸気ポート構造を表す概略図である。
【0003】
一般的な内燃機関の吸気ポート構造において、図9に示すように、燃焼室101の上部に吸気ポートの下流端部が連通し、ここに吸気バルブ103が設けられている。従って、この吸気バルブ103を開閉することで、吸気ポート102の吸気流を燃焼室101に導入可能となっている。このような吸気ポート103の設計思想において、高タンブル比と高流量係数を両立させることが高効率なエンジン性能を得ることとなる。
【0004】
即ち、吸気バルブ103が開放されたときに吸気ポート102の吸気流が燃焼室101に導入される。このとき、吸気ポート102の上面部側を流れる吸気流104は、直線的に燃焼室101に流れ込み、強いタンブル流105を形成する必要がある。一方、吸気ポート102の下面部側を流れる吸気流106は、タンブル流に干渉しないようにその壁面に沿って燃焼室101に流す必要がある。即ち、吸気ポート102のスロート部107は、上面部側をなだらかな曲線形状に形成することで高タンブル比が可能となり、下面部側でその屈曲角度θを大きく設定することで高流量係数が可能となる。
【0005】
ところで、シリンダヘッドに形成された吸気ポートに対して、その下流端部に燃焼室に連通するスロート部を形成する場合、シリンダヘッドの下面からスロートカッタを用いてこのスロート部を形成する。図10−1に示すように、お椀形状をなすスロートカッタ201を用い、吸気ポート202の軸線203に対して所定角度傾斜した吸気バルブの軸線204に沿って切削加工してスロート部205を形成する。また、図10−2に示すように、山形形状をなすスロートカッタ211を用い、吸気ポート212の軸線213に対して所定角度傾斜した吸気バルブの軸線214に沿って切削加工してスロート部215を形成する。
【0006】
ところが、図10−1に示すように、お椀形状をなすスロートカッタ201を用いてスロート部205を形成すると、吸気ポート202におけるスロート部205の上面部にデッドボリュームが形成され、吸気流に乱れが生じてタンブル流が弱くなってしまう。一方、図10−2に示すように、山形形状をなすスロートカッタ211を用いてスロート部215を形成すると、吸気ポート212におけるスロート部215の下面部の屈曲角度θが小さくなり、吸気流が壁面から剥離して流量が低下してしまう。
【0007】
吸気ポートから燃焼室に流入する吸気の流量を増加させる方法として、吸気ポートの径を大きくすることが知られている。ところが、図11−1に示すように、円形断面の吸気ポート301を太くして上方に移行すると、この吸気ポート302の上面部側を流れる吸気流303は、より下方に直線的に燃焼室に流れ込むこととなり、タンブル流の形成位置が下方となって流量が低下してしまう。また、図11−2に示すように、円形断面の吸気ポート311を太くして下方に移行すると、この吸気ポート312の下面部の屈曲角度が小さくなり、ここを流れる吸気流313は壁面から剥離して流量が低下してしまう。
【0008】
このような吸気ポートの設計思想から、最大流量を低下させずにタンブル流の強さを強くするようにした技術が、各特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された内燃機関の吸気ポート構造では、図12に示すように、吸気ポート401と燃焼室402とを吸気バルブ403により開閉自在とし、この吸気ポート401のタンブル流側半部401aを他半部401bよりも拡幅する略三角断面形状とし、吸気ポート401からの吸気流がタンブルを促進するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平04−137224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上述した特許文献1に記載された従来の内燃機関の吸気ポート構造にあっては、吸気ポート401が略三角断面形状であるため、円形断面形状に対して実質的に断面積が減少してしまい、燃焼室402に導入される流量が低下してしまう。所定の流量を確保するためには、吸気ポート401の幅を大きくしたり、高さを高くする必要がある。しかし、吸気ポートを形状変更すると、前述したように、吸気流の乱れを生じて流量の低下を阻止することはできない。
【0011】
