説明

内燃機関の制御装置

【課題】欠歯を有するロータによりクランク角度を求めつつ内燃機関のトルクを精度良く求める。
【解決手段】クランク角センサの出力信号に基づいて、クランク角で30度回転するのに要した時間をサンプルデータとして出力する出力部と、連続して出力される所定数のサンプルデータに基づいてクランク角速度を算出する角速度算出部と、所定数のサンプルデータよりも以前に出力されたサンプルデータを用いてクランク角速度を算出する比較用角速度算出部と、角速度算出部にて算出されるクランク角速度と、比較用角速度算出部にて算出されるクランク角速度と、を比較することでトルクを算出し、且つ、このトルクをクランク角で30度回転するごとに順次複数回算出し、複数回算出されたトルクの平均値をトルクとするトルク算出部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のクランク角を検出するために、クランクシャフトにたとえば10度毎に歯が形成されると共に基準位置検出用にたとえば1箇所または数箇所の欠歯を形成したロータを備えることがある。そして、たとえばカム軸が1回転する毎に出力する判別信号を組み合わせることで、クランク角を得ることができる。また、たとえば10度毎に出力される信号を、たとえば30度毎に出力される信号に変換することがある。この30度毎に出力される信号は、ロータの欠歯部とその前後において実際の値からずれるという特性がある。
【0003】
ここで、圧縮上死点付近の30度クランク角度の経過時間と、圧縮上死点後90度付近の30度クランク角度の経過時間と、に基づいてトルクの変動量を求める技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、クランク角90度区間の所要時間に基づいて、燃焼状態を判定する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
さらに、ハイブリッドシステムにおいてエンジントルクを算出する技術が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
特に、ハイブリッドシステムにおいては、30度クランク角度における経過時間の検出を高精度に行うことが要求される。しかし、ロータの欠歯部とその前後において実際の値からずれる特性があるため、30度クランク角度における経過時間の検出を高精度に行うことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−281006号公報
【特許文献2】特開2008−057490号公報
【特許文献3】特開2005−343458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、欠歯を有するロータによりクランク角度を求めつつ内燃機関のトルクを精度良く求めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために本発明による内燃機関の制御装置は、
内燃機関のクランクシャフトに連動して回転するロータに所定のクランク角度毎に歯を形成し且つ該歯の少なくとも1つを欠くことにより欠歯を形成形し、前記ロータが回転しているときにおいて前記歯が通過するごとに信号を出力するクランク角センサを備えた内燃機関の制御装置において、
前記クランク角センサの出力信号に基づいて、クランク角で30度回転するのに要した時間をサンプルデータとして出力する出力部と、
連続して出力される所定数のサンプルデータに基づいてクランク角速度を算出する角速度算出部と、
前記所定数のサンプルデータよりも以前に出力されたサンプルデータを用いてクランク角速度を算出する比較用角速度算出部と、
前記角速度算出部にて算出されるクランク角速度と、前記比較用角速度算出部にて算出されるクランク角速度と、を比較することでトルクを算出し、且つ、このトルクをクランク角で30度回転するごとに順次複数回算出し、複数回算出されたトルクの平均値を前記内燃機関のトルクとするトルク算出部と、
を備える。
【0010】
欠歯及びその前後の歯がクランク角センサを通過するときに出力部から出力されるサンプルデータには誤差が含まれる。角速度算出部は、所定数のサンプルデータに基づいて、該所定数のサンプルデータが出力された区間におけるクランク角速度を算出する。このクランク角速度は、所定数のサンプルデータが出力された区間における平均値ともいえる。所定数は、たとえば内燃機関が有する気筒数に応じて変更することができる。この所定数は2以上の値である。
【0011】
そして、角速度算出部により算出されるクランク角速度と、比較用角速度算出部にて算出されるクランク角速度と、を比較することで、クランク角加速度を算出することができ、このクランク角加速度に基づいてトルクを算出することができる。ここで、トルクを算出するときに用いるクランク角速度は、所定数(すなわち複数)のサンプルデータに基づいて算出されている。このため、欠歯及びその前後において出力される誤差を含んだサンプルデータを用いてクランク角速度を算出したとしても、その誤差の影響が小さくなる。すなわち、トルクの算出精度を高めることができる。また、トルクをクランク角で30度回転するごとに順次複数回算出し、複数回算出されたトルクの平均値を内燃機関のトルクとすることで、前回に燃焼が行われた気筒のトルク変動の影響を軽減することができる。
【0012】
なお、4気筒の内燃機関においては、前記所定数は3つであってもよい。すなわち、クランク角度で90度回転するのに要した時間に基づいてクランク角速度を算出してもよい。そうすると、欠歯の影響を小さくすることができると共に、前の気筒の燃焼の影響を受け難くなるため、クランク角速度の算出精度を高めることができる。