また、吸気ポート401は下流端部が吸気バルブ403により閉止可能とするため、吸気バルブ403の形状に合わせて円形断面形状とする必要がある。そのため、吸気ポート401は、三角断面形状から途中で円形断面形状にその形状を移行させなければならない。しかし、三角断面形状をなす吸気ポート401は他半部401aが鋭角形状であるため、円形断面形状に滑らかに連続させることが困難となる。そのため、吸気ポート401は、三角断面形状部から円形断面形状部への接続部にねじれが生じ、角部や段差部により吸気流をスムースに流すことができず、燃焼室402へ流動する吸気の流量が低下してしまう。
【0012】
本発明はこのような問題を解決するためのものであり、構造の複雑化を招くことなくスムースな排気の排出を可能とした内燃機関のポート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、その目的を達成するために、本発明の内燃機関のポート構造は、燃焼室に開閉バルブを介して連通可能な内燃機関のポート構造において、排気ポートを平行な2面を有する略四角断面形状とする一方、燃焼室へのスロート部を円形断面形状とし、前記排気ポートと前記スロート部とを滑らかな面により連続させたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の内燃機関のポート構造では、前記排気ポートと前記スロート部とが、ほぼ同じ幅に形成されたことを特徴としている。
【0015】
本発明の内燃機関のポート構造では、前記排気ポートは、高さより幅が大きく設定されたことを特徴としている。
【0016】
本発明の内燃機関のポート構造では、前記排気ポートは、上面部及び下面部と左右側面部とを有し、少なくとも前記左右側面部の2面が平行をなし、前記上面部と左右側面部とが左右上曲面部により連続されると共に、下面部と前記左右側面部とが左右下曲面部により連続され、前記上曲面部の曲率半径は前記下曲面部の曲率半径よりも小さく設定されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の内燃機関のポート構造によれば、排気ポートを平行な2面を有する略四角断面形状とする一方、スロート部を円形断面形状とし、この排気ポートとスロート部とを滑らかな面により連続させたので、構造の複雑化を招くことなく、スムースな燃焼室からの排気の排出を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の参考例1に係る内燃機関のポート構造を吸気ポートに適用した概略断面図である。
【図2】図2は、参考例1の吸気ポートを表す概略図である。
【図3】図3は、参考例1の吸気ポートの加工方法を表す断面図である。
【図4】図4は、参考例1の吸気ポートにおけるタンブル比と流量の関係を表すグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施例1に係る内燃機関のポート構造を排気ポートに適用した概略断面図である。
【図6】図6は、本発明の参考例2に係る内燃機関のポート構造を吸気ポートに適用した平面図である。
【図7】図7は、図6のVII−VII断面図である。
【図8】図8は、図6のVIII−VIII断面図である。
【図9】図9は、一般的な内燃機関の吸気ポート構造を表す概略図である。
【図10−1】図10−1は、内燃機関の吸気ポート構造の設計思想を表す概略図である。
【図10−2】図10−2は、内燃機関の吸気ポート構造の設計思想を表す概略図である。
【図11−1】図11−1は、内燃機関の吸気ポート構造の設計思想を表す概略図である。
【図11−2】図11−2は、内燃機関の吸気ポート構造の設計思想を表す概略図である。
【図12】図12は、従来の内燃機関の吸気ポート構造を表す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、この発明に係る内燃機関のポート構造の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【参考例1】
【0020】
図1は、本発明の参考例1に係る内燃機関のポート構造を吸気ポートに適用した概略断面図、図2は、参考例1の吸気ポートを表す概略図、図3は、参考例1の吸気ポートの加工方法を表す断面図、図4は、参考例1の吸気ポートにおけるタンブル比と流量の関係を表すグラフである。
【0021】
参考例1では、本発明の内燃機関のポート構造を吸気ポートに適用して説明する。参考例1の内燃機関の吸気ポート構造において、図1及び図2に示すように、吸気ポート11は、その中心線C1が燃焼室12の中心線C2に対して所定角度傾斜するようにシリンダヘッド13に設けられている。吸気バルブ14は、吸気ポート11の中心線C1に対して所定の角度をもった中心線C3に沿ってシリンダヘッド13に軸方向移動自在に支持されている。そして、吸気ポート11の燃焼室12に臨む端縁部には、この吸気バルブ14が離着座する環状のシートリング15が圧入されている。
【0022】
また、吸気ポート11は、その上流部が略四角断面(長方形断面)形状をなしている。即ち、この吸気ポート11の断面形状にて、上面部21と下面部22との2面が平行をなすと共に、左側面部23と右側面部24との2面が平行をなしている。そして、上面部21の両端部と左右側面部23,24の各上端部とが左右上曲面部25,26により連続されると共に、下面部22の両端部と左右側面部23,24の各下端部とが左右下曲面部27,28により連続されている。この場合、上曲面部25,26の曲率半径R1は下曲面部27,28の曲率半径R2よりも小さく設定されている。
【0023】
一方、吸気ポート11は、その下流部、つまりスロート部11aが略円形断面形状をなしている。そして、吸気ポート11はその上流部から下流部のスロート部11aにかけて、四角断面形状を円形断面形状に徐々に変化させ、断面形状が滑らかなに移行するように両者が連続している。この場合、吸気ポート11は、スロート部11aに対して上面部21のラインよりも、下面部22のラインのほうが短いため、断面の曲率半径が大きく変化するとその面がしわになり、エッジ部が形成されてしまう。本参考例では、前述したように、吸気ポート11は、上面部21側の上曲面部25,26の曲率半径R1よりも、下面部22側の下曲面部27,28の曲率半径R2の方が大きく設定されている。そのため、大きな曲率半径R2の下曲面部27,28から円形断面への変更は容易なものとなり、吸気ポート11は、その上流部から下流のスロート部11aにかけて滑らかな面で連続させることができる。
【0024】
また、吸気ポート11の上流部とスロート部11aとは、両者の幅がほぼ等しくなるように設定することが望ましい。それにより、吸気ポート11の吸気流がこのスロート部11aを通ってスムースに燃焼室12に流入させることができる。更に、この吸気ポートの上流部は、高さHより幅Wのほうが大きくなるように長方形に設定することが望ましい。それにより、所定の大きさの流路断面積を確保する一方で、吸気ポート11の上面位置を低く設定して強いタンブル流を確保することができると共に、吸気ポート11の下面位置を高く設定して燃焼室12へと続く壁面の屈曲角度θを大きくすることで、吸気流の剥離を抑制して吸気流量を増加させることができる。また、吸気ポート11は、上面部21側の上曲面部25,26の曲率半径R1が下面部22側の下曲面部27,28の曲率半径R2より小さく設定されているため、平面領域を多く確保することができ、この点でも吸気流量を増加させてタンブルを効率よく高めることができる。
【0025】
シートリング15は、燃焼室12の中央部に近い領域の内周面16aが吸気ポート11の流路に沿って傾斜すると共に、燃焼室12の外周部に近い領域の内周面16bが燃焼室12に向かって拡開するように形成されている。即ち、吸気ポート11のスロート部11aからシートリング15の内周面16aは滑らかに接続されており、吸気流のエネルギーロスを最小限とし、タンブル流が弱まらないように構成されている。一方、吸気ポート11のスロート部11aからシートリング15の内周面16bは滑らかに接続されており、この接続部付近での吸気流の剥離を低減し、エネルギーロスが最小限となるように、その屈曲角度θが大きくなるように、所定の曲率半径R3で燃焼室12に向かって拡開させてある。この曲率半径R3は、吸気ポート11の代表内径をDとすると、例えば、D/10以上D/2以下の範囲内で設定することが好ましい。
【0026】
このように構成された吸気ポート11のスロート部11a及びシートリング15は、その内周面16a,16bが複数のテーパ加工によって近似的な曲面として形成される。以下に、その加工方法を説明する。
【0027】