【0013】
また、6気筒の内燃機関においては、前記所定数は4つであってもよい。すなわち、クランク角度で120度回転するのに要した時間に基づいてクランク角速度を算出してもよい。そうすると、欠歯の影響を小さくすることができると共に、前の気筒の燃焼の影響を受け難くなるため、クランク角速度の算出精度を高めることができる。
【0014】
8気筒の内燃機関においては、前記所定数は3つであってもよい。すなわち、クランク角度で90度回転するのに要した時間に基づいてクランク角速度を算出してもよい。そうすると、欠歯の影響を小さくすることができると共に、前の気筒の燃焼の影響を受け難くなるため、クランク角速度の算出精度を高めることができる。
【0015】
また、6気筒または8気筒の内燃機関においては、
前記比較用角速度算出部は、トルクを算出する対象となっている気筒よりも前にトルクを算出する対象となった複数の気筒を比較気筒として、該比較気筒の夫々において連続して出力された所定数のサンプルデータに基づいてクランク角速度を算出し、
前記トルク算出部は、前記比較気筒の数を前記内燃機関の運転状態に応じて設定することができる。
【0016】
たとえば、以前に失火が発生している場合には、該失火が発生した気筒において出力さ
れたサンプルデータに基づいてトルクを算出すると、トルクの算出精度が低下する。この場合、失火が発生している気筒で出力されたサンプルデータを除いてトルクを算出すれば、トルクの算出精度を高めることができる。また、内燃機関の過渡運転時においては、あまり前のサンプルデータを用いるとトルクの算出精度が低下する。この場合、より近い時期に出力されたサンプルデータのみを用いることでトルクの算出精度を高めることができる。
【0017】
なお、4気筒の内燃機関においては、前記トルク算出部は、クランク角で30度回転するごとにトルクを算出することを連続して6回行い、該6回分のトルクの平均値を算出してもよい。
【0018】
また、6気筒の内燃機関においては、前記トルク算出部は、クランク角で30度回転するごとにトルクを算出することを連続して4回行い、該4回分のトルクの平均値を算出してもよい。
【0019】
また、8気筒の内燃機関においては、前記トルク算出部は、クランク角で30度回転するごとにトルクを算出することを連続して3回行い、該3回分のトルクの平均値を算出してもよい。
【0020】
また、4気筒の内燃機関においては、前記角速度算出部は、連続した3つのサンプルデータに基づいてクランク角速度を算出し、前記比較用角速度算出部は、前記角速度算出部で用いられる3つのサンプルデータの直前の連続した3つのサンプルデータに基づいてクランク角速度を算出してもよい。
【0021】
また、6気筒の内燃機関においては、前記角速度算出部は、連続した4つのサンプルデータに基づいてクランク角速度を算出し、前記比較用角速度算出部は、トルクを算出する対象となっている気筒よりも前にトルクを算出する対象となった気筒であって点火順序で1つ前から5つ前までの気筒を比較気筒として、該比較気筒の夫々において連続して出力された4つのサンプルデータに基づいてクランク角速度を算出してもよい。
【0022】
8気筒の内燃機関においては、前記角速度算出部は、連続した3つのサンプルデータに基づいてクランク角速度を算出し、前記比較用角速度算出部は、トルクを算出する対象となっている気筒よりも前にトルクを算出する対象となった気筒であって点火順序で1つ前から7つ前までの気筒を比較気筒として、該比較気筒の夫々において連続して出力された3つのサンプルデータに基づいてクランク角速度を算出してもよい。
【0023】
なお、前記所定数のサンプルデータには、前記クランク角センサを前記欠歯が通過するときに出力されるサンプルデータを含むことができる。欠歯の影響を受けたサンプルデータを含んでいても、所定数のサンプルデータに基づいてクランク角速度が算出されるために、誤差の影響が小さくなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、欠歯を有するロータによりクランク角度を求めつつ内燃機関のトルクを精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【図2】クランク角センサの概略構成を示す図である。
【図3】クランク角センサ及びカム角センサからの出力信号の推移を示した図である。
【図4】クランク角に対する30°CA信号が出力されるまでの時間の一例を示した図である。
【図5】エンジンのトルクの計算タイミングを説明するための図である。
【図6】モータリング時における30°CA信号NE2が出力されるのに要する時間(30°CA所要時間)を30°CA毎に示した図である。
【図7】クランク角、筒内圧、及びトルクの関係を示した図である。
【図8】実施例に係る4気筒エンジンのトルクを推定するフローを示したフローチャートである。
【図9】6気筒エンジンのトルクの計算タイミングを説明するための図である。
【図10】実施例に係る6気筒エンジンのトルクを推定するフローを示したフローチャートである。
【図11】実施例に係る6気筒エンジンの角速度を比較するためのデータを算出するフローを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る内燃機関の制御装置の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本実施例に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。図1に示すハイブリッド車は、主として、エンジン1、主に発電機として機能する第1モータジェネレータ2と、プラネタリギア3と、主に電動機として機能する第2モータジェネレータ4と、を含む構成である。