図3に示すように、第1の工程では、シートカッタ31を吸気バルブ14の中心線C3に沿って所定量進め、シートリング15の内周面16a,16bを切削加工する。第2の工程では、スロートカッタ32を吸気バルブ14の中心線C3に対して吸気ポート11の中心線C1側に所定角度α傾斜させた中心線C4に沿って所定量進め、シートリング15の内周面16a,16b及び吸気ポート11のスロート部11aを加工する。
【0028】
シートカッタ31は、シートリング15の内周面16a,16bを円錐形状に切削加工することで、内周面16aが燃焼室12の中央部に向かって傾斜するように加工されると共に、内周面16bが燃焼室12の外周部に向かって屈曲角度θに拡開するように加工される。また、スロートカッタ32は、シートリング15の内周面16a,16bとスロート部1a,16bの境界部分が滑らかに連続するように切削加工することで、内周面16bが所定の曲率半径R3に加工され、この曲率半径R3は複数のテーパ加工によって近似的な曲面として形成される。
【0029】
ここで、本参考例の内燃機関の吸気ポート構造の作用について説明する。図1に示すように、吸気バルブ14が開弁すると、ピストンの下降動作によって燃焼室12に負圧が生じ、吸入空気が吸気ポート11を通り、バルブシート15を介して燃焼室12内に導入さ
れる。
【0030】
本参考例では、吸気ポート11を四角断面形状とすると共に、円形断面形状をなすスロート部11aと滑らかに連続させている。そのため、ポート上ラインとポート下ラインの位置を変更することなく、流路断面積を大きく確保することができ、吸気ポート11の上面部21近傍を流れる吸気流は、スムースに燃焼室12に流入することとなり、強いタンブルを低下させることなく、所定流量を確保することができる。
【0031】
また、四角断面形状をなす吸気ポート11は、下面部22側の曲率半径R2を大きく形成し、円形断面形状をなすスロート部11aに滑らかに接続させると共に、シートリング15の内周面16bを所定の屈曲角度θで、且つ、曲率半径R3で形成している。そのため、吸気ポート11の下面部22とスロート部11aとの接続部にしわが発生することはなく、吸気ポート11の下面部22近傍を流れる吸気流は、その壁面から剥離せずにスムースに燃焼室12に流入することとなり、流量を増加することができる。
【0032】
本参考例の吸気ポート構造にあっては、吸気ポート11の四角断面形状及び斜めスロートにより高タンブル化及び高流量係数を両立して高効率な吸気ポート構造を実現できる。即ち、図4のグラフに示すように、小さい黒丸は、従来の円形断面形状を有する吸気ポートにて、ポート角度、ポート径、ポート高さなどを変えてタンブル比と流量を測定したデータであり、タンブル比が高くなると流量が低下する傾向を表している。この場合、従来は、タンブル比と流量が中間位置で両立(大きい黒丸)する吸気ポート構造を採用している。一方、本参考例の吸気ポート構造では、従来の吸気ポート構造と比べてタンブル成分のエネルギーロスが少なくなると共に、吸気の流れの剥離を抑制できるため、図4にて白丸で示すように、高タンブル流と高流量とを両立することができ、高効率な吸気ポートを実現できる。
【0033】
このように参考例1の内燃機関の吸気ポート構造にあっては、吸気ポート11の上流部を平行な2面を有する略四角断面形状とする一方、燃焼室12へのスロート部11aを円形断面形状とし、吸気ポート11の上流部とスロート部11aとを滑らかな面により連続させている。
【0034】
従って、略四角断面形状を有する吸気ポート11により所定の大きさの流路断面積を確保することができる。これにより、吸気ポート11の上面部21の近傍を流れる吸気流はスロート部11aを通して燃焼室12に流入することとなり、強いタンブル流を形成することができる。また、吸気ポート11の下面部22の近傍を流れる吸気流はスロート部11aを通して燃焼室12に流入することとなり、この壁面の屈曲角度θを大きくすることで、吸気流の剥離を抑制して吸気流量を増加させることができる。
【0035】
燃焼室12へ導入する吸気流量を低下させることなくタンブル流を強くすることができ、燃焼室12での燃料と空気のミキシングが良くなり、混合気の燃焼を促進して燃焼効率を高めることができる。そして、この燃焼効率の向上により低中速トルクを向上することができ、内燃機関の出力を向上することができる。
【0036】
また、吸気ポート11における上面部21と下面部22、左右側面部23,24をそれぞれ平行とし、上面部21と左右側面部23,24とを左右上曲面部25,26により連続させ、下面部22と左右側面部23,24とを左右下曲面部27,28により連続させ、上曲面部25,26の曲率半径Rを下曲面部27,28の曲率半径R2よりも小さく設定している。
【0037】
従って、吸気ポート11の上面部21側では、平面領域を多く確保することで、吸気流量を増加させてタンブルを効率よく高めることができ、下面部22側では、円形断面形状のスロート部11aと容易に段差なく滑らかに連続させることができ、吸気流量を増加させて燃焼を改善することができる。
【0038】
更に、吸気ポート11のスロート部11aからシートリング15にかけて、燃焼室12側から吸気バルブ14の中心線C3に沿ってシートカッタ31により加工する共に、吸気バルブ14の中心線C2に対して吸気ポート11の中心線C1側に所定角度α傾斜させた軸線C4に沿ってスローカッタ32により加工している。従って、シートリング15の内周面16bをなるべく大きな曲率半径R3で形成することができ、吸気ポート11の下面部22近傍を流れる吸気流は、その壁面から剥離せずにスムースに燃焼室12に流入することとなり、流量を増加することができる。
【実施例1】
【0039】
図5は、本発明の実施例1に係る内燃機関のポート構造を排気ポートに適用した概略断面図である。なお、前述した参考例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0040】
実施例1では、本発明の内燃機関のポート構造を排気ポートに適用して説明する。実施例1の内燃機関の排気ポート構造において、図5に示すように、排気ポート41は、その中心線C5が燃焼室12の中心線C2に対して所定角度傾斜するように設けられている。そして、排気バルブ42は、排気ポート41の中心線C5に対して所定の角度をもった中心線C6に沿って軸方向移動自在に支持されおり、排気ポート41の燃焼室12に臨む端縁部には、排気バルブ42が離着座するシートリング43が圧入されている。
【0041】
この排気ポート41は、その上流部が略四角断面形状をなしており、上面部51と下面部52の2面が平行をなすと共に、左側面部53と右側面部54の2面が平行をなしている。そして、上面部51と左右側面部53,54が左右上曲面部55,56により連続されると共に、下面部52と左右側面部53,54が左右下曲面部57,58により連続されている。この場合、上曲面部55,56の曲率半径は下曲面部57,58の曲率半径よりも小さく設定されている。
【0042】
一方、排気ポート41は、その下流部、つまりスロート部41aが略円形断面形状をなしている。そして、排気ポート41はその上流部から下流部のスロート部41aにかけて、四角断面形状を円形断面形状に徐々に変化させ、断面形状が滑らかなに移行するように両者が連続している。
【0043】
また、シートリング43は、燃焼室12の中央部に近い領域の内周面44aが排気ポート41の流路に沿って傾斜すると共に、燃焼室12の外周部に近い領域の内周面44bが燃焼室12に向かって拡開するように形成されている。即ち、この排気ポート41のスロート部41aは、前述した吸気ポート11のスロート部11aと同様に、シートカッタ及びスロートカッタにより切削加工される。
【0044】
従って、排気バルブ42が開弁すると、ピストンの上昇動作によって燃焼室12内の燃焼ガスがバルブシート43を介して排気ポート41に排出される。本実施例では、排気ポート41のスロート部41aにて内側の曲率半径R5が大きく設定されているため、燃焼室12から排気ポート41の下面部52に流れる排気流は、スムースに燃焼室12から排出されることと排気流量を増大させることができる。
【0045】
このように実施例1の内燃機関の排気ポート構造にあっては、排気ポート41の上流部を平行な2面を有する略四角断面形状とする一方、燃焼室12から続くスロート部41aを円形断面形状とし、排気ポート41の上流部とスロート部41aとを滑らかな面により連続させている。従って、略四角断面形状を有する排気ポート41により所定の大きさの流路断面積を確保することができると共に、スロート部41aの曲率半径R5を大きく設定することができ、排気流の剥離を抑制して吸気流量を増加させることができる。
【参考例2】
【0046】