【0028】
エンジン1から駆動輪に至る動力伝達経路に、第1モータジェネレータ2、プラネタリギア3、及び第2モータジェネレータ4が、配置されている。
【0029】
エンジン1は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどが適用可能であり、燃料と空気の混合気を気筒内で燃焼させ、その熱エネルギを回転運動エネルギに変換して出力するものである。このエンジン1の動作は、後述するECU100によって制御される。
【0030】
エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11の後端には、バネやゴムなどを含んで構成されるトーショナルダンパ12を介してインプットシャフト13が連結されている。クランクシャフト11とインプットシャフト13とは、一直線上つまり同軸上に配置されている。
【0031】
第1モータジェネレータ2及び第2モータジェネレータ4は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備した同期電動機が用いられている。
【0032】
具体的に、第1モータジェネレータ2は、プラネタリギア3を介してエンジン1の駆動力を受けて第2モータジェネレータ4に給電するための発電を行う他、エンジン1の始動、停止時や車両発進時の駆動力発生源として機能する。一方、第2モータジェネレータ4は、車両の走行駆動力のアシストを行う他、制動時や減速時の回生動作によって発電を行うものとして機能する。
【0033】
ECU100によってインバータ80を制御することにより、前記力行機能及び回生機能、ならびにそれぞれの場合における駆動力を制御するように構成されている。また、第1モータジェネレータ2及び第2モータジェネレータ4は、電力の授受を行うことが可能
なバッテリ81にインバータ80を介して接続されている。
【0034】
プラネタリギア3は、サンギア31、リングギア32、複数のピニオンギア33、キャリヤ34を含んでいる。サンギア31は、サンギアシャフト14を介して第1モータジェネレータ2に一体回転可能に連結されている。リングギア32は、サンギア31の外径側に同心状に配置されており、リングギアシャフト15に一体回転可能に連結されている。また、リングギアシャフト15は、第2モータジェネレータ4に一体回転可能に連結されている。
【0035】
複数のピニオンギア33は、サンギア31とリングギア32との間に互いに噛合するよう配置されている。キャリヤ34は、複数のピニオンギア33を円周等間隔に保持して回転自在に支持するもので、インプットシャフト13に一体回転可能に連結されている。
【0036】
リングギア32には、動力の取り出し用の動力取出ギア35が結合されている。この動力取出ギア35は、チェーンベルト36を介して動力伝達ギア37に接続されており、該動力伝達ギアはドライブシャフト38に接続されている。
【0037】
また、エンジン1には、クランクシャフト11の回転角(クランク角)に応じて信号を出力するクランク角センサ21が取り付けられている。クランク角センサ21の信号は、信号処理装置101に入力される。また、インプットシャフト13には、該インプットシャフト13の回転数を検出する回転センサ22が設けられている。サンギアシャフト14には、該サンギアシャフト14の回転角度を検出する第1レゾルバ23が設けられている。さらに、リングギアシャフト15には、該リングギアシャフト15の回転角度を検出する第2レゾルバ24が設けられている。
【0038】
図2は、クランク角センサ21の概略構成を示す図である。なお、回転センサ22は、クランク角センサ21と概ね同じ構成とすることができる。
【0039】
クランクシャフト11には、該クランクシャフト11と同軸にロータ200が取り付けられている。ロータ200の外周には、クランク角検出用として、10°CA(クランク角)毎に等しい角度間隔にて形成された36歯数のうち2歯連続で欠歯させた欠歯部201が形成されると共に、34歯数からなる歯部202が形成されている。
【0040】
クランク角センサ21は、各歯部202に対向し、それらの歯部202によりクランクシャフト11の回転角度を検出する。クランク角センサ21から出力されるクランク角信号NEは、クランクシャフト11の回転位置が予め設定された特定位置でないときには、所定のクランク角度(10°CA)回転する期間を1周期としたパルス信号となり、クランクシャフト11が特定位置に来たときには、クランクシャフト11が30°CA回転する期間を1周期とした欠歯信号となる。そして、この欠歯信号は、クランクシャフト11が1回転する毎(360°CA毎)に発生する。
【0041】
そして、信号処理装置101は、クランク角センサ21からクランク角信号NEを受け取ると、クランク角信号NE中における欠歯信号の検出動作を開始する。そして、クランク角信号NEが欠歯信号になったことを最初に検出すると、以降、クランク角信号NEを分周して、クランクシャフト11が30°CA回転する期間を1周期としたパルス信号としての30°CA信号NE2を生成し出力する。なお、本実施例においては信号処理装置101が、本発明における出力部に相当する。
【0042】
また、信号処理装置101には、エンジン1のカムシャフト203の外周に形成される1つの歯部204に対向して設けられるカム角センサ25からの出力信号が入力される。
カム角センサ25からは、クランク角で720°(720°CA)毎に信号が出力される。
【0043】
ここで、図3は、クランク角センサ21及びカム角センサ25からの出力信号の推移を示した図である。
【0044】