図6は、本発明の参考例2に係る内燃機関のポート構造を吸気ポートに適用した平面図、図7は、図6のVII−VII断面図、図8は、図6のVIII−VIII断面図である。
【0047】
参考例2では、本発明の内燃機関のポート構造を分岐型の吸気ポートに適用して説明する。参考例2の内燃機関の吸気ポート構造において、図6乃至図8に示すように、吸気ポート61は分岐型、所謂、サイアミーズタイプのポート形状であって、1つの入口部62に対して集合部63が形成され、集合部63の途中から2つに分かれて分岐部64a,64bが形成され、各分岐部64a,64bに2つのスロート部65a,65bが形成されている。そして、この吸気ポート61は、その中心線C1が燃焼室66の中心線C2に対して所定角度傾斜するようにシリンダヘッド67に設けられている。分岐部64a,64bに設けられた吸気バルブ68は、吸気ポート61の中心線C1に対して所定の角度をもった中心線C3に沿って軸方向移動自在に支持されている。そして、吸気ポート61における各分岐部64a,64bの燃焼室12に臨む端縁部には、各吸気バルブ68が離着座する環状のシートリング69が圧入されている。
【0048】
また、吸気ポート61は、集合部63及び分岐部64a,64bが略四角断面(長方形断面)形状をなしている。即ち、この吸気ポート11の断面形状にて、集合部63は2つの四角断面が対向する辺で一体に連続した形状であり、分岐部64a,64bは集合部63の各四角断面が独立して分岐した形状となっている。その各四角断面形状は、上面部71a,71bと下面部72a,72bとの2面が平行をなすと共に、左側面部73a,73bと右側面部74a,74bとの2面が平行をなしている。そして、上面部71a,71bの両端部と左右側面部73a,73b,74a,74bの各上端部とが左右上曲面部75a,75b,76a,76bにより連続されると共に、下面部72a,72bの両端部と左右側面部73a,73b,74a,74bの各下端部とが左右下曲面部77a,77b,78a,78bにより連続されている。この場合、上曲面部75a,75b,76a,76bの曲率半径R1は下曲面部77a,77b,78a,78bの曲率半径R2よりも小さく設定されている。
【0049】
そして、吸気ポート61は、スロート部65a,65bが略円形断面形状をなしており、分岐部64a,64bからスロート部65a,65bにかけて、四角断面形状を円形断面形状に徐々に変化させ、断面形状が滑らかなに移行するように両者が連続している。この場合、吸気ポート61は、上面部71a,71b側の曲率半径R1よりも、下面部72a,72b側の曲率半径R2の方が大きく設定されているため、四角断面から円形断面への変更は容易であり、吸気ポート61は、分岐部64a,64bからスロート部65a,65bにかけて滑らかな面で連続させることができる。
【0050】
一方、シートリング69は、燃焼室66の中央部に近い領域の内周面70aが吸気ポート61の流路に沿って傾斜すると共に、燃焼室66の外周部に近い領域の内周面70bが燃焼室66に向かって拡開するように形成されている。即ち、この吸気ポート61のスロート部65a,65b及びシートリング69は、前述した参考例1と同様に、その内周面70a,70bが複数のテーパ加工によって近似的な曲面として形成されている。
【0051】
このように参考例2の内燃機関の吸気ポート構造にあっては、吸気ポート61を、集合部63の途中から2つに分かれた分岐部64a,64bを有するものとし、分岐部64a,64bを平行な2面を有する略四角断面形状とする一方、スロート部65a,65bを円形断面形状とし、両者を滑らかな面により連続させている。
【0052】
従って、略四角断面形状を有する吸気ポート61により所定の大きさの流路断面積を確保することができる。これにより、吸気ポート61の上面部71a,71bの近傍を流れる吸気流はスロート部65a,65bを通して燃焼室66に流入することとなり、強いタンブル流を形成することができる。また、吸気ポート61の下面部72a,72bの近傍を流れる吸気流はスロート部65a,65bを通して燃焼室12に流入することとなり、この壁面70bの屈曲角度θを大きくすることで、吸気流の剥離を抑制して吸気流量を増加させることができる。その結果、燃焼室66へ導入する吸気流量を低下させることなくタンブル流を強くすることができ、燃焼室66での燃料と空気のミキシングが良くなり、混合気の燃焼を促進して燃焼効率を高めることができる。そして、この燃焼効率の向上により低中速トルクを向上することができ、内燃機関の出力を向上することができる。
【0053】
なお、上述した説明において、各ポート11,41,61の上流部を略四角断面形状とし、上面部21,51,71a,71bと下面部22,52,72a,72bを平行とすると共に、左側面部23,53,73a,73bと右側面部24,54,74a,74bを平行としたが、少なくとも左側面部23、53,73a,73bと右側面部24,54,74a,74bの2面が平行であればよく、上下面部21,22,51,5271a,71b,72a,72bは平行でなくても良い。
【0054】
また、上述した説明において、内燃機関の排気ポート構造は、内燃機関の形態に左右されるものではなく、参考例1のように、2バルブエンジンの分岐なしの各ポートに適用してもよく、参考例2のように、4バルブエンジンの二股に分岐した排気ポートに適用しても良い。また、燃料を吸気ポートに噴射するポート噴射エンジンや、燃料を直接燃焼室に噴射する筒内噴射エンジンに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、この発明に係る内燃機関のポート構造は、略四角断面形状から円形断面形状に滑らかな面により連続させるようにしたものであり、排気ポートに適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
11 吸気ポート
11a スロート部
12 燃焼室
13 シリンダヘッド
14 吸気バルブ
15 シートリング
16a,16b 内周面
21 上面部
22 下面部
23 左側面部
24 右側面部
25,26 上曲面部
27,28 下曲面部
31 シートカッタ
32 スロートカッタ
41 排気ポート
42 排気バルブ
43 シートリング
61 吸気ポート
63 集合部
64a,64b 分岐部
65a,65b スロート部
66 燃焼室
67 シリンダヘッド
68 吸気バルブ
69 シートリング
70a,70b 内周面
71a,71b 上面部
72a,72b 下面部
73a,74b 左側面部
74a,74b 右側面部
75a,75b,76a,76b 上曲面部
77a,77b,78a,78b 下曲面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に開閉バルブを介して連通可能な内燃機関のポート構造において、排気ポートを平行な2面を有する略四角断面形状とする一方、燃焼室へのスロート部を円形断面形状とし、前記排気ポートと前記スロート部とを滑らかな面により連続させたことを特徴とする内燃機関のポート構造。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関のポート構造において、前記排気ポートと前記スロート部とが、ほぼ同じ幅に形成されたことを特徴とする内燃機関のポート構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の内燃機関のポート構造において、前記排気ポートは、高さより幅が大きく設定されたことを特徴とする内燃機関のポート構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の内燃機関のポート構造において、前記排気ポートは、上面部及び下面部と左右側面部とを有し、少なくとも前記左右側面部の2面が平行をなし、前記上面部と左右側面部とが左右上曲面部により連続されると共に、下面部と前記左右側面部とが左右下曲面部により連続され、前記上曲面部の曲率半径は前記下曲面部の曲率半径よりも小さく設定されたことを特徴とする内燃機関のポート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−247270(P2011−247270A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176222(P2011−176222)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【分割の表示】特願2008−236308(P2008−236308)の分割
【原出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】