欠歯信号を検出してから210°CA後に、一番気筒(#1)が上死点(TDC)に位置するように欠歯部201が形成される。また、欠歯信号を検出してから210°CA後までの間に、カム角センサ25からの信号が入力されれば圧縮上死点と判定し、信号が入力されなければ排気上死点と判定できるように、カムシャフト203の歯部204が形成される。
【0045】
なお、上述したECU100は、一般的に公知のように、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAM等を含んで構成される。ROMは、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0046】
ここで、プラネタリギア3の動作を説明する。キャリヤ34に入力されるエンジン1の駆動力に対して、第1モータジェネレータ2による反力駆動力をサンギア31に入力すると、エンジン1から入力された駆動力より大きい駆動力がリングギア32から出力として得られる。
【0047】
その場合、第1モータジェネレータ2は発電機として機能する。また、リングギア32の回転数(出力回転数)を一定とすると、第1モータジェネレータ2の回転数を増減変化させることにより、エンジン1の回転数を連続的に(無段階に)変化させることができる。したがって、第1モータジェネレータ2を制御することによって、例えば燃費を最も良好とするようにエンジン1の回転数を制御することが可能になる。
【0048】
そして、ハイブリッド車両は、エンジン1で発生する駆動力を、プラネタリギア3を経由させて、駆動輪と第1モータジェネレータ2とに機械的に分配できるとともに、エンジン1または第2モータジェネレータ4のうちの少なくとも一方を駆動源とすることができる。
【0049】
さらに、エンジン駆動力をプラネタリギア3に伝達する場合、プラネタリギア3のサンギア31とキャリヤ34とリングギア32との差動機能により、第1モータジェネレータ2の回転速度を制御すれば、エンジン1の回転数を無段階に(連続的に)制御することが可能であり、そのことから、プラネタリギア3が無段変速機として機能する。
【0050】
そして、ECU100は、エンジン1のトルクTeを推定し、該トルクTeに基づいてエンジン1を制御する。このエンジン1のトルクTeは、次式により得ることができる。
Te=Ie・dωe/dt+((1+ρ)/ρ)・((Ig・dωg/dt)−Tg)
ただし、Ieはエンジンの慣性モーメント、ωeはエンジンの回転角速度、ρはプラネタリギア比、Igは第1モータジェネレータ2の慣性モーメント、ωgは第1モータジェネレータ2の回転角速度、Tgは第1モータジェネレータ2のトルク(指令値)である。エンジンの慣性モーメントIe及び第1モータジェネレータ2の慣性モーメントIgは実験により予め求めることができる。エンジンの回転角速度ωeは、クランク角センサ21により得る。また、第1モータジェネレータ2の回転角速度ωgは、回転センサ22によ
り得る。
【0051】
ここで、ハイブリッド車両においては、トーショナルダンパ12を介して第1モータジェネレータ2及び第2モータジェネレータ4が接続されているため、クランクシャフト11の回転状態が第1モータジェネレータ2及び第2モータジェネレータ4の回転状態の影響を受ける。このため、単にクランクシャフト11の角加速度(dωe/dt)とエンジン1の慣性モーメントIeとを乗算してエンジン1のトルクを推定しても、実際の値からはずれてしまう。そこで、第1モータジェネレータ2及び第2モータジェネレータ4の影響を考慮した補正項((1+ρ)/ρ)・((Ig・dωg/dt)−Tg)を加えている。なお、補正項は周知の技術により得ることができるため、本実施例では説明を省略する。
【0052】
そして、エンジンの角加速度(dωe/dt)は、30°CA信号NE2に基づいて算出することができる。しかし、30°CA信号NE2は、欠歯部201及びその前後において実際の値からずれるという特性がある。
【0053】
図4は、クランク角に対する30°CA信号NE2が出力されるまでの時間(30°CA所要時間)の一例を示した図である。実線の楕円で囲った部分は、欠歯部201の影響を受けている箇所(1番気筒燃焼時に相当)であり、破線の楕円で囲った部分は、欠歯部201の影響を受けていない箇所(3番気筒燃焼時に相当)である。すなわち、歯部202では等間隔に歯が形成されているのに対し、欠歯部201では歯が形成されていないため、クランク角センサ21の信号が途切れてしまい、30°CA信号NE2に誤差が生じる。この状態でエンジン1のトルクTeを推定すると、正確な推定が困難となる。
【0054】
これに対し本実施例では、4気筒エンジンの場合には、30°CA信号NE2の連続3回分(90°CA分)を計算区間として設定し、エンジン1及び第1モータジェネレータ2の角速度変化の計算を行なう。この計算は、30°CA信号NE2毎に計算対象データを30°CAずらして順次行なわれる。すなわち、計算区間を30°CAずつずらして角速度の計算を複数回行なう。なお、本実施例では計算区間の角速度を算出するECU100が、本発明における角速度算出部に相当する。
【0055】
図5は、エンジン1のトルクTeの計算タイミングを説明するための図である。破線は、30°CA信号NE2が立ち上がるタイミングを示している。区間1〜区間11は、計算区間として夫々30°CA信号NE2の3回分が割り当てられている。区間1の30°CA後に区間2が設定され、区間2の30°CA後に区間3が設定される。このように、30°CA毎に新たな計算区間が設定される。
【0056】
なお、4気筒エンジンの場合には、計算区間直前の30°CA信号NE2の連続3回分(90°CA分)の区間を、角速度変化を計算するための比較区間とする。そして、計算区間及び比較区間で夫々算出される角速度に基づいてエンジン1の角加速度(dωe/dt)が算出される。なお、本実施例では比較区間の角速度を算出するECU100が、本発明における比較用角速度算出部に相当する。
【0057】
すなわち、連続する180°CAの前半と後半とで夫々角速度が算出され、これらを比較することで角速度の変化を算出し、角加速度が算出される。たとえば、図5では、区間1と区間4との角速度を比較して角速度変化の計算を行なうことができる。同様に、区間2と区間5、区間3と区間6、区間4と区間7、区間5と区間8、区間6と区間9、区間7と区間10、区間8と区間11との角速度を夫々比較して角速度変化の計算を行なうことができる。そして、燃焼期間(膨張行程としてもよい)に相当する180°CAに含まれる計算区間、すなわち計算区間の6回分で夫々エンジン1のトルクを算出し、その6回
の平均値を該当気筒のトルク値とする。なお、本実施例ではこのようにトルクを算出するECU100が、本発明におけるトルク算出部に相当する。
【0058】
なお、図5においては、区間6が始まる時期から区間7が始まる時期までの間の30°CAが、欠歯部201に相当する。この区間を欠歯区間と称する。また、欠歯区間直前の30°CAの区間を欠歯前区間と称し、欠歯区間直後の30°CAの区間を欠歯後区間と称する。
【0059】
ここで、図6は、モータリング時における30°CA信号NE2が出力されるのに要する時間(30°CA所要時間)を30°CA毎に示した図である。一点鎖線は、そのときの運転状態における基準値である。欠歯前区間、欠歯区間、欠歯後区間における夫々の30°CA所要時間は、基準値に対して、夫々、+0.75%、−1.2%、+0.45%のずれが生じている。これは、他の区間におけるずれと比較しても大きいことが分かる。すなわち、欠歯前区間及び欠歯後区間においては、30°CA所要時間が実際よりも長くなっており、欠歯区間においては、30°CA所要時間が実際よりも短くなっていると考えられる。なお、この誤差は、エンジン1の回転数などにより変化する。
【0060】
ここで、図5に示した区間1、区間2、及び区間8〜区間11は、欠歯前区間、欠歯区間、及び欠歯後区間から外れているため、欠歯の影響を受けない。一方、区間3〜区間7は、その一部に欠歯前区間、欠歯区間、または欠歯後区間の少なくとも1つを含んでいるため、欠歯の影響を受けて角速度算出時に誤差が生じ得る。本実施例では、4気筒エンジンにおける計算区間を90°CAに設定することでこれらの誤差を小さくしている。
【0061】
ここで、区間3では、前側の60°CAでは欠歯の影響を受けていないが、後側の30°CAは欠歯前区間であるため、全体としては欠歯の影響を受けている。しかし、区間3全体の90°CAのなかで欠歯の影響を受けているのは、後側の30°CAのみなので、計算区間を欠歯前区間のみとした場合と比較して、欠歯の影響が三分の一に減少している。すなわち、欠歯前区間における誤差が+0.75%であるから、この三分の一の値である+0.25%が区間3における誤差として残る。
【0062】
また、区間4では、後側の60°CAにおいて欠歯前区間及び欠歯区間の影響を受けるものの、前側の30°CAでは欠歯の影響を受けない。また、欠歯前区間における誤差の+0.75%と、欠歯区間における誤差の−1.2%と、が互いに打ち消し合うことにより、−0.45%の誤差が残る。そして、欠歯の影響が三分の一に減少するため、−0.15%が区間4における誤差となる。
【0063】
区間5では、欠歯前区間、欠歯区間、欠歯後区間の影響を夫々受ける。夫々の誤差を加えると合計は0となるため、夫々の誤差が打ち消し合って、区間5における誤差は0となる。すなわち、欠歯前区間、欠歯区間、及び欠歯後区間の夫々において30°CA所要時間に誤差が生じているが、欠歯前区間、欠歯区間、及び欠歯後区間全体の90°CAで考えると誤差はなくなる。
【0064】
区間6では、前側の60°CAにおいて欠歯区間及び欠歯後区間の影響を受けるものの、後側の30°CAでは欠歯の影響を受けない。また、欠歯区間における誤差の−1.2%と、欠歯後区間における誤差の+0.25%と、が互いに打ち消し合って、−0.75%の誤差が残る。そして、欠歯の影響が三分の一に減少するため、区間6における誤差は−0.25%となる。
【0065】
区間7では、後側の60°CAでは、欠歯の影響を受けていないが、前側の30°CAは欠歯後区間であるため、全体としては欠歯の影響を受けている。しかし、区間7全体の
90°CAのなかで欠歯の影響を受けているのは、前側の30°CAのみなので、計算区間を欠歯後区間のみとした場合と比較して、欠歯の影響が三分の一に減少している。すなわち、欠歯後区間における誤差が+0.45%であるから、この三分の一の値である+0.15%が区間7における誤差として残る。
【0066】
このように、計算区間及び比較区間を90°CAに設定することで、欠歯の影響を小さくすることができる。これにより、角速度をより正確に求めることができる。また、欠歯の影響による誤差を補正するための補正計算を省略することができる。そして、これら計算区間及び比較区間を用いれば、エンジン1のトルクをより正確に求めることができる。
【0067】
たとえば、計算区間を区間4に設定し、比較区間を区間1に設定する。区間1における30°CA所要時間の合計(90°CA所要時間)と、区間4における30°CA所要時間の合計(90°CA所要時間)と、から夫々角速度を求め、この区間1と区間4との角速度を比較することで角速度変化、すなわち角加速度を算出する。同様に、各区間とそれと連続する区間とで角加速度を算出し、夫々の角加速度に基づいて、それぞれエンジン1のトルクを推定することができる。各気筒の膨張行程においては、計算区間が6つ設定されるが、夫々の計算区間において算出されるトルクの平均値を該気筒のトルクとする。すなわち、計算区間の6つ分(180°CA分)のトルクの平均値をそのときに燃焼している気筒のトルクとする。
【0068】
このように、計算区間に、欠歯前区間、欠歯区間または欠歯後区間が含まれていても、エンジン1のトルクを正確に求めることができる。
【0069】
ところで、4気筒エンジンの場合には、計算区間を180°CAとしても、欠歯の影響を打ち消すことができる。すなわち、4気筒の場合、計算区間を燃焼区間と同じ180°CAにすれば、クランク角センサの欠歯区間を含むことになるため、30°CA毎の補正をしなくてもよい。しかし、角速度変化を算出する際に直前の燃焼気筒と比較することになるため、たとえば直前の気筒において失火が発生していると、後の気筒(トルクの算出対象となる気筒)が正常に燃焼していてもトルクの計算結果が異常な値になる。
【0070】
図7は、クランク角、筒内圧、及びトルクの関係を示した図である。図7中の「失火」で示される箇所において失火が発生している。この失火は、1番気筒(#1)で発生している。ここで、1番気筒(#1)で失火が発生した場合には、計算区間を180°CAに設定していると、3番気筒(#3)の角速度の算出時に1番気筒(#1)の失火による影響を大きく受けることになる。一方、4気筒エンジンの場合は角速度変化を90°CA毎に計算することで、燃焼180°CAの後半90°CAには燃焼圧の影響が出難いので、3番気筒(#3)の角速度の算出時に1番気筒(#1)の失火による影響を受け難くなるので、角速度変化計算の精度が高くなる。
【0071】
図8は、本実施例に係る4気筒エンジンのトルクを推定するフローを示したフローチャートである。本ルーチンはECU100により所定の時間毎に実行される。
【0072】
ステップS101では、30°CA信号NE2が出力される時期であるか否か判定される。ステップS101で肯定判定がなされた場合にはステップS102へ進み、否定判定がなされた場合には本ルーチンを終了させる。
【0073】
ステップS102では、サンプルデータが読み込まれる。サンプルデータは、今回の計算区間のデータとなる30°CA信号NE2の連続3回分の所要時間と、比較データとなる30°CA信号NE2の連続3回分の所要時間と、である。
【0074】
ステップS103では、トルクが算出される。すなわち、角速度変化を算出した後にエンジン1のトルクが算出される。そして、4気筒エンジンでは、これを6回繰り返して、それぞれ算出されるトルクの平均値を求め、該トルクの平均値をエンジン1の制御に用いるトルクとする。
【0075】
このように、計算区間を90°CAに広げてエンジン1のトルクを算出することで、欠歯の影響を小さくすることができる。また、前の気筒で発生したトルク変化の影響を軽減することができる。
【0076】
次に6気筒エンジン及び8気筒エンジンの場合について説明する。6気筒エンジンでは、点火間隔が120°CAとなり、4気筒エンジンと同じ計算方法ではトルクを計算することができない。また、8気筒エンジンでは、点火間隔が90°CAとなるため、4気筒エンジンと同じ計算方法では、前の気筒の燃焼の影響を受けてしまうので、トルクの計算精度が低くなる虞がある。そこで、計算区間を気筒数に応じて変更する。すなわち、6気筒エンジンの場合には、30°CA信号NE2の連続4回分(120°CA分)を計算区間として設定し、8気筒エンジンの場合には、30°CA信号NE2の連続3回分(90°CA分)を計算区間として設定する。この計算区間は、各気筒の膨張行程開始から、次の気筒の膨張行程開始までのクランク角度に等しい。トルクの計算は、4気筒エンジンと同様に30°CA信号NE2毎に計算対象データを30°CAずらして順次行なわれる。すなわち、計算区間を30°CAずつずらして角速度の計算を複数回行なう。
【0077】
また、6気筒エンジンの場合には、点火順序で1気筒前から5気筒前までの夫々の気筒において計算区間とされた区間を比較区間とする。そして、点火順序で1気筒前から5気筒前までの夫々の気筒において算出された角速度の平均値を求め、該平均値を比較データとして角加速度を算出する。また、8気筒エンジンの場合には、点火順序で1気筒前から7気筒前までの夫々の気筒において計算区間とされた区間を比較区間とする。そして、点火順序で1気筒前から7気筒前までの夫々の気筒において算出された角速度の平均値を求め、該平均値を比較データとして角加速度を算出する。そして、6気筒エンジンの場合では、120°CAに含まれる計算区間、すなわち計算結果の連続4回分(120°CA分)で夫々エンジン1のトルクを算出し、その4回の平均値を該当気筒のトルク値とする。また、8気筒エンジンの場合では、90°CAに含まれる計算区間、すなわち計算結果の連続3回分(90°CA分)で夫々エンジン1のトルクを算出し、その3回の平均値を該当気筒のトルク値とする。
【0078】
図9は、6気筒エンジンのトルクTeの計算タイミングを説明するための図である。破線は、30°CA信号NE2が立ち上がるタイミングを示している。区間1〜区間11は、計算区間として夫々30°CA信号NE2の4回分が割り当てられている。
【0079】
ここで、図9に示した区間1及び区間8は、欠歯前区間、欠歯区間、及び欠歯後区間から外れているため、欠歯の影響を受けない。一方、区間2〜区間7は、その一部に欠歯前区間、欠歯区間、または欠歯後区間の少なくとも1つを含んでいるため、欠歯の影響を受けて角速度算出時に誤差が生じ得る。本実施例では、6気筒エンジンにおける計算区間を120°CAに設定することでこれらの誤差を小さくしている。
【0080】
ここで、区間2では、前側の90°CAでは欠歯の影響を受けていないが、後側の30°CAは欠歯前区間であるため、全体としては欠歯の影響を受けている。しかし、区間2全体の120°CAのなかで欠歯の影響を受けているのは、後側の30°CAのみなので、計算区間を欠歯前区間のみとした場合と比較して、欠歯の影響が四分の一に減少している。すなわち、欠歯前区間における誤差が+0.75%であるから、この四分の一の値である+0.19%が区間2における誤差として残る。
【0081】
また、区間3では、後側の60°CAにおいて欠歯前区間及び欠歯区間の影響を受けるものの、前側の60°CAでは欠歯の影響を受けない。また、欠歯前区間における誤差の+0.75%と、欠歯区間における誤差の−1.2%と、が互いに打ち消し合うことにより、−0.45%の誤差が残る。そして、欠歯の影響が四分の一に減少するため、−0.11%が区間3における誤差となる。
【0082】
区間4及び区間5では、欠歯前区間、欠歯区間、欠歯後区間の影響を夫々受ける。夫々の誤差を加えると合計は0となるため、夫々の誤差が打ち消し合って、区間4及び区間5における誤差は0となる。すなわち、欠歯前区間、欠歯区間、及び欠歯後区間の夫々において30°CA所要時間に誤差が生じているが、欠歯前区間、欠歯区間、及び欠歯後区間全体を含む120°CAで考えると誤差はなくなる。
【0083】
区間6では、前側の60°CAにおいて欠歯区間及び欠歯後区間の影響を受けるものの、後側の60°CAでは欠歯の影響を受けない。また、欠歯区間における誤差の−1.2%と、欠歯後区間における誤差の+0.25%と、が互いに打ち消し合って、−0.75%の誤差が残る。そして、欠歯の影響が四分の一に減少するため、区間6における誤差は−0.18%となる。
【0084】
区間7では、後側の90°CAでは、欠歯の影響を受けていないが、前側の30°CAは欠歯後区間であるため、全体としては欠歯の影響を受けている。しかし、区間7全体の120°CAのなかで欠歯の影響を受けているのは、前側の30°CAのみなので、計算区間を欠歯後区間のみとした場合と比較して、欠歯の影響が四分の一に減少している。すなわち、欠歯後区間における誤差が+0.45%であるから、この四分の一の値である+0.11%が区間7における誤差として残る。
【0085】
なお、8気筒エンジンの場合における計算区間及び各区間における誤差は、4気筒エンジンの場合と同じである。
【0086】
このように、6気筒エンジンの場合には計算区間を120°CAに設定し、8気筒エンジンの場合には計算区間を90°CAに設定することで、欠歯の影響を小さくすることができる。これにより、角速度をより正確に求めることができる。また、欠歯の影響による誤差を補正するための補正計算を省略することができる。そして、これら計算区間及び比較区間を用いれば、エンジン1のトルクをより正確に求めることができる。また、角速度変化を計算するために比較される角速度を、直前の数気筒の平均値とすることで、1気筒前の燃焼状態の影響を小さくすることができる。
【0087】
なお、6気筒エンジン及び8気筒エンジンの場合において、角速度変化を計算するために比較される角速度を、点火順序で直前の数気筒の平均値としているが、この比較するために用いられる気筒の数をエンジン1の運転状態に応じて変化させてもよい。すなわち、エンジン1の運転状態が大きく変化している場合においては、計算対象となっている気筒よりも点火順序が前の気筒ほど、計算対象となっている気筒との角速度の差が大きくなり、計算対象となっている気筒との関係が薄れる。そこで本実施例では、6気筒エンジンの加速または減速時において、1気筒前と5気筒前とで夫々得られる角加速度の差が大きいほど、比較する気筒数を少なくする。また、8気筒エンジンの加速または減速時において、1気筒前と7気筒前とで夫々得られる角加速度の差が大きいほど、比較する気筒数を少なくする。これらの最適な関係は、予め実験等で求めておく。
【0088】
また、算出されたトルクが小さいなど失火が発生していると考えられる気筒は、比較の対象から外してもよい。
【0089】
図10は、本実施例に係る6気筒エンジンのトルクを推定するフローを示したフローチャートである。本ルーチンはECU100により所定の時間毎に実行される。
【0090】
ステップS201では、30°CA信号NE2が出力される時期であるか否か判定される。ステップS201で肯定判定がなされた場合にはステップS202へ進み、否定判定がなされた場合には本ルーチンを終了させる。
【0091】
ステップS202では、サンプルデータが読み込まれる。サンプルデータは、今回の計算区間のデータとなる30°CA信号NE2の4回分の所要時間と、比較データとなる1気筒前から5気筒前までの夫々の同区間(120°CA)の所要時間と、である。
【0092】
ステップS203では、トルクが算出される。すなわち、角速度変化を算出した後にエンジン1のトルクが算出される。
【0093】
ステップS204では、燃焼終了時期であるか否か判定される。本ステップでは、120°CAに亘り計算区間4つ分のトルクが算出されたか否か判定している。
【0094】
ステップS205では、計算区間4つ分のトルクの平均値を求め、該平均値をエンジン1のトルクとする。
【0095】
なお、8気筒エンジンの場合には、ステップS202において、今回の計算区間のデータとなる30°CA信号NE2の3回分の所要時間と、比較データとなる1気筒前から7気筒前までの夫々の同区間(90°CA)の所要時間と、をサンプルデータとして読み込み、ステップS204において、90°CAに亘り計算区間3つ分のトルクが算出されたか否か判定し、ステップS205において、計算区間3つ分のトルクの平均値を求め、該平均値をエンジン1のトルクとする。
【0096】
次に、図11は、本実施例に係る6気筒エンジンの角速度を比較するためのデータを算出するフローを示したフローチャートである。本ルーチンはECU100により所定の時間毎に実行される。
【0097】
ステップS301では、平均値の算出要求があるか否か判定される。すなわち、上述の図10に示した処理が実行されているか否か判定される。ステップS301で肯定判定がなされた場合にはステップS302へ進み、否定判定がなされた場合には本ルーチンを終了させる。
【0098】
ステップS302では、仮平均値が算出される。仮平均値とは、比較データとなる1気筒前から5気筒前までの夫々の同区間(120°CA)の所要時間の平均値である。
【0099】
ステップS303では、仮平均値が、正常範囲内であるか否か判定される。この正常範囲とは、正常といえる範囲であり、予め実験等により最適値を求めておく。本ステップでは、1気筒前から5気筒前までの夫々の同区間(120°CA)の所要時間に異常なデータが含まれるか否か判定している。
【0100】
ステップS303で肯定判定がなされた場合にはステップS304へ進み、比較データとなる1気筒前から5気筒前までの夫々の同区間(120°CA)の所要時間の平均値が算出される。この場合、ステップS304で算出される平均値は、ステップS302で算出される仮平均値と同じ値になる。
【0101】
一方、ステップS303で否定判定がなされた場合にはステップS305へ進み、異常データ削除された後、ステップS304で残りのデータの平均値が算出される。このようにして、異常なサンプルデータによるトルクの誤差を軽減することができる。
【0102】
なお、8気筒エンジンの場合には、ステップS302において、比較データとなる1気筒前から7気筒前までの夫々の同区間(90°CA)の所要時間の平均値が算出され、ステップS303において、1気筒前から7気筒前までの夫々の同区間(90°CA)の所要時間に異常なデータが含まれるか否か判定される。
【0103】
このように、計算区間を30°CAよりも広げてエンジン1のトルクを算出することで、欠歯の影響を小さくすることができる。また、前の気筒で発生したトルク変化の影響を軽減することができる。
【0104】
なお、本実施例ではモータジェネレータを備えたハイブリッド車両を例に挙げて説明したが、モータジェネレータを備えておらず駆動源としてエンジンのみを備える車両であっても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 エンジン
2 第1モータジェネレータ
3 プラネタリギア
4 第2モータジェネレータ
11 クランクシャフト
12 トーショナルダンパ
13 インプットシャフト
14 サンギアシャフト
15 リングギアシャフト
21 クランク角センサ
22 回転センサ
23 第1レゾルバ
24 第2レゾルバ
25 カム角センサ
31 サンギア
32 リングギア
33 ピニオンギア
34 キャリヤ
35 動力取出ギア
36 チェーンベルト
37 動力伝達ギア
38 ドライブシャフト
80 インバータ
81 バッテリ
90 圧縮上死点後
100 ECU
101 信号処理装置
200 ロータ
201 欠歯部
202 歯部
203 カムシャフト
204 歯部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランクシャフトに連動して回転するロータに所定のクランク角度毎に歯を形成し且つ該歯の少なくとも1つを欠くことにより欠歯を形成形し、前記ロータが回転しているときにおいて前記歯が通過するごとに信号を出力するクランク角センサを備えた内燃機関の制御装置において、
前記クランク角センサの出力信号に基づいて、クランク角で30度回転するのに要した時間をサンプルデータとして出力する出力部と、
連続して出力される所定数のサンプルデータに基づいてクランク角速度を算出する角速度算出部と、
前記所定数のサンプルデータよりも以前に出力されたサンプルデータを用いてクランク角速度を算出する比較用角速度算出部と、
前記角速度算出部にて算出されるクランク角速度と、前記比較用角速度算出部にて算出されるクランク角速度と、を比較することでトルクを算出し、且つ、このトルクをクランク角で30度回転するごとに順次複数回算出し、複数回算出されたトルクの平均値を前記内燃機関のトルクとするトルク算出部と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
4気筒の内燃機関においては、前記所定数は3つであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
6気筒の内燃機関においては、前記所定数は4つであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
8気筒の内燃機関においては、前記所定数は3つであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
6気筒または8気筒の内燃機関においては、
前記比較用角速度算出部は、トルクを算出する対象となっている気筒よりも前にトルクを算出する対象となった複数の気筒を比較気筒として、該比較気筒の夫々において連続して出力された所定数のサンプルデータに基づいてクランク角速度を算出し、
前記トルク算出部は、前記比較気筒の数を前記内燃機関の運転状態に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−256806(P2011−256806A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132909(P2010−132909)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】